説明

シラン末端のポリエーテルをベースとする組成物及びその使用

【課題】シラン末端のポリエーテル誘導体をベースとして、60〜240sの加工時間で硬化後に1N/mmを上回る引裂抵抗及び25〜80のショアA硬度を有し、かつ個々の成分の容易な混合性もしくはできる限り低い粘度並びに硬化した材料の高い破断点伸びを特徴とする調製物を得ることができるシラン末端のポリエーテル誘導体を提供すること
【解決手段】(A) 10〜98%のポリエーテル基の含有量を有し、かつ1〜25%の構造−NR−X−Si(OR(3−m)の末端基の含有量を有する少なくとも1種のシラン末端のポリエーテル誘導体、水及び少なくとも1種の有機酸又は無機酸を含有する組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン末端のポリエーテル誘導体をベースとする組成物及び特に歯科分野において使用される印象材の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン末端のポリエーテルもしくはポリエーテル誘導体の製造及び印象材の製造のためのその使用は公知である。EP 0 269 819 B1は、歯科領域における印象材又は複製用印象材の製造のためのエーテル基、ウレタン基及び尿素基を含有する、アルコキシシラン末端基を有する重付加生成物を有する混合物の使用を記載している。
【0003】
DE 43 07 024及びDE 44 39 769には、同様の系が開示されていて、つまり、少なくとも1個のシラン基、エーテル基及びウレタン基及び場合により尿素基を含有し、ほぼ線状の分子構造を有し、かつほぼ脂肪族又は脂環式に結合したエーテル又はウレタンセグメントを有し、かつ800〜20000の範囲内の数平均分子量を有し、末端に配置されたシリル基を有する重付加生成物を有するプラスチックが開示されていて、その際、少なくとも1つのエーテル基はケイ素原子の置換基の少なくとも1つに存在している。
【0004】
DE 101 04 079.2-42には、最後に、歯科領域での印象材及び複製用印象材として、線状又は分枝状の主鎖を有するアルコキシシリル官能性ポリエーテルをベースとする混合物が記載されている。
【0005】
DE 102 44 693には、シラン官能化されたポリエーテル誘導体をベースとする二成分調製物が記載されていて、この調製物はベース成分中に制酸性の成分を含有する。
【0006】
更に、シラン官能化されたポリエーテル誘導体は、縮合架橋するシリコーン材料の活性剤成分のための添加物としても公知である。この種の系は、DE 198 08 557に記載されている。
【0007】
シラン末端のポリエーテルをベースとする印象材は、一般に水及び有機酸及び/又は無機酸を含有する触媒成分と、ベース成分とからなる。これらの成分は別個に貯蔵され、使用の前に混合される。
【0008】
歯科用印象材として使用する場合に、混合された調製物を流動性の状態で患者の口腔内に入れ、歯列に押しつける。数分間で前記印象材は弾性生成物へと硬化する。
【0009】
流動性の及び弾性の状態での印象材の特性に関して多くの要求がなされている。
【0010】
主要な要求は、個々の成分の混合性、混合された印象材の硬化挙動、歯の再現性、寸法精度及びエラストマー成形体の機械的特性に関するものである。
【0011】
個々の成分のコンシステンシーは、数秒間で均一に混合して均質な材料が得られるようにしなければならない。この混合は、例えばいわゆるチューブ材料の場合に、手による混合によって行うことができる。二重カートリッジ又はゴム管状容器中にパッケージングされている製品の場合には、この2つの成分は取り出し器具により取り出され、かつスタティックミキサ又はダイナミックミキサによって均質に混合される。
【0012】
前記材料は印象採取のために十分に長い時間、一般では約30秒〜4分間、この流動性の状態に留まらなければならない。約2〜5分間口腔内での待機時間の後、この生成物はエラストマーの状態に移行するため、印象を損傷することなく口腔から取り出すことができる。EN ISO 4823によると、この硬化した材料には次の要求がなされる:
変形による回復率は少なくとも96.5%であり、歯の再現性は少なくとも20μmであり、寸法変化は最大1.5%である。
【0013】
更に、弾性の固体成形体の十分な引裂抵抗及び破断点伸びも必要である。
【0014】
先行技術によるシラン末端のポリエーテル誘導体をベースとする印象材の場合には、所定の加工時間、引裂抵抗及び硬度で、簡単に混合可能でかつ高い破断点伸びを有する生成物を得ることは極めて困難であることが判明した。
【0015】
使用したシラン末端のポリエーテルの平均分子量を高めることによって、一定の範囲内で破断点伸びの向上を達成できる。しかしながら、このために必要なシラン末端のポリエーテル誘導体も、前記誘導体から得られた印象材も極めて高い粘度を有することになる。この高い粘度により、材料の均質な混合を達成するのは極めて困難である。
【0016】
許容可能な混合性をなおも有する印象材は、<700Pasの粘度(23℃、3s−1)を特徴とする。
【0017】
このような良好に混合される材料を得ることができる相応する適当なシラン末端のポリエーテル誘導体は、<160Pasの粘度(23℃、3s−1)を特徴とする。通常では、低粘度のシラン末端のポリエーテル誘導体は、容易に混合することができる低い粘度を有する印象材を生じさせる。
【特許文献1】EP 0 269 819 B1
【特許文献2】DE 43 07 024
【特許文献3】DE 44 39 769
【特許文献4】DE 101 04 079.2-42
【特許文献5】DE 102 44 693
【特許文献6】DE 198 08 557
