説明

シート取付構造

【課題】本発明は、簡単な構造で、シートの組付けに関わる作業に影響を与えずに、円弧を描いて下がるシートの脚部先端の設置壁に、容易に床側シートレールから突き出た取付ボルトを貫通(差込み)させるシート取付構造を提供する。
【解決手段】本発明のシート取付構造は、床側シートレール10を、取付ボルト21の頭部21aより小さい幅寸法の下部面25と、取付ボルトの頭部より大きい幅寸法、取付ボルトの突き出る溝部10aをもつ上部面26と、傾斜した側部面27とに囲まれる台形形状の通路断面29aから構成し、傾斜した取付ボルトを通路断面29の角部29bと取付ボルトの頭部の間の摩擦抵抗により保持可能とした。同構成により、取付ボルトを傾斜させ、通路断面の角部と頭部との摩擦抵抗により、円弧を描いて下がるシートの脚部先端を迎える姿勢に保持すると、容易に床側シートレールの取付ボルトに、脚部先端の設置壁15が貫通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの片側に有る取付部を車室の壁側シートレールに仮固定してから、反対側に有る脚部を床側シートレールの取付ボルトにセットして、シートの取付けを行うシート取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
観光バスの車室内には、多数のシートが車両前後方向に据付けられているが、シートの前後のピッチは顧客の要望やバス仕様などで異なる。そのため観光バスは、そうしたシートの据付けの要求に対応できるよう、車室の側部壁面(車幅方向)と床面にそれぞれ車両前後方向に延びる長尺なシートレールを設け、シートの一側部に側部壁面の取付部を設け、反対側のシートの他側部に下側に突出する脚部を設けて、シートの両側の取付部、脚部をそれぞれ壁側のシートレール、床側のシートレールに固定するという構造を用いて、シートレール上であれば、車両前後方向のどのような位置にでもシートが取り付けられるようにしている。
【0003】
ところで、シートの脚部は、加わる負荷の影響が大きい部分である。そのため、多くは床側のシートレールに、L形断面のレール部材を用い、脚部の先端部には設置壁としてチャンネル形(コ字形)の部材を用い、両者間を挟持具、具体的には側方から固定ボルトでレール部材にチャンネル部材を挟み込む構造を用いて、レール部材に脚部を固定することが行われていた。
ところが、側方から固定ボルトでL形のレール部材に脚部のチャンネル部材を挟み込む構造は、シートに加わる荷重が過大になると、脚部に滑りなどが生じ、十分に対応できないおそれがある。
【0004】
そこで、過大な荷重にも対応できるようシートの脚部の取付けには、特許文献1に開示されるような構造が提案されている。これは、上面に溝部をもつ長方形状の枠形断面のレール部材を床側シートレールに用い、同シートレール内に取付ボルトの頭部を摺動自在に収め、先端側の軸部(ねじ部分)を溝部から垂直に突き出させる。そして、同シートレールから垂直に突き出る軸部を、シートの脚部先端に有る設置壁に貫通させ、同貫通部分にナット部材をねじ込みことにより、シートレールに脚部を固定する構造である。同構造は、シートの脚部の設置壁を取付ボルトが貫通するために、過大な負荷にも耐えうる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−2246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シートの一側部に有る取付部は、一般に壁側シートレールから突き出る固定ボルトに固定させる構造が用いられる。そのため、シートの取付強度を確保するには、この一般的な壁側の構造と先の脚部の固定構造(取付ボルトを収めた四角枠形断面の床側シートレールを用いた固定構造)とを組み合わせて、シートを取り付けることになる。
【0007】
この場合、壁側と床側との双方からボルトが突き出るため、シートの取り付けとしては、これら固定ボルトや取付ボルトが破損せずにすむよう、始めに他側が一側よりも若干、高くなるようにシートを傾斜させてから、シートの一側部に有る取付部を壁側シートレールに仮固定して、他側部に有る脚部を床側シートレールの直上に配置し、その後、仮固定した点を支点としてシートの他側部を下ろし、脚部の先端に有る設置壁に、床側シートレールに摺動自在に収めた取付ボルトの軸部を貫通させて、ナット部材で締結する構造が用いられる。
