説明

シリカーゼによるケイ酸塩及びシリコンの分解及び修飾並びに可逆酵素の使用

シリカテインはシリケート形成有機体の酵素であり、そのシリケート骨格の合成に用いられる。本発明は、アモルファス二酸化ケイ素(ケイ酸及びシリケート)の合成、シロキサンの合成、及びこれらの化合物の修飾並びにその技術的使用のための、遺伝子導入後の自然源由来の高発現及び高活性の組み換えシリカテイン並びにシリカテイン融合蛋白質の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.
シリコンは地球の地殻中において2番目に多い要素であり、様々な化合物の総ての種類において存在している。シリコン化合物はこの鉱物群の多くの種を代表するだけでなく、経済的観点からも非常に重要である。技術的に使用されるケイ酸塩からなる材料は、例えば、ガラス、磁器、エナメル、粘度製品、セメント及び水ガラスである。一部のケイ酸塩は触媒活性を示す。ケイ酸塩の多様性は構造及び技術的使用においてさらに拡大されている。他の要素、特にアルミニウムにより幾つかの格子点位置が占められているとすると、該位置はシリコンにより占められることとなる。特に長石及びゼオライトのアルモケイ酸塩は、その分子篩及びイオン交換活性により重要である。また、特にシリコン(シロキサン)のような他のシリコン化合物は、インプラント生産に用いられるなど薬学的にも重要である。
【0002】
1.1.二酸化ケイ素
【0003】
二酸化ケイ素(SiO2)は、結晶型及び非晶型の両方をとることができる。特に石英、トリジマイト、及びクリストバライトは結晶質SiO2の様々な型をとる。アチャット(Achat)、オパール、及びフリントストーンは代表的な非晶質二酸化ケイ素材料である。総てにおいてこれらシリコンは配異数4を有し、4つの酸素原子により4面体状に囲まれている。
【0004】
また、珪藻(diatomeae)の殻及びディトメオウス(diatomeous)海綿の針(交接刺)は、非晶性SiO2からなる。
【0005】
1.2.ケイ酸及びケイ酸塩
【0006】
4面体に構成された[SiO2]4イオンはSiO4単位を連結することにより重合しやすく、各ケースにおいて2つのSi原子が酸素原子により互いに連結している。この場合、縮合(水を分解すること)によって、最初にオルトケイ酸オルトジケイ酸(ピロケイ酸;H6Si2O7)が作られる。さらにポリケイ酸を経る縮合により、メタケイ酸[(H2SiO3)]nとなる。小数のSiO4単位(n=3,4or6)の場合においても、環状分子がSiO4単位を経て形成されうる。
【0007】
ケイ酸の塩、アルカリケイ酸塩は、例えばソーダ、塩水または炭酸カリウムとともに石英を溶かすことにより得られ、[SiO4]4-陰イオンに加えて、[Si2O7]6-陰イオン、[Si3O10]8-陰イオン、及びより大きな陰イオンをも含む。Me2SiO4構造を有するこのようなオルトジケイ酸(オルトケイ酸塩)は、単一の[SiO4]4-陰イオンを含む。このようなアルカリケイ酸塩溶液の酸性化の後に、プロトンの取り込みにより形成された酸性分子は互いに縮合し、該溶液がゲル状のポリケイ酸を形成する。縮合のさらなる過程により、最初に得られる鎖またはネットから三次元的構造が形成され、該構造が構成SiO2に相当する。
【0008】
ケイ酸塩は次のように分類される:
1.分離陰イオンによるケイ酸塩、すなわち1a) アイランド−ケイ酸塩(陰イオン[SiO4]2-を有するオルトケイ酸塩:例:フェナサイト、橄欖石、ジルコニウム)、1b)グループ−ケイ酸塩(短鎖単位を形成するSiO44面体(SiO4-tetraeders)の連結:例:ジケイ酸塩及びトリケイ酸塩)、及び1c)環-ケイ酸塩(SiO44面体が環形状に配置される、例:3環を持つベニトイド(benitoid)、4環を持つアキシナイト、及び6環を持つベリリウム)、
2.鎖−ケイ酸塩及びリボン-ケイ酸塩(鎖様SiO44面体が互いに結合;陰イオン[SiO3]2-の代表ポリマー、及びいくつかのSiO4鎖が連結して形成されたリボン様分子;例:ホルンブレンド、アスベスト)、
3.層−ケイ酸塩又はシート-ケイ酸塩(陰イオン[Si4O10]4-の代表的ポリマーであるテトラエーダーの均一な層から作られ、間に貯えられた陽イオンにより互いに保持される;例:タルカム、カオリニット(caolinit)、および
4.骨格−ケイ酸塩(4面体状SiO4基の三次元格子への連結;例:二酸化ケイ素の長石化(feldspatuses)のような様々な修飾)。
【0009】
一般的な文献:Hinz, Silicat-Lexikon(2Bd.), Berlin: Akademie Verl. 1985(非特許文献1);Liebau, Structural Chemistry of Silicates, Berlin: Springer 1985(非特許文献2); Petzoldand Hinz, Einfuhrungindie Grundlagender Silicatchemie, Stuttgart:Enke 1979(非特許文献3);CD Rompp Chemie Lexikon-Version 1.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995(非特許文献4)。
【0010】
1.3.シリコン
【0011】
ケイ酸のOH基の部分置換により様々なシリコン(シロキサン)が生成されている。該部分置換は縮合過程には関与しない単一結合の有機残基による。これらシリコンは次のように分類される:1)線状ポリシロキサン(構造タイプ:R3SiO[R2SiO]nSiR3)、2)分枝状ポリシロキサン(枝部位における、機能的トリシロキサン単位又は機能的テトラシロキサン単位)、3)(機能的ジシロキサン単位からの)環状ポリシロキサン、及び4)(鎖状−又は環形状−分子が二又は三次元ネットワークに連結している)交差結合ポリマー。
【0012】
シリコンは重要な技術的材料である。鎖状巨大分子からなる高分子量シリコン(シリコンオイル)の粘性は、鎖長が増加することにより増加する。低い程度で交差結合しているシリコンはゴムの弾力性を示し(シリコンゴム)、高い程度で交差結合しているシリコンは樹脂様の弾力性を示す(シリコン樹脂)。
【非特許文献1】Hinz, Silicat-Lexikon (2Bd.), Berlin: Akademie Verl. 1985
【非特許文献2】Liebau, Structural Chemistry of Silicates, Berlin: Springer 1985
【非特許文献3】Petzold and Hinz, Einfuhrungindie Grundlagender Silicatchemie, Stuttgart: Enke 1979
【非特許文献4】CD Rompp Chemie Lexikon-Version1.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
1.4.シリカテイン
【0014】
上記したシリコン化合物のいくつかはコスト集約方法によってのみ生成されうるものであり、または鉱物源として少量のみ存在するものである。そのため、これらシリコン化合物は相当な努力によってのみ分離されるものである。ケイ酸塩の化学合成過程は、高圧及び高温といった劇的な条件を必要とする。
【0015】
これとは対照的に、特異的な酵素の助けにより、有機体(特に海綿動物及び藻)は自然条件、すなわち低温及び低圧でケイ酸塩骨格を形成することができる。この経路の利点は、高い特異性、よく調整された構造、適応性、及びナノ構造が合成される可能性である。
【0016】
最近、ケイ酸塩形成酵素(シリカテイン)の分離について初めて報告された:Shimizu, K., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6234-6238(1998)。
【0017】
しかしながら、この報告には、酵素(シリカテイン) の分離及び精製が時間を要し困難であり、相対的に低い量しか得られない、という問題がある。
【0018】
1つの可能性あるアプローチは、既知のcDNA配列又は遺伝子配列を用いた組み換え蛋白質(組み換えシリカテイン)の合成である。これにより、効果的なケイ酸塩の酵素合成が可能となる。
【0019】
海綿(Suberites domuncula) 及び ユズダマ海綿(Tethya aurantia)からの組み換えシリカテインの生産の場合には、技術水準の方法を用いると、非常に低い生産量しか得られず、組み換え蛋白質は低い酵素活性しか示さない、という問題がある。本発明は、発現条件の特異的な修正により、組み換えシリカテインが高い生産量、及び高い特異的活性で生産されることができることを示す。さらにまた、修飾された組み換え酵素は、天然の酵素と完全cDNA配列を持っている組み換え酵素に対し、より高いpHと温度安定性を示す。また、中性範囲(pH7.0)のpH値で活性のある天然の蛋白質、及び完全なcDNA配列による組み換え蛋白質とは対照的に、修飾された組み換え蛋白質は、広い範囲pH(4.5-10)において酵素活性を示す。
【0020】
特定のポリクローナル抗体の生産、及びそれに続く固相への結合を手段として、酵素の早くて効果的な該酵素のアフィニティクロマトグラフィ精製は達成されうる。
【0021】
融合蛋白質の使用及び様々な開始基質の使用は、バリエーション及び技術的用途の非常に多くの可能性につながる。
【0022】
1.4. ケイ酸を含む海綿におけるバイオミネラリゼーション(有機体二酸化ケイ素の形成)
【0023】
多くのシリコン化合物は、コスト集約型の方法でのみ生産され、ケイ酸塩の化学合成のプロセスにはしばしば、高圧と高温のような劇的な条件づけることが必要とされる。対照的に、ケイ酸を含む海綿(珪藻に加えて)により、特定の酵素を用いて、穏やかな条件下(すなわち比較的低温及び低圧)でケイ酸塩骨格を形成することができる。さらに、これらの有機体において、SiO2合成は、高い特性、管理可能性、及び上記した微細構造(ナノ構造)合成の可能性により特徴づけられる。
【0024】
ケイ酸を含む海綿動物の骨格の主な要素は針様の交接刺で、尋常海綿綱(ホーン海綿)及び六放海綿綱(ガラス海綿)のグループにおいてはアモルファス非晶質の二酸化ケイ素からなる。尋常海綿綱及び六放海綿綱は、骨格においてカルシウムの代わりに二酸化ケイ素を有する唯一の後生動物である。
【0025】
ケイ酸を含む海綿の交接刺の不透明な二酸化ケイ素は、近似公式(SiO2)25H2Oとなる6-13%の水を含む(Schwab DW, Shore RE(1971)「ケイ酸を含む交接刺の内部の層化のメカニズム」Nature 232 : 501-502)。