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の課題は、シラン末端のポリエーテル誘導体をベースとして、60〜240sの加工時間で硬化後に1N/mmを上回る引裂抵抗(DIN 53504により測定)及び25〜80のショアA硬度(DIN 53505により測定)を有し、かつ個々の成分の容易な混合性もしくはできる限り低い粘度並びに硬化した材料の高い破断点伸び(DIN 53504により測定)を特徴とする、調製物を得ることができるシラン末端のポリエーテル誘導体を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題は、次の構造的特徴を有するシラン末端のポリエーテル誘導体の使用により解決される:
10〜98、有利に50〜90%のポリエーテル基の含有量及び
1〜25%の次の構造の末端基の含有量:
−NR−X−Si(OR(3−m) (I)
[式中、
、R、Rは、相互に無関係に、H又は、O、N、Sのグループの0〜10個のヘテロ原子を有し、かつ全体で1〜30個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、線状、分枝状、環式又は多環式の炭化水素基を表し、
mは1、2又は3を表し;
Xは、実験式C2nの基を表し;
nは、≧3の整数を表し、
但し、RがHを表す場合に、n>3である]。
【0020】
この構造的特徴は、この場合に同じ分子もしくは同じマクロ分子中に存在する。
【0021】
、R、Rは、相互に無関係に、特にH、
− 場合により−O−、−S−又は−N<により中断された、C〜C30−アルキル、C〜C20−アルケニル又はC〜C20−アルキニル、
− 場合によりC〜C−アルキル、C〜C−アルケニル又はC〜C−アルコキシにより置換された、C〜C12−シクロアルキル、C〜C10−アリール又はC〜C−ヘテロアリール又は
− C〜C12−アラルキル又はC〜C12−アルカリールを表す。
【0022】
本発明は、従って、前記されたシラン末端のポリエーテル誘導体の少なくとも1種並びに水及び少なくとも1種の有機酸又は無機酸を含有する組成物に関する。
【0023】
基Xは、実験式C2nの線状又は分枝状の基を表すのが有利であり、その際、m>3、及び少なくとも1種の第3炭素原子及び/又は少なくとも1つの第4炭素原子を有する。
【0024】
アルキル基のR、R、Rについて、1〜30個のC原子を有する全ての直鎖及び分子鎖基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、エイコシル、クアトロデシル、トリデシル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、ノナデシルが挙げられる。有利な基は、その中でRが1〜15個のC原子を有するもの、R及びRは1〜10個のC原子を有するものである。
【0025】
〜C20−アルケニルとして、例えばビニル、アリル(プロペニル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、2−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、デセニル、オレイル、エライジル−、リシノール−、リノレイル−、リノレニル−、ガドレニル−、アラキジル−又はエルシルが挙げられる。
〜C20−アルキニルとして、例えばプロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、n−2−オクチニル及びn−2−オクタデシニルが挙げられる。
【0026】
その中で、C〜C−アルケニル基及びC〜C−アルキニル基が有利である。
【0027】
シクロアルキル基として、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシルが挙げられる。アルコキシ基について、1〜6個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖の基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシが挙げられる。
【0028】
1〜4個のC原子を有するアルコキシ基が有利である。
【0029】
アリール基については、例えば、フェニル、1−ナフチル又は2−ナフチルが挙げられる。
【0030】
7〜12個のC原子を有するアラルキル基Rは、例えばベンジル、フェネチル、2−フェネチル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチルであることができる。
【0031】
アルカリール基として、例えばトルイル又はメシチルが挙げられる。アルキレン基Xとして、直鎖又は分枝鎖の飽和アルキレン基が挙げられる。例えば次のものが挙げられる:エチルエチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、1−メチルテトラメチレン、1−メチルトリメチレン、1,1−トリメチレンエチレン、1,1−テトラメチレンメチレン、n−プロピレン、1−メチルエチレン、n−ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,1−ジメチルエチレン、n−ペンチレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、2,2−ジメチルプロピレン、1−エチルプロピレン、n−ヘキシレン、1,1−ジメチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1−メチルペンチレン、2−メチルペンチレン、3−メチルペンチレン、4−メチルペンチレン、1,1−ジメチルブチレン、1,2−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、2,2−ジメチルブチレン、2,3−ジメチルブチレン、3,3−ジメチルブチレン、1−エチルブチレン、2−エチルブチレン、1,1,2−トリメチルプロピレン、1,2,2−トリメチルプロピレン、1−エチル−1−メチルプロピレン、1−エチル−2−メチルプロピレン、n−ヘプチレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレン、n−ウンデシレン、n−ドデシレン、ヘキサデシレン又はオクタデシレン。
