シリンダヘッドガスケット
【課題】積層された複数のガスケット板の相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供すること。
【解決手段】シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23からなる積層体10sで構成され、この積層体10sが、シリンダ形成孔10a、10b、10cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有し、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込みと応力緩和貫通孔とを備え、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19も、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込みと応力緩和貫通孔とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23からなる積層体10sで構成され、この積層体10sが、シリンダ形成孔10a、10b、10cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有し、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込みと応力緩和貫通孔とを備え、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19も、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込みと応力緩和貫通孔とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドガスケットに関し、特に、積層された複数のガスケット板の相対位置を固定するかしめ部を備えたシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの燃焼室を形成するシリンダブロックとシリンダヘッドとの間には、シリンダヘッドガスケットが挟み込まれており、このシリンダヘッドガスケットにより燃焼室内で燃料の燃焼爆発により発生する高温高圧の燃焼ガスが漏出しないようシールされている。このシリンダヘッドガスケットは、よりシール性を高めるとともに、耐熱性および耐久性を高めるよう、複数枚の薄い鋼板からなるメタルガスケットにより積層されたものが多用されている。
【0003】
このような積層されたシリンダヘッドガスケットを作製する際、作製された複数のガスケット板が互いの相対位置が一致した状態で重ね合わせられ、切込みかしめ部やエンボスかしめ部などの凹凸が形成され、互いにずれないよう固定される。すなわち、積層されたシリンダヘッドガスケットを作製する際、かしめ部によって複数のガスケット板が一体化される。
しかしながら、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれたシリンダヘッドガスケットにおいては、燃焼室内の高圧燃焼ガスにより生ずるシリンダブロックの変形に伴って、前述のかしめ部に引張力などの外力が作用し、かしめ部に外力による応力が生ずる。
特に、かしめ部が切込みによって形成されている場合には、切込み部分に生ずる応力により、切込み部分に亀裂が入るおそれがあり耐久性が低下するおそれがある。
そこで、シリンダヘッドガスケットの切込み部分に亀裂が入るのを防止するようにしたものが提案されている。
【0004】
従来、この種のシリンダヘッドガスケットとして、シリンダの一部を画成するシリンダ孔が形成された2枚のビード板と各ビード板の間に挟まれて保持され、シリンダの一部を画成するシリンダ孔が形成されたシム板とにより構成されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
このシリンダヘッドガスケットにおいては、シム板が、シリンダ孔の周辺部のシール性を高めるようビード板の外形よりも小さな外形で形成されるとともに、シリンダ孔の周辺部に配置され、各シリンダ孔が一致した状態で2枚のビード板とシム板が互いに結合するよう、シリンダ孔の周辺部の表面部に凹凸状の第2かしめ部が形成されている。そして、2枚のビード板がシム板の外形よりも外側で、互いに結合するよう、シリンダ孔の周辺部から離隔した表面部に凹凸状の第1かしめ部が形成されている。
【0006】
また、シリンダヘッドガスケットにおいては、第1かしめ部には、表面部に切込みを入れ板厚方向に押圧し、押圧部分の面積が広くなるよう展延するという、いわゆる据え込み加工が施され、第1かしめ部によって2枚のビード板がその板厚方向に分離してばらばらにならないよう一体化されている。第2かしめ部には、表面部に切込みが生じないよう半球状に突出させるというエンボス加工が施され、2枚のビード板およびシム板がその相対位置がずれないよう位置決めされるとともに、引張力などの外力に対する強度が高められている。
【0007】
この構成により、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれたシリンダヘッドガスケットに対して引張力などの外力が作用した場合に、高い強度を有する第2かしめ部で、シリンダヘッドガスケットに生ずる外力方向の変形を抑制し、第1かしめ部で発生する応力をより小さくするようにしている。その結果、従来のシリンダヘッドガスケットにおいては、第1かしめ部および第2かしめ部の協働作用により、2枚のビード板およびシム板の結合力が高められ、耐久性が向上するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−25737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のシリンダヘッドガスケットにおいては、シム板が2枚のビード板内でずれないよう、第2かしめ部によって相対位置が位置決めされているので、各ビード板が、その板厚方向に離隔可能な構造となっている。そのため、各ビード板に板厚方向に外力が作用すると各ビード板が変形して、各ビード板間に隙間ができてしまい、シム板が各ビード板の間で相対的にずれてしまうおそれがあった。また、2枚のビード板がその板厚方向に分離しないよう、第1かしめ部によって相対位置が位置決めされているので、各ビード板の表面部に切込みが形成されている。
そのため、板厚方向と直交する水平方向に、引張力などの外力が作用すると切込みの部分に集中応力が生じて、第1かしめ部に亀裂が入ってしまい耐久性が低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は、前述の従来の問題を解決するためになされたもので、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(1)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0013】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部に応力緩和貫通孔が形成されているので、前述の引張力(N)が各方向から作用しても、これらの応力緩和貫通孔により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0014】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(2)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、前記切込みの外側に位置し、前記切込みに沿って延在する稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0016】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部のそれぞれに凸部が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、これらの凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0017】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(3)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、前記固定部から離隔するとともに、前記固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0019】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、この凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0020】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(4)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記ガスケット板が、第1外側ガスケット板と、第2外側ガスケット板と、前記第1外側ガスケット板と前記第2外側ガスケット板との間に介装された中間ガスケット板とを有し、前記中間ガスケット板が前記固定部よりも大きい断面を有する貫通孔を有し、前記固定部が、前記貫通孔を挟んで互いに対向する前記第1外側ガスケット板および前記第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0022】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部が、貫通孔を挟んで互いに対向する第1外側ガスケット板および第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、応力緩和貫通孔が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、この凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0023】
また、固定部においては、ガスケット板の積層枚数が減少することになり、加工性が良好になるとともに、各ガスケット板の表面からの突出高さが小さく形成され、シリンダヘッドガスケットを複数枚重ね合わせた際に、高さ方向を小さくすることができるなどの取り扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットが適用されるエンジンの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ近接側かしめ部の斜視図である。
【図5】図4のB−B断面を示す断面図である。
【図6】図4のC−C断面を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図8】図7のD−D断面を示す断面図である。
【図9】図7のE−E断面を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図11】(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図12】図10のF−F断面を示す断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図15】図12のG−G断面を示す断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ近接側かしめ部の斜視図である。
【図18】図13のH−H断面を示す断面図である。
【図19】本発明の第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図20】(a)および(b)は、本発明の第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態ないし第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットおよびシリンダヘッドガスケットが適用されるエンジンについて、図面を参照して説明する。
【0027】
(第1実施形態)
まず、構成について説明する。
本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11は、車両に搭載されたV型6気筒のエンジン1に適用されており、エンジン1の説明を通じてシリンダヘッドガスケット10、11を説明する。
【0028】
このエンジン1は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどのエンジンの種類に制限はなく、また、適宜選択された単気筒または複数気筒を有する直列のエンジンでもよい。
【0029】
具体的には、図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3、4と、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装されるシリンダヘッドガスケット10と、シリンダブロック2とシリンダヘッド4との間に介装されるシリンダヘッドガスケット11と、このシリンダブロック2、シリンダヘッド3、4およびシリンダヘッドガスケット10、11を締結する複数のヘッドボルト12とを含んで構成されている。
【0030】
シリンダブロック2は、例えば、軽量なアルミニウム合金からなり、V型6気筒のガソリンエンジンを構成している。このシリンダブロック2には、シリンダライナ5、6、7およびこれらの対向側に形成された図示しない3個のシリンダライナが、例えば、鋳造鋳鉄合金の鋳ぐるみライナによって形成されている。
【0031】
シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナとシリンダブロック2との密着性が高められ、放熱性の向上が図られるとともに、シリンダブロック2の変形が抑制されるようになっている。また、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナによって、それぞれシリンダ5c、6c、7cおよび他の3個のシリンダが画成されており、シリンダ5c、6c、7cおよび他の3個のシリンダ内でそれぞれピストンが往復運動するようになっている。
【0032】
また、このシリンダブロック2は、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナを囲む周縁部の近傍に形成されたウォータジャケット2wを有しており、いわゆるオープンデッキ構造となっている。また、このシリンダブロック2は、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナを囲む周縁部の近傍に形成された複数のヘッドボルト締結孔2tを有している。
【0033】
また、このシリンダブロック2の下部には、図示しないベアリングキャップによりメタルベアリングを介してクランクシャフトが回転可能に支持されている。また、このシリンダブロック2は、複数のエンジンマウントにより車体にマウントされている。
【0034】
シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と同様、軽量なアルミニウム合金からなり、V型6気筒のガソリンエンジンを構成している。このシリンダヘッド3には、図示しない3個の燃焼室が、シリンダ5c、6c、7cにそれぞれ連通するように形成されている。また、このシリンダヘッド3には、複数のヘッドボルト挿通孔3sが形成されており、複数のヘッドボルト12が挿通されるようになっている。シリンダヘッド4も、シリンダヘッド3と同様に形成されている。
【0035】
シリンダヘッドガスケット10は、図2および図3に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板21と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板22と、ヘッド側ガスケット板21とブロック側ガスケット板22との間に挟み込まれるシム板23とが積層された積層体10sによって構成されている。
【0036】
このヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0037】
この積層体10sには、シリンダ形成孔10a、10b、10cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔10a、10b、10cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔10hが形成されている。各ヘッドボルト挿通孔10hには、ヘッドボルト12が挿通されるようになっている。
【0038】
また、この積層体10sには、シリンダ形成孔10aの近傍にシリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔10cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0039】
このシリンダ近接側かしめ部15、16は、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2のウォータジャケット2wの開口部分に形成されており、シリンダ近接側かしめ部15、16の突出部分がウォータジャケット2w内に突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ近接側かしめ部15、16とが干渉しないようになっている。
【0040】
また、シリンダ形成孔10aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部17が形成され、シリンダ形成孔10bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部18が形成され、シリンダ形成孔10cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部19が形成されている。
【0041】
