説明

シリルエステルコポリマー組成物

本発明は、20,000未満の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含み、少なくとも55重量%の固形分及び25℃において20ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリマー溶液に関する。本発明はさらに、シリルエステルコポリマーを含むコーティング組成物、及びそのようなコーティング組成物から製造された、硬化されたコーティングを有する構造物及び基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリルエステルコポリマー及び水生の微生物に対する殺生物性の性質を有する成分を含むシリルエステルコポリマー溶液及び防汚用コーティング組成物に関する。
【0002】
人工の構造物、例えば船体、ブイ、掘削プラットフォーム、石油生産用リグ、及び水中に浸されるパイプ、は水性の生物、例えば緑及び褐色藻類、フジツボ、イガイなどによる付着を受けやすい。そのような構造物は、一般的に金属製であるが、他の構造材料例えばコンクリート又は木材をもまた含み得る。この付着は、船体にとって有害である。なぜなら付着は水中での移動の間の摩擦抵抗を増加させ、その結果は減少された速度及び増加された燃料コストであるからである。静的な構造物、例えば掘削プラットフォーム及び石油生産用リグの脚、にとって有害である。なぜなら第一に、汚れの分厚い層の波及び潮流に対する抵抗は、予測し得ない及び潜在的に危険な力を構造物に生じさせ、第二に、汚れは、欠陥、例えば応力亀裂及び腐食について構造物を検査することを困難にするからである。汚れは、パイプ、例えば冷却水の取入れ口及び排出口において有害である。なぜなら、有効断面積が汚れにより狭められ、その結果、流速が低下するからである。
【0003】
例えば船舶の船体上のトップコートとして防汚用塗料を使用して、一般的に、海洋生物のための殺生物剤の放出により、海洋生物、例えばフジツボ及び藻類の付着及び成長を阻害することは公知である。
【0004】
慣用的に、防汚用塗料は、該塗料からしみだした殺生物性顔料と相対的に不活性なバインダーを含んでいた。使用されてきたバインダーの中にはビニル樹脂及びロジンがある。ビニル樹脂は、海水に不溶であり、それらを基礎とする塗料は高い顔料濃度を使用し、その結果、しみだしを保証する顔料粒子間の接触を有する。ロジンは堅く脆い樹脂であり、海水には非常に少し、溶解する。ロジンを基礎とする防汚用塗料は、可溶性マトリックス又は腐食性塗料と呼ばれてきた。殺生物性顔料は、使用中にロジンバインダーのマトリックスから非常に徐々に染みだし、ロジンの骨格マトリックスを残し、それは船体の表面から洗い流され、塗料塗膜内の深くから殺生物性顔料がしみ出すことを許す。
【背景技術】
【0005】
近年の多くの成功した防汚用塗料は、ポリマー状バインダーを基礎とする「自己研磨型コポリマー」塗料であり、該バインダーに殺生物性のトリオルガノスズ部位が化学的に結合され、そこから殺生物部位が海水により徐々に加水分解される。そのようなバインダー系において、直鎖型ポリマーユニットの側鎖は第一段階において海水との反応により分解され、残っているポリマー枠組みは、その結果、水溶性又は水に分散可能になる。第二ステップにおいて、船体の塗料層の表面における水溶性又は水分散可能な枠組みは、洗い流される、又は腐食される。そのような塗料系は、例えばイギリス国特許出願公開第1457590号に記載されている。
【0006】
代替の自己研磨型防汚塗料系は、シリルエステルコポリマーを基礎として開発されてきた。シリルエステルコポリマー及びこれらのコポリマーを含む防汚組成物は、例えば国際特許出願国際公開第00/77102号、米国特許第4,593055号、及び米国特許第5,436,284号に記載されている。通常、シリルエステルコポリマー溶液が製造され、続いてそれが、コーティング組成物の成分の1つとして続いて使用される。
【0007】
欧州特許出願公開第1127902号は、防汚組成物のためのバインダーを開示する。該バインダーは、有機溶媒中で付加重合により製造されることができるシリルエステルコポリマーを含む。製造されたコポリマーの分子量は高く、即ち36,600〜59,000の間である。
【0008】
欧州特許出願公開第1127925号は、2つのタイプのポリマーを含む防汚組成物を開示する。1つのタイプはシリルエステルコポリマーである。実施例で製造されたシリルエステルコポリマーは、37,600の分子量を有する。
【0009】
欧州特許出願公開第0775733号は、塩化パラフィン及び1,000〜150,000の範囲内の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含む防汚コーティング組成物を記載する。溶液におけるシリルエステルコポリマーの粘度は、50重量%キシレン溶液中、25℃において30〜1,000センチポイズであることができる。実施例において、シリルエステルコポリマー溶液は50重量%未満の固形分で製造された。これらの溶液から製造されたコーティング組成物は、高い量の揮発性分を含む。低い揮発性分を含むコーティング組成物は開示されていないし、示唆されていない。
【0010】
欧州特許出願公開第0802243号は、1,000〜150,000の範囲内の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含む防汚コーティング組成物について記載する。シリルエステルコポリマーの溶液の固形分は5〜90重量%であり得ることが述べられている。しかし実施例において、製造されたコポリマー溶液は50重量%の揮発性溶媒含有量を含み、これらの溶液から製造されたコーティング組成物は高い量の揮発性分を含む。この書類において、どのようにして、ハイソリッドコポリマー溶液が得られることができるかが開示されていない。そのようなハイソリッド溶液においてコポリマーの分子量の可能な範囲、又は好ましい範囲の提示もまたない。さらに、そのようなハイソリッドコポリマー溶液が、防汚コーティング組成物を製造するために使用される場合、どのような特性を有するべきか開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い量の揮発性有機化合物を含むコーティング組成物の欠点は、大量のこれらの物質が、蒸発されなければならないことであり、一方、揮発性有機含有量(VOC)レベルは、最近多くの国で法律により規制されている。例えばアメリカ合衆国では、連邦規則は、揮発性有機危険大気汚染物質(一般的にVOCと同義語)の含有量を防汚コーティングの場合、1リットル当たり400グラム未満に制限している。従って、より低いレベルの揮発性有機化合物を含み、好ましくは1リットル当たり400グラム未満のVOCを有する防汚コーティングに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
