説明

シラン官能性プレポリマー及びイソシアネート官能性プレポリマーの混合物を主成分とする接着剤組成物

本発明は、a)ポリエーテル又はポリオレフィン骨格及びシラノール縮合可能なシラン部分を含む1又は2種以上のシラン官能性プレポリマー、b)ポリエーテル骨格及びイソシアネート部分を含む1又は2種以上のイソシアネート官能性プレポリマー、c)ヒドロカルビルリン酸エステル若しくはヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む1若しくは2種以上のリガンドを有する、1若しくは2種以上の有機スズ化合物、又はチタネート若しくはジルコネート化合物、或いはその混合物、並びにd)該ポリマーと混和性であり、下塗りされていない塗装された被着体への接着剤の接着を増強する3級アミン又は無水の強有機酸、を含む接着剤組成物に関する。ある態様においては、本発明は、本発明の接着剤組成物を用いて2又は3以上の被着体を共に接着する方法である。この工程は、ここに記載される接着剤を1又は2以上の被着体に塗布し、その1又は2以上の被着体を該被着体の間に配置された該接着剤と接触させ、そして該接着剤を硬化させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1又は2種以上のシラン官能性プレポリマー及び1又は2種以上のイソシアネート官能性プレポリマーの混合物を含む接着剤組成物、並びにその接着剤組成物を用いて2または3以上の被着体を共に接着する方法に関する。好ましくは、本発明の接着剤を用いて、窓が窓フランジ(window flange)に接着される。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンシーラント組成物は、非多孔性被着体、例えばガラスなどを非多孔性被着体へ接着するために用いられる。これらはBergerらの米国特許第4,374,237号及びRizkらの米国特許第4,687,533号に記載されており、両特許は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。Bergerらの米国特許第4,374,237号においては、2個のシラン基を含む2級アミン化合物とさらに反応したウレタンプレポリマーを含むポリウレタンシーラントが記載されている。Rizkらの米国特許第4,687,533号においては、少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを、イソシアネート基反応性の活性水素原子を含んだ末端基を有する1当量未満のアルコキシシランと反応させ、少なくとも2個の未反応なイソシアネート基を有するイソシアナトシランを生成することによって調製された、シラン基を含有するウレタンプレポリマーを含んだポリウレタンシーラントが記載されている。第2工程では、イソシアナトシランをさらなるポリイソシアネートと混合し、該混合物をポリオールと反応させてイソシアナト末端基及びアルコキシシラン側基を有するポリウレタンプレポリマーを生成する。
【0003】
Hattoriらの欧州特許第856,569号においては、架橋基を有しないポリオキシアルキレンポリマーと混合された、加水分解性基をシランに結合して有するシラン末端ポリオキシアルキレンポリマーを、ガラスを金属に対して接着する為に使用することについて開示されている。Wuの米国特許第6,649,016号においては、A)柔軟(flexible)な骨格及びシラノール縮合可能なシラン部分を有する1又は2種以上のポリマー、B)ヒドロカルビルリン酸エステル類及び/又はヒドロカルビルスルホン酸エステル類を含む1又は2種以上のリガンドを有する1又は2種以上のチタネート類又はジルコネート類、及びC)ポリマー混和性であり、プライマーの非存在下で被覆された被着体への接着剤の接着を増強する無水の強有機酸、を含み、塗装された被着体に対しプライマーを用いずに接着する接着剤について開示されている。Hsiehらの米国特許第6,015,475号においては、イソシアネート官能性プレポリマーを主成分とする、塗装された被着体にプライマーを用いずに接着する接着剤組成物について開示されている。
【0004】
このようなシーラントは、ガラス被着体を塗装された被着体に接着する為に用いられる。典型的には、接着剤の塗布に先だって、1又は2種以上のシランの溶液を含む別々のガラスプライマーがガラス被着体に典型的に塗布される。これは、殆どのフロントガラス及びリアウィンドウを車両に接着する為の車両組立工程において当てはまる。組立工程においてプライマーを使用することは、余分な工程及び余分な費用をもたらし、組立ラインの作業員を余分な化学薬品に曝露するという点において望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスが脱落せず、又は望ましい位置からずれることなく車両を動かせるように、ガラスを車両に接着する為の速やかに硬化する接着剤が自動車生産者に望まれている。また重要なのは、接着剤が塗布前に安定性を示していること、即ちガラスを車両に接着する為に塗布する前に硬化しないことである。接着剤が自動車工場の運搬システム内で硬化すると、接着剤運搬システム内を一掃している間、組立ラインを運転停止しなければならない。このような運転停止は自動車会社にとって極めて損失が大きく、避けなければならない。自動車の耐用年数は10年間を超える為、接着剤は、様々な困難な状況下で車両の耐用年数の間その完全さを維持し、車両に窓を保持している必要がある。従って、必要とされるのは、自動車の塗装(塗装への接着は特に難しい)及びガラスに接着することが可能な接着剤であり、プライマーを使用する必要無しに車両に窓を接着でき、強い接着力、接着強度の速やかな増大、迅速な結合、良好な安定性及び長期間の耐久性も示す接着剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、a)ポリエーテル又はポリオレフィン骨格、及びシラノール縮合可能なシラン部分を含む1又は2種以上のシラン官能性プレポリマー類、b)ポリエーテル骨格及びイソシアネート部分を含む1又は2種以上のイソシアネート官能性プレポリマー類、c)ヒドロカルビルリン酸エステル若しくはヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む1若しくは2種以上のリガンドを有する、1若しくは2種以上の有機スズ化合物、又はチタネート若しくはジルコネート化合物、或いはその混合物、d)該ポリマーと混和性であり、下塗りされていない被覆された被着体への接着剤の接着を増強する1又は2種以上の無水の強有機酸、を含む接着剤組成物である。
【0007】
ある態様においては、本発明は、本発明の接着剤組成物を用いて2又は3以上の被着体を共に接着する方法である。この工程は、ここに記載される接着剤を1又は2以上の被着体に塗布し、その1又は2以上の被着体を該被着体の間に配置された該接着剤と接触させ、そして該接着剤を硬化させることを含む。好ましくは、該方法は被覆された被着体、例えば車両用の窓にガラスを接着する為に用いられる。好ましくは、該接着剤は窓周縁部に配置されたセラミックフリットに接着される。好ましくは、該被着体は塗料によって被覆されている。好ましくは、その窓、被覆された該被着体、又は両者は、該接着剤と接触する際に下塗りされていない。好ましくは、該塗料は耐酸性塗料である。
【0008】
本発明の該接着剤及び方法により、被覆された被着体に対するガラスの接着の際に、ガラス及び/又は接着される被着体表面に対し下塗りを行う必要が無くなる。これは自動車に窓を接着する際に特に有用である。該接着剤はさらに、優れた接着及び粘着強度、優れた塗布前安定性、速やかな硬化速度、迅速な結合及び長期間の耐久性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の接着剤組成物は、ポリオキシアルキレン又はポリオレフィン骨格及びシラノール縮合可能なシラン部分を有するポリマーを含んでいる。柔軟な骨格を有する該ポリマーは、シラノール縮合可能なシラン部分で官能化され得る柔軟な骨格を有する、どのようなポリオキシアルキレン又はポリオレフィンポリマーであってもよい。該ポリマーはさらに、該シラン部分へポリオレフィン又はポリオキシアルキレンポリマー骨格を結合する架橋基を含んでいてもよい。好ましい架橋基には、アルキレン、チオアルキレン、ウレタン及び尿素基が含まれる。より好ましいポリマー骨格には、ポリオキシアルキレンエーテル類が含まれる。好ましくは、該ポリオキシアルキレン又はポリオレフィンを主成分とするポリマーは、ポリウレタン又はポリウレア結合を含まない。好ましくは、シラノール縮合可能なシラン部分は、アルキレン又はチオアルキレン結合、好ましくはアルキレン結合により柔軟な骨格に結合する。好ましくは、シラン官能性プレポリマーは、オキシアルキレン及び/又はポリオレフィン単位、アルキレン単位及びシラノール縮合可能なシラン部分から実質的になる。シラノール縮合とは、加水分解性部分がシラン部分から切断されて水酸基部分が生成した後、それが他のシラン部分と反応し、加水分解性部分を切断して、水酸基が結合していたプレポリマー骨格と置換する一連の反応のことである。水素が最初の加水分解で生成した水酸基から切断される。アルキレン結合は多価脂肪族炭化水素部分である。ここで用いられるプレポリマーとは、特定の条件下で反応してより大きなポリマーを形成し得る反応性基を含む重合単位のことである。本発明に有用なシラン官能性プレポリマー類は、Yukimotoらの米国特許第4,906,707号、Iwakiriらの米国特許第5,342,914号、Yukimotoの米国特許第5,063,270号、Yukimotoらの米国特許第5,011,900号、及びSuzukiらの米国特許第5,650,467号に開示されたものであり、これらは全て参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。
【0010】
より好ましくは、オキシアルキレンポリマー類は分子あたり少なくとも1つの反応性シリコン基を含む。本発明で使用出来るオキシアルキレンポリマーは、式(1)で表される分子鎖を有するポリマーを含む。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、Rは2〜4個、好ましくは2〜3個の炭素原子を有する2価アルキレン基を表し、nは繰り返し単位の数を表す。該オキシアルキレンポリマーは直鎖若しくは分岐構造を有していてもよく、又はその混合構造を有していてもよい。入手の容易さという観点からは、式(2)で表される繰り返し単位を有するオキシアルキレンポリマーが好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
該ポリマーは他のモノマー単位を含んでいてもよいが、式(1)のモノマー単位などのオキシアルキレンモノマー単位を好ましくは少なくとも約50重量パーセント、より好ましくは約80重量パーセント以上、さらに好ましくは約90重量パーセント以上含み、最も好ましくはすべてのモノマー単位が式(1)記載のようなオキシアルキレン単位である。
【0015】
「反応性ケイ素基」又は「シラノール縮合し得る反応性シラン」という用語は、加水分解性基又は水酸基がケイ素原子に結合しており、シラノール縮合反応により架橋し得るケイ素含有基を意味する。好ましい反応性ケイ素基は式(3)で表される。
【0016】
【化3】

