説明

シリコーンエマルジョン組成物、二液性木材処理剤及び木材処理方法

【課題】木質感を失うことなく、水による溶脱を防ぎ、かつ環境面に配慮した木材着色用のシリコーンエマルジョン組成物、二液性木材処理剤及びこれらを用いた木材処理方法を提供する。
【解決手段】(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物、
必要により更に、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン、及び
(E)硬化触媒
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)に、(F)ホウ素系化合物及び(G)顔料を分散した水溶液(II)を、前記シリコーンエマルジョンの固形分100質量部に対して固形分で0.1〜300質量部の割合で添加混合してなるシリコーンエマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質感を失うことなく着色可能であり、良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防腐性、防蟻性の木材への付加が可能で、更に、防腐・防蟻性付与剤、顔料の水による溶脱性をも改良可能で、多種多様な人の好みに対応する木材の着色剤として有用なシリコーンエマルジョン組成物、二液性木材処理剤及びこれらを用いた木材処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材や工芸品等の材料として広く用いられている木材は、外観や意匠性を高めるために従来より着色が行われている。
例えば、特開昭61−261001号公報(特許文献1)には、合成樹脂よりなる中空粒子の超微粒子を含有する樹脂液組成物を注入、硬化させる方法が記載されている。しかし、重合性単量体を使用しており、環境の点で問題であった。
【0003】
また、特開平1−299005号公報(特許文献2)や特開平2−220804号公報(特許文献3)には、木材に染料と水溶性樹脂とを含浸又は塗布し、樹脂を固化させる方法が記載されている。水溶性樹脂を使用している点で環境にはやさしいといえるが、逆に水溶性樹脂を使用しているため、樹脂を固化させた後も雨水等の水による溶脱防止は不十分で、屋外の使用には適さないものであった。
また、こういった着色顔料は木目を隠蔽してしまい、肝心の木質感を失わせてしまうという欠点もあった。
【0004】
特開平6−271805号公報(特許文献4)では、バインダーとして紫外線硬化型プレポリマーと着色剤と溶剤の混合物を木材に塗布し、更に紫外線硬化塗料を塗布し、紫外線照射する方法が、また、特開平8−66903号公報(特許文献5)では、着色シートに接着剤を塗布し木材に圧着する方法が記載されている。いずれも溶脱の問題はある程度防ぐことができるが、工程が複雑で経済的ではなく、更に特開平6−271805号公報では、溶剤を使用しており、環境面でも問題があった。
【0005】
特開2007−51236号公報(特許文献6)には、シリコーンエマルジョンにホウ素系化合物を添加混合して、木材に表面処理、浸漬処理又は減圧もしくは加圧注入処理をする方法が記載されている。しかし、こうした建築物や工芸品等には様々な色、つまり意匠性を求められることが多く、多種多様な人の好みに対応するには至っていない。
【0006】
そこで、木質感を失わせることなく、水による溶脱を防ぎ、かつ環境面に配慮した木材着色用組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−261001号公報
【特許文献2】特開平1−299005号公報
【特許文献3】特開平2−220804号公報
【特許文献4】特開平6−271805号公報
【特許文献5】特開平8−66903号公報
【特許文献6】特開2007−51236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、木質感を失うことなく、水による溶脱を防ぎ、かつ環境面に配慮した木材着色用のシリコーンエマルジョン組成物、二液性木材処理剤及びこれらを用いた木材処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記(A),(B)成分及び必要により(C)〜(E)成分を水中に乳化分散させた、架橋してゴム質の皮膜を形成するシリコーンエマルジョンと、防腐性・防蟻性を付与するための(F)ホウ素系化合物及び(G)顔料を分散した水溶液とを、それぞれ固形分で前記シリコーンエマルジョンの100質量部に対して0.1〜300質量部の割合で使用して木材を処理した場合に、木質感を失うことなく着色可能であり、更に良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防腐性、防蟻性、耐候性の付与が可能で、更に、防腐・防蟻性付与剤、顔料の水による溶脱性をも改良可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記のシリコーンエマルジョン組成物、二液性木材処理剤及び木材処理方法を提供する。
〔請求項1〕
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、及び
