説明

シートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法

【課題】シートバックパッドの上部に形成される肉厚部の膨出量を確保しつつも肉厚部にボイドが成形されず、かつ、成形時に発泡成形型の型割り位置に補強材がかみ込むことのないシートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法を提供する。
【解決手段】パッド本体部111及びパッド本体部111の上端から後方に突出して延在する張り出し部112を成形する下型11、張り出し部112からパッド本体部111の下方向に向かって折曲して延在するとともにパッド本体部111の下方向に移行するに従ってパッド本体部111の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部113cを成形する上型12、フランジ部113及び張り出し部112、パッド本体部111の内側面の全域に亘って張設される補強材115で被覆されるとともに補強材115に接触して肉厚部113cに埋設される発泡樹脂迂回部材116が補強材115を介して当接する中子型13、とを備え、発泡樹脂迂回部材116を保持するセットピン20が上型12に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法、特に、自動車の前部座席のシートバック部を形成するシートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の前部座席は、例えば、図5で自動車の前部座席100の概略を示すように、乗員の臀部を支持するシートクッション部101、背部を支持するシートバック部102を備える。シートバック部102は、図示しないシートバックフレームにシートバックパッド110が被覆されるとともに、シートバックパッド10の外側面が織編物や皮革等の表皮104で被覆されて形成される。
【0003】
そして、シートバックパッドの上部には後方向に突出して延在する張り出し部、及び張り出し部から下方向に屈曲するとともに下方向に移行するに従って漸次肉厚が増大する肉厚部を有するフランジ部が形成されており、シートバック部の後面視における意匠的効果を高めている。
【0004】
ところで、このシートバックパッドの成形には、発泡成形型が使用される。発泡成形型は、シートバックパッドの前面を成形する下型を備えるとともに、下型に対して開閉可能な上型及び中子型を備える。そして、これらの各型の間に形成されるキャビティにおいて発泡樹脂材料を発泡させて、シートバックパッドを成形する。この発泡成形型を使用してシートバックパッドを成形すると、下型と中子型との間に形成されるキャビティに発泡樹脂材料が流入充填されて下型の成形面によってシートバックパッドの前面が成形される。肉厚部を有するフランジ部は上型の成形面によって成形される。このような発泡成形型においては、フランジ部を成形する上型と中子型との間で形成されるキャビティには発泡樹脂材料の流入が効率よく実現されず、発泡樹脂材料に混在する空気や、発泡時に発生する炭酸ガスの流動性が低くなり、肉厚部の表面に気泡が集まりやすくなって肉厚部にボイド(欠肉)が発生することがある。このボイドが発生すると、ボイドに後から肉盛り加工を施して補修する必要が生じるので、シートバックパッドの成形効率、成形精度が低下する。そこで、ボイドの発生を防止してシートバックパッドの成形性を高めるための技術が、種々提案されている。
【0005】
特許文献1として、肉厚部が形成されるキャビティに、補強材を介して発泡樹脂迂回部材を配置して成形されたシートパッドが開示されている。この特許文献1で開示されるシートパッドの概要を、図6〜図9に基づいて説明する。
【0006】
図6は、シートバックパッドの概略断面図である。図示のように、シートバックパッド110は、パッド本体部111、張り出し部112、フランジ部113を備え、発泡樹脂材料を発泡させたウレタンフォームによって断面視略C字状に一体成形される。乗員の背もたれ部となるパッド本体部111は、前面部111a及び前面部111aと対向する背面部111bを有するとともに、下端がシートバックパッド110の後方側に屈曲形成されたシートバックフレーム係合部111dが形成される。そして、シートバックパッド110は、その全体が表皮104によって被覆される。
【0007】
また、シートバックパッド110の裏面に該当するパッド本体部111の背面部111bは、フランジ部113の屈曲部113dからシートバックフレーム係合部111dまで延在するバックボード120によって被覆される。
