説明

シリカゲル活性炭複合体、その製造方法、揮発性有機化合物の除去方法、沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法、圧力スイング吸着法、及び圧力スイング吸着装置

【解決課題】吸着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供すること。吸着性能及び脱着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供すること。
【解決手段】活性炭及び該活性炭の外側表面に固定されているシリカゲル粒子からなることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加えて得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物等の吸着剤として有用なシリカゲル活性炭複合体及びその製造方法、該シリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いる揮発性有機化合物の除去方法、沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法、圧力スイング吸着法、圧力スイング吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン等の一般に揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる化合物、あるいは、沸点が−164〜400℃である炭化水素化合物、含酸素化合物、含窒素化合物等の有機化合物(以下、沸点が−164〜400℃である炭化水素化合物、含酸素化合物、含窒素化合物等の有機化合物を、沸点が−164〜400℃である有機化合物とも記載する。)は、有害であるため、該揮発性有機化合物又は該沸点が−164〜400℃である有機化合物を含有する排気ガスは、該排気ガス中の該揮発性有機化合物又は該沸点が−164〜400℃である有機化合物が除去又は分離回収された後に、外気へと排気されなければならない。
【0003】
現在、該揮発性有機化合物を含有する排気ガス中から、該揮発性有機化合物を除去又は分離回収するための排気ガス処理技術の1つとして、圧力スイング吸着法が用いられている。
【0004】
該圧力スイング吸着法は、吸着剤が充填された吸着塔を複数設置し、1以上の吸着塔に、該排気ガスを通気して、該排気ガス中の該揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させることにより、該排気ガス中の揮発性有機化合物の吸着除去を行う吸着除去工程を行いつつ、同時に、他の1以上の吸着塔を減圧して、該揮発性有機化合物を吸着した吸着剤から、該揮発性有機化合物を脱着させることにより、吸着剤の再生を行なう再生工程、及び該再生工程により生じる濃縮ガスを冷却して、該揮発性有機化合物の回収を行なう回収工程を行い、一定時間経過毎に又は一定量の該排気ガスを通気する毎に、該吸着工程を行う吸着塔と、該再生工程を行なう吸着塔とを切り替え、連続して、該排気ガスの処理を行なう方法である。なお、該再生工程では、必要に応じて、減圧しつつ、窒素、空気等のパージガスを吸着塔に導入してもよい。
【0005】
該圧力スイング吸着法及びそれを実施するための処理装置としては、例えば、「PSA式VOC−VRU装置」(非特許文献1)に記載されている方法及び処理装置が挙げられる。また、特開平2005−199223号公報(特許文献1)には、圧力スイング吸着法を利用したガソリンべーパー回収方法及びそれを実施するための処理装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
該圧力スイング吸着法においては、該吸着塔に充填されている該吸着剤には、該揮発性有機化合物の吸着性能が高いことに加えて、該揮発性有機化合物の脱着性能が高いことも要求される。該吸着剤の吸着性能が低いと、該吸着塔に充填する該吸着剤の量を多くしなければならないために、装置自体が大きくなるといった問題が生じるからである。一方、該吸着剤の脱着性能が低いと、該吸着剤の再生に要する時間が長くなるか、又は該パージガスの通気量を多くしなければならず、そのため、該濃縮ガスの処理量が多くなるといった問題が生じるからである。
【0007】
そして、該圧力スイング吸着法において、該吸着剤としては、シリカゲル又は活性炭が使用されている。
【0008】
ところが、シリカゲルには、該揮発性有機化合物の吸脱着性能が低いという問題があった。
【0009】
一方、活性炭は、一般に、吸着性能がシリカゲルに比べ高いが、それ自身が可燃性であるといわれているため、安全性の観点から、実際に、活性炭を、該揮発性有機化合物を含有する排気ガスの処理に用いることはできなかった。
【0010】