防汚コーティングの施与の最も一般的な手段は、エアレススプレー、ブラシ、又はローラーである。シリルエステルコポリマーを含み、エアレススプレー、ブラシ、ローラー又は他の一般的な施与手段により施与されることができ、1リットル当たり400グラム未満のVOCを有する自己研磨防汚コーティング組成物を製造するために、少なくとも55重量%の固形分及び25℃において20ポイズ、好ましくは10ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリマー溶液を使用することが必要であり、そうでなければコーティングの粘度は高すぎて、満足できる施与特性を可能にすることができない、又は追加の溶媒が施与の時点において追加されなければならず、その結果VOC限度を超えてしまう可能性があることを我々は見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
組成物のVOCレベルはASTM標準3960−2を併用してEPA参照方法24(EPA reference method)に従って測定されることができる、又はASTM標準D5201−01に従って計算されることができる。両方の方法は通常類似の結果を導く。コポリマー溶液、又は本発明に従うコーティング組成物の粘度について値が与えられたとき、ASTM標準D4287−00に従って、コーン及びプレート粘度計を用いて測定された高剪断粘度が参照される。
【0014】
コーティング組成物に対する上述された要求以外に、得られる船舶用の防汚コーティングは特に、コーティングが交互に湿ったり乾燥したりするところの船の部分、例えば喫水線に施与されたとき、高い統合性を有するべきである、即ちほとんどクラッキングを示さず、良好な接着性を示すべきである。コーティングは、十分に堅くなければならず、即ち柔らかくなく、又は粘着性があってはいけないが、脆くてもいけない。さらに、コーティングは、コーティングはいわゆるコールドフロー、又は塑性変形(plastic deformation)をほとんど示すべきではない、言い換えるとフィルムは船が水中で動いたとき、波状に揺れるべきではない。さらに、コーティング組成物は、十分に短い乾燥時間を示す必要がある。
【0015】
本発明は特に、シリルエステルコポリマー溶液、シリルエステルコポリマーを含むコーティング組成物、及びそのようなコーティング組成物から製造された硬化されたコーティングを有する基材及び構造物に関する。重量平均分子量、多分散度、ガラス転移温度、及びシリルエステルコポリマーの側鎖の量を調節することが、コポリマー溶液の性質、コーティング組成物の性質、及びコーティングの性質に影響を及ぼすことが見出された。
【0016】
本発明の場合、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定され、ポリスチレン標準に対して計算された重量平均分子量に換算して与えられる。多分散度(D)は、分子量分布ともまた呼ばれることもあるが、ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比として定義される(D=Mw/Mn)。多分散度は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、及び参照表準としてポリスチレンを用いてGPCにより測定されることができる。
【0017】
本発明は、少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%の固形分、及び25℃において20ポイズ未満、好ましくは10ポイズ未満、さらにより好ましくは5ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリマー溶液に関する。好ましくは該溶液の固形分は、80重量%以下である。組成物の固形分は、ASTM標準1644を用いて測定されることができる、又はASTM標準D5201−01に従って計算されることができる。
【0018】
溶液中のシリルエステルコポリマーは、好ましくは1,500より上、よりさらに好ましくは2,000より上の重量平均分子量を有し、該重量平均分子量は20,000未満、さらにより好ましくは15,000未満である。
【0019】
コポリマーは、好ましくは1.1より大きい多分散度を有し、該多分散度は、好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満である。溶液中のシリルエステルコポリマーは、好ましくは5℃より高い、さらにより好ましくは10℃より高いガラス転移温度を有し、好ましくは該ガラス転移温度は、90℃より低く、さらにより好ましくは60℃より低い。
【0020】
該コポリマーの好ましくは10重量%より多く、さらにより好ましくは30重量%より多く、そして非常に好ましくは40重量%より多くが、シリルエステル官能性を有する側鎖を有するビルディングブロックからなる。該コポリマーの好ましくは70重量%未満、さらにより好ましくは60重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖を有するビルディングブロックからなる。
【0021】
本発明はさらに、1リットル当たり400グラム未満のVOC及び25℃において20ポイズ未満、好ましくは10ポイズ未満、さらにより好ましくは5ポイズ未満の粘度を有する、安定な防汚コーティング組成物に関する。
好ましくは、該防汚組成物は以下:
好ましくは1,500、さらにより好ましくは2,000より大きい重量平均分子量であって、好ましくは20,000、さらにより好ましくは15,000未満である重量平均分子量;1.1より大きく好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満であり多分散度;好ましくは5℃より上であり、さらにより好ましくは10℃より上であり、好ましくは90℃未満、さらにより好ましくは60℃未満であるガラス転移温度を有するシリルエステルコポリマーであって、該シリルエステルコポリマーの好ましくは10重量%より上、さらにより好ましくは30重量%より上、非常に好ましくは40重量%より上、そして好ましくは70重量%未満、さらにより好ましくは60重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖からなるシリルエステルコポリマー、及び
水生生物に対して殺生物性を有する成分
を含む。
本発明に従うコーティング組成物から製造されたフィルムは、良好な統合性及び低いコールドフローを示す。
【0022】
コーティング組成物の製造の間にシリルエステルコポリマー溶液は、コーティング組成物の合計重量に基づいて、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらにより好ましくは15〜45重量%の量で添加される。
【0023】
コーティング組成物において、水生生物に対して殺生物性を有する成分は、コーティング組成物の合計重量に基づいて0.1〜70重量%、より好ましくは1〜60重量%、さらにより好ましくは2〜55重量%の量で、好ましくは存在する。
【0024】
シリルエステルコポリマー溶液、及び本発明に従うコーティング組成物中に存在するシリルエステルコポリマーは、下記式(I)
【0025】
【化1】

