説明

シリコーンゴム発泡体及びその製造方法

【課題】液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の射出成形による、均一なセルを有し、再現性のよいシリコーンゴム発泡体の製造方法、及びこの方法により得られるシリコーンゴム発泡体を提供する。
【解決手段】超臨界流体と液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物とを混合した混合物を、金型のゲートの断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長Lの比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下である金型のキャビティ内に射出して、発泡・硬化させることを特徴とするシリコーンゴム発泡体の製造方法、及びこの方法により得られるシリコーンゴム発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形によるシリコーンゴム発泡体の製造方法、及びその方法により得られるシリコーンゴム発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、電気特性などを活かして、様々な分野の用途にゴム成形品として利用されている。液状付加硬化型シリコーンゴム組成物は、射出成形加工において、射出成形の自動化、成形サイクルの短縮化、成形品のコスト削減の大幅なメリットがあり、多くの実績がある。
【0003】
近年、家電分野や食品分野より、射出成形におけるゴム成形品において、ゴム成形品の蓄熱性の向上、ゴム成形品の軽量化、ゴム成形品の環境面への配慮などを加味した安全性を有するシリコーンゴム発泡体を開発することが望まれている。従来、熱可塑性樹脂(プラスチックス)材料では、超臨界流体を導入し、プラスチックスの発泡体を開発する動向があり、例えば、特許第2625576号公報(特許文献1)には、超臨界液体をポリマープラスチックス材料に、連続的に導入して発泡させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許第3506543号公報(特許文献2)には、未硬化あるいは半硬化状態の反応硬化性樹脂に、臨界温度以上かつ臨界圧力以上で気体を分散させた後、圧力を10kgf/cm2/sec以上の速度で低下させ、未硬化あるいは半硬化状態で発泡させ、その後硬化させる方法が開示されている。この方法は、シリコーンゴムのミラブルタイプ(半固体)の組成物に有効であり、耐圧容器にシリコーンゴムのミラブルタイプ(半固体)の組成物を供給し、超臨界状態の気体を圧入し、圧力の調整で発泡硬化させることが記載されている。
【0005】
しかし、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の通常の射出成形においては、未硬化又は半硬化状態では材料に未だ流動性があり、この状態で均一に発泡させることは難しいという課題があった。これまで、均一に発泡したシリコーンゴム発泡体を、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の射出成形により製造する有効な方法は報告されていない。
【0006】
【特許文献1】特許第2625576号公報
【特許文献2】特許第3506543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の射出成形による、均一なセルを有し、再現性のよいシリコーンゴム発泡体の製造方法、及びこの方法により得られるシリコーンゴム発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、超臨界流体を材料供給ラインから圧入して、超臨界流体と液状付加硬化型シリコーンゴム組成物とを混合した混合物を、金型のゲートの断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長Lの比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下である金型のキャビティ内に射出して、発泡・硬化させることにより、得られるシリコーンゴム発泡体が均一なセルを有し、再現性のよい製造方法であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、超臨界流体と液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物とを混合した混合物を、金型のゲートの断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長Lの比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下である金型のキャビティ内に射出して、発泡・硬化させることを特徴とするシリコーンゴム発泡体の製造方法、及びこの方法により得られるシリコーンゴム発泡体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の射出成形により、均一なセルを有するシリコーンゴム発泡体を形成することができ、生産性向上にも寄与することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、金型のゲートの断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長Lの比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下である金型を用い、超臨界流体と液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物とを混合した混合物を、該金型キャビティ内に射出して、発泡・硬化させることによりシリコーンゴム発泡体を製造する。
【0012】
本発明において適用される室温(25℃)で液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物は、従来公知の組成のものであり、例えば、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるヒュームドシリカ、
(D)付加反応触媒
を主成分としてなるものが挙げられる。
