説明

シルクチロシンの製造方法

【課題】シルクアミノ酸の製造工程で多量発生しているチロシン成分をそのまま分離して回収しながらも、シルクアミノ酸を製造することが可能なチロシンの製造方法を提供する。
【解決手段】蚕繭などを精練し洗浄する準備段階と、蚕繭などを酸によって低分子量で分解させる加水分解段階と、加水分解段階で添加された酸によって酸性化された溶液をアルカリ成分で中和し、pH1.5〜pH3.5の範囲を保つように転換させる1次中和段階と、1次中和された溶液から不純物成分を除去する異物除去段階と、異物を除去した溶液を再びアルカリ成分で中和し、pH6.0〜pH8.0の範囲を保つように転換させる2次中和段階と、2次中和された溶液からシルクアミノ酸成分とチロシン成分とを互いに分離させてチロシン成分を抽出するチロシン成分抽出段階と、抽出されたチロシン成分を酸またはアルカリで溶解および精製して再び回収する仕上げ段階とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンの製造方法に係り、さらに詳しくは、シルクアミノ酸を生産する過程で不純物として取り扱われて捨てられていたチロシン成分を別途に分離して回収することにより、シルクチロシンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、チロシンは、シルクアミノ酸の一種であって、蚕繭、養蚕屑物または副蚕糸など(以下「蚕繭など」という。)のフィブロインタンパク質に11%程度、セリシンタンパク質に4%程度存在する。
【0003】
チロシンは、絹フィブロイン、カゼイン、インシュリンに多く存在するが、L−チロシンは、アドレナリン(副腎皮質ホルモン)、チロシン(甲状腺ホルモン)、メラニン色素などのホルモン生合成に重要な役割を果たし、小児の成長発育、老人性痴呆にも効果があるものとして知られている。
【0004】
シルクアミノ酸は、17〜20種のアミノ酸から構成されており、身体の細胞組織を活性化させる基本物質であって、通常、蚕繭などに存在するフィブロインタンパク質を酸加水分解させて製造されている。
【0005】
通常、シルクアミノ酸の製造方法は、蚕繭などを精練し洗浄する準備段階と、前記蚕繭などを酸によって低分子量で分解させる加水分解段階と、加水分解段階で添加された酸によって酸性化された溶液を中性に転換させる中和段階と、加水分解の際に生成される色素および異臭を除去する脱色および脱臭段階と、脱色および脱臭された溶液の未分解物、蛹などを除去する濾過段階と、不純物の除去された溶液から塩を除去する脱塩段階と、脱塩された溶液を濃縮する濃縮段階と、濃縮された溶液を乾燥させる乾燥段階と、を含んでいる。
【0006】
従来の通常のシルクアミノ酸の製造方法は、前記中和段階で直接中和法を使用することにより、アミノ酸の等電点によって沈澱が発生し、油脂成分含有タンパク質が塩酸と反応してクロロヒドリンを生成するが、その中でも人体に極めて有害なMCPD(3−chloro,2−propane diol)とDCP(1,3−dichloro−2−propanal)を生成するので、好ましくない欠点があった。
【0007】
そこで、本発明者は、前述したシルクアミノ酸の製造方法を改良して前記有害成分を源泉的に発生させないようにし、このように改良された製造方法を特許出願して韓国特許登録第443785号(特許文献1)で特許権を獲得した。
【0008】
ところが、特許文献1によるシルクアミノ酸の製造方法による場合には、中和された溶液中に多量析出されているチロシン成分が製造工程の特性によって不純物と共に捨てられるしかなかった。これは、シルクアミノ酸を製造するために、蚕繭などを加水分解させた溶液中に多量に含有されているチロシン成分を全く活用することができないものであって、約10%の製造収率を損失し、かつ、天然資源の活用を放棄するのと同然のことである。
【0009】
このように従来の通常のシルクアミノ酸の製造方法は、前記蚕繭などからシルクアミノ酸を製造する過程でチロシン成分が豊富に含有されているにも拘らず、このような有用な成分を工程上の特性により廃棄処分されるという欠点があった。