の少なくとも1の末端基有する少なくとも1の側鎖を含むコポリマーであり、ここでnは0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換されていてもよいアリールオキシからそれぞれ独立して選択される。好ましくは、シリルエステルコポリマー中の少なくとも1のR1〜R5基は、メチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はフェニルである。より好ましくはnは0であり、R3,R4,及びR5は同じであるか又は異なり、イソプロピル、n−ブチル又はイソブチルを表す。
【0026】
本発明の文脈において、用語C1〜20−アルキルは、1〜20の炭素原子を有する直鎖、分岐、及び環状炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びイコシルを表す。用語、置換されたC1〜20−アルコキシは、C1〜20−アルキルオキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、シクロヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、テトラデコキシ、ヘキサデコキシ、オクタデコキシ、及びオコソキシを意味する。用語アリールは、芳香族炭素環状環若しくは環系、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、及びキシリルを意味すると理解されるべきである。用語「場合により置換されていてもよい」とは、問題の置換基が1回以上、好ましくは1〜5回、置換基で置換されていてもよいことを示すために使用される。これらの置換基は、例えばヒドロキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、オキソ、アルキルカルボニル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、カルバモイル、アルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミン、シアノ、グアニジノ、カルバミド、アルカノイルオキシ、スルホノ、アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、スルファニル、アルキルチオ、及びハロゲンであり得る。
【0027】
上記式(I)の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を含むシリルエステルコポリマーは例えば、1以上のビニル重合化可能なモノマーを1以上のオレフィン性二重結合及び1以上の上記末端基(I)を含む1以上のモノマーと共重合化させることにより得られることができる。
【0028】
1以上のオレフィン性二重結合及び1以上の上記末端基(I)を含む1以上のモノマーと共重合化され得る適切なビニル重合化可能なモノマーの例は、(メタ)アクリレートエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びメトキシエチルメタクリレート;マレイン酸エステル、例えばジメチルマレエート及びジエチルマレエート;フマール酸エステル、例えばジメチルフマレート及びジエチルフマレート;スチレン、ビニルトルエン、α−メチル−スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、イソボルニルメタクリレート、マレイン酸、及びそれらの混合物を含む。好ましくはメチル(メタ)アクリレート若しくはエチル(メタ)アクリレートと別のビニル重合化可能なモノマーとの混合物が使用される。疎水性及び親水性(メタ)アクリレートの混合物を使用することにより、コーティングの研磨速度を調節することが可能である。場合により、親水性コモノマー、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート又はより高級なポリエチレンオキサイド誘導体、例えばエトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、例えばポリオキシエチレン(n=8)グリコールモノメチルエーテルメタクリレート、又はN−ビニルピロリドンが含まれる。
【0029】
1以上のオレフィン性二重結合及び1以上のビニル重合化可能なモノマーと共重合化されることのできる、1以上の上記末端基(I)を含む適切なモノマーの例は、n=0である1以上の末端基(I)を含み、式(II)により表され得るモノマーを含む:
【0030】
【化2】

