説明

シンチレータの製造方法、シンチレータ、シンチレータ用塗布液、これを調製する方法

【課題】シンチレータに均一で反射能の高い反射層を形成することにより、エネルギー分解能及び位置弁別特性が高く高感度な放射線検出器を実現可能とする。
【解決手段】シンチレータ結晶の少なくとも一の面に、主成分として硫酸バリウムを含む反射層が設けられているシンチレータの製造方法を提供する。このシンチレータの製造方法は、シンチレータ結晶を用意する工程と、用意されたシンチレータ結晶に硫酸バリウムと高分子系バインダとを含む塗布液を塗布して反射層を形成する工程と、を含み、塗布液に硫酸バリウムを分散させる分散剤が添加されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシンチレータ結晶の少なくとも一の面に、主成分として硫酸バリウムを含むシンチレータ用反射層が設けられているシンチレータの製造方法、この方法により製造されるシンチレータ、この製造方法に用いられるシンチレータ用塗布液、及びこれを調製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シンチレータは放射線の入射に伴い発光する結晶である。また、シンチレータを短冊状に加工し、複数個集めて縦横に配置したものがシンチレータアレイである。シンチレータアレイは、光電子増倍管などの光電変換素子に接続され、放射線検出器として用いられる。シンチレータアレイに放射線が入射すると放射線入射箇所のシンチレータが発光し、接続された光電変換素子から放射線強度に比例した出力信号が生じる。
【0003】
シンチレータの表面に反射材を設けるとシンチレータからの発光の反射能を高めることが可能になる。一般的には、シンチレータ用反射材にはテフロン(登録商標)テープやポリエステル系樹脂を用いた多層膜フィルムが使用される。
【0004】
しかしながら、Pr:LuAG(プラセオジウム添加ルテチウムガーネット、Pr:LuAl12)シンチレータのように発光波長が400nm以下と短い場合は、テフロンテープやポリエステル系樹脂を用いた多層膜フィルムの反射率が90%以下と低くなる。そのため、充分な反射強度が得られない。
【0005】
さらにX線CT(Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)等の放射線イメージング・システムにおいて放射線を検出する場合は、シンチレータをアレイ状に組み、その間に反射材を挿入する必要がある。したがって、反射材の反射能の差が検出器の性能差となって現れる。
【0006】
シンチレータアレイの各シンチレータ間を覆う反射材の形成方法として、硫酸バリウムなどの粉末を、バインダとなる合成樹脂に混ぜ合わせた反射材塗料を用いる方法が知られている。この方法によれば、シンチレータの対向面に前記反射材塗料を塗布し、乾燥させることにより反射材を形成することができる。このような反射材の形成方法に関する技術は、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、反射材として酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウムなどの光反射固体粒子とシリコーン樹脂を含む光反射組成物を用いる技術が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−281362号公報
【特許文献2】特開昭60−150002号公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記文献記載の技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0010】
特許文献1および特許文献2に記載されるように、シンチレータ間に反射能の高い硫酸バリウム粉末によって反射層を作成すれば、エネルギー分解能及び位置弁別性が高く高感度な放射線検出器を実現することが期待される。しかしながら、反射材および樹脂溶液を混合した混合液を調製する際、混合が不均一となり、液中に粒状の塊が発生する。したがって、反射層の形成時に生じる空隙部分のため、シンチレータから出力される光量が減少し、放射線の検出感度が低下するといった問題がある。
【0011】
また、反射層の形成時に生じる空隙部分のために放射線検出器の位置分解能が低下するという問題が発生する。
【0012】
さらに硫酸バリウムと樹脂溶液の比重差が大きいために時間と共に混合液が分離すると言う問題も発生する。これにより、上記の問題が顕著となる。
【0013】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、シンチレータ結晶に均一で反射能の高い反射層を形成することにより、エネルギー分解能及び位置弁別特性が高く高感度な放射線検出器を実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、シンチレータ結晶の少なくとも一の面に、主成分として硫酸バリウムを含む反射層が設けられているシンチレータの製造方法であって、シンチレータ結晶を用意する工程と、用意されたシンチレータ結晶に硫酸バリウムと高分子系バインダとを含む塗布液を塗布して反射層を形成する工程と、を含み、塗布液に硫酸バリウムを分散させる分散剤が添加されていることを特徴とするシンチレータの製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上記のシンチレータの製造方法により反射層が設けられたシンチレータが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、界面活性剤を含む反射層が設けられたシンチレータが提供される。