【0032】
このシラン末端のポリエーテル誘導体の製造は、有利にEP 0 269 819 B1に記載されたのと同様の方法で、2又はそれ以上のOH官能基を有するOH官能性ポリエーテルを、脂肪族及び/又は環式脂肪族ジイソシアナートと反応させることにより行われ、その際、場合により他のOH官能性化合物、例えばアルコール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリカーボネートポリオール又はOH末端のポリシロキサンが添加され、かつ得られたイソシアナート官能性ポリエーテル誘導体を、引き続き適当なアミノアルキルアルコキシシラン及び場合により第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有する脂肪族及び/又は環式脂肪族ジアミンと反応させる。
【0033】
本発明により使用されるポリエーテル誘導体の製造は、2又はそれ以上のOH官能基を有するOH官能性ポリエーテルをイソシアナトアルキルアルコキシシランと反応させることによっても行うことができる。
【0034】
本発明により使用されたシラン末端のポリエーテル誘導体の製造のために使用されたOH官能性ポリエーテルは、例えば、エポキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、酸化スチレン又はエピクロロヒドリンの、2〜10、有利に2〜6個のOH官能基を有しかつ800〜20000の数平均分子量を有するホモ重合生成物又は共重合生成物であり、これらは文献中に数多く記載されている。
【0035】
適当なジイソシアナートは、特に、式Q(NCO)の脂肪族及び/又は環式脂肪族の結合したイソシアナート基を有するようなものであり、前記式中、Qは2〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は4〜14個の炭素原子を有する環式脂肪族もしくは混合した脂肪族−環式脂肪族炭化水素基を表す。
【0036】
この種のジイソシアナートの例は、エチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、シクロブタン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,3−及び−1,4−ジイソシアナート又は1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサンもしくはこの種のジイソシアナートの任意の混合物である。有利に、本発明により使用されたポリエーテル誘導体の製造のために、環式脂肪族もしくは混合した脂肪族−環式脂肪族ジイソシアナートが使用される。特に有利なのは、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナト−メチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート)である。
【0037】
適当なイソシアナトアルキルアルコキシシランは、次の構造を特徴とする:
OCN−X−Si(OR(3−m)、m=1,2又は3、
適当なアミノアルキルアルコキシシランは、次の構造を特徴とする:
HNR−X−Si(OR(3−m)、m=1,2又は3、
その際、
、R、Rは、相互に無関係に、H又は、O、N、Sのグループの0〜10個のヘテロ原子を有し、かつ全体で1〜30個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、線状、分枝状、環式又は多環式の炭化水素基を表し;
Xは、実験式C2nの基であり、その際、n≧3、有利に3≦n≦20、但し、R=Hの場合にn>3である。
【0038】
有利に、Rは、H又は1〜15個のC原子を有する炭化水素基、例えば、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、2−エチル−ヘキシル、フェニル、ベンジルを表し、R及びRは1〜10個のC原子を有する炭化水素基、例えば−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチルを表す。特別な実施態様の場合に、Rはオキシアルキル−アルキル基からなる基を表し、例えば−CHCH−O−CH、−CHCH−O−CHCH−O−CH又は−CHCHCH−O−CHCHCH−O−CHである。
【0039】
例えば、アミノアルキルトリアルコキシシラン、例えば4−アミノブチルトリメトキシシラン、N−アルキルアミノプロピルアルコキシシラン、例えばN−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン又はN−エチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、4−アミノブチルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シランである。
【0040】