(E)硬化触媒:0〜10質量部
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)に、(F)ホウ素系化合物及び(G)顔料を分散した水溶液(II)を、前記シリコーンエマルジョンの固形分100質量部に対して固形分で0.1〜300質量部の割合で添加混合してなることを特徴とするシリコーンエマルジョン組成物。
〔請求項2〕
(G)顔料が、ベンガラ及び/又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
〔請求項3〕
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、及び
(E)硬化触媒:0〜10質量部
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)と、
(F)ホウ素系化合物、及び
(G)顔料
を分散した水溶液(II)と
からなり、前記水溶液(II)の使用量が、前記シリコーンエマルジョンの固形分100質量部に対して固形分で0.1〜300質量部の割合であることを特徴とする二液性木材処理剤。
〔請求項4〕
(G)顔料が、ベンガラ及び/又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項3記載の二液性木材処理剤。
〔請求項5〕
請求項1又は2記載のシリコーンエマルジョン組成物を用いた木材処理方法であって、該シリコーンエマルジョン組成物におけるシリコーンエマルジョン(I)と前記水溶液(II)とを使用直前に混合して木材に塗布又は含浸させることを特徴とする木材処理方法。
〔請求項6〕
請求項3又は4記載の二液性木材処理剤を用いた木材処理方法であって、該二液性木材処理剤における(F)及び(G)成分を分散した水溶液(II)を木材に塗布又は含浸させ、その直後に前記二液性木材処理剤におけるシリコーンエマルジョン(I)を該木材に塗布又は含浸させることを特徴とする木材処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のシリコーンエマルジョン組成物又は二液性木材処理剤を木材に処理することにより、木質感を失うことなく着色可能であり、更に良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防腐性、防蟻性の木材への付加が可能である。そのうえ、防腐・防蟻性付与剤、顔料の水による溶脱性をも改良可能で、多種多様な人の好みに対応するという効果を有する。
更に、本発明のシリコーンエマルジョン組成物及び二液性木材処理剤は、エマルジョンを使用している点、顔料に古くから使用されているベンガラ(赤色酸化鉄)とカーボンブラックを使用している点で、環境面にも十分配慮したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物及び二液性木材処理剤は、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物、
好ましくは更に、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン、及び
(E)硬化触媒
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)と、
(F)ホウ素系化合物、及び
(G)顔料
を分散した水溶液(II)と
からなるものである。
【0013】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するものであり、下記一般式で示されるものが好ましい。
【化1】

[ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基、Xは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基又はヒドロキシル基、YはX又は−[O−Si(X)2c−Xで示される同一又は異種の基で、X及びY中の少なくとも2個はヒドロキシル基である。aは0〜1,000の正数、bは100〜10,000の正数、cは1〜1,000の正数である。]
【0014】
ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基である。
Xは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基又はヒドロキシル基であり、具体的には、ヒドロキシル基以外に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、テトラデシルオキシ基などが挙げられる。
YはX又は−[O−Si(X)2c−Xで示される同一又は異種の基であり、aは1,000より大きくなると得られる皮膜の強度が不十分となるので、0〜1,000の正数、好ましくは0〜200の正数とされ、bは100未満では皮膜の柔軟性が乏しいものとなり、10,000より大きいとその引き裂き強度が低下するので、100〜10,000の正数、好ましくは1,000〜5,000の正数とされ、cは1〜1,000の正数とされる。
また、架橋性の面から1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を有する必要がある。