【0017】
また、本発明によれば、上記のシンチレータの製造方法に用いられるシンチレータ用塗布液であって、硫酸バリウムと、高分子系バインダと、硫酸バリウムを分散させる分散剤と、を含有することを特徴とするシンチレータ用塗布液が提供される。
【0018】
さらに、本発明によれば、上記のシンチレータ用塗布液を調製する方法であって、硫酸バリウムと、高分子系バインダと、硫酸バリウムを分散させる分散剤と、を混合することによりシンチレータ用塗布液を調製する方法が提供される。
【0019】
本発明によれば、硫酸バリウムと、硫酸バリウムにより光反射性が与えられる樹脂溶液の混合液に分散剤を添加することにより、液中に粒状の塊が発生することなく均一な混合液を調製できる。したがって、均一な反射層を形成することでき、エネルギー分解能及び位置弁別特性が高く高感度な放射線検出器を得ることが可能となる。
【0020】
なお、本発明のシンチレータの製造方法には複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明のシンチレータの製造方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0021】
また、本発明のシンチレータの製造方法の複数の工程は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【0022】
以上、本発明の構成について説明したが、本発明は、これに限られず様々な態様を含む。以下はその例示である。
(1)反射層が設けられた面を対向させてシンチレータアレイを組み立てる組立工程と、組み立てたシンチレータアレイの少なくとも一の面に塗布液を塗布する第二の塗布工程をさらに含むことを特徴とする上記のシンチレータの製造方法。
(2)分散剤は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれかである上記のシンチレータの製造方法。
(3)分散剤は、陰イオン性界面活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤を含む上記のシンチレータの製造方法。
(4)分散剤は、非イオン性界面活性剤として、アルキルグルコシドを含む上記のシンチレータの製造方法。
(5)塗布液は、硫酸バリウム100重量部に対し分散剤10重量部以下を含有する上記のシンチレータの製造方法。
(6)シンチレータ結晶がPr:LuAG(Pr:LuAl12)である上記のシンチレータの製造方法。
(7)硫酸バリウムの粒径が0.5μm〜20μmである上記のシンチレータの製造方法。
(8)塗布液は、硫酸バリウム100重量部に対し溶媒15〜45重量部を含有する上記のシンチレータの製造方法。
(9)塗布液は、硫酸バリウム100重量部に対し高分子系バインダ5重量部を含有することを特徴とする上記のシンチレータの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シンチレータ結晶の表面に粒状の塊が発生するのを抑制しつつ、シンチレータ結晶に均一で反射能の高い反射層を形成させて、エネルギー分解能及び位置弁別特性が高く高感度な放射線検出器を実現可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0025】
本実施形態は、界面活性剤を含む反射層が設けられたシンチレータから構成されるシンチレータの製造方法に用いられるシンチレータ用塗布液である。このシンチレータ用塗布液は、硫酸バリウムと、高分子系バインダと、硫酸バリウムを分散させる分散剤と、を含有する。以下、このシンチレータ塗布液をシンチレータ用反射材溶液ともいう。
【0026】
硫酸バリウムは、反射材粉末として用いられる。反射材粉末には、硫酸バリウムに代えて、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムの粉末を使用することもできる。ただし発光波長が400nm以下のシンチレータに使用する場合は、硫酸バリウムはその波長領域での反射率が95%以上と最も高くなる。したがって、硫酸バリウムを使用することが好ましい。
【0027】
シンチレータ結晶には、発光波長が400nm以下のシンチレータを用いることができる。具体的には、Pr:LuAG(Pr:LuAl12)を用いることができる。
【0028】
また、シンチレータ結晶を複数本配列し、接合する面に反射材溶液を塗布して二次元的に密着配置させた後、底面および側面に反射剤を塗布することによってシンチレータアレイを作製することができる。このように作製されたシンチレータアレイは複数のシンチレータが反射層を介在して隣接している構成を有することになる。
【0029】
シンチレータ用反射材溶液中に分散している粒子の粒径は20μm以下とすることが好ましい。こうすることにより、反射層中に空隙の形成を少なくすることができ、反射能の低下を抑制することができる。そのため、硫酸バリウムの粒径は0.5〜20μmであるものを使用することが好ましく、0.8〜3μmを使用するとより好ましい。硫酸バリウムの粒径が小さすぎると、粒子径が発光波長以下になり反射率が悪化し発光量が低下する。また、硫酸バリウムの粒径が大きすぎると、反射率が悪化して発光量が低下する。硫酸バリウムの粒径を0.8μm〜3μmとすれば、均一な溶液を調製できるという点でもさらに有利である。
【0030】
