説明

シリンダ装置

【課題】 中空ロッドの肉厚を大きくすることなく、溶接部の耐久性、寿命を向上することができ、装置の小型、軽量化を図ることができるようにする。
【解決手段】 中空ロッド17の固定端17A側をピストン15に固定するための固定用筒体18を、中空ロッド17よりも内径側の肉厚が大きい筒状の固定部材19と、中空ロッド17の固定端17Aと固定部材19との間に介在して設けられる筒状の連結部材20とにより構成する。筒状の連結部材20は軸方向の一側を内径側の肉厚が大きい大径部とし、軸方向の他側を肉厚の小さい小径部とする。連結部材20は、中空ロッド17よりも肉厚が大きい大径部側を固定部材19に差込み溶接部22により接合し、肉厚の小さい小径部側を中空ロッド17の固定端17A側に突合せ溶接部21により接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械において伸縮式のアームを駆動するのに好適に用いられるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械にあっては、例えばクラムシェルを上,下方向に昇降するために伸縮式のアームを用い、該アームの伸縮動作を長尺な油圧シリンダからなるシリンダ装置を用いて制御する構成としている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の従来技術によるシリンダ装置は、円筒状のチューブと、該チューブ内にボトム側室とロッド側室とを画成するため外周側が前記チューブ内に摺動可能に挿嵌され内周側が軸方向に延びる貫通穴となった筒状のピストンと、軸方向の一側が該ピストンに固定して設けられ軸方向の他側が前記チューブ外に突出した筒状の中空ロッドと、該中空ロッドの内周側を軸方向に貫通して延び前記ピストンの貫通穴を介して前記ボトム側室に連通する内径側通路と前記ロッド側室に連通する外径側通路とを形成するパイプ部材とを備えている。
【0004】
また、前記中空ロッドの軸方向一側には、該中空ロッドを前記ピストンに固定するための固定用筒体が、例えば差込み溶接により接合して設けられている。そして、前記中空ロッドの一側をピストンに固定するときには、固定用筒体が前記ピストンの貫通穴内に緩止め状態で螺着して取付けられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−262206号公報
【特許文献2】特開2004−176388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術では、中空ロッドの軸方向一側をピストンに固定するときに、ピストンと中空ロッドとの間に固定用筒体を介在させ、この固定用筒体を用いて両者を固定する構成としている。即ち、固定用筒体は、予め中空ロッドの一側に差込み溶接により接合して設け、この状態で固定用筒体を前記ピストンの貫通穴内へと螺着することにより、前記中空ロッドをピストンに対して固定するものである。
【0007】
しかし、このような従来技術では、中空ロッドの一側に固定用筒体を差込み溶接するため、両者の溶接箇所には未溶着部が残ることがあり、この部分が起点となって亀裂が発生し易く、溶接部の耐久性、寿命が低下するという問題がある。
【0008】
このため、従来技術では、中空ロッドの肉厚(径方向の厚み)を大きくすることにより、前記溶接部の耐久性、寿命を延ばす等の対策をとっている。しかし、中空ロッドの肉厚を大きくすると、材料費が嵩むばかりでなく、中空ロッドの外径が大きくなるためにシリンダ装置全体の外径も大きくなり、シリンダ装置の小型、軽量化を図る上で大きな障害となってしまう。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、中空ロッドの肉厚を大きくすることなく、溶接部の耐久性、寿命を向上することができ、装置の小型、軽量化を図ることができるようにしたシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、円筒状のチューブと、該チューブ内にボトム側室とロッド側室とを画成するため外周側が前記チューブ内に摺動可能に挿嵌され内周側が軸方向に延びる貫通穴となった筒状のピストンと、軸方向の一側が該ピストンに固定して設けられ軸方向の他側が前記チューブ外に突出した筒状の中空ロッドと、該中空ロッドの一側を前記ピストンに固定するため前記ピストンの貫通穴内に配置して設けられる固定用筒体と、該固定用筒体および前記中空ロッドの内周側を軸方向に貫通して延び前記ピストンの貫通穴を介して前記ボトム側室に連