説明

シートロック装置

【課題】コストの増大や、構造が複雑化する問題を招来することなく、シートが不用意に移動する事態を防止すること。
【解決手段】第2フック部材41を規制位置に配置した状態において、第1フック部材21が係合位置に配置された場合にのみ、連係スプリング42の弾性力に抗して第2フック部材41を規制位置に維持するように、第1フック部材21および第2フック部材41を連係する連係機構50を備えている。この連係機構50は、第1フック部材21に係合する中間部材51と、この中間部材51と第2フック部材41を連結する連結部材52とを備えて構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の室内において後部スペースの用途の多様化を図るため、後部シートを着脱可能に配設することや、該シートを収納姿勢に姿勢変化可能に配設することが行われている。このような場合には、シートの床面への固定にシートロック装置が用いられている。このシートロック装置は、第1ロック機構および第2ロック機構を備えて構成されている。第1ロック機構は、床面に設けた第1ストライカと係合するためのもので、第1フック部材およびロッキング部材を備えている。第1フック部材は、係合位置と解除位置との間を移動可能に構成されたもので、シートが使用位置に配置された場合に、第1ストライカに係合することにより係合位置に配置され、シートを使用位置に保持している。ロッキング部材は、第1フック部材が係合位置に配置された場合に、第1フック部材に係合して該第1フック部材と第1ストライカとの係合状態を維持するように構成されている。
【0003】
第2ロック機構は、床面に設けた第2ストライカに係合するためのもので、第2フック部材およびスプリングを備えている。第2フック部材は、規制位置と非規制位置との間を移動可能に構成されたもので、シートが使用位置に配置された場合に、第2ストライカに係合することにより規制位置に配置され、シートの使用位置からの移動を規制している。スプリングは、その弾性力で第2フック部材を規制位置に常時維持するように構成されている。このようなシートロック装置によれば、ロッキング部材によって第1フック部材と第1ストライカとの係合状態を維持することにより、シートを使用位置に保持することができる。また、スプリングによって第2フック部材と第2ストライカとの係合状態を維持することにより、第1フック部材およびロッキング部材とともにシートを使用位置に保持することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−254688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシートロック装置では、第1フック部材と第2フック部材とが、第1ストライカおよび第2ストライカにそれぞれ互いに独立して係合可能である。したがって、シートを使用位置に配置した場合に、第1フック部材と第1ストライカとが係合していないにも関わらず、第2フック部材と第2ストライカとが係合する虞がある。この場合、シートの使用位置からの移動は、第2フック部材と第2ストライカとの係合のみによって規制されることになる。第2フック部材と第2ストライカとの係合状態は、スプリングの弾性力のみによって維持されることになる。したがって、例えば、このような状態で車両が走行した場合には、第2フック部材と第2ストライカとの係合状態が解除される虞があり、これが解除された場合には、シートが不用意に移動する事態を招来することになる。なお、こうした問題は、両ロック機構にロッキング部材を設けることで解決することが可能であるが、コストの増大や、構造が複雑化する問題を招来することになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、コストの増大や、構造が複雑化する問題を招来することなく、シートが不用意に移動する事態を防止することのできるシートロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るシートロック装置は、シートが使用位置に配置された場合に、第1ロック機構が床面に設けた第1ストライカに係合し、かつ第2ロック機構が床面に設けた第2ストライカに係合することにより、前記シートを使用位置に保持する一方、前記第1ロック機構と前記第1ストライカとの係合状態を解除し、かつ前記第2ロック機構と前記第2ストライカとの係合状態を解除した場合には、前記シートの使用位置からの移動を許容するシートロック装置において、前記第1ロック機構は、係合位置と解除位置との間を移動可能に構成し、前記シートが使用位置に配置された場合に、前記第1ストライカに係合することにより係合位置に配置され、前記シートを使用位置に保