【0015】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、以下のものなどが挙げられる。
【化2】

(上記式中、a、b、cは上記と同じである。)
【0016】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって合成することができる。例えば、金属水酸化物のような触媒存在下にオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンとα,ω−ジヒドロキシシロキサンオリゴマー等を平衡化反応させることにより得られる。また、この(A)成分はエマルジョンの形態で使用されることが好ましいので、このものは公知の乳化重合法でエマルジョンとすればよく、従ってこれはあらかじめ環状シロキサンあるいはα,ω−ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω−ジアルコキシシロキサンオリゴマー、アルコキシシラン等をアニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた後、必要に応じて酸、アルカリ性物質等の触媒を添加して重合反応を行うことにより容易に合成することができる。
【0017】
ここで、上記アニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤としては、特に制限はないが、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミン酢酸塩などが例示される。この使用量としては、シロキサン量の0.1〜20質量%程度である。
【0018】
また、酸、アルカリ性物質等の触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、乳酸、トリフロロ酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが例示され、これらは触媒量とすることができる。なお、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸などの酸性物質を使用する場合には、触媒を用いる必要はない。
【0019】
(B)成分であるアミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物は、シリコーン皮膜と基材である木材との密着性を向上させるための成分であり、アミノ基含有アルコキシシランとジカルボン酸無水物とを反応させたものであることが好ましい。
【0020】
ここで、原料であるアミノ基含有アルコキシシランは、下記一般式:
A(R)gSi(OR)3-g
[式中、Rは前記と同じ、Aは式−R1(NHR1hNHR2(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6の2価炭化水素基、R2はR又は水素原子、hは0〜6の整数である。)で表されるアミノ含有基、gは0、1又は2である。]
で表されるものを用いることができ、具体的には下記のものが挙げられる。
(C25O)3SiC36NH2、 (C25O)2(CH3)SiC36NH2
(CH3O)3SiC36NH2、 (CH3O)2(CH3)SiC36NH2
(CH3O)3SiC36NHC24NH2
(CH3O)2(CH3)SiC36NHC24NH2
【0021】
上記アミノ基含有オルガノキシシランと反応させるためのジカルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物等を挙げることができる。これらの中でもマレイン酸無水物が好ましい。
【0022】
アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応は、アミノ基/酸無水物(モル比)が0.5〜2、特に0.8〜1.5となるような上記両者の配合比により、必要に応じて親水性有機溶剤中で室温あるいは加温下に混合することで容易に実施することができる。この時の親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが例示される。また、親水性有機溶剤の使用量としては、反応生成物量の0〜100質量%程度である。
【0023】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜20質量部であり、0.5質量部より少ない場合には木材との密着性効果が弱くなり、20質量部より多い場合には皮膜が硬くて脆いものになる。より好ましくは1〜10質量部である。
【0024】
なお、上述したように、親水性有機溶剤を用いてアミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応を行った場合、(B)成分は上記反応液をそのまま用いても良いし、溶剤を除いてから用いても良い。
【0025】
