説明

シンチレータ、蛍光板及びそれを用いたX線検出器

【課題】高感度のシンチレータ及びそれを用いたX線検出器を提供する。本発明によるシンチレータ及びそれを用いたX線検出器は、例えば工業用非破壊検査用、医療用X線撮影用のX線検出器として特に好ましいものである。
【解決手段】光電変換素子に付設される、有機高分子材料と蛍光体粉末とから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末が平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末の充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であることを特徴とするシンチレータ、蛍光板及びそれを用いたX線検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータ及びそれを用いたX線検出器に関すものであって、特に工業用非破壊検査装置あるいは医療用X線診断装置に適したシンチレータ及びそれを用いたX線検出器に関すものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物に放射線を照射し、対象物を透過した放射線の強度分布を検出して対象物の放射線画像を得る装置は、工業用の非破壊検査や医療診断の場で広く一般に利用されている。このような撮影の一般的な方法として、増感紙/フィルム法が従来から用いられている。この方法は、X線を照射すると可視光に発光する蛍光体シート(増感紙)を、感光性フィルムの両面に密着させて、対象物を透過したX線を蛍光体で発光させ、感光性フィルムにより光を捉え、フィルム上に形成された潜像を化学処理で現像することによって可視化することからなるものである。
【0003】
一方、近年のデジタル技術の進歩により、放射線画像を電気信号に変換し、この電気信号を画像処理した後に、可視画像としてCRT等に再生することにより高画質の放射線画像を得る方式が求められている。このような放射線画像を電気信号に変換する方法としては、放射線の透過画像を一旦蛍光体中に潜像として蓄積して、後にレーザー光等の励起光を照射することにより潜像を光電的に読み出し、可視像として出力する放射線画像記録再生システム(CR:Computed Radiography)が提案されている。
また、光電膜、加速電極及び蛍光膜を設けた大きな真空管と1インチ程度のCCDカメラを使用し、直接画像をデジタル化するイメージインテンシファイアTV(II−TV)方式が実現されている。
【0004】
また、近年の半導体プロセス技術の進歩に伴い、半導体センサを使用して同様に放射線画像を撮影する装置が開発されている。この種のシステムは、従来の感光性フィルムを用いる放射線写真システムと比較して、非常に広いダイナミックレンジを有しており、放射線の露光量の変動に影響され難い放射線画像を得ることができる利点を有している。更には、化学的処理を不要とし即時的に出力画像を得ることができる利点もある。
【0005】
その1つの方式として、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(a−Si TFT)を用いたX線像を直接電気信号に変換する直接変換方式のほかに、X線像を一旦光信号に変換し、変換した光信号を電気信号に変換するいわゆる間接変換方式のX線検出器が提案されている。
【0006】
従来、間接変換方式のX線検出器には、X線像を光信号に変換するために使用する放射線蛍光板が用いられている。例えば、特開2004−317300号公報(特許文献1)では、放射線蛍光板は支持体上にGdS:Tbなどの蛍光体からなる蛍光体層を付設しているが、光電変換素子との組み合わせによる感度は従来の増感紙/フィルム系、CR、II−TVと比べ同等あるいはそれ以下である。
【0007】
また、工業用途の食品検査などではX線ラインセンサーが使用されている。X線ラインセンサーは光電変換素子を横に一列に並べて蛍光板を貼り付けており、食品が運ばれてくるコンベヤーにX線管と共に設置し、流れてくる食品に対して連続的に画像を出しながら検査していく装置である。その用途からX線使用量は激しく、X線管の修理やメンテナンス、X線管の交換が頻繁に起こっている。したがって、蛍光板の感度を高くしてX線管の負担を軽減したいという要求が強く残っている。
【特許文献1】特開2004−317300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の放射線蛍光板では光電変換素子との組み合わせによる感度は不充分であった。
そこで、本発明は、人体に悪影響を及ぼさない、安定性のある材料を検討し、さらに感度を向上させることのできるシンチレータ及びそれを用いたX線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるシンチレータは、光電変換素子に付設される、有機高分子材料と蛍光体粉末とから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末が平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末の充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であること、を特徴とするものである。
【0010】
このような本発明によるシンチレータは、好ましい態様として、前記蛍光体が希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体であるもの、を包含する。
【0011】
そして、本発明による蛍光板は、少なくとも一層の上記のシンチレータと、支持体とからなることを特徴とするもの、である。
【0012】
このような本発明による蛍光板は、好ましい態様として、前記支持体が反射率80%以上の反射材であるもの、を包含する。
