説明

シリンダの軸受け構造

【課題】シリンダ室内に配置されたブッシュのメンテナンス作業が比較的容易である。
【解決手段】ピストンロッドを摺動自在に支持するブッシュ120a(120b〜120d)がシリンダ室内に配置されている。ブッシュ120aは円筒形状を有しており、ブッシュ120aを径方向に貫通する貫通孔121(122〜124、127)が形成されている。貫通孔121は、ロッド摺動方向に関してブッシュ120aの一端から他端まで延びている。貫通孔121は、シリンダ室の開口を通過する大きさまでブッシュ120aを縮径可能なように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの軸受け構造、特に、ピストンロッドを摺動自在に支持するブッシュを備えたシリンダの軸受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダなどのシリンダの軸受け装置には、シリンダロッドを摺動自在に支持するブッシュ等の部材を備えたものがある。特許文献1の軸受け装置には、ロッド部材が挿入されるシリンダ室内にグランド部材が設けられている。グランド部材の内面には凹部が形成されており、その凹部にロッド部材を摺動可能に支持する磨耗リングが嵌め込まれている。ロッド部材が摺動すると磨耗リングの内面が磨耗するため、磨耗リングはメンテナンスを前提とした部材である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−180696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の磨耗リングのようなシリンダ室内に収容された部材をメンテナンスするのは容易ではない。メンテナンス作業の際にシリンダ室から部材を取り出したり、シリンダ室内に部材を収容したりする必要があるためである。
【0005】
本発明の目的は、ブッシュのメンテナンス作業が比較的容易なシリンダの軸受け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明のシリンダの軸受け構造は、ピストンロッドが出入りする開口を有するシリンダ室と、前記ピストンロッドを摺動自在に支持するように前記シリンダ室内に配置された、筒型の概略形状を有するブッシュとを備えている。そして、前記ブッシュが、前記開口を通過できるように縮径可能に構成されている。
【0007】
本発明のシリンダの軸受け構造によると、シリンダ室の開口を通過するようにブッシュを縮径させることが可能である。したがって、シリンダ室の開口を通じてブッシュを取り付けたりブッシュを取り外したりすることが容易になり、ブッシュのメンテナンス作業が容易な軸受け構造が実現する。
【0008】
また、本発明においては、前記ブッシュをその径方向に貫通する貫通孔が形成され、その貫通孔が前記ピストンロッドの摺動方向に関して前記ブッシュの一端から他端まで延びていることが好ましい。これによると、貫通孔を閉じるようにブッシュを変形させることにより、ブッシュの径を縮小させることが可能である。
【0009】
また、本発明においては、前記貫通孔が、前記摺動方向と交差するように延びていることが好ましい。貫通孔が摺動方向に沿って延びている場合には、ピストンロッドが摺動すると、ピストンロッドの表面の摺動方向に沿った領域がブッシュの内面の貫通孔の開口と連続して擦れ合いやすくなる。この場合、ピストンロッドが磨耗すると、摺動方向に沿った傷ができやすくなる。一方で、貫通孔が摺動方向と交差するように延びている場合には、上記のような擦れ合いは起こらなくなる。したがって、ピストンロッドに傷が付きにくい構造が実現する。
【0010】
また、本発明においては、前記貫通孔が、前記ブッシュの周面に沿って螺旋状に延びていることが好ましい。これによると、貫通孔が螺旋状に長く形成されるため、径が縮小するようにブッシュを変形させやすくなる。
【0011】
また、本発明においては、前記ブッシュが、前記摺動方向に直交する方向に関して前記ピストンロッドを挟む2つの部材に分割されており、前記2つの部材同士が、前記ブッシュの径が変化可能となるように蝶番によって連結されていてもよい。これによると、ブッシュを弾性変形させなくても蝶番によって変形させることができるため、ブッシュを変形させやすくなる。
【0012】