通する内径側通路と前記ロッド側室に連通する外径側通路とを形成するパイプ部材とを備えてなるシリンダ装置に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記固定用筒体は、前記中空ロッドよりも内径側に肉厚を大きくした筒状体として形成され前記ピストンの貫通穴内に固定される筒状の固定部材と、前記中空ロッドと固定部材との間に設けられ該固定部材を前記中空ロッドの一側に連結する筒状の連結部材とにより構成し、該連結部材は、軸方向の一側が前記中空ロッドよりも内径側の肉厚が大きい大径部となって前記固定部材に溶接され、軸方向の他側が内径側の肉厚が小さい小径部となって前記中空ロッドの一側に溶接して固着される構成としたことにある。
【0012】
また、請求項2の発明によると、前記外径側通路の軸方向一側の端部は前記パイプ部材と連結部材との間に形成され、この端部は前記固定部材により閉塞される構成としている。
【0013】
また、請求項3の発明によると、前記連結部材の外径側には、前記固定部材との溶接部および前記中空ロッドとの溶接部を一緒に外側から囲繞する筒体を設ける構成としている。
【0014】
一方、請求項4の発明によると、前記連結部材の軸方向の一側には溶接用の開先部を形成し、前記固定部材の軸方向の他側には、前記連結部材の開先部に対して内径側から差込まれる差込み部と、該差込み部の外径側に形成され前記連結部材の開先部と軸方向で対向して配置される溶接用の他の開先部とを設ける構成としている。
【0015】
また、請求項5の発明によると、前記連結部材は、軸方向の他側に位置する前記小径部側を前記中空ロッドの一側に突合せ溶接により接合する構成としている。
【0016】
さらに、請求項6の発明によると、前記連結部材は、軸方向の一側に位置する前記大径部側を前記固定部材に対して差込み溶接により接合する構成としている。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1の発明によれば、中空ロッドの一側をピストンに固定するための固定用筒体を、前記中空ロッドよりも径方向の肉厚が大きい筒状の固定部材と、前記中空ロッドと固定部材との間に設けられる筒状の連結部材とにより構成している。このため、該連結部材は、軸方向の一側を前記中空ロッドよりも肉厚が大きい大径部として前記固定部材に溶接により固着することができ、軸方向の他側を肉厚の小さい小径部として前記中空ロッドの一側に溶接により固着することができる。
【0018】
そして、この場合に連結部材の一側(大径部側)と固定部材との間は、径方向の肉厚を大きくした状態で両者間の溶接面積を大きくでき、溶接強度を高めることができる。また、連結部材の他側(小径部側)と中空ロッドの一側との間は、それぞれ径方向の肉厚を小さくしているが、例えば両者間を突合せ溶接により接合することができるため、これによって両者間の溶接強度を容易に確保することができる。
【0019】
この結果、中空ロッドの肉厚を従来技術のように大きくすることなく、前記固定部材と連結部材とを用いて前記ピストンに中空ロッドの一側を固定することができ、前記各溶接部の耐久性、寿命を向上することができる。しかも、中空ロッドの肉厚を小さく保つことにより材料費等を低減できる上に、中空ロッドの外径を小さくできるため、シリンダ装置全体の外径も小さくすることができ、シリンダ装置全体の小型、軽量化を図ることができる。
【0020】
また、請求項2の発明では、外径側通路の軸方向一側の端部をパイプ部材と連結部材との間に位置する環状の通路として形成できる。そして、この端部は固定部材により閉塞されているため、前記外径側通路の一側の端部を、例えばチューブ内のボトム側室に対して遮断することができる。
【0021】
また、請求項3の発明によると、前記連結部材の外径側には、前記固定部材との溶接部および前記中空ロッドとの溶接部を一緒に外側から囲繞する筒体を設けているので、この筒体により前記二つの溶接部を外側から囲繞して保護することができる。
【0022】
一方、請求項4の発明は、前記連結部材の軸方向の一側には溶接用の開先部を形成し、固定部材の軸方向の他側に設けた差込み部を、連結部材側の開先部に対して内径側から差込んだ状態で前記固定部材側の開先部と連結部材側の開先部とを軸方向で対向して配置でき、両者の開先部間に溶接盛りを施して差込み溶接を行うことにより、前記固定部材と連結部材とを広い溶接面積をもって固着することができる。
【0023】
また、請求項5の発明は、連結部材の小径部側を中空ロッドの一側に突合せ溶接により接合する構成としているので、両者の溶接部(溶接箇所)に未溶着部が残るのを防ぐことができ、両者間の溶接強度を容易に確保することができる。