【0013】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合したアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、通常、付加硬化型シリコーンゴムのベースポリマーとして使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、25℃で1〜100Pa・s、好ましくは5〜100Pa・s、より好ましくは10〜100Pa・sの粘度を有するものである。このオルガノポリシロキサンの粘度が上記範囲より低すぎると、組成物の硬化により得られるシリコーンゴム発泡体の機械的強度が低下し、発泡体成形品として、実用上問題となる場合がある。また、粘度が上記範囲より高いと、組成物の粘度が高くなりすぎて材料ポンプによる供給時間が長くなり、生産性が悪くなる場合がある。
なお、本発明において、粘度は回転粘度計等により測定できる。
【0014】
該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、通常、下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などの非置換の一価炭化水素基;3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基などの置換一価炭化水素基である。複数の置換基は、異なっていても同一であってもよいが、分子中にアルケニル基を2個以上(通常、2〜20個程度)含んでいることが必要である。aは1.9〜2.4、好ましくは1.95〜2.05の範囲の数である。)
で示されるものが用いられる。
【0015】
このオルガノポリシロキサンは、直鎖状であってもよいし、RSiO3/2単位(Rは前記の通り)あるいはSiO4/2単位を含んだ分岐状であってもよいが、通常は主鎖がジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2、Rは前記の通り)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R3SiO1/2、Rは前記の通り)で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好適である。珪素原子に結合した置換基は、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基としてはビニル基が望ましく、その他の置換基としてはメチル基、フェニル基が望ましい。
【0016】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分の一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)との付加(ヒドロシリル化)反応において、架橋剤として作用する成分である。
【0017】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状構造等各種のものが使用可能であるが、珪素原子に結合した水素原子、即ちSiH基を一分子中に少なくとも2個(通常2〜200個)、好ましくは3個以上(例えば3〜150個)、より好ましくは3〜100個程度含有することが必要である。
【0018】
(B)成分のSiH基以外の珪素原子に結合した基は、前記平均組成式(I)の一価炭化水素基Rと同様の置換又は非置換の一価炭化水素基であるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を含有しないものが好ましく、特にメチル基及びフェニル基が好ましい。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中の珪素原子数(又は重合度)が2〜300個、好ましくは3〜200個程度のものであればよい。
【0019】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR3SiO1/2単位、R2SiO2/2単位、R(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はRSiO3/2単位(上記式中、Rはいずれも前記平均組成式(I)のRと同じであるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を含有しないものであることが好ましい)を含むシリコーンレジン等を例示することができる。
【0020】
(B)成分の配合量は、(A)成分に含まれるアルケニル基1個に対して(B)成分中のSiH基が0.4〜5.0当量(即ち、0.4〜5.0個)、好ましくは0.8〜3.0当量(即ち、0.8〜3.0個)の範囲となる量である。0.4当量より少ない場合は、架橋密度が低くなりすぎて、発泡体成形品の耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。また5.0当量より多い場合は、脱水素反応による発泡の問題が生じる上、同様に耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。
【0021】
(C)成分であるヒュームドシリカ
(C)成分のヒュームドシリカは、シリコーンゴムに十分な強度を与えるために配合されるものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、50m2/g以上、好ましくは100〜400m2/g、より好ましくは150〜350m2/gである。比表面積が50m2/gより小さいと十分な強度が得られないばかりか、発泡体の外観も悪くなるおそれがあり、400m2/gより大きいと配合が困難になるおそれがある。
【0022】
これらヒュームドシリカはそのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で予め処理したもの、あるいはシリコーンオイルとの混練時に表面処理剤を添加して処理したものを使用することが好ましい。これら表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど公知のものであればいかなるものを用いてもよく、1種又は2種以上を同時に用いても、異なるタイミングで用いても構わない。
【0023】
また、これら(C)成分のヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し、10〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜35質量部である。配合量が10質量部より少ないと十分なゴム強度が得られない場合があり、また40質量部を超えると配合が困難になってしまうおそれがある。