シンチレータ用反射材溶液は、硫酸バリウムと、高分子系バインダと、分散剤と、を混合することにより調製することができる。また、シンチレータ用反射材溶液は、溶媒を添加して調製することもできる。溶媒は、揮発性の高い溶媒が好ましく、室温(25℃)から50℃付近の温度域で蒸発可能な、低沸点または蒸気分圧の高いものを使用することが好ましい。沸点の温度域が50℃〜80℃の場合、高分子バインダの劣化が無く、溶媒の乾燥が容易であり好都合である。具体的には、メチルアルコールやエチルアルコール等のアルコール類、アセトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、エステル類、水を用いることができる。
【0031】
溶媒の配合量は、硫酸バリウム100重量部に対し15〜45重量部とすることができる。こうすることにより、シンチレータ反射剤溶液を均一に塗布することが可能となる。溶媒の配合量が多すぎると反射層に多数の空隙ができ、溶媒の配合量が少なすぎると溶液中に顆粒が生じてしまう。
【0032】
溶媒には酸またはアルカリを添加することもできる。酸またはアルカリの添加量は均一な溶液を調製できる限り特に限定されないが、たとえば、pH5以上9以下の範囲にすることができる。pH値が高すぎたり低すぎたりすると、分散材の効果が減少したり、高分子バインダの効果が減少したりするため好ましくない。したがって、溶媒のpHを5以上9以下にすることにより、均一で特性の安定した溶液を調製することが可能となる。
【0033】
高分子系バインダは、前述の溶媒にあらかじめ溶解させた樹脂溶液とすることもできる。このとき、溶媒は、高分子系バインダを溶解できるものであればどのようなものであってもよく、具体的には、前述した溶媒を用いることができる。
【0034】
高分子系バインダとしては、反射層を形成できるという効果があれば、どのようなものでも用いることができるが、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂が使用可能である。アクリル樹脂を用いると、均一な反射層を形成できるという点でより好ましい。アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸とそのエステルを例示することができ、さらに具体的には、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルを例示することができる。また、これらを単独あるいは共重合体として用いるほか、酢酸ビニルなど他の化合物との共重合体としても用いることもできる。
【0035】
高分子系バインダの配合量は特に限定されないが、硫酸バリウム100重量部に対し3重量部以上10重量部以下とすることにより、より均一に塗布することができる。高分子系バインダの配合量が多すぎると、高分子バインダ自身が放射線を吸収する為、発光量が低下してしまう。一方、高分子系バインダの配合量が少なすぎると、均一な反射層が形成できないという点で問題がある。高分子系バインダは、シンチレータ用反射材100重量部に対し5重量部とすれば、さらに均一にシンチレータ結晶に塗布することができる。
【0036】
本実施形態において、「分散剤」とは、硫酸バリウムを溶液中で均一に分散させて、シンチレータ用反射材溶液を安定な懸濁液として調製するために加えられる第三成分をいう。分散剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、デンプン、ゼラチン、シランカップリング剤等などを例示することができるが、好ましくは、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれかとすることができる。
【0037】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリカルボン酸型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤が使用可能である。ポリカルボン酸型界面活性剤を用いることにより、硫酸バリウムをさらに好適に分散させることが可能となる。
【0038】
また、非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグルコシド、エステル型界面活性剤、エーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール型界面活性剤が使用可能である。アルキルグルコシドを用いることにより、硫酸バリウムをさらに好適に分散させることが可能となる。
【0039】
前述の分散剤は、少なくとも一つ、または二つ以上を一緒に添加して使用することも可能である。
【0040】
分散剤を添加することにより、混合液中の反射材粉末の凝集体は一次粒子に分散され、粒状の塊の発生を防ぐことが可能となり、均一で反射能の高い混合液の調製が可能となる。
【0041】
分散剤の配合量は、硫酸バリウム100重量部に対し分散剤10重量部以下とすることができる。10重量部を超えると、溶液の粘性が増加し、溶液中に塊が生じるという点で好ましくない。分散剤の下限値は特に限定されないが、好ましくは、硫酸バリウム100重量部に対し分散剤1.5重量部以上にすることができる。こうすることにより、シンチレータ結晶に均一に塗布できるという効果が得ることができる。
【0042】