【0008】
図7は、図6の矢線Cで示すシートバックパッド110の要部拡大図であり、図8は、図6の矢線Dで示す方向から見たシートバックパッド110の概略後面図である。図示のように、シートバックパッド110の上方の内側面は、その全域に亘って補強材115が張設される。補強材115は、パッド本体部111の背面部111bから上方に延在して、パッド本体部111の後方に屈曲して張り出し部内側面112bに亘って延在する。更に、張り出し部内側面112bからパッド本体部111の下方向に屈曲して断面凹状のフランジ部内側面113bを介して肉厚部内側面113d及び先端部内側面114bに延在するとともに端部絞り部となる先端部114の角部114cに亘って延在する。この補強材115は、発泡樹脂材料の発泡によって成形されたウレタンフォームと一体化して成形付与されて、シートバックパッド110とシートバックフレームとの摩擦による異音の発生やシートバックパッド110の損傷が防止される。
【0009】
シートバックパッド110の上方の外側面は、断面視で、パッド本体部111の上下方向に延在して乗員の背もたれ面となる前面部111a、前面部111aからパッド本体部111の後方に屈曲してパッド本体部111の上端を形成して延在するパッド本体部外側面111c、パッド本体部外側面111cから連続して延在する張り出し部外側面112a、張り出し部外側面112aからパッド本体部111の下方向に湾曲して延在するフランジ部外側面113a、フランジ部外側面113aから連続するとともに下方向に移行するに従って肉厚部内側面113dから漸次離間する肉厚部113c、肉厚部113cから下方向に移行するに従って先端部内側面114bに漸次近接する段差部113eを備える。
【0010】
更に外側面は、段差部113eからシートバックパッド10の下方向に屈曲する屈曲部113fを介してシートバックパッド110の下方向に延在する先端部外側面114a、先端部外側面114aから連続して背面部111b方向に屈曲するとともに先端部114の角部114cに接続してシートバックパッド110の内側面に連続する端部絞り部の先端となる先端部底面114dを備える。
【0011】
そして、上記断面形状を有するシートバックパッド110は、シートバックパッド110の幅方向に延在して、パッド本体部111、張り出し部112、フランジ部113が一体形成される。
【0012】
肉厚部内側面113dに沿って張設された補強材115の端部側には、上面116a、下面116b、第1側面116c、第2側面116dを有する断面矩形状で迂回部材となる発泡樹脂迂回部材116が第1側面116cにおいて固定され、発泡樹脂材料の発泡によって成形されたウレタンフォームと一体化して肉厚部113cの内部に埋設される。
【0013】
このようなシートパッドを成形する発泡成形型の構成の概略及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法の概略について説明する。図9(a)〜(c)は、発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの成形概略を説明する図である。図9(a)で示すように、発泡成形型200は、下型201、上型202、中子型203を備える。上型202は、下型201にヒンジ205を介して揺動自在に軸支され、中子型203は、上型202と中子型203とを接離可能に支持するシリンダ204を介して上型202に連結される。下型201に対して上型202、中子型203を型締め方向に移動させて型締めすると、これらの型の間にキャビティが構成されるとともに、上型202と中子型203との接触面に型分割線PL(パーティングライン)が形成される。
【0014】
まず、先端部114の内側面が成形される中子型203の成形面203aに、先端部114の内側面に配置される補強材115の端部115a側に固定された発泡樹脂迂回部材116を配置する。そして、下型201の成形面201aに発泡樹脂材料Mを注入するとともに、下型201に対して上型202及び中子型203を型締めする。発泡樹脂材料Mを加熱すると、この発泡樹脂材料Mがキャビティ204に流入充填されて、フランジ部113が成形される。このとき、発泡樹脂迂回部材116が配置されているので、上型202と中子型203との間に形成されるキャビティに流入充填される発泡樹脂材料Mが発泡樹脂迂回部材116に衝突して、上型201の成形面201aに沿って流れるとともに、発泡樹脂材料Mに混在した空気は型分割線PLから排出され、肉厚部113aの成形部分には発泡樹脂材料が充填されてボイドの成形が回避される。従って、成形性の精度の高いシートバックパッド110を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−82909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1に記載されたシートパッドの発泡成形型を用いてシートバックパッド110を成形すると、発泡樹脂材料Mが肉厚部113bの成形部分に充填されてボイドの発生が回避される。