【0026】
有機体を形成しているケイ酸塩においてSiO2骨格の合成に関与している酵素、及びその技術的使用が記述された[PCT/US99/30601.「方法、化合物、及び生体機能模倣触媒(例えばシリコンアルコキシドの重縮合を媒介し、立体的に方向付けるために用いるシリカテイン及びブロック共ポリペプチド)、金属アルコキシド、及び環境的穏やかな条件下で二酸化ケイ素、ポリシロキサン、ポリメタロオキサン、及び混合ポリ(シリコン/金属)オキサン材料を生成するためのこれらの有機的共役」;Morse DE, Stucky GD, Deming, TD, Cha J, Shimizu K, Zhou Y ; DE10037270 A 1.「Silicatein-vermittelte Synthesis von amorphen Silicaten and Siloxane and ihre Verwendung.」Deutsches Patentamt 2000.;Muller WEG, Lorenz B, Krasko A, Schroder HC; PCT/EP01/08423.「アモルファスケイ酸塩とシロキサンのシリカテインによって媒介される合成とその使用」;Muller WEG, Lorenz B, Krasko A, Schroder HC). 「この酵素は、海のケイ酸を含む海綿Suberites domunculaから分離された」(Krasko A, Batel R, Schroder HC, Muller IM, Muller WEG (2000)「海綿S. domunculaisにおけるシリカテイン及びコラーゲン遺伝子の発現は、ケイ酸塩とミオトロフィンによって調節された。」Europ J Biochem 267: 4878-4887);「自然源から分離されている酵素(シリカテイン)により、有機シリコン化合物(アルコキシシラン)から二酸化アモルファスシリコン(ポリ(ケイ酸)及びポリ(ケイ酸塩)を合成することができる(Cha JN, Shimizu K, Zhou Y, Christianssen SC, Chmelka BF, Stucky GD, Morse DE(1999)。海綿のシリカテインフィラメント及びシリカテインサブユニットは、インビトロでの二酸化ケイ素及びシリコンの重合を方向付ける。」Proc Natl Acad Sci USA 96: 361-365]。
【課題を解決するための手段】
【0027】
驚くべきことに、発明者(最初に海綿S. domunculaのモデル系を発明した)は酵素(シリカーゼと定義)が結晶質二酸化ケイ素と同様にアモルファス二酸化ケイ素の両方を分解できることを発見した。
【0028】
海綿において二酸化ケイ素の異化に関係しているこの酵素は、インビトロのプリモルフ(Primmorph)細胞培養システム(下記参照)を用いてmRNAの「ディファレンシャルディスプレイ」の技術を使用して同定された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
シリカーゼは次の二つの機能を示す:まず、一つ目の機能は(i)(炭酸脱水酵素との類似する)石灰材の溶解する機能、及び(ii)(これは驚くべきことに)ケイ酸を形成することによって、二酸化ケイ素を溶解する機能である。また、シリカーゼ(最初にS. domunculaで発見された)は石灰(材料を含む)の異化並びにケイ酸(交接刺を含む)の異化を行うことができる。
【0030】
さらに、本発明は、シリカーゼ遺伝子が、培地中のシリコン濃度の増加(通常は60μMまで)によって誘発うる点で新規である(図7参照)。
【0031】
さらにまた、本発明により一般的に、アモルファスシリコン二酸化物又は結晶質シリコン二酸化物(ケイ酸、ケイ酸塩の縮合生成物)、シリコン、及び他のシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物だけでなく、これら化合物の混合ポリマーのインビトロ又はインビボにおける分解方法が提供される。該方法においては、ポリペプチドまたはポリペプチドの錯塩が分解に使用され、該ポリペプチドは、配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す(図3参照)、動物、細菌、植物、又は菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含むことを特徴とする。これまでに、そのような炭酸脱水酵素ドメインを含む酵素がこのようなケイ酸塩またはシリコンを分解することができることは知られていなかった。当該過程の可逆性により、本発明の一態様はさらに、アモルファスシリコン二酸化物(ケイ酸、ケイ酸塩の縮合生成物)、シリコン、及び他のシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物だけでなく、これら化合物の混合ポリマーの合成方法に関する。該方法においてポリペプチド又はポリペプチドの錯塩は合成に使用され、該ポリペプチドは配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す(図3参照)、動物、細菌、植物、又は菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含むことを特徴とする。
【0032】
好ましくは、本発明の方法は、ケイ酸、モノアルコキシシラントリオール、ジアルコキシシラントリオール、トリアルコキシシラノール、テトラアルコキシシラン、アルキル−若しくはアリール−シラントリオール、アルキル−若しくはアリール−モノアルコキシシランジオール、アルキル−若しくはアリール−ジアルコキシシラノール、アルキル−若しくはアリール−トリアルコキシシランを含む化合物又は他の金属(IV)化合物を合成の反応物質(基質)として使用することを特徴とする。定義された化合物の混合物を用いることにより、定義された組成を有する定義された混合ポリマーが生成されうる。
【0033】
本発明のさらなる一態様により、ポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩、又はポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩の他の分子又はガラス、金属、金属酸化物、プラスチック、バイオポリマー、若しくは他の鋳型材料の表面への結合により、定義された二次元構造又は三次元構造が形成されうる。
【0034】
また、本発明の別の一態様は、ケイ酸又はシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物を含む構造若しくは表面の修飾方法である。該方法においてポリペプチド化合物又はポリペプチド錯塩が修飾に用いられ、該ポリペプチドは配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す動物、細菌、植物ケイ酸、又は菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含むことを特徴とする。好ましくは、ケイ酸を含む構造又は表面が貴石又は半貴石の形状である。
【0035】
好ましくは本発明の方法における修飾には、ポリペプチド又はポリペプチドの錯塩による、ケイ酸又はシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物を含む構造又は表面のスムージング、エッチング又は穴の生成が含まれる。
【0036】
本発明のさらなる一態様は、本発明の方法により得られる、特に貴石又は半貴石の形状である、化学化合物又はケイ酸を含む構造若しくは表面に関する。
【0037】
本発明の別の一態様は、配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド又は炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列が配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す該ポリペプチドに相同なポリペプチド、該ポリペプチドの錯塩、又は部分ポリペプチドに関する。
【0038】
本発明のまた別の一態様は、核酸、特に配列番号2に記載の核酸に関し、該核酸は本発明のポリペプチドを実質的にコードしているということを特徴とする。本発明の核酸はDNA、cDNA、RNA又はこれらの混合物として存在し、該核酸の配列は少なくとも一つのイントロン及び/又はポリA配列を有することを特徴とする。本発明の他の一態様は、相補的「アンチセンス」配列である本発明の核酸に関する。
【0039】
本発明のさらに別の一態様は、(a)融合蛋白質(キメラ蛋白質)コンストラクト、(b)分離蛋白質発現(プロテアーゼ切断部位)を含むコンストラクト、又は(c)分離蛋白質発現(カセット発現)を含むコンストラクトである本発明の核酸に関する。本発明の核酸は合成的に生成されてもよい。各手法は当該技術分野において周知である。
【0040】
本発明の別の一態様は、特にプラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター若しくは粒子、ナノ粒子、又はリポソームである、本発明の核酸を含むベクターに関する。さらに、特にナノ粒子又はリポソームである、本発明のポリペプチドを含む蛋白質の転写のためのベクターを含む。
【0041】
本発明のまた別の一態様は、本発明のベクターをトランスフェクションした、又は本発明の粒子により感染若しくはトランスデュースさせた宿主細胞に関する。該宿主は請求項1に記載のポリペプチド、該ポリペプチドの錯塩又は部分の発現により特徴づけられる。全ての既知の宿主細胞−有機体、例えば、特にイースト、菌類、海綿動物、細菌、CHO細胞又は昆虫細胞が適している。
【0042】
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが合成的に生産されたということ、あるいは、ポリペプチド又はポリペプチドの錯塩が、原核細胞若しくは真核細胞の抽出物若しくは溶解液に存在するということで特徴づけられる。細胞抽出液又は溶解液は細胞の生体外(ex vivo)又は生体内(ex vitro)、例えば組み換え細菌性細胞又は海綿から得ることができる。
【0043】
本発明のポリペプチドは当該技術に周知の方法により精製することができ、これにより該ポリペプチドは他の蛋白質を実質的に含んでいない状態となり得る。
【0044】