このシリンダ離隔側かしめ部17、18、19により、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔10a、10b、10cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0042】
また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部17、18、19とが干渉しないようになっている。
【0043】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0044】
また、この積層体10sには、シリンダ形成孔10a、10b、10cを囲んでブロック側ガスケット板22側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部10tが形成されており、この凸部10tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板22とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0045】
シリンダ近接側かしめ部15は、図4に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22方向に凹んだ凹部15hを有している。
【0046】
また、このシリンダ近接側かしめ部15は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通して形成された切込み25、26を有している。この切込み25の両端部には、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔25a、25bが形成されている。
【0047】
また、この切込み26の両端部にも、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔26a、26bが形成されている。
【0048】
凹部15hは、短辺27でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部27kと、短辺28でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部28kと、傾斜部27kの端部と傾斜部28kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部29とにより構成されている。
【0049】
この傾斜部27kと傾斜部28kと底面部29は、積層体10sに切込み25、26および応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bが形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み25、26で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に押圧されて形成される。
【0050】
この底面部29は、図6に示すように、切込み25と、切込み26との間の距離Wに対して、底面部29の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部29の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
【0051】
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0052】
図2、図4ないし図6に示すように、シリンダ近接側かしめ部16も、シリンダ近接側かしめ部15と同様に形成されている。
【0053】
シリンダ離隔側かしめ部17は、図7に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に凹んだ凹部17hを有している。
【0054】
また、このシリンダ離隔側かしめ部17は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通して形成された切込み31、32を有している。この切込み31の両端部には、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔31a、31bが形成されている。
【0055】
また、この切込み32の両端部にも、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔32a、32bが形成されている。
凹部17hは、短辺33でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部33kと、短辺34でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部34kと、傾斜部33kの端部と傾斜部34kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部35とにより構成されている。
【0056】
この傾斜部33kと傾斜部34kと底面部35は、シリンダ近接側かしめ部15と同様、積層体10sに切込み31、32および応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bがそれぞれ形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み31、32で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に押圧されて形成される。
【0057】
この底面部35は、図9に示すように、シリンダ近接側かしめ部15と同様、切込み31と、切込み32との間の距離Wに対して、底面部35の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部35の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0058】
シリンダ離隔側かしめ部18、19は、シリンダ離隔側かしめ部17と同様に形成されている。
【0059】
図2および図3に示すように、ヘッド側ガスケット板21は、例えば、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板22も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板21と略同形の外形で形成されている。
【0060】
シム板23は、ヘッド側ガスケット板21と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部10tと、シリンダ形成孔10a、10b、10cとの間に位置するよう形成されている。
【0061】
このシム板23は、シリンダ形成孔10a、10b、10cの周囲で、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との接触面のシール性が高められるよう、ヘッド側ガスケット板21とブロック側ガスケット板22との間に挟み込まれている。
【0062】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0063】
すなわち、シリンダヘッドガスケット10は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23からなる積層体10sで構成され、この積層体10sが、シリンダ形成孔10a、10b、10cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有し、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み31、32と応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bを備えている。
【0064】
その結果、シリンダヘッドガスケット10においては、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22内で、シム板23が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット10が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0065】
また、シリンダヘッドガスケット10が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット10に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0066】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bとが、それぞれ円形で形成されているので、前述の引張力(N)が各方向から作用しても、これらの応力緩和貫通孔によりシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0067】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット11においても、シリンダヘッドガスケット10と同様の効果が得られる。
【0068】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11においては、シリンダ近接側かしめ部15、16、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19を合計5箇所に形成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、固定部としてのシリンダ近接側かしめ部およびシリンダ離隔側かしめ部を、5箇所以外の複数箇所に形成してもよい。例えば、シリンダ近接側かしめ部を3箇所に形成し、シリンダ離隔側かしめ部を4箇所に形成するようにしてもよい。
【0069】
また、シリンダ近接側かしめ部15、16、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19をブロック側ガスケット板22から突出するよう形成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、これらの固定部としてのシリンダ近接側かしめ部およびシリンダ離隔側かしめ部をガスケット板としてのブロック側ガスケット板以外のガスケット板から突出するよう形成してもよい。例えば、ガスケット板としてのヘッド側ガスケット板から突出するよう形成してもよく、ブロック側ガスケット板およびヘッド側ガスケット板の双方から突出するよう形成してもよい。
【0070】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11においては、V型6気筒のエンジンに装着するよう構成された場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、他の種類のエンジンに装着するよう構成してもよい。例えば、単気筒のエンジンに装着するよう構成してもよく、直列2気筒、直列4気筒のエンジンに装着するよう構成してもよい。
【0071】
(第2実施形態)
次いで、第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210について図面を参照して説明する。
【0072】
第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0073】
シリンダヘッドガスケット210は、図10ないし図12に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板221と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板222と、ヘッド側ガスケット板221とブロック側ガスケット板222との間に挟み込まれるシム板223とが積層された積層体210sによって構成されている。
【0074】
このヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0075】
この積層体210sには、シリンダ形成孔210a、210b、210cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔210a、210b、210cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔210hが形成されている。各ヘッドボルト挿通孔210hには、ヘッドボルト12が挿通されるようになっている。
【0076】
また、この積層体210sには、シリンダ形成孔210aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔210cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0077】
また、シリンダ形成孔210aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部217が形成され、シリンダ形成孔210bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部218が形成され、シリンダ形成孔210cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部219が形成されている。
【0078】
このシリンダ離隔側かしめ部217、218、219により、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔210a、210b、210cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0079】
また、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部217、218、219とが干渉しないようになっている。
【0080】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0081】
また、この積層体210sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔210a、210b、210cを囲んでブロック側ガスケット板222側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部210tが形成されており、この凸部210tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板222とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0082】
シリンダ離隔側かしめ部217は、図11(a)に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に凹んだ凹部217hを有している。また、このシリンダ離隔側かしめ部217は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222を貫通して形成された切込み231、232を有している。
【0083】
凹部217hは、短辺233でヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に傾斜した傾斜部233kと、短辺234でヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に傾斜した傾斜部234kと、傾斜部233kの端部と傾斜部234kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部235とにより構成されている。
【0084】
この傾斜部233kと傾斜部234kと底面部235は、第1実施形態と同様、積層体210sに切込み231、232が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み231、232で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に押圧されて形成される。
【0085】
この底面部235は、図12に示すように、第1実施形態と同様、切込み231と、切込み232との間の距離Wに対して、底面部235の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部235の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0086】
また、シリンダ離隔側かしめ部217は、図12に示すように、切込み231、232の外側に位置し、切込み231に沿って延在する稜線を有する3個の凸部210xと、切込み232に沿って延在する稜線を有する3個の凸部210yとを備えている。この凸部210xおよび凸部210yの各コーナ部には貫通孔210kが形成されており、凸部210xおよび凸部210yのコーナ部に集中応力が作用しないようになっている。
シリンダ離隔側かしめ部218、219は、シリンダ離隔側かしめ部217と同様に形成されている。
【0087】
ヘッド側ガスケット板221は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板222も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板221と略同形の外形で形成されている。
【0088】
シム板223は、ヘッド側ガスケット板221と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部210tと、シリンダ形成孔210a、210b、210cとの間に位置するよう形成されている。
【0089】
このシム板223は、シリンダ形成孔210a、210b、210cの周囲で、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との接触面のシール性が高められるよう、ヘッド側ガスケット板221とブロック側ガスケット板222との間に挟み込まれている。