また、本実施形態のシンチレータ用反射材溶液は、分散剤を混合することにより、粘度を好適に調節することができる。具体的には、1×10−3Pa・s以上100Pa・s以下の粘度で調製することが可能となる。そのため、流動性を確保して均一にシンチレータ結晶に塗布することが可能となる。また、少ない溶媒量で低粘度の反射材溶液を調製することができ、硫酸バリウムの充填率の高い反射層を形成することが可能となる。したがって、シンチレータ結晶に反射能の高い反射層を設けることが可能となる。
【0043】
つづいて、本実施形態のシンチレータ用反射剤溶液を用いたシンチレータアレイの製造方法について説明する。
【0044】
まず、硫酸バリウムと、高分子系バインダと、分散剤と、溶媒と、を混合して反射材溶液を調製する。混合の際、溶媒を適当量添加して粒子の凝集を抑制させつつ、粘度を調節する。このとき、攪拌させながら混合することにより、より均一に混合させることができ、粒子の凝集を抑制させることができる。
【0045】
次に、あらかじめ6面を鏡面研磨しておいたシンチレータ結晶に、調製した反射材溶液を塗布し、反射層を形成する。具体的には、反射材溶液をシンチレータ結晶の接合面に塗布し、適当な層厚の反射層を形成させる。反射層の層厚は、反射能をシンチレータ結晶に付与することができれば特に限定されないが、シンチレータ結晶の接合部において0.1mm以上0.5mm以下となるように形成させることが好ましい。こうすることにより、好適な反射能をシンチレータ結晶に付与することができる。
【0046】
その後、反射層を形成した面を対向させてシンチレータアレイを組み立て、組み立てたシンチレータアレイの側面および底面にさらに反射剤溶液を塗布し、反射層を形成する。このとき、シンチレータアレイの側面および底面の反射層の層厚は、0.5mm以上1mm以下とすると好ましい。こうすることにより、好適な反射能を付与することができる。
【0047】
そして、形成した反射層を反射層定温乾燥機により大気雰囲気下50℃で維持することにより乾燥させる。
【0048】
乾燥させたシンチレータアレイは、シンチレータの出射面を位置有感型光電子増倍管(浜松ホトニクス社製H8500)の入射面に光学的に接合する。こうすることにより放射線検出器を作製することができる。この放射線検出器は、シンチレータ内で発生したシンチレーション光が損失なく最大限に光電子増倍管へ伝達される。したがって、光電子増倍管に達する光子数が多く、高感度でかつ位置弁別特性・エネルギー分解能が優れたものになる。
【0049】
つづいて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態のシンチレータ用反射材溶液は、シンチレータを囲繞する分散剤を添加している。これにより、粒状の塊が発生することなく均一で反射能の高い反射層を形成することができる。したがって、エネルギー分解能及び位置弁別特性が高く高感度な放射線検出器を得ることが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0051】
たとえば、本発明は以下の態様を採用することも可能である。
(1)シンチレータ特性向上のためにシンチレータ結晶の側面に塗布するシンチレータ用反射材において、硫酸バリウムを主成分として、溶媒、樹脂溶液、分散剤を含有することを特徴とするシンチレータ用反射材溶液。
(2)分散剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のうちの少なくとも1つであることを特徴とする(1)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(3)分散剤は、陰イオン性界面活性剤のうち、ポリカルボン酸型界面活性剤であることを特徴とする(2)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(4)分散剤は、非イオン性界面活性剤のうち、アルキルグルコシドであることを特徴とする(2)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(5) 反射材100重量部に対し分散剤10重量部以下を含有することを特徴とする(1)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(6)シンチレータ結晶がPr:LuAG(Pr:LuAl12)であることを特徴とする(1)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(7)反射材の粒径が0.5μm〜20μmであることを特徴とする(1)に記載のシンチレータ反射材溶液。
(8)反射材100重量部に対し溶媒15〜45重量部を含有することを特徴とする(1)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
(9)反射材100重量部に対し樹脂溶液5重量部を含有することを特徴とする(1)に記載のシンチレータ用反射材溶液。
【0052】
また、当然ながら、上述した実施の形態は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態では、シンチレータ用反射材溶液の組成などを具体的に説明したが、その組成は本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例としてシンチレータアレイを作製し、シンチレータアレイを使用した放射線検出器の例を説明する。本実施例で用いる試薬は以下のとおりである。
・硫酸バリウム粉末
[製品名]硫酸バリウム シンチレーター用500gボトル入り
株式会社バイコウスキージャパンから購入
・アクリル系樹脂
[製品名]リカボンドFK10(アクリル共重合体25−35%およびイソプロピルアルコール1−5%含有水溶液)