【0013】
そして、本発明によるX線検出器は、上記のシンチレータと、このシンチレータ上に配置された複数の光電変換膜及び画素電極とを具することを特徴とするもの、である。
【0014】
このような本発明によるX線検出器は、好ましい態様として、上記のシンチレータのシンチレータ面以外の表面に反射率80%以上の反射層が設けられたもの、を包含する。
【0015】
このような本発明によるX線検出器は、好ましい態様として、前記X線検出器はX線ラインセンサーであるもの、を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるシンチレータは、光電変換素子に付設される、有機高分子材料と蛍光体粉末とから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末が平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末の充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であるものであることから、感度が優れたものである。 よって、本発明によるシンチレータおよびそれを用いたX線検出器によれば、被検査対象物をより高精度で検査することが可能になる。
【0017】
このような感度が優れた本発明によるシンチレータおよびそれを用いたX線検出器によれば、従来よりもX線照射の強度を低くすることができるので、X線の被爆線量の低減およびX線照射装置の長寿命化を図ることができ、かつ消費エネルギーの低減化を図ることができる。
【0018】
このような本発明によるシンチレータ及びそれを用いたX線検出器は、その優れて特性を活かして、例えば工業用非破壊検査用および医療用X線撮影用のX線検出器として、特に好ましいものである。
本発明では、平均粒径25μm以上50μm以下という比較的に粒径が大きい蛍光体粒子を、充填率30%以上65%以下という比較的低い充填率で用いるものであるが、このようなことによって従来より高い感度が得られたことは思いがけないことである。すなわち、シンチレータ層中に存在する蛍光体量が同一である場合、粒径が大きい蛍光体粒子を用いる際には、粒径が小さい蛍光体粒子を用いたときに比べて、蛍光体粒子全体の表面積面が減少して、X線照射を受ける粒子表面積およびX線を可視光に変換する面積ないし発光面積が減少すると考えられるにも関わらず、本発明によればその反対に高い感度が得られるのである。また、X線を可視光に変換可能な蛍光粉末の充填率が高い程一般に感度が向上すると考えられるにも関わらず、本発明によれば30%以上65%以下という比較的低い充填率で、より高い感度が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、X線検査装置を用いたシステムの概念図を示すものである。
図1において、X線発生装置3から出射されたX線は被写体4に照射され、この被写体4を透過したX線がX線画像撮影装置1によって検出されるようになっている。このX線画像撮影装置1には、少なくとも1層のX線を可視光に変換するシンチレータ層と、このシンチレータ層上に配置された複数の光電変換素子とからなるX線検出器2が内蔵されている。これらの複数の光電変換素子は、好ましくはライン状あるいは二次元の格子状に配置されていて、各光電変換素子の出力から得られた画像信号は、画像処理手段5において画像処理され、モニタ6に被写体4のX線画像として表示されるようになっている。
【0020】
本発明によるシンチレータ、蛍光板およびX線検査装置は、例えば上記図1に示されるX線検出器2に適用可能なものである。
【0021】
図2は、本発明によるシンチレータ、蛍光板およびX線検査装置の概略断面図を示すものである。図2に示される本発明によるシンチレータ7は、有機高分子材料7aと蛍光体粉末7bとから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末7bが平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末7bの充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であるものである。このシンチレータ7の一方の表面には光電変換素子8が配置されている。そして、光電変換素子8には配線10を介して電気信号を処理する回路基板(図示せず)が接続されている。
【0022】
図2において、被写体を透過して、シンチレータ7の左方向からシンチレータ7に到達したX線は、このシンチレータ7によって可視光に変換され、この変換された可視光は光電変換素子8によって電気信号に変換される。複数の光電変換素子8を配置し、これらの光電変換素子から出力された電気信号を利用することによって、シンチレータ7へのX線照射パターン、即ち、被写体のX線透過パターン、を検出することができる。
【0023】
シンチレータ7には、プラスチックや不織布などからなる支持体9を設けることができる。本発明による蛍光板は、シンチレータ7と支持体9とからなるものである。
【0024】
なお、支持体9の材料およびその形成位置は任意であって、本発明によるシンチレータ、蛍光板またはX線検査装置の目的および機能等を考慮して適宜定めることができる。本発明において特に好ましい支持体9の具体例としては、反射率80%以上、特に90%以上、の反射材を挙げることができる。なお、本発明における反射率とは全反射率とする。
【0025】
図2に示されるように、シンチレータ7によってX線から変換された可視光を、光電変換素子8方向に反射させるような位置に反射板を設けることにより、光電変換素子8の検出領域における可視光線量が増大して、その結果、X線検出定器2のX線検出感度が向上し、X線照射パターン、即ち、被写体のX線透過パターン、の解像度が向上する。
【0026】