本発明のさらなる一態様は、配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド若しくは該ポリペプチドに相同であり炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列において配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を有するポリペプチドの阻害剤又は活性剤の同定方法に関し、a)配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド、又は炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列が配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を有する該ポリペプチドに相同なポリペプチドを提供し、b)工程a)のポリペプチドを候補阻害剤又は活性剤に接触させる、及びc)ケイ酸塩又はシリコンを合成若しくは分解する該ポリペプチドの活性を測定する。この方法により様々な治療に適している可能性がある基質を同定することができる(下記参照)。このような基質の同定方法は同業者に周知であり、例えば、放射性標識又は酵素標識した候補化合物の使用が挙げられる。以下に述べるシリカーゼの活性測定方法にはテストフォーマットを考慮して当業者により、容易に修正され得る。それによって、抑制剤は本質的に完全に酵素活性を低下させ、活性剤は酵素活性を誘導するか、ベースラインより上に増幅する。
【0045】
該方法の二者択一により、配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド、又は炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列において配列番号1に示す配列に少なくとも25%の相同性を有する該ポリペプチドに相同なポリペプチドが、インビボ(invivo)、細胞抽出液、細胞溶解液又は精製された形状で提供される。
【0046】
本発明のさらに別の一態様は、a)(請求項25又は26に記載の)阻害剤又は活性剤の同定、及びb)同定された阻害剤又は活性剤と医薬的に許容される担体又は賦形剤との混合を含むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法に関する。
この構成物により、例えばポリペプチド又は核酸のような様々な製剤が提供され、又は製薬構成物を珪肺症の予防又は治療に用いることができる。好ましくは、水晶結晶の溶解により珪肺症の予防及び治療に用いる。さらにまた、本発明のポリペプチド若しくは核酸又は医薬組成物は、シリコン及びシリコンインプラントの融食作用、及びシリコン及びシリコンインプラントの融食活性の調節に用いることができる。最後に、本発明は、融食作用のために本発明の核酸を細胞にトランスフェクションするために、又はシリコンとシリコンインプラントの融食活性を調節するために用いることができる。このように上記した使用及び方法は、当業者に既知であり、ここにあるように必要性及び要求に応じて調整することができる。
【0047】
1.5. シリカーゼをコードする遺伝子のクローニング
【0048】
「ディファレンシャルディスプレイ」技術を使用することにより、炭酸脱水酵素をコードするcDNAを同定した。これまでに、炭酸脱水酵素はpH調節、HCO3-再吸収、及びCO2呼気作用に関与していることが知られているが、二酸化ケイ素材料を酵素分解することは知られていなかった。
【0049】
海綿S. domuncula(SDSIA)由来のシリカーゼをコードするcDNA、並びにヌクレオチド配列(SIA_SUBDO)由来のポリペプチドは、次の特性を有している。cDNAの長さ:1395ヌクレオチド(nt);オープンリーディングフレーム:nt122-nt124からnt1259-nt1261(停止コドン)まで;ポリペプチドの長さ:379アミノ酸;ポリペプチドの相対的分子量(Mr):43131;等電点(pI):6.5(PC/GENE (1995) Data Banks CD-ROM; Release 1 4.0. Intelli Genetics, Inc. Mountain View, CAにより計算)。
【0050】
海綿SDSIAクローンをプローブとしてのノーザンブロット分析を行った結果、1.5kbのバンドが得られた。
【0051】
図2(下)は、ディファレンシャルディスプレイ技術により同定された、海綿シリカーゼcDNAのヌクレオチド配列を、図2(上及び下)並びに図3Aは海綿シリカーゼ(SIA_SUBDO)のヌクレオチド配列由来のポリペプチドを示す。
【0052】
海綿シリカーゼの派生アミノ酸配列は、炭酸脱水酵素ファミリーのアミノ酸配列に大きな類似性がある。これまでに、炭酸脱水酵素のわずか7つのイソ酵素しか、ヒトで確認されなかった(Sun MK, Alkon DL(2002)「注目の炭酸脱水酵素ゲート調節」:memory therapy and enhancement. Trends Pharmac Sci 23: 83-89)。ヒト炭酸脱水酵素II(CAH2_HUMAN; P00918)と海綿シリカーゼの「期待値」[E](Coligan JE, Dunn BM,PloeghHL,SpeicherDW, Wingfield PT(2000) Current protocols in protein science.John Wiley & Sons, Chichester)は2e-29であった。海綿シリカーゼにおける真核生物型炭酸脱水酵素ドメイン(PFAM 00194 [www.ncbi.nlm.nig.gov])はアミノ酸領域aa87からaa335で見つかった(図3A)。ヒト炭酸脱水酵素IIと海綿シリカーゼのアラインメントにより、真核生物型炭酸脱水酵素に特徴的である固有アミノ酸[Fujikawa-Adachi K, Nishimori I,TaguchiT, Yuri K, Onishi S (1999)「ヒト炭酸脱水酵素関連蛋白質、CA-RPXIのcDNA配列、mRNA発現、及び染色体局在」Biochim Biophys Acta 1431: 518-524; Okamoto N, Fujikawa-Adachi K, Nishimori I, Taniuchi K, Onishi S (2001)「ヒト脳におけるヒト炭酸脱水酵素関連蛋白質CA-RPX及びXIのcDNA配列」Biochim Biophys Acta 1518: 311-316]のほとんどが海綿シリカーゼにおいても存在していることがわかった。しかし、海綿の配列において、192番目(アラニン)、205番目(フェニルアラニン)及び207番目(フェニルアラニン)のアミノ酸残基は置換されている(図3A)。
【0053】
炭酸脱水酵素はCO2の可逆的水和に関連する亜鉛金属酵素を構成している(Sly WS, Hu PY (1995)「ヒト炭酸脱水酵素及び炭酸脱水酵素欠乏症」Annu. Rev. Biochem. 64: 375-401)。3つの保存されたヒスチジン残基がシリカーゼのアミノ酸(aa181、aa183、及びaa206)に存在する(図3A)。
【0054】
1.6. シリカーゼの系統発生解析
【0055】
図3Bは、炭酸脱水酵素ファミリーにおいて選んだ各種代表における、海綿シリカーゼの位置を示す(系統樹;リン菌(Neisseria gonorrhoeae)の細菌性炭酸脱水酵素配列を有する「根樹」)。線虫(Caenorhabditis elegans)の炭酸脱水酵素とともに海綿シリカーゼは他の後生動物の炭酸脱水酵素の基盤を形成する。後生動物の酵素は、植物の酵素及び細菌性酵素から区別されている。
【0056】
2. シリカーゼの生産
【0057】
シリカーゼは組織又は細胞から精製することができ、又は組み換えにより生産することができる。
【0058】
2.1.自然源からのシリカーゼの精製
【0059】
全工程を4℃で行う。シリカーゼ(又は炭酸脱水酵素若しくは炭酸関連脱水酵素)の精製のために、ホモジナイズした組織を(例えばトリス−SO4/硫酸ナトリウムバッファー(pH8.7)中で)、又は該バッファー中でホモジナイズした細胞を遠心分離し、得られた上清をp-アミノメチルベンゼンスルホン酸アミドと結合している、例えばCM-Bio-GelAのようなアフィニティークロマトグラフィーマトリックスにかけた。そして、上清を回転攪拌器上で(例えば24時間)インキュベートする。さらに、ガラス濾過器を用いた吸引によりアフィニティーゲルを回収し、バッファー(例えば0.2 M Na2SO4、1 mM ベンズアミジン、及び20%グリセロールを含む0.1 M Tris-SO4(pH8.7))で洗浄する。その後、非特異的に結合する蛋白質を除くためには、低いpH(例えばpH7.0)の同じバッファーを用いる第2の洗浄工程の追加が適している。そして、ゲルをカラムに移し、同じのバッファー(pH7.0)で洗浄する。酵素の溶出には、例えば0.4 M NaN3、1 mM ベンズアミジン及び20%グリセロールを含む0.1 M Tris-SO4バッファー(pH7.0)を用いることができる。溶出された酵素蛋白質を、例えば1 mM ベンズアミジンを含む10 mM Tris-SO4バッファー(pH7.5)に対し透析した後、例えば10 mM Tris-SO4バッファー(pH7.5)で平衡にした透析イオン交換カラム(例えばDEAEセファセル)に加える。同じバッファーで洗浄後、直線塩勾配(例えば0から0.1 M Na2SO4)を利用して酵素を溶出し、回収する。この手順により、特に海綿S. domunculaからシリカーゼを精製することができる。
【0060】
2. 2.組み換えシリカーゼの生産
【0061】
2.2.1. 海綿からのcDNAのクローニング