【0024】
さらに、請求項6の発明によると、連結部材の軸方向一側を肉厚の大きい大径部とし、この大径部側を固定部材に対して差込み溶接により接合する構成としている。このため、両者の溶接部(溶接箇所)に差込み溶接による未溶着部が仮に残ったとしても、両者の肉厚が大きいので、溶接面積を大きくとることができ、溶接強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態によるシリンダ装置が適用されたクラムシェルバケット搭載式の油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】図1中のシリンダ装置を示す一部破断の外観図である。
【図3】図2中のチューブ、ピストン、中空ロッド、連結部材および固定部材等を拡大して示す要部断面図である。
【図4】図3中の中空ロッド、連結部材および固定部材をピストンから取外した状態で拡大して示す断面図である。
【図5】図4の中空ロッド、連結部材および固定部材を互いに溶接する前の状態を示す断面図である。
【図6】中空ロッドの一側に連結部材を突合せた状態を示す断面図である。
【図7】図6中の中空ロッドと連結部材とを溶接した状態を示す断面図である。
【図8】中空ロッドに溶接した連結部材に対し固定部材を差込んだ状態を示す断面図である。
【図9】図8中の固定部材と連結部材とを溶接した状態を示す断面図である。
【図10】比較例による中空ロッドと固定用筒体との差込み溶接部等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態によるシリンダ装置を、クラムシェルバケット搭載式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付の図面に従って詳細に説明する。
【0027】
ここで、図1ないし図9は本発明の実施の形態を示している。図中、1は建設機械としての油圧ショベルで、この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0028】
この場合、作業装置4は、後述のブーム5、伸縮アーム8、クラムシェルバケット9等により構成されている。そして、作業装置4は、後述の伸縮アーム8によりクラムシェルバケット9を上,下方向に昇降しつつ、例えば貨物船の船倉(図示せず)内に積込まれた土砂、スクラップ等を掘削して陸揚げ(運搬)する作業を行うものである。
【0029】
5は上部旋回体3の前部側に設けられたブームで、該ブーム5は全体として略く字状に形成されている。そして、ブーム5の基端側は上部旋回体3に俯仰動可能に取付けられ、ブーム5の先端側には後述する伸縮アーム8が取付けられている。また、上部旋回体3とブーム5との間には、上部旋回体3に対してブーム5を俯仰動させるブームシリンダ6が設けられ、ブーム5と伸縮アーム8との間には、ブーム5の先端側で伸縮アーム8を回動させるアームシリンダ7が設けられている。
【0030】
8はブーム5の先端側に設けられた伸縮アームで、該伸縮アーム8は、最も外側に位置する角筒状の外側アーム8Aと、該外側アーム8A内に長さ方向に移動可能に収容された角筒状の中間アーム8Bと、該中間アーム8B内に長さ方向に移動可能に収容された角筒状の内側アーム8Cとを備えた3段式の伸縮アームとして構成されている。
【0031】
ここで、外側アーム8Aの長さ方向の中間部位にはブラケット8Dが固定して設けられている。そして、該ブラケット8Dには、ブーム5の先端部が回動可能に取付けられると共に、アームシリンダ7の先端部が回動可能に取付けられている。
【0032】
そして、伸縮アーム8は、その内部に設けられた後述の油圧シリンダ11等によって長さ方向(上,下方向)に伸縮動作し、その全長が変化するものである。また、中間アーム8Bから突出する内側アーム8Cの先端側(下端側)には、後述のクラムシェルバケット9が取付けられている。
【0033】
9は伸縮アーム8を構成する内側アーム8Cの先端側に取付けられたクラムシェルバケットを示し、該クラムシェルバケット9は、内側アーム8Cの先端側から下方に垂下されている。そして、クラムシェルバケット9は、例えば一対のシェル9A,9Bを左,右方向に開,閉操作することにより、前記土砂、スクラップ等の掘削、運搬作業を行うものである。
【0034】