【0017】
式中、R及びRはそれぞれ1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基、又は(R′)SiO−で表されるトリオルガノシロキシ基を表し、ここで、3個のR′基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ1〜20個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表し、R又はR基がそれぞれ2またはそれ以上存在する場合、R及びR基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、またRはRと同一でも異なっていてもよく、Xはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を表し、aはそれぞれ独立に0、1、2又は3であり、bはそれぞれ独立に0、1又は2であり、mは0又は約1〜約19の整数を表し、a及びbはa+Σb≧1の関係を満たすように選択される。
【0018】
Xで表される加水分解性基は特に限定されず、通常の加水分解性基から選択される。好ましい加水分解性基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基が挙げられる。より好ましいものとしては、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基が挙げられる。アルコキシ基は加水分解性が穏やかであり、取り扱いが簡便な為、より好ましく、メトキシ又はエトキシ基が最も好ましい。1〜3個の水酸基又は加水分解性基が1個のケイ素原子に結合してもよく、(a+Σb)は1〜5が好ましい。反応性ケイ素基あたり2個以上の水酸基又は加水分解性基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。該反応性ケイ素基は1個以上のケイ素原子を有していてもよい。ケイ素原子が連結してシロキサン結合を形成している反応性ケイ素基は20個ものケイ素原子を有していてもよい。入手の容易さという観点からは、下記式(4)で表される反応性ケイ素基が好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
式中、R、X、及びaは上記定義と同じである。Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は式(R′)SiO−(ただしR′は上記定義と同じである。)のトリオルガノシロキシ基が好ましい。R、R及びR′としては、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジル基がより好ましい。R、R及びR′としてはメチル基が最も好ましい。
【0021】
シラン官能性プレポリマーは、分子あたり、少なくとも1個の、好ましくは約1.1〜約6個の反応性ケイ素基を含む。分子あたりの反応性ケイ素基の数が1未満である場合、該ポリマーは不十分な硬化性を示し、満足すべきゴム様の弾力性を得られない。該反応性ケイ素基は、該シラン官能性プレポリマー分子鎖の末端又は内部のどちらに配置してもよい。分子末端部に反応性ケイ素基を有するシラン官能性プレポリマーは、高い引張強度及び高い伸び率を有するゴム様の硬化生成物を生じ易い。
【0022】
ある態様においては、接着剤組成物に用いられる柔軟性ポリマーは、ポリオールを、ここに記載されたように、加水分解性部分を結合した少なくとも1個のシラン部分を有するイソシアナトシランと接触させることによって調製される、シリル末端プレポリマーである。この反応は、該ポリオールの水酸基部分が該イソシアナトシランのイソシアネート部分と反応し、ポリオールに末端シラン部分が配置されるような条件下で行われる。シラン官能性プレポリマーの調製に用いることが出来るポリオールには、接着剤及びエラストマー用途に有用なポリウレタンプレポリマーを調製する為に有用であるポリオールが含まれ、該ポリオールは当業者に周知である。Bhatらの米国特許第5,672,652号(第4段、5〜60行参照。当該部分は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。)においては、該シラン末端プレポリマーの調製に有用な好ましいポリオールが開示されている。
【0023】
ある態様においては、該シラン官能性プレポリマーの調製に用いられるポリオールは高分子量のポリオールであり、最初に炭酸塩の対イオンを有するカルシウムを含んだ触媒及び炭素数6〜10のアルカン酸存在下、活性水素原子を含まない溶媒内において、1種以上の開始剤を1種以上のアルキレンオキシドと接触させることを含む工程で調製される(McGrawらの米国特許第6,255,434号における開示。参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。)。好ましくは、該工程は、約1,000〜約20,000当量、約1.5以下の多分散性、及び約0〜約2,000百万分率(ppm)の残留カルシウム濃度を有するポリオールが調製されるように行われる。好ましくは、該工程は使用する触媒の量を十分にして行われ、反応完了時にポリオール中に残る残留触媒が約0ppm以上、好ましくは約1ppm以上、より好ましくは約200ppm以上、さらに好ましくは約300ppm以上、及び最も好ましくは約400ppm以上であり、好ましくは約2,000ppm以下、より好ましくは約1,000ppm以下、さらに好ましくは約800ppm以下、及び最も好ましくは約400ppm以下であるように行われる。いくつかの態様においては、触媒がさらなる反応に不要である場合及び触媒が最終的な接着剤の特性に影響し得る場合、すべての残留触媒を除去することが望ましい場合がある。複金属シアン化物触媒を用いて調製されたポリオキシアルキレンを主成分とするポリエーテルポリオール類も本発明において使用することが出来る。それらは不飽和度が低い為、特に魅力的である。
【0024】
本発明で用いられるオキシアルキレンポリオール類(ポリエーテルポリオール類)は、好ましくは重量平均分子量が約1,000以上、より好ましくは約2,000以上、さらに好ましくは約3,000以上、さらになお好ましくは約6,000以上、及び最も好ましくは約10,000以上である。本発明で用いられるオキシアルキレンポリオールは、好ましくは重量平均分子量が約50,000以下、より好ましくは約40,000以下、さらに好ましくは約30,000以下、及び最も好ましくは約25,000以下である。該オキシアルキレンポリオールは、好ましくは約1.5以下、及びより好ましくは約1.2以下の多分散性を示す。該オキシアルキレンポリオール類はまた、好ましくはポリオールのグラムあたり約0.04ミリ当量以下、及びより好ましくはポリオールのグラムあたり約0.02ミリ当量以下の低い不飽和度を示すことが好ましい。
【0025】
ここで有用なポリオレフィン骨格には、柔軟な性質を持つオレフィン類に由来するあらゆるポリマー鎖が含まれる。ここで使われる柔軟性とは、ポリマーが20℃以下のガラス転移温度を示すことを意味する。該ポリマー鎖を調製する為に使用されるオレフィン類には、好ましくは1個以上の二重結合を有する炭素数1〜12の直鎖及び分岐鎖化合物、及びその混合物が含まれる。該ポリマー鎖を調製する為に使用されるオレフィン類は、より好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、オクテン、ブタジエン、イソプレン及びそれらの混合物である。有用なポリオール類としてはまた、ポリオレフィン骨格及び末端水酸基を有するポリマー類が含まれる。このようなポリオール類の例としては、KRATONTMLiquid L−2203ポリマーのような末端水酸基を有するKRATONTMポリエチレン/ブチレンポリマーがある。
【0026】
シラン官能性プレポリマーの骨格がオキシアルキレンポリエーテル又はポリオレフィンであり、そこにケイ素部分が結合しているある態様においては、シラン部分は以下に記載されるように該骨格に結合されてもよい。不飽和な柔軟性ポリマーは、ケイ素(このケイ素部分もまた不飽和である1個以上の炭素鎖を有する)に結合した水素又は水酸基部分を有する化合物とヒドロシリル化反応によって不飽和部位で反応できる。この反応は、Kawakuboの米国特許第4,788,254号、第12段、38〜61行、Isayamaらの米国特許第3,971,751号、Iwakiriらの米国特許第5,223,597号、Hiroseらの米国特許第4,923,927号、Iwaharaらの米国特許第5,409,995号及びIwaharaらの米国特許第5,567,833号に記載されているものであり、参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。
【0027】
ある態様においては、前記ポリオール類をイソシアナトシランと反応させて反応性シリコーン官能性プレポリマー類を調製してもよい。このようなイソシアナトシランには加水分解性基が結合したシラン基が必要である。本発明において有用なイソシアナトシラン類はKawakuboらの米国特許第4,618,656号、第3段、24〜34行に記載されており、参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。好ましくは、このようなイソシアナトシラン類は式(5)に相当する。
【0028】
【化5】

