説明

シートに装着される外装材及び当該外装材を備えたシート

【課題】シートの組立作業を簡略化できるシートに装着される外装材及び当該外装材を備えたシートを提供する。
【解決手段】シートに装着される外装材及び当該外装材を備えたシート12は、シート10の骨格をなすフレーム11と、フレーム11に装着される外装材12とを備える。外装材12の背もたれ部側外装材16は、内面16Aに取り付けられたワイヤーハーネス21と、ワイヤーハーネス21の端部に設けられたコネクタ22と、コネクタ22を支持する変形部23とを有する。背もたれ部側外装材16の内側に変形部23を変形させる(巻き込む)ことでコネクタ22をモータ17のコネクタ27に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装品を含む補機が搭載されたフレームに対して装着される外装材及び当該外装材を備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に設置されるシートとしては、車体に対してシートの座部を前後方向及び上下方向に位置調整するための電動機構や、背もたれ部を座部に対してリクラインニングさせるための電動機構、あるいは座部の表面、背もたれ部の表面の温度や湿度を調整するための空調機器等が搭載された電動シートが知られている。
このような電動シートにおいては、各種機構や機器(以下、まとめて補機という)に含まれる電装品及びこれらの補機の動作を制御する制御装置に接続するワイヤーハーネスが配索される。
従来、かかる電動シートにおける補機及びワイヤーハーネスの組み付け作業性を向上させることを目的とした提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、シートの座部の骨格をなすフレーム及び背もたれ部の骨格をなすフレームに、スイッチや、モータが個々に固定されている。
そして、スイッチ及びモータに電力を供給し、また、スイッチから出力された制御信号をモータに伝達するためのワイヤーハーネスが、スイッチ及びモータに夫々接続して、シートに配索されている。
【0004】
ワイヤーハーネスは、従来は複数箇所をクランプ部材等でフレームに直接固定されてシートに組み付けられていたところ、特許文献1では、クランプ部材でフレームに複数箇所を固定されるラミネートシートに支持されて、一括してシートに組み付けられている。
尚、ワイヤーハーネスにおいてラミネートシートによる支持では形状の保持が困難な箇所は、従来同様、クランプ部材等でフレームに直接固定されている。
【特許文献1】特開2002−264710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、ワイヤーハーネスをフレームにクランプ部材で固定した後、電装品を含む補機に対してコネクタを接続し、こういったコネクタの接続作業の完了後に外装材をフレームに被せ且つ係止して該外装材をフレームに取り付けることでシートが組み立てられている。
このため、シートの組立作業には、コネクタの接続工程と、外装材の取付工程との二工程が必要になり、さらに、外装材をフレームに被せて取り付ける際に、フレームに固定したワイヤーハーネスを破損しないように作業をする必要があり、組付作業に手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートの組立作業を簡略化できる外装材及び当該外装材を備えたシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る外装材は、下記(1)および(2)を特徴としている。
(1) シートの骨格をなすフレームに装着される外装材であって、前記フレームに装着された際に前記フレーム側に面する内面と、前記内面に取り付けられたワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスに設けられたコネクタと、前記外装材の端縁部に設けられ、前記コネクタを支持する変形部と、を有し、前記フレームに前記外装材が装着された際に当該外装材内に位置する電装品を含む補機の相手方コネクタに対して、前記変形部を前記フレームに対して近付けるように変形させながら前記コネクタを接続することで前記外装材が前記フレームに係止されること。
(2) 上記(1)の構成の外装材において、
前記電装品を含む前記補機の相手方コネクタに対する前記コネクタの接続方向が、前記フレームに対する当該外装材の装着方向に対して交差すること。
【0008】