ここでR3,R4,及びR5は上で定義された通りであり、Xは(メタ)アクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、又はフマロイルオキシ基である。
【0031】
モノマー(II)の製造は、例えば、欧州特許出願公開第0297505号に記載された方法に従って、又は欧州特許出願公開第1273589号、及びそこに引用された参考文献に記載された方法に従って行われ得る。適切な(メタ
)アクリル酸から誘導されたモノマーの例は、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、ジメチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチル−ジメチルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−ステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチル−ジフェニルシリル(メタ)アクリレート、及びラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート,トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、又はトリイソブチルシリル(メタ)アクリレートがシリルエステルコポリマー組成物の製造において使用される。
【0032】
上で述べたように、シリルエステルコポリマーの性質を調節することにより、コポリマー溶液の性質、コーティング組成物の性質、及びコーティングの性質が影響されることができる。さらに、たくさんの性質に対して見出された好まれる範囲が列挙された。
【0033】
一般的に、反応温度は、コポリマーの分子量に影響を及ぼす。分子量は、使用される開始剤の量及び/又は追加的に若しくは二者択一的にもまた連鎖移動剤、例えばチオールを添加することにより調節され得る。開始剤のタイプは、多分散度の程度に影響を及ぼす。例えば、多分散度は、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビス−メチルブチロニトリルを選択することより下げられ得る。二者択一的又は追加的に、その中で反応が起きるところの溶媒は、コポリマーの分子量及びその多分散度を調節するために調節されることができる。シリルエステルコポリマー溶液及びコーティング組成物の粘度は、コポリマーの分子量を調節することにより、及び/又はその多分散度を調節することにより、及び/又は固形分を調節することにより調節されることができる。
【0034】
未反応の、未転化のモノマーの量はできるだけ低くあるべきである。これは、未反応のモノマーはポリマーの溶媒として作用し得、コーティング組成物のVOCに貢献するからである。コポリマー溶液及びコーティング組成物の粘度は、好ましくはモノマーの代わりに溶媒で調節される、なぜならほとんどの溶媒はモノマーより廉価だからである。追加的に、モノマーへの暴露は、モノマーと関連する健康及び安全への懸念のために最小限に保たれるべきである。さらにコーティング組成物中の遊離モノマーは、最終的なフィルムの特性に負の効果を有しえる。モノマーは、可塑剤としてもまた作用し得、及び/又はその親水性のため、水をフィルムに入らせる。反応の転化の割合は、ブースト開始剤(boost initiator)の添加により増加され得るが、これは、本発明に従ってコポリマー溶液を製造する方法において強制的ではないが、好ましくはブースト開始剤が使用され、より好ましくはアゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビスメチルブチロニトリルがブースト開始剤として使用される。
【0035】
本発明に従うコーティング組成物中に存在する、水生生物に対する殺生物性を有する成分は、殺生物性を有する顔料若しくは顔料の混合物であることができる。適する殺生物剤の例は、無機の殺生物剤、例えば酸化銅、銅チオシアネート、銅ブロンズ、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金;有機金属の殺生物剤、例えばジンクピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキサイドの亜鉛塩),銅ピリチオン、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅,亜鉛エチレン−ビス(ジチオカルバメート)(即ちジネブ)、及び亜鉛塩で錯体化されたマンガンエチレン−ビス(ジチオカルバメート)(即ちマンコゼブ);及び有機殺生物剤、即ちホルムアルデヒド、ドデシルグアニジンモノ塩酸、チアベンダゾール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−アリールマレイミド、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、3−ベンゾ[b]チエニル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン4−オキサイド、4,5−ジクロロ−2−(n―オクチル)−3(2H)−イソチアゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、ピリジントリフェニルボラン、5位、及び場合により1位において置換されている2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体、例えば2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール、及びフラノン、例えば3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)−フラノン、及びそれらの混合物である。
【0036】
シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性を有する成分に加えて、本発明に従う防汚コーティング組成物は、場合により別の樹脂若しくは他の樹脂の混合物、及び/又は1以上の非殺生物性の顔料及び/又は添加剤、例えば1以上の増粘剤又はチキソトロープ性の剤、1以上の湿潤剤、フィラー、液体キャリアー、例えば有機溶媒、有機非溶媒、又は水等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明に従う防汚コーティング組成物中のシリルエステルコポリマーに加えて使用されることができる樹脂の例は、トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含まないが、海水中で反応性のあるポリマー、海水中において少し可溶である若しくは水に敏感である物質、及び海水中に不溶である物質を含む。
【0038】
トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含まないが、海水中で反応性のある、適切なポリマー例として、いくつかの樹脂が挙げられ得る。例えば適切なポリマーの例は、酸官能性のフィルム形成性ポリマーであって、その酸基が4級アンモニウム基若しくは4級ホスホニウム基によりブロックされているところの。これは例えば国際特許出願国際公開第02/02698号に記載されている。あるいは海水に反応性のあるポリマーが、ポリマーの骨格に結合された4級アンモニウム基及び/又は4級ホスホニウム基を含むフィルム形成性ポリマーであり得る。これらの4級アンモニウム基及び/又は4級ホスホニウム基は中和されており、あるいは言い換えると、対イオンによりブロック又はキャップされている。該対イオンは、少なくとも6の炭素原子を含む脂肪族、芳香族、又はアルカリール炭化水素基を有する酸のアニオン性残基からなる。そのような系は例えば欧州特許出願公開第02255612.0号に記載されている。
【0039】
適する、海水と反応するポリマーのさらなる例は、酸官能性のフィルム形成性ポリマーであって、その酸基は、加水分解して若しくは解離して、海水に可溶であるポリマーを残すことができる基によりブロックされているところのポリマーであり、ブロックする基は、国際特許出願国際公開第00/43460号に記載されているように、1価の有機残基に結合された2価の金属原子、ヒドロキシル基に結合された2価の金属原子、及び有機溶媒に可溶なポリマーのアミン塩を形成するモノアミン基から選択される。例えばそのような海水と反応する、酸基を有するフィルム形成性ポリマーであって、その酸基がブロックされているポリマーは、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を有するポリマーであり得る:
【0040】
【化3】

