説明

シート搬送機構及びシート搬送機構が組み込まれた画像形成装置

【課題】シートの分離に係る不良率を低減させるシート搬送機構並びにこのシート搬送機構が組み込まれた画像形成装置を提供する。
【解決手段】シートSを複数積層してなるシート束Tを収容するシート収容部と、前記シート束から前記シートを取り出すとともに搬送する搬送要素630と、前記シートSの搬送方向に沿う前記シート束Tの側面SSに向けて、気体が放出される送気口を備える送気機構640と、を備え、前記送気口は、前記搬送方向において上流側に配設される上流送気口643と、前記搬送方向において下流側に配設される下流送気口644と、前記上流送気口643と前記下流送気口644との間に配設される主送気口645とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを収容するとともに搬送するシート搬送機構及びシート搬送機構が組み込まれた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンタ、ファクシミリ或いはこれらの機能を備える複合機等に代表される画像形成装置は、一般的に、上質紙やコピー用紙等のシートが用いられる。このような一般的に使用されるシートの印刷処理面には、通常、処理面の平滑度を向上させる処理は行なわれていない。したがって、一般的に、シートの取り出し並びに搬送に不都合を与える程のシート間の高い密着力は生じていない。
【0003】
近年、画像形成装置のカラー化技術の発展に伴い、高い白色度並びに光沢を備える塗工紙が用いられる機会が増えてきている。塗工紙の両面若しくは片面には、一般的に、白色度及び光沢を向上させるための塗料が塗布されている。この塗料の塗布は、白色度及び光沢だけでなく、シートの印刷処理面の平滑度も増大させる。シートの印刷処理面の平滑度の向上は、積層されたシート間の密着力を増大させることとなる。このため、積層されたシートを収容する収容部からシートを搬送しようとするとき、シート間の高い密着力に起因して、複数のシートが取り出されるとともに搬送される不都合を生ずることとなる。
【0004】
塗工紙に加えて、フィルムシートやトレーシングペーパなどの多種類のシートが画像形成装置に用いられる機会も増えてきている。フィルムシートやトレーシングペーパも塗工紙と同様に非常に平滑な処理面を有する。したがって、フィルムシートやトレーシングペーパも塗工紙と同様に、重なり合った複数のシートが搬送されるという不都合を招来することとなる。
【0005】
積層された複数のシートを含むシート束の外周面は、外気に直接的に接触する。このため、シート束の外周面は、シート束の内部(外気に直接的に接触しない部分)と比べて、外気から水分を吸収する。このため、シート束の上面及びシート束の周面は、他の部分と比べて膨潤する。この結果、シート間に生ずる非常に薄い空間は負圧となり、隣接するシート同士の密着が生み出されることとなる。このことは、重なり合った複数のシートが搬送されるという不都合を更に深刻化させる。
【0006】
特許文献1は、シート束の側方から気体を吹き込む送気機構を備える給紙装置を開示する。この開示技術は、シート束の上流縁及び下流縁を押さえつつ、上流縁と下流縁との間でシート束側面に空気を吹き込むことにより、給紙装置から送り出されようとするシートの中央部分を浮き上がらせ、シート間の密着を解除することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−23747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、積層されたシート間の密着は、シートの処理面の平滑度やシート束の外周面の膨潤などの因子により生ずるため、これら因子のばらつきによりシート間の密着力は変動する。このため、特許文献1に開示される給紙装置の送気口からの空気が吹き当てられる部分のシートの縁部間に密着力が極端に高い場合、シートの分離を好適に行なうことができないという不都合を生ずる。風量を増大させることも可能であるが、風量の増大は、シートの搬送等の他の工程に不都合を与える可能性がある。
【0009】
上述のような課題は、画像形成装置のみならず、シート材料を取り扱う他の工程にも共通するものである。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、シートの分離に係る不良率を低減させるシート搬送機構並びにこのシート搬送機構が組み込まれた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係るシート搬送機構は、シートを複数積層してなるシート束を収容するシート収容部と、前記シート束から前記シートを取り出すとともに搬送する搬送要素と、前記シートの搬送方向に沿う前記シート束の側面に向けて、気体が放出される送気口を備える送気機構と、を備え、前記送気口は、前記搬送方向において上流側に配設される上流送気口と、前記搬送方向において下流側に配設される下流送気口と、前記上流送気口と前記下流送気口との間に配設される主送気口とを含むことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
上記構成によれば、搬送要素は、シート収容部に収容されたシート束からシートを取り出すとともに搬送する。シート束は、複数のシートを積層してなり、シートの搬送方向に沿う側面を含む。送気機構の送気口から、シート束の側面に対して、気体が放出される。上記構成によれば、気体が放出される送気口は、上流側に配設される上流送気口と、下流側に配設される下流送気口と、これらの間に配設される主送気口とを含む。したがって、主送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、上流送気口からの気体と下流送気口からの気体とがシートの分離を促進させる役割を担うことができる。上流送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、主送気口からの気体がシートの分離を促し、その後、下流送気口からの気体が更にシートの分離を促すこととなる。下流送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、主送気口からの気体がシートの分離を促し、その後、上流送気口からの気体が更にシートの分離を促すこととなる。このように、複数設けられた送気口からの気体のいずれかがシートの分離を生じさせると、最初にシートの分離を生じさせた気体が送り出された送気口に隣接する送気口からの気体が、シートの分離を促進させる役割を担うこととなる。このため、シート間の密着力が局所的に高い場合であっても、好適にシートの分離を生じさせることができ、シートの分離に係る不良率を低減させることが可能となる。