なお、支持体は、場合により、シンチレータ7のX線照射面側に形成することができる。例えば、シンチレータ7のX線照射面側に反射材11を形成した場合、反射材11はX線を透過させる一方で、シンチレータ7によってX線から変換された可視光については光電変換素子8方向に反射させるので、光電変換素子8の検出領域における可視光線量をより増大させることができる。
【0027】
また、反射材は、シンチレータ7のシンチレータ面以外の表面(即ち、X線の可視光への変換に関与しない面)、例えばX線検出定器2の側面12、13あるいは複数の光電変換素子8の境界部14に、必要に応じて設けることができる。
【0028】
本発明によるX線検出器には、必要に応じて、上記の各材料を複数同時に形成することができ、また、上記以外の他の材料を形成することができる。そのような必要に応じて形成される他の材料の好ましい具体例としては、例えばシンチレータ7と光電変換素子8との間に形成される光制御層、例えばフィルター層(図示せず)、およびシンチレータ7の表面に形成される保護層15を挙げることができる。
【0029】
<シンチレータ>
本発明によるシンチレータは、上記の通り、光電変換素子に付設される、有機高分子材料と蛍光体粉末とから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末が平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末の充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であること、を特徴とするものである。
【0030】
蛍光体粉体
本発明に用いられる上記の蛍光体に関しては、特に制限はなく、例えば、CaWO、YTaO、YTaO:Nb、LaOBr:Tm、BaSO:Pb、ZnS:Ag、BaSO:Eu、YTaO:Tm、BaFCl:Eu、BaF(Br,I):Eu、GdS:Tb、YS:Tb、LaS:Tb、(Y,Gd)S:Tb、また、(Y,Gd)S:Tb,Tmなどの公知の蛍光体を、単独あるいは組合せて用いることができる。
【0031】
本発明のシンチレータでは、特に下記の式で表わされる希土類オキシカルコゲナイド系の蛍光体を用いることが好ましい。
X:Y
[ただし、Mはイットリウム、ランタン、ガドリニウム、及びルテチウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、そしてXは硫黄、セレン、及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Yはテルビウム、ユーロピウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である。]
また、Y成分は、0.01mol%以上、3.5mol%以下が好ましい。
本発明においてさらに好ましい蛍光体は、光電変換素子の受光感度分布にあった発光を示す蛍光体である。図3に示すように、光電変換素子でよく使用されるa−Siは、600nm付近を受光ピークとするブロードな受光感度分布のものであり、また、同様に光電変換素子でよく使用される単結晶Siは、700〜800nmを受光ピークとするブロードな受光感度分布を示すものものである。よって、そのような光電変換素子を用いる場合には、X線を上記波長領域の可視光に効率的に変換可能な蛍光体を使用することが好ましい。これにマッチングする発光効率の高い蛍光体としては、希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体、ユーロピウム付活希土類酸硫化物蛍光体が挙げられ、さらに好ましくはユーロピウム付活ガドリニウム酸硫化物蛍光体,ユーロピウム付活ルテチウム酸硫化物蛍光体,ユーロピウム付活ランタン酸硫化物蛍光体が挙げられる。
【0032】
上述したような発光効率が高く、しかも光電変換素子の受光感度分布にマッチングした蛍光体を用いた場合に特に好適であるが、従来使用されているテルビウム付活ガドリニウム酸硫化物蛍光体に混合使用してもよい。
【0033】
また、蛍光体粉体の平均粒径は、25μm以上50μm以下、好ましくは25μm以上40μm以下、特に好ましくは28μm以上40μm以下、である。平均粒径が25μm未満である場合には十分な感度が得られないので好ましくない。なお、平均粒径50μm超過の蛍光体は製造が難しいので製造性の点から好ましいとは言えない。
【0034】
蛍光粉末の充填率は、30%以上65%以下、好ましくは40%以上60%以下、特に好ましくは45%以上55%以下、である。この充填率が30%未満である場合には蛍光体の存在が疎になりすぎ、十分な発光が得られず、感度不十分となるので好ましくなく、一方、65%超過の場合には蛍光体の存在が密になりすぎ、X線により発光した光が透過せず、感度不十分となるので好ましくない。
【0035】
本発明によるシンチレータの層厚は、400μm以上1000μm以下、好ましくは400μm以上800μm以下、特に好ましくは450μm以上650μm以下、である。層厚が400μm未満である場合には薄すぎて、蛍光体の発光量が十分ではなく、感度不十分となるので好ましくなく、一方、1000μm超過の場合には厚すぎて、X線により発光した光が透過せず、感度不十分となるので好ましくない。
【0036】
有機高分子材料
有機高分子材料としては、前記の蛍光体粉末を分散させかつこの分散状態をX線検出器の使用環境において良好に維持することができ、本発明によるシンチレータを形成可能な任意の材料を用いることができる。そのような有機高分子材料の好ましい具体例としては、例えば硝化綿(ニトロセルロース)、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、綿状ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン−塩化ビニルポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂などが挙げられる。この中で特に好ましいものは、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂である。