【0090】
第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0091】
すなわち、シリンダヘッドガスケット210は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223からなる積層体210sで構成され、この積層体210sが、シリンダ形成孔210a、210b、210cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219とを有している。
【0092】
また、このシリンダヘッドガスケット210においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み231、232とを備え、さらに、この切込み231、232の外側に位置し、図11(a)に示すように、切込み231、232に沿って延在する稜線を有する凸部210x、210yを備えている。
また、この凸部210x、210yは、図11(b)に示すように、図11(a)に示す凸部210x、210yと異なり、長手方向の両端部に切込みを形成せず、滑らかに突出させて形成した凸部210v、210wで構成するようにしてもよい。
【0093】
その結果、シリンダヘッドガスケット210においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222内で、シム板223が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット210が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0094】
また、シリンダヘッドガスケット210が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット210に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0095】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219のそれぞれに凸部210x、210yが形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、これらの凸部210x、210yによりシリンダ離隔側かしめ部217、218、219の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0096】
(第3実施形態)
次いで、第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310について図面を参照して説明する。
【0097】
第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0098】
シリンダヘッドガスケット310は、図13ないし図15に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板321と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板322と、ヘッド側ガスケット板321とブロック側ガスケット板322との間に挟み込まれるシム板323とが積層された積層体310sによって構成されている。
【0099】
このヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0100】
この積層体310sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔310a、310b、310cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔310a、310b、310cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔310hが形成されている。
【0101】
また、この積層体310sには、シリンダ形成孔310aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔310cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0102】
また、シリンダ形成孔310aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部317が形成され、シリンダ形成孔310bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部318が形成され、シリンダ形成孔310cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部319が形成されている。
【0103】
このシリンダ離隔側かしめ部317、318、319により、ヘッド側ガスケット板321およびブロック側ガスケット板322が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔310a、310b、310cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0104】
また、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部317、318、319とが干渉しないようになっている。
【0105】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0106】
また、この積層体310sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔310a、310b、310cを囲んでブロック側ガスケット板322側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部310tが形成されており、この凸部310tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板322とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0107】
シリンダ離隔側かしめ部317は、図14に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に凹んだ凹部317hを有している。
【0108】
凹部317hは、図14および図15に示すように、互いに対向する切込み331、332とを備え、さらに、この切込み331、332を囲む楕円形の稜線を有する凸部310xを備えている。
凹部317hは、短辺333でヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に傾斜した傾斜部333kと、短辺334でヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に傾斜した傾斜部334kと、傾斜部333kの端部と傾斜部334kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部335とにより構成されている。
【0109】
この傾斜部333kと傾斜部334kと底面部335は、第1実施形態と同様、積層体310sに切込み331、332が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み331、332で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に押圧されて形成される。
シリンダ離隔側かしめ部318、319は、シリンダ離隔側かしめ部317と同様に形成されている。
【0110】
ヘッド側ガスケット板321は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板322も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板321と略同形の外形で形成されている。
【0111】
シム板323は、ヘッド側ガスケット板321と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部310tと、シリンダ形成孔310a、310b、310cとの間に位置するよう形成されている。
【0112】
第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0113】
すなわち、シリンダヘッドガスケット310は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323からなる積層体310sで構成され、この積層体310sが、シリンダ形成孔310a、310b、310cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319とを有している。
【0114】
また、このシリンダヘッドガスケット310においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み331、332とを備え、さらに、この切込み331、332を囲む楕円形の稜線を有する凸部310xを備えている。
【0115】
その結果、シリンダヘッドガスケット310においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板321およびブロック側ガスケット板322内で、シム板323が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット310が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0116】
また、シリンダヘッドガスケット310が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット310に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0117】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319のそれぞれに凸部310xが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの凸部310xによりシリンダ離隔側かしめ部317、318、319の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0118】
(第4実施形態)
次いで、第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410について図面を参照して説明する。
【0119】
第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ近接側かしめ部15、16が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0120】
シリンダヘッドガスケット410は、図16ないし図18に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板421と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板422と、ヘッド側ガスケット板421とブロック側ガスケット板422との間に挟み込まれるシム板423とが積層された積層体410sによって構成されている。
【0121】
このヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0122】
この積層体410sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔410a、410b、410cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔410a、410b、410cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔410hが形成されている。
【0123】
また、この積層体410sには、シリンダ形成孔410aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部415が形成され、シリンダ形成孔410cの近傍にシリンダ近接側かしめ部416が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部415、416により、ヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0124】
なお、図17の破線で示すように、シム板423には、シリンダ近接側かしめ部415よりも大きい断面を有する貫通孔423kが形成されており、この貫通孔423kの領域では、積層枚数が1枚少ない2枚となっている。
【0125】
また、シリンダ形成孔410aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部17が形成され、シリンダ形成孔410bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部18が形成され、シリンダ形成孔410cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部19が形成されている。
【0126】
このシリンダ離隔側かしめ部17、18、19により、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔410a、410b、410cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0127】
このシリンダ近接側かしめ部415、416およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0128】
また、この積層体410sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔410a、410b、410cを囲んでブロック側ガスケット板422側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部410tが形成されており、この凸部410tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板422とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0129】
シリンダ近接側かしめ部415は、図17および図18に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で形成され、ヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に凹んで形成された凹部415hと、逆にブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に突出して形勢された凸部415mとを有している。
【0130】
また、このシリンダ近接側かしめ部415は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422を貫通して形成された切込み425、426、427を有している。この切込み425、426、427の各両端部には、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bが形成されている。
【0131】
凹部415hは、短辺437でヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に傾斜した傾斜部437kと、短辺438でヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に傾斜した傾斜部438kと、傾斜部437kの端部と傾斜部438kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部429xとにより構成されている。
【0132】
この傾斜部437kと傾斜部438kと底面部429xは、積層体410sに切込み425、426が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み425、426で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に押圧されて形成される。底面部429xは、その面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
【0133】
凸部415mは、凹部415hとは反対向きに形成されている。すなわち、短辺437で、ブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に傾斜した傾斜部437sと、短辺438でブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に傾斜した傾斜部438sと、傾斜部437sの端部と傾斜部438sの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部429yとにより構成されている。
【0134】
この傾斜部437sと傾斜部438sと底面部429yは、積層体410sに切込み426、427が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み426、427で囲まれた部分がブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に押圧されて形成される。底面部429yは、その面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。これらの据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422が、その板厚方向に動かないよう固定される。