【0013】
上記構成において、前記上流送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義される第1位置から前記上流端縁までの区間の中間位置として定義される第2位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることが好ましい(請求項2)。
【0014】
上記構成によれば、上流送気口からの気体が向けられる第2位置から第1位置までの距離と、第2位置から上流端縁までの距離とは等しいため、上流端縁に向けて流れる気体の流量を不必要に増大させることがなく、上流送気口からの気体によるシート間の分離作用を好適に発揮させることが可能となる。
【0015】
上記構成において、前記下流送気口は、前記上流送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義される第1位置から前記下流端縁までの区間の中間位置として定義される第3位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることが好ましい(請求項3)。
【0016】
上記構成によれば、下流送気口からの気体が向けられる第3位置から第1位置までの距離と、第3位置から下流端縁までの距離とは等しいため、下流端縁に向けて流れる気体の流量を不必要に増大させることがなく、下流送気口からの気体によるシート間の分離作用を好適に発揮させることが可能となる。
【0017】
上記構成において、前記主送気口は、前記上流送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義されるとして定義される第1位置に向けて前記気体が放出されるように配設され、前記上流送気口は、前記第1位置から前記上流端縁までの区間の中間位置として定義される第2位置に向けて前記気体が放出されるように配設され、前記下流送気口は、前記第1位置から前記下流端縁までの区間の中間位置として定義される第3位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることが好ましい(請求項4)。
【0018】
上記構成によれば、上流端縁から上流送気口からの空気が向かう第2位置までの距離、第2位置から主送気口からの空気が向かう第1位置までの距離、第1位置から下流送気口からの空気が向かう第3位置までの距離が等しくなるため、シート間の分離作用が上流側と下流側のいずれか一方において極端に弱まることがなく、好適に隣接するシートを分離することが可能となる。
【0019】
上記構成において、前記送気口が、前記上流端縁と前記第2位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第1副送気口と、前記第2位置と前記第1位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第2副送気口と、前記第1位置と前記第3位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第3副送気口と、前記第3位置と前記下流端縁との間の領域に向けて前記気体が放出される第4副送気口と、を更に含むことが好ましい(請求項5)。
【0020】
上記構成によれば、上流送気口、主送気口及び下流送気口からの気体が向けられる位置の間に存する領域並びに上流端縁と第2位置との間の領域及び下流端縁と第3位置との間の領域それぞれに向けて気体が放出されるので、一層好適にシート間の分離を図ることができる。特に大きなシートに対して、好適にシート間の分離を図ることができる。
【0021】
上記構成において、前記主送気口、前記上流送気口、前記下流送気口、前記第1副送気口、前記第2副送気口、前記第3副送気口及び前記第4副送気口が等間隔に配設されることが好ましい(請求項6)。
【0022】
上記構成によれば、シート間の分離作用の均等化を図ることができる。
【0023】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、シートを収容するとともに搬送するシート搬送機構と、該シート搬送機構から送り出された前記シートに画像を形成する画像形成部と、を備え、前記シート搬送機構は、前記シートを複数積層してなるシート束を収容するシート収容部と、前記シート束から前記シートを取り出すとともに搬送する搬送要素と、前記シートの搬送方向に沿う前記シート束の側面に向けて、気体を放出する送気口を備える送気機構と、を備え、前記送気口は、前記搬送方向において上流側に配設される上流送気口と、前記搬送方向において下流側に配設される下流送気口と、前記上流送気口と前記下流送気口との間に配設される主送気口とを含むことを特徴とする(請求項7)。
【0024】
上記構成によれば、搬送要素は、シート収容部に収容されたシート束からシートを取り出すとともに搬送する。シート束は、複数のシートを積層してなり、シートの搬送方向に沿う側面を含む。送気機構の送気口からシート束の側面に対して、気体が放出される。上記構成によれば、気体が放出される送気口は、上流側に配設される上流送気口と、下流側に配設される下流送気口と、これらの間に配設される主送気口とを含む。したがって、主送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、上流送気口からの気体と下流送気口からの気体とがシートの分離を促進させる役割を担うことができる。上流送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、主送気口からの気体がシートの分離を促し、その後、下流送気口からの気体が更にシートの分離を促すこととなる。下流送気口からの気体が最初にシートの分離を生じさせたときは、主送気口からの気体がシートの分離を促し、その後、上流送気口からの気体が更にシートの分離を促すこととなる。このように、複数設けられた送気口からの気体のいずれかがシートの分離を生じさせると、最初にシートの分離を生じさせた気体が送り出された送気口に隣接する送気口からの気体が、シートの分離を促進させる役割を担うこととなる。このため、シート間の密着力が局所的に高い場合であっても、好適にシートの分離を生じさせることができ、シートの分離に係る不良率を低減させることが可能となる。この結果、シートはシート収容部から一枚ずつ好適に取り出され、画像形成部による画像形成処理を施与されることとなる。