また、シリカゲルと活性炭を組み合わせた吸着剤として、特開2004−358307号公報(特許文献2)には、活性炭粒子と、シリカゲル粒子と、ポリオレフィン系樹脂粉末との混合物を、錠剤に圧縮成形する乾燥剤が開示されている。特許文献2に開示されている乾燥剤によれば、活性炭粒子が含まれているので、吸着性能としては、ある程度改善されるものの、脱着性能及び可燃性の問題については、解決されない。
【0011】
また、特開2005−289690号公報(特許文献3)には、活性炭にシリカゲルが添着されたシリカゲル添着活性炭が開示されている。しかし、特許文献3に開示されているシリカゲル添着活性炭では、シリカゲルが活性炭の細孔内に添着されているため、活性炭の性能を十分に利用できなかった。また、可燃性の問題を解決することもできなかった。
【0012】
【非特許文献1】PSA式VOC−VRU装置;林ら、分離技術 2005年7月号 310頁
【特許文献1】特開平2005−199223号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−358307号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−289690号公報(特許請求の範囲)
【0013】
更に、該沸点が−164〜400℃である有機化合物についても、該揮発性有機化合物と同様に、吸着剤による該沸点が−164〜400℃である有機化合物の吸着除去と該吸着剤の再生を繰り返し行なう処理方法により、該沸点が−164〜400℃である有機化合物を含有する排気ガスの処理を行なうことができ、該吸着剤の吸着性能及び脱着性能のいずれもを高くすることが、該処理方法の効率化に繋がり、また、吸着剤に難燃性が要求されることも同様である。
【0014】
従って、本発明の課題は、吸着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供すること、更には吸着性能及び脱着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)活性炭の外側表面にシリカゲル粒子が固定されているシリカゲル活性炭複合体は、活性炭の吸着性能をある程度保持しつつ、難燃性が高いこと、(2)特に、メソ孔を主体とする活性炭の外側表面にシリカゲル粒子が固定されているシリカゲル活性炭複合体は、排気ガス中の揮発性有機化合物の濃度が低い場合は、シリカゲルが固定されていない活性炭と同等の吸着性能を示すこと等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明(1)は、活性炭及び該活性炭の外側表面に固定されているシリカゲル粒子からなることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体を提供するものである。
【0017】
また、本発明(2)は、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加えて得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体を提供するものである。
【0018】
また、本発明(3)は、回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体を提供するものである。
【0019】
また、本発明(4)は、回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより、シリカゲル活性炭複合体を得る複合工程を有することを特徴とするシリカゲル活性炭複合体の製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明(5)は、前記本発明(1)〜(3)いずれか記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする揮発性有機化合物の除去方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(6)は、前記本発明(1)〜(3)いずれか記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする沸点が−164〜400℃の有機化合物の除去方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(7)は、前記本発明(1)〜(3)いずれか記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする圧力スイング吸着法を提供するものである。
【0023】
また、本発明(8)は、前記本発明(1)〜(3)いずれか記載のシリカゲル活性炭複合体が充填されている吸着塔を有することを特徴とする圧力スイング吸着装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、吸着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供すること、更には吸着性能及び脱着性能が高く且つ難燃性が高い吸着剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のシリカゲル活性炭複合体は、活性炭及び該活性炭の外側表面に固定されているシリカゲル粒子からなるシリカゲル活性炭複合体である。