また、本発明においては、前記シリンダ室が内部に形成されたシリンダバレルをさらに備え、前記シリンダバレルの内面に前記ブッシュを収容する凹部が形成されており、前記ブッシュが前記凹部に収容されていることが好ましい。これによると、グランド部材などの部材を必要としないため、全体の構成を簡易にすることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記ブッシュがブロンズ材料からなることが好ましい。これによると、例えばブッシュがフッ素樹脂材料からなる場合と比べて耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な一実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る航空機1の平面図である。航空機1は、飛行姿勢や飛行方向を変化させたり航空機1が受ける揚力を変化させたりするための複数の可動部が設けられている。例えば、主翼6には離着陸時に高揚力を発生させるためのフラップ2や、機体のローリングのためのエルロン3などが設けられている。また、水平尾翼7には、機首の上げ下げのためのエレベータ4が設けられている。さらに、垂直尾翼8には機体のヨーイングのためのラダー5が設けられている。これらの可動部は、翼に対する取り付け角が変化したり翼に対して並進移動したりするように変位可能に翼に取り付けられており、このように変位させることで航空機1の飛行姿勢や飛行方向を変化させたり高揚力を発生させたりする。これらの可動部にはそれぞれ駆動機構が設けられている。例えば、主翼6にはフラップ2を駆動するフラップ駆動機構10が設けられている。フラップ駆動機構10は、フラップ2の主翼への取り付け角度を変化させたり、フラップ2を主翼6から後方へと並進移動させたりすることができる。
【0016】
図2は、本実施形態の油圧シリンダ100の一部断面図である。油圧シリンダ100は、航空機1の各可動部に用いることができるものであるが、本実施形態においては特にフラップ駆動機構10の駆動源として用いられることが想定されている。以下、油圧シリンダ100の構成について説明する。
【0017】
油圧シリンダ100はピストンロッド20を有している。ピストンロッド20は、図2の上下方向に軸心が沿った円筒形状を有するロッド部22と、ロッド部22の一端に固定されたロッドヘッド21を有している。ロッドヘッド21はロッド部22より径が大きい円筒形状を有しており、ロッド部22と互いの軸心が一致するようにロッド部22に固定されている。ロッド部22の他端はフラップ駆動機構10に接続されており、油圧シリンダ100は、ロッド部22を通じてフラップ駆動機構10へとフラップ2を駆動する駆動力を供給する。
【0018】
次に、ピストンロッド20を受ける軸受け側の構造について説明する。軸受け側には、ピストンロッド20の一部を内部に収容するシリンダバレル110が設けられている。シリンダバレル110は、円筒形の概略形状を有する部材であり、図2の上下方向に関して長尺に構成されている。シリンダバレル110の内部には、シリンダバレル110の長尺方向に沿って延びたシリンダ室111が形成されている。シリンダ室111は、円筒形の概略形状を有するシリンダバレル110内の空洞である。シリンダバレル110の一端(図2中の下端)にはシリンダ室111の開口111cが形成されている。
【0019】
シリンダ室111は、ロッドヘッド21が収容されるヘッド移動領域111aと、その領域より幅が狭いロッド移動領域111bとを有している。ヘッド移動領域111aは円筒形状を有しており、ロッドヘッド21が図2の上下方向に移動可能になるように、ロッドヘッド21の径よりわずかに径が大きく形成されている。ロッド移動領域111bは円筒形状を有しており、ロッド部22が図2の上下方向に移動可能になるように、ロッド部22の径よりわずかに径が大きく形成されている。ピストンロッド20は、ロッドヘッド21の全体がシリンダ室111内に収容され、ロッド部22がシリンダ室111内から開口111cを通ってシリンダバレル110の外部へと延びるように配置されている。
【0020】
シリンダバレル110の側壁には、ヘッド移動領域111aとシリンダバレル110の外部とを連通させる連通孔112及び113が形成されている。連通孔112は、ヘッド移動領域111aにおいて開口111cから遠い方の一端付近に連通するように形成されている。連通孔113は、ヘッド移動領域111aにおいて開口111cに近い方の一端付近に連通するように形成されている。ロッドヘッド21は、図2の上下方向に関して連通孔112と連通孔113との間に配置されている。