【発明の効果】
【0025】
上述の如く、本発明に係るシート搬送機構及び画像形成装置は、シートの分離に係る不良率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート搬送機構の概略図である。
【図2】送気時のシート束の挙動の一例を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る他のシート搬送機構の概略図である。
【図4】図1及び図3に示されるシート搬送機構の原理を適用したストッカが組み込まれたデジタル複写機の内部構造を示す図である。
【図5】図1及び図3に示されるシート搬送機構の送気機構を例示する断面図である。
【図6】図1及び図3に示されるシート搬送機構の送気機構を例示する断面図である。
【図7】図4に示されるデジタル複写機のトレイの昇降機構を概略的に示す図である。
【図8】図4に示されるデジタル複写機の給送装置を概略的に示す図である。
【図9】図1に示されるデジタル複写機のストッカを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。また、以下の説明において、「上流側」、「下流側」或いはこれらに類する文言は、特段の記載がない限り、シートの搬送方向における「上流側」又は「下流側」を意味する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る原理を説明する概念図である。図1(a)は、複数のシートが積層してなるシート束の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示されるシート束中のシート間の分離を促すとともにシート束からシートを1枚ずつ分離して搬送するシート搬送機構の概念図である。尚、図1に示されるシートは、主に、塗工紙、トレーシングペーパ、OHPフィルムシートとすることができるが、本発明はこれに限られるものではなく、積層して所定時間保管された状態から搬送される任意のシート状物が搬送対象とされてもよい。
【0029】
図1に示されるシート束Tを構成するシートSそれぞれは、矩形状の処理面PSと、処理面PSを取り囲む縁部とを含む。縁部は、シートSの搬送方向(図1(a)中、矢印で示される)に対して先頭側に位置する下流縁DEと、下流縁DEに対向する位置に存するとともにシートSの搬送方向に対して後側に位置する上流縁UEと、上流縁UEの両端部それぞれと下流縁DEの両端部それぞれとの間で延びるとともにシートSの搬送方向に沿って延びる一対の側縁SEとを含む。以下の説明において、側縁SEが積み重ねられてなるシート束Tの面(処理面PSに対して直角方向に延びる面)を積層面SSと称する。また、下流縁DEが積み重ねられてなるシート束Tの面(処理面PSに対して直角方向に延びる面)を下流積層面DSと称する。上流縁UEが積み重ねられてなるシート束Tの面(処理面PSに対して直角方向に延びる面)を上流積層面USと称する。積層面SSは、シート束Tの最下位置及び最上位置に存する一対のシートSの側縁SEと、上流縁UEの端部を積層してなる上流端縁UTと、下流縁DEの端部を積層してなる下流端縁DTとで取り囲まれる。上流積層面USは、シート束Tの最下位置及び最上位置に存する一対のシートSの上流縁UEと一対の上流端縁UTとで取り囲まれる。下流積層面DSは、シート束Tの最下位置及び最上位置に存する一対のシートSの下流縁DEと一対の下流端縁DTとで取り囲まれる。以下の説明において、処理面PSには、印刷処理(画像形成処理)が施されるが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、穿孔処理や折り曲げ処理など所望の処理が施されてもよい。
【0030】
シート搬送機構600は、シート束Tを収容するシート収容部610を含む。シート収容部610は、例えば、上部が開口した略直方体形状の箱体であり、底部611及び底部611の周縁から上方に向けて延出する周壁部612を含む。シート収容部610内には、例えば、薄板状の支持板620が配設される。支持板620は、シート束Tの下面と当接し、シート収容部610内で、シート束Tを支持する。シート搬送機構600は更に、シート束TからシートSを1枚ずつ取り出すとともに搬送する搬送要素630を含む。図1には、搬送要素630として、シート束Tの上面(処理面PS)に回転可能に当接するピックアップローラが示されている。図1に示されるピックアップローラ630は、シートSの下流縁DE近傍でシートSに当接し、シートSの幅方向(搬送方向と直交する方向)に延びている。尚、本発明において、搬送要素630は、図示されるピックアップローラに限られるものではなく、シート束Tからシートを取り出すとともに搬送可能な他の構造とすることもできる。支持板620とシート収容部610の底部611との間には、例えば、バネ体(図示せず)が配設され、支持板620が上方に向けて付勢されることにより、シート束Tの最上位置に存するシートSがピックアップローラ630に押し付けられる。この結果、ピックアップローラ630が回転すると、シート束Tの最上位置に存するシートSがシート束Tから取り出されるとともに搬送されることとなる。
【0031】
シート搬送機構600は更に、送気機構640を含む。送気機構640は、モータ(図示せず)等の駆動源と接続されたファンやモータ(図示せず)等の駆動源を内包するブロアなどの送気源641と、送気源641から送り出される気体を案内する管路642とを含む。管路642の先端部は、積層面SSに向けて開口し、送気源641から送り出される気体を積層面SSに向けて放出する送気口となる。図1に示されるシート搬送機構600は、送気口として、上流側に配設される上流送気口643、下流側に配設される下流送気口644及び上流送気口643と下流送気口644との間に配設される主送気口645を含む。
【0032】