(C)成分であるエポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物は、シリコーン皮膜と基材との密着性を向上させるための成分であり、エポキシ基含有オルガノキシシランとして、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0026】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜20質量部であり、20質量部より多い場合には皮膜が硬くて脆いものとなる。好ましくは0〜10質量部である。配合する場合は1質量部以上であることが好ましい。
【0027】
(D)成分であるコロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサンは、皮膜補強剤として添加するものであり、具体的には、コロイダルシリカ、トリメトキシメチルシランの加水分解縮合物であるポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0028】
コロイダルシリカとしては、市販のものを使用することも可能で、その種類に制限はないが、例えば平均粒径が5〜50nmで、ナトリウム、アンモニウム、アルミニウムなどで安定化したものでよく、具体的には、スノーテックス(日産化学工業社製)、ルドックス(デュポン社製)、シリカドール(日本化学工業社製)、アデライトAT(旭電化工業社製)、カタロイドS(触媒化成工業社製)などの市販品が挙げられる。
【0029】
ポリメチルシルセスキオキサンとしては、界面活性剤水溶液に縮合触媒として硫酸などの酸、又は水酸化カリウム等のアルカリ化合物を添加し、更にトリメトキシメチルシランを滴下、撹拌することにより得られたポリメチルシルセスキオキサンを含有した乳化物を用いることができる。この際、ポリシルセスキオキサンの架橋度を調整するためにアルコキシトリアルキルシラン、ジアルコキシジアルキルシラン、テトラアルコキシシランなどを添加することは差し支えない。また、ポリシルセスキオキサンの反応性を高めるためにビニルシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、メタクリルシランなどを添加することも差し支えない。
【0030】
なお、(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0〜50質量部であり、50質量部より多い場合にはシリコーン皮膜が硬くて脆いものとなる。好ましくは0〜30質量部であり、配合する場合10質量部以上とすることが好ましい。
【0031】
また、上記(D)成分の平均粒子径は2〜200nm、特に5〜100nmが好適である。本発明において、平均粒子径は、BET法により測定した値である。
【0032】
(E)成分である硬化触媒は、本発明の組成物の成分を縮合反応により、素早く架橋硬化させるために配合するものであり、具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズビスオレイルマレート、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸鉄等の有機酸金属塩、n−ヘキシルアミン、グアニジン等のアミン化合物などを挙げることができる。
【0033】
なお、これらの硬化触媒は、水溶性である場合を除き、あらかじめ界面活性剤を用いて水中に乳化分散したエマルジョンの形態にしておくことが望ましい。
【0034】
この(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜10質量部であり、10質量部を超えると不揮発分として皮膜中に残存する触媒成分が皮膜特性を阻害する。好ましい範囲は0〜5質量部であり、配合する場合0.5質量部以上とすることが好ましい。
【0035】
シリコーンレジンエマルジョン(I)には、本発明のエマルジョン組成物のコーティング皮膜の特性を更に向上させるために、本発明を逸脱しない範囲でシランカップリング剤やシリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリコーン樹脂パウダー等を添加配合することは任意である。シランカップリング剤としては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基等を含有する各種のものが挙げられ、シリコーン樹脂としては、トリアルキルシロキシポリシリケートなどが挙げられ、シリコーンオイルとしては、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリシロキサン、アルキルポリシロキサンなどが挙げられ、シリコーン樹脂パウダーとしては、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダーなどが挙げられる。
【0036】
シリコーンエマルジョン(I)の調製(乳化分散)方法は、特に限定されないが、(A)成分撹拌下で、(B),(C),(D),(E)成分を添加し、30分〜1時間撹拌継続する。
得られたシリコーンエマルジョン(I)中の固形分量は、35〜60質量%、特に40〜55質量%であることが好ましい。
【0037】
次に、(F)成分であるホウ素系化合物は、木材に防腐性、防蟻性を付与する成分であり、ホウ素系化合物としては、ホウ酸、硼砂、八ホウ酸二ナトリウム四水和物(Na2813・4H2O)、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル等のホウ酸トリアルキルなどが挙げられるが、硼砂、八ホウ酸二ナトリウム四水和物などのホウ酸アルカリ金属塩が好ましい。