mRNA/転写産物の「ディファレンシャルディスプレイ」技術の実施は周知技術である(Muller WEG, Krasko A, Skorokhod A, Bunz C, Grebenjuk VA, Steffen R, Batel R, Muller IM, Schroder HC (2002)「海綿Suberites domunculaにおける、組織及び細胞レベルの組織適合性反応:同種移植炎症因子1の中心的役割」Immunogenetics 54, 48-58)。全RNAはコントロール培養(低いシリコン濃度5 pMにて維持)、並びに60μM シリコン存在下で処理した培養からTRIzol reagent(GibcoBRL)を用いて分離した。最初のcDNA鎖の合成は「アンカー(anchored)」オリゴ(dT)プライマー及びAMV逆転写酵素を製造元(プロメガ)の実験手引書に従い行う。最初のcDNA鎖の合成の後、得られたcDNAを10倍量のH2Oで希釈し、そのうち2μlをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いる。「任意(arbitrary)」プライマー1(5'-GTGATCGCAG-3')または2(5'-CTTGATTGCC-3')、並びに、2μM dNTP、T11GC、5ユニットBioThem Polymerase(Genecraft)及び[α-32P]dATPを添加した後、反応を20 plで行う。PCRには次の反応条件が適している:95℃、5分間の最初の変性、その後95℃で20秒間、42℃で120秒間、及び72℃で30秒間の増幅サイクルを40サイクル行い、72℃で10分間最後のインキュベーションを行う。その後、サンプルを5% ポリアクリルアミドゲル(1xTBE中)で分離する。ゲルを電気泳動後、乾燥させ、X線フィルムに4日間曝す。放射能により同定された目的のバンドを切り出し、200μl H2O中で15分間煮沸し、氷冷した後14000 xgで10分間遠心する。得られた上清に同量の10M 酢酸アンモニウム、20μg/ml tRNAを加え、2.5倍量のエタノールで80℃にて一晩沈殿させる。cDNAペレットを75% エタノールで3回洗浄し、20μl H2Oに溶解する。
【0062】
上述したプライマーを用い同一の条件下で、およそ2μlの溶出したバンドを50μl反応試料中で再増幅し、pGEM-Tベクター(プロメガ)にサブクローニングし、配列決定する。
【0063】
異なる発現を示す、すなわち、60 mM 二酸化ケイ素で処理した細胞のRNAを有するゲルに追加的に含まれる、転写産物を選別する(図1)。同定されたcDNA/転写産物をBLASTデータベースに含まれる配列と比較する。図1の例では、次の分子が最も大きい相同性を示した:カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMキナーゼ)IIガンマ(XM_044349;Expect value [E]: 1e-16); hypothetic protein(XP_101359, E1,6); MUC3B ムチン(AJ291390, E0,20); hypothetic protein(XP_067115, E5,9); hypothetic protein(XP_090138, E2,9); ATP-binding cassette, subfamily A member 4(XM_001290, E 1,6); polypeptide similar to the zinc finger protein 91(XM_091947, E3,1) ; hypothetic protein(XP_104250, E0, 48)、hypothetic protein(XP_169372, E8,6); hypothetic protein(XP_104250, E4,1)、hypothetic protein(XP_098020, E3,3)及びhypothetic protein(XP_169372, E8,6)。
【0064】
これらの配列に加え、シリカーゼが追加の転写産物として同定され、詳細に解析された。
【0065】
シリカーゼ遺伝子もまたcDNAライブラリー、例えばZap Express及び大腸菌のXL1-Blue MRF’から、適した変性プライマーを用いてPCR技術により同定することができる;このために、対応するベクター特異的プライマーが用いられる。得られた合成産物は各cDNAライブラリーにおけるスクリーニングに用いる。その後、同定されたクローンをベクター(例えばpGem-7)にサブクローニングした後、配列決定する。
【0066】
2.2. 2. 組み換えシリカーゼの発現及び分離
【0067】
組み換えシリカーゼ(rSIA_SUBDO)は好ましくは大腸菌で生産する。しかしながら、該生産は酵母細胞及び哺乳動物細胞においても可能であり、成功した。以下の例において、大腸菌での「GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)融合」システム(アマシャム)を用いたS. domunculaのSDSIA遺伝子の発現が記述されている。この例においては、発現の間、2つのインサートがシグナルペプチドの可能性ある効果を排除するために用いられる;一つのインサートは全由来の蛋白質(長型;アミノ酸aa1からアミノ酸aa379まで)を含み、他のインサートはアミノ酸aa96からaa379(短型)のみを含む(図3A)。対応するクローンはSDSIA-I及びSDSIA-sとして指定されている。これらクローンは対応するベクター、たとえばSchistosomajaponicumのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-遺伝子を含むプラスミドpGEX-4T-2にクローニングする。他の発現ベクターも好適である。大腸菌を形質転換した後に、シリカーゼの発現は通常IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)で誘導し、1 mM ZnSO4の存在下37℃にて4または6 時間行うAusubel FM, Brent R, Kingston RE, Moore DD, Smith JA, Seidmann JG, Struhl K(1995) Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, New York)。SIA_SUBDO-l(長型;Mr69kDa)またはrSIA SUBDO-s(短型;Mr58kDa)を有する得られたGST融合蛋白質を例えばグルタチオンセファロース4Bにおけるアフィニティクロマトグラフィにより精製する。組み換え海綿シリカーゼからグルタチオン−S−トランスフェラーゼを分離するため、融合蛋白質をトロンビン(10ユニット/mg)で切断する。その後、2-メルカプトエタノール存在下にて蛋白質をゲル電気泳動にかける。0.1% NaDodSO4含有10% ポリアクリルアミドゲル(PAGE)でゲル電気泳動を行うことができる。ゲルをクマシーブリリアントブルーで染色する。
【0068】
切断、精製、及びそれに続くPAGEを行った後、組み換え蛋白質の長型(rSIA_SUBDO-l[43kDa])及び短型(rSIA_SUBDO-s[32kDa])を得た(図4)。
【0069】
2.2.3.他の有機体からの組み換えシリカーゼの発現及び単離
【0070】
上述した他の有機体からのシリカーゼcDNAの単離、クローニング、及び発現は、(二酸化ケイ素を生産する)珪藻(例えばCylindrothecafusiformis)によっても達成される。純粋培養により得られる珪藻は公知である(Kroger N, Bergsdorf C, Sumper M (1996) Europ J Biochem 239: 259-264)。
【0071】
2.3. 抗体によるシリカーゼの単離及び精製
【0072】
上述した方法による抽出又は部分精製の後に、シリカーゼは抗体アフィニティマトリックスにおいて精製される。アフィニティマトリックスは、シリカーゼ特異的抗体を固相(CNBr活性化セファロース、又は他の好適な担体)に固定させて作製する。抗体として、シリカーゼに対する標準的な方法(Osterman LA (1984) Methods of Protein and Nucleic Acid Research, Vol 2, Springer-Verlag, Berlin)により作製されたモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いる。マトリックスのカラムへの抗体の結合は製造元(ファルマシア)の実験指示書にしたがって行う。精製シリカーゼの溶出はpH又はイオン強度の変化により行う。
【0073】
3.シリカーゼ活性の測定
【0074】
以下は、短型の組み換え海綿シリカーゼ(rSIA_SUBDO-s)において見られる活性のみについてである。
【0075】
3.1.炭酸脱水酵素活性
【0076】
rSIA_SUBDO-sの炭酸脱水酵素活性の測定には、p-ニトロフェニル酢酸の加水分解に基づく分析評価を用いることができる(Armstrong JM, Myers DV, Verpoorte JA, Edsall JT (1966)「ヒト赤血球炭酸脱水酵素の精製及び性質」J Biol Chem 241: 5137-5149)。0.5 mlの3 mM p-ニトロフェニル酢酸溶液(シグマ)を0.05 ml の0.3 mM Tris-HCl バッファー(pH7.6)と混合する。その後混合溶液を25℃にて5分間プレインキュベーションしてから組み換えシリカーゼ(rSIA_SUBDO)を添加し、348nmにおける吸光の増加を5分間にわたり測定する。
【0077】
図5は、アッセイにおいて、組み換えシリカーゼの活性は酵素濃度によることを示す。酵素活性を、毎分の光学濃度(OD)単位で示す。アッセイ(0.56μl)ごとに1μgのシリカーゼを添加した結果、0.005 OD348nmの活性となり、蛋白質濃度の上昇に伴いまで0.04 OD348nm上昇した。
【0078】
3.2. シリカーゼ活性
【0079】
シリカーゼの基質(アモルファス二酸化ケイ素)として、例えばS. domunculaの交接刺が適している。交接刺は、エチレンジアミンテトラ酢酸(20 mM、PBS中;PBS=リン酸塩緩衝塩溶液、1.15 mM KH2PO4、8.1 mM Na2HPO4、137 mM NaCl 及び2.7 mM KClから成る)中で12時間インキュベーションをすることにより、海綿組織から得ることができる。蒸留水洗浄及びエタノール洗浄(2回)の後、交接刺を乾燥し(56℃)、すり鉢においてすりつぶして粉にする。
【0080】
シリカーゼ活性は以下のように決定されることができる。一般に、100μgの乾燥交接刺(粉)を、2 mlのエッペンドルフチューブ中で適当なバッファー(例えば50 mM Tris-HClバッファー(pH7.2;10 mMのDL-ジチオスレイトール、100 mM NaCl)及び0.5 mM ZnSO4)に加える。それから、通常50μlの組み換えシリカーゼを添加し、25℃にてインキュベートする(5℃から約65℃までの他の温度においてもインキュベーションは可能である)。平均的なインキュベーション時間は、60分である。溶解した二酸化ケイ素の量の定量のために、溶解していない交接刺を除去する(14000 xg; 15分間; 4°C)。遊離可溶性ケイ酸は、例えばモリブデン支持決定方法[例えば比色「シリコン試験」(Merck;1.14794)]を用いて、量的に決定することができる。この場合、ケイ酸の量は、シリコン標準の(Merck 1.09947)で較正曲線に基づいて810 nmにおける吸光値から計算される。