【0029】
式中、a、R及びXは上記定義の通りである。Zはそれぞれ独立に炭素数1〜40の2価ヒドロカルビル部分である。Zは好ましくは炭素数1〜20の2価ヒドロカルビル部分、より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキレン、及び最も好ましくはメチレンである。
【0030】
ポリオールのオルガノ官能性シランとの反応は、Rizkらの米国特許第4,625,012号(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)に開示されているような従来の工程を用いて行うことができる。McGrawらの米国特許第6,255,434号に開示されているようにカルシウム触媒を用いて調製された高分子量ポリオール類を使用することにより、さらなる触媒を添加すること無く、イソシアナトシラン類を該ポリオール類と反応することによって、シラン末端ポリエーテル類を調製出来る。上記のポリオール生成反応手順からの残留カルシウム触媒は、該反応を触媒するのに十分である。所望により、Rizkらの米国特許第4,625,012号、第5段、14〜23行(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)に開示されているような標準的なポリウレタン触媒を添加してもよい。高分子量のポリオールが用いられる場合、ポリオールの水酸基のすべてと反応するのに十分な量のイソシアナトシランが使用されることが好ましい。この態様においては、生成したプレポリマーは優れた物理的特性と安定性を示す。用いられるポリオールが低分子量ポリオールである場合、調製されたプレポリマー内にいくらかの残余水酸基部分を有する生成物が生ずるように、水酸基部分に対して化学量論量未満のイソシアナトシランを用いることが望ましい。これにより、より良好な硬化時の物理的特性を有する生成物が生ずる。この態様においては、水酸基部分の、イソシアナトシラン中のイソシアネート部分に対する比率は、好ましくは約0.75:1.0〜0.95:1.0である。他の態様においては、ポリマーは、ポリウレタンを主成分とした、加水分解性シラン基を有するポリマーである。このような物質はChangの米国特許第4,622,369号及びPohlの米国特許第4,645,816号に開示されている(当該部位は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。
【0031】
シラン官能性プレポリマーは、接着剤がガラスを他の被着体、例えば金属、プラスチック、複合材料又はグラスファイバーなどに接着し得るのに十分な量で接着剤組成物中に存在する。好ましくは、被着体は被覆(塗装)されており、より好ましくは、被着体はアクリルメラミンシラン変性塗料、メラミンカルバメート塗料、2液ウレタン塗料、又は酸性エポキシ硬化塗料などの耐酸性塗料で塗装されている。本発明の接着剤は特に、窓をウレタンアクリルメラミン及びメラミンカルバメート塗料に接着するのに有効である。好ましくは、シラン官能性プレポリマーは、接着剤100重量部に対して約1重量部以上、より好ましくは約10重量部以上、さらに好ましくは約20重量部以上、及び最も好ましくは約30重量部以上存在する。好ましくは、該シラン官能性プレポリマーは接着剤100重量部に対して約70重量部以下、より好ましくは約60重量部以下、最も好ましくは約50重量部以下存在する。
【0032】
本発明のシステムには、金属、被覆プラスチック及び/又はガラスなどの非多孔性表面への接着に有用な接着剤での使用の為に考案された、あらゆるイソシアネート官能性プレポリマーが含まれる。好ましくは、これらはイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマー類である。このようなイソシアネート官能性プレポリマー類を有する有用な接着剤システムの例は、Bergerらの米国特許第4,374,237号、Rizkらの米国特許第4,687,533号、Rizkらの米国特許第4,780,520号、Hungの米国特許第5,063,269号、Chiaoの米国特許第5,623,044号、Bhatの米国特許第5,603,798号、Hsiehの米国特許第5,852,137号、Bhatの米国特許第5,976,305号、米国特許第5,852,137号、Wuの米国特許第6,512,033号に開示されている(これらの当該部分は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。
【0033】
本発明で使用されるイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマー類は、ポリウレタン接着剤組成物中に用いられる従来のプレポリマー類でもよい。好ましい態様においては、該イソシアネート官能性プレポリマーは、イソシアネート官能性と共にシラン官能性も含んでいる。シラン官能性を有するポリウレタンプレポリマーの調製は当業者に公知である。例えば、イソシアネート部分と反応性である活性水素原子を有するシランは、プレポリマーの末端イソシアネート部分と反応してもよい。このようなシランは、好ましくはメルカプトシラン又はアミノシラン、より好ましくはメルカプトトリアルコキシシラン又はアミノトリアルコキシシランである。このような反応生成物は米国特許第4,374,237号及び第4,345,053号に開示されている(当該部分は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。さらに別の例では、イソシアネート部分と反応性である活性水素部分を有するシランは、プレポリマー調製中にこのようなシランを出発原料と反応させることにより、該プレポリマーの骨格に対し反応させてもよい。骨格にシランを含むプレポリマーの調製工程は米国特許第4,625,012号に開示されている(当該部分は参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。活性水素部分を有するこのようなシランは、ポリイソシアネートと反応してプレポリマーと混合する付加物を生成するか、又はポリイソシアネート、及びイソシアネート部分と反応性の、平均で1種よりも多い部分を有する化合物と反応してもよい。好ましくは、該付加物は、米国特許第5,623,044号に記載されている第二アミノ又はメルカプトアルコキシシラン及びポリイソシアネートの反応生成物である(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。シラン官能性を有するイソシアネート官能性プレポリマーはシラン官能性を有しないプレポリマーと混合してもよい。好ましいイソシアネート官能性プレポリマー類には、平均で少なくとも約2.0のイソシアネート官能価及び少なくとも約2,000の分子量を有するものが含まれる。好ましくは、該プレポリマーの平均イソシアネート官能価は少なくとも約2.2であり、より好ましくは少なくとも約2.4である。好ましくは、イソシアネート官能価は約4.0以下、より好ましくは約3.5以下、最も好ましくは約3.0以下である。好ましくは、該プレポリマーの重量平均分子量は少なくとも約2,500、及びより好ましくは少なくとも約3,000であり、また、好ましくは約40,000以下、より好ましくは約20,000以下、さらに好ましくは約15,000以下、及び最も好ましくは約10,000以下である。該プレポリマーは、どのような適切な方法により調製されてもよく、例えば少なくとも2個のイソシアネート反応性基を含むイソシアネート反応性化合物を、対応するプレポリマーを生成するのに十分な反応条件下で、過剰な化学量論量のポリイソシアネートと反応させることによって調製されてもよい。Hsiehらの米国特許第5,852,137号、第4段、65行〜第5段、7行(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)を参照のこと。該プレポリマーを調製するのに使用される好ましいポリイソシアネート類はHsiehらの米国特許第5,852,137号、第2段、40行〜第3段、45行(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)に開示されている。好ましくは、該プレポリマー内のイソシアネート含有量は約0.1重量パーセント以上、より好ましくは約1.0重量パーセント以上、及び最も好ましくは約1.2パーセント以上である。好ましくは、該プレポリマー内のイソシアネート含有量は約10重量パーセント以下、より好ましくは約5.0パーセント以下、及び最も好ましくは約2.0パーセント以下である。
【0034】
イソシアネート官能性プレポリマーは、接着剤がガラス又は被覆されたプラスチックを所望の被着体、例えば金属、プラスチック、グラスファイバー又は複合材料(耐酸性塗料で被覆された被着体を含む)などに接着し得るのに十分な量で接着剤組成物中に存在する。好ましくは、該イソシアネート官能性プレポリマーは、接着剤組成物100重量部に対して約1重量部以上、より好ましくは約2重量部以上、及び最も好ましくは約3重量部以上存在する。好ましくは、該イソシアネート官能性プレポリマーは、接着剤組成物100重量部に対して約70重量部以下、より好ましくは約20重量部以下、及び最も好ましくは約10重量部以下存在する。
【0035】
該接着剤組成物はさらにシラノール縮合反応を触媒する1種以上の触媒を含んでいてもよい。シラノール縮合反応に有用な触媒は当業者に周知である。好ましい触媒は有機スズ化合物であり、スズII及びスズIV化合物が特に好ましい。シラノール縮合反応に有用なスズ化合物の例としては、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート又はジオクチルスズジアセテートなどの有機カルボン酸類のジアルキルスズ(IV)塩類;スズオクチレート又はスズナフテネートなどのスズカルボン酸塩類;ジアルキルスズ酸化物類及びフタル酸エステル類又はアルカンジオン類の反応生成物;ジブチルスズジアセチルアセトネート(通常、ジブチルスズアセチルアセトネートとも称される)などのジアルキルスズジアセチルアセトネート類;ジブチルスズ酸化物などのジアルキルスズ酸化物類;スズ(II)ジアセテート、スズ(II)ジオクタノエート、スズ(II)ジエチルヘキサノエート又はスズ(II)ジラウレートなどの有機カルボン酸類のスズ(II)塩類;ジメチルスズ二塩化物などのジアルキルスズ(IV)二ハロゲン化物;及び第一スズオクトエート、第一スズオレアート、第一スズアセテート又は第一スズラウレートなどのカルボン酸類の第一スズ塩類等が挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は個々にまたは2以上の組み合わせで用いてもよい。好ましい触媒は、ジアルキルスズジカルボン酸類、ジアルキルスズ酸化物類、ジアルキルビス(アセチルアセトネート)、ジアルキルスズ酸化物類及びフタル酸エステル類又はアルカンジオン類の反応生成物、ジアルキルスズハロゲン化物類及びジアルキルスズ酸化物類である。より好ましい触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、スズオクチレート、スズナフテネート、ジブチルスズ酸化物及びフタル酸エステル又はペンタンジオンの反応生成物、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズ酸化物、及びジメチルスズ塩化物等である。調製物に用いられる触媒の量は、硬化後の接着剤劣化を引き起こす事無く接着剤の硬化を促進する量である。接着剤調製物中のシラノール縮合触媒の量は、接着剤組成物100重量部に対して好ましくは約0.01重量部以上、より好ましくは約0.1重量部以上、及び最も好ましくは約0.2重量部以上であり、また好ましくは約5重量部以下、より好ましくは約1.0重量部以下、及び最も好ましくは約0.4重量部以下である。
【0036】
該接着剤組成物はさらにヒドロカルビルリン酸エステル類及び/又はヒドロカルビルスルホン酸エステル類を含む1以上のリガンドを有する、1以上のチタネート類又はジルコネート類を含んでいてもよい。該チタネート類及びジルコネート類は、被覆された被着体への接着剤の接着速度及び硬化速度を速める。有用なチタネート類及びジルコネート類は、ヒドロカルビルリン酸エステル及び/又はヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む約1〜約3個のリガンド、及びさらに不飽和及び酸素、窒素及び硫黄といったヘテロ原子を含んでもよい約1〜3個のヒドロカルビルリガンドを含む。好ましくは、該チタネート類及びジルコネート類は、ヒドロカルビルリン酸エステル類及び/又はヒドロカルビルスルホン酸エステル類を含む約2〜約3個のリガンド、より好ましくは3個のこのようなリガンドを含み、また約1〜2個のヒドロカルビルリガンド、より好ましくは1個のヒドロカルビルリガンドを含む。好ましいジルコネート類及びチタネート類は式6に相当する。
【0037】
【化6】