【0038】
(G)成分である顔料は、意匠性を付与する成分である。顔料としては、ベンガラ(赤色酸化鉄)、カーボンブラック、カドミウムレッド、バーミリオン、アニリンブラック、マルスブラック等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、環境面に配慮し、古くから使用されているベンガラ、カーボンブラックが好ましい。
【0039】
(G)成分の配合量は、(F)成分100質量部に対して(G)成分0.1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量部である。0.1質量部未満では、着色の効果が低くなる場合があり、100質量部を超えると分散性が悪くなる場合がある。
【0040】
上記(F),(G)成分を水に分散することにより水溶液(II)を調製できる。この場合、水分散液の有効成分((F)成分及び(G)成分(固形分))は5〜20質量%、特に10〜15質量%であることが好ましい。
【0041】
本発明においては、上記シリコーンエマルジョン(I)に、(F),(G)成分を分散させた水溶液(II)を添加混合してシリコーンエマルジョン組成物とする。また、本発明においては、上記シリコーンエマルジョン(I)と、上記水溶液(II)とからなる二液性の木材処理剤としても用いることができる。
【0042】
木材処理剤として、(F)成分単独では溶脱の問題が、(G)成分単独では木材への浸透不足問題があったが、(F)成分及び(G)成分を共に含有させることにより、(F),(G)両成分が木材へ効率的に浸透し、更に溶脱しにくくなる。この効果は、シリコーンエマルジョン(I)を加えることで、更に顕著に発現する。また、(G)成分のみをシリコーンエマルジョン(I)に添加すると凝集物が発生する。(F),(G)成分を分散させた水溶液(II)をシリコーンエマルジョン(I)に添加することで、凝集物発生を防止することができる。
【0043】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物は、(F)ホウ素系化合物と(G)顔料の水分散液(II)を、上記で得られたシリコーンエマルジョン(I)の固形分100質量部に対して、固形分で0.1〜300質量部、好ましくは10〜250質量部添加する。0.1質量部未満である場合は、吸水性、耐候性(防腐性、防蟻性)が悪くなる。また、300質量部を超えると、上記シリコーンエマルジョン(I)との混和性が悪くなる。
【0044】
また、二液性木材処理剤とする場合、(F),(G)成分の水分散液(II)と上記シリコーンエマルジョン(I)との使用割合は、シリコーンエマルジョン組成物調製時と同様に、シリコーンエマルジョン(I)の固形分100質量部に対して、水分散液(II)の固形分0.1〜300質量部、好ましくは10〜250質量部である。水分散液(II)の使用割合が少なすぎると、吸水性、耐候性(防腐性、防蟻性)が悪くなる。また、水分散液(II)の使用割合が多すぎると、乾燥時間も極端に長くなり、非効率となる。
【0045】
また、本発明のシリコーンエマルジョン組成物あるいは二液性木材処理剤に、各種の増粘剤、浸透剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤、抗菌剤、撥水剤などを適宜配合することは任意である。
【0046】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物又は二液性木材処理剤で処理可能な木材については特に制限がなく、各種の木材類、例えば無垢材、合板、単板積層板、LVL、パーチクルボード材などである。
【0047】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物を用いた木材処理方法としては、上記で得られたシリコーンエマルジョン(I)と、(F),(G)成分の水分散液(II)とを、木材処理直前に混合してシリコーンエマルジョン組成物を調製し、該組成物を木材に塗布又は含浸させる。浸漬する時間は5分〜1時間とすることが好ましく、処理量は乾燥質量で2〜60kg/m3、特に10〜30kg/m3とすることが好ましい。
【0048】
また、本発明の二液性木材処理剤においては、(F),(G)成分の水分散液(II)を木材に塗布又は含浸させ、その後直ぐ(直後〜1時間)に上記シリコーンエマルジョン(I)を該木材に塗布又は含浸させる。なお、(F),(G)成分の水分散液(II)の処理量は、乾燥質量で0.5〜30kg/m3、特に2〜10kg/m3であることが好ましく、シリコーンエマルジョン(I)の処理量は、乾燥質量で1〜30kg/m3、特に5〜20kg/m3であることが好ましい。
【0049】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物のうち、シリコーンエマルジョン及びホウ素系化合物は、木材への浸透性が高く、それゆえ、顔料も効率よく木材へ浸透する。ホウ素系化合物と顔料の水分散液を使用直前に木材に塗布し、その後シリコーンエマルジョンを塗布した際にも同様のことが言える。使用直前にシリコーンエマルジョンと(F),(G)成分を混合するのは、本シリコーンエマルジョン組成物のポットライフが24時間程度であるからである。