シリンダ近接側かしめ部416も、シリンダ近接側かしめ部415と同様に形成されている。
【0135】
ヘッド側ガスケット板421は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板422も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板421と略同形の外形で形成されている。
【0136】
シム板423は、ヘッド側ガスケット板421と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、前述の貫通孔423kを有するとともに、外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部410tと、シリンダ形成孔410a、410b、410cとの間に位置するよう形成されている。
【0137】
第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0138】
すなわち、シリンダヘッドガスケット410は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423からなる積層体410sで構成され、この積層体410sが、シリンダ形成孔410a、410b、410cと、シリンダ近接側かしめ部415、416と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有している。
【0139】
また、シリンダヘッドガスケット410においては、シリンダ近接側かしめ部415、416が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み425、426、427と応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bを備え、凹部415hと、凸部415mとを有している。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み31、32とを備え、さらに、この切込み31、32の両端部に応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備えている。
【0140】
その結果、シリンダヘッドガスケット410においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部415、416により、ヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422内で、シム板423が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット410が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0141】
また、シリンダヘッドガスケット410が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット410に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0142】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部415、416の応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bが形成され、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19のそれぞれに応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの応力緩和貫通孔によりシリンダ近接側かしめ部415、416、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0143】
また、シリンダ近接側かしめ部415、416では、積層枚数が1枚減少しているので、プレス機械による押し込み深さを低減することができ、肉厚変化量を減らして、応力を緩和することができるという効果が得られる。また、積層枚数が1枚減少しているので、加工性が良好になるとともに、各ガスケット板の表面からの突出高さが小さく形成され、シリンダヘッドガスケット410を複数枚重ね合わせた際に、高さ方向を小さくすることができるなどの取り扱いが容易になるという効果も得られる。また、突出高さを小さくすることで、凸側にあるヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422などの外側ガスケット板の裏面に発生する引張応力を低減させることができ、高い耐久性を有することができるという効果も得られる。
【0144】
(第5実施形態)
次いで、第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510について図面を参照して説明する。
【0145】
第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0146】
シリンダヘッドガスケット510は、図19および図20に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板521と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板522と、ヘッド側ガスケット板521とブロック側ガスケット板522との間に挟み込まれるシム板523とが積層された積層体510sによって構成されている。
【0147】
このヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0148】
この積層体510sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔510a、510b、510cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔510a、510b、510cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔510hが形成されている。
【0149】
また、この積層体510sには、シリンダ形成孔510aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔510cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0150】
また、シリンダ形成孔510aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部517が形成され、シリンダ形成孔510bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部518が形成され、シリンダ形成孔510cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部519が形成されている。
【0151】
このシリンダ離隔側かしめ部517、518、519により、ヘッド側ガスケット板521およびブロック側ガスケット板522が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔510a、510b、510cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0152】
また、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部517、518、519とが干渉しないようになっている。
【0153】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0154】
また、この積層体510sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔510a、510b、510cを囲んでブロック側ガスケット板522側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部510tが形成されており、この凸部510tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板522とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0155】
シリンダ離隔側かしめ部517は、図20(a)に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に凹んだ凹部517hを有している。凹部517hは、互いに対向する切込み531、532とを備えている。
【0156】
凹部517hは、第1実施形態と同様、短辺533でヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に傾斜した傾斜部533kと、短辺534でヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に傾斜した傾斜部534kと、傾斜部533kの端部と傾斜部534kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部535とにより構成されている。
【0157】
この傾斜部533kと傾斜部534kと底面部535は、第1実施形態と同様、積層体510sに切込み531、532が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み531、532で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に押圧されて形成される。
【0158】
シリンダ離隔側かしめ部517は、切込み531、532の外側に位置し、切込み531の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部531x、531yと、切込み532の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部532x、532yとを有している。
シリンダ離隔側かしめ部518、519は、シリンダ離隔側かしめ部517と同様に形成されている。
また、この凸部531x、531y、532x、532yは、図20(b)に示すように、図20(a)に示す凸部531x、531y、532x、532yと異なり、長手方向の両端部に切込みを形成せず、滑らかに突出させて形成した凸部531v、531w、532v、532wで構成するようにしてもよい。
【0159】
ヘッド側ガスケット板521は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板522も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板521と略同形の外形で形成されている。
【0160】
シム板523は、ヘッド側ガスケット板521と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部510tと、シリンダ形成孔510a、510b、510cとの間に位置するよう形成されている。
【0161】
第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0162】
すなわち、シリンダヘッドガスケット510は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523からなる積層体510sで構成され、この積層体510sが、シリンダ形成孔510a、510b、510cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519とを有している。
【0163】
また、シリンダヘッドガスケット510においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み531、532とを備え、さらに、切込み531、532の外側に位置し、切込み531の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部531x、531yと、切込み532の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部532x、532yとを有している。
【0164】
その結果、シリンダヘッドガスケット510においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板521およびブロック側ガスケット板522内で、シム板523が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット510が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0165】
また、シリンダヘッドガスケット510が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット510に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0166】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519のそれぞれに凸部531x、531y、532x、532yが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの凸部によりシリンダ離隔側かしめ部517、518、519の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0167】
以上のように、本発明によれば、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することができるという効果を奏し、積層された複数のガスケット板で構成されるシリンダヘッドガスケット全般に有用である。
【符号の説明】
【0168】
1 エンジン
2 シリンダブロック
3、4 シリンダヘッド
5、6、7 シリンダライナ
5c、6c、7c シリンダ
10、11、210、310、410、510 シリンダヘッドガスケット
10a、10b、10c、210a、210b、210c、310a、310b、310c、410a、410b、410c、510a、510b、510c シリンダ形成孔
10s、210s、310s、410s、510s 積層体(複数のガスケット板)
15、16、415、416 シリンダ近接側かしめ部(固定部)
15h、17h、217h、317h、415h 凹部
17、18、19、217、218、219、317、318、319、517、518、519 シリンダ離隔側かしめ部(固定部)
21、221、321、421、521 ヘッド側ガスケット板(ガスケット板)
22、222、322、422、522 ブロック側ガスケット板(ガスケット板)
23、223、323、423、523 シム板(ガスケット板)
25、26、31、32、231、232、331、332、425、426、427、531、532 切込み
25a、25b、26a、26b、31a、31b、32a、32b、425a、425b、426a、426b、427a、427b 応力緩和貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドガスケットに関し、特に、積層された複数のガスケット板の相対位置を固定するかしめ部を備えたシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの燃焼室を形成するシリンダブロックとシリンダヘッドとの間には、シリンダヘッドガスケットが挟み込まれており、このシリンダヘッドガスケットにより燃焼室内で燃料の燃焼爆発により発生する高温高圧の燃焼ガスが漏出しないようシールされている。このシリンダヘッドガスケットは、よりシール性を高めるとともに、耐熱性および耐久性を高めるよう、複数枚の薄い鋼板からなるメタルガスケットにより積層されたものが多用されている。
【0003】
このような積層されたシリンダヘッドガスケットを作製する際、作製された複数のガスケット板が互いの相対位置が一致した状態で重ね合わせられ、切込みかしめ部やエンボスかしめ部などの凹凸が形成され、互いにずれないよう固定される。すなわち、積層されたシリンダヘッドガスケットを作製する際、かしめ部によって複数のガスケット板が一体化される。
しかしながら、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれたシリンダヘッドガスケットにおいては、燃焼室内の高圧燃焼ガスにより生ずるシリンダブロックの変形に伴って、前述のかしめ部に引張力などの外力が作用し、かしめ部に外力による応力が生ずる。
特に、かしめ部が切込みによって形成されている場合には、切込み部分に生ずる応力により、切込み部分に亀裂が入るおそれがあり耐久性が低下するおそれがある。
そこで、シリンダヘッドガスケットの切込み部分に亀裂が入るのを防止するようにしたものが提案されている。
【0004】
従来、この種のシリンダヘッドガスケットとして、シリンダの一部を画成するシリンダ孔が形成された2枚のビード板と各ビード板の間に挟まれて保持され、シリンダの一部を画成するシリンダ孔が形成されたシム板とにより構成されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
このシリンダヘッドガスケットにおいては、シム板が、シリンダ孔の周辺部のシール性を高めるようビード板の外形よりも小さな外形で形成されるとともに、シリンダ孔の周辺部に配置され、各シリンダ孔が一致した状態で2枚のビード板とシム板が互いに結合するよう、シリンダ孔の周辺部の表面部に凹凸状の第2かしめ部が形成されている。そして、2枚のビード板がシム板の外形よりも外側で、互いに結合するよう、シリンダ孔の周辺部から離隔した表面部に凹凸状の第1かしめ部が形成されている。
【0006】