【0008】
ところが、シートの脚部を固定するときは、脚部先端が、仮固定した点を支点として円弧の軌跡を描きながら下がるのに対し、床側シートレールの取付ボルトが、床側シートレールから垂直に起立して、垂直に起立した取付ボルトの軸部で、脚部先端の設置壁に有る貫通部分(貫通孔)を迎えるので、位置決めが難しく、脚部の設置壁の貫通部分(貫通孔)に取付ボルトを貫通(差込み)させるには、かなりの熟練を要する。この位置決めが、かなりシートの組付性に影響を与えていた。
【0009】
そのため、別途、部品や機構を加えて取付ボルトの姿勢を所定の向きに設定することが考えられる。しかし、同構造だと、部品点数が増えて構造的に複雑になるうえ、貫通後は取付ボルトの向きを垂直の向きに直すなどシートの組付けに関わる作業に影響を与えるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、簡単な構造で、シートの組付けに関わる作業に影響を与えずに、円弧を描いて下がるシートの脚部先端の設置壁に、容易に床側シートレールから突き出た取付ボルトを貫通(差込み)させるシート取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、床側シートレールを、取付ボルトの頭部の外形寸法よりも小さい幅寸法を有した下部面と、取付ボルトの頭部の外形寸法よりも大きい幅寸法を有し、かつ取付ボルトの先端側が突き出る溝部を有した上部面と、下部面と前記上部面とをつなぐ傾斜した側部面とに囲まれる台形形状の通路断面をもつレール部材から構成し、突き出る取付ボルトの姿勢を車幅方向に傾斜変位可能とするとともに、傾斜した取付ボルトを通路断面の角部と取付ボルトの頭部との間に生じる摩擦抵抗により保持可能とした。
【0011】
同構成によると、取付ボルトに外力を与えて、取付ボルトを傾斜させ、通路断面の角部と取付ボルトの頭部との間に生じる摩擦抵抗により、円弧を描いて下がるシートの脚部先端を迎える姿勢に保持するだけで、容易に床側シートレールから突き出た取付ボルトに、脚部先端の設置壁が貫通する。しかも、取付ボルトは、通路断面の角部がもたらす摩擦抵抗で保持されるだけなので、取付ボルトが設置壁を貫通するにしたがい、取付ボルトの頭部は摩擦抵抗の減少する方向、すなわち角部から離れ、取付ボルトの姿勢が自然に傾斜から、ナット止めに適した垂直の姿勢へ変わるから、組付けに関わる作業に影響を与えずに、シートの取付けが行える。
【0012】
請求項2の発明は、上記目的に加え、貫通に適した取付ボルトの姿勢が確保されやすいよう、取付ボルトは、仮固定した点を支点として円弧を描いて下りる脚部の接線方向の向きに合わせて傾斜させ、床側シートレールの通路断面は、このときの傾斜した取付ボルトの保持が行なえる台形形状とした。
請求項3の発明は、上記目的に加え、床側シートレールが周りに影響を与えずに溶接で車体の骨格部材に固定されるよう、床側シートレールは、車体の骨格部材に溶接で取着されることとし、床側シートレールの外形形状を、通路断面にならう台形形状とし、溶接で骨格部材と床側シートレールとを取着したとき生ずる溶接ビードが、レール幅内に収まるようにした。
【0013】
請求項4の発明は、上記目的に加え、取付ボルトが前後方向にぶれずに所定の傾斜姿勢に保たれるよう、取付ボルトの頭部は、車幅方向の寸法を通路断面の下部面より長い短手部、車両前後方向の寸法を短手部より長い長手部をもつ長方形形状の頭部で形成して、取付ボルトが車両前後方向にぶれるのを抑えるようにした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、台形形状の通路断面をもつ床側シートレールの採用により、簡単に床側シートレールから突き出た取付ボルトが貫通するようになる。しかも、取付ボルトは、設置壁を貫通するにしたがい、自然と傾斜した姿勢から、次第にナット止めに適した垂直の姿勢に変わるから、取付ボルトの固定作業が変わることはない。