【0050】
更に、本発明のシリコーンエマルジョン皮膜は、吸水防止性、ゴム質であるため基材への追随性が良好であるので、クラックなども起こりづらく、雨水などの水による防腐・防白蟻剤、顔料の溶脱防止効果を付与することが可能である。
【0051】
また、このシリコーンエマルジョン組成物及び二液性木材処理剤を塗工する方法についても特に制限はなく、刷毛塗り、ロールコート、スプレー塗布などの表面処理や浸漬処理、減圧・加圧注入処理等の公知の方法により行うことができる。特に刷毛塗りでも雨水などの水による防腐・防蟻剤、顔料の溶脱防止効果を付与できることが、本発明の特に優れた点である。その後、常温で乾燥させることにより硬化皮膜が形成される。50〜150℃で加熱することにより硬化が促進され、処理時間が短縮される。硬化皮膜はゴム質を有するものである。
【実施例】
【0052】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0053】
[製造例1]
オクタメチルシクロテトラシロキサン498g、トリエトキシフェニルシラン2g、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液50g及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水400gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを撹拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2リットルのガラスフラスコに移し、50℃で24時間重合反応を行った後、10℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpH6.2に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.4%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものであり、平均組成が[(CH32SiO2/2]/[(C65)SiO3/2]=100/0.1(モル比)で表される末端が水酸基封鎖されたものであった。このようにして(A)成分を44.4%含有するエマルジョン[A−1]を得た。
【0054】
[製造例2]
オクタメチルシクロテトラシロキサン500g、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液50g及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水400gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを撹拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2リットルのガラスフラスコに移し、50℃で24時間重合反応を行った後、10℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpH6.2に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.5%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンはHO−[(CH32SiO]n−Hで表され、粘度1,000Pa・s以上の生ゴム状のものであった。このようにして(A)成分を44.5%含有するエマルジョン[A−2]を得た。
【0055】
[製造例3]
マレイン酸無水物154gをエタノール500gに溶解した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン346gを室温下、1時間で滴下し、更に80℃でエタノール還流下、24時間反応を行い、淡黄色透明な(B)成分を50%含有する溶液[B−1]を得た。この溶液は、105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.1%であり、溶液中の反応生成物はIR、GC、NMR、GCMS等の機器分析を行ったところ約60%が下記式で示されるものの混合物であり、残りの約40%がそれらから誘導されたオリゴマーであった。
(C25O)3SiC36−NHCO−CH=CHCOOH
(C25O)3SiC36−NH3+−OCOCH=CHCOOC25
【0056】
[製造例4]
ジオクチルスズジラウレート300gとポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO10モル付加物)50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に混合した後、水650gを徐々に加えて水中に乳化分散させ、ついで圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、(E)成分を30%含有するエマルジョン[E−1]を得た。
【0057】