10は伸縮アーム8に設けられたシーブで、該シーブ10には長尺なロープ(図示せず)の途中部分が巻回して設けられ、このロープの両端は、例えば伸縮アーム8の外側アーム8Aと内側アーム8Cとに取付けられている。そして、このロープは、後述の油圧シリンダ11が伸縮動作するときにシーブ10に沿って滑動し、これに伴って、伸縮アーム8の中間アーム8B、内側アーム8Cが外側アーム8Aから上,下方向に伸縮されるものである。
【0035】
次に、11は伸縮アーム8の内部に設けられたシリンダ装置としての油圧シリンダで、該油圧シリンダ11は、後述のチューブ12、ピストン15および中空ロッド17等により構成されている。そして、油圧シリンダ11は、中空ロッド17をチューブ12から伸縮動作させる。これにより、伸縮アーム8の中間アーム8B、内側アーム8Cは、外側アーム8Aから前記ロープを介して上,下方向に伸縮されるものである。
【0036】
12は油圧シリンダ11の外殻を構成する円筒状のチューブで、該チューブ12は、例えば長尺な鋼管等を用いて形成され、例えば図1中に示す伸縮アーム8内で中間アーム8Bに固定して取付けられている。そして、チューブ12は、図2に示すように軸方向一側(下端側)がボトムカバー13により閉塞され、軸方向他側(上端側)にはロッドガイド14が設けられている。
【0037】
15はチューブ12内に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン15は、図2、図3に示すようにチューブ12内をボトム側油室Aとロッド側油室Bとに画成している。また、ピストン15の内周側には、軸方向に延びる貫通穴としての段付穴16が形成され、この段付穴16のうち軸方向一側に位置する小径な穴部は、後述のパイプ部材26の内周側(内径側)をボトム側油室Aに連通させる連通穴部16Aとなっている。
【0038】
一方、段付穴16のうち軸方向他側寄りに位置する大径な穴部は、後述の固定部材19が螺着されるねじ穴部16Bとなっている。そして、段付穴16の軸方向(長さ方向)中間部には、連通穴部16Aとほぼ同径で、ねじ穴部16Bよりも小径な嵌合穴部16Cが形成され、この嵌合穴部16C内には、後述するパイプ部材26の軸方向一側が嵌合して取付けられている。
【0039】
17は軸方向一側がピストン15に固定して設けられる筒状の中空ロッドで、該中空ロッド17は、図4に示すように径方向の肉厚が寸法a(例えば、ロッド外径が100mmで、ロッド内径が70mmの場合、a=15mm)となった長尺な円管部材として形成されている。そして、中空ロッド17の一側(下端側)は、図3、図4に示すようにピストン15側の固定端17Aとなって、後述の連結部材20に突合せ溶接により固着されている。
【0040】
また、中空ロッド17の他側(上端側)は、図2に示すようにチューブ12から外部に向けて突出する突出端17Bとなり、この突出端17B側には後述のロッドヘッド30が設けられている。そして、中空ロッド17の突出端17B側は、このロッドヘッド30を介して伸縮アーム8の外側アーム8A(図1参照)に回動可能に連結して取付けられている。
【0041】
18は中空ロッド17の固定端17A側をピストン15に固定する固定用筒体で、該固定用筒体18は、図3に示すように後述の固定部材19と連結部材20とにより構成されている。これによって、固定用筒体18は、中空ロッド17の肉厚(寸法a)を大きくすることなく、中空ロッド17の固定端17A側をピストン15に強固に固定するものである。
【0042】
19は固定用筒体18の主要部を構成する筒状の固定部材で、この固定部材19は、図4、図5に示すように中空ロッド17(寸法a)よりも径方向の肉厚が、その内径側で大きくなった段付な筒状体として形成され、その外周側にはおねじ部19Aが設けられている。また、固定部材19の内周側は、後述のパイプ部材26が挿嵌される挿嵌穴19Bとなっている。
【0043】
また、固定部材19の軸方向他側には、図5、図8に示すように、後述する連結部材20側の開先部20Cに対して内径側から差込まれる差込み部19Cと、該差込み部19Cの外径側に形成され連結部材20の開先部20Cと軸方向で対向して配置される差込み溶接用の他の開先部19Dとが形成されている。
【0044】
そして、固定部材19は、図4に示すように連結部材20および中空ロッド17を溶接により一体化した状態で、おねじ部19Aをピストン15のねじ穴部16B(図3参照)に螺着することにより、ピストン15に対して中空ロッド17を強固に固着するものである。
【0045】
20は筒状の固定部材19と共に固定用筒体18を構成する筒状の連結部材を示し、該連結部材20は、固定部材19を中空ロッド17の固定端17A側に連結するため、中空ロッド17と固定部材19との間の継手部材として設けられている。そして、筒状の連結部材20は軸方向の一側が大径部20Aとなり、この大径部20A側は、図5に示すように径方向の肉厚(寸法b)が内径側で中空ロッド17の肉厚(寸法a)よりも大きくなっている(b>a)。