[メーカー]中央理化工業株式会社製
・ポリカルボン酸型界面活性剤
[製品名]ポイズ520(特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)
[メーカー]花王株式会社製
・アルキルグルコシド
[製品名]マイドール10(デシルグルコシド)
[メーカー]花王株式会社製
【0054】
(実施例1)
硫酸バリウム粉末(粒径:0.8〜3μm)100g、水15g、アクリル系樹脂5gおよびポリカルボン酸型界面活性剤1.5gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびポリカルボン酸型界面活性剤の混合液(以後、混合液1とする)を調製した。6面を鏡面研磨した1.9×1.9×15mmのPr:LuAG結晶に混合液1を塗布し、厚さ0.2mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、シンチレータアレイの底面および側面に混合液1を厚さ1mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図1(a)に、発光量を表1に示す。発光量は17〜21chでマッピング像は明確に分離できた。
【0055】
(実施例2)
硫酸バリウム粉末(粒径:0.8〜3μm)100g、水15g、アクリル系樹脂5gおよびポリカルボン酸型界面活性剤3gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびポリカルボン酸型界面活性剤の混合液(以後、混合液2aとする)を調製した。6面を鏡面研磨した2.1×2.1×15mmのPr:LuAG結晶に混合液2aを塗布し、厚さ0.1mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、硫酸バリウム粉末(粒径が0.8〜3μm)100g、水45g、アクリル系樹脂5gおよびポリカルボン酸型界面活性剤3gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびポリカルボン酸型界面活性剤の混合液(以後、混合液2bとする)を調製し、シンチレータアレイの底面および側面に混合液2bを厚さ0.5mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図1(b)に、発光量を表1に示す。発光量は18〜22chでマッピング像は明確に分離できた。
【0056】
(実施例3)
硫酸バリウム粉末(粒径:0.8〜3μm)100g、水15g、アクリル系樹脂5gおよびアルキルグルコシド10gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびアルキルグルコシドの混合液(以後、混合液3aとする)を調製した。6面を鏡面研磨した2.1×2.1×15mmのPr:LuAG結晶に混合液3aを塗布し、厚さ0.1mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、硫酸バリウム粉末(粒径:0.8〜3μm)100g、水45g、アクリル系樹脂5gおよびアルキルグルコシド3gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびアルキルグルコシドの混合液(以後、混合液3bとする)を調製した。シンチレータアレイの底面および側面に混合液3bを厚さ0.5mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図1(c)に、発光量を表1に示す。発光量は18〜22chで、マッピング像は明確に分離できた。
【0057】
(実施例4)
硫酸バリウム粉末(粒径:0.8〜3μm)100g、水15g、アクリル系樹脂5g、ポリカルボン酸型界面活性剤3gおよびアルキルグルコシド0.5gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂、ポリカルボン酸型界面活性剤およびアルキルグルコシドの混合液(以後、混合液4aとする)を調製した。6面を鏡面研磨した2.1×2.1×15mmのPr:LuAG結晶に混合液4aを塗布し、厚さ0.1mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、硫酸バリウム粉末(粒径が0.8〜3μm)100g、水45g、アクリル系樹脂5g、ポリカルボン酸型界面活性剤3gおよびアルキルグルコシド0.5gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂、ポリカルボン酸型界面活性剤およびアルキルグルコシドの混合液(以後、混合液4bとする)を調製し、シンチレータアレイの底面および側面に混合液4bを厚さ0.5mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図1(d)に、発光量を表2に示す。発光量は18〜22chでマッピング像は明確に分離できた。
【0058】
(比較例1)
6面を鏡面研磨した1.9×1.9×15mmのPr:LuAG結晶間に、テフロンテープを巻き、厚さ0.2mmの反射層を形成し5×5本組シンチレータアレイを作製し、さらにシンチレータアレイの側面および側面にテフロンテープを巻き、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図2(a)に、発光量を表1に示す。発光量は6〜8chでマッピング像は分離できていない。
【0059】
(比較例2)
