説明

シートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置

【課題】ブレーキロールのシートに対する滑りを防止してブレーキロールの摩耗を抑制すると共にシートに付加出来る張力の低下を抑制することが出来るシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の段ボールシートの張力付与装置1は、入口ガイドロール70と、ブレーキロール72と、ブレーキロールに制動力を与える制動力付与手段78と、出口ガイドロール74と、ブレーキロール回転速度検出手段80と、出口ガイドロール回転速度検出手段82と、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段90aと、ブレーキロールと出口ロールとの回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力をブレーキロールに与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段90bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置に係わり、特に、シートに張力を付加するブレーキロールを有するシートの張力付加装置及び本装置を備えた段ボールシート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、片面段ボールシート、或いは、ライナをブレーキ用ガイドロールに巻き付け、そのブレーキ用ガイドロールに伝導ベルトを介してブレーキ装置を接続して、片面段ボールシート、或いは、ライナに張力を付与するようにした装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、片面段ボールシートに張力を付加するものとして、ダブルフェーサの上流側に設けられるブレーキスタンドが知られており、このブレーキスタンドは、その外周面のゴム層で片面段ボールシートに張力を付加するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の張力付与装置では、ブレーキ用ガイドロールの外周面にクロムメッキや溶射の表面処理を施して摩擦係数を増加させて、片面段ボールシートやライナがそのロール上で滑る直前の最大張力を増加させるようにしている。しかしながら、そのようなロールがライナなどに対して滑ると、ロールとライナなどとの間の摩擦力は、静摩擦係数から動摩擦係数を乗数としたものへと代わり、その結果、ライナとロール表面との摩擦力が低下してシートやライナなどの所望の張力が得られない上に、ロールの摩耗が急激に進むという二重の問題が生じる。そして、それらの所望の張力が得られなければ、段ボールシートの成形不良が生じてしまう。また、摩耗が進むと、ライナなどに付加出来る張力自体も低下してしまうと共に片面段ボールやライナの幅方向にシワが生じるという問題も生じる。
【0006】
次に、従来、ライナ又は中芯が、上流から、原紙ロール、スプライサ、テンションインフィードと呼ばれる張力増減装置、プレヒータ、シングルフェーサの順で搬送され、片面段ボールシートが成形される段ボールシート製造装置が知られている。このような段ボールシート製造装置においては、原紙ロール及びスプライサによりライナや中芯に張力が付与される。テンションインフィード装置は、ACサーボモータと、このモータに接続され、ライナが巻き付けられてその張力を付加及び低減させる駆動ローラと、エアシリンダにより100mm程度移動可能なアクチュエータと、を有し、ライナや中芯の張力を調整する装置である。このような装置でも、ライナや中芯を駆動ローラの表面に押さえ付ける圧着ローラを備えることなく、駆動ローラのみを備える場合には、ライナ又は中芯に対して滑りが生じることがあり、それにより、ライナや中芯の張力が低下して所望の張力が得られない上に、ロールの摩耗が急激に進むという二重の問題が生じていた。
【0007】
次に、従来、シングルフェーサで成形された片面段ボールシートが、上流から、ブリッジ(ブリッジコンベアを有する)、このブリッジ上に設けられた上述したブレーキスタンド、プレヒータ、グルーマシン、ダブルフェーサの順で搬送され、両面段ボールシートが成形される段ボールシート製造装置が知られている。このような段ボールシート製造装置においては、シングルフェーサで成形された片面段ボールシートはブリッジ上では張力を有しないので、プレヒータで十分な熱量を付加するために、ブレーキスタンドにより、片面段ボールシートに張力を0の状態から付加している。ところが、このようなブレーキスタンドでも、片面ボールシートがロールの外周面のゴムに対して滑る、という問題が発生していた。特に、従来技術におけるブレーキスタンドは、外周面がゴム製のロールであるので、摩耗が激しい。従って、このような装置でも、ブレーキスタンドにおいて、片面段ボールシートのブレーキロールに対する滑りが生じると、片面段ボールシートの張力が低下して所望の張力が得られない上に、ロールの摩耗が急激に進むという二重の問題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、張力付加用ブレーキロールのシート(ライナ、中芯或いは片面段ボール)に対する滑りを防止して、張力付加用ブレーキロールの摩耗を抑制すると共にシートに付加出来る張力の低下を抑制することが出来るシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明によるシートの張力付加装置は、段ボールシート製造装置の上流側から下流側に流れるシートに張力を付加するシートの張力付加装置であって、上流側から引き込まれるシートが巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、この入口ガイドロールから引き出されたシートが巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられたシートに上記外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出されたシートが巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、段ボールシート製造装置の通常運転時に、シートに所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力をブレーキロールに与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、上流側から引き込まれるシートを案内する入口ガイドロールと、その入口ガイドロールから引き出されたシートが巻き付けられた外周面との摩擦力でシートに張力を付加することができるブレーキロールと、このブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出されたシートを下流側へ案内する出口ガイドロールと、段ボールシート製造装置の通常運転時に、シートに所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、を有しているので、簡便な構成でシート(ライナ、中芯、又は、片面段ボールシート)に張力を付加出来る。
【0011】
この張力付加装置において、シートに付加される張力は、ブレーキロールに第1の制動力が与えられることにより、ブレーキロールの外周面とシートとの間の摩擦力で付加されるが、ブレーキロールがシートに付加できる最大張力は、シートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、シートとブレーキロールの接触角度、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅やシートの紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ブレーキロールとシートとの滑りは、作業者には、実際には、どのような設定下(シートの搬送速度やブレーキロール外周面の構成など)で生じるか予測不可能である。
【0012】
このような問題に対し、本発明によるシートの張力付加装置は、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度と差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるよう(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)に第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有している。ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値以上であるということは、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)が単なる案内ロールとして機能していることを前提に考えると、シートの搬送速度に対してブレーキロールの回転速度が遅れており、ブレーキロールにおいて、シートとブレーキロール間の滑りが生じていることを意味する。
【0013】
従って、本発明による第2制動力制御手段によれば、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御するので、制動力を低下させた分だけ、ブレーキロールをシートの搬送に伴って従動的に回転させるようにして、シートの搬送速度に追いつくようにし、シートに対するブレーキロールの滑りを防止することが出来る。ただし、このようなときでも、第2の制動力が与えられているので、シートの張力も確保される。
【0014】
特に、このようにブレーキロールの滑りが防止されるので、シートとブレーキロールとの間の摩擦力が静摩擦係数により得られ、最大摩擦力が大きくなり、作業者が所望する張力が得やすくなる。また、所望する張力まで届かなくても、本発明によるシートの張力付加装置は、ブレーキロールの回転速度と出口ガイドロール又は入口ガイドロールの回転速度との差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段を有しているので、諸条件(シートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、シートとブレーキロールの接触角度、シートのブレーキロール外周面に接する幅やシートの紙質など)に応じた許容可能な張力が、ブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、自動的に得られる。
【0015】
これらの結果、本発明によるシートの張力付加装置によれば、ブレーキロールのシートに対する滑りを防止して、ブレーキロールの摩耗を抑制すると共にシートに付加出来る張力の低下を抑制することが出来る。
【0016】
また、本発明において、好ましくは、第2制動力制御手段により第2の制動力がブレーキロールが与えられるよう制動力付与手段が制御されているときに、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する。
このように構成された本発明においては、第3制動力制御手段は、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となるように第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御されているときに、それらの回転速度の差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなる場合も含む)となったとき、即ち、ブレーキロールの滑りが生じなくなったときには、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻すので、シート(ライナ、中芯、又は、片面段ボールシート)に所望の許容可能な張力を付加することが出来る。
【0017】
また、本発明において、好ましくは、第2制動力制御手段は、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定時間以上続いて検出されたとき、ブレーキロールに上記第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第2制動力制御手段は、回転速度の差が所定時間以上続いて検出されたとき制動力付与手段を制御するので、より確実に滑りが生じている場合に、ブレーキロールに第2の制動力が与えることが出来る。
【0018】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置のブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層で形成されている。
このように構成された本発明においては、ブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層(例えば、ウレタン層やプラスチック層)で形成されているので、ブレーキロールとシートとの摩擦力を高めて、シートに付加できる張力を向上させることが出来る。特に、従来であれば、ゴム層は、シートに対するブレーキロールの滑りにより摩耗し易いものであったが、本発明によれば、上述した第2制動力制御手段によりブレーキロールの滑りが防止されるので、ゴム層の摩耗も抑制され、摩擦力を得やすいゴム層を用いて摩擦力を高めることが出来るという利点も確保出来る。また、同様に、ブレーキロール外周面に摩擦力の高い材質層を用いた場合も、その摩耗が抑制され、摩擦力を高めることが出来る。
【0019】
