説明

シリコーン粘着剤組成物及び粘着フィルム

【解決手段】(A)1分子中に2個以上のアルケニル基及びフェニル基を有し、ジオルガノポリシロキサンの全有機基のうちフェニル基が1.0〜12モル%で含まれると共に、ジオルガノポリシロキサン100g中にアルケニル基が0.0005〜0.05モルで含まれ、25℃における粘度が100,000mPa・s以上であるジオルガノポリシロキサン100〜80質量部、(B)R13SiO0.5単位及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサン0〜20質量部、(C)SiH基を3個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(E)付加反応触媒、(F)有機溶剤を含むシリコーン粘着剤組成物。
【効果】貼り付け時に気泡を巻き込まず、貼付された後には、独りでにずれたりすることなく、貼付されているが、手で容易に剥離することが可能である粘着フィルムの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム及び該フィルムの粘着層を形成するために使用されるシリコーン粘着剤組成物に関する。該粘着フィルムは、フラットパネルディスプレイに貼付したり、光学フィルム等の光学部材やプリント配線板等の電子部品の加工時に保護やマスキングの目的で貼付したりする用途に好適である。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)は、各種電子・電気機器の表示装置として多用されている。例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)等の表示装置や、これらを利用したタッチパネルがあり、このようなディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、防眩、のぞき見防止などの目的で、各種フィルムが貼付される。
【0003】
このフィルムには、表示装置の内部に組み込まれる場合であっても、貼り付け時に、気泡巻き込みしない、気泡ぬけ性がよい、などの特性が必要である。貼付されたフィルムは独りでにずれたり、剥がれたりしないことが必要であるが、貼り替え時には再剥離(剥がすこと)が容易であることが必要である。
【0004】
従来、このフィルム用の粘着剤としてアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等有機樹脂系粘着剤が使用されていたが、このような粘着剤を用いた粘着フィルムは、貼り付け時に気泡の巻き込みがあった。気泡を巻き込んだ場合、該気泡によりディスプレイの輝度、明るさ、色が不均一となり表示むらが発生するため、貼り直しや気泡の押し出しなどの作業が必要になる。巻き込んだ気泡を押し出すために、粘着フィルムの表面から気泡を指で強く押し出したり、貼り直したりを繰り返すうちにディスプレイ自体を損なうことがあった。
【0005】
粘着フィルムを製造してから使用するまでの間は、粘着面を保護する必要から剥離ライナーを粘着面に貼り合わせておき、使用する際に剥離ライナーを剥がして使用する。また、粘着フィルムをディスプレイや光学フィルム等の被着体に保護の目的で貼り付ける場合、被着体に貼り付けられた状態に置かれ、先の工程の必要な段階で剥がされる。これらの場合、粘着フィルムの粘着面は剥離ライナーや被着体に貼り付けられたまま、場合によっては長時間に亘り、保管、輸送などに供される。このときに例えば30〜60℃、65〜95%RHの高温、高湿度下に放置される場合がある。このため剥離ライナーや被着体に貼り付けられた状態で湿熱環境におかれた場合でも、粘着フィルムを剥がす際に粘着力が大きく上昇してはならない。
【0006】
ディスプレイ用フィルムの粘着剤組成物として、無溶剤型オルガノポリシロキサン組成物が知られている(特許文献1:特開2004−225005号公報)。該オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる粘着剤は、基材フィルムとの密着性が不十分であり、貼付作業時や貼り替え作業時などに基材と粘着剤層が剥離することがある。該剥離は、基材フィルムの表面に、コロナ処理やプライマー処理などの密着向上のための処理を行っても、完全に防止することができない。また、該組成物は、塗工時に強く帯電することがあり、これにより、塗工後から硬化前までの間に塗工された粘着剤が一部流動し、粘着剤層表面が不均一になることがある。
【0007】
また、フラットパネルディスプレイに種々のフィルムを貼りつけるのに適したシリコーン粘着剤組成物が知られている(特許文献2:特開2006−152266号公報)。この組成物を基材フィルムに塗工して十分な密着性を得るためには基材フィルムを予めプライマー処理する必要があり、粘着フィルムを製造するためにはプライマー塗工工程と粘着剤塗工工程の2段階が必要で、効率的ではなかった。
【0008】
また、プライマーを使用しなくても基材に対して良好に密着する接着性付与剤を含有するシリコーンゴムコーティング剤組成物が知られている(特許文献3:特開2007−191637号公報)。この組成物を塗工・硬化させたゴム層(粘着剤層)は、被着体に貼り合わせた後、経時で特に湿熱条件下で粘着力が大きく上昇し、再剥離性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−225005号公報
【特許文献2】特開2006−152266号公報
【特許文献3】特開2007−191637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適な粘着フィルム及び該フィルム用のシリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。更に、予め基材フィルムの表面にプライマー処理をせずに、直接、粘着剤組成物を塗工した場合でも優れた基材フィルムへの密着性が得られるシリコーン粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のシリコーン硬化性組成物を用いると、上記目的を達成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記のシリコーン粘着剤組成物及び粘着フィルムを提供する。
請求項1:
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基及びフェニル基を有し、ジオルガノポリシロキサンの全有機基のうちフェニル基が1.0〜12モル%で含まれると共に、ジオルガノポリシロキサン100g中にアルケニル基が0.0005〜0.05モルで含まれ、25℃における粘度が100,000mPa・s以上であるジオルガノポリシロキサン
100〜80質量部、
(B)R13SiO0.5単位及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサン(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。) 0〜20質量部、
(C)SiH基を3個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A),(B)成分中のアルケニル基に対する
SiH基のモル比が0.5〜20となる量、
