説明

シリンジポンプ

【課題】 セットされたシリンジが外部から視認困難なシリンジポンプにおいて、シリンジのセットミスに対するフールプルーフ機能を提供する。
【解決手段】 シリンジ装着部110とスライダ組立体120とを備えるシリンジポンプ100であって、閉位置と開位置との間を回動し、外表面に操作パネル145が配されたドア部140と、シリンジSの断面方向に回動することでシリンジ装着部110においてシリンジSを挟持するクランプ113と、シリンジ押子SPを挟持するフック122の開閉状態に応じて突出する突出部123と、を備え、ドア部140の内表面には、クランプ113の断面方向への回動度と突出部123の突出度に応じて、クランプ113と突出部123の両方に当接可能であって、両方に当接した場合に、ドア部140の閉位置方向への回動を妨げる衝止部142が配されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者への栄養補給や輸血、化学療法剤・麻酔剤などの薬液の注入に際して、従来より、シリンジポンプが利用されている。シリンジポンプは、薬液が収容されたシリンジを支持台に装着し、スライダ組立体をシリンダ押子に接続させることでシリンジのセットを完了した後、動作開始ボタンを押下し、スライダ組立体によってシリンジ押子を押圧させることで、シリンジ内の薬液を送り出す装置である。当該シリンジポンプによれば、長時間にわたって高い精度で流量制御を行うことができる。
【0003】
このようなシリンジポンプでは、通常、セットされたシリンジが外部から視認できるように構成されており(つまりシリンジが露出した構成を有しており)、各種設定や動作指示を行ったり設定内容や動作状態を表示したりするための操作パネルは、支持台並びにスライダ組立体に並列して配置されている。
【0004】
このため、従来のシリンジポンプでは、装置全体の大きさに対して、操作パネルの大きさが制限されることとなり、結果として、操作パネルを構成する液晶表示部や、各種操作スイッチ等の大きさも小さくせざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−306991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景のもとで、本願出願人は、シリンジポンプ全体の大きさを変更することなく、操作パネルを大きくすべく、支持台の一部及びスライダ組立体の領域にまで延設した開閉可能な操作パネルについて検討している。操作パネルを、支持台の一部及びスライダ組立体の領域まで延設した構成とすることで、従来のシリンジポンプの操作パネルに対して、より大きな操作パネルを実現できるからである。
【0007】
しかしながら、このような構成とした場合、操作パネルが閉位置にある状態では、セットされたシリンジを外部から視認できず、操作者は、シリンジが支持台に正しく装着されているか、あるいは、シリンジ押子にスライダ組立体が正しく接続されているかを確認することができない。この結果、シリンジが支持台に正しく装着されないまま、あるいは、シリンジ押子にスライダ組立体が正しく接続されないまま送液動作を開始させてしまうといった事態が生じえる(つまり、操作者がシリンジのセットミスに気付かないまま、送液動作を開始させてしまうといった事態が生じえる)。
【0008】
このため、支持台やスライダ組立体等を覆うように操作パネルが延設され、セットされたシリンジが外部から視認困難なシリンジポンプにおいては、操作者によるシリンジのセットミスをカバーするフールプルーフ機能を備えていることが望ましい。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、セットされたシリンジが外部から視認困難なシリンジポンプにおいて、シリンジのセットミスに対するフールプルーフ機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係るシリンジポンプは以下のような構成を備える。即ち、
シリンジを装着するシリンジ装着部と、装着されたシリンジのシリンジ押子に当接されるスライダ組立体と、を備え、該スライダ組立体により該シリンジ押子を押圧することで、シリンジ内に収容された薬液を送り出すシリンジポンプであって、
前記スライダ組立体と前記シリンジ装着部の一部とを覆う閉位置と、該スライダ組立体と該シリンジ装着部が露出し、前記シリンジを着脱可能とする開位置との間を回動するドア部と、
前記シリンジの断面方向に回動することで、前記シリンジ装着部において前記シリンジを支持する支持台との間で該シリンジを挟持するクランプと、
前記スライダ組立体に配され、前記シリンジ押子を挟持するフックの開閉状態に応じて突出する突出部と、を備え、
前記ドア部の内表面には、前記クランプの断面方向への回動度と前記突出部の突出度とに応じて、前記クランプと前記突出部の両方に当接可能であり、該クランプと該突出部の両方に当接した場合に前記ドア部の閉位置方向への回動を妨げる衝止部が配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セットされたシリンジが外部から視認困難なシリンジポンプにおいて、シリンジのセットミスに対するフールプルーフ機能を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るシリンジポンプの外観構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシリンジポンプの外観構成を示す図である。