【0038】
式中、Mはそれぞれ独立にTi又はZrを表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜20のアルカリール基を表し、ここで該アルキル又はアルカリール基は1以上の酸素原子または不飽和を含んでいても良く、
はそれぞれ独立に
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
又は
【0042】
【化9】

【0043】
を表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜12のアルカリール基を表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜20のアルカリール基を表し、
pはそれぞれ独立に1又は2を表し、及び
qはそれぞれ独立に2又は3を表し、
pとqの和は4である。
好ましくは、MはTiを表す。より好ましくは、Rはそれぞれ独立にプロピル基又は式
【0044】
【化10】

【0045】
に相当する基を表す。
より好ましくは、R
【0046】
【化11】

【0047】
を表す。
好ましくは、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基、より好ましくは炭素数8〜10のアルキル基、また最も好ましくはオクチル基を表す。
好ましくは、R はそれぞれ独立に炭素数 12−20 のアルカリル基を表し、またより好ましくは R
【0048】
【化12】

【0049】
を表す。
【0050】
好ましくは、pはそれぞれ独立に1又は2、また最も好ましくは1を表す。好ましくは、qはそれぞれ独立に2又は3、また最も好ましくは3を表す。好ましいチタネート類及びジルコネート類には、イソプロピルトリ(ジオクチル)ピロフォスファトチタネート(ケンリッチケミカル社(Kenrich Chemicals)から名称KR38Sで入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネート(ケンリッチケミカル社から商標及び名称LICA 09で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリオクチルホスファトチタネート(ケンリッチケミカル社から商標及び名称LICA 12で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート(ケンリッチケミカル社から名称NZ 09で入手可能)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート(ケンリッチケミカル社から名称NZ 12で入手可能)、及びネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート(ケンリッチケミカル社から名称NZ 38で入手可能)が含まれる。最も好ましいチタネートはトリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネート(ケンリッチケミカル社から名称LICA 09で入手可能)である。チタネート類はジルコネート類よりも好ましい。該チタネート又はジルコネートは、被覆された被着体への接着剤の接着(結合)速度及び硬化速度を上げるのに十分な量存在する。該チタネートは接着剤100重量部に対して約0.05重量部以上の量存在し、最も好ましくは0.1重量部以上の量存在する。該チタネートは接着剤100重量部に対して1.0重量部以下、より好ましくは0.4重量部以下、及び最も好ましくは0.3重量部以下の量存在する。
【0051】
該接着剤組成物はさらに、ポリマーと混和性であり、下塗りされていない被覆被着体、ガラス表面及び/又はガラス表面に位置するセラミックフリットの表面への接着剤の接着を促進する、無水の強有機酸を含んでいてもよい。ポリマーと混和性であるとは、該有機酸が容易にポリマーと混和することを意味する。ここで用いられる無水とは、微量以下の水しか含んでいない物質を表し、特にその水の量がポリマーに対し有意な硬化を引き起こす量よりも少ないことを表す。硬化の程度は接着剤の粘度増加によって測定することが出来る。好ましくは、保管中の粘度増加は、水を基本的に含まない不活性環境下、54℃、3日間の期間にわたって約50パーセント未満、より好ましくは約30パーセント未満、及び最も好ましくは約20パーセント未満である。ある好ましい態様では、前記強有機酸は有機スルホン酸又は有機リン酸である。好ましくは、該スルホン酸は式7
【0052】
【化13】