持する第1フック部材と、前記第1フック部材が係合位置に配置された場合に、前記第1フック部材に係合して該第1フック部材と前記第1ストライカとの係合状態を維持するロッキング部材とを備えて構成し、前記第2ロック機構は、規制位置と非規制位置との間を移動可能に構成し、前記シートが使用位置に配置された状態において規制位置に配置した場合に、前記シートの使用位置からの移動を規制する第2フック部材と、前記第2フック部材を非規制位置に弾性力で維持する連係スプリングとを備えて構成し、さらに、前記第2フック部材を規制位置に配置した状態において、前記第1フック部材が係合位置に配置された場合にのみ、前記連係スプリングの弾性力に抗して前記第2フック部材を規制位置に維持するように、前記第1フック部材および前記第2フック部材を連係する連係機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2フック部材を規制位置に配置した状態において、第1フック部材が係合位置に配置された場合にのみ、連係スプリングの弾性力に抗して第2フック部材を規制位置に維持するように、第1フック部材および第2フック部材を連係する連係機構を備えている。このため、第1フック部材が第1ストライカに係合した場合には、連係機構によって第1フック部材と第2フック部材とを連係することにより、第2フック部材を規制位置に配置した状態で維持することができる、したがって、第2フック部材によって、第1フック部材およびロッキング部材とともにシートを使用位置に保持することができる。一方、第1フック部材が第1ストライカに係合していない場合には、連係スプリングによって第2フック部材が非規制位置に維持されることになり、第2フック部材がシートの使用位置からの移動を規制することがない。このため、従来のシートロック装置のようにシートを使用位置に配置した場合に、第1フック部材と第1ストライカとが係合していないにも関わらず、第2フック部材と第2ストライカとが係合することがない。したがって、コストの増大や、構造が複雑化する問題を招来することなく、シートが不用意に移動する事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるシートロック装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明の実施の形態であるシートロック装置を示したもの、図3は、図1に示したシートロック装置を適用するシートが姿勢変化する過程を示したものである。ここで例示するシートは、四輪自動車の室内において後部右側に配設されるもので、図3に示すように、シートクッションSCおよびシートレッグSLを備えて構成してある。なお、図1および図2においては、紙面手前側が車両右側であり、図3においては、左斜め上方(図3参照)が車両右側である。
【0011】
シートクッションSCは、略直方体状を成すもので、一側端部を介して車両の室内において右側端部に設けた収納ヒンジHにヒンジ結合してあり、車両本体の前後方向に沿った軸心回りに揺動することが可能である。具体的には、シートクッションSCは、図3(b)に示すように、フロア(床面)F(図1参照)に対して略直交する方向に延在する態様となるように折り畳んで収納した収納姿勢と、図3(a)に示すように、該収納姿勢から略水平となるように車両左側に引き出した使用姿勢(使用位置)とに揺動するように構成してある。なお、図3中の符号SBは、一側端部を介してシートクッションSCの車両後方側となる端部にヒンジ結合したシートバックであり、図3(a)中の二点鎖線で示すように、シートクッションSCに対して折り畳んだ姿勢と、図3の実線で示すように、折り畳んだ姿勢からシートクッションSCに対して上方に延在する態様となる姿勢とに揺動することが可能である。また、図3中の符号Gは、シートクッションSCを収納姿勢とした状態で保持する際に使用するグリップバンドである。
【0012】
シートレッグSLは、車両本体の前後方向に長手状を成すもので、一側端部を介してシートクッションSCの端面に取り付けた底板Bにヒンジ結合してあり、車両本体の前後方向に沿った軸心回りに揺動することが可能である。具体的には、図3(b)中の二点鎖線で示すように、底板Bに対して折り畳んだ姿勢と、図3(b)の実線で示すように、折り畳んだ姿勢から底板Bに対して略直交する方向に延在する態様となる起立姿勢とに揺動するように構成してある。このシートレッグSLは、車両後方側となる部位に進入溝L1を有する一方、進入溝L1よりも車両前方側となる部位に第2ストライカ進入溝L2を有している。進入溝L1は、図3(a)に示す状態において、シートレッグSLの下面から上方に向けて略鉛直に形成してある。第2ストライカ進入溝L2は、図3(a)に示す状態において、シートレッグSLの下面から上方に向けて略鉛直に形成したもので、車両本体の前後方向に沿った幅を進入溝L1よりも長く構成してある(図1参照)。