【図3】シリンジポンプにシリンジが正しくセットされた状態を示す図である。
【図4】シリンジポンプにシリンジが正しくセットされていない状態を示す図である。
【図5】シリンジポンプにシリンジが正しくセットされていない状態を示す図である。
【図6】シリンジポンプにシリンジがセットされていない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
1.シリンジポンプの外観構成(ドア部開状態)
図1は、本発明の一実施形態に係るシリンジポンプ100の外観構成を示す図であり、ドア部140が開かれ、シリンジSがセットされる前の状態を示した図である。
【0015】
図1に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジSの本体部SBを挟持しつつフランジ部SFを嵌合させることで、シリンジSをシリンジポンプ100に装着するシリンジ装着部110と、シリンジ押子SPを矢印150方向(押圧方向)に押圧するために、不図示のスライダ送り機構と連結されたスライダ組立体120と、シリンジポンプ100全体を制御するための制御機能が内蔵された制御部130とを備える。
【0016】
シリンジ装着部110は、シリンジSの本体部SBの外周面を下側から支持する支持台111と、該支持台111との間で、シリンジSの本体部SBの外周面を挟持するクランプ113とを備えている。なお、クランプ113は制御部130のハウジングに矢印114方向(シリンジSの断面方向)に回動可能に取り付けられている。
【0017】
更に、シリンジ装着部110は、フランジ部SFが嵌合されるフランジ溝112を備える。これにより、シリンジポンプ100に装着されたシリンジSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置が規定されることとなる。
【0018】
なお、シリンジ装着部110は、シリンジSの容量(5mL、10mL、20mL、30mL、50mL、100mL)ごとに最適なものを選択することができるように、あるいは、シリンジSの容量(5mL、10mL、20mL、30mL、50mL、100mL)を2〜3種類に区分し、それぞれの区分ごとに最適なものを選択することができるように、本体部SBに対して、着脱可能に構成してもよい。
【0019】
スライダ組立体120は、矢印150方向にスライド可能に構成された当接部121を備える。当接部121は、インナークラッチシャフトが内挿されたパイプシャフト124を介してスライダ送り機構に連結されており、当該スライダ送り機構が動作することにより、矢印150方向にスライドする。
【0020】
当接部121は、更に、不図示のクラッチレバーを有しており、当該クラッチレバーが押圧されることにより、左右フック122が開方向に動作するとともに、インナークラッチシャフトが回動し、スライダ送り機構を構成する送りねじと該送りねじに歯合するハーフナットとの歯合状態が解除される。なお、左右フック122は閉方向に付勢されており、クラッチレバーに対する押圧力が解除されると、閉方向に戻ることとなる。
【0021】
このため、看護師等のユーザが、シリンジ装着部110にシリンジSを装着した後、クラッチレバーを押圧したまま(つまり、左右フック122を開いた状態で)当接部121をシリンジ押子SPに当接させ、その後、クラッチレバーから手を放すと、左右フック122がシリンジ押子SPを挟持し、スライダ組立体120は、シリンジ押子SPに接続されることとなる。
【0022】
ここで、スライダ組立体120には、シリンジ押子SPに正しく接続できなかった場合に(つまり、左右フック122が正しくシリンジ押子SPを挟持できなかった場合に)、開閉状態に応じて突出する突出部123が設けられている。
【0023】
ドア部140は、制御部130の下部ハウジングにおいて軸支部(ヒンジ)141により軸支されており、矢印143方向に開閉可能となっている。ドア部140が閉位置まで回動した場合に、当該閉位置が維持されるよう、制御部130の上部ハウジングには、係止部(例えば、マグネット等)131が設けられている。
【0024】
なお、このようにドア部140を制御部130の下部ハウジングにおいて軸支する構成とすることで、ドア部140は、閉位置まで回動しなかった場合に、ドア部140の自重によって開位置方向に回動することとなる。つまり、ドア部140が係止部131によって係止されず、正しく閉じられなかった場合には、ドア部140は開状態となるため、操作者は、ドア部140が正しく閉じられていないことを容易に認識することができる。
【0025】
ドア部140の内表面には、シリンジSが正しくセットされていない場合に、ドア部140が閉位置まで回動することを妨げるためのフールプルーフ機能を構成する衝止部142が配されている。衝止部142は、第1のアーム部142Aと第2のアーム部142Bとが所定の角度をもって連結されており、当該連結部分を支点(142C)として、ドア部140の内表面の凹部144の側壁に回動可能に軸支されている。なお、フールプルーフ機能の詳細は後述する。
【0026】
2.シリンジポンプの外観構成(ドア部閉状態)
図2は、本発明の一実施形態に係るシリンジポンプ100の外観構成を示す図であり、図2(A)は、シリンジSがセットされることなくドア部140が閉じられた様子を、図2(B)は、シリンジSがセットされたうえでドア部140が閉じられた様子を示す図である。
【0027】