【0026】
本発明のシリカゲル活性炭複合体について、図1を参照して説明する。図1は、本発明のシリカゲル活性炭複合体の模式的な断面図である。図1中、シリカゲル活性炭複合体1は、活性炭2及び該活性炭2の外側表面5に固定されているシリカゲル粒子3により構成されている。該活性炭2の内部には、多数の細孔4が形成されている。
【0027】
該シリカゲル粒子3が固定されている場所は、該活性炭2の内部に形成されている該細孔4内ではなく、該活性炭2の外側表面5である。そして、該シリカゲル粒子3が、該活性炭2の該外側表面5に固定されているために、該細孔4の一部は、該シリカゲル粒子3により塞がれている。つまり、該シリカゲル活性炭複合体1中の該細孔4には、外部と連通している細孔4aと、該シリカゲル粒子3により、外部との連通が妨げられている細孔4bがある。
【0028】
本発明のシリカゲル活性炭複合体は、例えば、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加えることにより得られる。つまり、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加えることにより、該シリカゲル粒子が、該活性炭の該外側表面にめり込み、固定される。
【0029】
該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加える方法としては、例えば、該活性炭に該シリカゲル粒子を衝突させる方法、該活性炭の該外側表面に該シリカゲル粒子を擦り付ける方法が挙げられる。
【0030】
該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加える方法としては、更に具体的には、回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を、該回転部材で撹拌する方法が挙げられる。
【0031】
該撹拌型混合造粒装置としては、一般に造粒に用いられる撹拌型混合造粒装置であれば、特に制限されず、例えば、特開平5−49900号公報、特開平6−55053号公報、特開平6−270141号公報、特開平7−112124号公報、特開平10−99671号公報、特開2004−50153号公報、特開2005−40658号公報に記載されている造粒装置が挙げられる。
【0032】
該撹拌型混合造粒装置は、該回転部材を備える。該回転部材の形態としては、例えば、撹拌羽根、突起を有する円盤、振動円盤等が挙げられる。
【0033】
そして、該撹拌型混合造粒装置に、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分、好ましくは50〜500回転/分で回転させて、該回転部材で、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を撹拌する。該回転部材の回転数が、10回転/分未満だと、該シリカゲル粒子が、該活性炭の該外側表面に固定され難くなり、また、600回転/分を超えると、該活性炭が壊れ易くなる。
【0034】
該回転部材で、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を撹拌する際の撹拌時間は、好ましくは120秒以下、特に好ましくは60〜90秒である。該撹拌時間が、120秒を超えると、該活性炭が壊れ易くなる。
【0035】
該回転部材で、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を撹拌する際の撹拌温度は、好ましくは20〜30℃、特に好ましくは20〜25℃である。
【0036】
一般に、該撹拌型混合造粒装置で造粒する際の造粒条件は、通常、該回転部材の回転速度が3000〜4000回転/分程度、撹拌時間が10分程度以上なので、本発明のシリカゲル活性炭複合体を得る際の該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物の撹拌条件は、一般に、該撹拌型混合造粒装置を用いて行なわれている造粒の造粒条件に比べ、非常にマイルドである。
【0037】
該活性炭としては、木質系、石炭系、果実系等が挙げられるが、そのうち、木質系が好ましい。特に、該活性炭としては、メソ孔を主体とする活性炭が、吸着性能及び脱着性能が高くなる点で好ましい。なお、本発明において、メソ孔を主体とする活性炭とは、活性炭の平均細孔径が2〜20nmである活性炭を指す。
【0038】
該活性炭の形状としては、特に制限されず、球形、円柱形、破砕形等、必要に応じて選択される。
【0039】