(D)制御剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部、
(E)付加反応触媒
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、
貴金属分として5〜2,000ppm、
(F)有機溶剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して25〜900質量部
を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物。
請求項2:
(B)成分を含まないことを特徴とする請求項1記載のシリコーン粘着剤組成物。
請求項3:
基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が請求項1又は2に記載されたものである粘着フィルム。
請求項4:
粘着剤層の厚みが2〜200μmである請求項3記載の粘着フィルム。
請求項5:
粘着層が、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に備えられた厚み30μmの粘着剤層からなるフィルムについて、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法により測定された粘着力0.001〜1.0N/10mmを有することを特徴とする請求項3又は4記載の粘着フィルム。
請求項6:
基材フィルムと粘着層との間にプライマー層を有さない、請求項3乃至5のいずれか1項記載の粘着フィルム。
請求項7:
基材フィルムの表面がコロナ処理されており、コロナ処理された該表面上に粘着層を備える請求項3乃至6のいずれか1項記載の粘着フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着フィルムは、貼り付け時に気泡を巻き込まない。貼付された後には、独りでにずれたりすることなく、貼付されているが、手で容易に剥離することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において粘着剤に使用される(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基及びフェニル基を含有するジオルガノポリシロキサンであり、例えば、下記式で示されるものである。
【0015】
3a2(3-a)SiO(R32SiO)m(R22SiO)nSiR2(3-a)3a (1)
HOR22SiO(R32SiO)m+2(R22SiO)nSiR22OH (2)
(R3a2(3-a)SiO1/2o(R32SiO2/2p(R22SiO2/2q
−(R4SiO3/2r(SiO4/2s (4)
(式中、R2は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の1価炭化水素基、R3はアルケニル基含有有機基であり、aは0〜3の整数、好ましくは1であり、mは0以上、nは10以上の整数であり、aが0のときmは2以上であり、また、m+nはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100,000mPa・s以上とする数である。R4はR2又はR3、oは3〜12の整数、pは0以上、qは10以上の整数、r+sは1〜5の整数であり、o+p+q+r+sはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100,000mPa・s以上とする数である。)
【0016】
ここで、R2としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン、アミノ基、水酸基、シアノ基等の他の基で置換した、3−アミノプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基等も例示される。R2としては、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0017】
フェニル基の含有量はこのジオルガノポリシロキサンの全有機基のうちの1.0〜12モル%とするもので、好ましくは1.5〜9モル%である。1.0モル%未満では粘着剤層とフィルム基材との密着性が不十分となり、12モル%を超えると環状の低分子シロキサン残渣が多くなり、再剥離時に粘着剤残渣が残る場合がある。フェニル基は、(C652SiO2/2単位、(C65)R0SiO2/2単位(R0は脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換のフェニル基を除く1価炭化水素基で、アルキル基であることが好ましい。)、又は(C65)SiO3/2単位として含有することができる。(C652SiO2/2単位であることが好ましい。
【0018】
(A)成分がフェニル基を上記の含有量で含有することにより、フィルム基材との密着性が良好なものとなり、特に、粘着フィルムを湿熱経時で放置した場合の密着性の低下を抑えることができるようになる。
【0019】
3としては、炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等であり、特に、工業的にはビニル基が好ましい。(A)成分におけるアルケニル基含有量は0.0005〜0.05モル/100gであるものであり、該範囲において、フラットパネルディスプレイフィルムとして、好適な粘着性を達成できる。更に0.0007〜0.01モル/100gであるものが好ましい。0.0005モル/100g未満では粘着剤組成物の硬化性が不十分となり、0.05モル/100gを超えると粘着性が低下し、粘着力が得られなくなる。
【0020】
このジオルガノポリシロキサンの性状はオイル状、生ゴム状であればよい。(A)成分の粘度は25℃において、オイル状のものであれば100,000mPa・s以上であることが好ましい。100,000mPa・s未満では塗工性が低下し塗工面にはじきが生じたりするため不適である。また、粘度が1,000,000mPa・sを超えるような生ゴム状のものであれば、30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度(30%溶解粘度)が100,000mPa・s以下であることが好ましい。更に30%溶解粘度が3,000〜30,000mPa・sであることが好ましい。100,000mPa・sを超えると、組成物が高粘度となりすぎて製造時の撹拌が困難になる。更に、(A)成分は2種以上を併用してもよい。この場合は、(A)成分の合計に含まれるアルケニル基の合計が0.0005〜0.05モル/100gとなるようにすればよい。なお、本発明において粘度は回転粘度計により測定される25℃での値である。
【0021】
(A)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のモノマーを、触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は環状の低分子シロキサンを含有しているため、この環状低分子シロキサンを加熱及び減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0022】