図2(A)、(B)に示すように、ドア部140の外表面には、操作パネル145が設けられており、各種設定や動作指示を受け付けたり、設定内容や動作状態を表示するための機器(操作機能及び表示機能)が配列されている。なお、図2(A)、(B)の例では、操作パネル145の中央位置に、液晶表示部146のみが設けられた様子を示しているが、タッチパネル式としたり、その他の操作ボタンや表示ランプ等が配されていてもよい。
【0028】
図2(A)、(B)に示すように、ドア部140は、シリンジ装着部110の一部及びスライダ組立体120の領域まで延設された構成となっているため、従来のシリンジポンプのように、支持台及びスライダ組立体に隣接して配置されることで、装着されたシリンジが外部から視認できる露出された構成と比較して、シリンジポンプ全体の大きさを変えることなく、操作パネル145の大きさを大きくすることが可能となる。
【0029】
なお、図2(B)に示すように、本実施形態に係るシリンジポンプ100の場合、シリンジSがセットされ、ドア部140が閉じられた状態では、操作者は、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されているか、あるいは、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されているかを確認することができない。
【0030】
このため、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、上述したように、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されていない場合、及び、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されていない場合に、ドア部140が閉位置まで回動することを妨げるためのフールプルーフ機能が設けられている。以下、フールプルーフ機能の詳細について説明する。
【0031】
3.シリンジポンプのフールプルーフ機能の説明
図3〜図6は、シリンジポンプ100のフールプルーフ機能を説明するための図である。以下、図3〜図6を参照しながら、シリンジポンプ100のフールプルーフ機能について説明する。
【0032】
3.1 シリンジSがシリンジ装着部に正しく装着され、かつ、シリンジ押子SPにスライダ組立体が正しく接続されている場合
図3は、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着され、かつ、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されている様子を示す図であり、図3(A)は、シリンジ装着部110及びスライダ組立体120を、図2(B)の矢印200方向から見た場合の図であり、図3(B)は、シリンジ装着部110及びスライダ組立体120を、図2(B)の矢印210方向から見た場合の図である。
【0033】
図3(B)に示すように、クランプ113は制御部130のハウジングにおいてシリンジSの断面方向に回動可能に取り付けられており、シリンジSがシリンジ装着部110に装着された状態では、図3(A)に示すように、フランジ部SFに嵌合する位置まで回動する。
【0034】
一方、スライダ組立体120に配された左右フック122がシリンジ押子SPを挟持し、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されている状態では、図3(A)に示すように、突出部123が低位置にある。
【0035】
このように、クランプ113がフランジ部SFに嵌合する位置まで回動し、かつ、突出部123が低位置にある場合、ドア部140が閉位置まで回動した状態では、衝止部142は、第1のアーム部142Aが突出部123に当接していないか、あるいは第2のアーム部142Bがクランプ113に当接していない状態となる。つまり、ドア部140が閉位置まで回動した場合であっても、衝止部142は回動可能な状態となっている。
【0036】
このような状態では、ドア部140は係止部131によって係止され、閉位置を維持することができる。
【0037】
3.2 シリンジSがシリンジ装着部に正しく装着されているが、シリンジ押子SPにスライダ組立体が正しく接続されていない場合
図4は、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されているが、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されていない様子を示す図である。図4(A)は、シリンジ装着部110及びスライダ組立体120を、図2(B)の矢印200方向から見た場合の図であり、図4(B)は、スライダ組立体120を、図2(B)の矢印220方向から見た場合の図である。
【0038】
図4(A)に示すように、スライダ組立体120に配された左右フック122がシリンジ押子SPを挟持しておらず、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されていない状態では、図4(B)に示すように、左右フック122が互いに接触する位置まで回動することとなる。
【0039】
ここで、左右フック122がシリンジ押子SPを挟持せず、互いに接触する位置まで回動した場合、スライダ組立体120に設けられた突出部123は高位置まで突出するよう構成されているものとする。
【0040】
一方、図4(A)に示すように、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着された状態では、クランプ113はフランジ部SFに嵌合する位置まで回動している。
【0041】