該活性炭の大きさは、特に制限されず、使用方法又は使用状況により、適宜選択される。該活性炭が球形の場合、該活性炭の粒径は、好ましくは2〜5mm、特に好ましくは3〜4mmである。また、該活性炭が円柱形の場合、該活性炭の直径は、好ましくは2〜3mm、特に好ましくは2.5〜3.0mmであり、該活性炭の長さ(円柱の高さ)は、好ましくは5〜7mm、特に好ましくは6〜6.5mmである。
【0040】
該活性炭の平均細孔径は、好ましくは3.8〜6.8nm、特に好ましくは4.5〜5.5nmである。該活性炭の平均細孔径が、上記範囲にあることにより、吸着性能及び脱着性能のいずれもが高くなる。一方、該活性炭の平均細孔径が、3.8nm未満だと、ミクロ孔が多くなるので脱着性能が低くなり易く、また、6.8nmを超えると、マクロ孔が多くなるので吸着性能が低くなり易い。
【0041】
該活性炭のBET比表面積は、好ましくは1000〜1500m/g、特に好ましくは1100〜1400m/gである。該活性炭のBET比表面積が、上記範囲にあることにより、吸着性能及び脱着性能のいずれもが高くなる。一方、該活性炭のBET比表面積が、1000m/g未満だと、吸着性能が低くなり易く、また、1500m/gを超えると、脱着性能が低くなり易い。
【0042】
該活性炭の平均細孔容積は、好ましくは0.26〜0.35mL/g、特に好ましくは0.28〜0.32mL/gである。
【0043】
該シリカゲル粒子としては、特に制限されず、A型シリカゲル、B型シリカゲル等が挙げられる。
【0044】
該シリカゲル粒子の平均粒子径は、好ましくは80〜150μm、特に好ましくは105〜110μmである。該シリカゲル粒子の平均粒子径が、上記範囲にあることにより、吸着性能及び脱着性能のいずれもが高くなる。一方、該シリカゲル粒子の平均粒子径が、80μm未満だと、吸着性能が低くなり易く、また、150μmを超えると、活性炭からの脱落が起こり易くなる。
【0045】
該シリカゲル粒子の平均細孔径は、好ましくは3〜10nm、特に好ましくは5.5〜6nmである。該シリカゲル粒子の平均細孔径が、上記範囲にあることにより、吸着性能及び脱着性能のいずれもが高くなる。一方、該シリカゲル粒子の平均細孔径が、3nm未満だと、吸着対象物質を吸着し難くなり、また、10nmを超えると、吸着性能が低くなり易い。
【0046】
該シリカゲル活性炭複合体中、該シリカゲル粒子の含有量、すなわち、該シリカゲル粒子の固定量は、該シリカゲル活性炭複合体の全質量に対して、好ましくは9〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。該シリカゲル活性炭複合体中、該シリカゲル粒子の含有量が、9質量%未満だと、難燃性が低くなり易く、また、60質量%を超えると、吸着性能及び脱着性能が低くなり易い。
【0047】
該シリカゲル活性炭複合体の平均細孔径は、好ましくは5.3〜6.3nm、特に好ましくは5.5〜6.0nmである。また、該シリカゲル活性炭複合体のBET比表面積は、好ましくは400〜1400m/g、特に好ましくは1000〜1200m/gである。また、該シリカゲル活性炭複合体のメソマクロ孔BET比表面積は、好ましくは400〜700m/g、特に好ましくは500〜600m/gである。また、該シリカゲル活性炭複合体のBETミクロ孔容積は、好ましくは0.1〜0.32mL/g、特に好ましくは0.2〜0.24mL/gである。該シリカゲル活性炭複合体の平均細孔径、BET比表面積、メソマクロ孔BET比表面積、BETミクロ孔容積が、上記範囲にあることにより、吸着性能及び脱着性能のいずれもが高くなる。
【0048】
そして、本発明のシリカゲル活性炭複合体を得る際、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物中の該シリカゲル粒子の混合量は、好ましくは9〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物中の該シリカゲル粒子の混合量が、9質量%未満だと、難燃性が低くなり易く、また、60質量%を超えると、吸着性能及び脱着性能が低くなり易い。
【0049】
また、該活性炭のBET比表面積を、好ましくは1000〜1500m/g、特に好ましくは1100〜1300m/gの範囲内、また、該活性炭の平均細孔径を、好ましくは3.8〜6.8nm、特に好ましくは5〜6nmの範囲内で、また、該活性炭及びシリカゲル粒子の混合物中の該シリカゲル粒子の混合量を、好ましくは9〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%の範囲内で変更することにより、該シリカゲル活性炭複合体の平均細孔径、BET比表面積、メソマクロ孔BET比表面積、BETミクロ孔容積を、上記好ましい範囲又は特に好ましい範囲に調節することができる。
【0050】