ここでXは
【0041】
【化4】


を表し、Mは、亜鉛、銅、及びテリウムから選択された金属である;Xは1〜2の整数である;Rは
【0042】
【化5】


から選択された有機基を表す;及び
R1は、欧州特許出願公開第204456号に記載されたような1価の有機基である。
そのような加水分解可能なポリマーは、好ましくはXが
【0043】
【化6】

を表し、Mは銅であり、Rは
【0044】
【化7】

を表すアクリルポリマーである。X−[O−M−R]の代わりに−COOHを有する親のアクリルポリマーは、好ましくは25〜350mgKOH/gの酸価を有する。最も好ましくは、加水分解可能なポリマーは、0.3〜20重量%の銅含有量を有し、R1は高沸点の有機一塩基酸の残基である。そのような加水分解可能なポリマーは欧州特許出願公開第0204456号及び欧州特許出願公開第0342276号に開示された方法により製造されることができる。銅を含有するフィルム形成性ポリマーは、好ましくはアクリル若しくはメタクリルエステルを含むコポリマーであって、そのアルコール残基は嵩高い炭化水素基、即ちソフトセグメント、例えば4以上の炭素原子を有する分岐状アルキルエステル、又は6以上の原子を有するシクロアルキルエステルを含むコポリマー、場合により末端のアルキルエーテル基を有していてもよいポリアルキレングリコールモノアクリレート若しくはモノメタクリレート、又は欧州特許出願公開第0779304号に記載されている2−ヒドロキシエチルアクリレート若しくはメタクリレートとカプロラクトンとの付加物を含む。
【0045】
あるいは、そのような海水と反応する、ブロックされている酸官能性フィルム形成性ポリマーは、カルボン酸官能性ポリマーであり得る。例えば、それは、イギリス国特許出願公開第2,311,070号に記載されているような、アクリル酸若しくはメタクリル酸と1以上のアルキルアクリレート若しくはメタクリレートとのコポリマーであってその酸基の少なくとも一部が式−COO−M−OHの基に転化されており、ここでMは、2価の金属例えば銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、又は鉄であるところのコポリマーであってもよい。
【0046】
そのような海水と反応する、ブロックされている酸官能性フィルム形成性ポリマーの別の例はアミンの塩であるポリマーである。好ましくは、8〜25の炭素原子を有する少なくとも1の脂肪族炭化水素基を含むアミン及び欧州特許出願公開第0529693号に記載されているような酸官能性フィルム形成性ポリマーの塩であり、酸官能性ポリマーは、好ましくはオレフィン性カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、ホスホン酸、又は酸ホスフェートエステルと少なくとも1のオレフィン性不飽和コモノマーとのコポリマーであり、不飽和カルボン酸は例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸であり、不飽和スルホン酸は例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)であり、フィルム形成性ポリマーは好ましくは国際特許出願国際公開第99/37723号に記載された有機環状エステルのユニットを含むアミンスルホネートコポリマーである。
【0047】
海水中において少し可溶である、又は水に敏感である適切なポリマー若しくは樹脂の例として、以下の化合物:ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、ポリウレタン、飽和ポリエステル樹脂、ポリ−N−ビニルピロリドン、及びロジン物質、が挙げられ得る。そのようなロジン物質は、好ましくはロジン、特にウッドロジン若しくはトールロジン又はガムロジンである。ロジンの主な化学成分は、アビエチン酸である。ロジンは、市販されているいかなるグレードでもあることができ、好ましくはWW(無色透明)のロジンとして販売されているものである。又はロジン物質はロジン誘導体であることができ、例えばマレイン化若しくはフマール化されたロジン、水素化されたロジン、ホルミル化されたロジン又は重合化されたロジン、又はロジン金属塩、例えばロジン酸カルシウム、ロジン酸マグネシウム、ロジン酸銅、又はロジン酸亜鉛であることができる。
【0048】
海水中に不溶である、適切なポリマー若しくは樹脂の例として、以下の化合物:変性アルキド樹脂、エポキシポリマー、エポキシエステル、エポキシウレタン、ポリウレタン、あまに油、ひまし油、大豆油、及びそのようなオイルの誘導体、が挙げられ得る。適する海水に不溶なポリマー若しくは樹脂の他の例は:ビニルエーテルポリマー、例えばポリ(ビニルアルキルエーテル)、例えばポリビニルイソブチルエーテル、又はビニルアルキルエーテルと酢酸ビニル若しくは塩化ビニルとのコポリマー、アクリレートエステルポリマー例えばアルキル基に好ましくは1〜6の炭素原子を含み、コモノマー、例えばアクリルニトリル又はスチレンを含み得る、1以上のアルキルアクリレート若しくはメタクリレートのホモポリマー若しくはコポリマー、及び酢酸ビニルポリマー、例えば酢酸ポリビニル又は酢酸ビニル塩化ビニルコポリマーである。あるいは、海水に不溶であるポリマー若しくはロジンは、ポリアミン、好ましくは可塑化させる効果を有するポリアミド、例えば脂肪酸ダイマーのポリアミド、又は「Santiciser」の商標で販売されているポリアミドであることができる。
【0049】
シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性の性質を有する成分に加えて、コーティング組成物が別の樹脂若しくは別の樹脂の混合物を含むならば、この/これらの別の樹脂はコーティング組成物の樹脂の合計量の99重量%までを形成することができる。好ましくは該別の樹脂はロジン物質であり、コーティング組成物中の合計樹脂の20重量%までを形成して、高品質の自己研磨型コーティングを得る。あるいは、好ましくは該別の樹脂はロジン物質であって、コーティング組成物の合計樹脂の50〜80重量%を形成して、いわゆる制御された消耗型コーティング(depletion coating)又はハイブリッドコーティングを得る。
【0050】
別の実施態様において、別の樹脂はロジン物質及び海水に不溶な樹脂の混合物である。その場合、ロジン物質はコーティング組成物の樹脂の合計量の20〜80重量%又は20〜95重量%を形成する。ロジン物質は、コーティング組成物の樹脂の合計量の好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも50、最も好ましくは少なくとも55重量%を形成する。シリルエステルは非ロジン樹脂の合計重量の好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%、80〜90重量%までを形成し、海水に不溶な樹脂が残りである。
【0051】
シリルエステルコポリマー及び水生生物にとって殺生物性の性質を有する成分を含む組成物に添加されることができる非殺生物性顔料の例は、少し海水に可溶である非殺生物剤、例えば酸化亜鉛及び硫酸バリウム、及び海水に不溶である非殺生物剤、例えばフィラー及び着色するための顔料、例えば二酸化チタン、酸化第二鉄、フタロシアニン化合物、及びアゾ顔料である。
【0052】
シリルエステルコポリマー及び水生生物にとって殺生物性を有する成分を含む組成物に添加されることのできる添加剤の例は、強化剤、安定化剤、チキソトロープ又は増粘剤、可塑剤、及び液状キャリアーである。
【0053】
適切な強化剤は、ファイバー、例えばカーバイドファイバー、シリコン含有ファイバー、金属ファイバー、炭素ファイバー、スルフィドファイバー、ホスフェートファイバー、ポリアミドファイバー、芳香族ポリヒドラジドファイバー、芳香族ポリエステルファイバー、セルロースファイバー、ラバーファイバー、アクリルファイバー、塩化ポリビニルファイバー、及びポリエチレンファイバーである。好ましくはファイバーは、25〜2,000ミクロンの平均長及び1〜50ミクロンの平均太さを有し、少なくとも5の平均長:平均太さの比を有する。適する安定化剤の例は、水分スキャベンジャー、ゼオライト、脂肪族又は芳香族アミン、例えばデヒドロアビエチルアミン、テトラエチルオルトシリケート、及びトリエチルオルトフォルメートである。適切なチキソトロープ又は増粘剤の例はシリカ、ベントン、及びポリアミドワックスである。
【0054】
適切な可塑剤の例は、フタレートエステル、例えばジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート又はジオクチルフタレート、ホスフェートトリエステル、例えばトリクレシル又はトリス(イソプロピル)フェニルホスフェート、又は塩化パラフィン、及びスルホンアミド例えばN−置換トルエンスルホンアミドである。適切な液状キャリアの例は有機溶媒、有機非溶媒及び水である。適切な有機溶媒の例は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン、又はトリメチルベンゼン、アルコール例えばn−ブタノール、エーテルアルコール例えばブトキシエタノール若しくはメトキシプロパノール、エステル例えば酢酸ブチル又は酢酸イソアミル、エーテルエステル例えば酢酸エトキシエチル又は酢酸メトキシプロピル、ケトン例えばメチルイソブチルケトン若しくはメチルイソアミルケトン、脂肪族炭化水素、例えばホワイトスピリット、又はこれらの溶媒の2以上の混合物である。コーティング組成物中のフィルム形成性成分のために、有機性の非溶媒中にコーティングを分散させることが可能である。あるいは、コーティングは水を基礎とすることができる;例えばコーティングは水性分散物に基づくことができる。
【0055】
本発明は、以下の実施例を参照して説明される。これらは、本発明を説明することを意図されるものであり、いかなる様式においても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0056】
コポリマー溶液及び本発明に従うコーティング組成物が製造され、比較例がおこなわれた。
【0057】
以下の省略形が使用される:
TBSMA トリブチルシリルメタクリレート
TiPSA トリイソプロピルシリルアクリレート
MMA メチルメタクリレート
NVP N−ビニルピロリドン
MEA メトキシエチルアクリレート
TBPEH 第三級ブチルペルオキシエチルヘキサノエート
AIBN アゾビス−イソブチロニトリル
AMBN アゾビス−メチルブチロニトリル
【0058】
高剪断粘度は、ポイズで表される。固形分は重量百分率で表される。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)がポリスチレンに対して相対的に与えられる。
【0059】
理論固形分(重量百分率、又は非揮発分の体積百分率)が、ASTM標準D5201−01に従って各組成物に対して配合物から計算された。実際の固形分(重量%)は、ASTM標準1644に従って測定された。
【0060】
理論VOCレベル(1リットル当たりのグラム数)は、ASTM標準D5201−01に従って各組成物について配合から計算された。測定されたVOCレベル(1リットル当たりのグラム数)は、ASTM標準D3960‐02を併用してEPA参照方法24に従って測定された。
【0061】
コポリマー溶液
比較例1a及び1b
欧州特許出願公開第1127902号の実施例10が繰り返されて比較コポリマー溶液1a(CSol 1a)を製造し、別の試料について実施例が部分的に追跡され、比較コポリマー溶液1bを得た。組成物の成分は表1に示される。
【0062】
【表1】