上記(1)の構成の外装材では、外装材の内面に取り付けられたワイヤーハーネスのコネクタが外装材の変形部に支持されており、フレームに外装材を被せてから、変形部を変形させながらコネクタを補機の相手方コネクタに対して接続できる。そのため、上記(1)の構成の外装材によれば、フレームに対する外装材の取付作業、特に、フレームに外装材を係止する作業と、コネクタの接続作業とを同一工程において順次行うことができ、かつ外装材をフレームへ取り付ける際に外装材をワイヤーハーネスに引っ掛けて損傷させる虞がないので、組付作業の簡略化を図れる。
また、上記(2)の構成の外装材では、フレームに対する外装材の装着方向に対して交差(例えば、直交)する方向にコネクタを移動することで補機の相手方コネクタに接続するので、フレームから外れる(脱げる)方向に外装材が位置ずれしても、コネクタが変形部から脱落する虞や、コネクタが補機から外れる虞がない。従って、上記(2)の構成の外装材によれば、コネクタが補機から外れることを防いで、接続不良を防止できることになる。
【0009】
(3) また、上述した目的を達成するために、本発明に係るシートは、上記(1)または(2)の外装材と、骨格をなす前記フレームと、前記フレームに前記外装材を装着した際に当該外装材内に位置する前記電装品を含む前記補機と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
上記(1)の外装材を備えた構成の上記(3)のシートによれば、コネクタの接続作業と外装材の取付作業(特に、フレームに外装材を係止する作業)を同じ作業工程で行うことができ、かつ、外装材をフレームへ取り付ける際に外装材をワイヤーハーネスに引っ掛けて損傷させる虞がないので、組付作業の簡略化を図れる。
加えて、上記(2)の外装材を備えた構成の上記(3)のシートによれば、フレームから外れる(脱げる)方向に外装材が位置ずれしても、コネクタが変形部から脱落する虞や、コネクタが補機から外れる虞がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシートに装着される外装材及び当該外装材を備えたシートによれば、外装材の内面にワイヤーハーネスを取り付け、ワイヤーハーネスの端部に設けられたコネクタを外装材の変形部に支持することにより、コネクタの接続作業と外装材の取付作業を同じ作業工程で行うことができ、かつ、外装材をフレームへ取り付ける際に外装材をワイヤーハーネスに引っ掛けて損傷させる虞がないので、組付作業の簡略化が図れるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るシートに装着される外装材及び当該外装材を備えたシートについて、図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態のシート10は、シート10の骨格をなすフレーム11と、フレーム11に装着される外装材12とを備え、自動車等の車両に設置されるものである。
【0013】
フレーム11は、金属製の座部側フレーム13と、金属製の背もたれ部側フレーム14とを備えている。
座部側フレーム13は、乗員が着座する座部10Aの骨格をなすフレームである。背もたれ部側フレーム14は、乗員の背をもたれさせる背もたれ部10Bの骨格をなすフレームである。
また、背もたれ部側フレーム14は、座部側フレーム13の後部に前後方向にリクライニング(俯仰)自在に取り付けられている。
【0014】
背もたれ部側フレーム14には、シート11内に設けられる電装品を含む補機(換言すれば、フレーム11に外装材12が装着された際に当該外装材12内に位置する電装品を含む補機)として、例えばモータ(電動モータ)17等が表面に沿って設けられている(組み付けられている)。
モータ17は、例えば背もたれ部側フレーム14のリクライニング(俯仰)動作等を自動的に行うものである。
尚、シート11内に設けられる補機としては、背もたれ部側フレーム14側に備えられたワイヤーハーネスも含まれる。
【0015】
外装材12は、座部側フレーム13に装着される座部側外装材15と、背もたれ部側フレーム14に装着される背もたれ部側外装材16とを備えている。
座部側フレーム13及び座部側外装材15により、座部10Aが構成されている。
背もたれ部側フレーム14及び背もたれ部側外装材16で、背もたれ部10Bが構成されている。
座部10Aはオットマン(脚載せ台:図示せず)を含み、背もたれ部10Bはヘッドレストや肘掛(図示せず)を含んでいる。
【0016】
背もたれ部側外装材16は、図2に示されるように、表皮材(外皮)18でクッション材19を覆ったもので、背もたれ部側フレーム14を覆うように袋状に形成されている。