【0017】
しかし、シートバックパッド110を成形する際、図9(b)で示すように、上型202及び中子型203を型開き状態とすると、上型202及び中子型203が、下型201に対して傾斜状態となる。このとき、フランジ部113の肉厚部113aに対応する補強材115の部分に発泡樹脂迂回部材116が配置されると、発泡樹脂迂回部材116は、傾斜状態となった中子型203の成形面を補強材115とともに滑り落ちる。従って、補強材115の肉厚部113a及び先端部114に対応する部分が型分割線PL側に引きずり込まれて、その端部115aが上型202と中子型203との型分割線PLに入り込む恐れがある。
【0018】
その結果、上型202及び中子型203を型締め方向に移動させて下型201に型締めすると、図9(c)で示すように型分割線PLが補強材115の端部115a側をかみ込んでしまう可能性がある。従って、発泡樹脂迂回部材116が固定された補強材115を中子型203に再度配置し直す必要があるので、シートバックパッド110の成形効率が悪化することが懸念される。
【0019】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、シートバックパッドの上部に形成される肉厚部の膨出量を確保しつつも肉厚部にボイドを発生させず、かつ、成形時に発泡成形型の型割り位置に補強材がかみ込むことのないシートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明によるシートパッドの発泡成形型は、下型、上型、及び該上型に対して離間可能に支持される中子型を有し、前記下型に対して前記上型及び中子型が型締めされて成形空間が形成される発泡成形型であって、乗員の背もたれ部を形成するパッド本体部と、該パッド本体部の上端から後方に突出して延在する張り出し部と、該張り出し部から前記パッド本体部の下方向に向かって折曲して延在するとともに前記パッド本体部の下方に移行するに従って該パッド本体部の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部及び該肉厚部から更に下方に連続するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を有するフランジ部と、前記パッド本体部、前記張り出し部及び前記フランジ部の内側面の全域に亘って張設される補強材と、該補強材に接触して前記パッド本体部の幅方向に延在するとともに前記肉厚部内に埋設されて発泡樹脂材料を迂回させる断面略矩形の迂回部材と、を備えるシートパッドを発泡成形する発泡成形型において、前記肉厚部は、前記上型及び中子型により形成され、前記上型の肉厚部成形面は、前記肉厚部に埋設される前記迂回部材の外側面の対向位置に突状体を備え、該突状体は、前記上型に対して前記中子型が接合された状態において前記上型の肉厚部成形面と前記肉厚部に埋設される前記迂回部材の前記外側面との離間長以上の突出長を有する、ことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、上型の肉厚部成形面における肉厚部に埋設される迂回部材の外側面の対向位置には、突状体が備えられている。そしてこの突状体は、上型に対して前記中子型が型締めされた状態において、上型の肉厚部成形面と肉厚部に埋設される迂回部材における肉厚部成形面に対向する外側面との離間長以上の全長を有するので、迂回部材が補強材に接触した状態で突状体が迂回部材の外側面に刺し込まれる。従って、迂回部材と中子型との間で補強材が強固に挟み込まれるので、シートパッドの成形時に、迂回部材の重みによって補強材が引きずられて発泡成形型にかみ込むことがない。その結果として、シートパッドの成形効率が向上する。
【0022】
また、迂回部材が突状体によってシートパッドの肉厚部の内部に配置された状態で発泡成形されるので、発泡樹脂材料が迂回部材に衝突して上型の肉厚部を成形する面に沿って発泡成形型内に流入するので、肉厚部の膨出量が十分に確保される。