主送気口645は、積層面SSの中央領域(上流端縁UTから下流端縁DTまでの区間の中間位置として定義される第1位置)に向けて気体が放出されるように配設されることが好ましい。尚、以下の説明において、上流端縁UTと下流端縁DTとで定義される区間の中間位置Cと上流端縁UTとの間に存する積層面SSの領域を上流領域URと称する。また、上流端縁UTと下流端縁DTとで定義される区間の中間位置Cと下流端縁DTとの間に存する積層面SSの領域を下流領域DRと称する。上流送気口643は、上流領域URの中央領域(第1位置C1から上流端縁UTまでの区間の中間位置として定義される第2位置C2)に向けて気体が放出されるように配設されることが好ましい。下流送気口644は、下流領域DRの中央領域(第1位置C1から下流端縁DTまでの区間の中間位置として定義される第3位置C3)に向けて気体が放出されるように配設されることが好ましい。図1に示される送気口643乃至645の配列にしたがうとき、上流端縁UTから上流送気口643からの気体が向かう第2位置C2までの距離、第2位置C2から主送気口645からの気体が向かう第1位置C1までの距離、第1位置C1から下流送気口644からの気体が向かう第3位置C3までの距離並びに第3位置C3から下流端縁DTまでの距離は互いに等しくなる。例えば、シートSが縦サイズのA4サイズである場合、これらの距離は、約74mm(横サイズの場合、約53mm)となる。
【0033】
図2は、図1に示される上流送気口643又は下流送気口644が上流端縁UT又は下流端縁DTに極端に近い位置に配設されたときのシート束Tの挙動を示す斜視図である。図2と併せて図1を参照しつつ、シート束Tの挙動について説明する。
【0034】
上流送気口643又は下流送気口644は、上流端縁UT又は下流端縁DTから、50mm以上離間して配設されることが好ましい。例えば、上流送気口643又は下流送気口644と上流端縁UT又は下流端縁DTとの距離が、20mm未満である場合、上流送気口643又は下流送気口644から放出された空気は、流れやすい方向に多く流れるので、図2に示される如く、上流端縁UT又は下流端縁DTにおいて、一旦、シートS間の分離がなされると、空気が分離したシート間の内側に向けて流れ込まず、外に逃げてしまい、シートSの他の縁領域への分離効果が著しく低減することとなる。
【0035】
送気源641が送り出す気体は、本実施形態では、例えば、シートSが吸った水成分を蒸発可能な程度に暖気された空気であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、十分に乾燥処理を施された空気や窒素等の特定の成分からなる気体などが所望に応じて使用可能である。或いは、送気源641が送り出す気体は、所定の風速を以て送り込まれる空気とすることもできる。任意の気体をシートSに向けて送り込むことにより、シートS同士の密着を誘発する水分を好適に蒸発させることができる。
【0036】
図3は、図1に示されるシートSよりも大きなサイズのシートS(例えば、A3サイズのシートS)を搬送するシート搬送機構600を示す概略図である。図1に示されるシート搬送機構600と比較して、図3に示されるシート搬送機構600は、多数の送気口を備える。他の構造は、図1に示されるものと同様であり、以下の説明では、相違点のみを説明する。
【0037】
図3に示されるシート搬送機構600は、上流送気口643からの空気が向かう第2位置C2と上流端縁UTとの間の積層面SSの領域に空気を放出する第1副送気口646、主送気口645からの空気が向かう第1位置C1と第2位置C2との間の積層面SSの領域に空気を放出する第2副送気口647、第1位置C1と下流送気口644からの空気が向かう第3位置C3との間の積層面SSの領域に空気を放出する第3副送気口648及び第3位置C3と下流端縁DTとの間の積層面SSの領域に空気を放出する第4副送気口649を含む。これら送気口643乃至649は互いに等間隔に配設されることが好ましい。例えば、シートSがA3サイズであるとき、これらの間隔は、約74mmとなる。
【0038】
第1乃至第4送気口646,647,648,649はそれぞれ送気源641から延設するとともに送気源641から送られる空気を案内する管路642の先端開口部として形成されることができる。
【0039】
図4は、図1及び図3に関連して説明されたシート搬送機構600の原理を適用したストッカが組み込まれた画像形成装置の内部構造を示す。図4と併せて、図1及び図3を参照しつつ、画像形成装置について説明する。尚、図4に示される画像形成装置は、デジタル複写機であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリンタ、ファクシミリ、画像形成機能を含む複数の機能を有する複合機等或いはシートSの処理面PSに任意の処理を施すための装置とすることができる。
【0040】
デジタル複写機1は、略直方体に形成された筐体2と、筐体2の内部空間下部に配設されるとともにシートSが蓄えられる貯留部3と、貯留部3からシートSを取り出すとともに搬送する搬送部4と、搬送途中のシートSの面にトナー画像を形成する画像形成部5と、シート上に形成されたトナー画像をシートSの処理面PS上に定着させる定着部6と、トナー画像が定着されたシートSを筐体2外に排出する排出部7とを備える。筐体2の上部には、原稿の画像を読み取るための原稿読取部8が配設される。原稿読取部8は、原稿の画像を読み取り、電子データ化する。
【0041】
貯留部3は、少量のシートSを含むシート束Tを収容する第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32を含む。第2カートリッジ32は、第1カートリッジ31の上方に配設される。貯留部3は、第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32が収容可能な枚数以上のシートSを含むシート束Tを収容可能に形成されるストッカ33を更に含む。ストッカ33は、第2カートリッジ32の上方に配設される。尚、ストッカ33は、図1及び図3に関連して説明されたシート搬送機構600のシート収容部610に相当する。
【0042】
ストッカ33は、略矩形板状の底部331と、底部331の周縁から上方に向かって延出する周壁部332とを含む。尚、図1及び図3に関連して説明されたシート搬送機構600が備えるシート収容部610の底部611及び周壁部612それぞれは、ストッカ33の底部331及び周壁部332に相当する。周壁部332の上縁は、ストッカ33の開口部を形成する。底部331と周壁部332とで定められるストッカ33の内部空間に収容されたシートSは、ストッカ33の上部に形成される開口部を通じて、搬送部4により取り出され、画像形成部5に向けて搬送される。第1カートリッジ31、第2カートリッジ32及びストッカ33は、筐体2内部から引き出し可能であることが好ましい。