[比較製造例1]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に反応型乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)2.0gと水342.1gを加え、温度を75℃に昇温した。一方、水244.5gに、反応型乳化剤(アデカリアソープSE−10N)2.0gを加えて溶解し、これにアクリル酸2−エチルヘキシル230g、スチレン230g、グリシジルメタクリレート19g及びメタクリル酸12.5gの不飽和モノマー混合物を添加撹拌し、よく乳化してからこれを滴下ロートに入れた。次に、このモノマー混合物の5%を反応容器に移し、重合開始剤として0.5gの過硫酸カリウムを加えて80℃に昇温してから10分保持した後、残りのモノマー混合物の乳化物と3%の過硫酸カリウム水溶液50.0gとを3時間かけて反応容器に均一滴下した。滴下終了後、80℃で1時間熟成反応を行った後、室温に冷却し、アンモニア水3.5gを加えて中和し、固形分濃度が45%のエマルジョン[A−3]を得た。
【0058】
表1で示す純分配合組成で、(C)成分としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[C−1]、(D)成分としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製スノーテックスC:有効成分20%)[D−1]を用いて各シリコーンエマルジョンを得た。
【0059】
【表1】

【0060】
[製造例5]((F)と(G)の混合物1)[FG−1]
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で10%水溶液とし、その10%水溶液87gにEMF−BLACK HK(東洋インキ製造社製カーボンブラック)を3g添加混合し、更にイオン交換水を追加して分散させた10%の水溶液FG−1とした。ホウ酸塩化合物とEMF−BLACK HKの固形分比は、100部:12部である。
【0061】
[製造例6]((F)と(G)の混合物2)[FG−2]
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で10%水溶液とし、その10%水溶液85gにEMF−BLACK HKを1g、EMF−BROWN HR(東洋インキ製造社製ベンガラ(赤色酸化鉄))を4g添加混合し、更にイオン交換水を追加して分散させた10%の水溶液FG−2とした。
ホウ酸塩化合物、EMF−BLACK HK、EMF−BROWN HRの固形分比は、100部:4部:31部である。
【0062】
[製造例7]((F)と(G)の混合物3)[FG−3]
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で10%水溶液とし、その10%水溶液84gにEMF−BROWN HRを6g添加混合し、更にイオン交換水を追加して分散させた10%の水溶液FG−3とした。
ホウ酸塩化合物とEMF−BROWN HRの固形分比は、100部:46部である。
【0063】
<試験片作製>
[実施例1〜9]
表1で得られたシリコーンエマルジョンに、(F),(G)成分の水分散液を表2に示す配合組成で添加混合し、本発明のシリコーンエマルジョン組成物を作製した。各実施例の最終固形分は10%に調整した。その組成物に1.4cm×3cm×3cm(木口面が1.4cm×3cm)の杉辺材3個と2cm×2cm×1cm(木口面が2cm×2cm)の杉辺材を9個、常温常圧下で10分間浸漬処理し、25℃で7日間乾燥させ、改質木材を得た。1.4cm×3cm×3cmの杉辺材3個は吸水性確認試験に、2cm×2cm×1cmの杉辺材9個はホウ酸残存率の測定に使用した。各試験方法を下記に、各試験結果を表2に示す。
【0064】
[実施例10]
表2のようにFG−1(10%水分散液)を1.4cm×3cm×3cm(木口面が1.4cm×3cm)の杉辺材3個と2cm×2cm×1cm(木口面が2cm×2cm)の杉辺材を9個にそれぞれ乾燥質量で5.6kg/m3になるように浸漬し、その後、EM−1を乾燥質量で11kg/m3になるように浸漬、25℃で7日間乾燥させ、改質木材を得た。実施例1〜9と同様に試験を実施した。試験結果を表2に示す。
【0065】
[比較例1]
実施例と同様の同寸法の無処理の杉辺材3個を使用して試験を行った。その結果を表3に示す。
【0066】
[比較例2]
FG−1(10%水分散液)を使用して実施例1〜9と同じ方法で試験片を作製し、試験を行った。その結果を表3に示す。
【0067】
[比較例3]
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で10%水分散液とし、これを使用して実施例1〜9と同じ方法で試験片を作製し、試験を行った。その結果を表3に示す。
【0068】
[比較例4]
EMF−BLACK HK(東洋インキ製造社製)を1g、EMF−BROWN HR(東洋インキ製造社製)を4g添加混合し、その後、10%水分散液とし、これを使用して実施例1〜9と同じ方法で試験片を作製し、試験を行った。その結果を表3に示す。
【0069】
[比較例5,6]
表2に示す配合組成で、実施例1〜9と同様にシリコーンエマルジョン組成物を作製し、同じ方法で試験片を作製し、試験を行った。その結果を表3に示すが、比較例6は凝集物が発生したため、その後の試験は実施できなかった。