【0023】
請求項2に記載の発明によるシートパッドは、請求項1に記載のシートパッドの発泡成形型において、前記突状体は、前記迂回部材の前記外側面に刺し込まれる尖状先端部と、該尖状先端部が前記迂回部材の前記外側面に刺し込まれた状態で該外側面に当接される刺し込み規制部と、を備え、該刺し込み規制部の形成位置は、前記上型に対して前記中子型が接合されるとともに前記迂回部材の外側面に前記尖状先端部が刺し込まれた状態で前記迂回部材が前記補強材に接触する位置であることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、突状体は尖状先端部を備えるとともに、この尖状先端部が迂回部材の外側面に刺し込まれると外側面に当接する刺し込み規制部を備えているので、迂回部材への突状体の刺し込みの深度が規制される。従って、迂回部材が安定的に保持されて、上型と中子型の接合による迂回部材と中子型との間における補強材の圧接が確実に行われる。また、迂回部材の突状体への刺し込みの際の位置決めが容易になる。
【0025】
請求項3に記載の発明によるシートパッドは、請求項1または2に記載のシートパッドの発泡成形型において、前記突状体は、所定間隔を隔てて複数配設されることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、突状体を上型に複数配設することで、突状体による迂回部材の保持が更に安定するので、上型と中子型の接合による迂回部材と中子型との間における補強材の圧接が更に確実に行われる。
【0027】
請求項4に記載の発明によるシートパッドの製造方法は、請求項1〜3に記載のシートパッドの発泡成形型で成形するシートパッドの製造方法であって、請求項1〜3に記載のシートパッドの発泡成形型で成形するシートパッドの製造方法であって、前記迂回部材が前記突状体に刺し込まれる突状体刺し込み工程と、前記補強材が前記中子型の成形面に張設される補強材張設工程と、前記下型の前記成形面に発泡樹脂材料が注入される発泡樹脂材料注入工程と、前記上型及び中子型が型締め方向に移動されて型締めされる型締め工程と、該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料が所定時間加熱されて発泡されてシートパッドが成形される樹脂材料発泡成形工程と、前記上型及び中子型が型開き方向に移動されて型開きされるとともに前記突状体が前記成形されたシートパッドから引き抜かれ、更に前記樹脂材料発泡成形工程により成形された前記シートパッドが前記上型及び中子型から離型される離型工程と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、上型と中子型を接合させると突状体に保持された迂回部材が補強材に当接するので、迂回部材と中子型との間で補強材が強固に挟み込まれる。そのため、シートパッドの成形時に、迂回部材の重みによって補強材が引きずられて発泡成形型にかみ込むことがない。従って、シートパッドの成形時に補強材のかみ込みを生じないので、シートパッドの成形効率が向上する。
【0029】
また、迂回部材が突状体によってシートパッドの肉厚部の内部に配置された状態で発泡成形され、発泡樹脂材料が迂回部材に衝突して上型の肉厚部を成形する面に沿って発泡成形型内に流入するので、肉厚部の膨出量が十分に確保される。
【発明の効果】
【0030】
この発明によると、上型の肉厚部成形面における肉厚部に埋設される迂回部材の周面の対向位置には、突状体が備えられている。そしてこの突状体は、上型に対して前記中子型が型締めされた状態において、上型の肉厚部成形面と肉厚部に埋設される迂回部材における肉厚部成形面に対向する周面との離間長以上の全長を有するので、迂回部材が補強材に接触した状態で突状体が迂回部材の周面に刺し込まれる。従って、迂回部材と中子型との間で補強材が強固に挟み込まれるので、シートパッドの成形時に、迂回部材の重みによって補強材が引きずられて発泡成形型にかみ込むことがない。その結果として、シートパッドの成形効率が向上する。
【0031】