【0081】
図5は、組み換えシリカーゼがアモルファスシリコン二酸化物の分解(溶解)に触媒作用を及ぼすことを示す。一般に、アッセイにつき、1μg 組み換えシリカーゼの酵素濃度で、3 ng ケイ酸が遊離する。より高い蛋白質濃度(3または10μg/アッセイ)におけ
【0082】
3.3. 大腸菌溶解液におけるシリカーゼ活性
【0083】
シリカーゼ活性はまた、GST融合システムを使って、S. domuncula のSDSIA-遺伝子(以下の例において、短型=SDSIA-s)で形質転換した大腸菌の溶解液で測定することができる。表1に示す実験において、1.5 mlの溶解液と海綿交接刺(針;1mg)を様々な温度でインキュベートし、1 mM ZnCl2及び0.1 M NaClを添加した。1、3、6及び24時間後、サンプルを95℃にて10分間加熱して変性させ(シリカーゼを不活性化させるため)、プロテイナーゼK(30 ユニット/ml)と37℃にて1時間インキュベートした。その後、遠心分離(5分間、14000 rpm)を行い、モリブデンアッセイ(Merck社製キット;上記参照)を遊離ケイ酸塩の測定のために用いた。4℃では非常に少ない量のケイ酸塩しか遊離されないが、室温(22℃)及び56℃では各々最大3.4及び4.1 ng/ml(24時間)のケイ酸塩が遊離されたことがわかった。
【0084】
形質転換していない大腸菌の溶解液においてもごく低い量の遊離ケイ酸塩が測定することができ、細菌細胞の抽出液においても著しいケイ酸塩分解活性が存在していることを示す。
【0085】
表1. 様々なインキュベーション温度における、形質転換された(+)大腸菌及び形質転換されていない(-)大腸菌の溶解液中のシリカーゼ活性。形質転換にはS. domunculaのSDSIA遺伝子の短型(=SDSIA-s)を用いた。ケイ酸塩の遊離は1、3、6、及び24時間インキュベーションした後に測定した。
【0086】
【表1】

【0087】
3.4. 市販の炭酸脱水酵素のシリカーゼ活性
【0088】
驚いたことに、シリカーゼ活性は、海綿酵素において測定されるだけでなく、市販の炭酸脱水酵素においても測定することができる。表2は、珪藻の骨格由来のケイ酸塩(ケイ酸塩−珪藻の骨格)の遊離、並びに市販の炭酸脱水酵素−調製による砂由来のケイ酸塩(ウシ赤血球由来;Calbiochem社)の遊離を示す。実験において、ケイ酸塩サンプルを水で2回洗浄し、エタノールで2回洗浄した後、乾燥した。その後、サンプルを50 mM Tris-HClバッファー(pH7.6)(1 mg/ml)中に懸濁し、2 mlのエッペンドルフチューブで分散させた(反応チューブごとに100μl;=反応チューブごとに100 pgのケイ酸塩)。その後、50 mM Tris-HClバッファー(pH 7.6)(1 mM ZnCl2存在及び不存在)中の1.4 mlのウシ炭酸脱水酵素(10ユニット;Calbiochem社)を反応チューブごとに添加した。チューブを室温(22℃)で攪拌しながら24時間インキュベートした。その後、反応液を遠心分離した(14000xg、15分間、4℃)。モリブデンアッセイ(Merck社、上記参照)により、上清中のケイ酸塩含有量を測定した。
【0089】
表2.ZnCl2の添加の有無における市販の炭酸脱水酵素調製(Calbiochem社)のシリカーゼ活性。ケイ酸塩の遊離は24時間インキュベーションした後に測定した。
【0090】
【表2】

【0091】
3.5. シリカーゼ活性の可逆性
【0092】
シリカーゼ反応は原則的に可逆性である。したがって、該反応はアモルファス二酸化ケイ素又はシリコンの合成にも使用することができる。シリカーゼによって媒介される合成にも、シリコン(IV)のアルキル若しくはアリールを置換したアルコキシ化合物、例えばテトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラノール、ジアルコキシシランジオール、モノアルコキシシラントリオール、アルキル−若しくはアリール−トリアルコキシシラン、アルキル−若しくはアリール−ジアルコキシシラノール、又はアルキル−若しくはアリール−モノアルコキシシランジオールを使用することができる。また、これら基質の混合物は重合する。したがって、混合ポリマーも作製することができる。
【0093】
4. 他の蛋白質の1又は数種のcDNAによる、シリカーゼのためのcDNA連結反応
【0094】
4.1. シリカーゼ融合蛋白質の生産
【0095】
シリカーゼの融合蛋白質の生産には、適切な発現ベクター(例えばpQE-30−ベクター; Qiagen)を用いる。例えば5´末端にBamHI制限酵素認識部位、及び3´末端にSalI制限酵素認識部位を有するシリカーゼcDNAを作製する。シリカーゼcDNAの停止コドンは除去する。そのために、PCR技術を用い、それぞれの制限酵素認識部位を有する増幅プライマーを用いる。第2の蛋白質のcDNAが結果的に得られ、これによりシリカーゼcDNAの3´末端と同一の切断部位(例えばSalI)が5´末端に存在することとなり、そして他と異なる切断部位が3´末端(例えばHindIII認識部位)に存在する。内在性の制限酵素認識部位がそれぞれのcDNAで存在するならば、代替の制限酵素を使用することができる。また、両cDNA間のリンカーを使用することができる。
【0096】
両cDNAは公知の方法により連結し、精製し、その後pQE-30ベクターに連結する。連結反応はヒスチジンタグ(約6個のヒスチジンコドン)により起こる。例えば組み換え蛋白質に存在するヒスチジンタグを用いる融合蛋白質の発現及び精製は、それぞれのアフィニティーカラム、例えばNi-NTAマトリックスにより行うことができる(Skorokhod A, Schacke H, Diehl-Seifert B, Steffen R, Hofmeister A, Muller WEG (1997) Cell Mol Biol 43:509-519)。
【0097】
4.2. 分離した発現I(プロテアーゼ切断部位)
【0098】
4.1の方法に代わるものとして、プロテアーゼ切断部位(例えばエンテロキナーゼ認識部位)は、付加的な蛋白質のcDNAとシリカーゼのcDNAとの間で作ることができる。この場合、新規の開始メチオニンのコドンは、付加的な蛋白質の遺伝子のコード領域の前に挿入することができる。発現及び精製のため、融合蛋白質を蛋白質分解的に切断する。その結果、両蛋白質は分離して存在することとなる。
【0099】
4.3. 分離した発現 II(カセット発現)
【0100】
選択肢として、1つのコンストラクトに関して両タンパク質を別々に発現することができる。このために、発現ベクターにおいて、シリカーゼ遺伝子は、ヒスタグの後とする。シリカーゼcDNA末端に、停止コドンを挿入する。開始メチオニンのためのコドンによるリボソーム結合部位は、付加的なタンパク質のcDNAとシリカーゼのcDNAの間にクローニングする。また、ヒスタグは付加的なタンパク質のcDNAの前に位置する。また、この遺伝子は、停止コドンを備えている。
【0101】
蛋白質をそれぞれの宿主細胞で機能分析のために用いる場合、ヒスタグを除去することができる。
【0102】
4.4. 応用
【0103】
4.1から4.3で記述される発現のために、真核細胞だけでなく細菌細胞を使用することができる。
【0104】
4.1から4.3で記述される発現は、3及びより多くのオープンリーディングフレームのために使用することもできる。
【0105】
5. 生体二酸化ケイ素の合成/分解のためのモデルシステム:プリモルフ(Primmorphs)
【0106】
5. 1. プリモルフ
【0107】
プリモルフ系についての特許出願がなされている(DE19824384. Herstellung von Primmorphe aus dissoziierten Zellen von Schammen, Korallen und weiteren Invertebraten: Verfahren zur Kultivierung von Zellen von Schwammen und weiteren InvertebratenzurProduktionand Detektionvon bioaktiven Substanzen, zur Detektion von Umweltgiften und zur Kultivierung dieser Tiere in Aquarien und im Freiland. Inventors and applicants: Muller WEG, Brummer F)。
【0108】
プリモルフは、増殖及び分化した細胞から成る集合体である。(Muller WEG, Wiens M, Batel R, Steffen R, Borojevic R, Custodio MR (1999)「海綿の初代細胞培養の樹立:Suberites domuncula由来のプリモルフ」Marine Ecol Progr Ser 178: 205-219)。プリモルフは、Ca2+ 及びMg2+不含有及びEDTA含有の人工海水中で分裂させた後に海綿組織から得られる海綿単一細胞から形成される。
【0109】
Ca2+及びMg2+含有海水に移した後に、集合体が海綿単一細胞から形成され、3日後には1 mmの大きさとなり、5日後には直径が約5 mmのプリモルフとなる。
【0110】
プリモルフは上皮様細胞(扁平細胞)により囲まれている。プリモルフの細胞は初代球状細胞であり、また変形細胞及び原始細胞が存在する。
【0111】
5.2. 交接刺形成におけるシリコンの影響
【0112】
海綿のプリモルフ系、例えばS. domunculaは交接刺の形成または溶解の分析に使用することができる。
【0113】
プリモルフを、30μM Fe(+++)(クエン酸塩として添加)及び10% RPM11640培地を添加した海水で8日間培養する。海水/培地中のシリコン濃度は5μMである。8日後、プリモルフをさらにこの培地で培養するか、又は60μM シリコンを含む培地(交接刺の形成に適したシリコン濃度;ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムとして添加)に移し、そして1又は3日間培養した。
【0114】
シリコンの添加無しで培養したプリモルフは、最初は円形、球状を示した。