また、上記の目的を達成するために、本発明による段ボールシート製造装置は、ライナ又は中芯が装着され、繰り出されるライナ又は中芯に張力を付与するブレーキを有する一対の第1の原紙掛けと、この一対の第1の原紙掛けから繰り出されるライナ又は中芯の紙継ぎを行うスプライサであって、ライナ又は中芯を溜めると共にライナ又は中芯に張力を付与するダンサーロールを有するスプライサと、第1の原紙掛けのブレーキ及びスプライサのダンサーロールにより張力が付与されたライナ又は中芯にさらに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出されるライナ又は中芯に熱を与えるプレヒータと、中芯又はライナが装着された第2の原紙掛けと、プレヒータから繰り出されるライナ又は中芯、及び、第2の原紙掛けから繰り出される中芯又はライナのうち、中芯を段成形すると共にその段成形した中芯とライナとを接着して片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、を有する段ボールシート製造装置であって、張力付加装置は、上流側から引き込まれるライナ又は中芯が巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、入口ガイドロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられたライナ又は中芯に外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、段ボールシート製造装置の通常運転時に、ライナ又は中芯に所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴としている。
【0020】
このように構成された本発明においては、片面段ボールシートを製造する段ボールシート製造装置が、ライナ又は中芯に張力を付与するブレーキを有する第1の原紙掛けと、ライナ又は中芯に張力を付与するダンサーロールを有するスプライサと、第1の原紙掛けのブレーキ及び上記スプライサのダンサーロールにより張力が付与されたライナ又は中芯にさらに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出されるライナ又は中芯に熱を与えるプレヒータと、中芯又はライナが装着された第2の原紙掛けと、中芯を段成形すると共にその段成形した中芯とライナとを接着して片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、を有し、張力付加装置は、上流側から引き込まれるライナ又は中芯を案内する入口ガイドロールと、その入口ガイドロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられた外周面との摩擦力でライナ又は中芯に張力を付加することができるブレーキロールと、このブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出されたライナ又は中芯を下流側へ案内する出口ガイドロールと、段ボールライナ又は中芯製造装置の通常運転時に、ライナ又は中芯に上記所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、を有しているので、原紙掛け及びスプライサにより予め張力が付与されたライナ又は中芯に、さらに、張力付加装置により、シングルフェーサでのライナと中芯の接着に必要な十分な熱量をプレヒータで与えるための張力を付加することが出来る。
【0021】
また、本発明による段ボールシート製造装置に適用された張力付加装置は、上流側から引き込まれるライナ又は中芯を案内する入口ガイドロールと、その入口ガイドロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられた外周面との摩擦力でライナ又は中芯に張力を付加することができるブレーキロールと、このブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出されたライナ又は中芯を下流側へ案内する出口ガイドロールと、段ボールシート製造装置の通常運転時に、ライナ又は中芯に所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、を有しているので、簡便な構成でライナ又は中芯に張力を付加出来る。
【0022】
ここで、近年の段ボールシートも多様化に伴い、従来より薄いライナや中芯を成形する際、スプライサにおいて、このような薄紙のライナや中芯に従来と同様の強さの張力が付加されると、しわが発生し易いという問題があった。しかしながら、スプライサでのしわの発生を防止するために張力を落とすと、原理的に、ライナや中芯に所定の熱量を付与するためにそれらの搬送速度を落とさざるを得ないという問題が生じる。ライナや中芯の張力は、張力付加装置で付加することが出来るが、ライナ又は中芯のブレーキロールに対する滑りが生じると、それらの張力が低下して所望の張力が得られない上に、プレヒータでライナ又は中芯に十分な熱量を与えられないことになる。また、厚紙においても、プレヒータで、薄紙より多くの熱量を与えなければならないので、張力付加装置で、さらに大きな張力を付加しなければならず、それ故、ライナや中芯に対するブレーキロールの滑りが生じやすくなり、同様の問題が生じる。
【0023】
また、ブレーキロールがライナ又は中芯に付加できる最大張力は、ライナ又は中芯の搬送速度、ライナ又は中芯とブレーキロールの接触角度、ブレーキロール外周面の摩擦係数、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅やライナ又は中芯の紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ブレーキロールとライナ又は中芯との間の滑りは、実際にライナ又は中芯を段ボールシート製造装置で運転させて成形してみないと、生じるか否か分からない。このような理由により、従来、段ボールシート製造装置の運転速度を優先させ、所望の張力を得るために、上述したテンションインフィード装置の駆動ロールの滑りを黙認したまま、ライナなどと駆動ロールとの動摩擦係数を利用して、ライナなどの張力を付加することもあり、この場合、ブレーキロールの摩耗が問題となる。
【0024】
このような問題に対し、本発明による段ボール製造装置は、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有している。ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値以上であるということは、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)が単なる案内ロールとして機能していることを前提に考えると、ライナ又は中芯の搬送速度に対してブレーキロールの回転速度が遅れており、ブレーキロールにおいて、ライナ又は中芯とブレーキロール間の滑りが生じていることを意味する。
【0025】
従って、本発明による第2制動力制御手段によれば、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じ場合も含む)となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御するので、制動力を低下させた分だけ、ブレーキロールをライナ又は中芯の搬送に伴って従動的に回転させるようにして、ライナ又は中芯の搬送速度に追いくようにし、ライナ又は中芯に対するブレーキロールの滑りを防止することが出来る。ただし、このようなときでも、第2の制動力が与えられているので、ライナ又は中芯の張力も確保される。
【0026】
特に、このようにブレーキロールの滑りが防止されるので、ライナ又は中芯とブレーキロールとの間の摩擦力が静摩擦係数により得られ、最大摩擦力が大きくなり、作業者が所望する張力が得やすくなる。また、所望する張力まで届かなくても、本発明によるシートの張力付加装置は、ブレーキロールの回転速度と出口ガイドロール又は入口ガイドロールの回転速度との差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段を有しているので、諸条件(ライナ又は中芯の搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅やライナ又は中芯の紙質など)に応じた許容可能な張力が、ブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、自動的に得られる。このように、所望する張力、或いは、諸条件に応じた許容可能な張力が得られるので、プレヒータでの熱量付与の不足や段ボールシートの成形不良などの問題が生じることを抑制して、生産効率も高めることが出来る。
【0027】
これらの結果、本発明による段ボール製造装置によれば、ライナ又は中芯に対するブレーキロールの滑りを防止して、ライナ又は中芯に付加出来る張力の低下を抑制すると共にブレーキロールの摩耗を抑制することが出来る。また、本発明による段ボール製造装置によれば、ライナ又は中芯に対するブレーキロールの滑りを防止して、ライナ又は中芯の張力の低下及びブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、ライナ又は中芯の搬送速度を従来と同等以上に確保して、片面段ボールシートを効率よく製造することが出来る。
【0028】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置は、さらに、第2制動力制御手段により第2の制動力がブレーキロールが与えられるよう制動力付与手段が制御されているときに、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する。
このように構成された本発明においては、第3制動力制御手段は、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となるように第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御されているときに、それらの回転速度の差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となったとき、即ち、ブレーキロールの滑りが生じなくなったときには、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻すので、ライナ又は中芯に所望の許容可能な張力を付加することが出来る。
【0029】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置は、さらに、第1回転速度検出手段により検出される出口ガイドロールの回転速度が所定値未満のとき、ブレーキロールに制動力を与えないよう制動力付与手段を制御する第4制動力制御手段を有し、ブレーキロールは、制動力が与えられないとき、空転するよう構成され、その外周面で、ライナ又は中芯を案内するガイドロールとして機能する。
このように構成された本発明においては、出口ガイドロールの回転速度が所定値未満のとき、即ち、ライナ又は中芯の搬送速度が低いとき、第4制動力制御手段により、ブレーキロールに制動力を与えないよう制動力付与手段が制御され、ブレーキロールは、制動力が与えられないとき、空転して、その外周面でライナ又は中芯を案内するガイドロールとして機能するので、ライナ又は中芯の搬送速度の低下幅が大きくなることを抑制することが出来る。特に、ライナ又は中芯の搬送速度が低いとき、ブレーキロールに制動力を与えるとライナ又は中芯の搬送が止まってしまうことを防止することが出来る。
【0030】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置は、さらに、少なくともスプライサにおける接着テープによるライナ又は中芯の紙継ぎ部がプレヒータを通過する間、プレヒータが紙継ぎ部に与える熱量により紙継ぎ部の接着テープが剥がれないような張力をライナ又は中芯に付加するために、第1の制動力より小さい第3の制動力をブレーキロールに与えるよう制動力付与手段を制御する第5制動力制御手段を有する。
このように構成された本発明においては、第5制動力制御手段は、少なくともスプライサにおける接着テープによるライナ又は中芯の紙継ぎ部がプレヒータを通過する間、プレヒータが上記紙継ぎ部に与える熱量により紙継ぎ部の接着テープが剥がれないような張力をライナ又は中芯に付加するために、第1の制動力より小さい第3の制動力をブレーキロールに与えるよう制動力付与手段を制御するので、プレヒータから紙継ぎ部に熱量が入り過ぎることによる接着テープの剥がれを防止することが出来る。
【0031】
また、本発明において、好ましくは、ライナ又は中芯に付加される所定の張力は、第1の原紙掛けのブレーキ及びスプライサのダンサーロールにより付与された張力に対する割合値として設定され、張力付加装置の第1制動力制御手段は、この割合値として設定された張力をライナ又は中芯に付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する。
このように構成された本発明においては、所定の張力は、第1の原紙掛け及びスプライサにより付与された張力に対する割合値として設定され、第1制御力制御手段は、その割合値に基づいて制動力付与手段を制御するので、スプライサなどにより予め付与された張力に応じて、適正な張力をライナ又は中芯に付加することが出来る。
【0032】
また、上記の目的を達成するために、本発明による段ボールシート製造装置は、片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、このシングルフェーサで成形された片面段ボールシートが運ばれるブリッジと、このブリッジ上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出される片面段ボールシートに熱を与えるプレヒータと、バックライナが装着された原紙掛けと、プレヒータから繰り出される片面段ボールシートの中芯の頂部に糊付けを行うグルーマシンと、このグルーマシンから繰り出される片面段ボールシート及び原紙掛けから繰り出されたバックライナに圧力をかけると共に互いに接着して両面段ボールシートを成形するダブルフェーサと、を有する段ボールシート製造装置であって、張力付加装置は、上流側から引き込まれる片面段ボールシートが巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、入口ガイドロールから引き出された片面段ボールシートが巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられた片面段ボールシートに外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出された片面段ボールシートが巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、段ボールシート製造装置の通常運転時に、片面段ボールシートに所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴としている。
【0033】
このように構成された本発明においては、片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、このシングルフェーサで成形された片面段ボールシートが運ばれるブリッジと、このブリッジ上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出される片面段ボールシートに熱を与えるプレヒータと、バックライナ用の第3の原紙掛けと、プレヒータから繰り出される片面段ボールシート及び第3の原紙掛けから繰り出されるバックライナにそれぞれ糊付けを行うグルーマシンと、グルーマシンからそれぞれ繰り出される片面段ボールシート及びバックライナを互いに接着して両面段ボールシートを成形するダブルフェーサと、を有し、張力付加装置は、上流側から引き込まれる片面段ボールシートを案内する入口ガイドロールと、その入口ガイドロールから引き出された片面段ボールシートが巻き付けられた外周面との摩擦力で片面段ボールシートに張力を付加することができるブレーキロールと、このブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、ブレーキロールから引き出された片面段ボールシートを下流側へ案内する出口ガイドロールと、段ボール片面段ボールシート製造装置の通常運転時に、片面段ボールシートに所定の張力を付加するため、ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、を有しているので、ブリッジ上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートに、ダブルフェーサでの片面段ボールシートとバックライナとの接着に必要な十分な熱量をプレヒータで片面段ボールシートに与えるための張力を付加することが出来る。
【0034】
ここで、上述したように、従来のブレーキスタンドでは、ロールの滑りに伴い、張力が低下すると共にロールの摩耗が生じていた。所望の張力が得られなければ、下流のダブルフェーサにおける段ボールシートの成形不良が生じてしまうので、段ボール製造装置の運転速度(片面段ボールシートの搬送速度)をあまり高めることが出来ない。また、ブレーキロールが片面段ボールシートに付加できる最大張力は、片面段ボールシートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅やライナ又は中芯の紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ブレーキロールと片面段ボールシートとの滑りは、実際に片面段ボールシートを段ボールシート製造装置で運転させて成形してみないと、生じるか否か分からない。このような理由により、従来、段ボールシート製造装置の運転速度を優先させ、所望の張力を得るために、ブレーキスタンドのロールの滑りを黙認したまま、片面段ボールシートとロールとの動摩擦係数を利用して、片面段ボールシートに張力を付加することもあり、この場合、ブレーキスタンドのゴムロールの交換頻度が高まる。
【0035】
このような問題に対し、本発明による段ボール製造装置は、ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、出口ガイドロール又は入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度と差が所定値以上のとき、その回転速度の差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有している。ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値以上であるということは、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)が単なる案内ロールとして機能していることを前提に考えると、片面段ボールシートの搬送速度に対してブレーキロールの回転速度が遅れており、ブレーキロールにおいて、片面段ボールシートとブレーキロール間の滑りが生じていることを意味する。
【0036】
従って、本発明による第2制動力制御手段によれば、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じ場合も含む)となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御するので、制動力を低下させた分だけ、ブレーキロールを片面段ボールシートの搬送に伴って従動的に回転させるようにして、片面段ボールシートの搬送速度に追いつくようにし、そのような片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止することが出来る。
【0037】
特に、このようにブレーキロールの滑りが防止されるので、片面段ボールシートとブレーキロールとの間の摩擦力が静摩擦係数により得られ、最大摩擦力が大きくなり、作業者が所望する張力が得やすくなる。また、所望する張力まで届かなくても、本発明によるシートの張力付加装置は、ブレーキロールの回転速度と出口ガイドロール又は入口ガイドロールの回転速度との差が所定値未満となるように第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段を有しているので、諸条件(シートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、シートのブレーキロール外周面に接する幅やシートの紙質など)に応じた許容可能な張力が、ブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、自動的に得られる。このように、所望する張力、或いは、諸条件に応じた許容可能な張力が得られるので、プレヒータでの熱量付与の不足や段ボールシートの成形不良などの問題が生じることを抑制して、生産効率も高めることが出来る。
【0038】
これらの結果、本発明による段ボール製造装置によれば、片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止して、片面段ボールシートに付加出来る張力の低下を抑制すると共にブレーキロールの摩耗を抑制することが出来る。また、本発明による段ボール製造装置によれば、片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止して、片面段ボールシートの張力の低下及びブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、片面段ボールシートの搬送速度を従来と同等以上に確保して、両面段ボールシートを効率よく製造することが出来る。
【0039】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置は、さらに、第2制動力制御手段により第2の制動力がブレーキロールが与えられるよう制動力付与手段が制御されているときに、第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する。
このように構成された本発明においては、第3制動力制御手段は、ブレーキロールの回転速度と、出口ガイドロール(又は入口ガイドロール)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となるように第2の制動力を与えるよう制動力付与手段を制御されているときに、それらの回転速度の差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じとなるようにする場合も含む)となったとき、即ち、ブレーキロールの滑りが生じなくなったときには、ブレーキロールに再び第1の制動力を与えるよう第1制動力制御手段への制御に戻すので、片面段ボールシートに所望の許容可能な張力を付加することが出来る。
【0040】
また、本発明において、好ましくは、張力付加装置のブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層で形成されている。
このように構成された本発明においては、ブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層(例えば、ウレタン層やプラスチック層)で形成されているので、ブレーキロールとシートとの摩擦力を高めて、ライナ、中芯又は片面段ボールシートに付加できる張力を向上させることが出来る。特に、従来であれば、ゴム層は、シートに対するブレーキロールの滑りにより摩耗し易いものであったが、本発明によれば、上述した第2制動力制御手段により滑りが防止されるので、ゴム層の摩耗も抑制され、摩擦力を得やすいゴム層を用いて摩擦力を高めることが出来るという利点も確保出来る。また、同様に、ブレーキロール外周面に摩擦力の高い材質層を用いた場合も、その摩耗が抑制され、摩擦力を高めることが出来る。これらの結果、ライナ、中芯又は片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止して、片面段ボールシートの搬送速度を従来と同等以上に確保して、上述した本発明の段ボールシート製造装置により、片面段ボールシート又は両面段ボールシートの製造の生産効率を高めることが出来る。
【発明の効果】
【0041】
本発明によるシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置によれば、張力付加用ブレーキロールのシート(ライナ、中芯或いは片面段ボール)に対する滑りを防止して、張力付加用ブレーキロールの摩耗を抑制すると共にシートに付加出来る張力の低下を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた片面段ボールシート製造装置の全体構成を側面から見た概略全体構成図である。
【図2】図1に示す片面段ボールシート製造装置の原紙掛け、スプライサ、張力付加装置及びプレヒータを側面から見た概略構成図である。
【図3】図1に示す片面段ボールシート製造装置のシングルフェーサを側面から見た概略構成図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置を側面から見た概略構成を示す側面図であり、図4(b)は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置を正面から見た概略構成を示す正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置に用いられるブレーキ装置であるパウダーブレーキの断面構造を示す断面図(a)、及び、ブレーキ装置の他の例によるエアブレーキの断面構造を示す断面図(b)である。
【図6】本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御系統を示す図4(b)に対応する制御系統図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた両面段ボールシート製造装置の全体構成を側面から見た概略全体構成図である。
【図9】図8に示す両面段ボールシート製造装置のバックライナ用原紙掛け、ブリッジ、張力付加装置及びプレヒータを拡大して示す概略構成図である。
【図10】図9に示すシートの張力付加装置を拡大して示す概略構成図である。
【図11】本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御系統を示す制御系統図である。
【図12】本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、添付図面により、本発明の実施形態によるシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置を説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた本発明の第1実施形態による段ボールシート製造装置を説明する。本実施形態では、段ボールシート製造装置は、片面段ボールシート製造装置である。
【0044】
図1は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた片面段ボールシート製造装置の全体構成を側面から見た概略全体構成図であり、図2は、図1に示す片面段ボールシート製造装置の原紙掛け、スプライサ、張力付加装置及びプレヒータを側面から見た概略構成図であり、図3は、図1に示す片面段ボールシート製造装置のシングルフェーサを側面から見た概略構成図である。
【0045】
先ず、図1に示すように、符号1は、本発明の第1実施形態による片面段ボールシート製造装置を示し、この装置1は、原紙掛け2に装着され、ライナLがそれぞれ巻き付けられた一対の原紙掛け2と、これらの原紙掛け2から繰り出されるライナLの紙継ぎを行うスプライサ6と、スプライサ6から繰り出されるライナLに張力を付加する張力付加装置8と、この張力付加装置8から繰り出されるライナLに熱を与えるためのプレヒータ10と、原紙掛12に装着され、中芯Fがそれぞれ巻き付けられた一対の原紙14と、原紙14からスプライサ(図示せず)及びプレヒータ15を介して繰り出される中芯Fを段成形すると共にその段成形した中芯とライナとを接着して片面段ボールシートを成形するシングルフェーサ16と、を有している。
【0046】
次に、図2により、原紙掛け、スプライサ及びプレヒータの構成を説明する。
図2に示すように、原紙掛け2は、ブレーキ20を有し、シングルフェーサ16による後述する下段ロール46及びプレスロール54(図3参照)により引き込まれるライナL(又は中芯F)に張力を付与するようになっている。