【0013】
上述したシートレッグSLが底板Bに対して略直交する方向に延在する態様となる起立姿勢にある状態でシートクッションSCを図3(b)に示す収納姿勢から図3(a)に示す使用姿勢に揺動した場合に、シートレッグSLの先端部が対向する位置となるフロアFには、図1および図3に示すように、第1ストライカS1および第2ストライカS2が設けてある。第1ストライカS1は、上述したようにシートクッションSCを図3(b)に示す収納姿勢から図3(a)に示す使用姿勢に揺動した場合に、起立姿勢にあるシートレッグSLの進入溝L1に進入するように構成してある。第2ストライカS2は、上述したようにシートクッションSCを図3(b)に示す収納姿勢から図3(a)に示す使用姿勢に揺動した場合に、底板Bに対して略直交する方向に延在する態様となる起立姿勢にあるシートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2に進入するように構成してある。なお、以下の説明においては、シートクッションSCが収納姿勢から略水平となるように車両左側に引き出した使用姿勢にあり、シートレッグSLが底板Bに対して略直交する方向に延在する態様となる起立姿勢にあるものとして、シートロック装置の説明を行う。
【0014】
また、シートレッグSLには、図1に示すように、車両右側となる面に、ベースプレート11が取り付けてあるとともに、このベースプレート11に重ね合わせる態様でカバープレート12が取り付けてある。このベースプレート11およびカバープレート12には、シートレッグSLの進入溝L1に重ね合わせる態様で、下面から上方に向けて略鉛直に第1ストライカ進入溝11a,12aが形成してある。さらに、シートレッグSLには、シートロック装置が設けてある。
【0015】
シートロック装置は、図1、図4および図5に示すように、ベースプレート11およびカバープレート12の相互間に、第1ロック機構20を備えている。第1ロック機構20は、図1に示すように、フロアFに設けた第1ストライカS1を噛合保持することにより、シートを使用位置に保持するためのもので、第1フック部材21およびロッキング部材22を備えて構成してある。
【0016】
第1フック部材21は、ベースプレート11およびカバープレート12の第1ストライカ進入溝11a,12aよりも車両後方側となる位置に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在する第1フック軸23を介して回転可能に配設したものである。この第1フック部材21には、図1、図6および図7に示すように、噛合溝21a、フック部21b、係止部21cおよび連係凸部21dが設けてある。
【0017】
噛合溝21aは、第1フック部材21の外周面から第1フック軸23の近傍に向けて形成したもので、第1ストライカS1を収容することのできる幅に形成してある。
【0018】
フック部21bは、噛合溝21aを車両前方側に向けて開口させた場合に噛合溝21aよりも下方に位置する部分である。このフック部21bは、図1に示すように、第1フック部材21を最大限反時計回りに回転させた場合に車両右側から見てカバープレート12の第1ストライカ進入溝12aを横切る位置(以下、「係合位置」と称する)で停止する一方、図2に示すように、第1フック部材21を最大限時計回りに回転させた場合に車両右側から見てカバープレート12の第1ストライカ進入溝12aを開放する位置(以下、「解除位置」と称する)で停止するように構成してある。
【0019】
係止部21cは、噛合溝21aを車両前方側に向けて開口させた場合に噛合溝21aよりも上方に位置する部分である。この係止部21cは、図2に示すように、第1フック部材21を最大限時計回りに回転させた場合に、車両右側から見てカバープレート12の第1ストライカ進入溝12aを横切り、かつこの第1ストライカ進入溝12aの奥方(上方)に向けて漸次車両後方側に傾斜する状態で停止するように構成してある。
【0020】
連係凸部21dは、第1フック部材21の外周面から第1フック軸23に対して離反する方向に向けて形成したものである。この連係凸部21dは、図2に示すように、第1フック部材21を最大限時計回りに回転させた場合に、第1フック軸23の上方に配置されるように構成してある。また、連係凸部21dは、車両前方側となる部位に中間部材当接部21eを有している。中間部材当接部21eは、連係凸部21dにおいて車両前方側となる部位から第1フック軸23に対してさらに離反する方向に向けて形成した部分である。この中間部材当接部21eは、図2に示すように、第1フック部材21を最大限時計回りに回転させた場合に、上方に向かうにつれて僅かに車両前方側に傾斜延在する態様で配置されるように構成してある。