(B)成分は、R13SiO0.5単位及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンである。R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6未満では粘着力やタックが低下することがあり、1.7を超えると粘着力や保持力が低下することがある。
【0023】
1は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン、アミノ基、水酸基、シアノ基等の他の基で置換した、3−アミノプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基等も例示される。この中でもメチル基が好ましい。
【0024】
(B)成分はOH基を有していてもよく、OH基含有量は(B)成分総質量の0.01〜4.0質量%のものが好ましい。OH基が0.01質量%未満では粘着剤の凝集力が低くなることがあり、4.0質量%を超えるものは粘着剤のタックが低下する理由により好ましくない。
【0025】
(B)成分は2種以上を併用してもよい。また、本発明の特性を損なわない範囲でR1SiO1.5単位、R12SiO単位を(B)成分中に含有させることも可能である。
【0026】
(A)、(B)成分の配合の質量比は、(A)/(B)=100/0〜80/20とすればよい。特に100/0〜90/10とすることが好ましい。(B)成分のジオルガノポリシロキサンの配合比が80/20より多いと粘着力が強すぎて再剥離性が低下したり、基材フィルムへの密着性が低下したりする。(B)成分は配合しなくてもよい。
【0027】
(C)成分は架橋剤で、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、直鎖状、分岐状のものを使用できる。
(C)成分として、下記式のものを例示することができるが、これらのものには限定されない。
b2(3-b)SiO(HR2SiO)t(R22SiO)uSiR2(3-b)b
及び
(Hb2(3-b)SiO1/2v(HR2SiO2/2w(R22SiO2/2x
−(R2SiO3/2y(SiO4/2z
(上式において、R2は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない置換又は非置換の1価炭化水素基であり、bは0又は1、t、uは0以上の整数であり、bが0のときは、tは2以上である。t+uは、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が1〜500mPa・sとなる数である。また、vは3〜12の整数、wは0以上、y+zは1〜5の整数で、v+w+x+y+zはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を1〜500mPa・sとする数である。)
【0028】
ここで、R2は、上で述べたのと同様に、好ましくは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などであり、更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン、アミノ基、水酸基、シアノ基等の他の基で置換した、3−アミノプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基等も例示される。特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0029】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)の25℃における粘度は、1〜1,000mPa・sであることが好ましく、2〜500mPa・sが更に好ましい。また、2種以上の混合物でもよい。更に、[R2SiO3/2]、[HSiO3/2]、[SiO4/2]を含有する構造のものも例示できる。
【0030】
(C)成分の使用量は、(A),(B)成分中のアルケニル基に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5〜20であり、特に0.8〜15の範囲となるように配合することが好ましい。0.5未満では架橋密度が低くなり、これに伴い凝集力、保持力が低くなることがあり、20を超えると架橋密度が高くなり、適度な粘着力及びタックが得られないことがある。
【0031】
(D)成分は制御剤であり、シリコーン粘着剤組成物を調合ないし基材に塗工する際に加熱硬化の以前に処理液が増粘やゲル化を起こさないようにするために添加するものである。具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0032】
(D)成分の配合量は、(A),(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部の範囲であればよく、特に0.05〜2.0質量部が好ましい。8.0質量部を超えると硬化性が低下することがある。
【0033】
(E)成分は付加反応触媒であり、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体、ルテニウム錯体等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエン等の溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いてもよい。
【0034】
(E)成分の添加量は、(A),(B)成分の合計質量に対し、貴金属分(白金族金属)として5〜2,000ppm、特に10〜500ppmとすることが好ましい。5ppm未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、2,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0035】
(F)成分の有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート等のエステル基とエーテル基を有する溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等のシロキサン系溶剤、又はこれらの混合溶剤などが挙げられる。
【0036】
これらの中で、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤が好ましい。また脂肪族炭化水素系溶剤と、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、エーテル基とエステル基の両方を有する溶剤などとの混合溶剤も好ましい。
【0037】
この組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(F)成分、更に後述する任意成分を混合溶解することにより製造される。本発明のフィルムを製造する際は、該混合物を、必要に応じて更に有機溶剤で希釈し、(E)成分を添加及び混合して、後に示す種々の基材に塗工される。
【0038】