【0046】
また、連結部材20は軸方向の他側が小径部20Bとなり、この小径部20Bの肉厚(寸法c)は、その内径側で大径部20A側よりも小さく、例えば中空ロッド17の肉厚(寸法a)とほぼ等しく形成されている(c≒a)。ここで、連結部材20の大径部20A側には、固定部材19の差込み部19C(開先部19D)側を差込み溶接するための開先部20Cが形成されている。一方、連結部材20の小径部20B側には、中空ロッド17の固定端17A側に突合せ溶接を行うための他の開先部20Dが形成されている。
【0047】
21は中空ロッド17と連結部材20との間の突合せ溶接部で、該突合せ溶接部21は、例えば図6、図7に示すように連結部材20の小径部20B(開先部20D)側を中空ロッド17の固定端17A側に突合せた状態で、両者の間に全周にわたって溶接盛りを施すことにより形成される。
【0048】
そして、突合せ溶接部21は、連結部材20の小径部20B側を中空ロッド17の固定端17A側に開先部20D等を介して突合せ溶接するものである。ここで、中空ロッド17と連結部材20との間に突合せ溶接部21を図7に示す如く形成した後には、当該溶接部21の径方向内側部位と径方向外側部位とに、旋盤等による仕上げ加工を適宜に施すようにする。
【0049】
22は固定部材19と連結部材20との間の差込み溶接部で、該差込み溶接部22は、例えば図8、図9に示すように固定部材19の差込み部19Cを連結部材20の開先部20Cに対して、その内径側から差込んだ状態で、両者の開先部19D,20C間に全周にわたって溶接盛りを施すことにより形成される。
【0050】
そして、差込み溶接部22は、互いに肉厚が大きい連結部材20の大径部20A(図5に示す寸法b)側を固定部材19に差込み溶接し、その溶接面積(溶接盛り)を大きくできるものである。また、固定部材19と連結部材20との間に差込み溶接部22を図9に示す如く形成した後には、当該溶接部22の径方向外側部位に旋盤等による仕上げ加工を適宜に施すようにする。
【0051】
23は固定部材19に対するピストン15の緩止めを行う止ねじで、該止ねじ23は、図3に示すように固定部材19のおねじ部19Aをピストン15のねじ穴部16B(図3参照)に螺着した状態で、径方向外側からピストン15と固定部材19との間に螺入して取付けられるものである。
【0052】
24は中空ロッド17、連結部材20および固定部材19間の溶接部21,22等を外側から囲繞する筒体としての保護筒で、該保護筒24は、図3に示すように中空ロッド17の固定端17A側、連結部材20および固定部材19の外周側に嵌合して設けられ、例えば突合せ溶接部21および差込み溶接部22等を径方向外側から囲繞して保護するものである。
【0053】
そして、保護筒24の一側(図3中の下端側)は、ピストン15の上端側に当接した状態で固定され、チューブ12内をピストン15と一体に変位するものである。また、保護筒24には、ロッド側油室Bに連通する径方向の油穴24Aが複数(例えば4個)穿設されている。
【0054】
また、保護筒24の他側は筒状なストッパ部24Bとなり、このストッパ部24Bは、中空ロッド17が最大伸長するときにロッドガイド14側に当接して、中空ロッド17の伸長方向に動きを規制するものである。なお、保護筒24は、ピストン15と同一の材料を用いて一体に形成してもよいものである。
【0055】
25は中空ロッド17の固定端17A近傍に形成された複数の径方向穴で、該径方向穴25は、保護筒24の油穴24Aと常時連通するように中空ロッド17の径方向に複数個(例えば4個)穿設されている。そして、各径方向穴25は、各油穴24Aと一緒に後述の外径側通路28をロッド側油室Bに常時連通させるものである。
【0056】
26は中空ロッド17内に同軸をなして設けられた長尺のパイプ部材で、該パイプ部材26は、図2、図3に示す如く固定部材19、連結部材20および中空ロッド17の内周側を軸方向に貫通して延び、その軸方向一側(図3中の下端側)は、ピストン15の段付穴16(嵌合穴部16C)に嵌合されている。
【0057】
また、パイプ部材26の他側(上端側)は、中空ロッド17の内周側を軸方向に延びて後述のロッドヘッド30に固着されている。そして、パイプ部材26内には、ピストン15の連通穴部16Aを介してボトム側油室Aに連通する径方向内側の通路、即ち内径側通路27が形成されている。また、中空ロッド17とパイプ部材26との間には、前記径方向穴25、油穴24Aを介してロッド側油室Bに連通する径方向外側の通路、即ち環状をなす外径側通路28が形成されている。