したがって、簡単な構造で、シートの組付けに関わる作業に影響を与えずに、円弧を描いて下がるシートの脚部先端の設置壁に、容易に床側シートレールから突き出た取付ボルトを貫通(差込み)させることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、貫通に適した取付ボルトの姿勢が確保されやすくなる。
請求項3の発明によれば、周りに影響を与えずに床側シートレールを溶接で車体の骨格部材に据付けることができる。
請求項4の発明によれば、取付ボルトを前後方向にぶれずに所定の傾斜姿勢に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のシート取付構造を示す斜視図。
【図2】図1中のA−A線に沿う断面図。
【図3】床側シートレールと取付ボルトとの関係を示す斜視図。
【図4】傾斜した取付ボルトを床側シートレールの台形形状の通路で保持させたときを示す断面図。
【図5】シート取付けの当初に行うシートの一側部を壁側シートレールに仮固定する作業を説明する正面図。
【図6】その後のシートの脚部を床側シートレールに固定する作業を説明する正面図。
【図7】シートの組付けを終えた状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図1ないし図7に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は観光バス(バス車両)の客室内に据付けられたシート列の一部を示し、図2は図1中のA−A線に沿う断面を示し、図3および図4はレール構造の詳細を示し、図5〜図7はシートの組付けを示している。
【0018】
図1中1は、観光バスの車体を示している。車体1は前後方向に延びた箱形を呈していて、内部に車室2を形成している。車室2の床面の車幅方向中央には、狭幅の通路3(図1は一部しか図示せず)が形成されている。通路3は、他の部分より下がった床面で形成され、車両の前後方向に沿って直線状に延びている。この通路3を挟んだ車幅方向片側(一側)の床面2a、反対側(他側)の床面(図示しない)は、いずれもフロアトリム4a(カーペットなど)を敷いた床板4で形成されている(図1,2は片側しか図示せず)。これら床面2aに、それぞれ前向きの姿勢のシート6(シートクッション6aとシートバック6bとで形成)が列をなし、多数、壁面に沿って据え付けられている(図1は一側の座席の一部しか図示せず)。なお、2bは車室2の両側の側壁2c(車室側部に相当)に設けられた窓部、9aはシート6に設けられたリクライニング機構部、9bはシート6に設けられたアームレストをそれぞれ示している。
【0019】
シート6の取付けには、通路3の両側共、顧客の要望に応じて、シート前後間のピッチが変えられるよう、シートレール構造が用いられている。これは、図1に示されるように車室2の側壁2cの壁面の下側に、車両前後方向に延びる長尺なシートレール8(以下、壁側シートレール8という)を設け、通路3と隣接する床面2a部分に、車両前後方向に延びる長尺なシートレール10(以下、床側シートレール10という)を設ける。またシート6は、シートクッション6aの車室2の壁面側の側部(シートの一側部に相当)、ここではシートクッション6aのフレーム7端(図5参照)に、取付板部12(本願の取付部に相当)を設け、反対側のシートクッション6aの通路3側の側部(シートの他側部に相当)に、図1および図2に示されるように下側へ突き出る脚部13を設けて、シート6の取付板部12を壁側シートレール8に摺動可能に固定、シート6の脚部13先端を床側シートレール10に摺動可能に固定するだけで、シートレール8,10上であれば、車両前後方向のどのような位置にでも取り付けられるようにしたものである。ここでは、脚部13は、例えばシートクッション6aのフレーム7から下側へ延びる板金製の脚本体14と、脚本体14の先端部(最下端)に設けた板金製の設置壁部15(本願の設置壁に相当)とを組み合わせたシート取付構造が用いてある。なお、脚本体14の周囲はカバー16で覆ってある(いずれも図2に図示)。
【0020】
さらに述べると、シート6の壁側の組付けは、一般的な横向きの固定ボルト18を採用した構造が用いられている。例えば、溝部(図示しない)を車室2内に開口させた横向きのチャンネル形部材を壁側シートレール8として用い、この壁側シートレール8内に固定ボルト18の頭部18aを摺動自在に収めて、固定ボルト18の軸部18b(いずれも図5に図示)を溝部から車室2内へ突出させた構造が用いられる。つまり、図1および図7に示されるように横向きの固定ボルト18の軸部18bにシート6の取付板部12を貫通させ、貫通端にナット部材(図示しない)をねじ込むと、取付板部12が挟み込まれ、シート6の一側部が固定される。