【0070】
[比較例7]
表1のエマルジョンEM−6にFG−1水分散液を添加混合して、最終固形分を約10%に調整し、実施例1〜9と同様に試験片を作製し、試験を行った。その結果を表3に示す。
【0071】
[比較例8]
表1のエマルジョンEM−7にFG−1水分散液を添加混合したが、凝集物が発生したため、その後の試験は実施できなかった。
【0072】
<混和性>
各成分を500mlのステンレス容器に投入し、その後3枚羽根のプロペラで、スリーワンモーターを使用して200rpmで5分間撹拌混合した。
○:異物発生はなく、正常に混和できた
△:混合2〜3分後に凝集物が発生した
×:混合した直後に凝集物が発生した
【0073】
<吸水試験>
得られた1.4cm×3cm×3cm(木口面が1.4cm×3cm)の試験片を水中に全面浸漬し、24時間後に取り出して下記計算式(1)で吸水率を測定し、3個の試験片の平均値をもって吸水率とした。
吸水率=(W−W0)/W0×100(%)・・・(1)
W0 :水浸漬前の試験片の重量(g)
W :水浸漬完了直後の試験片の重量(g)
【0074】
<溶脱試験>
実施例1〜10、比較例2,3,5,7で得られた2cm×2cm×1cm(木口面が2cm×2cm)の試験片を使用して、下記に示すようにホウ酸塩残存量を測定した。
試験片中のホウ酸塩残存量(B量)測定方法
各試験片9個を1組として、500mlビーカーに入れ、試験体容積の10倍量の脱イオン水を加え、試験体を水面下に沈める。マグネチックスターラーを用い、温度25℃で回転子を毎分400〜450回転させ、8時間撹拌し、溶脱した後、直ちに軽く試験体表面の水切りを行う。続いて温度60℃の循環式乾燥器中に16時間静置し、揮発分を揮発させる。以上の操作を交互に10回繰り返す。
木材試験片をテフロンビーカーに入れ、3%硝酸水を50ml加えてホットプレート(200℃)で2時間加熱する。冷却後、水を加え50mlに定溶する。この操作を5回繰り返し、それぞれのB量をICP分析装置により測定し、その合計量を木材中のホウ酸塩残存量とする。サンプル9個の平均値をもって残存量とする。
【0075】
<耐候性>
ATLAS UV2000にて63℃で100時間紫外線照射した。
○:紫外線による劣化がほとんどない
△:紫外線による色変化はほとんどないものの、細かい亀裂が発生
×:木片の全部又は一部に劣化進行
【0076】
<色落ち性>
水に浸したガーゼを使用して試験片上で10往復させ、その後の状態を目視にて確認した。
○:ガーゼへの色移行が見られない
×:ガーゼへの色移行が見られる
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、及び
(E)硬化触媒:0〜10質量部
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)に、(F)ホウ素系化合物及び(G)顔料を分散した水溶液(II)を、前記シリコーンエマルジョンの固形分100質量部に対して固形分で0.1〜300質量部の割合で添加混合してなることを特徴とするシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
(G)顔料が、ベンガラ及び/又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項1記載のシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項3】
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、及び
(E)硬化触媒:0〜10質量部
を水中に乳化分散させたシリコーンエマルジョン(I)と、
(F)ホウ素系化合物、及び
(G)顔料
を分散した水溶液(II)と
からなり、前記水溶液(II)の使用量が、前記シリコーンエマルジョンの固形分100質量部に対して固形分で0.1〜300質量部の割合であることを特徴とする二液性木材処理剤。
【請求項4】
(G)顔料が、ベンガラ及び/又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項3記載の二液性木材処理剤。
【請求項5】
請求項1又は2記載のシリコーンエマルジョン組成物を用いた木材処理方法であって、該シリコーンエマルジョン組成物におけるシリコーンエマルジョン(I)と前記水溶液(II)とを使用直前に混合して木材に塗布又は含浸させることを特徴とする木材処理方法。
【請求項6】
請求項3又は4記載の二液性木材処理剤を用いた木材処理方法であって、該二液性木材処理剤における(F)及び(G)成分を分散した水溶液(II)を木材に塗布又は含浸させ、その直後に前記二液性木材処理剤におけるシリコーンエマルジョン(I)を該木材に塗布又は含浸させることを特徴とする木材処理方法。

【公開番号】特開2010−58494(P2010−58494A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94210(P2009−94210)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】