なお、本発明において、平均粒子径は、ノギス法によって測定される。また、BET比表面積は、全自動窒素吸着量測定装置を用いるBET法によって測定される。また、平均細孔容積は、全自動窒素吸着量測定装置を用いるBET法によって測定される。また、メソマクロ孔BET比表面積は、全自動窒素吸着量測定装置を用いるBET法とTプロット法によって測定される。また、BETミクロ細孔容積は、全自動窒素吸着量測定装置を用いるTプロット法よって測定される。
【0051】
本発明のシリカゲル活性炭複合体の製造方法は、回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより、シリカゲル活性炭複合体を得る複合工程を有する。
【0052】
本発明のシリカゲル活性炭複合体の製造方法に係る回転部材、撹拌型混合造粒装置、活性炭、シリカゲル粒子、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物、及び回転部材の回転数は、本発明のシリカゲル活性炭複合体に係る回転部材、撹拌型混合造粒装置、活性炭、シリカゲル粒子、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物、及び回転部材の回転数と同様である。
【0053】
本発明のシリカゲル活性炭複合体は、該活性炭の該細孔の一部が、該シリカゲル粒子により塞がれているものの、一部は塞がれずに残っている。そして、本発明者らは、
(i)塞がれずに残っている細孔は、該活性炭の細孔の性能、すなわち、吸着性能が高いという性能、又は吸着性能が高く且つ脱着性能が高いという性能を保っていること、
(ii)本発明のシリカゲル活性炭複合体は、排気ガス中の揮発性有機化合物の濃度が高い場合は、全く細孔が塞がれていない活性炭に比べ、吸着量が少なくなるものの、排気ガス中の揮発性有機化合物の濃度が低い場合は、全く細孔が塞がれていない活性炭と同等の吸着量となること、
(iii)該活性炭の外側表面の一部を、該シリカゲル粒子で覆うことによって、活性炭に難燃性を付与することができること、
を見出した。
【0054】
通常、該揮発性有機化合物を含有する排気ガス中の該揮発性有機化合物の濃度は、0.001〜5体積%程度と低いので、本発明のシリカゲル活性炭複合体は、通常の揮発性有機化合物を含有する排気ガスの処理において、活性炭と同等の吸着性能を示すこととなる。
【0055】
つまり、本発明のシリカゲル活性炭複合体は、吸着性能が高く且つ難燃性である。更に、本発明のシリカゲル活性炭複合体のうち、該メソ孔を主体とする活性炭に該シリカゲル粒子が固定されているシリカゲル活性炭複合体は、吸着性能が高いことに加えて、脱着性能が高く且つ難燃性である。
【0056】
本発明のシリカゲル活性炭複合体は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、酢酸エチル等の揮発性有機化合物を含有する排気ガスから、該揮発性有機化合物を除去する揮発性有機化合物の除去方法であって、吸着剤による該揮発性有機化合物の吸着除去及び該揮発性有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す揮発性有機化合物の除去方法における吸着剤として、好適に用いられる。つまり、本発明の揮発性有機化合物の除去方法は、本発明のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いる揮発性有機化合物の除去方法である。
【0057】
また、本発明のシリカゲル活性炭複合体は、沸点が−164〜400℃である有機化合物を含有する排気ガスから、該沸点が−164〜400℃である有機化合物を除去する該沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法であって、吸着剤による該沸点が−164〜400℃である有機化合物の吸着除去及び該沸点が−164〜400℃である有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す該沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法における吸着剤として、好適に用いられる。つまり、本発明の該沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法は、本発明のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いる沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法である。
【0058】
該沸点が−164〜400℃である有機化合物としては、炭化水素化合物、含酸素化合物、含窒素化合物等、沸点が−164〜400℃である有機化合物であれば、特に制限されない。
【0059】