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許第443785号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、シルクアミノ酸の製造工程で多量発生しているチロシン成分をそのまま分離して回収しながらも、依然としてシルクアミノ酸を製造することが可能な、新規かつ改良されたシルクチロシンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、蚕繭、養蚕屑物または副蚕糸を精練し洗浄して加水分解することにより、チロシンを製造する方法において、前記精練された蚕繭、養蚕屑物または副蚕糸を、酸によって低分子量で分解させる加水分解段階と、加水分解段階で添加された酸によって酸性化された溶液を、アルカリ成分で中和し、pH1.5〜pH3.5の範囲を保つように転換させる1次中和段階と、1次中和された溶液から不純物成分を除去する異物除去段階と、異物を除去した溶液を、再びアルカリ成分で中和し、pH6.0〜pH8.0の範囲を保つように転換させる2次中和段階と、2次中和された溶液からシルクアミノ酸成分とチロシン成分とをそれぞれ分離してチロシン成分を抽出するチロシン成分抽出段階と、抽出されたチロシン成分を酸またはアルカリで溶解および精製して再び回収する仕上げ段階と、を含むシルクチロシンの製造方法が提供される。
【0013】
前記1次中和段階では、アルカリ成分として水溶液状態の水酸化ナトリウムを使用し、pH1.8〜pH2.5の範囲を保つように前記酸性化された溶液を中和してもよい。
【0014】
前記2次中和段階では、アルカリ成分として水溶液状態の水酸化ナトリウムを使用し、pH6.5〜pH7.5の範囲を保つように前記異物を除去した溶液を中和してもよい。
【0015】
前記チロシン成分抽出段階では、前記2次中和された溶液を遠心分離機または濾過器に通過させて前記チロシン成分を抽出し、前記濾過器を用いる場合には、1.0μm以下のろ紙を用いて濾過してもよい。
【0016】
前記仕上げ段階は、前記チロシン成分抽出段階で抽出されたチロシンを塩酸で再び溶解させ、前記チロシンに付着していた他のアミノ酸および不純物を除去する異物除去過程をさらに含んでもよい。
【0017】
前記仕上げ段階は、前記異物除去過程の後、前記塩酸溶液中に溶解されているチロシン成分を再び抽出し、抽出した前記チロシン成分を再び濾過する2次抽出過程を更に含んでもよい。
【0018】
前記仕上げ段階は、前記2次抽出過程の後、2次回収されたチロシンを精製水で洗浄し、中和過程で発生した塩分を除去する洗浄過程を更に含んでもよい。
【0019】
前記仕上げ段階は、前記洗浄過程の後、洗浄されたチロシン固形分の3〜5倍の精製水を前記チロシンに投入し、前記精製水が投入された前記チロシンを60℃〜90℃で20〜60分間殺菌および攪拌し、殺菌および攪拌過程を済ませた後、チロシン液を乾燥させて最終的なチロシンを回収する最終回収過程を更に含んでもよい。
【0020】
本発明において、前記チロシン成分は、前記仕上げ段階を一層精巧且つ細密な工程を経て高純度のチロシンを得ることができる。また、本発明において、シルクチロシンとは、シルクアミノ酸から得られたチロシンを意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るチロシンの製造方法は、シルクアミノ酸の製造過程で不純物と共に捨てられていた有用な成分を回収することができるので、資源の活用を大幅向上させるという利点がある。
【0022】
また、本発明は、シルクアミノ酸の製造方法としても活用できるので、シルクアミノ酸を製造し、これと同時にシルクチロシンを製造することができるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
1)事前準備段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、蚕繭などを精練し洗浄する準備段階を含む。
【0025】