【0037】
上記の各有機高分子材料は、それぞれ単独で用いることができ、また二種以上を用いることができる。更には、必要に応じ、各種の有機溶剤を併用することもできる。
【0038】
蛍光体塗布溶液に使用する好ましい有機溶剤としては、例えばエタノール、メチルエチルエーテル、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチルエーテル、キシレンなどを挙げることができる。なお、必要に応じて、フタル酸、ステアリン酸などの分散剤や燐酸トリフェニル、フタル酸ジエチルなどの可塑剤を添加してもよい。
【0039】
シンチレータの製作
本発明によるシンチレータを好ましい製作方法としては、(イ)上記蛍光体と有機高分子材料を粉末の状態で混合し、有機高分子材料の融点付近の温度でプレス加工を行い、光電変換素子と一致する形状に加工する方法と、(ロ)支持体(例えば反射層となるフィルム)上に蛍光体塗布溶液を塗布する一般的な蛍光板製造法を挙げることができる。
【0040】
このとき、蛍光体粉末の充填率が30%以上65%以下でありかつ層厚が400μm以上1000μm以下である本発明によるシンチレータが得られるように、各種の製作条件等を定めることができる。
ここで、蛍光体粉末の充填率(P)Pは以下の式に基づいて求めた値とする。
P=V/V=W/V/ρ
(式中、Vは蛍光体材料の体積、Vはシンチレータ層の体積、Wは蛍光体材料の質量、ρPは蛍光体材料の密度である。)
【0041】
<蛍光板>
本発明による蛍光板は、少なくとも一層の上記のシンチレータと、支持体とからなることを特徴とするもの、である。
支持体の材料およびその形成位置等は任意であって、本発明によるX線検査装置の目的および機能等を考慮して適宜定めることができる。本発明において特に好ましい支持体の具体例としては、反射率80%以上、特に90%以上、の反射材を挙げることができる。
【0042】
反射材
反射材は任意の材料によって形成することができる。本発明において特に好ましい反射材としては、例えば(イ)各種の樹脂材料、好ましくは、例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアミド、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネートなどの樹脂をフィルム状に成形し、これに反射性材料を設けたもの、(ロ)上記(イ)に紙やアルミニウム板などを貼り合わせるたもの、を挙げることできる。また、(ハ)上述のプラスチックフィルムや紙に、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの光反射性物質または気泡を含有したものも使用することができる。また、(ニ)シンチレータ表面に直接Al,Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt、Au等の金属蒸着膜を形成させてもよく、上記フィルム上に蒸着してもよい。また、(ホ)光反射性物質を塗布溶液に調製し、これをシンチレータ表面に塗布することができる。
このように設けた反射層は、反射率80%以上であることが好ましい。
【0043】
保護層
前記の通り、本発明では必要に応じて保護層を形成することができる。保護膜としては、各種の透明樹脂を用いることが出来る。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどからなる透明樹脂フィルムを蛍光体層上にラミネートして保護膜を形成することができる。あるいは、セルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリウレタンなどの透明樹脂を溶解させて適当な粘度の保護膜塗布液を調製し、これをシンチレータ上に塗布、乾燥させることによって保護膜を形成することができる。
【0044】
<X線検出器>
本発明によるX線検出器は、上記のシンチレータと、このシンチレータ上に配置された複数の光電変換膜及び画素電極とを具備してなることを特徴とするもの、である。
【0045】
光電変換膜および画素電極それ自体は公知であって、本発明ではそのような公知の各種の光電変換膜、画素電極の中から適当なもの適宜選択して用いることができる。
光電変換膜および画素電極の配置も任意であって、例えばライン状あるいは二次元の格子状に配置することができる。
光電変換膜および画素電極が一列に、あるいは複数例が平行に配置されたライン状のX線検出器は、本発明の好ましいX線検出器の一具体例である。このようなライン状のX線検出器は、各種の物品の生産現場ないし最終検査工程において、移送されている被検査対象を移送状態において連続的に検査可能なものである。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
平均粒子径が25μmのGdS:Eu蛍光体を用意し、蛍光体粉末10重量部に、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂0.9重量部、有機溶剤として適当量のメチルエチルケトンを混合して、蛍光体塗布液を調製した。この蛍光体塗布液を反射層となる反射率95%の銀蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるシート上に、乾燥後のシンチレータの厚さが500μmとなるようにナイフコータで均一に塗布、乾燥させて目的とするシンチレータを作製した。このときのシンチレータの充填率は50%であった。なお、乾燥後のシンチレータは乾燥前に比べて溶剤等が揮発して収縮するので、それを考慮してナイフコータのギャップを調整した。
【0047】
<実施例2>