また、迂回部材が突状体によってシートパッドの肉厚部の内部に配置された状態で発泡成形され、発泡樹脂材料が迂回部材に衝突して上型の肉厚部を成形する面に沿って発泡成形型内に流入するので、肉厚部の膨出量が十分に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るシートパッドの発泡成形型の概略を説明する図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB矢視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るシートパッドの発泡成形型を用いて、シートバックパッドを発泡成形する際の成形工程を説明する図である。
【図5】自動車の前部座席の概略を説明する図である。
【図6】シートバックパッドの概略を説明する図である。
【図7】同じく、シートバックパッドの概略を説明する、図6の矢線Bで示すシートバックパッドの概略断面図である。
【図8】図6のC矢視図である。
【図9】従来のシートバックパッドの成形過程の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、図1〜図4を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の一実施の形態に係る発泡成形型により成形されるシートパッドが、自動車の前部座席のシートバック部のシートバックパッドであることを例として説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る発泡成形型10の概略を説明する図であり、図1(a)は発泡成形型10が型開きされた状態、図1(b)は発泡成形型10が型締めされた状態を示す図である。図示のように、発泡成形型10は、下型11、上型12、中子型13、を備える。
【0035】
下型11は、底部11a、第1壁部11b、第2壁部11cを有して上部11dが一部切り欠かれて成形面11Aが形成された側面視略凹状に形成される。
【0036】
上型12は、上部12a及び下部12dを有して一体形成され、下部12dは、成形面12A及び成形面12Aから連続して側面視略凹状に形成された中子型接触面12Bを備える。そして、上型12の基端12cは下型11の第2壁部11cに形成されたヒンジ16を介して揺動自在に軸支されて、ヒンジ16を揺動中心として上型12が下型11に対して型開き及び型締め方向に移動する。
【0037】
中子型13は、中子型本体部13a及び中子型本体部13aから突出形成された突起部13bを有して一体形成されるとともに、周回して連続形成された成形面13A及び上型接触面13Bを有して形成される。また、中子型13は、中子型13の上型接触面13Bと上型12の中子型接触面12Bとを接離可能に支持するシリンダ17を介して上型12に連結される。
【0038】
次に、発泡成形型10の成形面11A、12A、13Aについて説明する。
【0039】
下型11の成形面11Aは、シートバックフレーム係合部111dの外面側を形成するシートバックフレーム係合部外面成形面11Aa、シートバックフレーム係合部外面成形面11Aaから連続して底部11a方向に湾曲して蛇行して延在するとともにパッド本体部111の前面部111aを成形する前面部成形面11Ab、前面部成形面11Abから連続して上部11d方向に湾曲して延在するとともにパッド本体部111のパッド本体部外側面111cから張り出し部外側面112aを成形する張り出し部外側面成形面11Acを備える。
【0040】
そして、下型11と上型12との間に形成される後述の型分割線PL1を介して、張り出し部外側面成形面11Acから連続して上型12の基端12c方向に湾曲するとともに上型12の上部12a方向に傾斜して延在してフランジ部外側面113aを成形するフランジ部外側面113aを成形するフランジ部外側面成形面12Aa、フランジ部外側面成形面12Aaから連続するとともに上型12の上部12a方向に湾曲して肉厚部113c及び段差部113eを成形する肉厚部成形面12Ab、肉厚部成形面12Abから連続するとともに上型12の基端12c方向に湾曲して延在して先端部外側面114aを成形する先端部外側面成形面12Acを備えて上型12の成形面12Aが形成される。
【0041】