【0021】
ロッキング部材22は、ベースプレート11およびカバープレート12の第1ストライカ進入溝11a,12aよりも車両前方側、かつ第1フック軸23よりも上方となる位置に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在するロッキング軸24を介して回転可能に配設したものである。このロッキング部材22には、図1、図6および図7に示すように、動作部22aおよび作用部22bが設けてある。
【0022】
動作部22aは、ロッキング軸24から下方に向けて径外方向に延在する部分であり、係合部22cを有している。係合部22cは、動作部22aの延在端部(下端部)から車両後方側に向けて延在する部分である。この係合部22cは、ロッキング軸24を中心として回転することにより上述した第1フック部材21の係止部21cに着脱可能に係合することが可能である。
【0023】
作用部22bは、ロッキング軸24から上方に向けて径外方向に延在する部分である。この作用部22bは、車両後方側となる部位に係止面22dを有する一方、車両前方側となる部位に当接面22eを有している。係止面22dは、図1および図6に示す状態において、僅かに後傾延在するように構成してある。当接面22eは、図1および図6に示す状態において、前傾延在するように構成してある。
【0024】
ベースプレート11とロッキング部材22との間には、図1に示すように、ロッキングスプリング25が設けてある。ロッキングスプリング25は、図1においてロッキング部材22を常時時計回りに向けて押圧するものである。
【0025】
また、第1ロック機構20は、図1および図4に示すように、ロッキング部材22よりも車両右側となる位置に、解除操作部材31を備えている。解除操作部材31は、上述したロッキング軸24を介して揺動可能に配設したものである。この解除操作部材31は、図1、図6および図7に示すように、動作端部31aおよび作用端部31bを有している。
【0026】
動作端部31aは、解除操作部材31においてロッキング部材22とカバープレート12との間に配置される部分であり、ロッキング係止部31c、ロッキング当接部31d、作用掛止部31eおよび当接曲面31fを有している。
【0027】
ロッキング係止部31cは、動作端部31aにおいて車両後方側、かつ上方に位置する部位から車両左側に屈曲延在する部分である。このロッキング係止部31cは、図1に示す状態において、ロッキング部材22における作用部22bの係止面22dに近接対向するように構成してある。ロッキング当接部31dは、動作端部31aにおいて車両前方側、かつ上方に位置する部位から車両左側に屈曲延在する部分である。このロッキング当接部31dは、解除操作部材31が図1において反時計回りに揺動した場合に、ロッキング部材22における作用部22bの当接面22eに当接するように構成してある。作用掛止部31eは、動作端部31aにおいて車両後方側、かつロッキング係止部31cよりも下方に位置する部位から車両後方側に向けて延在する部分である。当接曲面31fは、動作端部31aにおいて作用掛止部31eよりも下方に位置する外周面に構成した曲面である。この当接曲面31fは、図2に示すように、ロッキング係止部31cがロッキング部材22における作用部22bの係止面22dに当接した状態において、車両右側から見てカバープレート12における第1ストライカ進入溝12aの一部に重なる態様で配置されるように構成してある。
【0028】
作用端部31bは、解除操作部材31においてロッキング係止部31cとロッキング当接部31dとの間となる部位から上方に向けて延在する部分であり、その先端部に適宜連係部材を介して操作具32が連係してある(図3参照)。この作用端部31bは、操作具32を車両後方側に向けて引張操作した場合に、解除操作部材31が図1において反時計回りに揺動するように構成してある。
【0029】
解除操作部材31と第1フック部材21との間には、図1、図6および図7に示すように、復帰スプリング33が設けてある。復帰スプリング33は、図1において解除操作部材31を常時時計回りに押圧するとともに、図1において第1フック部材21を常時時計回りに押圧するものである。この復帰スプリング33は、上述した第1フック軸23に巻回して配設してあり、一端部が該第1フック軸23を中心とした時計回りに向けて解除操作部材31の作用掛止部31eを押圧するとともに、他端部が該第1フック軸23を中心とした時計回りに向けて第1フック部材21の連係凸部21dを押圧するように構成してある。
【0030】