このように、クランプ113がフランジ部SFに嵌合する位置まで回動し、かつ、突出部123が高位置にある場合において、ドア部140が閉位置近傍まで回動されると、衝止部142の第1のアーム部142Aは突出部123に当接し、紙面左回りに回動することとなる。
【0042】
その結果、衝止部142の第2のアーム部142Bは、クランプ113に当接し、衝止部142はそれ以上回動することができない状態となる。つまり、衝止部142が突出部123とクランプ113とにそれぞれ当接した状態となり、ドア部140の閉位置方向への回動を妨げるため、ドア部140は閉位置まで回動することができない。
【0043】
このように、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されていない場合、ドア部140を閉位置まで回動させることができず、ドア部140が開状態となる。この結果、操作者は、ドア部140が閉状態とならないことをもって、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されていないことを認識することができる。
【0044】
3.3 シリンジ押子SPにスライダ組立体が正しく接続されているが、シリンジSがシリンジ装着部に正しく装着されていない場合
図5は、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されているが、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されていない様子を示す図である。図5(A)は、シリンジ装着部110及びスライダ組立体120を、図2(B)の矢印200方向から見た場合の図であり、図5(B)は、スライダ組立体120を、図2(B)の矢印220方向から見た場合の図である。
【0045】
図5(A)に示すように、シリンジSのフランジ部SFがフランジ溝112に正しく嵌合されていない場合、クランプ113は、フランジ部SFに嵌合する位置まで回動せず、シリンジSはシリンジ装着部110に正しく装着されない。
【0046】
一方、スライダ組立体120に配された左右フック122がシリンジ押子SPを挟持し、シリンジ押子SPにスライダ組立体120が正しく接続されている状態では、図5(B)に示すように、突出部123は低位置にある。
【0047】
このように、クランプ113がフランジ部SFに嵌合する位置まで回動せず、かつ、突出部123が低位置にある場合において、ドア部140が閉位置近傍まで回動されると、衝止部142の第2のアーム部142Bはクランプ113に当接し、紙面右回りに回動することとなる。
【0048】
その結果、衝止部142の第1のアーム部142Aは、突出部123に当接し、衝止部142はそれ以上回動することができない状態となる。つまり、衝止部142がクランプ113と突出部123とにそれぞれ当接した状態となり、ドア部140の閉位置方向への回動が妨げられるため、ドア部140は閉位置まで回動することができない。
【0049】
このように、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されていない場合、ドア部140を閉位置まで回動させることができず、ドア部140が開状態となる。この結果、操作者は、ドア部140が閉状態とならないことをもって、シリンジ装着部110にシリンジSが正しく装着されていないことを認識することができる。
【0050】
3.4 シリンジSがセットされていない場合
図6は、シリンジSがセットされていない状態で、ドア部140を閉じた様子を示す図である。図6(A)は、シリンジ装着部110及びスライダ組立体120を、図2(B)の矢印200方向から見た場合の図であり、図6(B)は、スライダ組立体120を、図2(B)の矢印220方向から見た場合の図である。
【0051】
図6(A)に示すように、シリンジSがシリンジ装着部110に装着されていない状態では、クランプ113は、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されていたならばフランジ部SFに嵌合したであろう位置よりも更に回動する。
【0052】
一方、スライダ組立体120に配された左右フック122がシリンジ押子SPを挟持していない状態では、図6(B)に示すように、突出部123は高位置に突出することとなる。
【0053】
このように、クランプ113がフランジ部SFに嵌合する位置よりも更に回動し、かつ、突出部123が高位置にある場合において、ドア部140が閉位置近傍まで回動されると、衝止部142の第1のアーム部142Aが突出部123に当接し、紙面左回りに回動することとなる。
【0054】
ここで、クランプ113は、フランジ部SFに嵌合する位置よりも更に回動しているため、衝止部142の第2のアーム部142Bはクランプ113に当接することがなく、更に回動を続ける。このため、ドア部140の閉位置方向への回動が妨げられることはなく、ドア部140は、やがて閉位置まで回動する。閉位置に回動したドア部140は、係止部131によって係止され、閉位置を維持することができる。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、シリンジ装着部110の一部及びスライダ組立体120の領域まで延設された構成を有するドア部140を配し、当該ドア部140に操作パネル145を設ける構成とした。この結果、従来のシリンジポンプと比べ、全体の大きさを変えることなく、操作パネル145を大きくすることが可能となった。
【0056】