【0063】
欧州特許出願公開第1127902号の実施例10の手順に従って、モノマー、開始剤、溶媒(キシレン)のプレミックスが所定の割合で製造され、さらなる量の溶媒(キシレン)が、攪拌機、還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックスフィード口を装備され、温度制御された反応容器に充填された。反応容器は加熱され90℃において保たれ、窒素雰囲気下で3時間に渡って一定の速度でプレミックスが充填された。さらに30分後、ブースト開始剤として、TBPEHの5回の後添加が45分間隔で添加された。さらなる15分の後、反応容器の温度は1時間の間に120℃に上げられ、それから冷却された。
【0064】
生成物の試料は、欧州特許出願公開第1127902号の実施例10に記載されたようにキシレンで比例して希釈されて、比較のコポリマー溶液1a(CSol 1a)を与えた。更なる試料は希釈されなかった;これは比較コポリマー溶液1b(CSol 1b)を与えた。得られたコポリマー溶液の性質は表2に示される。
【0065】
【表2】

【0066】
この実施例は、ハイソリッド溶液を得るために溶媒の量を減らすことは正にコポリマー溶液の粘度に非常に大きい影響を及ぼし得ることを示す。
【0067】
実施例2
比較例1a及び1bにおいて使用されたのと同じタイプ及び量のモノマーを使用してコポリマー溶液2(Sol2)が製造された。コポリマー溶液2は、本発明に従う溶液である。組成物の成分は表3に示される。
【0068】
【表3】

【0069】
モノマー、開始剤、及び溶媒(キシレン)のプレミックスが所定の割合で製造され、更なる量の溶媒(キシレン)が、攪拌機、還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックスフィード口を装備され、温度制御された反応容器に充填された。反応容器は加熱され100℃において保たれ、窒素雰囲気下で3時間に渡って一定の速度でプレミックスが充填された。さらに30分後、ブースト開始剤として、AIBNの2回の後添加がキシレンのスラリーとして45分間隔で添加された。反応容器の温度は更なる1時間の間に100℃に保たれ、それから冷却された。得られるコポリマー溶液の性質は、表4に示される。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例1bに比較して、コポリマー溶液2は、より高い固形分、より低い粘度、より低い重量平均分子量、及びより低い多分散度を有する。さらに、理論固形分及び測定された固形分の間の小さな差から明らかであるように、より多いモノマーが転化された。
【0072】
実施例3a〜3d
新しい一組のモノマーを使用して、本発明に従う4つのコポリマー溶液が製造された。組成物の成分は表5a及び5bに示される。
【0073】
【表5a】

【0074】
【表5b】

【0075】
実施例2の製造に対して記載された一般的手続が追従され、コポリマー溶液3a〜3dを与えた。得られたコポリマー溶液の性質は表6に示される。
【0076】
【表6】

【0077】
比較例4a及び4b
比較のコポリマー溶液4aを製造するために、欧州特許出願公開第0775733号の実施例S−1〜S−6の製造の説明に従って、欧州特許出願公開第1127925号に記載されたようにポリマーPA4の製造が繰り返された。より少ない溶媒を使用して別の実験が行われ、その結果CSol4bを与えた。組成物の成分は表7に与えられる。
【0078】
【表7】

【0079】
欧州特許出願公開第1127925号に記載されたポリマーPA4の製造説明に従って、すなわち、欧州特許出願公開第0775733号に記載されたように、モノマー、及び開始剤のプレミックスが所定の割合で製造され、更なる量の溶媒(キシレン)が、攪拌機、還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックスフィード口を装備され、温度制御された反応容器に充填された。反応容器は加熱され90℃において保たれ、窒素雰囲気下で、4時間に渡って一定の速度でプレミックスが反応容器に充填された。反応容器は90℃において4時間保たれ、それから冷却された。欧州特許出願公開第1127925号に記載されたポリマーPA4の製造の説明に従って、すなわち欧州特許出願公開第0775733号に記載されたように、ブースト開始剤は添加されなかった。
【0080】
比較コポリマー溶液4a(CSol 4a)が、CSol 4bの製造において使用されたより多い量の溶媒を使用して製造された。得られたコポリマー溶液の性質は表8に示される。
【0081】
【表8】