表皮材18は、布や皮等で形成された背もたれ部10Bの外皮である。
クッション材19は、例えば所定の形状に成形されたポリウレタン等の発泡材で形成されている。
背もたれ部側外装材16は、内面16Aに取り付けられたワイヤーハーネス21と、ワイヤーハーネス21の端部に設けられたコネクタ22と、コネクタ22を支持する変形部23とを有する。
【0017】
ワイヤーハーネス21は、背もたれ部側外装材16のうち、背もたれ部側フレーム14側に面する内面16Aに取り付けられ、背もたれ部側フレーム14に沿うように配索されている。
詳しくは、ワイヤーハーネス21は、背もたれ部側外装材16のクッション材19に内蔵され、クッション材19の縁部19Aから引き出された端部21Aが変形部23まで配索されている。
【0018】
コネクタ22は、ワイヤーハーネス21の端部21Aに設けられ(接続され)、変形部23に支持されている。
図3、図4に示すように、コネクタ22は、基部22Aに係止突起25が設けられ、コネクタ本体22Bを変形部23の挿通孔23Aから挿通させるとともに、係止突起25を係止孔23Bに差し込んで係止することで変形部23に支持されている。
【0019】
変形部23は、背もたれ部側外装材16の端縁部で、かつ、電装品を含む補機(モータ)17のコネクタ27の近傍に設けられている。コネクタ27は、モータ17の端子に接続されている。
変形部23は、略中央部に挿通孔23Aが形成され、挿通孔23Aの両側部近傍に係止孔23Bがそれぞれ形成されている。
【0020】
挿通孔23Aは、コネクタ本体22Bより略一回り大きく形成され、コネクタ本体22Bが挿通可能な孔である。
係止孔23Bは、コネクタ22の係止突起25が差し込まれることで、係止突起25を係止可能な孔である。
【0021】
この変形部23は、コネクタ22を支持するとともに背もたれ部側フレーム14(詳しくは、図2に示すようにモータ17のコネクタ27)に対して近接するように変形可能に形成されている。
【0022】
変形部23にコネクタ22を支持することで、図2に示すように、モータ17のコネクタ27に対して近接するように、背もたれ部側外装材16の内側に変形部23を変形させる(巻き込む)ことが可能である。
このように、背もたれ部側外装材16の内側に変形部23を変形させる(巻き込む)ことでコネクタ22がモータ17のコネクタ27に接続されている。
【0023】
ここで、モータ17のコネクタ27に対するコネクタ22の接続方向は、図2、図4に示すように、矢印Aで示される。
一方、背もたれ部側フレーム14に対する背もたれ部側外装材16の装着方向は、図1に示すように、矢印Bで示される。
矢印A方向で示すコネクタ22の接続方向を、矢印B方向で示す背もたれ部側外装材16の装着方向に対して交差するようにした。
【0024】
これにより、背もたれ部側フレーム14から外れる(脱げる)方向に背もたれ部側外装材16が位置ずれしても、コネクタ22が変形部23から脱落する虞や、コネクタ22がモータ17のコネクタ27から外れる虞がない。
コネクタ22がモータ17のコネクタ27から外れることを防いで、接続不良を防止できる。
【0025】
次に、シートを組み立てる工程、具体的には、背もたれ部側フレーム14に背もたれ部側外装材16を組み付ける工程を図1〜図4に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、ワイヤーハーネス21の端部21Aがクッション材19の縁部19Aから引き出された状態となるように、ワイヤーハーネス21を背もたれ部側外装材16に組み付ける。ワイヤーハーネス21の端部21Aにはコネクタ22が接続されている。
【0026】
図3に示すように、コネクタ22のコネクタ本体22Bを変形部23の挿通孔23Aから挿通させるとともに、コネクタ22の係止突起25を係止孔23Bに差し込んで係止することにより、コネクタ22が変形部23に支持される。
一方、図2に示すように、モータ17にはそれ自体と電気的に接続するコネクタ27が設けられている。
【0027】
次に、図1に示すように、ワイヤーハーネス21を組み付けた状態の背もたれ部側外装材16を、背もたれ部側フレーム14に矢印Bの如く組み付ける。
ついで、変形部23を背もたれ部側外装材16の内側に変形させて(巻き込んで)、図2、図4に示すように、ワイヤーハーネス21のコネクタ22を相手方コネクタであるモータ17のコネクタ27に矢印Aの如く電気的に接続する。
【0028】