【0047】
次に、ライナLは、スプライサ6に繰り出され、このスプライサ6は、一対の原紙掛け2の一方から繰り出されるライナLを案内するガイドローラ22を備えたスプライスヘッド24と、ダンサーロール機構26と、を主に有している。ダンサーロール機構26は、ライナLを案内する複数の固定されたガイドローラ28と、水平方向に移動してライナLを多段に巻き取ってライナLの溜め部30を形成する32と、を有する。
【0048】
このスプライサ6による溜め部30は、スプライスヘッド24による、一方の原紙掛け2のライナLから他方の原紙掛け2のライナLへの紙継ぎを行う際に、スプライサ6自身の上流側と下流側との間のライナLの搬送速度の差を吸収すると共に下流側でのライナLの搬送速度を一定に保つ役割を果たすためのものである。本実施形態において、紙継ぎは、接着テープにより行われる。
【0049】
また、ダンサーロール機構26は、そのダンサーロール32の左右方向の移動により、シングルフェーサ16による段成形により引き込まれるライナLに張力を付与する役割を果たす。
【0050】
次に、スプライサ6から繰り出されるライナL(又は中芯F)は、後述する張力付加装置8を通って、プレヒータ10(又はプレヒータ15)へと導かれる。
プレヒータ10は、所定の熱源から熱が供給されライナLに熱を与えるヒータロール本体34と、このロール本体へのライナLの巻き付け量を確保するための2つのガイドロール36と、を有している。
【0051】
プレヒータ10では、主に、その巻き付け量と、原紙掛け2のブレーキ20及びスプライサ6のダンサーロール機構26により付与された張力と、さらに、本実施形態では、張力付加装置8により付加された張力によって、ライナLに与えられる熱量が設定される。プレヒータ10(15)は、ライナL(又は中芯F)に、シングルフェーサ16でライナLや中芯Fを接着するために必要な所定の熱量を付与するためのものである。
プレヒータ10(15)から繰り出されるライナLは、その下流側のシングルフェーサ16に引き込まれ所定の成形がなされる。
【0052】
次に、図3により、シングルフェーサの構成を説明する。
図3に示すように、シングルフェーサ16には、中芯Fが、原紙掛け12から(図3上では右方から)引き込まれる。この原紙掛け12は、上述した原紙掛け2と同様に、ブレーキ40を有し、スプライサ(図示せず)及びプレヒータ15を介して、シングルフェーサ16による上段ロール44及び下段ロール46による段成形により引き込まれる中芯Fに張力を付与するようになっている。
【0053】
シングルフェーサ16は、主に、その中芯Fを上流側で案内するガイドロール42と、中芯Fを段成形するために外周が段形状に形成された上段ロール44及び下段ロール46と、段成形された中芯Fを下段ロール46に吸着保持するためのサクションチャンバー48と、この吸着保持された段成形された中芯Fの頂部に糊付けするための糊付けロール50及びドクターロール52と、上述した図2に示すプレヒータ10から繰り出されるライナLを案内すると共に、そのライナLと頂部に糊付けされた中芯Fとを接着するために下段ロール46に圧力をかけるプレスロール54と、を有する。
【0054】
これらの構成により中芯Fが成形されると共にライナLと接着され、片面段ボールシートSが成形される。成形された片面段ボールシートSは、テイクアップコンベア56によりブリッジ58上に運ばれる。
【0055】
なお、シングルフェーサは、この構成のものに限らず、中芯Fが上述した原紙掛け2、スプライサ6、張力付加装置8及びプレヒータ10を介して繰り出され、一方、上述した原紙掛け12からライナLが繰り出されて、段ロールにより中芯Fが段成形されると共にライナLと接着されて、片面段ボールシートが成形される構成のものであっても良い。
【0056】
次に、図4及び図5により、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の機械的構造を説明する。
図4(a)は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置を側面から見た概略構成を示す側面図であり、図4(b)は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置を正面から見た概略構成を示す正面図であり、図5(a)は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置に用いられるブレーキ装置であるパウダーブレーキの断面構造を示す断面図であり、図5(b)は、ブレーキ装置の他の例によるエアブレーキの断面構造を示す断面図である。
【0057】
図4(a)及び図4(b)に示すように、張力付加装置8は、スプライサ6(図2参照)から繰り出されるライナL(又は中芯F)が引き込まれ且つ巻き付けられて、そのライナLを案内する入口ガイドロール70と、この入口ガイドロール70から引き出されたライナLが巻き付けられるブレーキロール72と、このブレーキロール72から引き出されたライナLが巻き付けられ、プレヒータ10への繰り出しを案内する出口ガイドロール74と、を有する。これらのロール70、72、74は、筐体76に設けられたそれぞれの軸70a、72a、74aにより軸支され、ライナLの搬送に伴い、ライナLとの摩擦力により回転可能となっている。
【0058】
入口ガイドロール70と、出口ガイドロール74とは、それぞれ、ライナLのブレーキロール72への巻き付け量をなるべく多く確保するために、互いに近接して配置されている。また、入口ガイドロール70の方が、出口ガイドロール74よりも、ブレーキロール72の近傍に配置されている。
【0059】
ブレーキロール72の軸72aには、ブレーキ装置78が連結されている。ブレーキ装置78は、ブレーキロール72に制動力を与えるか、或いは、制動力を与えずに、ブレーキロール72の自由回転を許容するように構成されている。ブレーキ装置78の詳細な構造については後述する。
【0060】
ブレーキロール72は、上述した軸72aに接続されたロール本体72bと、そのロール本体72bの外周面に形成されたゴム層72cと、を有している。ライナL(又は中芯F)は、その搬送時に、ブレーキロール72にブレーキ装置78から制動力が与えられるとき、この外周面のゴム層72cとの摩擦力によりブレーキロール72から張力が付加される。ブレーキロール72にブレーキ装置78から制動力が与えられないときには、ライナLには、張力は付加されない。なお、ロール本体72bの外周面は、ゴム層の代わりに摩擦力の高い材質層としてウレタン層やプラスチック層などを用い、また、ゴム層を含め、それらの表面にローレット処理、梨地状処理、溶射処理などを施すようにしても良い。
【0061】
次に、張力付加装置8は、ブレーキロール72の回転速度を検出する第1エンコーダ80と、出口ガイドロール74の回転速度を検出する第2エンコーダ82と、を有し、本実施形態では、それらのエンコーダ80、82は、ブレーキロール72及び出口ガイドロール74の各軸72a、74aに近接して配置されている。
【0062】
本実施形態では、後述するように、第2エンコーダ82により出口ガイドロール74の回転速度を検出することにより、ライナLの搬送速度を検出(算出)する。
また、第1エンコーダ80及び第2エンコーダ82の両方の回転速度値を検出することにより、第2エンコーダ82により検出された出口ガイドロール74の回転速度に対して、第1エンコーダ80により検出されたブレーキロール72の回転速度が小さい場合には、ライナLの搬送速度に対してブレーキロール72の回転速度が遅れ、滑りが生じていると判定して、ブレーキ装置78によるブレーキロール72の制動力を低下させる制御を行う。
【0063】
なお、ライナLの搬送速度を検出(算出)出来るのであれば、第2エンコーダ82は、出口ガイドロール74の軸74aの代わりに、入口ガイドロール70の軸70aに設け、入口ガイドロール70の回転速度を検出するようにしてもよい。また、これらのエンコーダは公知のエンコーダであるが、各軸の回転速度を検出することができるものであれば、他のものでも良く、或いは、各軸又はローラの回転速度を検出することができるものであれば、各軸又はローラに近接して配置するセンサ形式でなくても良い。
【0064】
ここで、図5(a)により、ブレーキ装置78の構造を説明する。
ブレーキ装置78は、公知のパウダーブレーキであり、そのロータ軸78aが、ブレーキロール72の軸72a(図4参照)に連結されている。より詳細には、パウダーブレーキは、そのロータの回転翼78bと、ステータ78cとの隙間78dに磁性体のパウダが流体と共に封入されており、ステータ78cに設けられたコイル78eに電流を流すと、その磁性体のパウダが鎖状に繋がって固体状となることにより、ステータ78cとロータの回転翼78bとの間に抵抗力が発生して、ロータ軸78aの回転に抵抗、即ち、制動を与えるようになっている。なお、ステータ78c、ロータの回転翼78b、磁性体のパウダを封入するハウジング78fは、図4に示す張力付加装置8の筐体76に固定されている。パウダーブレーキのコイル78eに電流を流さない場合には、磁性体のパウダは鎖状に繋がって固体状とならず、ロータ軸78aの回転に抵抗、即ち、制動を与えない。
【0065】
図5(b)は、パウダーブレーキ装置の他の例として使用される公知のエアディスクブレーキである。このエアディスクブレーキは、ロータ軸79aに接続されたディスク(円盤)79bが、ブレーキロール72の軸72a(図4参照)に連結されている。そのディスク回転翼79bと、ブレーキパッド固定体79cとの隙間には、空気圧力を供給することにより膨張し、また、空気を排気することにより収縮する空気ピストンを有するブレーキパッド79dが配置され、このブレーキパッド79d及びブレーキパッド固定体79cが、筐体76(図4参照)に固定されている。その作用は、空気圧力が空気ピストンに供給されることにより、ブレーキパッド79dがディスク回転翼79bと接触して、ロータ軸79aの回転に抵抗を与え、制動するようになっている。また、図5(a)に示すパウダーブレーキと同様に、空気ピストンを有するブレーキパッド79dの空気(圧力)を排出することにより、ロータ軸79aの回転に抵抗、即ち、制動を与えない。
【0066】
次に、図6により、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の制御構成を説明する。
図6は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御系統を示す図4(b)に対応する制御系統図である。
先ず、図6に示すように、本実施形態によるシートの張力付加装置8は、ブレーキ装置78の制動力を制御するための制動力制御装置90を有し、この制動力制御装置90には、作業者による各種設定値(ライナLの張力付加割合など)の入力を行うための設定装置92が接続されている。
また、制動力制御装置90は、スプライサ6から、紙継ぎを行ったときに発信されるスプライス信号が入力されるように、スプライサ6と接続されている。
【0067】
また、制動力制御装置90は、上述したブレーキロール72の回転速度を検出する第1エンコーダ80、出口ガイドロール74の回転速度を検出する第2エンコーダ82、及び、ブレーキ装置78に接続され、それらのエンコーダ80、82から各ロール72、74の回転速度信号が入力されるようになっている。
【0068】
制動力制御装置90は、ブレーキ装置78に接続され、それらの入力された信号に基づき、ブレーキ装置78によるブレーキロール72の制動力の制御を行う。
【0069】
次に、図6及び図7により、制動力制御装置90による制御内容を説明する。
図7は、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御内容を示すフローチャートである。以下、Sは、各ステップを示す。
先ず、図7に示すように、S1において、作業者により設定装置92(図6の機能0)で入力された、張力付加装置8によりライナL(又は中芯F)に付加する張力(テンション)の割合値を読み込む。本実施形態では、既に、原紙掛け2及びスプライサ6によりライナLに張力が付与されているので、更にその張力に付加したい割合が「%」で入力されている。この場合、ブレーキ装置78(図4(b)参照)の付加能力を100%としているので、100%以下の数値が入力されることになる。
【0070】
次に、S2に進み、出口ガイドロール74の回転速度を検出する第2エンコーダ82からの回転速度信号(図6の機能1)により、ライナLの搬送速度が所定値以上か否かを判定する。この図7の例では、設定装置92により予め80m/minと設定されている。
【0071】
ライナLの搬送速度が所定値以上の場合は、S3に進み、制動力制御装置90の第1制動力制御部90aにより、S1で読み込まれた張力がブレーキロール72からライナLにかかるような制動力(第1の制動力)を与えるよう、ブレーキ装置78を制御する(図6の機能2)。言い換えれば、ブレーキ装置78に制動力を与え、ライナLの張力(テンション)を、S1で読み込まれた張力まで上昇させる。なお、制動力制御装置90は、ブレーキロール72の半径やトルク値などの所定の理論値に基づいて計算上得られる制動力及び張力値のデータを有し、これらのデータに基づいて、S1で読み込まれた張力が得られるような制動力がブレーキロール72に与えられるようブレーキ装置78を制御する。なお、このS3では、予め、付加する最大張力が、具体的数値として設定装置92により設定され(例えば125kgfを100%とする)、その数値を超えないように制御される。
【0072】
なお、張力付加装置8により付加されて得られたライナLの張力は、図4(b)に示すように、張力付加装置8の下流側に設けられた張力測定器85により測定される。作業者は、この測定器85により検出された張力により、原紙掛け2及びスプライサ6によるライナLの張力に、張力付加装置8により適切な張力が付加され、設定装置92により設定付加された「トータル張力(所望する張力)」が得られているか否かを確認することが出来る。
【0073】
次に、S4に進み、スプライサ6から、スプライス信号が入力された否かを判定する(図6の機能3)。スプライス信号が入力された場合は、S5〜S8のスプライステンション加工処理に進む。