【0082】
両方の試料の転化率は低いが、それは製造においてブースト開始剤が使用されなかった事実による可能性がある。
【0083】
コーティング組成物
上述のコポリマー溶液のあるものを使用して、コーティング組成物が製造された。これらのコーティング組成物はコーティングされた基材を製造するために使用され、該基材はその性質について試験された。
【0084】
硬度試験
500ミクロンのギャップ幅を有するバーアプリケーターを用いて脱グリース化されたガラスパネル(約15cm×10cm)の上にコーティング組成物を注型成形することにより、試験コーティングフィルムが製造された。コーティングフィルムは、試験の前に環境条件下で3日間乾燥された。次にコーティングの硬度は、ISO1522に記載されたケーニッヒの振り子式減衰法により測定された。硬度は、6°から3°に減衰する振り子の振れの数として定量化された。
【0085】
機械的性能(耐クラック性)試験
既に市販の耐腐食性のコーティング(Intertuf 203、International Coatings社製)でコーティングされたスチール又はアルミニウムのパネル(15.2cm×10.2cm)の上に、塗料をバーアプリケーター(500ミクロンのギャップ幅)で注型成形することにより試験片が製造された。パネルは、環境条件下で少なくとも3日間乾燥された。次にパネルは、23℃において24時間天然の海水中に含浸された。その後、パネルは海水から取り出されて、8時間乾燥するに任された。その後、パネルは23℃において16時間天然の海水中で含浸され、取り出され、8時間乾燥された。このサイクルが4回繰り返された。湿潤−乾燥循環のあと、コーティングの機械的性能、特に耐クラック性が以下のパネル評価方式に従って評価された。
【0086】
パネルの評価
5: クラッキング、又は他の目に見える欠陥なし
4: 毛髪クラック、裸眼で丁度見えるもの
3: 穏やかなクラッキング
2: 中程度のクラッキング
1: ひどいクラッキング
0: 著しいクラッキング
【0087】
比較例5
比較のコーティング組成物(CCoat5)が、高速分散化装置を用いて成分を混合することにより製造された。CCoat5の成分は表9に示され、組成物及びこの組成物で製造されたコーティング層の性質は表10に示される。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
この実施例は、400g/リットルのVOC及び20ポイズ未満の粘度を有するハイソリッド塗料は、比較コポリマー溶液1bからは容易に製造されることができないことを示す。
【0091】
実施例6
本発明に従うコーティング組成物(Coat6)が、高速分散化装置を用いて成分を混合することにより製造された。Coat6の成分は表11に示され、組成物及びこの組成物で製造されたコーティング層の性質は表12に示される。
【0092】
【表11】

【0093】
【表12】

【0094】
この実施例は、400g/リットルのVOC及び20ポイズ未満の粘度を有するハイソリッド塗料は、コポリマー溶液2から、容易に製造されることができることを示す。
【0095】
実施例7
本発明に従うコーティング組成物(Coat7)が、高速分散化装置を用いて成分を混合することにより製造された。Coat7の成分は表13に示され、組成物及びこの組成物で製造されたコーティング層の性質は表14に示される。
【0096】
【表13】

【0097】
【表14】

【0098】
比較例8
市販のシリルエステルコポリマーの防汚塗料、Jotun Paints社製のSea Quantum Plus (CCoat8)の性質が、比較のために測定された。CCoat8及びこの組成物を用いて製造されたコーティング層の性質が表15に示される。
【0099】
【表15】

【0100】
この実施例は、市販のシリルエステルコポリマー防汚塗料CCoat8の機械的性質(硬度及び耐クラック性)は、Coat6及びCoat7の性質と類似していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも55重量%の固形分及び25℃において20ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリマー溶液であって、1,500〜20,000の間の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含むシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項2】
溶液の固形分が80重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項3】
20,000未満の重量平均分子量、3.0未満の多分散度、90℃未満のガラス転移温度を有するシリルエステルコポリマーであって、該シリルエステルコポリマーの70重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖からなるシリルエステルコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項4】
シリルエステルコポリマーが、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリルエステルコポリマー溶液、

ここで、nは0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換されていてもよいアリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【請求項5】
n=0であり、かつR3,R4、及びR5は同じであるか又は異なり、メチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はフェニルを表すことを特徴とする、請求項4に記載のシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項6】
1リットル当たり400グラム未満のVOC及び25℃において20ポイズ未満の粘度を有し、シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性を有する成分を含む防汚コーティング組成物。
【請求項7】
シリルエステルコポリマーが20,000未満の重量平均分子量、3.0未満の多分散度、90℃未満のガラス転移温度を有するシリルエステルコポリマーであり、該シリルエステルコポリマーの70重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖からなることを特徴とする、請求項6に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項8】
シリルエステルコポリマーが、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項6又は7のいずれか1項に記載の防汚コーティング組成物、

ここで、nは0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC1〜20−アルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換されていてもよいアリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【請求項9】
n=0であり、かつR3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、メチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はフェニルを表すことを特徴とする、請求項8に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項10】
トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含まないが海水中で反応性のある化合物、海水中において少し可溶である又は水に敏感である物質、及び海水中に不溶である物質からなる群から選択された1以上のポリマー又は樹脂を、組成物がさらに含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項11】
組成物が、海水中において少し可溶である又は水に敏感である物質としてロジン物質を含むことを特徴とする、請求項10に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングされた基材又は構造物。

【公表番号】特表2009−513736(P2009−513736A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518110(P2006−518110)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007301
【国際公開番号】WO2005/005516
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】