なお、(A),(B)成分の一部又は全部は、それらに残留するケイ素原子に結合する水酸基を脱水縮合することによって除去するために、塩基触媒存在下、及び必要に応じて一部又は全部の(F)成分の存在下、で所定時間反応させた後に、得られる生成物として用いてもよい。塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシド、ブチルリチウム等の有機金属、水酸化カリウムとシロキサンのコンプレックス、アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の窒素化合物等が挙げられる。これらの中で、アンモニアガス、アンモニア水が好ましい。温度は、20〜150℃とすることができる。通常は、室温ないし(F)成分の還流温度で行えばよい。時間は、特に限定されないが、0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間とすればよい。
【0039】
更に、反応終了後、必要に応じて、塩基触媒を中和する中和剤を添加してもよい。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素等の酸性ガス、酢酸、オクチル酸、クエン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸などが挙げられる。
【0040】
本発明のシリコーン粘着剤組成物には、上記各成分以外に任意成分を添加することができる。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン等のアルケニル基を含有しない非反応性のオルガノポリシロキサン、1分子中にSiH基を1又は2個含有するオルガノポリシロキサン、更に、フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、チオエーテル系等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤、リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、アンチモン系等の難燃剤、カチオン活性剤、アニオン活性剤、非イオン系活性剤等の帯電防止剤、染料、顔料、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤などが使用される。
【0041】
上記のように配合されたシリコーン粘着剤組成物は、粘着剤層の厚みが30μmとなるようにポリエチレンテレフタレート(厚み23μm)基材に塗工した粘着テープを用い、JIS Z 0237に示される180°引き剥がし粘着力の測定方法により、ステンレス板への粘着力を測定した場合、0.001〜1.0N/10mmとなるものがよい。好ましくは0.004〜0.4N/10mm、更に好ましくは、0.004〜0.1N/10mmとなるものがよい。0.001N/10mm未満では粘着力が不足でディスプレイ表面に貼付しなくなり、1.0N/10mm超では粘着力が過剰で手で剥離するのが困難となる。なお、このような粘着力を与える手段としては、(A)成分のアルケニル基を調整したり、(A),(B)成分の割合を調整することで達成し得る。
【0042】
上記のように配合されたシリコーン粘着剤組成物は、種々の基材フィルムに塗工し、所定の条件にて硬化させることにより粘着剤層を得ることができる。
【0043】
基材フィルムとしては、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、トリアセチルセルロース、ポリアセタール、ノルボルネン系樹脂(「アートン」(商標登録)、JSR社製)、シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン社製、「ゼオノア(ZEONOR)」(商標登録))、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等からなるプラスチックフィルム基材や、これらのうちの複数を積層してなる複合基材等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のポリアクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましい。
【0044】
基材フィルムの厚みは限定されないが、2〜300μm、好ましくは10〜150μmとされる。
【0045】
基材フィルムと粘着層の密着性を向上させるためにプライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理したものを用いてもよい。好ましくはコロナ処理がよい。プライマー処理はなくてもよく、プライマー層のない構成とし得る。
【0046】
フィルムの粘着層面と反対面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止等の処理などの表面処理されたものが好ましい。基材フィルムに粘着層を塗工してから上記の各表面処理をしてもよいし、表面処理してから粘着層を塗工してもよい。
【0047】
傷つき防止処理(ハードコート処理)としては、アクリレート系、シリコーン系、オキセタン系、無機系、有機無機ハイブリッド系等のハードコート剤による処理が挙げられる。
【0048】
防汚処理としては、フッ素系、シリコーン系、セラミック系、光触媒系などの防汚処理剤による処理が挙げられる。
【0049】
反射防止処理としては、フッ素系、シリコーン系などの反射防止剤の塗工によるウェット処理や、蒸着やスパッタリングによるドライ処理が挙げられる。帯電防止処理としては、界面活性剤系、シリコーン系、有機ホウ素系、導電性高分子系、金属酸化物系、蒸着金属系などの帯電防止剤による処理が挙げられる。
【0050】
シリコーン粘着剤の塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工、スプレー塗工等が挙げられる。
【0051】
塗工量としては、硬化した後の粘着剤層の厚みとして2〜200μm、特に3〜100μmとすることができる。
【0052】
硬化条件としては、80〜130℃で30秒〜3分とすればよいが、この限りではない。
【0053】
上記のように、粘着テープは、粘着剤組成物を基材フィルムに直接塗工して製造してもよいし、剥離コーティングを行った剥離フィルムや剥離紙に塗工し、硬化を行った後、上記の基材に貼り合わせる転写法により製造してもよい。本発明の粘着フィルムを保管、輸送する際の粘着層の保護のために、必要に応じて粘着層上に保護フィルムを設けることができる。
【0054】
本発明のシリコーン粘着剤組成物を用いて製造した粘着フィルムは、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車等の計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機等の文字や記号、画像を表示するための種々のタッチパネルやフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用することができる。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)等の表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。本発明の粘着フィルムは、これらのディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用される。