本発明において、原料としては、蚕繭内の蛹を除去した切り繭、または糸つむぎが不可能な薄い蚕繭、絹綿、絹綿、生皮苧などの養蚕屑物を使用する。まず、切り繭または養蚕屑物を洗浄、精練し、その中に含有されたセリシン(Sericin)成分を除去する。セリシン成分(30%)は、フィブロイン(70%)と共に蚕繭に含有された主成分であるが、加水分解以後の工程において多量の泡を発生させて工程の進行に大きい支障をもたらす。また、セリシンの主成分であるセリンは、タンパク質の加水分解途中でラセミ化を起こすので、前処理精練工程によってセリシンを除去する。
【0026】
精練の際に、溶媒としては石鹸、柔和剤、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、熱水などを使用することができるが、人体に最も危険の少ない物質である重炭酸ナトリウム(NaHCO)溶液または熱水を使用することが好ましい。前記精練の際に、溶媒として約2%重炭酸ナトリウムを用いることがさらに好ましく、溶液を攪拌しながら約1時間程度加熱した後、精練された蚕繭などを取り出す。
【0027】
精練された蚕繭などを清浄な熱水で約30分ずつ洗浄し、このような洗浄を3回程度繰り返し行う。洗浄された蚕繭などを、遠心分離法によって脱水する。脱水された蚕繭などの含水率は、50%程度であることが好ましい。脱水された蚕繭などは、乾燥させて最終含水率が10%以下となるようにする。
【0028】
2)加水分解段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、前記蚕繭などを酸によって低分子量で分解させる加水分解段階を含む。
【0029】
本発明において、最終含水率10%以下の蚕繭などを正確に秤量し、その約10倍数に該当する塩酸溶液と共に、コンデンサ付き反応容器に投入した後、約105℃〜120℃で40時間〜48時間程度加熱する。加水分解工程で使用する塩酸は、例えば、2N濃度の塩酸溶液を使用することが好ましい。
【0030】
塩酸の濃度が高ければ、分解速度は速いが、加水分解後の溶液の色相が濃くなり、人体有害物質であるMCPDおよびDCPが生成され易い。また、塩酸の濃度が低ければ、分解速度が遅い。この際、前記コンデンサには冷却水を供給し、加熱の際に蒸発する塩酸溶液を凝縮させて再び加水分解容器に還流させる。冷却水を供給しながら加熱することにより、短時間内に塩酸溶液が全て蒸発して加水分解が不可能となることを防止することができる。
【0031】
3)1次酸性化中和段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、加水分解段階で添加された塩酸によって酸性化された溶液をアルカリ成分で中和し、pH1.5〜pH3.5の範囲を保つようにする1次中和段階を含む。
【0032】
本発明において、加水分解された溶液は、1次的にアルカリ成分によって中和される。中和剤としては、通常用いられる塩基を使用することができる。本発明では、その中でも水酸化ナトリウム(NaOH)を使用することがさらに好ましい。これは、中和段階後、人体に有害ではなく、脱塩が容易な塩化ナトリウムを生成するためである。
【0033】
本発明において、前記水酸化ナトリウムは、1次中和段階でpH1.5〜pH3.5程度の範囲を保つように投入されることが好ましく、さらに好ましくはpH1.8〜pH2.5程度の範囲を保つように投入される。
【0034】
本発明は、前記加水分解された溶液を、1次的にpH1.5〜pH3.5の範囲で中和させる点にその特徴がある。その理由は、前記加水分解された溶液からチロシン成分が溶解されている状態で異物を分離して除去する下記異物除去段階において、前記チロシン成分が異物と共に除去されることを防止するためである。さらに具体的に説明すると、チロシン成分は、通常pH6.5〜pH7.5程度の範囲で最もよく析出されるので、pH1.5〜pH3.5の範囲では析出されない。したがって、次の段階で、加水分解液から不溶性異物のみを分離除去することができる。
【0035】
本発明において、前記水酸化ナトリウムは、結晶状態にして使用するよりは、水溶液状態にして使用することがさらに好ましい。
【0036】
4)異物除去段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、1次中和された溶液から不純物成分を除去する異物除去段階を含む。