さらに、シートロック装置は、図1に示すように、シートレッグSLの車両右側(シートレッグSLに対して第1ロック機構20と同一面側)、かつベースプレート11よりも車両前方となる位置に、第2ロック機構40を備えている。第2ロック機構40は、シートの収納位置からの移動を規制するためのもので、第2フック部材41および連係スプリング42を備えて構成してある。
【0031】
第2フック部材41は、シートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2の鉛直上方となる位置に、車両本体の左右方向に沿って略水平に延在する第2フック軸43を介して回転可能に配設したものである。この第2フック部材41には、連係部41aおよび規制部41bが設けてある。
【0032】
連係部41aは、図1に示す状態において、第2フック軸43から上方に向かうにつれて漸次車両後方側に傾斜延在する部分である。
【0033】
規制部41bは、図1に示す状態において、第2フック軸43から下方に向けて漸次車両後方側に傾斜延在した後、鉛直下方に向けて延在する部分であり、フック部41cを有している。フック部41cは、規制部41bの延在端部(下端部)から車両前方側に向けて延在する部分である。このフック部41cは、図1に示すように、第2フック部材41を最大限反時計回りに回転させた場合に、車両右側から見てシートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2の下端部を横切る位置(以下、「規制位置」と称する)で停止する一方、図2に示すように、第2フック部材41を最大限時計回りに回転させた場合に、車両右側から見てシートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2を開放する位置(以下、「非規制位置」と称する)で停止するように構成してある。図1からも明らかなように、このフック部41cの延在方向の長さは、シートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2の幅よりも長く構成してある。
【0034】
連係スプリング42は、シートレッグSLと第2フック部材41との間に設けられるもので、図1において第2フック部材41を常時時計回りに向けて押圧するものである。この連係スプリング42は、上述した第2フック軸43を介して配設してあり、連係作用部42aを有している。連係作用部42aは、第2フック軸43を中心とした時計回りに向けて第2フック部材41の規制部41bを押圧する部分である。
【0035】
また、シートロック装置は、図1に示すように、第1フック部材21と第2フック部材41との間に、連係機構50を備えている。連係機構50は、第2フック部材41を規制位置に配置した状態において、第1フック部材21が係合位置に配置された場合にのみ、連係スプリング42の弾性力に抗して第2フック部材41を規制位置に維持するように、第1フック部材21および第2フック部材41を連係するためのもので、中間部材51および連結部材52を備えて構成してある。
【0036】
中間部材51は、カバープレート12よりも車両右側となる位置に、上述した第1フック軸23を介して揺動可能に配設したものである。この中間部材51には、基部51aが設けてある。
【0037】
基部51aは、第1フック部材21の噛合溝21aを車両前方側に向けて開口させた場合に、第1フック軸23から上方に向かうにつれて漸次車両後方側に向けて傾斜延在する部分であり、連係ピン51bを有している。連係ピン51bは、基部51aにおいて車両左側となる端面から車両本体の左右方向に沿って略水平に延在する柱状突起である。この連係ピン51bは、図5に示すように、カバープレート12に設けた連係孔12bを貫通した後、その延在端部が第1フック部材21の車両右側端面を超える位置に達しており、図1および図2に示すように、中間部材当接部21eが車両後方側に揺動した場合の揺動域に配置されている。
【0038】
連結部材52は、一端部に装着した連結具53を介して中間部材51における基部51aの先端部に連結してある一方、他端部に装着した連結具54を介して第2フック部材41における連係部41aの先端部に連結してある。この連結部材52は、中間部材51に対して連結具53を中心として車両本体の左右方向に沿った軸心回りに揺動することが可能である一方、第2フック部材41に対して連結具54を中心として車両本体の左右方向に沿った軸心回りに揺動することが可能である。
【0039】
また、連結部材52は、図1に示すように、中間部材51の連係ピン51bが係合位置にある第1フック部材21の中間部材当接部21eに当接している場合に、第2フック部材41を規制位置に配置するように構成してある。一方、連結部材52は、図2に示すように、中間部材51の連係ピン51bが解除位置にある第1フック部材21の中間部材当接部21eに当接している場合に、第2フック部材41を非規制位置に配置するように構成してある。