【0055】
更に、種々の光学用フィルムを製造する際の保護フィルム、電子部品を製造する際の保護フィルムにも好適である。例えば、偏光板、光拡散板等の光学部品を加工する際の保護用やマスキング用の粘着フィルム、フレキシブルプリント配線板など電子部品を加工する際の耐熱マスキングテープ等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、例中の部及び%は質量部及び質量%を示したものであり、特性値は下記の試験方法による測定値を示す。また、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表す。また、粘度は回転粘度計により測定される25℃における絶対粘度である。
【0057】
下記の試験方法を用いた。
初期粘着力
シリコーン粘着剤組成物溶液を、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケータを用いて塗工した後、130℃、1分の条件で加熱し硬化させ、粘着フィルムを作製した。この粘着フィルムを10mm幅に切り取ったテープをステンレス板に貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させることにより圧着した。室温で約20時間放置した後、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で180゜の角度でテープをステンレス板から引き剥がすのに要する力(N/10mm)を測定した。
【0058】
経時粘着力
初期粘着力評価と同様の方法で粘着フィルムを作製した。この粘着フィルムを10mm幅に切り取ったテープをステンレス板に貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させることにより圧着した。60℃、90%RHで7日間放置した後、室温に戻し、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で180゜の角度でテープをステンレス板から引き剥がすのに要する力(N/10mm)を測定した。
【0059】
保持力
粘着力評価と同様の方法で粘着フィルムを作製した。この粘着フィルムを長さ75mm、幅25mmに切り取ったテープをステンレス板の下端に粘着面積が25mm×25mmとなるように貼りつけ、粘着テープの下端に重さ1kgの荷重をかけ、150℃で1時間、垂直に放置した後のずれ距離を読みとり顕微鏡で測定した。
【0060】
気泡巻き込み性
厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン粘着剤組成物溶液を硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケータを用いて塗工した後、130℃、1分の条件で加熱し硬化させ、粘着フィルムを作製した。このフィルムを10cm×20cmの大きさに切り取り、短辺側から長辺方向に向かって手でガラス板に貼りつけた。このときに気泡巻き込みの状態を観察した。
評価基準
○ 気泡の巻き込みがなく、良好に貼付できる。
△ 気泡の巻き込みがあるが、フィルムの上から容易に指で気泡を押し出すことができ
る。
× 気泡の巻き込みがあり、フィルムの上から指で気泡を押し出すことができない。
【0061】
再剥離性
気泡巻き込み性の試験と同様に作製し、貼り付けた粘着フィルムをガラス板から手で引き剥がし、下記の基準により評価した。
評価基準
○ 手で容易にフィルムを剥がすことができ、フィルムに折れや曲がりの変形が残留し
ない。
△ 手でフィルムを剥がすことができるが、フィルムに折れや曲がりの変形が残留する
、糊残りがない。
× 手でフィルムを剥がすことができるが、フィルムに折れや曲がりの変形が残留し、
一部に糊残りがある。
【0062】
基材密着性
気泡巻き込み性の試験と同様に作製した粘着フィルムを所定の条件でエージングさせた。常態に戻した後、粘着層を爪で傷つけ、この部分を指の腹でこすり、粘着層が基材フィルムから剥離するかどうかを調べた。
評価基準
○ 剥離しない。
△ 一部が剥離する。
× 全体が剥離する。
【0063】
プライマー処理
以下の実施例、比較例において、特に記載のないものは未処理の基材フィルムを用いた。該プライマー処理には、水酸基末端のジオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び縮合反応触媒としてジオクチルスズジアセテートからなる縮合型シリコーンプライマー組成物を用いた。
【0064】
[実施例1]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA1(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が24,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量1.5モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A1)
(x=10、y=7,878、z=120)、
トルエン(66.7部)を混合した。更に、下記式のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンC1(1.15部):
Me3SiO(HMeSiO)40SiMe3
エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0065】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0066】
[実施例2]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA2(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が26,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量3.0モル%)(90部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A2)
(x=11、y=7,952、z=246)、
Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサンB1(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.85)の60%トルエン溶液(16.7部)、トルエン(60.0部)を混合した。更に、上記式のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンC1(以下、架橋剤C1)(0.35部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0067】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0068】
[実施例3]
下記式で示されるビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA3(25℃における粘度が100,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.004モル/100g,フェニル基含有量3.0モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A3)