また、シリンダヘッドガスケットにおいては、第1かしめ部には、表面部に切込みを入れ板厚方向に押圧し、押圧部分の面積が広くなるよう展延するという、いわゆる据え込み加工が施され、第1かしめ部によって2枚のビード板がその板厚方向に分離してばらばらにならないよう一体化されている。第2かしめ部には、表面部に切込みが生じないよう半球状に突出させるというエンボス加工が施され、2枚のビード板およびシム板がその相対位置がずれないよう位置決めされるとともに、引張力などの外力に対する強度が高められている。
【0007】
この構成により、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれたシリンダヘッドガスケットに対して引張力などの外力が作用した場合に、高い強度を有する第2かしめ部で、シリンダヘッドガスケットに生ずる外力方向の変形を抑制し、第1かしめ部で発生する応力をより小さくするようにしている。その結果、従来のシリンダヘッドガスケットにおいては、第1かしめ部および第2かしめ部の協働作用により、2枚のビード板およびシム板の結合力が高められ、耐久性が向上するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−25737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のシリンダヘッドガスケットにおいては、シム板が2枚のビード板内でずれないよう、第2かしめ部によって相対位置が位置決めされているので、各ビード板が、その板厚方向に離隔可能な構造となっている。そのため、各ビード板に板厚方向に外力が作用すると各ビード板が変形して、各ビード板間に隙間ができてしまい、シム板が各ビード板の間で相対的にずれてしまうおそれがあった。また、2枚のビード板がその板厚方向に分離しないよう、第1かしめ部によって相対位置が位置決めされているので、各ビード板の表面部に切込みが形成されている。
そのため、板厚方向と直交する水平方向に、引張力などの外力が作用すると切込みの部分に集中応力が生じて、第1かしめ部に亀裂が入ってしまい耐久性が低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は、前述の従来の問題を解決するためになされたもので、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(1)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0013】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部に応力緩和貫通孔が形成されているので、前述の引張力(N)が各方向から作用しても、これらの応力緩和貫通孔により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0014】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(2)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、前記切込みの外側に位置し、前記切込みに沿って延在する稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0016】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部のそれぞれに凸部が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、これらの凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0017】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(3)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、前記固定部から離隔するとともに、前記固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0019】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、この凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0020】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、上記の課題を解決するため、(4)シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、前記ガスケット板が、第1外側ガスケット板と、第2外側ガスケット板と、前記第1外側ガスケット板と前記第2外側ガスケット板との間に介装された中間ガスケット板とを有し、前記中間ガスケット板が前記固定部よりも大きい断面を有する貫通孔を有し、前記固定部が、前記貫通孔を挟んで互いに対向する前記第1外側ガスケット板および前記第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成により、各固定部により、各ガスケット板が板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、各ガスケット板が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0022】
また、シリンダヘッドガスケットが、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に組み込まれて両者に拘束された際、燃焼室内で混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケットに板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消される。すなわち、固定部が、貫通孔を挟んで互いに対向する第1外側ガスケット板および第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、応力緩和貫通孔が形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、この凸部により固定部の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られる。
【0023】
また、固定部においては、ガスケット板の積層枚数が減少することになり、加工性が良好になるとともに、各ガスケット板の表面からの突出高さが小さく形成され、シリンダヘッドガスケットを複数枚重ね合わせた際に、高さ方向を小さくすることができるなどの取り扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットが適用されるエンジンの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ近接側かしめ部の斜視図である。
【図5】図4のB−B断面を示す断面図である。
【図6】図4のC−C断面を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図8】図7のD−D断面を示す断面図である。
【図9】図7のE−E断面を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図11】(a)および(b)は、本発明の第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図12】図10のF−F断面を示す断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【図15】図12のG−G断面を示す断面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ近接側かしめ部の斜視図である。
【図18】図13のH−H断面を示す断面図である。
【図19】本発明の第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図20】(a)および(b)は、本発明の第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットのシリンダ離隔側かしめ部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態ないし第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケットおよびシリンダヘッドガスケットが適用されるエンジンについて、図面を参照して説明する。
【0027】
(第1実施形態)
まず、構成について説明する。
本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11は、車両に搭載されたV型6気筒のエンジン1に適用されており、エンジン1の説明を通じてシリンダヘッドガスケット10、11を説明する。
【0028】
このエンジン1は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどのエンジンの種類に制限はなく、また、適宜選択された単気筒または複数気筒を有する直列のエンジンでもよい。
【0029】
具体的には、図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3、4と、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装されるシリンダヘッドガスケット10と、シリンダブロック2とシリンダヘッド4との間に介装されるシリンダヘッドガスケット11と、このシリンダブロック2、シリンダヘッド3、4およびシリンダヘッドガスケット10、11を締結する複数のヘッドボルト12とを含んで構成されている。
【0030】
シリンダブロック2は、例えば、軽量なアルミニウム合金からなり、V型6気筒のガソリンエンジンを構成している。このシリンダブロック2には、シリンダライナ5、6、7およびこれらの対向側に形成された図示しない3個のシリンダライナが、例えば、鋳造鋳鉄合金の鋳ぐるみライナによって形成されている。
【0031】
シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナとシリンダブロック2との密着性が高められ、放熱性の向上が図られるとともに、シリンダブロック2の変形が抑制されるようになっている。また、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナによって、それぞれシリンダ5c、6c、7cおよび他の3個のシリンダが画成されており、シリンダ5c、6c、7cおよび他の3個のシリンダ内でそれぞれピストンが往復運動するようになっている。
【0032】
また、このシリンダブロック2は、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナを囲む周縁部の近傍に形成されたウォータジャケット2wを有しており、いわゆるオープンデッキ構造となっている。また、このシリンダブロック2は、シリンダライナ5、6、7および他の3個のシリンダライナを囲む周縁部の近傍に形成された複数のヘッドボルト締結孔2tを有している。
【0033】
また、このシリンダブロック2の下部には、図示しないベアリングキャップによりメタルベアリングを介してクランクシャフトが回転可能に支持されている。また、このシリンダブロック2は、複数のエンジンマウントにより車体にマウントされている。
【0034】
シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と同様、軽量なアルミニウム合金からなり、V型6気筒のガソリンエンジンを構成している。このシリンダヘッド3には、図示しない3個の燃焼室が、シリンダ5c、6c、7cにそれぞれ連通するように形成されている。また、このシリンダヘッド3には、複数のヘッドボルト挿通孔3sが形成されており、複数のヘッドボルト12が挿通されるようになっている。シリンダヘッド4も、シリンダヘッド3と同様に形成されている。
【0035】
シリンダヘッドガスケット10は、図2および図3に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板21と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板22と、ヘッド側ガスケット板21とブロック側ガスケット板22との間に挟み込まれるシム板23とが積層された積層体10sによって構成されている。
【0036】
このヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0037】
この積層体10sには、シリンダ形成孔10a、10b、10cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔10a、10b、10cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔10hが形成されている。各ヘッドボルト挿通孔10hには、ヘッドボルト12が挿通されるようになっている。
【0038】
また、この積層体10sには、シリンダ形成孔10aの近傍にシリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔10cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0039】
このシリンダ近接側かしめ部15、16は、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2のウォータジャケット2wの開口部分に形成されており、シリンダ近接側かしめ部15、16の突出部分がウォータジャケット2w内に突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ近接側かしめ部15、16とが干渉しないようになっている。
【0040】
また、シリンダ形成孔10aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部17が形成され、シリンダ形成孔10bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部18が形成され、シリンダ形成孔10cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部19が形成されている。
【0041】
このシリンダ離隔側かしめ部17、18、19により、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔10a、10b、10cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0042】
また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部17、18、19とが干渉しないようになっている。
【0043】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0044】
また、この積層体10sには、シリンダ形成孔10a、10b、10cを囲んでブロック側ガスケット板22側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部10tが形成されており、この凸部10tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板22とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0045】
シリンダ近接側かしめ部15は、図4に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22方向に凹んだ凹部15hを有している。
【0046】
また、このシリンダ近接側かしめ部15は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通して形成された切込み25、26を有している。この切込み25の両端部には、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔25a、25bが形成されている。
【0047】
また、この切込み26の両端部にも、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔26a、26bが形成されている。
【0048】
凹部15hは、短辺27でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部27kと、短辺28でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部28kと、傾斜部27kの端部と傾斜部28kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部29とにより構成されている。
【0049】
この傾斜部27kと傾斜部28kと底面部29は、積層体10sに切込み25、26および応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bが形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み25、26で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に押圧されて形成される。
【0050】
この底面部29は、図6に示すように、切込み25と、切込み26との間の距離Wに対して、底面部29の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部29の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
【0051】
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0052】
図2、図4ないし図6に示すように、シリンダ近接側かしめ部16も、シリンダ近接側かしめ部15と同様に形成されている。
【0053】