【0040】
上記のように構成したシートロック装置では、図3(b)に示すように、シートのシートクッションSCが収納姿勢にある場合、図2に示すように、第1フック部材21がベースプレート11およびカバープレート12の第1ストライカ進入溝11a,12aを開放する解除位置に配置されるとともに、第2フック部材41がシートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2を開放する非規制位置に配置されることになる。また、この状態では、第2フック部材41は、連係スプリング42の弾性力により図2において時計回りに向けて押圧されているが、連結部材52によって連結された中間部材51の連係ピン51bが第1フック部材21の中間部材当接部21eと当接することになるため、非規制位置に維持されることになる。この図3(b)に示すようにシートレッグSLが起立姿勢にある状態から、図3(a)に示すように、シートのシートクッションSCを使用姿勢に揺動すると、やがてシートレッグSLの進入溝L1およびベースプレート11、カバープレート12の第1ストライカ進入溝11a,12aと第1ストライカS1とが近接対向する態様で配置されることになる。また、シートレッグSLの第2ストライカ進入溝L2と第2ストライカS2とが近接対向する態様で配置されることになる。
【0041】
上述した状態から、図3(a)に示すように、さらにシートのシートクッションSCを使用姿勢に向けて揺動させると、フロアFに設けた第1ストライカS1が進入溝L1および第1ストライカ進入溝11a,12aに進入し、やがて第1フック部材21の係止部21cに当接することになる。この結果、第1フック部材21が復帰スプリング33の弾性力に抗して図2において反時計回りに回転することになる。この間、フロアFに設けた第2ストライカS2が第2ストライカ進入溝L2に進入することになる。
【0042】
また、上述したように第1フック部材21が図2において反時計回りに回転している間、ロッキング部材22は、ロッキングスプリング25の弾性力によって係合部22cの先端面(車両後方側端面)が第1フック部材21の外周面に摺接することになり、第1フック部材21の外周面形状に応じて適宜ロッキング軸24の軸心回りに回転する。さらに、この間、中間部材51は、連係ピン51bが第1フック部材21の中間部材当接部21eに当接係合することになり、第1フック部材21とともに図2において反時計回りに揺動することになる。中間部材51が図2において反時計回りに揺動すると、該中間部材51に連結部材52によって連結された第2フック部材41が、連係スプリング42の弾性力に抗して図2において反時計回りに回転することになる。
【0043】
上述した状態から、図3(a)に示すように、さらにシートのシートクッションSCを使用姿勢に向けて揺動させると、進入溝L1および第1ストライカ進入溝11a,12aに対する第1ストライカS1の進入量が漸次増大し、やがてロッキング部材22の係合部22cが噛合溝21aに至り、図1に示すように、第1フック部材21の係止部21cがロッキング部材22の係合部22cに当接係合することになり、復帰スプリング33の弾性力に抗して第1フック部材21の時計回りの回転が阻止されることになる。この間、フロアFに設けた第2ストライカS2がさらに第2ストライカ進入溝L2の奥方(上方)に進入することになる。また、このとき、解除操作部材31の当接曲面31fが第2ストライカS2に当接することになり、該解除操作部材31が復帰スプリング33の弾性力に抗して図2において反時計回りに回転することになる。
【0044】
また、上述したように第1フック部材21の時計回りの回転が阻止された状態においても、第2フック部材41は、連結部材52によって連結された中間部材51の連係ピン51bが第1フック部材21の中間部材当接部21eと当接係合状態にあるため、図1に示すように、連係スプリング42の弾性力に抗して時計回りの回転が阻止されることになる。
【0045】
この状態においては、第1フック部材21のフック部21bが第1ストライカ進入溝11a,12aを横切るように配置されるため、フック部21bによって第1ストライカS1が第1ストライカ進入溝12aの奥方(上方)から離脱する方向へ移動する事態が阻止されることになり、シートのシートクッションSCを使用姿勢とした状態が保持されることになる。また、この状態においては、第2フック部材41のフック部41cが第2ストライカ進入溝L2の下端部を横切るように配置されるため、フック部41cによって第2ストライカS2が第2ストライカ進入溝L2の奥方(上方)から離脱する方向への移動が規制させることになり、第1フック部材21およびロッキング部材22とともにシートのシートクッションSCを使用姿勢とした状態を保持することができる。図1からも明らかなように、この状態においては、第2フック部材41のフック部41cと第2ストライカS2とが接触していない。