【0053】
に相当する。
好ましくは、該リン酸は式8
【0054】
【化14】

【0055】
に相当する。
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル又は炭素数7〜30のアルカリール基を表す。Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜12のアルキル基で置換されたアリール基を表す。rはそれぞれ独立に1又は2を表す。sはそれぞれ独立に1又は2を表す。rとsの和は3である。好ましくは、Rはそれぞれ独立にアルキル基で置換されたベンジル又はアルキル基で置換されたナフチルである。好ましくは、rは2を表す。好ましくは、sは1を表す。好ましくは、Rはそれぞれ独立にフェニル基、ブチル基又はメチル基を表す。より好ましいスルホン酸類はドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸である。最も好ましいスルホン酸はドデシルベンゼンスルホン酸である。より好ましいリン酸類はリン酸ジブチル及びリン酸ジフェニルである。
【0056】
この有機酸は、接着剤組成物が、塗装された被着体、及び好ましくはガラス又はガラス上に位置するセラミックエナメルに、より好ましくはプライマーによる前処理の必要無く接着し得るのに十分な量存在する。該有機酸は、好ましくは接着剤100重量部に対し約0.1重量部以上、及び最も好ましくは約0.2重量部以上存在する。好ましくは、該有機酸は接着剤100重量部に対し約1.0重量部以下、より好ましくは約0.8重量部以下、及び最も好ましくは約0.6重量部以下存在する。
【0057】
該接着剤はまた、イソシアネート部分と水又は活性水素含有化合物との反応を触媒する触媒を含んでいてもよい。該触媒は、イソシアネート部分と水又は活性水素含有化合物との反応の為の、当業者に公知のどのような有機金属触媒でもよい。好ましい触媒には有機スズ化合物及び金属アルカノエート類が含まれる。有用な触媒に含まれるのは、アルキルスズ酸化物類、第一スズアルカノエート類、ジアルキルスズカルボキシレート類及びスズメルカプチド類等の有機スズ化合物である。第一スズアルカノエート類には、第一スズオクトエートが含まれる。アルキルスズ酸化物類には、ジブチルスズ酸化物類及びその誘導体などのジアルキルスズ酸化物類が含まれる。該有機スズ触媒は好ましくはジアルキルスズジカルボキシレート又はジアルキルスズジメルカプチドである。該ジアルキルスズジカルボキシレートは好ましくは式(ROC(O))−Sn−(Rに相当し、式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、及び最も好ましくはメチル基を表す。総炭素原子数の少ないジアルキルスズジカルボキシレートは、本発明の組成物では、より活性が高い触媒である為、好ましい。好ましいジアルキルジカルボキシレート類には、1,1−ジメチルスズジラウレート、1,1−ジブチルスズジアセテート、及び1,1−ジメチルジマレエートが含まれる。好ましい金属アルカノエート類はビスマスアルカノエートであり、ビスマスオクトエート又はビスマスネオデカノエートがより好ましい。有機スズ触媒は、イソシアネート部分の硬化速度を上げるのに十分な量存在し、一方で硬化した接着剤の経時的劣化を該触媒が触媒しない量存在する。該有機スズ触媒は、接着剤100部に対し約60ppm以上、より好ましくは120ppm以上の量存在する。該有機スズ触媒は接着剤100部に対し約1.0パーセント以下、より好ましくは0.5重量パーセント以下、及び最も好ましくは0.1重量パーセント以下存在する。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、さらにシラン接着促進剤を含んでいてもよい。好ましくは、これらのシラン化合物はイソシアネート及び加水分解性シリコーン部分を有する。これらの化合物は望ましい被覆システムへの接着を行うのに十分な量存在する。有用なイソシアナトシラン類は上に記載した式5によって示されている。好ましいイソシアナトシラン類に含まれるのは、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、及びガンマ−イソシアナトプロピルトリエトキシシランである。該イソシアナトシラン類は好ましくは接着剤100部に対し約0.5重量部以上、より好ましくは約3.5重量部以上、及び最も好ましくは約5重量部以上存在する。該イソシアナトシラン類は接着剤100部に対し約10重量部以下、より好ましくは約8重量部以下、及び最も好ましくは約6重量部以下存在する。
【0059】
該組成物はさらにケイ素含有脱水化合物を含んでもよい。米国特許第4,977,228号では、第10段、27行〜第11段、12行において、ケイ素含有脱水化合物について開示されている(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)。ケイ素原子に3又は4個の加水分解性基を結合して有する該ケイ素含有脱水化合物は、本発明の硬化性ポリマー組成物の貯蔵安定性を改善する為、即ち貯蔵時の粘度増大又はゲル化を防止する為に使用される。該ケイ素含有化合物のケイ素原子に結合している加水分解性基は、ケイ素含有反応性基と関連して上で示したものと同一であってもよい。該脱水化合物の加水分解性基は、ケイ素含有反応性基のものよりも反応性が高いものが好ましい。該ケイ素含有化合物のケイ素原子に結合している加水分解性基の数が3未満の場合、貯蔵安定性は十分に改善されない。組成物の貯蔵安定性は該ケイ素含有脱水化合物の加水分解性基が組成物中の水と優先的に反応することによって改善される為である。
【0060】
好ましくは、該ケイ素含有脱水化合物は式9に相当する。
【0061】
【化15】