シリンダ離隔側かしめ部17は、図7に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に凹んだ凹部17hを有している。
【0054】
また、このシリンダ離隔側かしめ部17は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通して形成された切込み31、32を有している。この切込み31の両端部には、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔31a、31bが形成されている。
【0055】
また、この切込み32の両端部にも、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔32a、32bが形成されている。
凹部17hは、短辺33でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部33kと、短辺34でヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に傾斜した傾斜部34kと、傾斜部33kの端部と傾斜部34kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部35とにより構成されている。
【0056】
この傾斜部33kと傾斜部34kと底面部35は、シリンダ近接側かしめ部15と同様、積層体10sに切込み31、32および応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bがそれぞれ形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み31、32で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板21からブロック側ガスケット板22の方向に押圧されて形成される。
【0057】
この底面部35は、図9に示すように、シリンダ近接側かしめ部15と同様、切込み31と、切込み32との間の距離Wに対して、底面部35の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部35の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0058】
シリンダ離隔側かしめ部18、19は、シリンダ離隔側かしめ部17と同様に形成されている。
【0059】
図2および図3に示すように、ヘッド側ガスケット板21は、例えば、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板22も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板21と略同形の外形で形成されている。
【0060】
シム板23は、ヘッド側ガスケット板21と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部10tと、シリンダ形成孔10a、10b、10cとの間に位置するよう形成されている。
【0061】
このシム板23は、シリンダ形成孔10a、10b、10cの周囲で、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との接触面のシール性が高められるよう、ヘッド側ガスケット板21とブロック側ガスケット板22との間に挟み込まれている。
【0062】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0063】
すなわち、シリンダヘッドガスケット10は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23からなる積層体10sで構成され、この積層体10sが、シリンダ形成孔10a、10b、10cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有し、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み31、32と応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bを備えている。
【0064】
その結果、シリンダヘッドガスケット10においては、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板21、ブロック側ガスケット板22およびシム板23とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板21およびブロック側ガスケット板22内で、シム板23が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット10が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0065】
また、シリンダヘッドガスケット10が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット10に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0066】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の応力緩和貫通孔31a、31b、32a、32bとが、それぞれ円形で形成されているので、前述の引張力(N)が各方向から作用しても、これらの応力緩和貫通孔によりシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0067】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット11においても、シリンダヘッドガスケット10と同様の効果が得られる。
【0068】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11においては、シリンダ近接側かしめ部15、16、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19を合計5箇所に形成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、固定部としてのシリンダ近接側かしめ部およびシリンダ離隔側かしめ部を、5箇所以外の複数箇所に形成してもよい。例えば、シリンダ近接側かしめ部を3箇所に形成し、シリンダ離隔側かしめ部を4箇所に形成するようにしてもよい。
【0069】
また、シリンダ近接側かしめ部15、16、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19をブロック側ガスケット板22から突出するよう形成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、これらの固定部としてのシリンダ近接側かしめ部およびシリンダ離隔側かしめ部をガスケット板としてのブロック側ガスケット板以外のガスケット板から突出するよう形成してもよい。例えば、ガスケット板としてのヘッド側ガスケット板から突出するよう形成してもよく、ブロック側ガスケット板およびヘッド側ガスケット板の双方から突出するよう形成してもよい。
【0070】
第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10、11においては、V型6気筒のエンジンに装着するよう構成された場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るシリンダヘッドガスケットにおいては、他の種類のエンジンに装着するよう構成してもよい。例えば、単気筒のエンジンに装着するよう構成してもよく、直列2気筒、直列4気筒のエンジンに装着するよう構成してもよい。
【0071】
(第2実施形態)
次いで、第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210について図面を参照して説明する。
【0072】
第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0073】
シリンダヘッドガスケット210は、図10ないし図12に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板221と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板222と、ヘッド側ガスケット板221とブロック側ガスケット板222との間に挟み込まれるシム板223とが積層された積層体210sによって構成されている。
【0074】
このヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0075】
この積層体210sには、シリンダ形成孔210a、210b、210cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔210a、210b、210cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔210hが形成されている。各ヘッドボルト挿通孔210hには、ヘッドボルト12が挿通されるようになっている。
【0076】
また、この積層体210sには、シリンダ形成孔210aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔210cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0077】
また、シリンダ形成孔210aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部217が形成され、シリンダ形成孔210bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部218が形成され、シリンダ形成孔210cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部219が形成されている。
【0078】
このシリンダ離隔側かしめ部217、218、219により、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔210a、210b、210cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0079】
また、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部217、218、219とが干渉しないようになっている。
【0080】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部217、218、219は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0081】
また、この積層体210sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔210a、210b、210cを囲んでブロック側ガスケット板222側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部210tが形成されており、この凸部210tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板222とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0082】
シリンダ離隔側かしめ部217は、図11(a)に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に凹んだ凹部217hを有している。また、このシリンダ離隔側かしめ部217は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222を貫通して形成された切込み231、232を有している。
【0083】
凹部217hは、短辺233でヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に傾斜した傾斜部233kと、短辺234でヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に傾斜した傾斜部234kと、傾斜部233kの端部と傾斜部234kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部235とにより構成されている。
【0084】
この傾斜部233kと傾斜部234kと底面部235は、第1実施形態と同様、積層体210sに切込み231、232が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み231、232で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板221からブロック側ガスケット板222の方向に押圧されて形成される。
【0085】
この底面部235は、図12に示すように、第1実施形態と同様、切込み231と、切込み232との間の距離Wに対して、底面部235の幅Wtが、Wt>Wとなり、底面部235の面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
この据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222が、その板厚方向に動かないよう固定される。
【0086】
また、シリンダ離隔側かしめ部217は、図12に示すように、切込み231、232の外側に位置し、切込み231に沿って延在する稜線を有する3個の凸部210xと、切込み232に沿って延在する稜線を有する3個の凸部210yとを備えている。この凸部210xおよび凸部210yの各コーナ部には貫通孔210kが形成されており、凸部210xおよび凸部210yのコーナ部に集中応力が作用しないようになっている。
シリンダ離隔側かしめ部218、219は、シリンダ離隔側かしめ部217と同様に形成されている。
【0087】
ヘッド側ガスケット板221は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板222も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板221と略同形の外形で形成されている。
【0088】
シム板223は、ヘッド側ガスケット板221と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部210tと、シリンダ形成孔210a、210b、210cとの間に位置するよう形成されている。
【0089】
このシム板223は、シリンダ形成孔210a、210b、210cの周囲で、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との接触面のシール性が高められるよう、ヘッド側ガスケット板221とブロック側ガスケット板222との間に挟み込まれている。
【0090】
第2実施形態に係るシリンダヘッドガスケット210は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0091】
すなわち、シリンダヘッドガスケット210は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223からなる積層体210sで構成され、この積層体210sが、シリンダ形成孔210a、210b、210cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219とを有している。
【0092】
また、このシリンダヘッドガスケット210においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み231、232とを備え、さらに、この切込み231、232の外側に位置し、図11(a)に示すように、切込み231、232に沿って延在する稜線を有する凸部210x、210yを備えている。
また、この凸部210x、210yは、図11(b)に示すように、図11(a)に示す凸部210x、210yと異なり、長手方向の両端部に切込みを形成せず、滑らかに突出させて形成した凸部210v、210wで構成するようにしてもよい。
【0093】
その結果、シリンダヘッドガスケット210においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板221、ブロック側ガスケット板222およびシム板223とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板221およびブロック側ガスケット板222内で、シム板223が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット210が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0094】
また、シリンダヘッドガスケット210が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット210に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0095】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部217、218、219のそれぞれに凸部210x、210yが形成されているので、前述の引張力(N)が短辺方向と同じ方向に作用しても、これらの凸部210x、210yによりシリンダ離隔側かしめ部217、218、219の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0096】
(第3実施形態)
次いで、第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310について図面を参照して説明する。
【0097】