【0046】
一方、上述した状態から、操作具32を車両後方側に向けて引張操作すると、解除操作部材31が復帰スプリング33の弾性力に抗して図1において反時計回りに揺動することになり、ロッキング当接部31dがロッキング部材22における作用部22bの当接面22eに当接することになる。この結果、ロッキング部材22がロッキングスプリング25の弾性力に抗して図1において反時計回りに回転することになる。この状態で、図3(b)に示すように、シートのシートクッションSCを収納姿勢に揺動すると、第1フック部材21のフック部21bとロッキング部材22の係合部22cとの当接係合状態が解除され、第1フック部材21が復帰スプリング33の弾性復元力により図1において時計回りに回転することになる。
【0047】
上述したように第1フック部材21が図1において時計回りに回転している間、中間部材51は、連係ピン51bと第1フック部材21の中間部材当接部21eとの当接係合状態が解除され、図1において時計回りに揺動することが可能となる。そこで、第2フック部材41は、連係スプリング42の弾性復元力により図1において時計回りに回転することになる。第2フック部材41が図1において時計回りに回転すると、該第2フック部材41に連結部材52によって連結された中間部材51が、図1において時計回りに揺動して、結局、連係ピン51bが第1フック部材21の中間部材当接部21eに当接することになる。すなわち、第1フック部材21が図1において時計回りに回転するにつれて、第2フック部材41が図1において時計回りに回転し、該第2フック部材41に連結部材52によって連結された中間部材51が、連係ピン51bを中間部材当接部21eに当接させながら図1において時計回りに揺動することになる。また、このとき、中間部材51は、第2フック部材41の回転による揺動方向が第1フック部材21の回転方向と同一方向となるため、連係ピン51bが中間部材当接部21eに当接することにより第1フック部材21の回転を助勢することができ、該第1フック部材21を図1において時計回りに確実に回転させることができる。
【0048】
上述したように第1フック部材21が図1において時計回りに回転した結果、図2に示すように、やがて第1ストライカ進入溝12aが開放され、第1ストライカS1が進入溝L1および第1ストライカ進入溝11a,12aから逸脱した位置に移動することができる。また、この状態においては、図2に示すように、第2ストライカ進入溝L2が開放され、第2ストライカS2が第2ストライカ進入溝L2から逸脱した位置に移動することができる。したがって、シートのシートクッションSCを収納姿勢に姿勢変化させることができるようになる。なお、第1ストライカS1を進入溝L1および第1ストライカ進入溝11a,12aから逸脱した状態で解除操作部材31の引張操作力を除去すると、図2に示すように、該解除操作部材31が復帰スプリング33の弾性復元力により図1において時計回りに揺動することになり、ロッキング係止部31cがロッキング部材22の係止面22dに当接することになる。
【0049】
ところで、図2に示す状態では、第2フック部材41を連係スプリング42の弾性力に抗して図2において反時計回りに回転した場合に、該第2フック部材41に連結部材52によって連結された中間部材51は、連係ピン51bと第1フック部材21の中間部材当接部21eとの当接係合状態を解除して、図2において反時計回りに揺動することが可能である。したがって、例えば、図2に示す状態において車両本体に前方に向けた衝撃荷重が加わった場合に、第2フック部材41が自重によって連係スプリング42の弾性力に抗して図2において反時計回りに回転したとしても、該第2フック部材41に連結部材52によって連結された中間部材51が適宜揺動することができ、連結部材52、連結具53および連結具54に負荷がかかる事態を防止することができる。
【0050】