S5では、接着テープによる紙継ぎ位置(紙継ぎ部)が、スプライサ6から搬送された距離を、第2エンコーダ82からの回転速度信号(図6の機能1)に基づいて測長する。
【0074】
次に、S6に進み、S5により測長された距離が所定距離以上か否か、即ち、スプライサ6からプレヒータ10までの距離(実用的には、スプライサ6からプレヒータ10までの距離より短い距離が設定され、本実施形態では20mである)以上か否かが判定される。所定距離未満の場合には、紙継ぎ部がプレヒータ10に届いていないので、S5及びS6を繰り返す。
【0075】
S6により、S5により測長された距離が所定距離以上であると判定された場合には、S7に進み、S3でライナLに付加した張力を所定値まで低下させるよう、即ち、ブレーキロール72からライナLにかかる制動力を低下させるよう、ブレーキ装置78を制御する。
【0076】
即ち、このS7では、制動力制御装置90の第5制動力制御部90eにより、紙継ぎ部がプレヒータ10に到達するとき(実用的には、紙継ぎ部がプレヒータ10に到達する前)、プレヒータ10が紙継ぎ部に与える熱量が、その紙継ぎ部の接着テープが剥がれない程度の熱量まで下がるように、S3でブレーキロール72に与えた制動力(第1の制動力)より小さい制動力(第3の制動力)をブレーキロール72に与えるよう、ブレーキ装置78を制御する(図6の機能4)。このS7でライナLに付加される張力は、予め、設定装置92で設定されるが、最終的に得られる張力は、原理上、上述した原紙掛け2及びスプライサ6で予め付与された張力と、この張力付加装置8で付加される張力との合算値であるため、本装置8で付加される張力が0kgfであっても、原紙掛け2及びスプライサ6により付与される張力以下には下がらない。
【0077】
次に、S8に進み、第2エンコーダ82からの回転速度信号(図6の機能1)に基づき、紙継ぎ部がプレヒータ10を確実に通過したか否かを判定する。この例では4mであり、予め、設定装置92で設定される。
【0078】
次に、S9に進み、制動力制御装置90の第1制動力制御部90aにより、S1で設定した張力に復帰するように、即ち、S3で付加した張力が、再度、ブレーキロール72からライナLに付加されるように、ブレーキ装置78を制御する(図6の機能2)。
【0079】
次に、S2において、制動力制御装置90の第4制動力制御部90dにより、搬送速度が所定値未満の場合には、S10に進み、ブレーキロール72がライナLに張力を与えないよう、ブレーキ装置78を制御する。即ち、ブレーキ装置78を作動させず、ブレーキロール72をライナLの搬送に伴う単なるアイドルロールとして作動させる。このように、搬送速度が所定値未満の場合に、ライナLに張力を付加しないのは、ライナLの搬送速度が遅いときにブレーキロール72に制動力を与えると、ライナLの搬送速度の低下幅が大きくなるからであり、また場合によっては、ブレーキロール72が停止状態に陥るからである。
【0080】
次に、S4において、スプライス信号が入力されない場合(段ボールシート製造装置の通常運転時)は、S11に進み、S11〜S13において、制動力制御装置90の第2制動力制御部90bにより、ブレーキ装置78の滑り制御を行う。
S11では、第1エンコーダ80からブレーキロール72の回転速度信号を読み込み、また、第2エンコーダ82から出口ガイドロール74の回転速度を読み込む(図6の機能1、6)。
【0081】
次に、S12に進み、S11で読み込んだブレーキロール72の回転速度と、出口ガイドロール74の回転速度との差が、所定値以上であるか否かを判定する。また、本実施形態では、このS12において、それらの回転速度の差が所定時間以上続くか否かも判定する。
【0082】
ブレーキロール72の回転速度と、出口ガイドロール74の回転速度との差が、所定値以上である状態が所定時間以上続いた場合には、S13に進み、S3でブレーキロール72に与えた制動力(第1の制動力)より小さい制動力(第2の制動力)をブレーキロール72に与えるよう、ブレーキ装置78を制御する(図6の機能7)。
【0083】
本実施形態では、ブレーキロール72の回転速度と、出口ガイドロール74の回転速度とが、ほぼ同じとなるまでS11〜S13の処理を繰り返す。なお、各ロール72、74の回転速度の差が、S12で判定した所定値未満となるまで、S11〜S13の処理を繰り返すようにしても良い。このような所定値は、ブレーキロール72がライナLや中芯Fに対して滑っている状態か否かの値として設定される。
【0084】
そして、本実施形態では、S12において、制動力制御装置90の第3制動力制御部90cにより、ブレーキロール72の回転速度と、出口ガイドロール74の回転速度との差が所定値(滑っている状態か否かの値)未満か否かを判定し、所定値未満であれば、S3に戻し、S1で読み込まれた張力がブレーキロール72からライナLにかかるような制動力(第1の制動力)が再び与えられるよう、ブレーキ装置78を制御する(図6の機能8)。
【0085】
次に、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置の作用効果を説明する。
先ず、本発明の第1実施形態によるシートの張力付加装置の作用効果を説明する。
本実施形態の段ボールシート製造装置1においては、原紙掛け2がブレーキ20を有し、スプライサ6がダンサーロール機構26を有し、それらのブレーキ20及びダンサーロール機構26により、シート(本実施形態では、ライナL又は中芯F)に予め張力が付与されている。本実施形態では、このシートL、Fに予め付与されている張力に、張力付加装置8により、さらに張力を付加している。
【0086】
即ち、本実施形態による張力付加装置8は、段ボールシート製造装置1の上流側から引き込まれるシートL、Fを案内する入口ガイドロール70と、その入口ガイドロール70から引き出されたシートL、Fが巻き付けられた外周面との摩擦力でシートL、Fに張力を付加することができるブレーキロール72と、このブレーキロール72に制動力を与えることができるブレーキ装置78と、ブレーキロール72から引き出されたシートL、Fを下流側へ案内する出口ガイドロール74と、段ボールシート製造装置1の通常運転時に、シートL、Fに所定の張力を付加するため、ブレーキロール72に所定の制動力(通常運転時に付加される制動力)(第1の制動力)を与えるようブレーキ装置78を制御する制動力制御装置90と、を有しているので、ライナL又は中芯Fに張力を付加出来る。制動力制御装置90によるブレーキ装置78の通常運転時の制御は、図7のステップS3及びS9において実行される。
【0087】
ここで、張力付加装置8が有するブレーキロール72と搬送されるシート(本実施形態では、ライナL又は中芯F)との摩擦力により付加される張力について説明する。
シートL、Fに付加される張力は、ブレーキロール72にブレーキ装置78から制動力が与えられることにより、ブレーキロール72の外周面72cとシートL、Fとの間の摩擦力で付加されるが、ブレーキロール72がシートL、Fに付加できる最大張力は、シートL、Fの搬送速度やブレーキロール外周面72cの摩擦係数、シートL、Fとブレーキロール72の接触角度、ライナLや中芯Fのブレーキロール72の外周面72cに接する幅やシートL、Fの紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ブレーキロール72とシートL、Fとの滑りは、作業者には、実際には、どのような設定下(シートL、Fの搬送速度やブレーキロール外周面72cの構成など)で生じるか予測不可能である。
【0088】
最大張力は、ブレーキロール72がシートL、Fと同期して、静摩擦係数に基づいて回転しているときに発生し、一方、シートL、Fの搬送速度に対してブレーキロール72の回転速度が遅れ、それらの間に滑りが生じると、ブレーキロール72は動摩擦係数に基づいてシートL、Fに張力を与えることになり、シートL、Fに付加できる張力は低下する。従って、滑りは生じない方が得られる張力は大きいし、ブレーキロール72の摩耗も抑制できる。
【0089】
本実施形態による張力付加装置8は、ブレーキロール72の回転速度を検出する第1エンコーダ80と、出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール70)の回転速度を検出する第2エンコーダ82と、を有している。制動力制御装置90は、段ボールシート製造装置の運転中、それぞれの回転速度を常に監視し、出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール70)の回転速度からは、シートの搬送速度を検出し、また、ブレーキロール72の回転速度及び出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール70)の回転速度の差も検出している。
【0090】
ブレーキロール72の回転速度と、出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール70)の回転速度との差が所定値以上であるということは、出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール70)が単なる案内ロールとして機能していることを前提に考えると、シートL、Fの搬送速度に対してブレーキロール72の回転速度が遅れており、ブレーキロール72において、シートL、Fとブレーキロール72との間に滑りが生じていることを意味する。
【0091】
そこで、本実施形態では、制動力制御装置90は、第1エンコーダ80により検出されたブレーキロール72の回転速度と、第2エンコーダ82により検出された出口ガイドロール74の回転速度と差が所定値以上のとき、それらの回転速度がほぼ同じ(或いは、回転速度の差が所定値未満)となるような制動力(通常運転時に付加される制動力より小さい制動力)(第2の制動力)をブレーキロール72に与えるようブレーキ装置78を制御するようにしている。制動力制御装置90によるブレーキ装置78の「ブレーキロール72の滑り時」における制御は、図7のS11〜13において実行される。これにより、ブレーキロール72の制動力が低下し、その結果、シートL、Fに対するブレーキロール72の滑り(シートL、Fの搬送速度に対するブレーキロール72の回転速度の遅れ)を防止することが出来る。
【0092】
このように、本実施形態においては、張力付加装置8のブレーキロール72に滑りが生じないようにしているので、ブレーキロール72の摩耗を抑制することが出来ると共にシートL、Fに付加出来る張力の低下を抑制することができる。特に、このようにブレーキロールの滑りが防止されるので、シートL、Fとブレーキロール72との間の摩擦力が静摩擦係数により得られ、最大摩擦力が大きくなり、作業者が所望する張力が得やすくなる。また、所望する張力まで届かなくても、本実施形態の張力付加装置8は、ブレーキロール72の回転速度と出口ガイドロール74の回転速度との差が、ほぼ一定(或いは、所定値未満)となるような制動力がブレーキロール72に与えられるようにブレーキ装置78を制御するようになっているので、諸条件(シートL、Fの搬送速度やブレーキロール72の外周面72cの摩擦係数、シートL、Fとブレーキロール72の接触角度、シートL、Fのブレーキロール外周面72cに接する幅やシートL、Fの紙質など)に応じた許容可能な張力が、ブレーキロール72cの摩耗を抑制しつつ、自動的に得られる。
【0093】
また、張力付加装置8は、入口ガイドロール70と、ブレーキロール72と、ブレーキ装置78と、出口ガイドロール74と、制動力制御装置90と、による簡便な構成でシートL、Fに張力を付加出来る。
【0094】
また、制動力制御装置90は、第1エンコーダ80により検出されたブレーキロール72の回転速度と、第2エンコーダ82により検出された出口ガイドロール74(又は入口ガイドロール74)の回転速度との差が所定時間以上続いて検出されたとき、上述したブレーキ装置78の「ブレーキロール72の滑り時」における制御を行うので、ブレーキロール72に確実に「滑り」が生じていると判断して、必要且つ確実なときのみ、ブレーキロール72の制動力を低下させている。これにより、通常運転時に付加されるシートL、Fの張力の低下時間を最小限に抑えて、段ボールシートの生産効率を低下させないようにすることが出来る。
【0095】
また、ブレーキロール72の外周面72cはゴム層で形成されているので、ブレーキロール72とシートL、Fとの摩擦力を高めて、シートL、Fに付加できる張力を向上させることが出来る。一方、従来であれば、ゴム層は、シートに対するブレーキロールの滑りにより摩耗し易いものであったが、本実施形態によれば、制動力制御装置90による制御によりブレーキロール72の滑りが防止されるので、ゴム層72cの摩耗も抑制され、ゴム層72cを用いて摩擦力を高めることが出来るという利点も確保出来る。
【0096】
次に、本発明の第1実施形態による段ボールシート製造装置の作用効果を説明する。
本実施形態による片面段ボールシートを製造する段ボールシート製造装置は、ライナLに張力を付与するブレーキ20を有する原紙掛け2と、ライナLに張力を付与するダンサーロール32を有するスプライサ6と、原紙掛け2のブレーキ20及びスプライサ6のダンサーロール32により張力が付与されたライナLにさらに所定の張力を付加する張力付加装置8と、この張力付加装置8から繰り出されるライナLに熱を与えるプレヒータ10と、中芯Fが装着された原紙掛け12と、中芯Fを段成形すると共にその段成形した中芯FとライナLとを接着して片面段ボールシートを成形するシングルフェーサ16と、を有し、張力付加装置8は、上述した構成を有している。従って、原紙掛け2及びスプライサ6により予め張力が付与されたライナLに、さらに、張力付加装置8により、ライナLに、シングルフェーサ16でのライナLと中芯Fの接着に必要な十分な熱量をプレヒータ10でライナLに与えるための張力を付加することが出来る。
【0097】