【0021】
またシート6の脚部13の組付けは、過大な荷重(負荷)に耐えるよう、図2に示されるように上部に溝部10aをもつ枠形断面のレール部材を床側シートレール10として用い、この床側シートレール10内に取付ボルト21の頭部21aを摺動自在に収め、軸部21bを溝部10aから車室2内へ突出させた構造が用いられる。つまり、図2に示されるように縦向きの固定ボルト21の軸部21bに脚部先端の設置壁部15を貫通させ、貫通端にナット部材22をねじ込むと、設置壁部15が挟み込まれ、シート6の脚部13が固定される。なお、軸部21bが貫通する貫通部分には、車幅方向に延びる長孔よりなる貫通孔15aが用いてある。また床側シートレール10は、過大な荷重に耐えうるよう、床板4を受けるデッキフレームをなす角筒形の骨格部材19(車体の骨格部材に相当)の上面に溶接で取着してある。
【0022】
この脚部13の固定構造を採用すると、図5に示されるように車室2内の壁側と床側との双方(異なる方向)からそれぞれボルト18,21が突き出る。このため、シート6の組付けは、これら固定ボルト18や取付ボルト21を破損しないよう、シート6の一側部を、取付ボルト21を避けながら壁側シートレール8に固定してから、残るシート6の他側部となる脚部13を床側シートレール10に固定する作業で行う。
【0023】
具体的には、図5に示されるように取付ボルト21と干渉することがないよう、始めシート6の脚部13側をシート6の取付板部12側よりも若干、高くして、シート6全体を傾斜させる。この状態からシート6の一側部に有る取付板部12を壁側シートレール8から突き出る固定ボルト18に貫通させ、仮固定する。これで、図6(a)に示されるようにシート6の一側部は、取付ボルト21と干渉せずにすむ作業で支持される。この仮固定により、シート6の他側部に有る脚部13は、床側シートレール10の直上に配置される。この後、図6(a)に示されるように仮固定された地点(X点)を支点にシート6の他側部を下ろし、脚部13の先端に有る設置壁部15に床側シートレール10から突き出る取付ボルト21に貫通させる。その後、本固定に入る(ナット部材22による締結など)。
【0024】
こうした円弧の軌跡を描きながら下降する脚部13の先端に、床側シートレール10に摺動自在に収めただけの取付ボルト21を貫通させるのには、取付ボルト21の位置が定まり難く、このときの位置決め作業がシート6の組付性に影響を与える。
そこで、床側シートレール10や取付ボルト21には、こうした面倒な作業を改善する工夫が施されている。
【0025】
すなわち、床側シートレール10は、取付ボルト21の姿勢を溝部10a内で車幅方向に傾斜可能にするとともに、傾斜した取付ボルト21を摩擦抵抗だけで保持可能する台形形状の通路29をもつ部材が用いてある。具体的には床側シートレール10は、図2〜図4に示されるように取付ボルト10の頭部21aの車幅方向における外形寸法aよりも小さい幅寸法bを有した下部面25と、同取付ボルト21の外形寸法aよりも大きい幅寸法cを有し、車幅方向中央に取付ボルト21の先端側が突き出る溝部10aを有した上部面26(下部面25と平行)と、これら下部面25と上部面26との間をむすぶ傾斜した一対の側部面27とに囲まれる台形形状(下部が小、上部が大)の通路断面29aをもつレール部材で構成されている(a>b,a<c)。ここでは、レール部材は、外形形状も含め、通路断面29aと同じ台形形状にした断面をもつシートレール部材(例えば板金製)で構成してある。取付ボルト21の頭部21aは、この通路断面29aで形成される通路29内を自由に移動できるものである。
【0026】