本発明により使用されるポリエーテル誘導体の製造のための適当なジアミンは、分子量60〜5000の、第1級又は第2級アミノ基を有する脂肪族、環式脂肪族又は混合された脂肪族−環式脂肪族ジアミンである。例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4′−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−ジアミノ、3,3′−ジメチル−ジシクロヘキシルメタン、1−アミノ、3,3,3−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン又はポリプロピレンオキシド−ジアミンである。
【0041】
本発明により使用されたシラン末端のポリエーテル誘導体の製造は、スズ含有触媒、特に有機スズ化合物を使用することなしに行うことができる。
【0042】
記載されたシラン末端のポリエーテル誘導体をベースとして得られる本発明による組成物(もしくは混合物)は一般に次のものからなる:
(A) 構造NR−X−Si(OR(3−m)の末端基を有するシラン末端のポリエーテル誘導体(式中、R、R、R、X及びmは前記の意味を表す) 2〜85%、有利に15〜40%、
(B) 水と、有機酸及び/又は無機酸との混合物、
(C) 希釈剤5〜70%、有利に15〜50%、
(D) 充填剤10〜90%、有利に20〜70%、
(E) 添加物、着色剤、顔料、香料、安定剤、遅延剤、乳化剤0〜10%、有利に0〜8%。
【0043】
成分(C)として、特に低分子量の化合物又は室温で液状のポリマーが挙げられる。
【0044】
この例は、グリセリン、フタル酸エステル、クエン酸エステル、芳香族炭化水素、例えばジベンジルトルエン、芳香族及び脂肪族スルホン酸エステル又は室温で液状のポリエーテル、例えば成分(A)の製造のために使用されるようなものもしくはこれらの任意の混合物である。この場合、芳香族炭化水素及びポリエーテルの使用が有利である。
【0045】
成分(D)では、例えば負荷された又は負荷されていない表面を有する無機充填剤、例えば石英粉末又はクリストバライト粉末、沈降ケイ酸又は熱分解ケイ酸が使用される。有機充填剤、例えば水素化ヒマシ油又はヒマシ油誘導体、ポリアミド、ポリエステル、パラフィン、ワックス、脂肪も同様に使用することができる。
【0046】
成分(B)では、水と有機酸又は無機酸との混合物が使用される。この硬化反応の速度は、使用された酸の強さに依存する。例えば、塩酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、テトラフルオロホウ酸、4−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、アルカンスルホン酸、カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、トリメリト酸、安息香酸、フェニル酢酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸が使用可能である。
【0047】
水と有機酸及び/又は無機酸との1:0.01〜1:40の重量比の混合物を使用するのが有利である。
【0048】
酸として、スルホン酸、特に4−トルエンスルホン酸が有利であり、この場合、水との混合物は有利に5〜50%の4−トルエンスルホン酸を含有する。
【0049】
本発明による組成物は、成分(E)では他の添加剤、例えば着色剤、含量、香料、チキソトロープ剤、安定剤、例えばシラン及び制酸性化合物、例えばアミン又はアミノシラン、乳化剤又はその他の常用の添加剤0〜10%を含有する。
【0050】
一般に、記載された混合物は、ベース成分と触媒成分とからなる二成分材料として調製され、その際、ベース成分は、成分(A)及び場合により成分(C)、(D)及び(E)を含有し、触媒成分は成分(B)及び場合により成分(C)、(D)及び(E)を含有する。この場合、ベース成分及び触媒成分は、通常ではベース成分対触媒成分1:1〜1:10の体積比で混合が行われるように調製される。
【0051】
本発明による組成物は、通常では印象採取のために、特に歯科医学又は歯科技工目的で使用される。一段階の単相又は多相の歯科医学的印象採取及び咬合記録が特に有利である。
【0052】
本発明の対象は、本発明による組成物から製造された材料を含有する容器及び混合装置、例えばカートリッジ、ゴム管状容器、スタティックミキサ及びダイナミックミキサもしくは混合装置でもある。
【0053】
本発明は次の実施例を用いて詳細に説明されるが、本発明はこの実施例に制限されるものではない。パーセントの記載は、他に記載がない限り、残りの記載と同様に質量に関するものである。
【実施例】
【0054】
約4000の平均分子量を有する線状のシラン末端のポリエーテル誘導体の合成
SPEA1
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、イソホロンジイソシアナート103.5g(0.466mol)(以後IPDIと称する)を添加し、120〜140℃で窒素下で4時間撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は2.25%に決定された。このプレポリマーに、30℃で撹拌しながら窒素雰囲気下で、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン95.25g(0.43mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で30Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0055】
SPEA2
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 103.5g(0.466mol)を添加し、120〜140℃で窒素下で4時間撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は2.15%に決定された。
【0056】