ここで、近年の段ボールシートも多様化に伴い、厚さが薄い片面或いは両面段ボールシートの需要があり、従来より薄いライナや中芯を成形することが必要とされてきている。このような薄紙のライナや中芯は、スプライサにおいて従来と同様の強さの張力が付加されると、しわが発生し易い。プレヒータでは、厚紙では、ライナや中芯に所定の強さの張力を付与することができるので、ライナや中芯の搬送速度を確保することが出来ていた。ところが、スプライサでのしわの発生を防止するために張力を落とすと、原理的に、ライナや中芯に所定の熱量を付与するために、それらの搬送速度を落とさざるを得ないという問題が生じる。ライナや中芯の張力は、張力付加装置で付加することが出来るが、張力付加装置において、ライナ又は中芯のブレーキロールに対する滑りが生じると、ライナや中芯の張力が低下して所望の張力が得られない上に、プレヒータでライナ又は中芯に十分な熱量を与えられないことになる。そして、ブレーキロールの摩耗も急激に進むので、ブレーキロールの寿命を重視するのであれば、搬送速度を落とさざるを得ない。また、厚紙においても、プレヒータで、薄紙より多くの熱量を与えなければならないので、張力付加装置で、さらに大きな張力を付加しなければならず、それ故、ライナや中芯に対するブレーキロールの滑りが生じやすくなり、同様の問題が生じていた。
【0098】
また、ライナや中芯に付加される張力は、ブレーキロールに制動力が与えられることにより、ブレーキロールの外周面とライナや中芯との間の摩擦力で付加されるが、ブレーキロールがライナや中芯に付加できる最大張力は、ライナや中芯の搬送速度、ライナや中芯とブレーキロールの接触角度、ブレーキロールの外周面の摩擦係数、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅やライナ又は中芯の紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ブレーキロールとライナや中芯との間の滑りは、実際にライナや中芯を段ボールシート製造装置で運転させて成形してみないと、生じるか否か分からない。このような理由により、従来、ライナや中芯の搬送速度を優先させ、所望の張力を得るために、上述したテンションインフィード装置の駆動ロールの滑りを黙認したまま、ライナLや中芯Fと、その装置の駆動ロールとの動摩擦係数を利用して、ライナLや中芯Fに張力を付加し、段ボールシート製造装置を運転させることもあった
【0099】
これらのような問題に対して、本実施形態においては、段ボールシート製造装置1のスプライサ6とプレヒータ10との間に、上述した構成及び作用効果を有する張力付加装置8を配置している。これにより、原紙掛け2やスプライサ6で付与する張力を落としても、上述したように、張力付加装置8によりブレーキロール72に滑りが生じないようにして、所望する張力、或いは、諸条件に応じた許容可能な張力が自動的に得られるので、特に薄紙のライナLや中芯Fのスプライサ6による「しわ」の発生を防止しつつ、プレヒータ10で薄紙のライナLや中芯Fに十分な熱量を与えることが出来る。また、厚紙のライナLや中芯Fにおいても、張力を確実に付加して、プレヒータ10でより確実に十分な熱量を与えることが出来る。従って、本実施形態による段ボールシート製造装置では、ライナLや中芯Fの搬送速度を従来と同等或いはそれ以上に確保して、片面段ボールシートを効率よく製造することが出来る。つまり、ライナLや中芯Fに、所望する張力、或いは、諸条件に応じた許容可能な張力を付加することが出来るので、プレヒータ10での熱量付与の不足や段ボールシートの成形不良などの問題も生じにくくなり、生産効率を高められるのである。
【0100】
なお、上述した作用効果は、ライナLが原紙掛け2に巻き付けられ、順にスプライサ6、張力付加装置8、プレヒータ10及びシングルフェーサ16に繰り出され、一方、中芯Fが原紙掛け12に巻き付けられシングルフェーサ16に繰り出されて、シングルフェーサ16で片面段ボールシートが成形されるものであっても同様である。
【0101】
次に、図8乃至図10により、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた本発明の第2実施形態による段ボールシート製造装置を説明する。本実施形態では、段ボールシート製造装置は、両面段ボールシート製造装置となっている。
図8は、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置を備えた両面段ボールシート製造装置の全体構成を側面から見た概略全体構成図であり、図9は、図8に示す両面段ボールシート製造装置のバックライナ用原紙掛け、ブリッジ、張力付加装置及びプレヒータを拡大して示す概略構成図であり、図10は、図9に示すシートの張力付加装置を拡大して示す概略構成図である。
【0102】
先ず、図8に示すように、符号100は、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置及び本装置が適用された両面段ボールシート製造装置を示す。また、符号102は、上述した第1実施形態と同様の構成を有する片面段ボールシート製造装置102であり、その基本構成は、第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。なお、この装置102は、第1実施形態と同様に、スプライサ106、シングルフェーサ107を有している。
【0103】
第2実施形態による段ボールシート製造装置100は、片面段ボールシート製造装置102で成形された片面段ボールシートS’が運ばれるブリッジ104を有している。
一方、この装置100の上流側には、上述した第1実施形態の片面段ボールシート製造装置1が設けられており、その装置1で成型された片面段ボールシートSが、ブリッジ104の最上段で、ボールシートS’と並行して運ばれるようになっている。
【0104】
さらに、段ボールシート製造装置100は、このブリッジ104上の片面段ボールシートS’及び最上段の片面段ボールシートSにそれぞれ張力を付加する張力付加装置108と、原紙掛け110に装着され、バックライナBLがそれぞれ巻き付けられた一対の原紙112と、張力付加装置108からそれぞれ繰り出される片面段ボールシートS、S’及び原紙112から繰り出されるバックライナBLに熱を与えるための3段プレヒータ114と、このプレヒータ114から繰り出される片面段ボールシートS、S’の中芯の頂部に糊付けをするグルーマシン116と、最終的に、中芯の頂部に糊付けをされた片面段ボールシートS、S’と、バックライナBLとに圧力をかけて互いに接着をして両面段ボールシートを成形するダブルフェーサ118と、を有する。
【0105】
次に、図9により、プレヒータの構成を説明する。
図9に示すように、3段プレヒータ114は、それぞれ、所定の熱源から熱が供給され片面段ボールシートS、S’及びバックライナBLに熱を与えるヒータロール本体114aと、このロール本体114aへのシートS、S’及びバックライナBLの巻き付け量を確保するためのそれぞれ2つのガイドロール114bと、を有している。3段プレヒータ114は、主に、そのシートS、S’及びバックライナBLの巻き付け量と、張力付加装置108により付加された張力によって、シートS、S’及びバックライナBLに与えられる熱量が設定される。プレヒータ114では、シートS、S’及びバックライナBLに、ダブルフェーサ118でシートS、S’及びバックライナBLを互いに接着するために必要な所定の熱量を付与するためのものである。
【0106】
次に、図10により、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の機械的構造を説明する。
本実施形態における張力付加装置108の基本構成は、上述した第1実施形態と同様であり、本実施形態においては、各片面段ボールシートS、S’にそれぞれ個別に張力を付加出来るよう、1つの筐体176内に、2組の張力付加機構が設けられている。いずれも同じ構成であるので、一方のみ説明する。
【0107】
張力付加装置108は、下流側から引き込まれる片面段ボールシートS、S’を案内する入口ガイドロール170と、この入口ガイドロール170から引き出された片面段ボールシートS、S’が巻き付けられるブレーキロール172と、このブレーキロール172から引き出された片面段ボールシートS、S’が巻き付けられ、プレヒータ114への繰り出しを案内する出口ガイドロール174と、を有する。これらのロール170、172、174は、第1実施形態と同様に、筐体176に設けられたそれぞれの軸(図示せず)により軸支され、片面段ボールシートS、S’の搬送に伴い、片面段ボールシートS、S’との摩擦力により回転可能となっている。また、本実施形態では、片面段ボールシートS、S’を案内する複数のガイドロール175も設けられている。
【0108】
ブレーキロール172の軸には、第1実施形態と同様のブレーキ装置178(図10参照)が連結されている。ブレーキ装置178は、ブレーキロール172に制動力を与えるか、或いは、制動力を与えずに、ブレーキロール172の自由回転を許容するように構成されている。
【0109】
ブレーキロール172は、第1実施形態と同様に、外周面がゴム層で形成されている。なお、第1実施形態と同様に、ロール本体172の外周面は、ゴム層の代わりに摩擦力の高い材質層としてウレタン層やプラスチック層などを用い、その表面にローレット処理、梨地状処理、溶射処理などを施すようにしても良い。
【0110】
片面段ボールシートS、S’は、その搬送時に、ブレーキロール172にブレーキ装置178から制動力が与えられるとき、そのゴム層との摩擦力によりブレーキロール172から張力が付加される。ブレーキロール172にブレーキ装置178から制動力が与えられないときには、片面段ボールシートS、S’には、張力は付加されない。
【0111】
次に、張力付加装置108は、第1実施形態と同様に、ブレーキロール172の回転速度を検出する第1エンコーダ180と、出口ガイドロール174の回転速度を検出する第2エンコーダ182とが各ロールの近傍に配置されている。
【0112】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、第2エンコーダ182により出口ガイドロール174の回転速度を検出することにより、片面段ボールシートS、S’の搬送速度を検出(算出)する。
また、第1エンコーダ180及び第2エンコーダ182の両方の回転速度値を検出することにより、第2エンコーダ182により検出された出口ガイドロール174の回転速度に対して、第1エンコーダ182により検出されたブレーキロール172の回転速度が小さい場合には、片面段ボールシートS、S’の搬送速度に対してブレーキロール172の回転速度が遅れ、滑りが生じていると判定して、ブレーキ装置178によるブレーキロール172の制動力を低下させる制御を行う。
【0113】
なお、第2エンコーダ182は、片面段ボールシートS、S’の搬送速度を検出(算出)出来るのであれば、出口ガイドロール174の代わりに、入口ガイドロール170に設け、入口ガイドロール170の回転速度を検出するようにしてもよい。また、第2エンコーダ182は、片面段ボールシートS、S’の搬送速度を検出(算出)出来るのであれば、他のガイドロール175の回転速度を検出するように設けてもよい。
【0114】
そして、図10に示すように、第1実施形態と異なる特徴として、第2実施形態では、入口ガイドロール170に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)が、ブレーキロール72から出口ガイドロール174へと繰り出される片面段ボールシートS’(S)に接触するように、各ロール170、172、174が配置されている。これにより、ブレーキロール172に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)の締め付けによる摩擦力が増加するようになっている。つまり、互いに接触する片面段ボールシートS’(S)同士は、互いに逆方向に滑ることにより摩擦力を生じるので、結果として、ブレーキロール172に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)の摩擦力も増加するのである。
【0115】
次に、図11により、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の制御構成を説明する。
図11は、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御系統を示す制御系統図である。
先ず、図11に示すように、本実施形態によるシートの張力付加装置108は、第1実施形態とは、スプライサ6と接続されていない点が異なるのみであり、他の構成は同様である。
即ち、本実施形態によるシートの張力付加装置108は、ブレーキ装置178の制動力を制御するための制動力制御装置190と、各種設定値の入力を行うための設定装置192と、を有し、制動力制御装置190は、ブレーキロール172の回転速度を検出する第1エンコーダ180、出口ガイドロール174の回転速度を検出する第2エンコーダ182、及び、ブレーキ装置178に接続され、それらのエンコーダ180、182からの各ロール172、174の回転速度信号に基づいて、ブレーキ装置178によるブレーキロール172の制動力の制御を行うようになっている。
【0116】
次に、図12により、制動力制御装置190による制御内容を説明する。
図12は、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の制動力制御装置による制御内容を示すフローチャートである。Sは、各ステップを示す。
先ず、図12に示すように、S21において、作業者により設定装置192(図11の機能0)で入力された、張力付加装置108により片面段ボールシートS、S’に付加する張力(テンション)の絶対値を読み込む。本実施形態では、ブリッジ104上の片面段ボールシートS、S’には、張力が付与されていない状態なので、絶対値として「kgf」などの単位で入力されている。
【0117】
次に、S22に進み、出口ガイドロール174の回転速度を検出する第2エンコーダ182からの回転速度信号(図10の機能1)により、片面段ボールシートS、S’の搬送速度が所定値以上か否かを判定する。この図12の例では、設定装置192により予め50m/minと設定されている。
【0118】