【0058】
ここで、外径側通路28は、図3に示すように軸方向一側の端部28Aが連結部材20とパイプ部材26との間に環状の通路として形成され、一側の端部28Aは固定部材19の軸方向他側部位(差込み部19C)により閉塞されている。これにより、外径側通路28の端部28Aは、チューブ12内の外径側通路28に対し後述のOリング29等を介して油圧的に遮断された状態に保持されるものである。
【0059】
29はピストン15の段付穴16(嵌合穴部16C)とパイプ部材26との間に設けられたシール部材としてのOリングである。そして、該Oリング29は、前記段付穴16の嵌合穴部16Cとパイプ部材26との間で油液の漏洩を封止することにより、ボトム側油室Aと外径側通路28との間を液密に遮断する機能を有している。
【0060】
30は図2に示す中空ロッド17の突出端17Bに溶接して設けられた取付部としてのロッドヘッドで、該ロッドヘッド30は、中空ロッド17の突出端17Bを伸縮アーム8の外側アーム8A(図1参照)に回動可能に取付けるための所謂取付アイとして機能するものである。また、ロッドヘッド30には、図2に示すように油液の給排口30A,30Bが互いに離間して形成され、一方の給排口30Aは、パイプ部材26内の内径側通路27に連通している。
【0061】
また、他方の給排口30Bは、中空ロッド17とパイプ部材26との間の外径側通路28に連通している。これにより、油圧シリンダ11のロッド側油室Bには、他方の給排口30Bから環状の外径側通路28を介して圧油が給排される。また、ボトム側油室Aには、一方の給排口30Aから内径側通路27を介して圧油が給排されるものである。
【0062】
本実施の形態による油圧シリンダ11は、上述の如き構成を有するもので、次に、油圧シリンダ11の作動について説明する。
【0063】
まず、外部の油圧源(図示せず)からの圧油を、ロッドヘッド30の給排口30A側からパイプ部材26の内径側通路27を介してチューブ12内のボトム側油室A内に供給したときには、ロッド側油室B内の圧油が保護筒24の油穴24A、中空ロッド17の径方向穴25、外径側通路28を通じてロッドヘッド30の給排口30Bから外部に排出される。
【0064】
これによって、ボトム側油室Aとロッド側油室Bとの間には大きな圧力差が生じるため、チューブ12内のピストン15は、ロッド側油室B側に向けて上方へと摺動変位し、中空ロッド17はチューブ12から伸長方向に駆動される。
【0065】
一方、油圧源からの圧油を、ロッドヘッド30の給排口30Bから環状をなす外径側通路28、中空ロッド17の径方向穴25、保護筒24の油穴24Aを通じてチューブ12内のロッド側油室B内に供給したときには、ボトム側油室A内の圧油がパイプ部材26の内径側通路27を介してロッドヘッド30の給排口30Aから外部に排出される。これによって、チューブ12内のピストン15は、ボトム側油室A側に向けて下方へと摺動変位し、中空ロッド17はチューブ12内へと縮小する方向に駆動される。
【0066】
このように、油圧シリンダ11は、チューブ12から中空ロッド17を伸長,縮小させることにより、例えば図1に示す伸縮アーム8の中間アーム8B、内側アーム8Cを、外側アーム8Aから前記ロープを介して上,下方向に伸縮させ、クラムシェルバケット9の昇降動作等を行うものである。
【0067】
ここで、図10は本発明の実施の形態に対する比較例を示している。この比較例では、中空ロッド31の軸方向一側(固定端31A側)に、固定用筒体32を差込み溶接部33の位置で直接的に固着(接合)している。この場合、中空ロッド31は、前述した中空ロッド17とほぼ同様に構成されている。また、固定用筒体32は、前述した筒状の固定部材19とほぼ同様に構成され、おねじ部32Aおよび挿嵌穴32B等を有している。なお、固定用筒体32には、例えば4個の径方向穴34が穿設されている。
【0068】
しかし、このような比較例では、中空ロッド31の固定端31A側に固定用筒体32を差込み溶接するため、両者の溶接箇所である差込み溶接部33には未溶着部が残ることがあり、この部分が起点となって差込み溶接部33には亀裂が発生し易くなるという問題がある。
【0069】
そして、このような問題を解消するために、例えば中空ロッド31の肉厚(径方向の寸法d)を大きく形成した場合には、中空ロッド31の外径寸法を大きくせざるをえず、これに伴って油圧シリンダ全体の外径も大きくなるために、油圧シリンダの小型、軽量化を図る上で障害となってしまう。