【0115】
図6Aは、60μMのシリコン存在下で追加的に3日間培養後のほとんどのプリモルフは楕円形となることを示す。シリコンの存在下では、プリモルフは交接刺を形成し始めた。部分的に、長い交接刺(>100 um)が観察できた(図6B)。しかし、大抵は小さい交接刺(30 um)が見られた(図6D)。シリコン不存在下では交接刺は存在しなかった(図6C)。
【0116】
5.3. シリコン応答性遺伝子
【0117】
S. domunculaのプリモルフにおいて、シリカーゼ遺伝子の発現はシリコンの存在下で上方調節されている。これと同時に、以下の遺伝子の発現も上昇する:シリカテイン、コラーゲン、ミオトロフィン、及びシトレート・デヒドロゲナーゼ。
【0118】
シリカーゼ遺伝子の発現は公知の方法によるノーザンブロット、例えばシリカテイン及びコラーゲンの発現の測定を用いる方法、で測定することができる。(Krasko A, Batel R, Schroder HC, Muller IM, Muller WEG (2000)「海綿Suberites domunculaにおけるシリカテイン及びコラーゲン遺伝子の発現は、ケイ酸塩及びミオトロフィンによって調節されている」Europ J Biochem 267: 4878-4887)。
【0119】
図7に示す実験においては、未処理のプリモルフ及び60μM シリコンで1〜3日間培養したプリモルフを用い、その後RNAを抽出した。各5μgの全RNAを1% ホルムアルデヒド/アガロースゲル上で電気泳動により分離し、製造元(アマシャム)の実験手引書にしたがい、Hybond-N+ナイロン-メンブレンにブロットした。400〜600 bpサイズの以下のプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った:SDSIA(シリカーゼをコード)、SDSILICA(シリカテインをコード)、及びSDIDH(イソシトレート・デヒドロゲナーゼのαサブユニットをコード)。製造元(ロシュ)の実験手引書にしたがい、PCR-DIGプローブ合成キットを用いてプローブを標識した。メンブレンを洗浄後、DIGラベルした核酸を抗DIGFab断片(アルカリフォスファターゼを結合:10000倍希釈)で検出し、CDPを用いたケモルミネッセンス技術(ロシュ)により、ケモルミネッセンスの基質としてアルカリフォスファターゼを用いて視覚化した。
【0120】
図7はノーザンブロットの結果を示す。シリカーゼ及びシリカテインの遺伝子は、より高いシリコン濃度に応答して上方調節されていることが分かる。さらに、イソシトレート・デヒドロゲナーゼ遺伝子(クエン酸回路に関与する酵素をコードする)もまた上方調節されており、アモルファス二酸化ケイ素の形成は、細胞の代謝速度の増加を必要とすることを示している。
【0121】
6.シリカーゼ作用の様式
【0122】
配列の比較により、シリカーゼは炭酸脱水酵素(carbonate-hydrolase; EC4.2.1.1)ファミリーの一員であることがわかったことは驚くべきことであった。
【0123】
これらの酵素は二酸化炭素の可逆的水和を媒介する。(図8[1])。二酸化炭素は炭酸脱水酵素によりHCO3-及びH+に変換される。
【0124】
実際に、シリカーゼはまた、比色分析アッセイで見られるように、炭酸脱水酵素を示す(Armstrong JM, Myers DV, Verpoorte JA, Edsall JT(1966)「ヒト赤血球炭酸脱水酵素の精製及び性質」JBiolChem 241: 5137-5149)。したがって、CO2がHCO3-に変換することから、シリカーゼによりpH変化を生じさせることが可能となる(図8[1])。このことにより、二酸化ケイ素材料ではなく、低いpHではなく増加したpHで可溶性が増加する石灰基質のエッチングが可能となる。
【0125】
海綿のいくつかの種、例えばクリオナ(Cliona)属は炭酸カルシウムを溶解し、方解石/霰石基質に穴を開けることが知られている(Rutzler K, Rieger G (1973)「海綿の堀穴:石灰材料に貫通するClionalampaの精製構造」 Mar Biol 21:144-162)。
【0126】
しかしながら、該酵素のシリカーゼ活性は知られておらず、驚くべきことであった。
【0127】
3つのヒスチジン残基が、炭酸脱水酵素の作用様式(炭酸脱水酵素活性)に関連することがわかっている。該ヒスチジン残基は二価亜鉛イオンに結合し、その後、それに続く作用様式によってシリカーゼ活性が構築され得る。(図8[2])。S. domunculaのシリカーゼにおいて、ヒスチジン残基は派生ポリペプチドアミノ酸位置aa181、aa183及びaa206に存在する(図3A)。水中では、Zn2+(Lewis酸)に結合する(Lewis塩基)水酸化物陰イオンが形成される。これにより、酸素原子により他方と結合したシリコン原子の1つにおいて求核攻撃が起こる(図8)。次の段階では、酸素結合を開裂することにより、亜鉛複合体がシリコン原子に結合する。H2Oの消費下で、最終的に遊離ケイ酸は放出され、最初の亜鉛(II)―結合水酸化物陰イオンが再び形成される。
【0128】
7. シリカーゼ及びシリカーゼ融合蛋白質の使用
【0129】
組み換えシリカーゼ、種々の資源から精製されるシリカーゼ、シリカーゼ融合蛋白質には様々な産業及び技術的使用がある、すなわち:
【0130】
1.) バイオマテリアルの表面修飾への使用(生体適合性の向上)
表面修飾されたバイオマテリアルは、特に、細胞接着及び細胞増殖への影響、血液生体適合性の修正、又は蛋白質吸収の調節(例えば、コンタクトレンズの吸収の減少)に使用することができる。文献概要は見つけることができる:Ratner BD et al (eds.) Biomaterials Science -「医薬における材料への序論」Academic Press, San Diego, 1996。1つの問題は、これら修飾の調製に使用される条件がしばしば使用されるバイオマテリアルに悪影響を及ぼすことである。使用される物理的/化学的方法に比べ「穏やか」及びバイオマテリアルを保護する方法は、化学/酵素反応だけに基づく表面の修飾によって代表される。該反応は本発明の方法[表面に含まれているSiO2又はシロキサンの、シリカーゼが媒介する酵素分解、及び組み換え/精製シリカーゼを使用する(可逆反応である)酵素合成]を用いることにより可能となる。特に、組み換え又は自然源から精製されたシリカーゼをシリコン材料の(コーティングの間の)表面修飾の生成、例えばシリコン豊胸手術、内人工器官及び金属インプラント、金属インプラントの生体化(biologization)、並びにコンタクト/プラスチックレンズへ使用できる。また、コラーゲンのコーティング、例えば骨置換材料としての使用、及びコラーゲンフリース(collagen-fleece)のコーティング、例えば「再生医療」への使用も挙げられる。
【0131】
ここで、課題は安定性及び多孔性の増加、並びに再吸収力の改良である。
【0132】
2.)ポリ(ケイ酸塩)、シリコン、及び混合ポリマーの補助的合成による、新規バイオ マテリアル産物、例えば骨置換材料又は歯置換材料、への使用
【0133】
3.) (シリコン)半導体又はシリコンチップの表面修飾(接触領域の処理)への使用
【0134】
4.) アモルファス二酸化ケイ素由来のナノ構造の修飾又は合成への使用
組み換えシリカーゼ、組み換えシリカーゼ融合蛋白質又は精製シリカーゼを用いることにより、ナノスケールで二酸化ケイ素から特定の二次元又は三次元構造を修飾又は合成することが可能となる。形成される構造はナノ技術に適用することができる。
【0135】
5.) シリコン含有貴石及び半貴石の表面修飾への使用
瑪瑙、碧玉、縞瑪瑙は特に、SiO2のアモルファス又は上質の結晶性修飾に属する。調節された条件下でシリカーゼを用いてこれらの鉱物の表面を修飾する可能性により、これらの貴石/半貴石の生成又はプロセッシングにおいて本発明の方法を使用できる。ここで、異質の分子/原子を選択的に導入する可能性も生じる。
【0136】
6.)シラ−医薬品(sila-pharmaceutics)を含むシリコン有機化合物の修飾又は合成における使用
いわゆるシラー医薬品(Cis がSiによって置換されている医薬品)の基礎としてのシリコン有機化合物の生成についての概観、参照:Chem. unserer Zeit 14, 197-207(1980)、並びに:Bioactive Organo-Silicon Compounds (Topics Curr. Chem. 84), Berlin, Springer (1979)。本発明の方法を用いることにより、このような化合物の修飾又は合成のための新規の酵素経路が可能となる。
【0137】
8. 珪肺症(石英粉塵−肺疾患)の予防及び治療のためのシリカーゼ及びシリカーゼ融合蛋白質の使用。
【0138】
8.1. 珪肺症
【0139】
石英、トリジマイト又はクリストバライトの形状における結晶質ケイ酸(二酸化ケイ素)は、大概、勤務中の最も重要な有害化合物の1つである。健康への悪影響及び汚染源の多様性についての深刻さは長い間しられている。地球の地殻における結晶性二酸化ケイ素の広範囲な産出、及び結晶性二酸化ケイ素を含む材料の一般的な使用により、特に様々な種類の産業事業における就業者は結晶性二酸化ケイ素に曝されている。農業、鉱業、硝子及び硝子繊維工業、並びにセメント生産、セラミック生産、鋳造建築、カラー、石鹸及び化粧品の生産、又は歯科用製造/修復において、何百万の就業者が定期的に結晶性二酸化ケイ素に曝されている。「アメリカ胸部学会(American Thoracic Society)」によると、世界中に広がった二酸化ケイ素は肺疾患の主要な原因の1つである。したがって、予防及び治療のための戦略の開発が非常に必要とされている。
【0140】
吸入される結晶性二酸化ケイ素は肺線維症(珪肺症)及び肺癌を生じることが知られている。珪肺症は、肺組織における二酸化ケイ素粒子の蓄積によって生じる悪性塵肺症であり、珪肺結節の発現により特徴付けられる。深刻な障害を引き起こす当該疾患の合理的な治療は存在しない。
【0141】
塵様結晶性二酸化ケイ素の毒性の主な原因は、肺では吸入される塵粒子を排泄することができないためであることがわかっている。肺組織に残留する二酸化ケイ素粒子により炎症反応が起こり、細胞毒性サイトカイン、プロテアーゼ及び反応性酸素ラジカルが形成される。これらの現象が継続すると、結合組織の増殖を生じ、肺のコラーゲン形成を増加させ、塵肺を発生させる。
【0142】