特に通路29の溝部10aは、取付ボルト21の車幅方向の所定範囲内で傾斜する傾斜変位を許容する幅寸法をもつ。また台形形状の通路29は、図4に示されるように傾斜した取付ボルト21が摩擦抵抗によって保持される構造としてある。この保持は、台形形状をなす通路29の上側の鋭角な角部29bと頭部21aとの間で生じる摩擦抵抗を用いて行われる。具体的には通路29の各部は、取付ボルト21の軸部21bに外力を与えて、頭部21aを車幅方向片側へ傾かせたとき、頭部21aの車幅方向一側部が鋭角な角部29bの内面と摺接しながら角部29b内に収まり、残る頭部21aの車幅方向他側部が傾斜した側部面27の内面と摺接するという挙動を生じさせる設定が施されている。このときの取付ボルト21に与える摩擦力により、傾けた取付ボルト21の姿勢が位置決め保持される。つまり、台形形状がもたらす角部29bやその周辺に生じる頭部21aとの摩擦抵抗を利用して、傾いた取付ボルト21が保持される構造となっている。
【0027】
特に、台形形状の通路29(通路断面29a)の各部(下部面25や上部面26の幅方向、側部面27の高さ、角部29bの角度など)は、取付ボルト21を脚部13の先端(貫通孔15a)が描く円弧軌跡の接線方向の向きに合わせて傾けると、頭部21aとの間で、同取付ボルト21を自立保持させるのに必要な最小の保持力をもたらす摩擦抵抗を生じさせる設定(小摩擦抵抗)が施されていて、小操作力で貫通に適したボルト姿勢に変更できる構造にしてある。これは、傾いた取付ボルト21をナット部材22との締結に適した向き(垂直な向き)に復帰しやすくする役割りもなしている。
【0028】
また取付ボルト21の頭部21aは、図3に示されるようにレール方向を長手とした長方形状に形成してある。具体的には取付ボルト21の頭部21aは、車幅方向の寸法aを通路断面29aの下部面25の幅寸法bより長くした短手部31a、車両前後方向の寸法dを短手部31aより長くした長手部31bをもつ長方形形状にしてある。むろん、頭部21aは通路断面29a内を摺動できるものである。このレール長手方向に延びる長方形の頭部21aにて、取付ボルト21が不用意にレール長手方向へ傾くのを防ぐ構造にしている。つまり、脚部先端の接線方向2に取付ボルト21の向きを合わせる際、取付ボルト21が不用意に車両前後に変位(ぶれ)しないようにしている。
【0029】
こうした工夫(台形形状のシートレール、長方形の頭部)により、図6(a),(b)に示されるように仮固定したX点を支点にシート6の他側部を下ろす作業を行う際、取付ボルト21を、脚部先端の貫通部分が描く回動軌跡の接線方向と向き合うよう車幅方向へ、若干、傾斜させる。すると、頭部21aは角部29bの内面やその周辺の側部面27と摺接し、傾かせる操作を終えた時点から取付ボルト21全体が、先の角部29bおよびその周辺と頭部21aとの摩擦抵抗によって、貫通部分(貫通孔15a)を迎える姿勢に保持される。
【0030】
すると、床側シートレール10から突き出た取付ボルト21の軸部21aは、先のシート2を下ろす作業にしたがい、脚部先端の設置壁部15の貫通孔15a(貫通部分)を自然に貫通していく。このとき取付ボルト21は、同ボルト21の傾きによって生じる摩擦抵抗により軽く保持されているだけなので、図6(c)に示されるように移動する貫通孔15aの縁部により軸部21bが押されると、取付ボルト21全体は、設置壁部15が床側シートレール10の上面に至るまでの間に、傾斜した姿勢から次第に通常のナット止めに適した垂直の姿勢に変わる。その後、貫通した取付ボルト21の軸部21bにナット部材22を組付けて設置壁部15を固定し、固定ボルト18にナット部材(図示しない)に組付けて取付板部12を固定すると(いずれも本固定)、図7に示されるようにシート6は壁側シートレール8、床側シートレール10に組付けられる(車室内の据付け終了)。
【0031】
このように脚部先端は、熟練作業を要せずに、脚部先端に、床側シートレール10から突き出た取付ボルト21を貫通(差込み)させることができる。しかも、取付ボルト21は、貫通孔15aを貫通するにしたがい、摩擦抵抗の減少する方向、すなわち角部29bから離れ、自然と傾斜した姿勢からナット止めに適した垂直の姿勢に変わるから、図2に示されるナット部材22による固定作業は、今までと同じで、取付ボルト21の固定作業は変わらない。
【0032】