粒径が0.8〜3μmの硫酸バリウム 粉末100g、水25g、アクリル系樹脂5gを混合し、硫酸バリウム粉末、水およびアクリル系樹脂の混合液(以後、混合液5とする)を調製した。6面を鏡面研磨した1.9×1.9×15mmのPr:LuAG結晶に混合液を塗布し、厚さ0.2mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、シンチレータアレイの底面および側面に混合液5を厚さ1mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図2(b)に、発光量を表1に示す。発光量は7〜9chでマッピング像は分離できていない。
【0060】
(比較例3)
粒径が21〜25μmの硫酸バリウム 粉末100g、水15g、アクリル系樹脂5gおよびポリカルボン酸型界面活性剤1.5gを混合し、硫酸バリウム粉末、水、アクリル系樹脂およびポリカルボン酸型界面活性剤の混合液(以後、混合液6とする)を調製した。6面を鏡面研磨した1.9×1.9×15mmのPr:LuAG結晶に混合液6を塗布し、厚さ0.2mmの反射層を形成し、5×5本組シンチレータアレイを作製した。反射層形成後、シンチレータアレイの底面および側面に混合液6を厚さ1mmとなるように塗布したのち乾燥し、シンチレータアレイを作製した。アレイブロックを位置有感型光電子増倍管(H8500)に接着し、137Csγ線を照射した。得られた2次元マップを図2(c)に、発光量を表1に示す。発光量は3〜5chでマッピング像は分離できていない。
【0061】
【表1】

【0062】
なお、上記した実施例では、反射材として硫酸バリウム粉末、バインダとしてアクリル系樹脂、分散剤としてポリカルボン酸型界面活性剤、アルキルグルコシドを用いたが、このほかにも公知のものが使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例の結果を示す図である。
【図2】比較例の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータ結晶の少なくとも一の面に、主成分として硫酸バリウムを含む反射層が設けられているシンチレータの製造方法であって、
前記シンチレータ結晶を用意する工程と、
用意された前記シンチレータ結晶に前記硫酸バリウムと高分子系バインダとを含む塗布液を塗布して前記反射層を形成する工程と、
を含み、
前記塗布液に前記硫酸バリウムを分散させる分散剤が添加されていることを特徴とするシンチレータの製造方法。
【請求項2】
前記反射層が設けられた面を対向させてシンチレータアレイを組み立てる組立工程と、
前記組み立てたシンチレータアレイの少なくとも一の面に前記塗布液を塗布する第二の塗布工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータの製造方法。
【請求項3】
前記分散剤は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれかである請求項1または2に記載のシンチレータの製造方法。
【請求項4】
前記分散剤は、陰イオン性界面活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤を含む請求項3に記載のシンチレータの製造方法。
【請求項5】
前記分散剤は、非イオン性界面活性剤として、アルキルグルコシドを含む請求項3に記載のシンチレータの製造方法。
【請求項6】
前記塗布液は、前記硫酸バリウム100重量部に対し前記分散剤10重量部以下を含有する請求項1乃至5いずれかに記載のシンチレータの製造方法。
【請求項7】
前記シンチレータ結晶がPr:LuAG(Pr:LuAl12)である請求項1乃至6いずれかに記載のシンチレータの製造方法。
【請求項8】
前記硫酸バリウムの粒径が0.5μm〜20μmである請求項1乃至7いずれかに記載のシンチレータの製造方法。
【請求項9】
前記塗布液は、前記硫酸バリウム100重量部に対し溶媒15〜45重量部を含有する請求項1乃至8いずれかに記載のシンチレータの製造方法。
【請求項10】
前記塗布液は、前記硫酸バリウム100重量部に対し前記高分子系バインダ5重量部を含有することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のシンチレータの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかに記載のシンチレータの製造方法により反射層が設けられたシンチレータ。
【請求項12】
界面活性剤を含む反射層が設けられたシンチレータ。
【請求項13】
請求項1乃至10いずれかに記載のシンチレータの製造方法に用いられるシンチレータ用塗布液であって、
硫酸バリウムと、高分子系バインダと、前記硫酸バリウムを分散させる分散剤と、を含有することを特徴とするシンチレータ用塗布液。
【請求項14】
請求項13に記載のシンチレータ用塗布液を調製する方法であって、
硫酸バリウムと、高分子系バインダと、前記硫酸バリウムを分散させる分散剤と、を混合することにより前記シンチレータ用塗布液を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−264751(P2009−264751A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110671(P2008−110671)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】