説明

シリンダードライヤー

【課題】
長期間の使用においても、シリンダー内壁面に復水の滞留を生じないシリンダードライヤーを得ること。
【解決手段】 シリンダー1にロータリージョイント5を介して蒸気供給管2を接続する。同様に、ロータリージョイント9を介して復水排出管3を接続する。シリンダー1内の蒸気供給管6の一部を分岐して蒸気エゼクタ4,16を接続する。蒸気エゼクタ4,16の吸込部10,13の開口部11,14を、シリンダー1の内壁面とわずかな隙間を介して配置する。
シリンダー1内で発生した復水は、蒸気エゼクタ4,16の開口部11,14から蒸気エゼクタ4,16に吸引され、更に、復水排出管3を通って外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転しながら外表面を通過する被加熱物を加熱する、製紙工場や繊維工場等で主に用いられるシリンダードライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリンダードライヤーは、ドライヤー11内に、案内壁18を備えたバケット19が先端に取り付けられたサイフォン管16を設け、バケット19の一端をドライヤー11の内壁面に接触して配置したもので、遠心力によりシリンダーの内壁面に滞留する復水を、バケットからサイフォン管を経て外部に排除するものである。
【0003】
上記従来のシリンダードライヤーでは、使用時間と共にドライヤー内壁面上の薄層の復水を排除できなくなり、加熱効率の低下や、加熱ムラを生じる問題があった。即ち、復水を排除するためのバケットを、内壁に接触して配置しているために、長時間の使用による摩耗や経年変化により、バケットと内壁の間に隙間を生じ、この隙間部に復水が滞留して排除できなくなるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭44−279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、長期間の使用においても、ドライヤー内壁面に復水の滞留が生じないシリンダードライヤーを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダーの内部に加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管を接続し、シリンダーの内部で蒸気が凝縮して発生した復水を外部へ排出する復水排出管を接続したものにおいて、シリンダーの内部で蒸気供給管と復水排出管の境界部に1台の若しくは複数台の蒸気エゼクタを接続して、当該蒸気エゼクタの入口側に蒸気供給管を接続し、蒸気エゼクタの出口側に復水排出管を接続すると共に、蒸気エゼクタの吸込口をシリンダー内壁面の近傍に開口して、当該蒸気エゼクタの吸込口を上下方向に移動することのできる吸込口移動部を配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、シリンダーの内部に1台若しくは複数台の蒸気エゼクタを配置して、この蒸気エゼクタの吸込口をシリンダー内壁面の近傍に開口したことにより、蒸気エゼクタで発生する吸引力でもって、シリンダー内壁面の復水を吸引することができ、復水排出管を通して外部へ復水を確実に排出することができるという利点がある。蒸気エゼクタで吸引力を発生するために、蒸気エゼクタの吸込口はシリンダーの内壁面に接触して配置する必要がないために、長期間に渡って、ドライヤー内壁面に復水を滞留することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るシリンダードライヤーの実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、シリンダー内部に蒸気エゼクタを配置するものであるが、蒸気エゼクタは、シリンダー内部での復水の発生状況に応じて、シリンダー内部の下部や側部、あるいは、上部に配置することができる。
【実施例】
【0010】
図1において、円筒状のシリンダー1と、シリンダー1の内部へ加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管2と、シリンダー1の内部で蒸気が凝縮して発生した復水を外部へ排出する復水排出管3、及び、シリンダー1の内部に配置した複数台の蒸気エゼクタ4,16とでシリンダードライヤーを構成する。
【0011】
蒸気供給管2のシリンダー1側の端部にロータリージョイント5を介在して、シリンダー1内部に蒸気供給管6を延長する。この内部の蒸気供給管6の右端部には、シリンダー1内へ蒸気を噴射するノズル7を取り付けると共に、蒸気供給管6の一部を分岐して分岐管8を接続して上下に蒸気エゼクタ4,16の入口側と接続する。
【0012】
蒸気エゼクタ4,16の出口側は、ロータリージョイント9を介して復水排出管3と接続する。下側の蒸気エゼクタ4の吸込部10に、シリンダー1の内壁面のすぐ上部に開口部11を有する吸込通路12を接続する。同様に、上側の蒸気エゼクタ16の吸込部13に、シリンダー1の内壁面のすぐ下部に開口部14を有する吸込通路15を接続する。それぞれの吸込通路12,15を上下方向に移動して、開口部11,14とシリンダー1の内壁面との隙間を微調整することのできる吸込口移動部18を配置する。
【0013】
シリンダー1は、左右のロータリージョイント5,9を結ぶ軸を回転軸として回転して、円筒状のシリンダー1の外表面を通過する図示しない紙やフィルム等の被加熱物を加熱するものである。すなわち、蒸気供給管2,6とノズル7からシリンダー1内部へ供給される蒸気によって被加熱物は加熱される。加熱によって熱を奪われた蒸気は凝縮して復水となり、シリンダー1の下部にたまる。
【0014】
シリンダー1の下部にたまった復水は、シリンダー1の回転に応じて内壁面の全体に行き渡り、蒸気エゼクタ4,16の開口部11,14から吸引されて、蒸気と混合しながら復水排出管3から外部へ排出される。
【0015】
蒸気エゼクタ4,16の開口部11,14は、蒸気エゼクタ4,16で吸引力を発生するために、シリンダー1の内壁面に接触して配置する必要はなく、わずかな隙間を介して配置することができ、長期間にわたり、シリンダー1内壁面に復水が滞留することがない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、回転しながら被加熱物を加熱するシリンダードライヤーとして適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 シリンダー
2 蒸気供給管
3 復水排出管
4,16 蒸気エゼクタ
5 ロータリージョイント
7 ノズル
8 分岐管
9 ロータリージョイント
10,13 吸込部
11,14 開口部
18 吸込口移動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーの内部に加熱用の蒸気を供給する蒸気供給管を接続し、シリンダーの内部で蒸気が凝縮して発生した復水を外部へ排出する復水排出管を接続したものにおいて、シリンダーの内部で蒸気供給管と復水排出管の境界部に1台若しくは複数台の蒸気エゼクタを接続して、当該蒸気エゼクタの入口側に蒸気供給管を接続し、蒸気エゼクタの出口側に復水排出管を接続すると共に、蒸気エゼクタの吸込口をシリンダー内壁面の近傍に開口して、当該蒸気エゼクタの吸込口を上下方向に移動することのできる吸込口移動部を配置したことを特徴とするシリンダードライヤー。

【図1】
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【公開番号】特開2013−108636(P2013−108636A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251636(P2011−251636)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】