【0037】
本発明において、異物除去段階は、1次中和された溶液をpH1.5〜pH3.5程度の範囲に調節した状態で行われる。本発明は、中和された溶液を室温で約6時間以上放置した後、上澄み液と沈澱物とをそれぞれ1次的に分離させる。上澄み液を移送させると、容器内に沈殿物が残り、前記沈殿物から活性炭または珪素土などの濾過補助剤を用いて異物を除去する。濾過補助剤は、微粒子の形態が好ましく、その投入量は、総溶液に対して0.1〜1.0%(W/V)、さらに具体的には0.5%(W/V)程度を投入することが好ましい。攪拌時間は30分〜60分程度が好ましく、中和処理された溶液に応じて適宜変更することができる。
【0038】
本発明において、異物が除去された溶液は、再び前記上澄み液と混合され、下記2次中和段階に進む。
【0039】
5)2次中性化中和段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、異物を除去した溶液を再びアルカリ成分で中和し、pH6.0〜pH8.0の範囲を保つようにする2次中和段階を含む。
【0040】
本発明において、異物が除去された加水分解溶液は、2次的にアルカリ成分によって再び中和される。中和剤としては、やはり通常用いられる塩基を使用することができる。本発明は、その中でも水酸化ナトリウム(NaOH)を使用することがさらに好ましい。これは、中和段階後、人体に有害ではなく、脱塩が容易な塩化ナトリウムを生成するためである。
【0041】
本発明において、前記水酸化ナトリウムは、2次中和段階でpH6.0〜pH8.0程度の範囲を保つように投入することが好ましく、さらに好ましくはpH6.5〜pH7.5程度の範囲を保つように投入される。
【0042】
本発明は、前記異物が除去された加水分解溶液を、2次的にpH6.0〜pH8.0の範囲で再び中和させる点にその特徴がある。その理由は、前記加水分解溶液中に存在するチロシン成分を、1次中和段階では加水分解溶液中に溶解された状態に維持させる反面、2次中和段階を経た以後には、加水分解溶液から析出されるようにすることにより、チロシンの抽出を容易に行うようにするためである。
【0043】
本発明において、前記水酸化ナトリウムは、結晶状態にして使用するよりは、水溶液状態にして使用することがさらに好ましい。また、前記中和剤としての水酸化ナトリウムは、約30%〜40%水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。
【0044】
6)チロシン成分の抽出段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、2次中和された溶液からシルクアミノ酸成分とチロシン成分とをそれぞれ分離させてチロシン成分を抽出するチロシン成分抽出段階を含む。
【0045】
本発明は、2次中和された溶液を、遠心分離機または濾過器に通過させて、チロシン成分を抽出する。前記中和された溶液は、チロシン成分が析出されている状態なので、前記チロシン成分を中和された溶液から分離させるために、遠心分離機または濾過器を使用することが好ましい。また、濾過器では、目の大きさが1.0μm以下の濾紙を用いることが好ましい。
【0046】
本発明において、前記2次中和された溶液を濾過器に通過させてチロシンを抽出し、抽出されたチロシンは収得し、次の段階に移行する。また、前記濾過器を通過した濾過液は、以後、シルクアミノ酸を抽出して製造するための工程に移送する。
【0047】
7)最終仕上げ段階
本発明に係るチロシンの製造方法は、抽出されたチロシン成分を溶解させ、再び回収する仕上げ段階を含む。
【0048】
本発明は、抽出されたチロシン成分をさらに精製し、不純物などを除去するために、仕上げ段階を行う。前記チロシンの固形分には、チロシン以外の他のアミノ酸および不純物が含まれているので、前記チロシンを液状にして再び溶解させた後、除去することが好ましい。前記チロシンは、1Nアルカリまたは2N酸溶液で溶解させて精製することができ、2N塩酸溶液で溶解させることが最も好ましい。
【0049】