【0043】
ストッカ33は、ストッカ33の内部空間を上下方向に横切って配設される仕切板333を更に含む。仕切板333は、底部331から上方に延出し、図4中において、ストッカ33の内部空間を左右に互いに隣接する小空間に仕切る。左方に形成される小空間を第1収容部と便宜的に称し、右方に形成される小空間を第2収容部と便宜的に称する。第1収容部には、第1トレイ334が配設され、第2収容部には第2トレイ335が配設される。図1に示されるシート搬送機構600の支持板620は、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335に相当する。
【0044】
第1収容部に配設されるシート束Tを第1のシート束T1と便宜的に称し、第2収容部に配設されるシート束Tを第2シート束T2と便宜的に称する。第1トレイ334は、第1のシート束T1を支持する支持面を備える。第2トレイ335は、第2のシート束T2を支持する支持面を備える。仕切板333は、第1のシート束T1と第2のシート束T2との間で立設され、第1のシート束T1及び/又は第2のシート束T2が崩れそうになったときにおいて、第1のシート束T1及び/又は第2のシート束T2を側方から支持することができる。仕切板333は、ストッカ33の底部332に対して着脱自在である。
【0045】
第1のシート束T1が収容される第1収容部を形成する背面側の周壁部332に、図1及び図3に関連して説明された主送気口645、上流送気口643及び下流送気口644が形成されている。第2のシート束T2が収容される第2収容部を形成する背面側の周壁部332にも、第1収容部と同様に、主送気口645、上流送気口643及び下流送気口644が形成されている(尚、図4において、第2収容部の送気口643,644,645は、第2のシート束T2によって、隠されている)。主送気口645、上流送気口643及び下流送気口644は、第1収容部及び第2収容部を形成する背面側の周壁部332の上縁近傍において、水平方向に整列している。
【0046】
図5は、図4に示される第1収容部又は第2収容部の背面側の周壁部332の外面に取り付けられる送気機構640の概略断面図である。図5と併せて図1、図3及び図4を参照しつつ、送気機構640について説明する。
【0047】
図1及び図3において、送気機構640は、非常に概略的に示されたが、送気機構640は、例えば、図5に示される構造を備えることができる。図5に示される送気機構640は、例えば、第1収容部又は第2収容部の背面側の周壁部332の外面に取り付けられるブラケット(図示せず)により支持されることができる。
【0048】
図5に示される送気機構640は、図1及び図3に関連して説明されたように送気源641と管路642とを含む。管路642の基端部は、送気源641の外面を形成する筐体141に一体的に接続される。管路642は、筐体141から一方向に延設する主管241と、主管241から分岐する3つの枝管242とを含む。3つの枝管242の先端部は開口し、例えば、主管241の管路642の基端部に近い枝管242の先端開口部を上流送気口643とし、中央の枝管242の先端開口部を主送気口645とし、管路642の先端部に近い枝管242の先端開口部を下流送気口644とすることができる。
【0049】
筐体141内には、吸引ファン142及びヒータ143が配設される。吸引ファン142は、筐体141外に配設されるモータ144の回転シャフトにより、筐体141内で回転自在に支持される。モータ144が取り付けられる面と反対側の筐体141の面には、開口部145が形成される。モータ144が作動すると、吸引ファン142が回転し、開口部145を介して、送気源641の周囲の空気が筐体141内に引き込まれる。
【0050】
ヒータ143は、管路642と筐体141との接続部と吸引ファン142との間に配設される。吸引ファン142により筐体141内に引き込まれた空気は、ヒータ143及び管路を通過し、送気口643,644,645からストッカ33内のシート束Tの積層面SSに向けて放出される。ヒータ143は、ヒータ143を通過する空気を暖める。したがって、送気口643,644,645から放出された空気は、ストッカ33内のシート束Tが含む水成分の除去を促し、この結果、シート束Tのシート間の分離が促進されることとなる。
【0051】
図6は、送気機構640の他の構造を例示する。図5に示される送気源641は、1つの主管241から3つの枝管242を分岐させ、送気口643,644,645を形成したが、図6に示される送気機構640のように、送気源641の筐体141から延設するエルボ管243を用いて送気口643,644,645を形成してもよい。この場合には、上流送気口643、主送気口645及び下流送気口644は、それぞれ個別の送気機構640を用いて形成されることとなる。
【0052】
尚、図5及び図6に関連して説明された送気機構640は、単に説明のために図示されたものであり、本発明を何ら限定するものではなく、シート束Tの積層面SSに向けて空気を放出可能な任意の機構を送気機構640として用いることができる。
【0053】
図7は、第1トレイ334及び第2トレイ335を上下動させるための昇降機構の一例を示す。図7と併せて、図4を参照しつつ、昇降機構について説明する。尚、図7に示される昇降機構は、単に、一例に過ぎず、第1トレイ334及び第2トレイ335を上下動させることが可能な任意の機構を昇降機構として用いてもよい。
【0054】
昇降機構34は、第1トレイ334及び第2トレイ335に一端部が接続される複数本のワイヤ341と、第1トレイ334に接続されるワイヤ341の他端部が巻回される第1ドラム342と、第2トレイ335に接続されるワイヤ341の他端部が巻回される第2ドラム343と、第1トレイ334と第1ドラム342とを結ぶワイヤ341の経路及び第2トレイ335と第2ドラム343とを結ぶワイヤ341の経路途中に配設される複数のプーリ345とを含む。
【0055】