中子型13の成形面13Aは、発泡成形型10の型締め状態において、上型12と中子型13との間に形成される後述の型分割線PL2を介して、上型12の先端部外側面成形面12Acと連続するとともに先端部外側面成形面12Acから下型11の底部11a方向に折曲して延在して先端部114の先端部底面114dを成形する先端部底面成形面13Aa、先端部底面成形面13Aaから下型11の第1壁部11b方向に折曲して連続するとともに先端部114の先端部内側面114b及び肉厚部内側面113bを成形する先端部内側面成形面13Ab、先端部内側面成形面13Abから連続して上型12方向へ折曲して延在するとともに上型12から離間する方向へ更に折曲して延在してフランジ部内側面113bを成形するフランジ部内側面成形面13Ac、フランジ部内側面成形面13Acから連続して下型11方向へ折曲して延在して張り出し部内側面112bを成形する張り出し部内側面成形面13Ad、張り出し部内側面成形面13Adから連続して下型11の第2壁部11c方向に湾曲するとともに蛇行して延在してパッド本体部111の背面部111bを成形する背面部成形面13Ae、背面部成形面13Aeから連続してシートバックフレーム係合部111dの内面側を形成するシートバックフレーム係合部内面成形面13Afを備える。
【0042】
シリンダ17を作動させるとともに上型12を型締め方向に移動させると、中子型13の上型接触面13Bと上型12の中子型接触面12Bが面で接合される。この状態において、下型11と中子型12との間に第1キャビティ14が形成され、中子型13と上型12との間に第2キャビティ15が形成される。また、下型11の上部11dと上型12の下部12dが接合して型分割線PL1が形成され、上型12の中子型接触面12Bの中子型接触面第1傾斜部12Baと、中子型13の上型接触面13Bの上型接触面第1傾斜部13Baとが接合して型分割線PL2が形成され、上型12の中子型接触面12Bの中子型接触面第2傾斜部12Bbと、中子型13の上型接触面13Bの上型接触面第2傾斜部13Bbとが接合して型分割線PL3が形成される。
【0043】
図2は、図1(a)のA部拡大図であり、図3は、図2のB矢視図である。図示のように、上型12の成形面12Aにおける肉厚部成形面12Abには、上型12の幅方向において所定間隔を隔てて複数の円筒状のセットピン嵌合口12eが形成され、発泡樹脂迂回部材116を保持する突状体となるセットピン20が配設される。セットピン20は、上型12の成形面12Aと連続する下面20Aaを有して上型12に形成されたセットピン嵌合口12eに嵌合保持される円筒状の基部20A、基部20Aから突出形成される軸部20Bを備える。
【0044】
軸部20Bは、基部20Aに対して縮径されて下面20Aaの略中央部分から鉛直方向に延在するとともに発泡樹脂迂回部材116の第2側面116dと当接して刺し込み規制部となる下面20Caを有する円筒状の台座20Cを有する。また、台座20Cに対して更に縮径されて台座20Cの下面20Caの略中央部分から鉛直方向に延在する係止軸20D、係止軸20Dの先端に膨出形成された係止部20Eを有して尖状先端部が形成され、基部20A及び軸部20Bが一体形成される。
【0045】
また、係止軸20Dの基端から係止部20Eの先端までの全長は、この部分が発泡樹脂迂回部材116に刺し込まれた状態において上型12と中子型13とを接合させると、発泡樹脂迂回部材116の第1側面116cが中子型13に張設された補強材115に当接する長さを有するように形成される。
【0046】
次に、図2及び図4に基づいて、シートバックパッド110の成形について説明する。図4(a)〜(c)は、シートバックパッド110の成形工程を説明する図である。図4(a)で示すように、発泡樹脂迂回部材116の第2側面116dをセットピン20の係止部20Dに突き立てて、発泡樹脂迂回部材116にセットピン20を刺し込む(突状体刺し込み工程)。このとき、セットピン20の台座20Cにおける下面20Caが、発泡樹脂迂回部材116の第2側面116dに当接して、発泡樹脂迂回部材が上型12と中子型13との間の空域において保持される。
【0047】
そして、補強材115を先端部内側面成形面13Ab、フランジ部内側面成形面13Ac、張り出し部内側面成形面13Ad、背面部成形面13Ae、シートバックフレーム係合部内面成形面13Afへと、例えば、両面テープ等の接着部材を用いて順次貼付していく(補強材張設工程)。そして、下型11の成形面11Aの前面部成形面11Abに発泡樹脂材料Mを所定量注入する(発泡樹脂材料注入工程)。
【0048】
その後、図4(b)で示すように、中子型13をシリンダ17によって上型12に接合させるとともに上型12を下型11への型締め方向に移動させる(型締め工程)。このとき、セットピン20が刺し込まれた発泡樹脂迂回部材116の第1側面116cが、中子型13の成形面13Aにおける先端部内側面成形面13Abに張設された補強材115に圧接して、上型12のセットピン20が刺し込まれた発泡樹脂迂回部材116と中子型13との間で補強材115が強固に挟み込まれる。
【0049】