本発明では、前記溶解過程を行った後、チロシン固形分に付着されていた他のアミノ酸および不純物を除去する異物除去過程を行うことが好ましい。前記異物除去過程は、前記塩酸溶液中に活性炭を投入して濾過器を用いて濾過し、濾過された液(濾液)について1.0μm以下のフィルターを用いて残余不純物を除去することが好ましい。
【0050】
本発明は、前記塩酸溶液中に溶解しているチロシン成分を再び析出させ、これを再び濾過させる2次抽出過程を行うことが好ましい。前記2次抽出方法は、前記塩酸溶液をアルカリ成分で再び中和させてpH6.0〜pH8.0程度に維持させ、その状態でチロシン成分を析出させた後、再び濾過することが好ましい。これは、チロシン成分がpH6.5〜pH7.5程度で最も析出され易い性質を持っている点を利用したものであり、前記アルカリ成分は、やはり水酸化ナトリウムが最適である。その理由は、前述した通りである。また、チロシン成分の析出過程は、通常の室温で行うことができ、さらに好ましくは25℃〜30℃程度で行うことができる。
【0051】
本発明は、中和された溶液中で析出されたチロシンを再び濾過させて2次回収することが好ましい。濾過方法およびその条件は、前述と同様である。よって、濾過器は1.0μm以下のろ紙を用いることが好ましい。
【0052】
本発明は、2次回収されたチロシンを精製水で洗浄し、中和過程で発生した塩分を除去する洗浄過程を行うことが好ましい。析出したチロシン固形分は、その表面に必然的に中和塩が含まれている可能性があるので、これらを除去するためである。洗浄後、塩度は0.3%以下に維持することが好ましい。
【0053】
本発明は、洗浄過程を行った後、チロシンを最終的に得る最終回収過程を行うことが好ましい。このために、前記チロシンを、チロシン固形分の3〜5倍の精製水に投入し、これらを60℃〜90℃で20分〜60分間殺菌および攪拌することが好ましい。殺菌および攪拌過程を済ませた後、チロシン液を乾燥させて最終的なシルクチロシンを回収する。
【0054】
このような乾燥過程を経ると、殆ど純粋なシルクチロシンを得ることができる。得られたシルクチロシンは、適当な容器に充填・包装され、使用目的に応じて適切に使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、下記実施例は、本発明の技術思想を当技術分野における通常の知識を有する者がより容易に理解し得るようにするためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
(実施例)
セリシン成分を除去した精練蚕繭500kgを準備した。前記蚕繭500kgに、2N塩酸溶液5000Lをコンデンサ付きスチームジャケット反応器に均一に投入し、前記反応器の内部温度を平均115℃に維持しながら、40時間加水分解させた。加水分解が完了すると、55℃以下に冷却して、33%水酸化ナトリウム溶液600Lを注入し、30分間攪拌してpH2.0となるようにした後、6時間以上室温で放置し、上澄み液と沈澱物に分離されるようにした。
【0057】
中和液の2/3の上澄み液を緩衝タンクに移送した後、10kgの活性炭を投入し、45間攪拌した後、プリコートフィルターの脱液槽に移送して、ろ過紙で濾過した。濾過された液は、前記沈澱分離過程の上澄み液移送タンクである緩衝タンクに送り、濾過ケーキは、別途に回収した。緩衝タンクに33%水酸化ナトリウム350Lを加えて1時間攪拌し、pH6.8となるようにした。チロシンの析出が完了すると、プリコートキャンドルフィルターで濾過させた。
【0058】
脱液槽からケーキ状態で回収されたチロシンは、2次にわたって80kg程度を回収した。この際、含水率が50%であることを勘案すると、原料に対して75%程度のチロシンを回収したこととなる。濾過された液は、シルクアミノ酸の生産のための工程に移送させて、既存の工程で行うようにした。
【0059】
回収したケーキ状態のチロシンを精製するために、2N塩酸350Lに溶解させ、活性炭(200mesh、95%)5kgを投入し、30分間攪拌、脱色、脱臭および不純物を吸着させ濾過した。その後、濾過されたチロシン溶解液を、1N水酸化ナトリウムを用いてpH6.5に中和させ、チロシンを再析出させた。
【0060】