【0021】
連通孔112及び113は油圧回路30に接続されている。油圧回路30は、連通孔112及び113を通じてシリンダ室111内に作動油を供給する油圧源を有している。油圧回路30が連通孔112へと作動油を供給すると、ヘッド移動領域111aにおいて連通孔112側の室内の油圧が上昇し、開口111cに向かって押し出す圧力がロッドヘッド21に作用する。このとき、ヘッド移動領域111aにおいて連通孔113側の室内の作動油は、連通孔113を通じて油圧回路30に回収されるようになっている。したがって、ピストンロッド20は、ロッドヘッド21に連通孔112側から作用する圧力と、ロッドヘッド21に連通孔113側から作用する圧力との差圧によって図2の下方へと移動する。
【0022】
一方で、油圧回路30が連通孔113へと作動油を供給すると、ヘッド移動領域111aにおいて連通孔113側の室内の油圧が上昇し、開口111cから遠ざかるように押し戻す圧力がロッドヘッド21に作用する。このとき、ヘッド移動領域111aにおいて連通孔112側の室内の作動油は、連通孔112を通じて油圧回路30に回収されるようになっている。したがって、ピストンロッド20は、ロッドヘッド21に連通孔112側から作用する圧力と、ロッドヘッド21に連通孔113側から作用する圧力との差圧によって図2の上方へと移動する。このように、ピストンロッド20が図2の上下方向に移動することにより、フラップ駆動機構10へと駆動力が伝達される。
【0023】
次に、シリンダ室111の開口111c付近の構成について、図2及び図3を参照しつつより詳細に説明する。図3は、図2の二点鎖線の長方形で囲まれた部分の拡大図である。ロッド移動領域111bの内面には、開口111cから遠い位置から順に、凹部114〜116が形成されている。これらの凹部114〜116には、ブッシュ120、シール部材130及びスクレイパ140がそれぞれ嵌め込まれている。
【0024】
シール部材130は、シリンダ室111内の作動油が開口111cから漏れ出さないようにロッド部22とロッド移動領域111bの内面との隙間を封止する部材である。シール部材130は、ゴムやフッ素樹脂などの材料からなり、リング形状を有している。シール部材130は、ロッド部22の周面に周方向に沿って当接することにより、ロッド部22とロッド移動領域111bの内面との間の隙間を封止している。
【0025】
スクレイパ140は、ゴムなどの樹脂材料からなるリング形状を有する部材である。スクレイパ140は、ロッド部22の周面に周方向に沿って当接しており、ロッド部22が開口111cからシリンダ室111内へ向かって移動する際に、ロッド部22において開口111cより外部に位置した部分に付着した異物等を掻き取るように構成されている。これによって、シリンダ室111内に異物が侵入することを抑制している。
【0026】
ブッシュ120は、ブロンズ材料からなる円筒形の概略形状を有する部材である(図4のブッシュ120a〜120d参照)。ブッシュ120には、ブッシュ120を軸方向に貫通する円筒形状の摺動孔が形成されており、ロッド部22はこの摺動孔を貫通している。この摺動孔は、ロッド部22の径よりわずかに大きいが、ロッド移動領域111bの径より小さい径を有している。これによって、ロッド部22がこの摺動孔を貫通しつつ移動する際に、ロッド部22とブッシュ120とは互いに当接するが、ロッド部22とシリンダバレル110の内面とは互いに当接しないようになっている。このように、ブッシュ120は、ロッド移動領域111bにおいてロッド部22を摺動自在に支持する部材になっている。なお、ブッシュ120をブロンズ製とすることにより、フッ素樹脂などから形成する場合と比べてブッシュ120の耐久性を向上することができる。
【0027】
ところで、ロッド部22が摺動し続けると、ブッシュ120の摺動孔の内面が磨耗していくこととなる。したがって、油圧シリンダ100を使用し続けた場合には、ブッシュ120を点検したり、交換したりするなど、一定期間ごとにメンテナンスを施す必要が生じる。しかし、ブッシュ120はシリンダ室111内に収容されており、メンテナンス作業の際にシリンダ室111から取り出したり、シリンダ室111内に取り付けたりする作業が困難になるおそれがある。
【0028】