上記のように構成したシートロック装置によれば、第2フック部材41を規制位置に配置した状態において、第1フック部材21が係合位置に配置された場合にのみ、連係スプリング42の弾性力に抗して第2フック部材41を規制位置に維持するように、第1フック部材21および第2フック部材41を連係する連係機構50を備えている。このため、第1フック部材21が第1ストライカS1に係合した場合には、中間部材51および連結部材52によって第1フック部材21と第2フック部材41とを連係することにより、第2フック部材41を規制位置に配置した状態で維持することができる、したがって、第2フック部材41によって、第1フック部材21およびロッキング部材22とともにシートを使用姿勢に保持することができる。一方、第1フック部材21が第1ストライカS1に係合していない場合には、連係スプリング42によって第2フック部材41が非規制位置に維持されることになり、第2フック部材41が使用姿勢としたシートの揺動を規制することがない。このため、従来のシートロック装置のようにシートを使用位置に配置した場合に、第1フック部材21と第1ストライカS1とが係合していないにも関わらず、第2フック部材41と第2ストライカS2とが係合することがない。したがって、コストの増大や、構造が複雑化する問題を招来することなく、シートが不用意に移動する事態を防止することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、第2フック部材41を非規制位置に弾性力で維持するべく、該第2フック部材41を連係スプリング42の連係作用部42aを介して直接的に押圧しているが、第2フック部材41を弾性力で非規制位置に維持できれば、必ずしも第2フック部材41を連係スプリング42によって直接的に押圧しなくても良い。例えば、図1において中間部材51を常時時計回りに向けて押圧するように連係スプリング42を設け、該中間部材51に連結部材52によって連結された第2フック部材41を弾性力で非規制位置に維持するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態であるシートロック装置を示した側面図である。
【図2】図1に示したシートロック装置において第1フック部材が解除位置にあり、かつ第2フック部材が非規制位置にある状態を示した側面図である。
【図3】図1に示したシートロック装置を適用するシートが姿勢変化する過程を示した説明図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図1におけるB矢視図である。
【図6】図1に示したシートロック装置の要部拡大図である。
【図7】図2に示したシートロック装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
11a 第1ストライカ進入溝
12a 第1ストライカ進入溝
20 第1ロック機構
21 第1フック部材
21a 噛合溝
21b フック部
21e 中間部材当接部
22 ロッキング部材
22c 係合部
31 解除操作部材
40 第2ロック機構
41 第2フック部材
41c フック部
42 連係スプリング
50 連係機構
51 中間部材
51b 連係ピン
52 連結部材
F フロア(床面)
L1 進入溝
L2 第2ストライカ進入溝
SC シートクッション
SL シートレッグ
S1 第1ストライカ
S2 第2ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが使用位置に配置された場合に、第1ロック機構が床面に設けた第1ストライカに係合し、かつ第2ロック機構が床面に設けた第2ストライカに係合することにより、前記シートを使用位置に保持する一方、前記第1ロック機構と前記第1ストライカとの係合状態を解除し、かつ前記第2ロック機構と前記第2ストライカとの係合状態を解除した場合には、前記シートの使用位置からの移動を許容するシートロック装置において、
前記第1ロック機構は、
係合位置と解除位置との間を移動可能に構成し、前記シートが使用位置に配置された場合に、前記第1ストライカに係合することにより係合位置に配置され、前記シートを使用位置に保持する第1フック部材と、前記第1フック部材が係合位置に配置された場合に、前記第1フック部材に係合して該第1フック部材と前記第1ストライカとの係合状態を維持するロッキング部材とを備えて構成し、
前記第2ロック機構は、
規制位置と非規制位置との間を移動可能に構成し、前記シートが使用位置に配置された状態において規制位置に配置した場合に、前記シートの使用位置からの移動を規制する第2フック部材と、前記第2フック部材を非規制位置に弾性力で維持する連係スプリングとを備えて構成し、
さらに、前記第2フック部材を規制位置に配置した状態において、前記第1フック部材が係合位置に配置された場合にのみ、前記連係スプリングの弾性力に抗して前記第2フック部材を規制位置に維持するように、前記第1フック部材および前記第2フック部材を連係する連係機構を備えた
ことを特徴とするシートロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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