この状態で、発泡樹脂材料Mに所定時間加熱して発泡させ、第1キャビティ14内に発泡樹脂材料Mが流入充填されるとともに、第2キャビティ15内にも発泡樹脂材料Mが流入して、発泡樹脂材料Mが発泡樹脂迂回部材116の上面116aに衝突して上型12の肉厚部成形面12Abに沿って流入充填されるので、肉厚部113cの膨出量が十分に確保される。
【0050】
このとき、先端部114の先端部外側面114aの成形面(先端部外側面成形面12Ac)と先端部底面114dの成形面(先端部底面成形面13Aa)との間には、微小な間隙を有する型分割線PL2が形成されているので、肉厚部113cに集まりやすい気泡や炭酸ガスがこの型分割線PL2から発散されて、ボイドの発生が回避される。
【0051】
そして、第2キャビティ15に配置される発泡樹脂迂回部材116は、第2キャビティ15に流入した発泡樹脂材料Mによって包含されるように保持されるとともに、発泡樹脂材料Mが硬化されてウレタンフォームが生成され、シートバックパッド110が成形される(樹脂材料発泡成形工程)。
【0052】
そして、図4(c)で示すように、上型32及び中子型33を型開き方向に移動させてシートバックパッド10を下型31から離型させる。その後、シリンダ17を作動させて上型12と中子型13を離間させると、セットピン20が発泡樹脂迂回部材116及びウレタンフォームから引き抜かれる。その後更に、シートバックパッド110を中子型13からも離型させる(離型工程)。
【0053】
以上のような構成とすることにより、上型12と中子型13が接合されると、セットピン20に保持された発泡樹脂迂回部材116によって補強材115が圧接されるので、発泡樹脂迂回部材116と中子型13との間で補強材115が強固に挟み込まれる。そのため、シートバックパッド110の成形時に、発泡樹脂迂回部材116の重みによって補強材115が引きずられて上型12と中子型13との型分割線PL1に入り込むことがない。従って、シートバックパッド110の成形時に補強材115のかみ込みを生じないので、シートバックパッド110の成形効率が向上する。
【0054】
また、セットピン20は、発泡樹脂迂回部材116に刺し込まれる軸部20Bを備えるとともに、軸部20Bが発泡樹脂迂回部材116の第2側面116dに刺し込まれると、第2側面116dに当接する台座20Cを備えているので、発泡樹脂迂回部材116へのセットピン20の刺し込みの深度が規制される。従って、発泡樹脂迂回部材116が安定的に保持されて、上型12と中子型13の接合による発泡樹脂迂回部材116と中子型13との間における補強材115の圧接が確実に行われる。また、発泡樹脂迂回部材116のセットピン20への取り付けの際の位置決めが容易になる。
【0055】
更に、セットピン20を上型12に所定間隔を隔てて複数配設することで、セットピン20による発泡樹脂迂回部材116の保持がより安定するので、上型12と中子型13の接合による発泡樹脂迂回部材116と中子型13との間における補強材115の圧接が確実に行われる。
【0056】
セットピン20を上型12に配設するに際しては、上型12にセットピン20の基部20Aを嵌合するセットピン嵌合口12eを形成すればよく、また、セットピン20も簡単な形状及び構造なので、製造コスト及び作業コストを削減した上で成形効率の高いシートバックパッド110を得ることができる。
【0057】
そして、発泡樹脂迂回部材116は中子型13における先端部内側面成形面13Abに張設された補強材115に圧接された状態で発泡成形が実行されるので、第2キャビティ15に流入する発泡樹脂材料Mは発泡樹脂迂回部材116の上面116aに衝突して、上型12の肉厚部成形面12Abに沿って流入充填されるので、肉厚部113cの膨出量が十分に確保される。
【0058】
このとき、先端部外側面成形面12Acと先端部底面成形面13Aaとの間には、微小な間隙を有する型分割線PL1が形成されているので、肉厚部113cに集まりやすい気泡や炭酸ガスがこの型分割線PL1から発散されて、ボイドの発生が回避される。従って、肉厚部113cに十分な膨出量を確保した上で、肉厚部113cにボイドの発生が回避された成形性の精度の高い、高品質なシートバックパッド110を得ることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、発泡成形型10で成形されるシートパッドが自動車の前部座席のシートバック部のシートバックパッドであることを例として説明したが、自動車の後部座席のシートバック部のシートバックパッドであってもよく、更に、航空機や船舶、列車等のシートバック部のシートバックパッドにも適用できる。