このプレポリマーに、30℃で撹拌しながら窒素雰囲気下で、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン88.5g(0.4mmol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で133Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0057】
SPEA3(比較例)
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 103.5g(0.466mol)を添加し、120〜140℃で窒素下で4時間撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は2.20%に決定された。
【0058】
このプレポリマーに、30℃で撹拌しながら窒素下で、アミノプロピルトリエトキシシラン90.7g(0.41mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で105Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0059】
5500の平均分子量を有する線状のシラン末端のポリエーテル誘導体の合成
SPEB1
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 86.46g(0.39mol)を、ジブチルスズジラウラート0.05gと一緒に添加し、100℃で3時間窒素下で撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は1.65%に決定された。このプレポリマーに30℃で撹拌しながらかつ窒素下でN−エチル−アミノイソブチルトリメトキシシラン67.38g(0.3mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で32Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0060】
SPEB2
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 86.46g(0.39mol)を、ジブチルスズジラウラート0.05gと一緒に添加し、100℃で3時間窒素下で撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は1.65%に決定された。このプレポリマーに30℃で撹拌しながらかつ窒素下でN−ブチルアミノ−プロピルトリメトキシシラン70.6g(0.3mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で42Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0061】
SPEB3(比較例)
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 86.46g(0.39mol)を、ジブチルスズジラウラート0.05gと一緒に添加し、100℃で3時間窒素下で撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は1.65%に決定された。このプレポリマーに、30℃で撹拌しながら窒素下で、アミノプロピル−トリエトキシシラン66.4(0.3mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で116Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0062】
7000の平均分子量を有する線状のシラン末端のポリエーテル誘導体の合成
SPEC1
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 77.4g(0.35mol)を、ジブチルスズジラウラート0.05gと一緒に添加し、100℃で3時間窒素下で撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は1.15%に決定された。このプレポリマーに30℃で撹拌しながらかつ窒素下でN−エチル−アミノイソブチルトリメトキシシラン46.5g(0.21mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で80Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0063】
SPEC2(比較例)
約3000の平均分子量を有する線状ポリプロピレンオキシドジオール700g(0.233mol)を、120℃で30分間5mbarで脱水した。その後、IPDI 77.4g(0.35mol)を、ジブチルスズジラウラート0.05gと一緒に添加し、100℃で3時間窒素下で撹拌した。このプレポリマーのイソシアナート含有率は1.15%に決定された。このプレポリマーに30℃で撹拌しながらかつ窒素下でアミノプロピルトリエトキシシラン46.5g(0.21mol)を添加した。60℃で60分間更に攪拌した後、冷却後に、23℃で165Pasの粘度を有する無色透明な生成物が得られた。
【0064】
表1: 本発明により使用されたシラン末端のポリエーテル誘導体SPEA1、SPEA2、SPEB1、SPEB2及びSPEC1並びに比較例で使用されたシラン末端のポリエーテル誘導体SPEA3、SPEB3及びSPEC2の特性:
【0065】
【表1】

【0066】
ベース成分の製造:
実験室ディソルバー中で、ベース成分の構成要素(組成は表2参照)を3時間で<50mbarの圧力で混合して均質なペースト状の材料にした。
【0067】