また、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、ドア部140の内表面に衝止部142を配し、スライダ組立体120に突出部123を配するとともに、クランプ113を、シリンジSの断面方向に回動する構成とした。更に、スライダ組立体120に配された左右フック122がシリンジ押子SPを挟持していない場合に、突出部123が低位置から高位置へと突出する構成とした。
【0057】
これにより、シリンジSがシリンジ装着部110に正しく装着されていない場合、あるいは、スライダ組立体120がシリンジ押子SPに正しく接続されていない場合(つまり、シリンジSが正しくセットされていない場合)、クランプ113の回動度及び突出部123の突出度に応じて、衝止部142をクランプ113及び突出部123の両方に当接可能となり、ドア部140の閉位置方向への回動を妨げることが可能となった。この結果、操作者は、ドア部140が閉位置まで回動しないことをもって、シリンジSが正しくセットされていないことを認識することが可能となった。
【0058】
更に、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、ドア部140を、制御部130の下部ハウジングにおいて軸支させる構成とした。これにより、ドア部が閉位置まで回動しなかった場合、ドア部140は全開状態となり、操作者は、ドア部140が正しく閉じられていないことを(つまり、シリンジSが正しくセットされていないことを)容易に認識することができるようになった。
【0059】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、当接部121に設けられた突出部123が低位置と高位置との間を動作するものとして説明したが本発明はこれに限定されず、例えば、シリンジSの径に応じて(あるいは左右フックの開度に応じて)、高さ位置を切り替えるように構成してもよい。具体的には、シリンジSの径が小さい場合には、より高位置まで突出するように構成し、シリンジSの径が大きい場合には、中位置(高位置と低位置との間の位置)まで突出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100:シリンジポンプ、110:シリンジ装着部、111:支持台、112:フランジ溝、113:クランプ、120:スライダ組立体、121:当接部、122:左右フック、123:突出部、124:パイプシャフト、130:制御部、131:係止部、140:ドア部、141:軸支部、142:衝止部、142A:第1のアーム部、142B:第2のアーム部、142C:支点、144:凹部、145:操作パネル、146:液晶表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを装着するシリンジ装着部と、装着されたシリンジのシリンジ押子に当接されるスライダ組立体と、を備え、該スライダ組立体により該シリンジ押子を押圧することで、シリンジ内に収容された薬液を送り出すシリンジポンプであって、
前記スライダ組立体と前記シリンジ装着部の一部とを覆う閉位置と、該スライダ組立体と該シリンジ装着部が露出し、前記シリンジを着脱可能とする開位置との間を回動するドア部と、
前記シリンジの断面方向に回動することで、前記シリンジ装着部において前記シリンジを支持する支持台との間で該シリンジを挟持するクランプと、
前記スライダ組立体に配され、前記シリンジ押子を挟持するフックの開閉状態に応じて突出する突出部と、を備え、
前記ドア部の内表面には、前記クランプの断面方向への回動度と前記突出部の突出度とに応じて、前記クランプと前記突出部の両方に当接可能であり、該クランプと該突出部の両方に当接した場合に前記ドア部の閉位置方向への回動を妨げる衝止部が配されていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記衝止部は、所定の角度により互いに連結された第1のアーム部と第2のアーム部とを備え、該第1のアーム部と該第2のアーム部との連結部分を支点として、前記ドア部の内表面に回動可能に配されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記ドア部が前記閉位置近傍まで回動した場合に、前記突出部の突出度に応じて、前記第1のアーム部が前記突出部に当接するように構成され、前記クランプの断面方向への回動度に応じて、前記第2のアーム部が前記クランプに当接するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記閉位置において前記ドア部の回動を係止する係止部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記ドア部は、前記閉位置において前記係止部によって係止されなかった場合に、自重により、開方向に回動するように軸支されていることを特徴とする請求項4に記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記突出部は、前記フックの開度が小さい場合に突出度が大きく、前記フックの開度が大きい場合に突出度が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10954(P2012−10954A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150182(P2010−150182)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】