第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0098】
シリンダヘッドガスケット310は、図13ないし図15に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板321と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板322と、ヘッド側ガスケット板321とブロック側ガスケット板322との間に挟み込まれるシム板323とが積層された積層体310sによって構成されている。
【0099】
このヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0100】
この積層体310sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔310a、310b、310cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔310a、310b、310cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔310hが形成されている。
【0101】
また、この積層体310sには、シリンダ形成孔310aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔310cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0102】
また、シリンダ形成孔310aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部317が形成され、シリンダ形成孔310bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部318が形成され、シリンダ形成孔310cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部319が形成されている。
【0103】
このシリンダ離隔側かしめ部317、318、319により、ヘッド側ガスケット板321およびブロック側ガスケット板322が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔310a、310b、310cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0104】
また、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部317、318、319とが干渉しないようになっている。
【0105】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部317、318、319は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0106】
また、この積層体310sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔310a、310b、310cを囲んでブロック側ガスケット板322側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部310tが形成されており、この凸部310tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板322とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0107】
シリンダ離隔側かしめ部317は、図14に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に凹んだ凹部317hを有している。
【0108】
凹部317hは、図14および図15に示すように、互いに対向する切込み331、332とを備え、さらに、この切込み331、332を囲む楕円形の稜線を有する凸部310xを備えている。
凹部317hは、短辺333でヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に傾斜した傾斜部333kと、短辺334でヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に傾斜した傾斜部334kと、傾斜部333kの端部と傾斜部334kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部335とにより構成されている。
【0109】
この傾斜部333kと傾斜部334kと底面部335は、第1実施形態と同様、積層体310sに切込み331、332が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み331、332で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板321からブロック側ガスケット板322の方向に押圧されて形成される。
シリンダ離隔側かしめ部318、319は、シリンダ離隔側かしめ部317と同様に形成されている。
【0110】
ヘッド側ガスケット板321は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板322も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板321と略同形の外形で形成されている。
【0111】
シム板323は、ヘッド側ガスケット板321と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部310tと、シリンダ形成孔310a、310b、310cとの間に位置するよう形成されている。
【0112】
第3実施形態に係るシリンダヘッドガスケット310は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0113】
すなわち、シリンダヘッドガスケット310は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323からなる積層体310sで構成され、この積層体310sが、シリンダ形成孔310a、310b、310cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319とを有している。
【0114】
また、このシリンダヘッドガスケット310においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み331、332とを備え、さらに、この切込み331、332を囲む楕円形の稜線を有する凸部310xを備えている。
【0115】
その結果、シリンダヘッドガスケット310においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板321、ブロック側ガスケット板322およびシム板323とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板321およびブロック側ガスケット板322内で、シム板323が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット310が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0116】
また、シリンダヘッドガスケット310が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット310に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0117】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部317、318、319のそれぞれに凸部310xが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの凸部310xによりシリンダ離隔側かしめ部317、318、319の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0118】
(第4実施形態)
次いで、第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410について図面を参照して説明する。
【0119】
第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ近接側かしめ部15、16が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0120】
シリンダヘッドガスケット410は、図16ないし図18に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板421と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板422と、ヘッド側ガスケット板421とブロック側ガスケット板422との間に挟み込まれるシム板423とが積層された積層体410sによって構成されている。
【0121】
このヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0122】
この積層体410sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔410a、410b、410cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔410a、410b、410cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔410hが形成されている。
【0123】
また、この積層体410sには、シリンダ形成孔410aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部415が形成され、シリンダ形成孔410cの近傍にシリンダ近接側かしめ部416が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部415、416により、ヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0124】
なお、図17の破線で示すように、シム板423には、シリンダ近接側かしめ部415よりも大きい断面を有する貫通孔423kが形成されており、この貫通孔423kの領域では、積層枚数が1枚少ない2枚となっている。
【0125】
また、シリンダ形成孔410aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部17が形成され、シリンダ形成孔410bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部18が形成され、シリンダ形成孔410cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部19が形成されている。
【0126】
このシリンダ離隔側かしめ部17、18、19により、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔410a、410b、410cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0127】
このシリンダ近接側かしめ部415、416およびシリンダ離隔側かしめ部17、18、19は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0128】
また、この積層体410sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔410a、410b、410cを囲んでブロック側ガスケット板422側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部410tが形成されており、この凸部410tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板422とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0129】
シリンダ近接側かしめ部415は、図17および図18に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で形成され、ヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に凹んで形成された凹部415hと、逆にブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に突出して形勢された凸部415mとを有している。
【0130】
また、このシリンダ近接側かしめ部415は、互いに対向する長辺に、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422を貫通して形成された切込み425、426、427を有している。この切込み425、426、427の各両端部には、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422を貫通し、円形の断面を有する応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bが形成されている。
【0131】
凹部415hは、短辺437でヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に傾斜した傾斜部437kと、短辺438でヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に傾斜した傾斜部438kと、傾斜部437kの端部と傾斜部438kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部429xとにより構成されている。
【0132】
この傾斜部437kと傾斜部438kと底面部429xは、積層体410sに切込み425、426が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み425、426で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板421からブロック側ガスケット板422の方向に押圧されて形成される。底面部429xは、その面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。
【0133】
凸部415mは、凹部415hとは反対向きに形成されている。すなわち、短辺437で、ブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に傾斜した傾斜部437sと、短辺438でブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に傾斜した傾斜部438sと、傾斜部437sの端部と傾斜部438sの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部429yとにより構成されている。
【0134】
この傾斜部437sと傾斜部438sと底面部429yは、積層体410sに切込み426、427が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み426、427で囲まれた部分がブロック側ガスケット板422からヘッド側ガスケット板421の方向に押圧されて形成される。底面部429yは、その面積が広くなるよう展延され、いわゆる据え込み加工が施されている。これらの据え込み加工により、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422が、その板厚方向に動かないよう固定される。
シリンダ近接側かしめ部416も、シリンダ近接側かしめ部415と同様に形成されている。
【0135】
ヘッド側ガスケット板421は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板422も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板421と略同形の外形で形成されている。
【0136】
シム板423は、ヘッド側ガスケット板421と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、前述の貫通孔423kを有するとともに、外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部410tと、シリンダ形成孔410a、410b、410cとの間に位置するよう形成されている。
【0137】
第4実施形態に係るシリンダヘッドガスケット410は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0138】
すなわち、シリンダヘッドガスケット410は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423からなる積層体410sで構成され、この積層体410sが、シリンダ形成孔410a、410b、410cと、シリンダ近接側かしめ部415、416と、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19とを有している。
【0139】
また、シリンダヘッドガスケット410においては、シリンダ近接側かしめ部415、416が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み425、426、427と応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bを備え、凹部415hと、凸部415mとを有している。また、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み31、32とを備え、さらに、この切込み31、32の両端部に応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備えている。