(x=1、y=920、z=29)、
トルエン(66.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(1.28部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0069】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0070】
[比較例1]
下記式で示されるビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA4(25℃における粘度が80,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.04モル/100g,フェニル基含有量3.0モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A4)
(x=20、y=677、z=21)、
トルエン(66.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(15.4部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0071】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0072】
[比較例2]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA5(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が22,800mPa・sであり、ビニル基含有量0.0002モル/100g,フェニル基含有量1.5モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A5)
(x=0、y=7,484、z=114)、
トルエン(66.7部)を加えた。この混合物に、架橋剤C1(0.04部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0073】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各評価を行った。
【0074】
[比較例3]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA6(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が20,300mPa・sであり、ビニル基含有量0.06モル/100g,フェニル基含有量1.5モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A6)
(x=326、y=7,090、z=108)、
トルエン(66.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(11.54部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0075】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0076】
[比較例4]
下記式で示される生ゴム状のビニル基含有ジメチルポリシロキサンA7(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が26,700mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量0モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A7)
(x=10、y=8,398、z=0)、
トルエン(66.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(0.90部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0077】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0078】
[比較例5]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA8(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が24,500mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量15モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A8)
(x=13、y=6,968、z=1,230)、
トルエン(66.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(0.64部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0079】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0080】
[比較例6]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA9(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が24,500mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量15モル%)(70部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A9)
(x=13、y=6,968、z=1,230)、
Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサンB1(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.85)の60%トルエン溶液(50部)、トルエン(46.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(0.54部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0081】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0082】
[比較例7]
下記式で示されるビニル基含有ジメチルポリシロキサンA10(25℃における粘度が5,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.006モル/100g,フェニル基含有量0モル%)(100部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A10)
(x=0、y=448、z=0)、
架橋剤C1(1.15部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0083】