第1ドラム342は、第1の駆動源346に接続される。第2ドラム343は、第2の駆動源347に接続される。第1の駆動源346及び第2の駆動源347は、制御回路等の制御部348に電気的に接続される。第1の駆動源346及び第2の駆動源347は、制御部348の制御下で、第1ドラム342及び第2ドラム343をそれぞれ駆動する。尚、制御部348は、デジタル複写機1全体の制御を司ることができる。尚、本実施形態において、第1の駆動源346及び第2の駆動源347として、パルスモータやエンコーダ付のモータ等を用いることができるが、第1ドラム342及び第2ドラム343を回転駆動することができる他の装置を用いることも可能である。更に、本実施形態において、第1ドラム342及び第2ドラム343を回転させることにより、ワイヤ341を第1ドラム342及び第2ドラム343に巻きつけて第1トレイ334及び第2トレイ335を上昇させる構造が採用されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、回転ドラム342,343並びにこれらに接続する駆動源346,347に代えて、ピストンシリンダを用いることも可能である。ピストンシリンダのロッド先端にワイヤ341の端部を接続し、ロッドをシリンダ本体内に出没させることにより、本実施形態と同様に、第1トレイ334及び第2トレイ335を移動させることができる。
【0056】
仕切板333が、ストッカ33の底部331に取り付けられている間、制御部348は、第1の駆動源346と第2の駆動源347とを独立に制御することができ、例えば、第1の駆動源346及び第2の駆動源347のうち一方のみを動作させることにより、第1トレイ334及び第2トレイ335のうち一方のみを上昇させ、搬送部4へ向けて移動させることができる。したがって、仕切板333が底部331に取り付けられているか否かを検出することができるセンサ装置が用いられてもよい。例えば、このようなセンサ装置として、ストッカ33の底部331に仕切板333が取り付けられたときに仕切板333によって遮られる光路を形成する光センサ等を用いることができる。
【0057】
第1ドラム342及び/又は第2ドラム343が、図7中、矢印で示される方向に回転すると、ワイヤ341が第1ドラム342及び/又は第2ドラム343に巻き付けられ、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335が上昇する。第1トレイ334及び/又は第2トレイ335上にシート束Tが配設されると、シート束Tの自重により、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335は下降することができる。尚、昇降機構34は、必要に応じて、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335の高さ位置を制御するためのセンサを含むことができる。
【0058】
搬送部4は、ストッカ33の上部に形成される開口部近傍に配設される給送装置41を含む。昇降機構34は、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335を上昇させ、第1トレイ334及び/又は第2トレイ335上のシート束Tを給送装置41まで運ぶ。
【0059】
図8は、給送装置41の概略図である。図8と併せて、図4を参照しつつ、給送装置41について説明する。尚、図8は、ストッカ33の第2収容部周囲の構造を併せて示している。図8に示される給送装置41は、図1及び図3に関連して説明された搬送要素630に相当する。
【0060】
上述の如く、ストッカ33の第2収容部内には、第2トレイ335が配設され、第2トレイ335の上面には、第2のシート束T2が載置される。給送装置41は、ベルト装置412と第2ローラ装置414とを備える。ベルト装置412は、第2のシート束T2の下流積層面DSの上方に配設される。図4に示されるように、給送装置41は、更に、ストッカ33の第1収容部内の第1シート束T1を取り出すための第1ローラ装置413を含む。第1ローラ装置413は、第1シート束の右上面の上方に配設される。第1ローラ装置413及び第2ローラ装置414は互いに略同様の構造をなすことができる。図8には、第2ローラ装置414を駆動するためのモータ415が示されている。
【0061】
ベルト装置412は、ストッカ33の周壁部332よりも下流側に配設されるとともにベルト装置412の一端部を形成する駆動ローラ416と、ベルト装置412の他端部を形成するとともに駆動ローラ416の駆動力により従動回転する従動ローラ417と、駆動ローラ416と従動ローラ417とに巻回されるベルト418と、駆動ローラ416と従動ローラ417との間に配設される吸引ダクト419とを含む。尚、図8には、駆動ローラ416を駆動するためのモータ421が示されている。吸引ダクト419は、ブロア等の真空源(図示せず)と、真空源に接続される断面矩形状の管路426とを含む。管路426の底壁には、複数の貫通穴427が形成される。貫通穴427並びにベルト418に形成された複数の孔部(図示せず)を通じて、吸引力が第2のシート束T2の最上位置に存するシートSに伝達される。
【0062】
第2ローラ装置414は、第2シート束T2の最上位置に存するシートS上で転動する送りローラ422と、送りローラ422を回転可能に支持する支持部423とを含む。送りローラ422は、送りローラ422の中央に位置する回転シャフト424周りに回転する。支持部423は、支持シャフト425により軸支され、支持シャフト425周りに回動可能である。第2ローラ装置414は更に、支持部423に取り付けられたフォトインタラプタセンサ426を備える。フォトインタラプタセンサ426は、支持部423の姿勢を検知する。図7に関連して説明された昇降機構34が第2トレイ335を上昇させると、第2トレイ335上の第2のシート束T2の上面が送りローラ422に当接し、支持部423が支持シャフト425周りに回転する。フォトインタラプタセンサ426は、支持部423が所定の姿勢(傾斜角度)となったことを検知すると、制御部348(図7参照)に検知信号を送信する。制御部348は、この検知信号に基づき、第2トレイ335の上昇動作を停止させる。モータ415と送りローラ422との間には、ギア機構(図示せず)が構築される。ギア機構は、支持部423の回動を許容しつつ、送りローラ422に駆動力を伝達する。
【0063】