そのような、吸着剤による該揮発性有機化合物の吸着除去及び該揮発性有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す揮発性有機化合物の除去方法、並びに吸着剤による該沸点が−164〜400℃である有機化合物の吸着除去及び該沸点が−164〜400℃である有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法としては、圧力スイング吸着法が挙げられる。該圧力スイング吸着法及び該圧力スイング吸着法を実施するための圧力スイング吸着装置は、例えば、前記非特許文献1又は前記特許文献1に記載されている。そして、本発明の圧力スイング吸着法は、吸着塔に充填される吸着剤として、本発明のシリカゲル活性炭複合体を用いる圧力スイング吸着法であり、本発明の圧力スイング吸着装置は、本発明のシリカゲル活性炭複合体が充填されている吸着塔を有する圧力スイング吸着装置である。
【0060】
そして、本発明のシリカゲル活性炭複合体のうち、該メソ孔を主体とする活性炭にシリカゲル粒子が固定されているシリカゲル活性炭複合体は、吸着性能が高いことに加えて、脱着性能が非常に高いため、圧力スイング吸着法に用いられる吸着剤として、及び圧力スイング吸着装置の吸着塔に充填される吸着剤として、特に優れた効果を発揮する。
【0061】
また、該圧力スイング吸着法では、該揮発性有機化合物又は該沸点が−164〜400℃である有機化合物を吸着した吸着剤の再生は、吸着塔を減圧すること、あるいは、吸着塔を減圧しつつ、パージガスを吸着塔に導入することにより行なわれるが、本発明の揮発性有機化合物の除去方法及び本発明の沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法においては、再生方法はこれに限定されない。本発明の揮発性有機化合物の除去方法及び本発明の沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法においては、吸着剤による揮発性有機化合物の吸着除去及び該揮発性有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す際に、あるいは、吸着剤による該沸点が−164〜400℃である有機化合物の吸着除去及び該沸点が−164〜400℃である有機化合物を吸着した吸着剤の再生を繰り返す際に、該吸着剤の再生を、(i)空気又は窒素等の加熱ガスを吸着塔に通気すること、又は(ii)スチームを吸着塔に導入すること等によって行なうことができる。
【0062】
また、本発明のシリカゲル活性炭複合体のうち、該メソ孔を主体とする活性炭に該シリカゲル粒子が固定されているシリカゲル活性炭複合体は、吸着性能及び脱着性能の両方が高いので、吸着剤による除去対象物質の吸着除去及び該除去対象物質を吸着した吸着剤の再生を繰り返す除去対象物質の除去方法にも用いられる。
【0063】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0064】
(実施例1〜4)
木質系の活性炭ペレットA及びシリカゲル粒子Bを、表1に示す混合量で、高速撹拌型混合造粒装置(NMG−1L、奈良機械製作所社製)に投入し、次いで、回転速度500回転/分、撹拌温度22℃、撹拌時間1分の撹拌条件で撹拌し、シリカゲル活性炭複合体Cを得た。得られたシリカゲル活性炭複合体Cの物性値を表1に示す。
・活性炭ペレットA:木質系、円柱形、直径2〜3mm、長さ5〜7mm、平均細孔径6.5nm、BET比表面積1462m/g
・シリカゲル粒子B:平均粒子径105μm、平均細孔径6nm
【0065】
(ベンゼン吸着試験)
20℃において、ベンゼンの分圧(P)を変化させ、該シリカゲル活性炭複合体Cのベンゼンの吸着等温線を求めた。その結果を表2、図2及び図3に示す。
【0066】
(難燃性試験結果)
該シリカゲル活性炭複合体Cをピンセットで挟み、バーナーの火炎中に入れた時に、該シリカゲル活性炭複合体Cから、燃焼を示す炎が出ているのが確認された場合を難燃性×とし、該炎が確認されなかった場合を難燃性○とした。
【0067】
(比較例1)
比較対象として、該活性炭ペレットAを用意した。
(ベンゼンの吸着試験)
20℃において、ベンゼンの分圧(P)を変化させ、該活性炭ペレットAのベンゼンの吸着等温線を求めた。その結果を表3、図2及び図3に示す。
(難燃性評価試験)
該活性炭ペレットAをピンセットで挟み、バーナーの火炎中に入れたところ、該活性炭ペレットAからは、燃焼を示す橙色の炎が出ているのが確認された。また、バーナーの火炎中で、該活性炭ペレットA自体も、橙色に変色していた。
【0068】
(比較例2)
比較対象として、該シリカゲル粒子Bを用意した。
(ベンゼンの吸着試験)
20℃において、ベンゼンの分圧(P)を変化させ、該シリカゲル粒子Bのベンゼンの吸着等温線を求めた。その結果を表3、図2及び図3に示す。
(難燃性評価試験)
該シリカゲル粒子Bをピンセットで挟み、バーナーの火炎中に入れたところ、燃焼を示す炎は確認されなかった。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

1)ベンゼンの分圧(P)/20℃のベンゼンの飽和蒸気圧(P0)
【0071】