【0062】
式中、R10はそれぞれ独立に置換又は非置換の1価炭化水素基を表し、Xは加水分解性基であってそれぞれのXが同一でも異なっていてもよく、nは3又は4を表す。R10は好ましくは1〜18の炭素原子を有する置換又は非置換の1価炭化水素基を表す。より好ましくは、R10は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基等を表す。より好ましくは、R10は置換又は非置換のメチル基、エチル基、ビニル基、メタクリルオキシプロピル基、フェニル基、メチルフェニル基等を表す。加水分解性基Xとしては、アルコキシ基が好ましい。好ましいケイ素含有脱水化合物の具体例としては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルシリケート、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、メチルジイソプロペニルオキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリル−オキシプロピルトリメトキシシラン、メチルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、γ−アミノ−プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプト−プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、ビス(ジメチルケトキシメート)−メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)−メチルシラン等が含まれる。これらの中でも、アルキルトリメトキシシラン類(メチルトリメトキシシランなど)及びビニルトリメトキシシランが容易に入手出来、より良好な脱水効果を有する為、好ましい。該ケイ素含有脱水化合物は、好ましくは貯蔵中に反応性成分の反応を防止するのに十分な量存在する。好ましくは、該ケイ素含有脱水化合物は接着剤組成物の総量100重量部に対し約0.01重量部以上、好ましくは約0.1重量部以上の量存在する。好ましくは、該ケイ素含有脱水化合物は接着剤組成物の総量100重量部に対し約2重量部以下、好ましくは約1重量部以下の量存在する。該ケイ素含有脱水化合物の量が上記下限を下回った場合、この硬化性ポリマー組成物の貯蔵安定性は十分に改善されず、またその量が上記上限を上回った場合、組成物の硬化速度(curing rate)が減少する。
【0063】
接着剤組成物は当業者に周知の接着剤調製物で一般的に用いられる他の添加物を含有していてもよい。本発明の接着剤は、接着剤組成物において用いられることが周知の充填剤を用いて製剤してもよい。このような材料の添加により、粘度、流動度、レオロジー(rheology)などの物理的特性を改変することが出来る。しかし、プレポリマーの水分感受性基の早期加水分解を防止するため、該充填剤を混合前に十分乾燥させることが好ましい。好ましい有用な充填剤には補強充填剤が含まれる。好ましい補強充填剤は当業者に周知であり、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、表面処理シリカ、酸化チタン、ヒュームドシリカ、及びタルクが含まれる。最も好ましい補強充填剤はカーボンブラックである。ある態様においては2種以上の補強充填剤が使用されてもよく、うち一種はカーボンブラックであり、接着剤を望ましい黒色にする為に十分な量のカーボンブラックが使用される。好ましくは、唯一使用される補強充填剤はカーボンブラックである。該補強充填剤は接着剤の強度を高め、接着剤にチキソトロピー性を与えるのに十分な量が使用される。好ましくは、該補強充填剤は、接着剤組成物100重量部に対し約1重量部以上、より好ましくは約15重量部以上、さらに好ましくは約20重量部以上、及び最も好ましくは約25重量部以上の量存在する。好ましくは、該補強充填剤は、接着剤組成物100重量部に対し約40重量部以下、より好ましくは約35重量部以下、及び最も好ましくは約33重量部以下の量存在する。
【0064】
接着剤組成物中の任意の原料の例としては、粘土が挙げられる。本発明で有用な好ましい粘土には、カオリン、表面処理カオリン、焼成カオリン、ケイ酸アルミニウム類、及び表面処理無水ケイ酸アルミニウム類が含まれる。これら粘土は、ポンプで注入可能な接着剤の製剤を促進するどのような形態でも使用出来る。好ましくは、該粘土は粉砕粉、噴霧乾燥したビーズ又は微粉砕した粒子の形態である。粘土は接着剤組成物100重量部に対し約0重量部以上、より好ましくは約1重量部以上、及びさらに好ましくは約6重量部以上の量で用いられても良い。好ましくは、該粘土は接着剤組成物100重量部に対し約30重量部以下、及びより好ましくは約20重量部以下の量で用いられる。
【0065】
本発明の接着剤組成物はさらにレオロジー特性を望ましい稠度に改変するような可塑剤を含んでもよい。このような原料は好ましくは水を含まず、反応性基に対して不活性であり、接着剤に用いられるプレポリマーと相容性である。適した可塑剤は当該分野に於いて周知であり、好ましい可塑剤としては、フタル酸ジアルキル、「HB−40」として市販の部分的に水素化したテルペンなどのフタル酸アルキル類;リン酸トリオクチル;エポキシ可塑剤;トルエン−スルファミド;クロロパラフィン類;アジピン酸エステル類;ひまし油;トルエン;キシレン;n−メチルピロリジノン;及びアルキルナフタレン類が含まれる。より好ましい可塑剤はフタレート類である。さらに好ましい可塑剤はフタル酸ジアルキルである。最も好ましいものはアルキル基が炭素数7、9及び11混合直鎖アルキル基;フタル酸ジイソノニル及びフタル酸ジイソデシルであるフタレート類である。接着剤組成物中の可塑剤の量は、触媒及び他の成分をシステム中で拡散させ、望ましい粘度を与えるのに十分な望ましいレオロジー特性を与える量である。ここに開示されている量には、プレポリマーの調製中及び接着剤の配合中に添加される量が含まれる。好ましくは、可塑剤は、接着剤組成物中で、接着剤組成物100重量部に対し約0重量部以上、より好ましくは約5重量部以上、さらに好ましくは約10重量部以上、及び最も好ましくは約15重量部以上の量で用いられる。該可塑剤は好ましくは接着剤組成物100重量部に対し約35重量部以下、より好ましくは約30重量部以下、及び最も好ましくは約25重量部以下の量で用いられる。
【0066】
該接着剤組成物はさらに所望によりチキソトロープを含んでいてもよい。このようなチキソトロープは当業者に周知であり、アルミナ、石灰石、タルク、酸化亜鉛類、硫黄酸化物類、炭酸カルシウム、パーライト、スレート粉、塩(NaCl)、及びシクロデキストリンが含まれる。該チキソトロープは望ましいレオロジー特性を与えるのに十分な量が組成物の接着剤に添加されてもよい。好ましくは、該チキソトロープは、接着剤組成物100重量部に対し約0重量部以上、及びより好ましくは約1重量部以上の量で存在する。好ましくは、所望により含まれる該チキソトロープは、接着剤組成物100重量部に対し約10重量部以下、及びより好ましくは約2重量部以下の量で存在する。
【0067】
ここで、接着剤組成物の成分に対する全ての重量部は接着剤組成物の総重量部100に対するものであり、全ての重量パーセントは接着剤組成物の重量に対するものである。本発明のシーラント組成物は当該分野に於いて周知の方法で成分を混合し、処方してもよい。一般に、該成分は適切なミキサー中で混合される。このような混合は、早期反応を防止する為、不活性雰囲気下において大気水分の非存在下で行われることが好ましい。該混合物を容易に混合し、扱えるようにする為に、可塑剤の一部又は全てをイソシアネート官能性プレポリマー調製用の反応混合物に添加するのは有効であり得る。または、該可塑剤は全成分の混合中に添加してもよい。シーラント組成物は、大気水分から保護されるように、配合後すぐに適した容器に詰められる。大気水分との接触はプレポリマーの早期架橋を引き起こす。
【0068】
本発明の接着剤組成物は、ガラス又は耐摩耗性塗料で被覆されたプラスチックを他の被着体に共に接着する為に使われることが好ましい。該接着剤組成物をガラス又はプラスチック表面又は他の被着体、好ましくはガラス又はプラスチック表面に塗布し、その後第2の被着体と接触させる。その後、該接着剤を硬化条件に曝露する。ある好ましい態様においては、他の被着体はプラスチック、金属、グラスファイバー又は複合材料の被着体であり、それらは任意に被覆、即ち塗装されていてもよい。本手法は特に耐酸性塗料で塗装された被着体に対して有効である。好ましい態様においては、接着剤を使用する表面は使用前に清浄化される(例えば米国特許第4,525,511号、第3,707,521号及び第3,779,794号参照。参照によりこの明細書に組み入れられたものとする。)。ガラスは接着剤組成物を使用する表面を清浄化することによって準備される。これを行うのに布ぶき清浄(solvent wipe)を用いてもよい。一般的に、布又は他の道具を適当な溶剤と共に用いて表面を清浄化する。その後、窓の接着剤を塗布する部位にプライマーを塗布する。ガラスプライマー及びこのようなプライマーの塗布方法は周知である。典型的には、該プライマーはブラシを使用し、又はロボットによって塗布される。好ましい態様においては、プライマーが不要なように配合された接着剤の場合、プライマーは不要である。プライマーがガラス表面に用いられる場合、好ましいプライマー組成物は、ポリウレタン接着剤システムで有効などのような公知のガラスプライマーシステムであってもよい。このようなシステムの例は、ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)から入手可能なBETASEALTM43518プライマー、BETASEALTM43520Aプライマー、BETASEALTM43526プライマー及びBETASEALTM16100プライマーである。本発明の好ましい態様においては、被着体は建築物又は自動車である。接着剤は好ましくは被着体に接着するガラス又は耐摩耗性塗装プラスチック窓の部分にビード(bead)状に塗布される。該ビードは当業者に周知のどのような方法によって塗布されてもよい。ある態様においては、該ビードはコーキングガン又は同様なタイプの手動塗布装置を用いて塗布されてもよい。他の態様では、該ビードはロボット押出器(robotic extrusion apparatus)のような押出器(extrusion apparatus)によって塗布されてもよい。接着剤は接着する構造物と接触する窓の部位に塗布される。ある好ましい態様においては、該接着剤は窓の片面の周縁部付近に塗布される。典型的には、該接着剤はビードの形態で窓の周縁部付近に塗布される。自動車のフロントガラスについては、ビード接着剤は、窓周縁部付近に配置され窓表面上に位置する、フリットとして知られるセラミックエナメルの表面に塗布されてもよい。好ましくは、該ビードは断面に沿った輪郭形である。前記ガラス又はプラスチックが自動車用に設計された窓である態様においては、該ビードは自動車窓のフランジに接する該ガラス又はプラスチックの部位に塗布される。その後、窓は構造物に対し設置され、該接着剤が窓及び構造物の両方に接触する。この接触は当業者に周知の方法により行われる。具体的には、該窓は、手作業、ロボット使用等によって該構造物に設置されてもよい。一般に、本発明の接着剤は、大気水分存在下、大気温度で使用される。大気水分への曝露は接着剤の硬化を生じさせるのに十分である。硬化はさらに当業者に公知のどのような方法、例えば対流熱又はマイクロ波加熱によって硬化中のシーラントに熱を与えることで促進されてもよい。好ましくは、本発明のシーラントは約6分以上、より好ましくは約10分以上の貼り合わせ時間となるように処方される。好ましくは、貼り合わせ時間は約15分以下、及びより好ましくは約12分以下である。さらに、本発明の接着剤は、以下に記す工程によって3日後、又は23℃及び50パーセント相対湿度(RH)において約360psi(2.48MPa)以上、より好ましくは約500psi(3.45MPa)以上の重ね剪断(lap shear)を示す。好ましくは、本発明の接着剤は35分間以下の不粘着時間(tack free time)を示す。本発明のシステムは、ガラス又は耐摩耗性塗料で被覆されたプラスチックを金属又はプラスチック類のような他の被着体に接着する為に使用することができる。該プラスチックは好ましくは耐摩耗性塗料で被覆されている。該プラスチックは、透明な、ポリカーボネート、アクリル類、水素化ポリスチレン又は50パーセント超のスチレン含有量を有する水素化スチレン共役ジエンブロックコポリマーなど、どのようなプラスチックでもよい。該塗料はポリシロキサン塗料など、どんな耐摩耗性塗料を含んでもよい。好ましくは、該塗料は紫外色素遮光添加物(ultraviolet pigmented light blocking additive)を有する。好ましくは、前記ガラス又はプラスチック窓は、接着剤に接触する領域に配置された、UV光が接着剤に到達しないように遮断する為の不透明被覆を有する。
【0069】
ここに述べられる分子量は以下の手順に従い、Waters Model 590ゲル透過クロマトグラフを用いて決定される。この装置を多波長検出器及び示差屈折計に接続し、溶出容積を測定する。スチロゲル(styrogel)のカラムをサイズ排除クロマトグラフィで使用するが、これは分子量250から50,000までの分子量を決定することができる。プレポリマーの分子量はその後、テトラヒドロフランを溶出溶媒として用い、このカラムからの溶出容量を測定することにより決定する。次に、ポリスチレンポリエチレングリコールカラムから得られた分子量対溶出容量の検量線をもとに分子量を算出する。見積もられた分子量は特に断りのない限り重量平均分子量である。
【実施例】
【0070】
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明するが、特許請求の範囲を限定するものではない。特に記載されない限り、全ての部及び百分率は重量基準である。
【0071】
以下は調製したシーラントに使用された試験である。
【0072】
クイック・ナイフ接着(Quick Knife Adhesion)試験