一般的に、珪肺症は数十年間にわたって非常にゆっくりと発達する。珪肺症は治療することのできない進行性疾患である。珪肺症は、呼吸困難、空咳、胸の鋭い痛みにより、最初に明らかになる。心臓鬱血及び呼吸器並びに循環の閉塞により最終的に死に至る。塵に曝されてから珪肺症を発症するまでの平均的な期間は20年であることがわかっている。珪肺症の危険な合併症は珪肺結核である。結晶性二酸化ケイ素による肺癌の進行に至るメカニズムは非常に限られた範囲しかわかっていない。
【0143】
珪肺症は、産業病の中でも特に、最も一般的な塵肺疾患である。
【0144】
珪肺症−患者のための平均的な総経費は、およそ130.000ユーロである
【0145】
8.2. 珪肺症の治療/予防薬
【0146】
生体二酸化ケイ素の溶解に関連するシリカーゼは珪肺症の治療/予防薬として使用することができる。
【0147】
シリカーゼはアモルファス二酸化ケイ素だけでなく、結晶性二酸化ケイ素(水晶結晶)をも溶解することができる。
【0148】
したがって、シリカーゼは、肺から二酸化ケイ素を除去し、および/またはこの肺疾患の進行を調整するために必要な特性を示す。
【0149】
組み換え酵素の各種投与方法が挙げられる:a)酵素の調製、b)リポソーム中への封入、c)ミクロスフィアとの結合、d)アデノウイルス媒介性遺伝子転写。
【0150】
珪肺症の治療(SiO2の溶解)のための組み換えシリカーゼの担体システムとしてのミクロスフィアは、例えば子牛−コラーゲン−ミクロスフィアのように海綿から調製することができる(Rossler et al., Pharmazie 49 (1994) 175-179)。記載(Rossler et al., J. Microencapsulation 12 (1995) 49-57; Berthold et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 45 (1998) 23-29)されているように、海綿−コラーゲン−ミクロ粒子は組み換え蛋白質(シリカーゼ)の吸着により取り込まれる。コラーゲンの利点はその生物分解性及びその低い毒性並びに低い免疫原性である。さらなる「輸送」システムとして、特に、組み換え酵素を包むリポソーム並びに脂質ナノ粒子が挙げられる(Jenning et al., Eur. J. Pharm. Biopharm. 49 (2000) 211-218)。
【0151】
8.3. シリカーゼ遺伝子/cDNA含有プラスミドを用いるトランスフェクションによる細胞特性の修飾
【0152】
シリカーゼ遺伝子/cDNA含有プラスミドを細胞にトランスフェクションすることにより、該細胞の特質を修飾することができる。例えば、特に、骨置換材料又は(例えば、珪肺症における)遺伝子治療における使用が挙げられる。
【0153】
以下に、添付の図面と配列表の説明を示す。
【0154】
配列番号1:本発明によるS. domuncula由来のシリカーゼのアミノ酸配列(SIA_SUBDO)。
【0155】
配列番号2:本発明によるS. domuncula.由来のシリカーゼのcDNAの核酸配列。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】60μM シリコン中で1又は3日間インキュベートした後、ディファレンシャルディスプレイ技術により上方調節された、プリモルフにおける転写産物の同定。プリモルフは5μMの正常シリコン濃度(レーンa)、又は60μM シリコンの存在下でインキュベーションした(レーンb及びc)。RNAを抽出し分析に用いた。転写産物を増幅するため、二つの異なるランダムプライマー(1及び2)を用いた。(>)で示す転写産物が高いシリコン濃度(レーンb及びc)でのみ生じ、分析された。
【0157】
【図2】上:S. domunculaシリカーゼcDNA(SIA_SUBDO)のオープンリーディングフレーム(コード領域)のヌクレオチド配列由来のアミノ酸配列。下:S.domunculaシリカーゼcDNA(SIA_SUBDO)のヌクレオチド配列。オープンリーディングフレームのヌクレオチド配列由来のアミノ酸配列は下のヌクレオチド配列である。
【0158】
【図3】(A)ヒト炭酸脱水酵素11(炭酸デヒドラターゼII)(CAH2_HUMAN;P00918)とS. domunculaシリカーゼ(SIA_SUBDO)のアライメント。炭酸脱水酵素ドメインを囲んでいる( =e-CAdom= )。真核生物型炭酸脱水酵素の特徴を形成する特徴的なアミノ酸に印を付けている(▲:両方の配列に存在する;■:炭酸脱水酵素にのみ存在し、シリカーゼには存在しない)。付加的記号(+)は活性中心水素ネットワークを形成する残基を示す。3つの亜鉛結合ヒスチジン残基を(Z)で示す。両配列間で相同なアミノ酸残基を反転表示している。長い組み換えシリカーゼ(〜rec〜to〜rec〜)並びに短い組み換えシリカーゼ(〜rec-s〜to〜rec〜)の境界を二重下線で示す。(B)海綿シリカーゼ及び以下の関連酵素よりなる系統樹:ヒト炭酸脱水酵素 I (炭酸デヒドラターゼ I)(CAH1_HUMAN; P00915)、II(CAH2~HUMAN)、III(CAH3_HUMAN; P07451)、IV(CAH4_HUMAN; P22748)、VI(CAH6_HUMAN; P23280)、VII(CAH7_HUMAN; P43166)、VIII(CAH8_HUMAN; P35219)、IX(CAH9_HUMAN; Q16790)、X(CAHA HUMAN; Q9NS85)、VA(CAH5_HUMAN; P35218)、VB(CA5B_HUMAN; Q9Y2D0)、XII(CAHC_HUMAN; 043570)、XIV(CAHE_HUMAN; Q9ULX7)、線虫(Caenorhabditis elegans)の炭酸脱水酵素(CAH_CAEEL; Nu-510674.1)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の炭酸脱水酵素(CAH1_DROME; NP523561.1)、植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の炭酸脱水酵素(CAH-I_ARATH;NP_196038.1)並びに植物緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)の炭酸脱水酵素(炭酸脱水酵素1)(CAH1CHLRE; P20507)、及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の細菌炭酸脱水酵素(CAH_NEIGO; Q50940)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の細菌炭酸脱水酵素(CAH_KLEPN; 052535)並びにシアノバクテリア(cyanobacteria)Nostocsp. PCC7120の細菌炭酸脱水酵素(CAHANASP; P94170)。後者の配列は外集団として用いた。測定バーは、配列中の位置につき0,1アミノ酸置換の進化の距離を示す。系統樹は「近隣結合」の手法により構築した("Neighbor"program: Felsenstein, J.(1993). PHYLIP, ver.3.5. University of Washington, Seattle)。
【0159】
【図4】組み換えシリカーゼの生成。S. domunculaの組み換えシリカーゼ(rSIA_SUBDO)はGST融合蛋白質として生成した。長型SDSIA並びに短型SDSIAをグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子を含むpGEX-4T-2-プラスミドにクローニングした。IPTGの事前誘導無し(-IPTG)又は4若しくは6時間のIPTGによるインキュベーション(+IPTG)の場合において、融合蛋白質を単離した。その後、IPTGを切断し、精製後、Na-DodSO4-PAGEにかけた。ゲルをクマシーブリリアントブルーで染色した。精製されたシリカーゼの大きさ43 kDaの長型rSIA_SUBDO-I並びに短型(Mr32 kDa)が得られた。
【0160】
【図5】炭酸脱水酵素及びシリカーゼアッセイにおけるシリカーゼの酵素活性の測定。アッセイ(0.56 μl)当たり1及び10 μgが含まれるように、組み換えシリカーゼを反応混合液に添加した。炭酸脱水酵素の活性(■)の測定には、p−ニトロフェニルアセテートを基質として用いた。遊離p−ニトロフェノールを波長348 nmで測定した。シリカーゼの活性(●)はS. domunculaの交接刺を用いて測定した。アモルファス二酸化ケイ素の解重合(分解)により形成された遊離ケイ酸を「シリコン試験」比色分析試験を用いて測定した。
【0161】
【図6】プリモルフにおける交接刺の形成に対するシリコンの影響。プリモルフの形成のため、海綿S. domunculaの解離細胞を10% RPM11640培地及び30μM Fe(+++)を補完した海水中でインキュベートした。その後、プリモルフを、60μM シリコンを添加した培地(RPMI1640, Fe(+++))に3日間移した。(A)プリモルフをシリコンを添加した培地中でインキュベートした。倍率:×6。(B)いくつかのケースにおいて、プリモルフの交接刺(sp)の合成が開始された。倍率:×10。半定量測定のために、プリモルフを2枚のカバースライドの間で圧縮した(C及びD)。(C)シリコン無しでインキュベートしたプリモルフはほぼ完全に交接刺が形成されなかったが、シリコン存在下で培養したプリモルフは新たに形成された交接刺(>)を含有していた。(D)倍率:×200。
【0162】
【図7】シリカーゼ、シリカテイン、及びイソシトレート・デヒドロゲナーゼの発現をノーザンブロッティングにより検出した。追加のシリコン不存在下(-Si)又は60μMシリコン存在下(+Si)で1〜3日間培養したプリモルフからRNAを抽出した。5μgの全RNAを電気泳動で分離し、ナイロン膜にブロットし、以下のプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った:SDSIA(シリカーゼ)、SDSILICA(シリカテイン)、及びSDIDH(イソシトレート・デヒドロゲナーゼのα−サブユニット)。転写産物の大きさが得られた。
【0163】