フォトインタラプタセンサ426の検知信号に基づき、第2シート束T2を搬送部4へ搬送するための第2トレイ335の上昇が停止されると、図5及び図6に関連して説明された送気機構640が作動し、送気口643,644,645から第2のシート束T2の積層面SSに向けて、温風が放出される。これにより、第2のシート束T2を構成するシートS間に空気が導入されることとなり、シートS間の分離が促される。モータ415は、送りローラ422を回転させ、第2のシート束T2の最上位置に存するシートSを左方へ所定距離だけ移動させる。この結果、第2のシート束T2の最上位置に存するシートSの右縁は、ベルト装置412の吸引ダクト419の下方に位置することとなる。吸引ダクト419からの吸引力は、ベルト418を介して、左方に移動されたシートSの右縁に伝達される。これにより、左方に移動されたシートSの右縁は、ベルト418に吸着され、シートSがストッカ33から取り出されることとなる。その後、モータ421及び/又はモータ415は、ベルト418及び/又は送りローラ422を反時計回りに回転させ、ベルト418に吸着されたシートSを下流へ送り出す。
【0064】
第2収容部内の第2シート束T2を用いて、ストッカ33からのシートSの取り出しについて説明してきたが、上記されたシートSの取り出しの原理及びシートSを取り出すための構造は、第1収容部内の第1のシート束T1に対しても、適用することが可能である。
【0065】
図4を再度参照する。搬送部4は、貯留部3の右側で上下方向に延びる搬送路43を含む。ベルト装置412によりストッカ33から取り出されたシートSは、搬送路43に沿って下流へ搬送される。搬送部4は更に、第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32の右上部角隅部近傍に配設されるピックアップローラ44及びピックアップローラ44の近傍下流に配設される分離・給紙ローラ45を含む。ピックアップローラ44及び分離・給紙ローラ45は、第1カートリッジ31及び/又は第2カートリッジ32から1枚ずつシートSを取り出し、搬送路43へ搬送する。搬送部4は更に、搬送路43に沿って配設される複数の搬送ローラ46を含む。搬送ローラ46は、ストッカ33、第1カートリッジ31又は第2カートリッジ32から送り出されたシートSを、搬送路43に沿って、画像形成部5へ搬送する。
【0066】
画像形成部5は、筐体2に回転可能に支持される略円筒形状の感光体ドラム51と、感光体ドラム51の上方に配設される帯電器52とを含む。感光体ドラム51は、図4中、時計回りに回転する。帯電器52は、感光体ドラム51に電荷を付与し、感光体ドラム51周面を一様に帯電させる。画像形成部5は更に、露光装置53を備える。露光装置53は、原稿読取部8が原稿の画像を読み取ることにより得られた画像データに基づき、レーザ光を感光体ドラム51の帯電された周面に照射する。この結果、レーザ光は感光体ドラム51上の電荷を消失させるため、感光体ドラム51上には画像データに一致する静電潜像が形成されることとなる。画像形成部5は更に、現像装置54を備える。現像装置54は、トナーを収容するトナーコンテナ55を備え、トナーコンテナ55から静電潜像が形成された感光体ドラム51の周面にトナーを供給する。この結果、感光体ドラム51の周面に、静電潜像に一致するトナー像が形成されることになる。
【0067】
画像形成部5は更に、感光体ドラム51の下方に配設される転写ベルト56を含む。搬送路43を通じて、シートSは、感光体ドラム51と転写ベルト56との間に送り込まれる。感光体ドラム51と転写ベルト56との間をシートSが通過するとき、感光体ドラム51の周面に形成されたトナー像は、トナーの帯電と逆の極性の逆バイアスの印加によりシートSに転写されることとなる。
【0068】
画像形成部5は更に、シートSへトナー像を転写した後の感光体ドラム51の周面上に残留するトナーを除去するクリーニング装置57と、残留トナーの除去がなされた感光体ドラム51の周面から残留電荷を除去する除電装置58とを含む。
【0069】
画像形成部5にて、トナー像の転写がなされたシートSは、定着部6へ送られる。定着部6は、定着ローラ61と、定着ローラ61に圧接される加圧ローラ62とを含む。定着ローラ61の内部には熱源63が配設され、定着ローラ61と加圧ローラ62との間を通過するシートS上のトナーが溶融されるとともに、加圧ローラ62からの圧力によりシートS上にトナーが定着される。これにより、シートS上へのトナー像の定着がなされることとなる。
【0070】
排出機構7は、定着部6の下流に配設されるとともに筐体2の内壁面近傍に取り付けられる排出ローラ71と、排出ローラ71から筐体2外に排出されたシートSを受け止める排出トレイ72とを含む。
【0071】
図4に示されるデジタル複写機1は、ストッカ33と画像形成部5/定着部6との間に両面印刷用の搬送路47を備える。排出ローラ71は、スイッチバック方式で搬送路47へシートSを送り出すことも可能である。搬送路47は、搬送路43途中部に配設されたレジストローラ48の直前で合流する。搬送路47を通過したシートSは、レジストローラ48により画像形成部5へ送り出され、画像形成部5内でトナー像が定着されていない面にトナー像の転写がなされる。その後、定着ユニット6により新たに転写されたトナー像のシートSへの定着がなされる。最後に、シートSは排出ローラ71により排紙トレイ72上に排紙されることとなる。
【0072】
図9は、図3に示される送気口643乃至649の配置が適用されたストッカ33の断面図である。図9(a)に示されるストッカ33内には、仕切板33が配設され、図4に示されるストッカ33と同様に、仕切板333によりストッカ33の内部空間が第1収容部と第2の収容部とに分割されている。図9(b)に示されるストッカ33からは、図9(a)に示される仕切板333が除去されている。
【0073】
図4に関連して説明された如く、仕切板333がストッカ33内に装着されている間、第1トレイ334及び第2トレイ335のうち一方が上昇し、シートSを給送装置41に供給する。上述の如く、トレイ334,335の上昇により作り出されるフォトインタラプタセンサ426からの信号をトリガ信号として、図3に示される制御部348は送気源641のモータ144(図5又は図6参照)を作動させ、シート束Tの積層面SS(図1参照)に空気を放出させる。図9(a)に示されるストッカ33の第1収容部及び第2収容部それぞれには、3つの送気口が示されている。各収容部の上流側に位置する送気口は、上流送気口643となり、各収容部の下流側に位置する送気口は、下流送気口644となり、上流送気口643と下流送気口644との間に存する送気口は、主送気口645となる。