【0024】
(D)付加反応触媒
(D)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。
なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)成分に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0025】
その他の成分
本発明において適用される室温で液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物において、その他の成分として、必要に応じて、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することは、発泡体成形品の外観を損なわない範囲で任意とされる。
【0026】
本発明においては、超臨界流体を用いるが、超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度及び圧力(臨界点)を超えた状態にあり、通常の気体や液体とは異なる性質を示す特殊な流体である。例えば、二酸化炭素、窒素、エタン、エチレンなどが挙げられる。液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の射出成形において、成形機シリンダー部は室温付近で超臨界流体とゴム組成物を混合することが好ましいことから、臨界温度が31℃で臨界圧力が7.38MPaである二酸化炭素が好ましい。臨界温度が−147℃で臨界圧力が3.35MPaである窒素を使用することも、シリコーンゴム発泡体の安全性から好ましい。
【0027】
超臨界流体の混合量は、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜40質量部がより好ましく、1〜30質量部が特に好ましい。0.1質量部より少ないと、シリコーンゴム組成物が発泡体とならないおそれがあり、50質量部を超えると異常発泡となり、発泡体の物理的強度が低下し、実用上使用困難となる場合がある。
【0028】
次に、本発明の射出成形によるシリコーンゴム発泡体の製造方法について、図を参照して説明する。
図1に示す通り、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物は、材料として、通常、A液とB液の2液に分けて用いられる。2液に分けられた材料は、材料供給ポンプ1,2から定量器11,12に供給される。定量器11,12からA液とB液が所定の割合で材料供給ライン3を通じて合流する。A液とB液が合流する材料供給ライン3に超臨界流体供給装置4から超臨界流体Cを圧入し、材料A液とB液及び超臨界流体Cは、スタティックミキサー5を使用してプレ混合される。プレ混合された材料は、射出成形機のシリンダー部6に供給され、定量しながら、スクリューミキサー61によって、再度回転混合される。混合後、シリンダー部6からノズル7内を貫通する中空管であるランナー8より金型9に射出され、金型9内で加熱され、硬化し、均一なセルを有するシリコーンゴム発泡体が成形される。
【0029】
なお、超臨界流体をスタティックミキサーによりプレ混合せずに、直接射出成形機のシリンダー部に供給することも可能である。この場合、加熱硬化後のシリコーンゴム発泡体のセル径が大きくなり、セル径の均一性が低くなる場合がある。超臨界流体と液状付加硬化型シリコーンゴム組成物との混合を十分なものとするためにも、これらの混合をスタティックミキサー等によるプレ混合工程と、スクリューミキサー等による本混合工程との2段階で行うことが好ましい。超臨界流体と液状付加硬化型シリコーンゴム組成物との混合を2段階で行うことにより、シリコーンゴム発泡体のセルの最大粒径を400μm以下、好ましくは20〜300μm、特に50〜200μmとすることができる。
【0030】
本発明においては、金型のゲート断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長L比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下、好ましくは6.9以下の金型を用いて射出成形するものである。7.0を超えると、シリコーンゴム発泡体はセルが不均一になる。なお、上記L/S(mm/mm2)の下限値としては、0.01以上、特に0.1以上とすることが好ましい。
【0031】
ここで、キャビティ内の最大流動長Lとは、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物が金型のゲート(即ち、金型に連結するノズル内部のランナーの末端と、キャビティとを連結する金型内の連結部分)の末端部からキャビティ内に流れ込む際の最大の長さ、即ち、金型のゲート中心線(の延長線)からキャビティ形状の最も遠い末端部までの距離を意味する。
例えば、図2のダンベル形状のキャビティを示す金型の概略断面図において、最大流動長Lはゲートの中心線の延長線上からダンベル形状のキャビティの末端部(側面)までのゲート中心線に対し垂直方向(90度あるいは直角方向)の距離であり、ゲートの断面積Sは、ゲートの長さ方向に沿って水平に切断された状態の断面積で、斜線部の面積である。なお、図2において、20は金型本体、21はキャビティ、22はゲート、23はランナーの末端であり、成形材料はランナー末端の垂直方向から射出されてくるものである。
【0032】
この場合、ゲート断面積S、キャビティ内の最大流動長Lは特に制限されるものではないが、ゲート断面積Sは、0.015〜50mm2、特に0.1〜24mm2であることが好ましく、最大流動長Lは、0.1〜350mm、特に0.7〜168mmであることが好ましい。
【0033】
射出成形及び硬化条件としては、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物に超臨界流体を圧入した成形材料を、キャビティを有する金型内に射出する際には、通常100〜2,000MPa、好ましくは200〜1,000MPa程度の圧力で射出することが好ましく、その後、キャビティ内に射出された成形材料を硬化させる際には、金型内の温度を通常150℃未満(即ち、149℃以下、特に145℃以下)、好ましくは70〜140℃、特に80〜130℃、とりわけ100〜130℃の硬化温度範囲において、金型内にて硬化発泡させることが好適である。150℃以上の温度で硬化させると、超臨界流体の気泡が同化せず、発泡体のセルが形成されにくい場合がある。