片面段ボールシートS、S’の搬送速度が所定値以上の場合は、S23に進み、制動力制御装置190の第1制動力制御部190aにより、S21で読み込まれた張力がブレーキロール172から片面段ボールシートS、S’にかかるような制動力(第1の制動力)を与えるよう、ブレーキ装置178を制御する(図10の機能2)。言い換えれば、ブレーキ装置178に制動力を与え、片面段ボールシートS、S’の張力(テンション)を、S21で設定した張力まで上昇させる。なお、このS23では、予め、付加する最大張力が、具体的数値として設定装置192により設定され(例えば125kgf)、その数値を超えないように制御される。
【0119】
なお、張力付加装置108により付加された最終的な片面段ボールシートS’、(S)の実際の張力は、張力付加装置108の下流側に設けられた第1実施形態と同様の張力測定器185により測定される。作業者は、この測定器185により検出された張力により、設定した張力が得られているか否かを確認することが出来る。
【0120】
次に、S24に進み、スプライサ106(図8参照)から、スプライス信号が入力された否かを判定する(図10の機能3)。
【0121】
先ず、スプライス信号が入力された場合について説明する。
スプライス信号が入力された場合は、S25〜S28のロット変更新テンション設定処理に進む。なお、本実施形態では、上流側に第1実施形態の段ボール製造装置1が設けられているので、そのスプライサ6(図1参照)からも、スプライス信号が入力された否かを判定する。
【0122】
ロット変更新テンション設定処理とは、スプライサ106(6)において紙継ぎされた位置では、片面段ボールシートS’(S)が次のロットに移行することになり、張力付加装置108を通過する時点で、前の生産ロットとは異なる新たな生産ロット用の適切な張力が片面段ボールシートS’(S)付加されるように、付加張力を設定するためのものである。
【0123】
次に、S25に進み、片面段ボールシートS’(S)の紙継ぎ部が、スプライサ106(6)から搬送された距離を、第2エンコーダ182(82)からの回転速度信号(図10の機能1)に基づいて測長する。
【0124】
次に、S26に進み、S25により測長された距離が所定距離以上か否か、即ち、スプライサ106(6)から張力付加装置108までの距離以上か否かが判定される。所定距離未満の場合には、紙継ぎ部が張力付加装置108に届いていないので、S25及びS26を繰り返す。
【0125】
S26により、S25により測長された距離が所定距離以上であると判定された場合には、S27に進み、S27において、新たな生産ロット用の片面段ボールシートS’(S)への付加張力が読み込まれる。このS27においても、S21と同様に、作業者により設定装置192(図10の機能0)で入力された、張力付加装置108により片面段ボールシートS、S’に付加する張力(テンション)の絶対値を読み込む。
【0126】
次に、S27により、新設定テンション有り、即ち、片面段ボールシートS’(S)への付加張力が、前の生産ロット用から新たな生産ロット用に対して変更されるか否かが判定される。変更されていない場合には、S21に戻る。
【0127】
S27において、片面段ボールシートS’(S)への付加張力が、前の生産ロット用から新たな生産ロット用に対して変更されていると判定された場合には、上述したS22以降の処理に進む。
【0128】
次に、S24において、スプライス信号が入力さない場合は、S29〜S31において、制動力制御装置190の第2制動力制御部190bにより、ブレーキ装置178の滑り制御を行う。
【0129】
先ず、S29では、第1エンコーダ180からブレーキロール172の回転速度信号を読み込み、また、第2エンコーダ182から出口ガイドロール74の回転速度を読み込む(図10の機能1、6)。
【0130】
次に、S30に進み、S29で読み込んだブレーキロール172の回転速度と、出口ガイドロール174の回転速度との差が、所定値以上であるか否かを判定する。また、本実施形態では、このS30において、それらの回転速度の差が所定時間以上続くか否かも判定する。
【0131】
ブレーキロール172の回転速度と、出口ガイドロール174の回転速度との差が、所定値以上である状態が所定時間以上続いた場合には、S31に進み、S23でブレーキロール172に与えた制動力(第1の制動力)より小さい制動力(第2の制動力)をブレーキロール172に与えるよう、ブレーキ装置178を制御する(図10の機能7)。
【0132】
本実施形態では、ブレーキロール172の回転速度と、出口ガイドロール174の回転速度とが、ほぼ同じとなるまでS29〜S31の処理を繰り返す。なお、各ロール172、174の回転速度の差が、S30で判定した所定値未満となるまで、S29〜S31の処理を繰り返すようにしても良い。このような所定値は、ブレーキロール172が片面段ボールシートS、S’に対して滑っている状態か否かの値として設定される。
【0133】
そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、S25において、制動力制御装置190の第3制動力制御部190cにより、ブレーキロール172の回転速度と、出口ガイドロール174の回転速度との差が所定値(滑っている状態か否かの値)未満か否かを判定し、所定値未満であれば、S23に戻し、S21で読み込まれた張力がブレーキロール172から片面段ボールシートS’、(S)にかかるような制動力(第1の制動力)が再び与えられるよう、ブレーキ装置178を制御する(図10の機能8)。
【0134】
次に、S22において、制動力制御装置190の第4制動力制御部190dにより、搬送速度が所定値未満の場合には、S27に進み、ブレーキロール172が片面段ボールシートS、S’に張力を与えないよう、ブレーキ装置178を制御する。即ち、ブレーキ装置178を作動させず、ブレーキロール172を片面段ボールシートS、S’の搬送に伴う単なるアイドルロールとして作動させる。
【0135】
次に、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置及び段ボールシート製造装置の作用効果を説明する。
先ず、本発明の第2実施形態によるシートの張力付加装置の作用効果を説明する。
本実施形態の段ボールシート製造装置100においては、張力付加装置108により、ブリッジ104上の無張力状態の片面段ボールシートS、S’に張力を付加している。
【0136】
本実施形態による張力付加装置108は、段ボールシート製造装置100の上流側の片面段ボールシートS、S’を案内する入口ガイドロール170と、その入口ガイドロール170から引き出された片面段ボールシートS、S’が巻き付けられた外周面との摩擦力で片面段ボールシートS、S’に張力を付加することができるブレーキロール172と、このブレーキロール172に制動力を与えることができるブレーキ装置178と、ブレーキロール172から引き出された片面段ボールシートS、S’を下流側へ案内する出口ガイドロール174と、段ボールシート製造装置100の通常運転時に、片面段ボールシートS、S’に所定の張力を付加するため、ブレーキロール172に所定の制動力(通常運転時に付加される制動力)(第1の制動力)を与えるようブレーキ装置178を制御する制動力制御装置190と、を有しているので、片面段ボールシートS、S’に張力を付加出来る。制動力制御装置190によるブレーキ装置178の通常運転時の制御は、図12のS23において実行される。
【0137】
また、入口ガイドロール170に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)を、ブレーキロール172から出口ガイドロール174へと繰り出される片面段ボールシートS’(S)に接触させ、ブレーキロール172に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)の締め付けによる摩擦力を増加させているので、互いに接触する片面段ボールシートS’(S)同士の逆方向の滑りを利用して、ブレーキロール172に巻き付けられた片面段ボールシートS’(S)の摩擦力を増加させることが出来る。
【0138】
また、本実施形態による張力付加装置108の制動力制御装置190は、第1エンコーダ180により検出されたブレーキロール172の回転速度と、第2エンコーダ182により検出された出口ガイドロール174の回転速度との差が所定値以上のとき、それらの回転速度がほぼ同じ(或いは、回転速度の差が所定値未満)となるような制動力(通常運転時に付加される制動力より小さい制動力)(第2の制動力)をブレーキロール172に与えるようブレーキ装置178を制御するようにしている。制動力制御装置190によるブレーキ装置178の「ブレーキロール172の滑り時」における制御は、図12のS29〜S31において実行される。これにより、ブレーキロール172の制動力が低下し、その結果、片面段ボールシートS、S’に対するブレーキロール172の滑り(片面段ボールシートS、S’の搬送速度に対するブレーキロール172の回転速度の遅れ)を防止することが出来る。
【0139】
また、従来のブレーキスタンドに代わって配置された本実施形態の張力付加装置108においても、従来のブレーキスタンドと同様にロールの外周面がゴム層で形成されているが、上述したように、ブレーキロール172の「滑り」が防止されるので、ゴム層の摩耗も抑制され、且つ、摩擦力を得やすいゴム層を用いて摩擦力を高めることが出来るという利点も確保出来る。
【0140】
その他、第2実施形態の張力付加装置108について、第1実施形態と同様の構成については、上述した第1実施形態の作用効果と同様の作用効果(ブレーキロール172の摩耗の抑制や所望の張力が得られることなど)が得られる。ここではその説明を省略する。
【0141】
次に、本発明の第2実施形態による段ボールシート製造装置の作用効果を説明する。
本実施形態による両面段ボールシートを製造する段ボールシート製造装置は、片面段ボールシートを成形するシングルフェーサ107、16と、このシングルフェーサ107、16で成形された片面段ボールシートS’、(S)が運ばれるブリッジ104と、このブリッジ104上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートS’に張力を付加する張力付加装置108と、この張力付加装置108から繰り出される片面段ボールシートS’に熱を与えるプレヒータ114と、バックライナBL用の原紙掛け112と、プレヒータ114から繰り出される片面段ボールシートS’及び原紙掛け112から繰り出されるバックライナBLにそれぞれ糊付けを行うグルーマシン116と、このグルーマシン116からそれぞれ繰り出される片面段ボールシートS’、(S)及びバックライナBLを互いに接着して両面段ボールシートを成形するダブルフェーサ118と、を有し、張力付加装置108は、上流側から引き込まれる片面段ボールシートを案内する入口ガイドロール170と、その入口ガイドロール170から引き出された片面段ボールシートS’が巻き付けられた外周面との摩擦力で片面段ボールシートS’に張力を付加することができるブレーキロール172と、このブレーキロール172に制動力を与えることができるブレーキ装置178と、ブレーキロール172から引き出された片面段ボールシートS’を下流側へ案内する出口ガイドロール174と、段ボール片面段ボールシート製造装置100、(1)の通常運転時に、片面段ボールシートS’、(S)に所定の張力を付加するため、ブレーキロール172に所定の制動力(通常運転時に付加される制動力)(第1の制動力)を与えるようブレーキ装置178を制御する制動力制御装置190と、を有しているので、ブリッジ104上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートS’、(S)に、ダブルフェーサ118での片面段ボールシートS’、(S)と、バックライナBLとの接着に必要な十分な熱量をプレヒータ114で与えるための張力を付加することが出来る。
【0142】
ここで、上述したように、従来のブレーキスタンドでは、ロールの滑りに伴い、張力が低下すると共にロールの摩耗が生じていた。所望の張力が得られなければ、下流のダブルフェーサにおける段ボールシートの成形不良が生じてしまうので、段ボール製造装置の運転速度(片面段ボールシートの搬送速度)をあまり高めることが出来ない。また、片面段ボールシートに付加される張力は、そのロールに制動力が与えられることにより、ロールの外周面と片面段ボールシートとの間の摩擦力で付加されるが、ロールが片面段ボールシートに付加できる最大張力は、片面段ボールシートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、片面段ボールシートとブレーキロールの接触角度、ライナ又は中芯のブレーキロール外周面に接する幅や片面段ボールシートの紙質など様々な設定要因により変化する。従って、ロールと片面段ボールシートとの滑りは、実際に片面段ボールシートを段ボールシート製造装置で運転させて成形してみないと、生じるか否か分からない。このような理由により、片面段ボールシートの搬送速度を優先させ、所望の張力を得るために、ブレーキスタンドのロールの滑りを黙認したまま、片面段ボールシートとロールとの動摩擦係数を利用して、片面段ボールシートに張力を付加し、段ボールシート製造装置を運転させることもあり、この場合、ブレーキスタンドのゴムロールの交換頻度が高まる。
【0143】
このような問題に対し、本実施形態による段ボール製造装置100は、ブレーキロール172の回転速度を検出する第1エンコーダ180と、出口ガイドロール174の回転速度を検出する第2エンコーダ182と、第1エンコーダ180により検出された回転速度と、を検出するようにしている。ここで、ブレーキロール172の回転速度と、出口ガイドロール174(又は入口ガイドロール170)の回転速度との差が所定値以上であるということは、出口ガイドロール174(又は入口ガイドロール170)が単なる案内ロールとして機能していることを前提に考えると、片面段ボールシートS’の搬送速度に対してブレーキロール172の回転速度が遅れており、ブレーキロール172において、片面段ボールシートS’、(S)と、ブレーキロール172との間に滑りが生じていることを意味する。
【0144】