【0074】
仕切板333が除去されたとき、ストッカ33は、大きなサイズのシートSを収容可能となる。大きなサイズのシートSは、第1トレイ334及び第2トレイ335により支持される。図3に示される制御部348は、第1トレイ334及び第2トレイ335が、互いに略同じ高さ位置を保ちながら上昇するように、第1トレイ334及び第2トレイ335を制御する。
【0075】
図9(b)に示される如く、仕切板333を除去すると、更に、1つの送気口が現れる。上述の如く、フォトインタラプタセンサ426からの信号をトリガ信号として、図3に示される制御部348が送気源641のモータ144を作動させると、仕切板333の除去により現れた送気口は、主送気口645として機能することとなる。また、仕切板333が取り付けられていたときに、第1収容部の主送気口645として用いられた送気口は、上流送気口643として機能する。仕切板333が取り付けられていたときに、第2収容部の主送気口645として用いられた送気口は、下流送気口644として機能する。仕切板333が取り付けられていたときに、第1収容部の上流送気口643として用いられた送気口は、第1副送気口646として機能し、第1収容部の下流送気口644として用いられた送気口は、第2副送気口647として機能する。仕切板333が取り付けられていたときに、第3収容部の上流送気口643として用いられた送気口は、第3副送気口648として機能し、第2収容部の下流送気口644として用いられた送気口は、第2副送気口649として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機やシートの面に任意の処理を施す機能を備える各種装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・・デジタル複写機
600・・・シート搬送機構
630・・・搬送要素
640・・・送気機構
643・・・上流送気口
644・・・下流送気口
645・・・主送気口
646・・・第1副送気口
647・・・第2副送気口
648・・・第3副送気口
649・・・第4副送気口
C1・・・・第1位置
C2・・・・第2位置
C3・・・・第3位置
DT・・・・下流端縁
PS・・・・処理面
S・・・・・シート
SS・・・・積層面(シート束の側面)
T・・・・・シート束
UT・・・・上流端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを複数積層してなるシート束を収容するシート収容部と、
前記シート束から前記シートを取り出すとともに搬送する搬送要素と、
前記シートの搬送方向に沿う前記シート束の側面に向けて、気体が放出される送気口を備える送気機構と、を備え、
前記送気口は、前記搬送方向において上流側に配設される上流送気口と、前記搬送方向において下流側に配設される下流送気口と、前記上流送気口と前記下流送気口との間に配設される主送気口とを含むことを特徴とするシート搬送機構。
【請求項2】
前記上流送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義される第1位置から前記上流端縁までの区間の中間位置として定義される第2位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることを特徴とする請求項1記載のシート搬送機構。
【請求項3】
前記下流送気口は、前記上流送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義される第1位置から前記下流端縁までの区間の中間位置として定義される第3位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることを特徴とする請求項1又は2記載のシート搬送機構。
【請求項4】
前記主送気口は、前記シート束の上流端縁と下流端縁との中間位置として定義されるとして定義される第1位置に向けて前記気体が放出されるように配設され、
前記上流送気口は、前記第1位置から前記上流端縁までの区間の中間位置として定義される第2位置に向けて前記気体が放出されるように配設され、
前記下流送気口は、前記第1位置から前記下流端縁までの区間の中間位置として定義される第3位置に向けて前記気体が放出されるように配設されることを特徴とする請求項1記載のシート搬送機構。
【請求項5】
前記送気口が、前記上流端縁と前記第2位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第1副送気口と、
前記第2位置と前記第1位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第2副送気口と、
前記第1位置と前記第3位置との間の領域に向けて前記気体が放出される第3副送気口と、
前記第3位置と前記下流端縁との間の領域に向けて前記気体が放出される第4副送気口と、を更に含むことを特徴とする請求項4記載のシート搬送機構。
【請求項6】
前記主送気口、前記上流送気口、前記下流送気口、前記第1副送気口、前記第2副送気口、前記第3副送気口及び前記第4副送気口が等間隔に配設されることを特徴とする請求項5記載のシート搬送機構。
【請求項7】
シートを収容するとともに搬送するシート搬送機構と、
該シート搬送機構から送り出された前記シートに画像を形成する画像形成部と、を備え、
前記シート搬送機構は、前記シートを複数積層してなるシート束を収容するシート収容部と、
前記シート束から前記シートを取り出すとともに搬送する搬送要素と、
前記シートの搬送方向に沿う前記シート束の側面に向けて、気体を放出する送気口を備える送気機構と、を備え、
前記送気口は、前記搬送方向において上流側に配設される上流送気口と、前記搬送方向において下流側に配設される下流送気口と、前記上流送気口と前記下流送気口との間に配設される主送気口とを含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68477(P2011−68477A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222562(P2009−222562)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】