中和塩を除去するために精製水で懸濁させて3回濾過し、塩度を0.3%以下に処理し、50%含水の60kg/wetチロシンを得た。旋盤熱風乾燥機に1〜2の厚さに広げ、80℃で24時間乾燥させてチロシンケーキを得た。これをパワーミル粉砕機で粉砕し、最終水分3%以下の約30kgに達するシルクチロシンを生産した。総収得率は平均50%以上であり、その含量は90%程度であった。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蚕繭、養蚕屑物または副蚕糸を精練し洗浄して加水分解することにより、チロシンを製造する方法において、
前記精練された蚕繭、養蚕屑物または副蚕糸を、酸によって低分子量で分解させる加水分解段階と、
加水分解段階で添加された酸によって酸性化された溶液を、アルカリ成分で中和し、pH1.5〜pH3.5の範囲を保つように転換させる1次中和段階と、
1次中和された溶液から不純物成分を除去する異物除去段階と、
異物を除去した溶液を、再びアルカリ成分で中和し、pH6.0〜pH8.0の範囲を保つように転換させる2次中和段階と、
2次中和された溶液からシルクアミノ酸成分とチロシン成分とをそれぞれ分離してチロシン成分を抽出するチロシン成分抽出段階と、
抽出されたチロシン成分を酸またはアルカリで溶解および精製して再び回収する仕上げ段階と、
を含むことを特徴とする、シルクチロシンの製造方法。
【請求項2】
前記1次中和段階では、
アルカリ成分として水溶液状態の水酸化ナトリウムを使用し、
pH1.8〜pH2.5の範囲を保つように前記酸性化された溶液を中和する
ことを特徴とする、請求項1に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項3】
前記2次中和段階では、
アルカリ成分として水溶液状態の水酸化ナトリウムを使用し、
pH6.5〜pH7.5の範囲を保つように前記異物を除去した溶液を中和する
ことを特徴とする、請求項1に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項4】
前記チロシン成分抽出段階では、
前記2次中和された溶液を遠心分離機または濾過器に通過させて前記チロシン成分を抽出し、
前記濾過器を用いる場合には、1.0μm以下のろ紙を用いて濾過する
ことを特徴とする、請求項1に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項5】
前記仕上げ段階は、
前記チロシン成分抽出段階で抽出されたチロシンを塩酸で再び溶解させ、前記チロシンに付着していた他のアミノ酸および不純物を除去する異物除去過程をさらに含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項6】
前記仕上げ段階は、
前記異物除去過程の後、前記塩酸溶液中に溶解されているチロシン成分を再び抽出し、抽出した前記チロシン成分を再び濾過する2次抽出過程を更に含む
ことを特徴とする、請求項5に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項7】
前記仕上げ段階は、
前記2次抽出過程の後、2次回収されたチロシンを精製水で洗浄し、中和過程で発生した塩分を除去する洗浄過程を更に含む
ことを特徴とする、請求項6に記載のシルクチロシンの製造方法。
【請求項8】
前記仕上げ段階は、
前記洗浄過程の後、洗浄されたチロシン固形分の3〜5倍の精製水を前記チロシンに投入し、前記精製水が投入された前記チロシンを60℃〜90℃で20〜60分間殺菌および攪拌し、殺菌および攪拌過程を済ませた後、チロシン液を乾燥させて最終的なチロシンを回収する最終回収過程を更に含む
ことを特徴とする、請求項7に記載のシルクチロシンの製造方法。

【公開番号】特開2009−13153(P2009−13153A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211391(P2007−211391)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(507274146)ワールドウェイ カンパニーリミテッド (1)
【Fターム(参考)】