これにより、モータ17のコネクタ27にワイヤーハーネス21のコネクタ22を接続する接続作業と、背もたれ部側フレーム14への背もたれ部側外装材16の取付作業、特に、背もたれ部側フレーム14に背もたれ部側外装材16を係止する作業とを同一工程で行うことができる。すなわち、本実施形態のシート10では、背もたれ部側フレーム14に対する背もたれ部側外装材16の被覆状態の維持をコネクタ接続(つまり、モータ17のコネクタ27によるワイヤーハーネス21のコネクタ22の係止)で行っている。
さらに、ワイヤーハーネス21は背もたれ部側外装材16に組み付けられている。これにより、背もたれ部側外装材16を背もたれ部側フレーム14へ取り付ける際に、背もたれ部側外装材16をワイヤーハーネス21に引っ掛けて損傷させる虞がない。
【0029】
このように、コネクタ22の接続作業及び背もたれ部側外装材16の取付作業を同一工程で行うことができ、加えて、背もたれ部側外装材16をワイヤーハーネス21に引っ掛ける虞がないので、組付作業の簡略化を図れる。
【0030】
尚、前記実施形態では、電装品を含む補機として、モータ17を例示したが、これに限らないで、その他の補機として、スイッチやシートの姿勢を制御する電子制御ユニット(ECU)等に適用することも可能である。
【0031】
尚、前記実施形態で示したフレーム11、外装材12、座部側フレーム13、背もたれ部側フレーム14、ワイヤーハーネス21、コネクタ22、変形部23等の形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【0032】
例えば、座部側フレーム13及び座部側外装材15についても、上述した背もたれ部側フレーム14に背もたれ部側外装材16を組み付ける工程と同様な手順で組み付けを行えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、電装品を含む補機が搭載されたフレームに装着される外装材及び当該外装材を備えたシートへの適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る外装材を備えたシートを示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係るシートを示す断面図である。
【図3】本発明に係る外装材の変形部及びコネクタを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る外装材の変形部及びコネクタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 外装材を備えたシート
11 フレーム
12 外装材
14 座部側フレーム
15 背もたれ部側フレーム
16 背もたれ部側外装材
16A 内面
17 モータ(電装品を含む補機)
21 ワイヤーハーネス
21A ワイヤーハーネスの端部
22 コネクタ
23 変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの骨格をなすフレームに装着される外装材であって、
前記フレームに装着された際に前記フレーム側に面する内面と、
前記内面に取り付けられたワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスに設けられたコネクタと、
前記外装材の端縁部に設けられ、前記コネクタを支持する変形部と、
を有し、
前記フレームに前記外装材が装着された際に当該外装材内に位置する電装品を含む補機の相手方コネクタに対して、前記変形部を前記フレームに対して近付けるように変形させながら前記コネクタを接続することで前記外装材が前記フレームに係止されることを特徴とする外装材。
【請求項2】
請求項1に記載の外装材であって、
前記電装品を含む前記補機の相手方コネクタに対する前記コネクタの接続方向が、前記フレームに対する当該外装材の装着方向に対して交差することを特徴とする外装材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の前記外装材と、骨格をなす前記フレームと、前記フレームに前記外装材を装着した際に当該外装材内に位置する前記電装品を含む前記補機と、を備えたことを特徴とするシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149159(P2009−149159A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327505(P2007−327505)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】