【0140】
その結果、シリンダヘッドガスケット410においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部415、416により、ヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422およびシム板423とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板421およびブロック側ガスケット板422内で、シム板423が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット410が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0141】
また、シリンダヘッドガスケット410が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット410に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0142】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部415、416の応力緩和貫通孔425a、425b、426a、426b、427a、427bが形成され、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19のそれぞれに応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの応力緩和貫通孔によりシリンダ近接側かしめ部415、416、シリンダ離隔側かしめ部17、18、19の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0143】
また、シリンダ近接側かしめ部415、416では、積層枚数が1枚減少しているので、プレス機械による押し込み深さを低減することができ、肉厚変化量を減らして、応力を緩和することができるという効果が得られる。また、積層枚数が1枚減少しているので、加工性が良好になるとともに、各ガスケット板の表面からの突出高さが小さく形成され、シリンダヘッドガスケット410を複数枚重ね合わせた際に、高さ方向を小さくすることができるなどの取り扱いが容易になるという効果も得られる。また、突出高さを小さくすることで、凸側にあるヘッド側ガスケット板421、ブロック側ガスケット板422などの外側ガスケット板の裏面に発生する引張応力を低減させることができ、高い耐久性を有することができるという効果も得られる。
【0144】
(第5実施形態)
次いで、第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510について図面を参照して説明する。
【0145】
第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510においては、第1実施形態に係るシリンダヘッドガスケット10におけるシリンダ離隔側かしめ部17、18、19が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、同一の構成要素については、図1ないし図9に示した第1実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0146】
シリンダヘッドガスケット510は、図19および図20に示すように、シリンダヘッド3に接触するヘッド側ガスケット板521と、シリンダブロック2に接触するブロック側ガスケット板522と、ヘッド側ガスケット板521とブロック側ガスケット板522との間に挟み込まれるシム板523とが積層された積層体510sによって構成されている。
【0147】
このヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523は、それぞれ本発明に係るシリンダヘッドガスケットのガスケット板を構成している。
【0148】
この積層体510sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔510a、510b、510cが直列に等間隔で形成されており、シリンダ形成孔510a、510b、510cを囲む周縁部の近傍の8箇所に、ヘッドボルト挿通孔510hが形成されている。
【0149】
また、この積層体510sには、シリンダ形成孔510aの近傍に、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15が形成され、シリンダ形成孔510cの近傍にシリンダ近接側かしめ部16が形成されており、このシリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。
【0150】
また、シリンダ形成孔510aから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部517が形成され、シリンダ形成孔510bから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部518が形成され、シリンダ形成孔510cから所定の距離で離隔した位置に、シリンダ離隔側かしめ部519が形成されている。
【0151】
このシリンダ離隔側かしめ部517、518、519により、ヘッド側ガスケット板521およびブロック側ガスケット板522が、その板厚方向および板厚方向に直交する水平方向に動かないよう固定されている。また、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、各長手方向が、シリンダブロック2の熱膨張がより大きいシリンダ形成孔510a、510b、510cの配列方向と一致するよう形成されており、引張応力を低減するようにして耐久性の向上が図られている。
【0152】
また、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1に示すシリンダブロック2の逃げ部2nに形成されており、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519の突出部分が逃げ部2nに突出するよう配置され、シリンダブロック2とシリンダ離隔側かしめ部517、518、519とが干渉しないようになっている。
【0153】
このシリンダ近接側かしめ部15、16およびシリンダ離隔側かしめ部517、518、519は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの固定部を構成している。
【0154】
また、この積層体510sには、第1実施形態と同様、シリンダ形成孔510a、510b、510cを囲んでブロック側ガスケット板522側に突出し、1点鎖線で示された稜線を有する凸部510tが形成されており、この凸部510tがシリンダブロック2と当接することにより、ブロック側ガスケット板522とシリンダブロック2との接触面のシール性が高められるようになっている。
【0155】
シリンダ離隔側かしめ部517は、図20(a)に示すように、長辺と短辺とを有する四角形で、ヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に凹んだ凹部517hを有している。凹部517hは、互いに対向する切込み531、532とを備えている。
【0156】
凹部517hは、第1実施形態と同様、短辺533でヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に傾斜した傾斜部533kと、短辺534でヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に傾斜した傾斜部534kと、傾斜部533kの端部と傾斜部534kの端部とが一体的に結合され平らに形成された底面部535とにより構成されている。
【0157】
この傾斜部533kと傾斜部534kと底面部535は、第1実施形態と同様、積層体510sに切込み531、532が形成された後、プレス加工機などの成形機により、切込み531、532で囲まれた部分がヘッド側ガスケット板521からブロック側ガスケット板522の方向に押圧されて形成される。
【0158】
シリンダ離隔側かしめ部517は、切込み531、532の外側に位置し、切込み531の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部531x、531yと、切込み532の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部532x、532yとを有している。
シリンダ離隔側かしめ部518、519は、シリンダ離隔側かしめ部517と同様に形成されている。
また、この凸部531x、531y、532x、532yは、図20(b)に示すように、図20(a)に示す凸部531x、531y、532x、532yと異なり、長手方向の両端部に切込みを形成せず、滑らかに突出させて形成した凸部531v、531w、532v、532wで構成するようにしてもよい。
【0159】
ヘッド側ガスケット板521は、第1実施形態と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板で形成され、ブロック側ガスケット板522も、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、ヘッド側ガスケット板521と略同形の外形で形成されている。
【0160】
シム板523は、ヘッド側ガスケット板521と同様、高温、高圧の燃焼ガスに耐えうる高い耐熱性と、高い耐食性を有するステンレス鋼板からなり、その外形の周縁部分は、前述の1点鎖線で示された稜線を有する凸部510tと、シリンダ形成孔510a、510b、510cとの間に位置するよう形成されている。
【0161】
第5実施形態に係るシリンダヘッドガスケット510は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0162】
すなわち、シリンダヘッドガスケット510は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に介装され、積層されたヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523からなる積層体510sで構成され、この積層体510sが、シリンダ形成孔510a、510b、510cと、シリンダ近接側かしめ部15、16と、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519とを有している。
【0163】
また、シリンダヘッドガスケット510においては、シリンダ近接側かしめ部15、16が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み25、26と応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bを備え、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519が、四角形で凹状に形成されるとともに、互いに対向する切込み531、532とを備え、さらに、切込み531、532の外側に位置し、切込み531の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部531x、531yと、切込み532の両端部を結ぶ対角線と直交する稜線を有する凸部532x、532yとを有している。
【0164】
その結果、シリンダヘッドガスケット510においては、第1実施形態と同様、シリンダ近接側かしめ部15、16により、ヘッド側ガスケット板521、ブロック側ガスケット板522およびシム板523とが板厚方向に動かないよう確実に固定されるので、ヘッド側ガスケット板521およびブロック側ガスケット板522内で、シム板523が板厚方向と直交する水平方向にずれることがなくなり、シリンダヘッドガスケット510が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれる際、作業性が良好となる。
【0165】
また、シリンダヘッドガスケット510が、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との間に組み込まれて両者に拘束された際、第1実施形態と同様、シリンダブロック2とシリンダヘッド3で画成される燃焼室内で、空気と燃料との混合気が爆発、膨張して、シリンダヘッドガスケット510に板厚方向と直交する水平方向に引張力(N)が各方向から作用しても、従来のシリンダヘッドガスケットのかしめ部の各コーナに生じていた集中応力(MPa)による亀裂や損傷のおそれが解消されるという効果が得られる。
【0166】
すなわち、シリンダ近接側かしめ部15、16の応力緩和貫通孔25a、25b、26a、26bと、シリンダ離隔側かしめ部517、518、519のそれぞれに凸部531x、531y、532x、532yが形成されているので、前述の引張力(N)が各方向に作用しても、これらの凸部によりシリンダ離隔側かしめ部517、518、519の各コーナに応力(MPa)が集中することがなくなる。このような、集中応力(MPa)の緩和により、高い耐久性が得られるという効果がある。
【0167】
以上のように、本発明によれば、積層された複数のガスケットの相対位置が確実に固定され、高い耐久性を有するシリンダヘッドガスケットを提供することができるという効果を奏し、積層された複数のガスケット板で構成されるシリンダヘッドガスケット全般に有用である。
【符号の説明】
【0168】
1 エンジン
2 シリンダブロック
3、4 シリンダヘッド
5、6、7 シリンダライナ
5c、6c、7c シリンダ
10、11、210、310、410、510 シリンダヘッドガスケット
10a、10b、10c、210a、210b、210c、310a、310b、310c、410a、410b、410c、510a、510b、510c シリンダ形成孔
10s、210s、310s、410s、510s 積層体(複数のガスケット板)
15、16、415、416 シリンダ近接側かしめ部(固定部)
15h、17h、217h、317h、415h 凹部
17、18、19、217、218、219、317、318、319、517、518、519 シリンダ離隔側かしめ部(固定部)
21、221、321、421、521 ヘッド側ガスケット板(ガスケット板)
22、222、322、422、522 ブロック側ガスケット板(ガスケット板)
23、223、323、423、523 シム板(ガスケット板)
25、26、31、32、231、232、331、332、425、426、427、531、532 切込み
25a、25b、26a、26b、31a、31b、32a、32b、425a、425b、426a、426b、427a、427b 応力緩和貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、
前記切込みの外側に位置し、前記切込みに沿って延在する稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、
前記固定部から離隔するとともに、前記固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記ガスケット板が、第1外側ガスケット板と、第2外側ガスケット板と、前記第1外側ガスケット板と前記第2外側ガスケット板との間に介装された中間ガスケット板とを有し、
前記中間ガスケット板が前記固定部よりも大きい断面を有する貫通孔を有し、
前記固定部が、前記貫通孔を挟んで互いに対向する前記第1外側ガスケット板および前記第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項1】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、
前記切込みの外側に位置し、前記切込みに沿って延在する稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記固定部が、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みを有し、
前記固定部から離隔するとともに、前記固定部を囲む稜線を有する少なくとも1つの凸部を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
シリンダが形成されたシリンダブロックと燃焼室が形成されたシリンダヘッドとの間に介装され、積層された複数のガスケット板を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記シリンダの一部を形成するシリンダ形成孔と、前記シリンダ形成孔同士が互いに一致する位置で前記複数のガスケット板を固定する固定部とを有し、
前記ガスケット板が、第1外側ガスケット板と、第2外側ガスケット板と、前記第1外側ガスケット板と前記第2外側ガスケット板との間に介装された中間ガスケット板とを有し、
前記中間ガスケット板が前記固定部よりも大きい断面を有する貫通孔を有し、
前記固定部が、前記貫通孔を挟んで互いに対向する前記第1外側ガスケット板および前記第2外側ガスケット板に、多角形で凹状に形成されるとともに、2辺で互いに対向する切込みおよび前記切込みの両端部に形成された応力緩和貫通孔を備えたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−230103(P2010−230103A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79214(P2009−79214)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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