【0070】
そこで、本実施の形態では、中空ロッド17の固定端17A側をピストン15に固定するための固定用筒体18を、中空ロッド17よりも内径側で肉厚を大きくした筒状の固定部材19と、中空ロッド17の固定端17Aと固定部材19との間に介在して設けられる筒状の連結部材20とにより構成している。
【0071】
そして、筒状の連結部材20は軸方向の一側を大径部20Aとし、この大径部20A側は、図5に示すように内径側で肉厚(寸法b)を中空ロッド17の肉厚(寸法a)よりも大きくしている。また、連結部材20は軸方向の他側を小径部20Bとし、この小径部20Bの肉厚(寸法c)は、大径部20A側よりも小さく、例えば中空ロッド17の肉厚(寸法a)とほぼ等しくなるように形成している。
【0072】
これにより、筒状の連結部材20は、中空ロッド17よりも肉厚が大きい大径部20A側を筒状の固定部材19に差込み溶接部22により、溶接盛り(溶接面積)を大きくして固着することができ、肉厚の小さい小径部20B側を中空ロッド17の固定端17A側に突合せ溶接部21により固着することができる。
【0073】
このため、連結部材20の大径部20A側と固定部材19との間は、径方向の肉厚を大きくした状態で両者間の差込み溶接部22による溶接面積を大きくでき、溶接強度を高めることができる。また、連結部材20の小径部20B側と中空ロッド17の固定端17Aとの間は、それぞれの肉厚を小さくしても両者間を突合せ溶接部21により接合することができるため、これによって両者間の溶接強度を容易に確保することができる。
【0074】
この結果、中空ロッド17の肉厚(図4に示す寸法a)を、比較例で述べた中空ロッド31(図10に示す寸法d)のように大きくすることなく、筒状の固定部材19と連結部材20とを用いてピストン15内に中空ロッド17の一側を確実に固定することができ、各溶接部21,22等の耐久性、寿命を向上することができる。
【0075】
しかも、中空ロッド17は、可能な限り肉厚(寸法a)を小さくすることができるため、材料費等を削減または低減することができる。そして、中空ロッド17の外径寸法を小さくできるため、チューブ12の外径寸法も小さくすることができ、油圧シリンダ11全体の小型、軽量化を図ることができる。
【0076】
一方、パイプ部材26により中空ロッド17内に形成される環状の外径側通路28は、その軸方向一側の端部28Aをパイプ部材26と連結部材20との間に位置する環状の通路として形成でき、外径側通路28の端部28Aの周壁面を連結部材20の内周面で兼用することができる。そして、外径側通路28の端部28Aは固定部材19の差込み部19Cにより閉塞されているため、外径側通路28の端部28Aを、例えばチューブ12内のボトム側油室Aに対してOリング29等と共に遮断することができる。
【0077】
また、連結部材20の外径側には、中空ロッド17との突合せ溶接部21および固定部材19との差込み溶接部22を一緒に外側から囲繞する保護筒24を設けているので、この保護筒24により二つの溶接部21,22を外側から囲繞して保護できる。
【0078】
また、連結部材20の軸方向の一側には溶接用の開先部20Cを形成し、固定部材19の軸方向の他側に設けた差込み部19Cを、連結部材20側の開先部20Cに対して内径側から差込むことにより、固定部材19側の開先部19Dと連結部材20側の開先部20Cとを軸方向で対向して配置でき、この状態で両者の開先部19D,20C間に溶接盛りを施して差込み溶接部22を形成することができる。
【0079】
そして、この差込み溶接部22は、連結部材20の大径部20A側を筒状の固定部材19に対して差込み溶接により接合する構成としているため、この差込み溶接部22に仮に未溶着部が残ったとしても、両者の肉厚を大きく確保することにより、溶接盛り、溶接面積を大きくとることができ、溶接強度を高めることができる。
【0080】
さらに、連結部材20の小径部20B側は、中空ロッド17の固定端17A側に突合せ溶接部21により接合する構成としているので、例えば図7に示す連結部材20の内周側から突合せ溶接部21に対する内面加工を容易に施すことができ、この突合せ溶接部21の溶接欠陥をなくすことができると共に、両者間の溶接強度を容易に確保することができる。
【0081】
なお、前述した実施の形態では、連結部材20の大径部20A側を筒状の固定部材19に対して差込み溶接により接合する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば突合せ溶接により連結部材20の大径部20A側を筒状の固定部材19に対して接合する構成としてもよいものである。