上記の混合物(シロキサン分約100%)(100部)に、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のシリコーン溶液(0.83部)を添加し、更に混合し、無溶剤型のシリコーン粘着剤組成物を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0084】
[比較例8]
下記式で示される生ゴム状のビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA11(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が24,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.002モル/100g,フェニル基含有量10モル%)(70部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A11)
(x=12、y=7,198、z=800)、
ポリシロキサンB1の60%トルエン溶液(50部)、トルエン(46.7部)を混合した。この混合物に、架橋剤C1(0.72部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し、混合した。
【0085】
上記の混合物(シロキサン分約60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加し、更に混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0086】
基材密着性については、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、縮合型シリコーンプライマー組成物を硬化後の塗工量が0.2g/m2となるように塗工し、120℃、30秒の条件で硬化させた。このプライマー層上に比較例8のシリコーン粘着剤を塗工して作製した粘着フィルムを用いて評価を行った。
【0087】
[比較例9]
下記式で示されるビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA12(25℃における粘度が5,000mPa・sであり、ビニル基含有量0.007モル/100g,フェニル基含有量5モル%)(87部):
ViMe2SiO(ViMeSiO)x(Me2SiO)y(Ph2SiO)zSiMe2Vi
(A12)
(x=0、y=378、z=20)、
Me3SiO0.5単位、Me2ViSiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサンB2(Me3SiO0.5単位/Me2ViSiO0.5単位/SiO2単位=39.5/6.5/54)(13部)、架橋剤C1(2.69部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)、接着性付与剤として3−グリシドキシプロピルトリメチルシラン(0.87部)を添加し、混合した。
【0088】
上記の混合物(シロキサン分約100%)(100部)に、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のシリコーン溶液(0.83部)を添加し、更に混合し、無溶剤型のシリコーン粘着剤組成物を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0089】
[比較例10]
ビニル基及びフェニル基含有ジメチルポリシロキサンA12(100部)、架橋剤C1(1.35部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)、接着性付与剤として3−グリシドキシプロピルトリメチルシラン(0.87部)を添加し、混合した。
【0090】
上記の混合物(シロキサン分約100%)(100部)に、白金分を0.5質量%含有する白金−ビニル基含有シロキサン錯体のシリコーン溶液(0.83部)を添加し、更に混合し、無溶剤型のシリコーン粘着剤組成物を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基及びフェニル基を有し、ジオルガノポリシロキサンの全有機基のうちフェニル基が1.0〜12モル%で含まれると共に、ジオルガノポリシロキサン100g中にアルケニル基が0.0005〜0.05モルで含まれ、25℃における粘度が100,000mPa・s以上であるジオルガノポリシロキサン
100〜80質量部、
(B)R13SiO0.5単位及びSiO2単位を含有し、R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサン(R1は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。) 0〜20質量部、
(C)SiH基を3個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A),(B)成分中のアルケニル基に対する
SiH基のモル比が0.5〜20となる量、
(D)制御剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部、
(E)付加反応触媒
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、
貴金属分として5〜2,000ppm、
(F)有機溶剤
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して25〜900質量部
を含むことを特徴とするシリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
(B)成分を含まないことを特徴とする請求項1記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が請求項1又は2に記載されたものである粘着フィルム。
【請求項4】
粘着剤層の厚みが2〜200μmである請求項3記載の粘着フィルム。
【請求項5】
粘着層が、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に備えられた厚み30μmの粘着剤層からなるフィルムについて、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法により測定された粘着力0.001〜1.0N/10mmを有することを特徴とする請求項3又は4記載の粘着フィルム。
【請求項6】
基材フィルムと粘着層との間にプライマー層を有さない、請求項3乃至5のいずれか1項記載の粘着フィルム。
【請求項7】
基材フィルムの表面がコロナ処理されており、コロナ処理された該表面上に粘着層を備える請求項3乃至6のいずれか1項記載の粘着フィルム。

【公開番号】特開2011−102336(P2011−102336A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256728(P2009−256728)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】