【表3】

1)ベンゼンの分圧(P)/20℃のベンゼンの飽和蒸気圧(P0)
【0072】
なお、BET比表面積、平均細孔容積、メソマクロ孔BET比表面積及びBETミクロ細孔容積の測定には、コールター社製の全自動窒素吸着量測定装置を用いた。
【0073】
実施例1のシリカゲル活性炭複合体は、比較例1の活性炭ペレットAと同等の吸着性能を示した。また、実施例2及び実施例3のシリカゲル活性炭複合体は、飽和蒸気圧に対するベンゼン分圧の値(P/P0)が0.09以下の領域においては、比較例1の活性炭ペレットAと同等の吸着性能を示した。また、実施例4のシリカゲル活性炭複合体は、飽和蒸気圧に対するベンゼン分圧の値(P/P0)が0.05以下の領域においては、比較例1の活性炭ペレットAと同等の吸着性能を示した。なお、20℃における飽和時のベンゼンの濃度は、10体積%である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のシリカゲル活性炭複合体の模式的な断面図である。
【図2】実施例及び比較例のベンゼンの吸着等温線を示すグラフである。
【図3】図2のグラフの(P/P0)の値が小さい領域の拡大図である。
【符号の説明】
【0075】
1 シリカゲル活性炭複合体
2 活性炭
3 シリカゲル
4 細孔
5 外側表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭及び該活性炭の外側表面に固定されているシリカゲル粒子からなることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。
【請求項2】
活性炭及びシリカゲル粒子の混合物に、機械的エネルギーを加えて得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。
【請求項3】
回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより得られることを特徴とするシリカゲル活性炭複合体。
【請求項4】
前記活性炭がメソ孔を主体とする活性炭であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項5】
前記活性炭の平均細孔径が、3.8〜6.8nmであり、
前記シリカゲル粒子の平均粒子径が、100〜150μmであること、
を特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項6】
前記シリカゲル活性炭複合体中の前記シリカゲル粒子の含有量が、9〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項7】
前記シリカゲル活性炭複合体のBET比表面積が、400〜1400m/gであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項8】
前記活性炭のBET比表面積が、1000〜1500m/gであることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項9】
前記活性炭が、木質系活性炭であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体。
【請求項10】
回転部材を備える撹拌型混合造粒装置に、活性炭及びシリカゲル粒子の混合物を投入し、該回転部材の回転数を10〜600回転/分で回転させて、該活性炭及びシリカゲルの混合物を、該回転部材で撹拌することにより、シリカゲル活性炭複合体を得る複合工程を有することを特徴とするシリカゲル活性炭複合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする揮発性有機化合物の除去方法。
【請求項12】
請求項1〜9いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする沸点が−164〜400℃である有機化合物の除去方法。
【請求項13】
請求項1〜8いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体を吸着剤として用いることを特徴とする圧力スイング吸着法。
【請求項14】
請求項1〜8いずれか1項記載のシリカゲル活性炭複合体が充填されている吸着塔を有することを特徴とする圧力スイング吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−43846(P2008−43846A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219775(P2006−219775)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(591027237)コスモエンジニアリング株式会社 (5)
【出願人】(599141227)学校法人関東学院 (14)
【Fターム(参考)】