そこで、本実施形態のブッシュ120は以下のように構成されている。図4(a)〜図4(d)は、本実施形態のブッシュ120として採用され得るブッシュ120a〜120dをそれぞれ示している。まず、ブッシュ120aは、径方向にブッシュを貫通する貫通孔121を有している。貫通孔121は、ブッシュ120aにおいてピストンロッド20の摺動方向に関する一端から他端まで延びている。また、貫通孔121は、ロッド摺動方向に沿っておらず、ロッド摺動方向に交差するように延びている。シリンダ室111内に設置されてロッド部22が貫通している状態において、ブッシュ120aは、円筒形の概略形状を有しつつ、周方向に関して1箇所だけ貫通孔121によって切断された部分を有することとなっている。
【0029】
ブッシュ120aが以上の形状を有していることにより、図4(a)の白抜き矢印の方向に貫通孔121が閉じるようにブッシュ120aを弾性変形させると、ブッシュ120aを縮径させることができるようになっている。さらに、貫通孔121は、シリンダ室111の開口111cを通過することができる大きさになるまで、ブッシュ120aを縮径できるように形成されている。したがって、ブッシュ120aを用いた場合には、メンテナンス作業の際に開口111cを通じてシリンダ室111からブッシュ120aを取り出したり、開口111cを通じてシリンダ室111内へとブッシュ120aを取り付けたりすることが容易になる。
【0030】
また、貫通孔121は、ロッド摺動方向に交差するように延びている。これに対して、仮にロッド摺動方向に沿った貫通孔が形成されているとすると、ロッド部22の表面において貫通孔に対向する部分は、ピストンロッド20の摺動の際に貫通孔の延びる方向に沿って移動することとなる。したがって、ロッド部22の表面において貫通孔に対向する部分に、貫通孔の角部との摩擦によって傷が付きやすくなる。しかし、本実施形態の貫通孔121のようにロッド摺動方向に交差するように貫通孔が延びている場合には、ピストンロッド20の摺動の際にロッド部22の表面のある部分が貫通孔に沿って移動するということはなくなる。したがって、上記のような現象が発生せず、ロッド部22の表面に傷がつきにくくなる。
【0031】
さらに、ブッシュ120aの磨耗によるゴミ等がピストンロッド20の表面に付着することがある。ブッシュ120aによると、貫通孔121による溝が形成されているため、ピストンロッド20が摺動する際に上記のような異物が溝内に取り込まれる。これによって、ピストンロッド20が円滑に摺動しやすくなり、また、ロッド部22の表面に傷が付きにくくなる。
【0032】
次に、ブッシュ120bについて説明する。ブッシュ120bには貫通孔122及び123が形成されている。貫通孔122及び123は、いずれも貫通孔121と同様、ブッシュ120bを径方向に貫通しつつロッド摺動方向に関してブッシュ120bの一端から他端まで延びている。そして、ロッド摺動方向に交差するように延びている。これによって、ブッシュ120bは、左右2つの部材に分割されている。ブッシュ120bは、シリンダ室111内に設置されてロッド部22が貫通している状態においては、貫通孔122及び123が開口した状態になっている。したがって、貫通孔121と同様にゴミ等が取り込まれやすくなっている。
【0033】
一方、図4(b)の白抜き矢印のように、左右方向から貫通孔122及び123が閉じるように2つの部材を移動させた場合には、ブッシュ120bを縮径させることができるようになっている。さらに、貫通孔122及び123は、シリンダ室111の開口111cを通過することができる大きさになるまで、ブッシュ120bを縮径できるように形成されている。したがって、ブッシュ120bを用いた場合には、ブッシュ120aと同様に、開口111cを通じてシリンダ室111内へと取り付けたり、そこから取り外したりすることが容易になる。また、貫通孔122及び123がロッド摺動方向に交差するように延びているので、ロッド部22に傷が付きにくくなっているのもブッシュ120aと同様である。
【0034】
次に、ブッシュ120cについて説明する。ブッシュ120cにはブッシュ120cを径方向に貫通する貫通孔124が形成されている。この貫通孔124も、ロッド摺動方向に関してブッシュ120cの一端から他端まで延びている。そして、貫通孔124は、ブッシュ120cの一端から他端に向かって延びつつ、ブッシュ120cの周方向にも延びており、ブッシュ120cの軸心周りにほぼ1回転と半分回転している。これによって、貫通孔124は、ブッシュ120cの周面に沿って螺旋状に延びている。ブッシュ120cは、シリンダ室111内に設置されてロッド部22が貫通している状態においては、貫通孔124が開口した状態になっている。