そこで、本実施形態による段ボール製造装置100は、検出されたブレーキロール172の回転速度と、検出された出口ガイドロール174(又は入口ガイドロール170)の回転速度との差が所定値未満(それぞれの回転速度がほぼ同じ場合も含む)となるような制動力(通常運転時に付加される制動力より小さい制動力)(第2の制動力)をブレーキロール172に与えるようブレーキ装置178を制御することにより、そのような片面段ボールシートS’に対するブレーキロール172の滑りを防止するようにしている。その結果、ブレーキロール172の摩耗が抑制されると共に片面段ボールシートS’に付加出来る張力の低下を抑制することができる。特に、このようにブレーキロールの滑りが防止されるので、片面段ボールシートS’とブレーキロール172との間の摩擦力が静摩擦係数により得られ、最大摩擦力が大きくなり、作業者が所望する張力が得やすくなる。また、所望する張力まで届かなくても、第1実施形態で上述したように、諸条件(シートの搬送速度やブレーキロール外周面の摩擦係数、シートとブレーキロールの接触角度、シートのブレーキロール外周面に接する幅やシートの紙質など)に応じた許容可能な張力が、ブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、自動的に得られる。このように、所望する張力、或いは、諸条件に応じた許容可能な張力が得られるので、プレヒータでの熱量付与の不足や段ボールシートの成形不良などの問題が生じることを抑制して、生産効率も高めることが出来る。
【0145】
これらの結果、本発明による段ボール製造装置によれば、片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止して、片面段ボールシートに付加出来る張力の低下を抑制すると共にブレーキロールの摩耗を抑制することが出来る。また、本発明による段ボール製造装置によれば、片面段ボールシートに対するブレーキロールの滑りを防止して、片面段ボールシートの張力の低下及びブレーキロールの摩耗を抑制しつつ、片面段ボールシートの搬送速度を従来と同等以上に確保して、両面段ボールシートを効率よく製造することが出来る。
【符号の説明】
【0146】
L ライナ(シート)
F 中芯(シート)
S、S’ 片面段ボールシート(シート)
BL バックライナ(シート)
4、14、112 原紙掛け
6 スプライサ
8、108 張力付加装置
10、114 プレヒータ
16 シングルフェーサ
20 ブレーキ
32 ダンサーロール
44、46 段ロール
70、170 入口ガイドロール
72、172 ブレーキロール
72c、172c ゴム層(ブレーキロールの外周面)
74、174 出口ガイドロール
78、178 ブレーキ装置(制動力制御手段)
80、180 第1エンコーダ(第1回転速度検出手段)
82、182 第2エンコーダ(第2回転速度検出手段)
90、190 制動力制御装置(第1〜第4制御力制御手段)
104 ブリッジ
118 ダブルフェーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシート製造装置の上流側から下流側に流れるシートに張力を付加するシートの張力付加装置であって、
上流側から引き込まれるシートが巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、
この入口ガイドロールから引き出されたシートが巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられたシートに上記外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、
上記ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、
上記ブレーキロールから引き出されたシートが巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、
上記ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、
上記出口ガイドロール又は上記入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、
上記段ボールシート製造装置の通常運転時に、シートに所定の張力を付加するため、上記ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、
上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が上記所定値未満となるように上記第1の制動力より小さい第2の制動力を上記ブレーキロールに与えるよう上記制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴とするシートの張力付加装置。
【請求項2】
上記第2制動力制御手段により上記第2の制動力が上記ブレーキロールが与えられるよう上記制動力付与手段が制御されているときに、上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、上記ブレーキロールに再び上記第1の制動力を与えるよう上記第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する請求項1記載のシートの張力付加装置。
【請求項3】
上記第2制動力制御手段は、上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定時間以上続いて検出されたとき、上記ブレーキロールに上記第2の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する請求項1又は請求項2に記載のシートの張力付加装置。
【請求項4】
上記張力付加装置のブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層で形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシートの張力付加装置。
【請求項5】
ライナ又は中芯が装着され、繰り出されるライナ又は中芯に張力を付与するブレーキを有する一対の第1の原紙掛けと、この一対の第1の原紙掛けから繰り出されるライナ又は中芯の紙継ぎを行うスプライサであって、ライナ又は中芯を溜めると共にライナ又は中芯に張力を付与するダンサーロールを有するスプライサと、上記第1の原紙掛けのブレーキ及び上記スプライサのダンサーロールにより張力が付与されたライナ又は中芯にさらに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出されるライナ又は中芯に熱を与えるプレヒータと、中芯又はライナが装着された第2の原紙掛けと、上記プレヒータから繰り出されるライナ又は中芯、及び、上記第2の原紙掛けから繰り出される中芯又はライナのうち、中芯を段成形すると共にその段成形した中芯とライナとを接着して片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、を有する段ボールシート製造装置であって、
上記張力付加装置は、
上流側から引き込まれるライナ又は中芯が巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、
上記入口ガイドロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられたライナ又は中芯に上記外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、
上記ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、
上記ブレーキロールから引き出されたライナ又は中芯が巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、
上記ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、
上記出口ガイドロール又は上記入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、
上記段ボールシート製造装置の通常運転時に、ライナ又は中芯に所定の張力を付加するため、上記ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、
上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が上記所定値未満となるように上記第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴とする段ボールシート製造装置。
【請求項6】
上記張力付加装置は、さらに、上記第2制動力制御手段により上記第2の制動力が上記ブレーキロールが与えられるよう上記制動力付与手段が制御されているときに、上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、上記ブレーキロールに再び上記第1の制動力を与えるよう上記第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する請求項5記載の段ボールシート製造装置。
【請求項7】
上記張力付加装置は、さらに、上記第1回転速度検出手段により検出される上記出口ガイドロールの回転速度が所定値未満のとき、上記ブレーキロールに制動力を与えないよう上記制動力付与手段を制御する第4制動力制御手段を有し、
上記ブレーキロールは、制動力が与えられないとき、空転するよう構成され、その外周面で、ライナ又は中芯を案内するガイドロールとして機能する請求項5又は請求項6記載の段ボールシート製造装置。
【請求項8】
上記張力付加装置は、さらに、少なくとも上記スプライサにおける接着テープによるライナ又は中芯の紙継ぎ部が上記プレヒータを通過する間、上記プレヒータが上記紙継ぎ部に与える熱量により上記紙継ぎ部の接着テープが剥がれないような張力をライナ又は中芯に付加するために、上記第1の制動力より小さい第3の制動力を上記ブレーキロールに与えるよう上記制動力付与手段を制御する第5制動力制御手段を有する請求項5乃至7のいずれか1項記載の段ボールシート製造装置。
【請求項9】
上記ライナ又は中芯に付加される所定の張力は、上記第1の原紙掛けのブレーキ及び上記スプライサのダンサーロールにより付与された張力に対する割合値として設定され、
上記張力付加装置の第1制動力制御手段は、この割合値として設定された張力をライナ又は中芯に付加するため、上記ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する請求項5乃至8のいずれか1項に記載の段ボールシート製造装置。
【請求項10】
片面段ボールシートを成形するシングルフェーサと、このシングルフェーサで成形された片面段ボールシートが運ばれるブリッジと、このブリッジ上で運ばれる張力の無い状態の片面段ボールシートに所定の張力を付加する張力付加装置と、この張力付加装置から繰り出される片面段ボールシートに熱を与えるプレヒータと、バックライナが装着された原紙掛けと、上記プレヒータから繰り出される片面段ボールシートの中芯の頂部に糊付けを行うグルーマシンと、このグルーマシンから繰り出される片面段ボールシート及び上記原紙掛けから繰り出されたバックライナに圧力をかけると共に互いに接着して両面段ボールシートを成形するダブルフェーサと、を有する段ボールシート製造装置であって、
上記張力付加装置は、
上流側から引き込まれる片面段ボールシートが巻き付けられてそれを案内する入口ガイドロールと、
上記入口ガイドロールから引き出された片面段ボールシートが巻き付けられる外周面を有し、その外周面に巻き付けられた片面段ボールシートに上記外周面との摩擦力で張力を付加することができるブレーキロールと、
上記ブレーキロールに制動力を与えることができる制動力付与手段と、
上記ブレーキロールから引き出された片面段ボールシートが巻き付けられ、下流側への繰り出しを案内する出口ガイドロールと、
上記ブレーキロールの回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、
上記出口ガイドロール又は上記入口ガイドロールのいずれか一方の回転速度を検出する第2回転速度検出手段と、
上記段ボールシート製造装置の通常運転時に、片面段ボールシートに所定の張力を付加するため、上記ブレーキロールに第1の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する第1制動力制御手段と、
上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値以上のとき、その回転速度の差が上記所定値未満となるように上記第1の制動力より小さい第2の制動力を与えるよう上記制動力付与手段を制御する第2制動力制御手段と、を有することを特徴とする。
【請求項11】
上記張力付加装置は、さらに、上記第2制動力制御手段により上記第2の制動力が上記ブレーキロールが与えられるよう上記制動力付与手段が制御されているときに、上記第1回転速度検出手段により検出された回転速度と、上記第2回転速度検出手段により検出された回転速度との差が所定値未満となったとき、上記ブレーキロールに再び上記第1の制動力を与えるよう上記第1制動力制御手段への制御に戻す第3制動力制御手段を有する請求項10記載の段ボールシート製造装置。
【請求項12】
上記張力付加装置のブレーキロールの外周面はゴム層又は摩擦力の高い材質層で形成されている請求項5乃至11のいずれか1項に記載の段ボールシート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−152703(P2011−152703A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15506(P2010−15506)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000127271)株式会社イソワ・フーパースイフト (2)
【Fターム(参考)】