【0082】
また、前述した実施の形態では、ピストン15と保護筒24とを別部材として形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、保護筒24とピストン15とは、例えば同一の材料を用いて一体に形成してもよいものである。
【0083】
さらに、前述した実施の形態では、シリンダ装置としての油圧シリンダ11を、クラムシェルバケット搭載式の油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばテレスコピック式のブームまたはアームを備えた油圧クレーン等の建設機械に用いるシリンダ装置にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 作業装置
8 伸縮アーム
9 クラムシェルバケット
11 油圧シリンダ(シリンダ装置)
12 チューブ
13 ボトムカバー
14 ロッドガイド
15 ピストン
16 段付穴(貫通穴)
17 中空ロッド
18 固定用筒体
19 筒状の固定部材
19A おねじ部
19C 差込み部
19D,20C,20D 開先部
20 筒状の連結部材
20A 大径部
20B 小径部
21 突合せ溶接部
22 差込み溶接部
24 保護筒(筒体)
26 パイプ部材
27 内径側通路
28 外径側通路
28A 一側の端部
29 Oリング(シール部材)
30 ロッドヘッド(取付部)
30A,30B 給排口
A ボトム側油室(ボトム側室)
B ロッド側油室(ロッド側室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のチューブと、該チューブ内にボトム側室とロッド側室とを画成するため外周側が前記チューブ内に摺動可能に挿嵌され内周側が軸方向に延びる貫通穴となった筒状のピストンと、軸方向の一側が該ピストンに固定して設けられ軸方向の他側が前記チューブ外に突出した筒状の中空ロッドと、該中空ロッドの一側を前記ピストンに固定するため前記ピストンの貫通穴内に配置して設けられる固定用筒体と、該固定用筒体および前記中空ロッドの内周側を軸方向に貫通して延び前記ピストンの貫通穴を介して前記ボトム側室に連通する内径側通路と前記ロッド側室に連通する外径側通路とを形成するパイプ部材とを備えてなるシリンダ装置において、
前記固定用筒体は、前記中空ロッドよりも内径側に肉厚を大きくした筒状体として形成され前記ピストンの貫通穴内に固定される筒状の固定部材と、前記中空ロッドと固定部材との間に設けられ該固定部材を前記中空ロッドの一側に連結する筒状の連結部材とにより構成し、
該連結部材は、軸方向の一側が前記中空ロッドよりも内径側の肉厚が大きい大径部となって前記固定部材に溶接され、軸方向の他側が内径側の肉厚が小さい小径部となって前記中空ロッドの一側に溶接して固着される構成としたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記外径側通路の軸方向一側の端部は前記パイプ部材と連結部材との間に形成され、この端部は前記固定部材により閉塞される構成としてなる請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記連結部材の外径側には、前記固定部材との溶接部および前記中空ロッドとの溶接部を一緒に外側から囲繞する筒体を設ける構成としてなる請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記連結部材の軸方向の一側には溶接用の開先部を形成し、前記固定部材の軸方向の他側には、前記連結部材の開先部に対して内径側から差込まれる差込み部と、該差込み部の外径側に形成され前記連結部材の開先部と軸方向で対向して配置される溶接用の他の開先部とを設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記連結部材は、軸方向の他側に位置する前記小径部側を前記中空ロッドの一側に突合せ溶接により接合する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記連結部材は、軸方向の一側に位置する前記大径部側を前記固定部材に対して差込み溶接により接合する構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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