【0034】
本発明により得られるシリコーンゴム発泡体の成形品は、その優れた外観と安全性から食品用のパッキン、実用強度面からプリンターや複写機のOPCロール、定着ロールなどに用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[液状付加硬化型シリコーンゴム組成物の調製]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が30Pa・s(平均重合度 約750)であるジメチルポリシロキサン90質量部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)40質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部を室温(25℃)で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続けて冷却し、シリコーンゴムベースを得た。
このシリコーンゴムベース130質量部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が100Pa・sである(平均重合度 約1,000)ジメチルポリシロキサン60質量部、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン[粘度0.011Pa・s、重合度20、SiH基量0.0050mol/g]2.0質量部[SiH基/アルケニル基=2.2]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.10質量部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合し、架橋剤と白金触媒とが混在しないようにA液とB液の2液に分割し、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物を調製した。
【0037】
[実施例1,2]
調製したA液とB液の2液の液状付加硬化型シリコーンゴム組成物を材料供給ポンプにセットし、A液とB液を等量供給し、また、材料供給ラインへ超臨界流体供給装置から40℃に加温した二酸化炭素を圧力8MPaで圧入した。超臨界状態の二酸化炭素はA液とB液の材料合計量100質量部に対し、実施例1では15質量部、実施例2では40質量部を供給した。スタティックミキサーでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素をプレ混合し、射出成形機のシリンダー部へ供給した。シリンダー部で、再度、スクリューミキサーでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素を回転混合した。
金型のゲート断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長L比 L/S(mm/mm2)の値が6.3の金型へ混合物を射出し、120℃、240秒で硬化し、シリコーンゴム発泡体を得た。得られた発泡体の密度と発泡体のセルの最大粒径と最小粒径を顕微鏡により計測し(試料数5)、その結果を表1に示した。
【0038】
[実施例3,4]
実施例1,2と同様に材料供給ラインへ超臨界流体供給装置から温度23℃の窒素を圧力8MPaで圧入し、超臨界状態の窒素はA液とB液の材料合計量100質量部に対し、実施例3では10質量部、実施例4では15質量部を供給した以外は同様に射出成形を行い、120℃、240秒で硬化し、シリコーンゴム発泡体を得た。得られた発泡体の密度と発泡体のセルの最大粒径と最小粒径を顕微鏡により計測し、その結果を表1に示した。
【0039】
[比較例1,2]
金型のゲート断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長L比 L/S(mm/mm2)の値が7.1の金型を用いた以外は、実施例1,2と同様にしてシリコーンゴム発泡体を得た。得られた発泡体の密度と発泡体のセルの最大粒径と最小粒径を顕微鏡により計測し、その結果を表2に示した。
【0040】
[比較例3,4]
比較例1,2と同様の金型を用いた以外は、実施例3,4と同様にしてシリコーンゴム発泡体を得た。得られた発泡体の密度と発泡体のセルの最大粒径と最小粒径を顕微鏡により計測し(試料数5)、その結果を表2に示した。
【0041】
【表1】

参考データー:二酸化炭素及び窒素が0質量部の場合、ゴムの密度1.14g/cm3
【0042】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のシリコーンゴム発泡体の製造方法の工程の概略を示す流れ図である。
【図2】本発明に用いる金型の一例を示すもので、図1のX−X線に沿った概略断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1,2 材料供給ポンプ
11,12 定量器
3 材料供給ライン
4 超臨界流体供給装置
5 スタティックミキサー
6 シリンダー部
61 スクリューミキサー
9,20 金型
A A液
B B液
C 超臨界流体
21 キャビティ
22 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体と液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物とを混合した混合物を、金型のゲートの断面積Sに対するキャビティ内の最大流動長Lの比 L/S(mm/mm2)の値が7.0以下である金型のキャビティ内に射出して、発泡・硬化させることを特徴とするシリコーンゴム発泡体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法により得られるシリコーンゴム発泡体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−23282(P2009−23282A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190606(P2007−190606)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】