クイック・ナイフ接着(QKA)をSAEJ1720法に従って行った。6.3mm(幅)×6.3mm(高さ)×100mm(長さ)大のシーラントビードを試験する被着体上に塗布し、このアセンブリを特定の時間、23℃、50パーセントの相対湿度条件下で硬化させる。次に、ビード端部を180度角で引き戻しながら、硬化したビードを45度角で試験する被着体までカミソリの刃で切断する。刻み目は塗装された表面上で3mmごとに付ける。接着の程度は、接着破壊(AF)及び/又は凝集破壊(CF)で評価する。AFの場合、硬化したビードは試験する被着体表面から分離されるが、CFにおいては、分離はシーラント接着剤内部で切断及び引張りの結果として生ずる。試験した被着体はそのままで使用するか、プライマーによる下塗りを行って、又はイソプロパノール(IPA)若しくはナフサ(NP)であらかじめ拭って(pre-wipe)使用してもよい。
【0073】
重ね剪断試験
約6.3mm幅、8mm高の接着剤ビードを、ガラス被着体(25mm×75mm)の全幅に沿って、下塗りされた端部より約6mmから12mm塗布する。該ガラスを、ダウ・ケミカル社より入手可能なBETASEALTM43518プライマーを含む布による塗布、清浄な布によるBETASEALTM43518プライマーの拭い去り、及びその後のダウ・ケミカル社のダウ自動車事業部門(Dow Automotive business unit)より入手可能なBETASEALTM43520Aプライマーの該ガラスへの塗布によって処理する。塗装された被着体をすぐに接着剤上に設置し、試料を23℃及び50パーセント相対湿度の状況下、3ないし7日間硬化させる。次に、この試料を、初期重ね剪断強度のためにすぐに、又はさらなる環境曝露の後に、インストロン試験機を用いて毎分1インチ(毎分2.5cm)の速度で引張った。特に記載されない限り、条件ごとに少なくとも3個の重ね剪断試料からなる一群を試験し、平均をとる。試料切断時の負荷を記録する。耐候性試験の為、試料を最初に23℃、50パーセント相対湿度の下で7日間硬化させ、その後ウェザロメーター(Weather-O-Meter)(WOM)チェンバー中に入れる。該試験チェンバーには、特に記載されない限りSAEJ1885条件が用いられる。
【0074】
粘度
ここに記載されるプレポリマーの粘度はBhatの米国特許第5,922,809号、第12段、38〜49行(参照によりこの明細書に組み入れられたものとする)に開示されている手順に従って決定される。ここに記載される接着剤の粘度はプレスフロー(press flow)(PF)を使用して決定する。プレスフローは特に記載されない限り80psi(552kPa)の圧力で0.157インチ(4mm)の開口部を20グラムの接着剤が通過する時間である。接着剤の3日間54℃熱老化進行(3 day-54℃ heat age growth)は、接着剤の3日間54℃熱処理後に増加したプレスフローを接着剤の最初のプレスフローで割ったものとして定義される。
【0075】
不粘着時間
不粘着時間を下記試験手順に従って測定する。150mm長、6mm径の接着剤ビードを23℃、50パーセント相対湿度の下で剥離紙上に置き、タイマーを始動させる。次にポリエチレンフィルムを用いて該ビードをそっと触り、ビードが不粘着性となってポリエチレンフィルムがビードとの接触後も清浄であるようになるまでに経過した時間を記録する。
【0076】
引張(tensile)及び伸び(elongation)
前記接着剤を2枚の剥離紙の間に注入し、その後3mm厚の円形にプレスする。23℃、50パーセント相対湿度の下、接着剤を7日間硬化させた後、ダイC(die C)を用いたASTM D412法に従い、毎分20インチで引張強度及び伸びを試験する。引張強度はポンド/平方インチ (psi) 単位で記録し、伸びは百分率で記録する。
【0077】
使用材料
VORANOLTM220−056ポリオールは、ダウ・ケミカル社から入手可能な、約2000の分子量(MW)及び1000の水酸基当量(EW)のポリオキシプロピレンを主成分としたジオールである。
VORANOLTM232−036ポリオールは、ダウ・ケミカル社から入手可能な、約4500の分子量(MW)及び1500の水酸基当量(EW)のポリオキシプロピレンを主成分としたトリオールである。
METACURETMT−9スズ触媒は、エア・プロダクツ・ケミカル社(Air Products Chemical)から入手可能な第一スズオクトエートである。
N,N′−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンはGEシリコーン社(GE Silicones)から入手可能である。
BETASEALTM43518プライマーはダウ・ケミカル社から入手可能なオルガノシラン含有ガラスプライマーである。
BETASEALTM43520Aプライマーはダウ・ケミカル社から入手可能なイソシアネート含有ガラスプライマーである。
BETASEALTM43526プライマーはダウ・ケミカル社から入手可能な非イソシアネート系ガラスプライマーである。
ISONATETM125Mはダウ・ケミカル社から入手可能な当量が125のジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(メチレンジフェニルジイソシアネート)(MDI)である。
SILQUESTTMA−171はGEシリコーン社から入手可能なビニルトリメトキシシランである。
DDBSAはスペクトラムケミカル社(Spectrum Chemicals)から入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸である。
SAXTM400シラン官能性プレポリマーは、株式会社カネカ(Kaneka Corporation)より入手可能な、ジメトキシメチルシリル末端基を有する分子量約20,000の三官能性ポリプロピレンオキシドポリエーテルである。
フタル酸アルキル可塑剤はBASF社(BASF Corporation)より入手可能である。
イソシアナトプロピルトリメトキシシランはGEシリコーン社より入手可能である。
LICATM09チタネート触媒はケンリッチケミカル社より入手可能なネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルチタネートである。
【0078】
ポリウレタンプレポリマーAの調製
攪拌機及び加熱ジャケットを備える2リットルのケトル(kettle)に、336.14gのVORANOLTM220−56ポリオール、487.13gのVORANOLTM232−036ポリオール、及び29.58gのフタル酸ジアルキル可塑剤を窒素保護下投入した。該反応物を、窒素下で混合物が54℃に達するまで混合及び加熱した。該混合物が54℃に達したらすぐに、45℃で用意された148.48gのジフェニルメタン4,4′−ジイソシアネート(ISONATETM125M)を加え、混合した。その後、0.07gのMETACURETMT−9スズ触媒をゆっくりと滴下した。該反応物が発熱し、反応温度がピークに達した後、該反応物を80℃から85℃の間で30分間維持した。次に、加熱装置の温度設定値を60℃にセットした。その後、463.25gのフタル酸ジアルキル及び14.20gのマロン酸ジエチルを加えた。該混合物を15分間撹拌した。その後、N,N′−ビス(3−トリメトキシプロピル)アミン(21.15g)をケトルに加え、60分間混合した。反応を停止し、窒素でパージした気密容器内にプレポリマーを貯蔵した。該プレポリマーは10,500センチポイズ(25℃)の粘度であり、1.31重量パーセントのイソシアネートを有していた。
【0079】
実施例1
630gの量のSAX400シラン官能性プレポリマー及び3gの量のSILQUESTTMA171ビニルトリメトキシシランを1ガロンのミキサーに窒素下で投入した。該混合物を真空下脱気し、5分間混合した。窒素を用いて真空を破った。90gの上記のプレポリマーA、75gのイソシアナトプロピルトリメトキシシラン及び244.5gのフタル酸アルキル可塑剤を前記ミキサーに加えた。該混合物は真空下脱気し、5分間混合した。窒素を用いて再び真空を破り、450gの乾燥カーボンブラックを加えた。徐々に真空化し、真空化の半ばで混合を開始し、充填剤を2分間ウェットアウト(wet out)させた。次に、真空バルブを完全に開き、フルバキューム(full vacuum)で20分間混合を続けた。該混合物を窒素下で平らにならした。4.5gのDDBSAを3.0gのLICATM09と共に該混合物に添加し、さらなる混合を行う前にフルバキュームを行った。該混合物を真空下でさらに10分間混合した。窒素を用いて真空を破り、接着剤組成物を密封管(sealed tube)に詰めた。生成した接着剤は30.5秒の初期プレスフローを有した。接着剤が54℃で3日間貯蔵された後のプレスフローは40.5秒であった。不粘着時間は23℃、50パーセント相対湿度において22分間であった。引張及び伸びは、上で記した試験方法に基づくとそれぞれ722psi及び706パーセントであった。
【0080】
試料を被覆金属試験片の(QKA)試験用に調製した。実施例1の接着剤ビードを4個の異なる1インチ×4インチ(2.54cm×10.2cm)寸法の被覆金属試験片上に置いた。これらの金属試験片はそれぞれ、DuPont社のGENTMIV透明塗料、DuPont社のGENTMVI透明塗料、PPG社のODCTTM8000カルバメート透明塗料及びPPG社のMACTM8000カルバメート透明塗料で被覆した。これらの試料を23℃、50パーセント相対湿度で3日間硬化させた後、(QKA)を行ったところ、全試料が100パーセント凝集破壊の破断形態を示した(接着剤ビードの破断があり、被着体表面での接着剤破断が無い)。
【0081】
実施例 1 の接着剤はプライマーを用いずにガラス試験片に接着されてもよい。4個のQKA試料を直接、ビスマス亜鉛撓み湾曲フリット(sag bent frit)を有するガラス試験片上にも調製した。被着体への接着剤塗布後、これらの試料を23℃、50パーセント相対湿度条件下に3日間置いた。1個の試料を(QKA)によって試験した。残る3個の試料はそれぞれ、QKA試験の前に、1)32℃における水浸漬10日間、2)38℃、100パーセント相対湿度下14日間、及び3)90℃、14日間という3セットの処理に曝露した。全試料は100パーセント凝集破壊の形態を示した(接着剤ビードの破断があり、被着体表面での接着剤破断が無い)。4個のQKA試料を、亜鉛エナメル撓み湾曲フリットを有するガラス試験片上に調製したこと以外は上記と同様に調製した。全試料は記載の試験において100パーセント凝集破壊(CF)を示した。
【0082】
実施例1の接着剤を用いて重ね剪断試験用の試料を調製した。重ね剪断試料の第1の被着体は1インチ×4インチ(2.54cm×10.2cm)寸法のGENTMVI被覆金属試料片であった。GENTMVI被覆金属試料片は金属試料片にDuPont社のGENTMVI透明塗料を吹き付け、310°F(154℃)で30分間焼成し、調製した。重ね剪断試料の第2の被着体は、BETASEALTM43518プライマー及び続けてBETASEALTM43520Aプライマーで下塗りした亜鉛エナメルフリットを有する1インチ×3インチのガラス試験片であった。重ね剪断試料はA、B及びCに分け、試験前にそれぞれ条件1、2及び3に置かれた。条件1においては、該重ね剪断試料は、調製後すぐに、23℃、50パーセント相対湿度に3日間保管された。条件2においては、重ね剪断試料は、初期硬化後、38℃、100パーセント相対湿度に14日間置かれた。条件3においては、重ね剪断試料は、初期硬化後、SAE J1885条件下、ウェザロメーターのチェンバー内に2,000時間置かれた。A〜Cの試料からの重ね剪断の結果を表1に示す。初期硬化とは、サンプルを反応条件への曝露前に23℃、50パーセント相対湿度下で保管したことを表す。
【0083】
PPG社のODCTTM8000カルバメート塗料で被覆し、310°F(154℃)で30分間焼成した金属試料片を使用した事以外は、試料A〜Cと同様な方法で重ね剪断試料を調製した。試料D〜Fから得られた結果を表1に示した。試料Gは、接着剤を塗布する前にBETASEALTM43518プライマー及びBETASEALTM43520Aプライマーの替わりにBETASEALTM43526プライマーでガラス試験片を下塗りしたという点を除き、試料D〜Fと同様な方法で調整した。試料Gの重ね剪断の結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例2〜3及び比較例4
表2記載の成分を用いた3種の接着剤組成物を実施例1記載の手順を用いて調製した。これらの接着剤からの(QKA)ビードを、PPG ODCTTM8000カルバメート透明塗料で被覆した金属試料片に塗布した。23℃、50パーセント相対湿度(RH)下における7日間の初期硬化後、QKA試験を行った。その結果を表2に示す。
【0086】
実施例1、実施例3及び比較例4からのQKAビードを、BETASEALTM43518プライマー及びBETASEALTM43520Aプライマーで下塗りした1インチ×6インチ(2.54cm×15.2cm)の透明ガラス試料片に塗布した。これらのQKA試料を23℃、50パーセント相対湿度(CT条件)下、7日間の初期硬化を行った後、2つの群に分けた。第1群はすぐにQKA試験を行った。第2群はQKA試験を行う前に種々の時間の長さで110℃のオーブン中に置いた。表 3 に、これらの QKA 試験の結果を列挙する(CF=凝集破壊;AF=被着体からの接着破壊;TF=試験後に被着体上に薄い塗膜が残る)。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリエーテル又はポリオレフィン骨格及びシラノール縮合可能なシラン部分を含む1又は2種以上のシラン官能性プレポリマー、
b)ポリエーテル骨格及びイソシアネート部分を含む1又は2種以上のイソシアネート官能性プレポリマー、
c)ヒドロカルビルリン酸エステル若しくはヒドロカルビルスルホン酸エステルを含む1若しくは2種以上のリガンドを有する1又は2種以上の有機スズ化合物、チタネート若しくはジルコネート、又はその混合物、及び
d)該プレポリマーと混和性であり、下塗りされていない被覆された被着体への接着剤の接着を増強する1又は2種以上の無水の強有機酸、
を含む接着剤組成物。
【請求項2】
前記接着剤組成物100重量部に対して、前記シラン官能性プレポリマーが約1〜約70重量部の量存在し、前記イソシアネート官能性プレポリマーが約1〜約70重量部の量存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記酸が有機リン酸又は有機スルホン酸である請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
該チタネート又はジルコネートが式
【化1】