【0060】
また、図3においてセットピン20が上型12に少なくとも3本が配置されている状態を示したが、セットピン20の本数は3本に限定されるものではなく、発泡樹脂迂回部材116を空域において揺動を規制して保持できる本数であることが望ましい。
【0061】
更に、セットピン20の形状も、台座と軸部を備えている限り、上記実施の形態で示したセットピン20以外の形状で形成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 発泡成形型
11 下型
11A 成形面
12 上型
12A 成形面
13 中子型
13A 成形面
14 第1キャビティ
15 第2キャビティ
20 セットピン(発泡樹脂迂回部材保持部)
20A 基部
20Aa 下面
20B 軸部
20C 台座
20Ca 下面(当接面)
20D 係止軸
20E 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型、上型、及び該上型に対して離間可能に支持される中子型を有し、前記下型に対して前記上型及び中子型が型締めされて成形空間が形成される発泡成形型であって、
乗員の背もたれ部を形成するパッド本体部と、
該パッド本体部の上端から後方に突出して延在する張り出し部と、
該張り出し部から前記パッド本体部の下方向に向かって折曲して延在するとともに前記パッド本体部の下方に移行するに従って該パッド本体部の後方向に漸次肉厚が増大する肉厚部及び該肉厚部から更に下方に連続するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を有するフランジ部と、
前記パッド本体部、前記張り出し部及び前記フランジ部の内側面の全域に亘って張設される補強材と、
該補強材に接触して前記パッド本体部の幅方向に延在するとともに前記肉厚部内に埋設されて発泡樹脂材料を迂回させる断面略矩形の迂回部材と、を備えるシートパッドを発泡成形する発泡成形型において、
前記肉厚部は、前記上型及び中子型により形成され、
前記上型の肉厚部成形面は、
前記肉厚部に埋設される前記迂回部材の外側面の対向位置に突状体を備え、
該突状体は、
前記上型に対して前記中子型が接合された状態において前記上型の肉厚部成形面と前記肉厚部に埋設される前記迂回部材の前記外側面との離間長以上の突出長を有する、
ことを特徴とするシートパッドの発泡成形型。
【請求項2】
前記突状体は、
前記迂回部材の前記外側面に刺し込まれる尖状先端部と、
該尖状先端部が前記迂回部材の前記外側面に刺し込まれた状態で該外側面に当接される刺し込み規制部と、を備え、
該刺し込み規制部の形成位置は、
前記上型に対して前記中子型が接合されるとともに前記迂回部材の外側面に前記尖状先端部が刺し込まれた状態で前記迂回部材が前記補強材に接触する位置であることを特徴とする請求項1に記載のシートパッドの発泡成形型。
【請求項3】
前記突状体は、
所定間隔を隔てて複数配設されることを特徴とする請求項1または2に記載のシートパッドの発泡成形型。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のシートパッドの発泡成形型で成形するシートパッドの製造方法であって、
前記迂回部材が前記突状体に刺し込まれる突状体刺し込み工程と、
前記補強材が前記中子型の成形面に張設される補強材張設工程と、
前記下型の前記成形面に発泡樹脂材料が注入される発泡樹脂材料注入工程と、
前記上型及び中子型が型締め方向に移動されて型締めされる型締め工程と、
該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料が所定時間加熱されて発泡されてシートパッドが成形される樹脂材料発泡成形工程と、
前記上型及び中子型が型開き方向に移動されて型開きされるとともに前記突状体が前記成形されたシートパッドから引き抜かれ、更に前記樹脂材料発泡成形工程により成形された前記シートパッドが前記上型及び中子型から離型される離型工程と、
を備えることを特徴とするシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−234616(P2010−234616A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84318(P2009−84318)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】