平均粒径50μmの蛍光体であること以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0048】
<実施例3>
ポリビニルブチラール樹脂1.5重量部であること以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0049】
<実施例4>
ポリビニルブチラール樹脂0.5重量部であること以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0050】
<実施例5>
ナイフコーターのギャップを調整してシンチレータの厚みを400μmにしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0051】
<実施例6>
ナイフコーターのギャップを調整してシンチレータの厚みを1000μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0052】
<実施例7>
蛍光体材料をLuS:Euとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0053】
<実施例8>
反射層となる反射率80%の白色ポリエチレンテレフタレートフィルムとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0054】
<実施例9>
平均粒径30μmのGdS:Tb蛍光体を用い、かつ厚さを350μmとした以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0055】
<比較例1>
平均粒径20μmのGdS:Eu蛍光体であり、かつ厚さが350μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0056】
<比較例2>
平均粒径20μmのGdS:Eu蛍光体としたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0057】
<比較例3>
ポリビニルブチラール樹脂2重量部であること以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0058】
<比較例4>
ポリビニルブチラール樹脂0.3重量部であること以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0059】
<比較例5>
ナイフコーターのギャップを調整してシンチレータの厚みを300μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0060】
<比較例6>
ナイフコーターのギャップを調整してシンチレータの厚みを1200μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0061】
<比較例7>
反射層の反射率を65%としたこと以外は実施例1と同様にしてシンチレータを作製した。
【0062】
各実施例および比較例に係るシンチレータを用いてX線検出器を作製し、感度を測定した。結果は、表1に示される通りである。なお、表1において、各例の感度[%]は比較例1での感度を100%として評価したときのものである。
【表1】

【0063】
表1から分かる通り、本実施例にかかるシンチレータを用いたX線検出器は感度が良いことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】X線撮影装置を用いたシステムの概念図を示す図
【図2】シンチレータ及びX線検出器の概略断面図を示す図
【図3】a−Si光電変換素子および単結晶Si光電変換素子の受光感度の分布を示す図
【符号の説明】
【0065】
1 X線画像撮影装置
2 X線検出器
3 X線発生装置
4 被写体
5 デジタル画像処理手段
6 モニタ
7 シンチレータ
7a 有機高分子材料
7b 蛍光体粉末
8 光電変換素子
9 支持体
10 配線
11 12 13 14 反射材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子に付設される、有機高分子材料と蛍光体粉末とから構成される層状のシンチレータであって、前記蛍光体粉末が平均粒径25μm以上50μm以下であり、蛍光粉末の充填率が30%以上65%以下であり、かつ層厚が400μm以上1000μm以下であることを特徴とする、シンチレータ。
【請求項2】
前記蛍光体が希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体である、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項3】
少なくとも一層の請求項1または2に記載のシンチレータと、支持体とからなることを特徴とする、蛍光板。
【請求項4】
前記支持体が反射率80%以上の反射材である、請求項3に記載の蛍光板。
【請求項5】
請求項1または2に記載のシンチレータと、このシンチレータ上に配置された複数の光電変換膜及び画素電極とを具備することを特徴とする、X線検出器。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシンチレータまたは蛍光板と、このシンチレータ面以外の表面に反射率80%以上の反射層が設けられた、請求項5に記載のX線検出器。
【請求項7】
前記X線検出器はX線ラインセンサーである、請求項5または6に記載のX線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−248283(P2007−248283A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72579(P2006−72579)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】