(式中、Mはそれぞれ独立にTi又はZrを表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜12のアルカリール基を表し、
はそれぞれ独立に
【化2】

【化3】

又は
【化4】

を表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜20のアルカリール基を表し、
pはそれぞれ独立に1又は2であり、及び
qはそれぞれ独立に2又は3である。)
に相当し、pとqの和が4である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
MがTiである、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記スルホン酸が式
【化5】

に相当し、前記リン酸が式
【化6】

(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数7〜30のアルカリール基を表し、
はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜12のアルカリール基を表し、
rはそれぞれ独立に1又は2であり、
sはそれぞれ独立に1又は2である。)
に相当し、r及びsの和が3である、請求項4又は5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
a)約20〜約70重量部の1又は2種以上のシラン官能性ポリマー、
b)約2〜約20重量パーセントの1又は2種以上のイソシアネート官能性プレポリマー、
c)約0.05〜約0.5重量部の1又は2種以上のオルガノチタネート類又はジルコネート類、及び
d)約0.1ないし約0.45重量部の1又は2種以上の強有機酸類又は3級アミン類、
を含み、重量部の合計は100である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記シラン官能性プレポリマーの調製に用いる前記ポリエーテルポリオールの重量平均分子量が約1,000〜約50,000である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項9】
前記イソシアネート官能性プレポリマーの重量平均分子量が約2,500〜約40,000である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の接着剤を1又は2以上の被着体に塗布し、該被着体を該接着剤が該被着体間に配置されるようにして接触させ、そして該接着剤を硬化させて該被着体を共に接着させることを含む、2または3以上の被着体を共に接着する方法。
【請求項11】
A)請求項1ないし9のいずれか1項に記載の接着剤をガラス又は被着体のいずれかに塗布し、
B)該ガラス及び該被着体を、該接着剤が該被着体及び該ガラスの間に配置されるようにして接触させ、そして
C)該接着剤を硬化させ、該ガラスを該被着体に接着する、
ことを含む、ガラスを被着体に接着する方法。
【請求項12】
前記窓が、該窓周縁部付近に配置された、下塗りされている、又は下塗りされていないセラミックフリットを有しており、前記接着剤が該セラミックフリットに接着される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記被着体が、自動車に対しガラス窓を支えることに適合した自動車用フランジである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記フランジが塗料によって被覆されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フランジが前記接着剤組成物と接触する際に該フランジが下塗りされていない、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記窓が接着剤組成物と接触する際に該窓が下塗りされていない、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記フランジが耐酸性塗料で被覆されている、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−507687(P2010−507687A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537849(P2008−537849)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/041344
【国際公開番号】WO2007/050538
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】