【0035】
ブッシュ120cが以上の形状を有していることにより、貫通孔124に沿って螺旋方向に図4(c)の白抜き矢印のようにブッシュ120cを変形させると、ブッシュ120cを縮径させることができるようになっている。さらに、貫通孔124は、シリンダ室111の開口111cを通過することができる大きさになるまで、ブッシュ120cを縮径できるように形成されている。したがって、ブッシュ120aと同様に、開口111cを通じてシリンダ室111内へとブッシュ120cを取り付けたり、そこから取り外したりすることが容易になっている。貫通孔124はブッシュ120cに螺旋状に長く形成されており、これによってブッシュ120cを巻かれたリボンのように分割している。このため、ブッシュ120cを縮径するように変形させやすくなっている。
【0036】
さらに、ブッシュ120cに螺旋状に貫通孔124が形成されているため、ピストンロッド20が摺動する際、ロッド部22の表面において貫通孔124の開口と擦れ合う領域が、ロッド部22の周方向に関して平均的に分布することとなる。したがって、ロッド部22の表面に傷が付くことがより効果的に抑制されると共に、ロッド部22とブッシュ120cとの間に発生したゴミ等をより取り込みやすくなっている。
【0037】
次に、ブッシュ120dについて説明する。ブッシュ120dは、2つの部材125及び126を有している。部材125及び126は、一方が円筒の一部を構成し、他方がその残りの部分を構成するような形状を有している。そして、図4(d)において左右からロッド部22を挟むように配置することにより、全体として図4(d)のように円筒形の概略形状を呈するように構成されている。また、かかる配置にした際に、部材125と部材126との互いに対向する端部の間に貫通孔127が形成されるように構成されている。貫通孔127は、貫通孔121〜123と同様に、ブッシュ120dを径方向に貫通しつつ、ロッド摺動方向に関してブッシュ120dの一端から他端まで、ロッド摺動方向に交差するように延びている。ブッシュ120dは、シリンダ室111内に設置されてロッド部22が貫通している状態においては、貫通孔127が開口した状態になっている。
【0038】
一方、部材125と部材126において、貫通孔127が形成されている箇所とは反対側の端部同士は、蝶番によって連結されている。具体的には、部材125側の端部には凸部125aが形成されており、部材126側の端部には凸部125aとちょうど嵌合するように凹部126aが形成されている。凸部125aと凹部126aは互いに嵌合しており、両者をロッド摺動方向に貫通するピン128が設けられている。これによって、部材125及び126は、ピン128を軸心として互いに回転可能になっている。
【0039】
以上の構成により、図4(d)の白抜き矢印に沿って部材125及び126を回転させると、ブッシュ120dを縮径させることができる。さらに、貫通孔127は、シリンダ室111の開口111cを通過することができる大きさになるまで、ブッシュ120dを縮径できるように形成されている。したがって、ブッシュ120aと同様に、開口111cを通じてシリンダ室111内へとブッシュ120dを取り付けたり、そこから取り外したりすることが容易になっている。
【0040】
また、ブッシュ120dは蝶番によって変形させるようになっている。したがって、ブッシュ120aなどのように弾性変形させる場合と比べて、ブッシュ120dを縮径させる際及び拡径させる際のいずれの際にも変形させやすくなっている。
【0041】
以上、本実施形態の油圧シリンダ100によると、ブッシュ120a〜120dのいずれを採用した場合であれ、シリンダ室111の開口111cを通過するようにブッシュ120を縮径させることが可能である。したがって、シリンダ室111の開口111cを通じてブッシュ120を取り付けたりブッシュ120を取り外したりすることが容易になり、ブッシュ120のメンテナンス作業が容易になる。
【0042】
また、油圧シリンダ100においては、ブッシュ120がシリンダバレル110の内面に設置されている。したがって、後述のようなグランド部材を用いる場合と比べて、部品点数を減少させることができ、装置構成を簡易にすることができる。
【0043】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0044】