【図8】S. domunculaのシリカーゼ(炭酸脱水酵素)により媒介される酵素反応。[1]では、CO2 の HCO3-への変換を示す。[2]では、シリカーゼの作用を示す。シリカーゼは、3つのヒスチジン残基を有する1つの亜鉛原子に結合する。該亜鉛イオン(Lewis酸)は水由来の水酸化物イオン(Lewis塩基)に結合する。シリカーゼ/亜鉛複合体は、酸素結合間のシリコン原子への求核攻撃を行う。その結果、ポリマー・二酸化ケイ素の加水分解が達成され、(両生成物うちの一方の半分を伴い)これにより最初に該酵素への結合が維持される。H2Oの消費下において、数サイクル後に最終的に遊離ケイ酸が残るまで、生成物が放出される。
【0164】
【図9】左:シリカーゼ不存在下で6時間培養後のSuberites domunculaの交接刺(針)。右:シリカーゼ存在下で6時間培養後のSuberites domunculaの交接刺。培養は表2に示した条件下で行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物、細菌、植物若しくは菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含み、該炭酸脱水酵素ドメインにおいて配列番号1に記載の配列と少なくとも25%の配列相同性を示すポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩を分解に用いる、インビトロ(in vitro)若しくはインビボ(in vivo)におけるアモルファス二酸化ケイ素若しくは結晶性二酸化ケイ素(ケイ酸の縮合生成物、シリケート)、シリコン、及び他のシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物、並びにこれらの化合物の混合ポリマーの分解方法。
【請求項2】
動物、細菌、植物、若しくは菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含み、該炭酸脱水酵素ドメインにおいて配列番号1に記載の配列と少なくとも25%の配列相同性を示すポリペプチド化合物又はポリペプチドの錯塩を合成に用いる、アモルファス二酸化ケイ素(ケイ酸の縮合生成物、シリケート)、シリコン、及び他のシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物、並びにこれらの化合物の混合ポリマーの合成方法。
【請求項3】
ケイ酸、モノアルコキシシラントリオール、ジアルコキシシランジオール、トリアルコキシシラノール、テトラアルコキシシラン、アルキル−若しくはアリール−シラントリオール、アルキル−若しくはアリール−モノアルコキシシランジオール、アルキル−若しくはアリール−ジアルコキシシラノール、アルキル−若しくはアリール−トリアルコキシシランを含む化合物又は他の金属(IV)化合物を合成の反応物質(基質)として用いることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物の定義された混合物を用いて定義された組成を有する混合ポリマーを作成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩、又は他の分子若しくは硝子、金属、金属酸化物、プラスチック、バイオポリマー若しくは他の鋳型材料の表面へのポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩の結合により、定義された二次元構造及び三次元構造の形成が生じる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
動物、細菌、植物若しくは菌類の炭酸脱水酵素ドメインを含み、該炭酸脱水酵素ドメインにおいて配列番号1に記載の配列と少なくとも25%の配列相同性を示すポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩を修飾に用いる、ケイ酸又はシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物を含む構造又は表面の修飾方法。
【請求項7】
ケイ酸を含む構造又は表面が貴石又は半貴石の形状である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチド若しくはポリペプチドの錯塩による、ケイ酸又はシリコン(IV)化合物若しくは金属(IV)化合物を含む構造又は表面のスムージング、エッチング又は穴の形成が修飾に含まれる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる、化学化合物又はケイ酸を含む構造又は表面。
【請求項10】
貴石又は半貴石の形状である、請求項9に記載のケイ酸を含む構造又は表面。
【請求項11】
配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド又は炭酸脱水酵素のアミノ酸配列において配列番号1に記載の配列と少なくとも25%の相同性を示す該ポリペプチドに相同なポリペプチド、該ポリペプチドの錯塩、又はその部分。
【請求項12】
請求項11に記載のポリペプチドを実質的にコードすることを特徴とする、特に配列番号2に記載の核酸。
【請求項13】
DNA、cDNA、RNA又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項12に記載の核酸。
【請求項14】
核酸の配列に少なくとも1つのイントロン及び/又はポリA配列が含まれることを特徴とする、請求項12又は13に記載の核酸。
【請求項15】
相補的「アンチセンス」配列である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項16】
(a)融合蛋白質(キメラ蛋白質)コンストラクト、(b)分離蛋白質発現(プロテアーゼ切断部位)を含むコンストラクト、又は(c)分離蛋白質発現(カセット発現)を含むコンストラクトである、請求項12から15のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項17】
合成的に生成されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項18】
特にプラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター若しくはナノ粒子、又はリポソームである、請求項12〜17のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項19】
特にナノ粒子又はリポソームである、請求項11に記載のポリペプチドを含むベクター。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のベクターをトランスフェクションした、又は請求項18又は19に記載の粒子により感染又はトランスデュースさせた宿主細胞。
【請求項21】
請求項1に記載のポリペプチド、ポリペプチドの錯塩、またはそれらの部分を発現する、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
合成的に生成されることを特徴とする、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項23】
ポリペプチド又はポリペプチドの錯塩が、原核細胞若しくは真核細胞の抽出物若しくは溶解液に存在することを特徴とする、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項24】
ポリペプチド又はポリペプチドの錯塩が他の蛋白質を実質的に含んでいない状態であることを特徴とする、請求項23に記載のポリペプチド。
【請求項25】
a)配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド、又は炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列において配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す該ポリペプチドに相同なポリペプチドを提供し、b)工程a)のポリペプチドを候補阻害剤又は活性剤に接触させ、及びc)ケイ酸塩又はシリコンを合成又は分解する該ポリペプチドの活性を測定する、配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド又は炭酸脱水酵素ドメインが配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す該ポリペプチドに相同なポリペプチドの阻害剤又は活性剤の同定方法。
【請求項26】
配列番号1に記載のSuberites domuncula由来のシリカーゼのポリペプチド、又は炭酸脱水酵素ドメインのアミノ酸配列において配列番号1に記載の配列に少なくとも25%の相同性を示す該ポリペプチドに相同なポリペプチドが、インビボ(in vivo)、細胞抽出液、細胞溶解液又は精製された形状で得られる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
a)請求項25又は26に記載の阻害剤又は活性剤の同定、及びb)同定された阻害剤又は活性剤と医薬的に許容される担体又は賦形剤との混合を含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載のポリペプチド又は核酸又は医薬組成物の、珪肺症の予防又は治療への使用。
【請求項29】
水晶結晶の溶解により珪肺症を予防又は治療する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
シリコン及びシリコンインプラントの融食作用、及びシリコン及びシリコンインプラントの融食活性の調整のための、請求項1〜29のいずれか1項に記載のポリペプチド又は核酸又は医薬組成物の使用。
【請求項31】
シリコン及びシリコンインプラントの、細胞へのトランスフェクション、融食作用、又は融食活性の調整のための、請求項1〜30のいずれか1項に記載の核酸の使用。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−501832(P2006−501832A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542423(P2004−542423)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010983
【国際公開番号】WO2004/033679
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505063360)
【Fターム(参考)】