表2: 本発明によるベース成分BA1、BA2、BB1、B2及びBCのパーセントで示す組成及び粘度比較例:VBA、VBB、VBC。
【0068】
【表2】

【0069】
触媒成分の製造:
触媒成分の製造は、DE 101 04 079 A1の実施例3に基づき行った。多様なベース成分は、触媒成分とそれぞれ5:1の質量比で混合される。この混合物に関して、その加工時間(DIN EN ISO 4823による)、ショアA硬度(DIN 5305による)、引裂抵抗及び破断点伸び(DIN 53504による)を測定した。本発明による組成物は、それぞれシリーズA、B及びCにおいて、それぞれの比較例よりも明らかにより高い破断点伸びを有する
表3: 本発明による混合物A1、A2、B1、B2及びCの特性;比較例:VA、VB、VCの特性
【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 10〜98%のポリエーテル基の含有量を有し、かつ1〜25%の次の構造
−NR−X−Si(OR(3−m) (I)
[式中、
mは1、2又は3を表し、
、R、Rは、相互に無関係に、H又は、O、N、Sのグループの0〜10個のヘテロ原子を有し、かつ全体で1〜30個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、線状、分枝状、環式又は多環式の炭化水素基を表し;
Xは、実験式C2nの基を表し、
nは、≧3の整数を表し、
但し、RがHを表す場合に、n>3である]の末端基の含有量を有する少なくとも1種のシラン末端のポリエーテル誘導体、
(B1) 水及び
(B2) 少なくとも1種の有機酸又は無機酸を
含有する組成物。
【請求項2】
前記炭化水素基R、R又はRは、
− −O−、−S−又は−N<により中断されていてもよい、C〜C30−アルキル、C〜C20−アルケニル又はC〜C20−アルキニル、
− C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル又はC〜C−アルコキシにより置換されていてもよい、C〜C12−シクロアルキル、C〜C10−アリール又はC〜C−ヘテロアリール又は
− C〜C12−アラルキル又はC〜C12−アルカリールを表す、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(B) 成分B1及びB2が混合物として存在する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
成分(A)は50〜90%のポリエーテル基の含有量を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)は構造NR−X−Si(OR(3−m)の末端基を有し、その際、mは、1、2又は3を表し、Xは、実験式C2nの基を表し、n>3を表し、R、R及びRは、請求項1又は2に記載の意味を表すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
シラン末端のポリエーテル誘導体は構造NR−X−Si(OR(3−m)の末端基を有し、その際、mは、1、2又は3を表し、Xは、3≦n≦20を示しかつ少なくとも1個の第3炭素原子及び/又は少なくとも1個の第4炭素原子を有する実験式C2nの基を表し、R、R及びRは、請求項1又は2に記載の意味を表すことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
シラン末端のポリエーテル誘導体は構造NR−X−Si(OR(3−m)の末端基を有し、その際、mは、1、2又は3を表し、Xは実験式C2nの基を表し、n≧3を表し、
はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基又はカルバマート基を表し、R及びRは請求項1又は2に記載の意味を表すことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
成分(B)は水及び有機酸及び/又は無機酸を1:0.01〜1:40の質量比で含有する混合物を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
他の成分として、
(C) 希釈剤5〜70%及び/又は
(D) 充填剤10〜90%及び/又は
(E) 通常の添加物0〜10%
を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
他の成分として、
(C) 希釈剤15〜50%及び/又は
(D) 充填剤20〜70%及び/又は
(E) 通常の添加物0〜8%
を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
成分(E)の添加物は、着色剤、顔料、香料、安定剤、遅延剤、乳化剤のグループに属する、請求項9又は10記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物の、歯科用材料の製造のための使用。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物の、印象採取のための使用。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物を有する容器。
【請求項15】
請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物を有する混合装置。

【公開番号】特開2006−57093(P2006−57093A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236798(P2005−236798)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【Fターム(参考)】