例えば、上述の実施形態においては、ブッシュ120がシリンダバレル110に形成された凹部114に嵌め込まれている。しかし、シリンダバレル110にグランド部材が設けられており、そのグランド部材に形成された凹部に上述の実施形態のブッシュ120が嵌め込まれていてもよい。
【0045】
図5は、グランド部材を使用した場合の一例である油圧シリンダ200の一部断面拡大図であり、図3に対応する図である。図5において上記の実施形態と同じ符号は同じ構成を示している。油圧シリンダ200のロッド移動領域211b内には、グランド部材240が設置されている。グランド部材240にはロッド部22が貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔の内面にブッシュ120やシール部材130、スクレイパ140が設置されている。なお、部材241はOリングであり、グランド部材240とロッド移動領域211bの内面との間の隙間を封止するシール部材である。
【0046】
また、上述の実施形態においては、ブッシュ120がブロンズ製であったが、フッ素樹脂で形成されていてもよい。
【0047】
また、上述の実施形態においては、油圧を用いたシリンダが想定されているが、油圧以外の流体を用いたシリンダに本発明が適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態が用いられる航空機の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る油圧シリンダの一部断面図である。
【図3】図2の二点鎖線の長方形で囲まれた領域の拡大図である。
【図4】図2のブッシュとして利用可能な種々の形態を示す斜視図である。
【図5】本実施形態の変形例を示す油圧シリンダの一部断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 航空機
2 フラップ
10 フラップ駆動機構
20 ピストンロッド
100 油圧シリンダ
110 シリンダバレル
111 シリンダ室
111c 開口
200 油圧シリンダ
121〜124、127 貫通孔
120、120a〜120d ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドが出入りする開口を有するシリンダ室と、前記ピストンロッドを摺動自在に支持するように前記シリンダ室内に配置された、筒型の概略形状を有するブッシュとを備え、
前記ブッシュが、前記開口を通過できるように縮径可能に構成されていることを特徴とするシリンダの軸受け構造。
【請求項2】
前記ブッシュをその径方向に貫通する貫通孔が形成され、その貫通孔が前記ピストンロッドの摺動方向に関して前記ブッシュの一端から他端まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダの軸受け構造。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記摺動方向と交差するように延びていることを特徴とする請求項2に記載のシリンダの軸受け構造。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記ブッシュの周面に沿って螺旋状に延びていることを特徴とする請求項3に記載のシリンダの軸受け構造。
【請求項5】
前記ブッシュが、前記摺動方向に直交する方向に関して前記ピストンロッドを挟む2つの部材に分割されており、
前記2つの部材同士が、前記ブッシュの径が変化可能となるように蝶番によって連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンダの軸受け構造。
【請求項6】
前記シリンダ室が内部に形成されたシリンダバレルをさらに備え、
前記シリンダバレルの内面に前記ブッシュを収容する凹部が形成されており、
前記ブッシュが前記凹部に収容されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンダの軸受け構造。
【請求項7】
前記ブッシュがブロンズ材料からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンダの軸受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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