したがって、簡単な構造で、シート6の組付けに関わる作業に影響を与えず、容易に円弧を描いて下がるシート6の脚部先端を、床側シートレール10から突き出た取付ボルト21に組付けることができ、シート6の組付性の向上が図れる。しかも、取付ボルト21の戻り(垂直方向への変位)は、摩擦抵抗が小さくなる方向への動きであるから、シート6に無用な負担を与えずにすむ。特に貫通部分(貫通孔15a)は、取付ボルト21を傾斜させる分、開口面積が抑えられるから、設置壁部15の剛性強度の低下が抑えられる利点もある。
【0033】
そのうえ、床側シートレール10は、脚部先端の接線方向の向きに合うよう傾斜させたときの取付ボルト21保持に適した台形形状にしてあるので、要求される姿勢、すなわち貫通に適した取付ボルト21の姿勢が確保されやすい。
加えて床側シートレール10は、外形形状も通路断面29aにならう台形形状にした部材を用いたことにより、同台形形状から図2に示されるように床側シートレール10と骨格部材19とを溶接するときに生じた溶接ビードαはレール幅内に収められる構造となるから、床側シートレール10を、当該床側シートレール10周りの部材(例えば床板4やフロアトリム4aなど)に影響を与えずに、骨格部材19に溶接することができる。
【0034】
そのうえ、取付ボルト21の頭部21aは、レール長手方向を長くした長方形形状にしたことにより、取付ボルト21を車幅方向に傾斜させる際、前後方向にぶれずに安定して所定の傾斜姿勢にすることができ、一層、脚部先端を迎えやすくなる利点もある。
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。
【符号の説明】
【0035】
2 車室
6 シート
8 壁側シートレール
10 床側シートレール
10a 溝部
12 取付板部(取付部)
13 脚部
14 設置壁部(設置壁)
19 骨格部材
21 取付ボルト
21a 頭部
21b 軸部
25 下部面
26 上部面
27 側部面
29a 通路断面
29b 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートは、一側部に取付部を有し、他側部に下側へ突出し、先端部に設置壁をもつ脚部を有し、
車室は、側部壁面に車両前後方向に延びる壁側シートレールを有し、床面に車両前後方向の延びる床側シートレールを有し、かつ床側シートレールには、頭部を前後方向に摺動自在に収め先端部を上方に突出させた取付ボルトが収められ、
前記シートは、前記取付部を前記壁側シートレールに仮固定して、前記脚部を床側シートレールの直上に配置し、仮固定した点を支点に前記シートの他側部を下ろして、前記脚部の設置壁に前記床側シートレールから突き出た前記取付ボルトを貫通させて取り付けを行うシート取付構造において、
前記床側シートレールは、前記取付ボルトの頭部の外形寸法よりも小さい幅寸法を有した下部面と、取付ボルトの頭部の外形寸法よりも大きい幅寸法を有し、かつ前記取付ボルトの先端側が突き出る溝部を有した上部面と、前記下部面と前記上部面とをつなぐ傾斜した側部面とに囲まれる台形形状の通路断面をもつレール部材から構成され、
突き出る前記取付ボルトの姿勢を車幅方向に傾斜変位可能とするとともに、傾斜した取付ボルトを前記通路断面の角部と取付ボルトの頭部との間に生じる摩擦抵抗により保持可能とした
ことを特徴とするシート取付構造。
【請求項2】
前記取付ボルトは、前記仮固定した点を支点として円弧を描いて下りる前記脚部の接線方向の向きに合わせて傾斜され、
前記床側シートレールの通路断面は、前記傾斜した取付ボルトの保持が行なえる台形形状にしてあることを特徴とする請求項1に記載のシート取付構造。
【請求項3】
前記床側シートレールは、車体の骨格部材に溶接により取着され、
前記床側シートレールの外形形状は、前記通路断面とならう台形形状にしてあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート取付構造。
【請求項4】
前記取付ボルトの頭部は、車幅方向の寸法が前記通路断面の下部面より長い短手部、車両前後方向の寸法が前記短手部より長い長手部を備えた長方形形状の頭部で形成してあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載のシート取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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