説明

シート搬送装置、画像形成装置及び画像読取装置

【課題】トルクリミッタ付きのローラを有してシートを搬送するシート搬送装置において、上記ローラを停止してシートのループを解消していくときに、シートがぴんと張って大きな音を発生するという問題を解決する。
【解決手段】シート搬送装置には、給紙ローラ13、トルクリミッタ付き分離ローラ14、搬送ローラ対21等が設けられている。上記搬送ローラ対21の周速度よりも速い周速度で給紙ローラ13が回転する状態ではシートSにループが形成され、ループ形成後に給紙ローラ13の回転を停止させると上記ループは急速に解消されていく。このループ解消過程でループ量が所定量となった時点で、搬送ローラ対21の周速度よりも低速で、給紙ローラ13の回転させて、上記ループ解消の速度を遅くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置に係り、特にシート搬送経路上でシートに形成されたループ(たわみ)が解消されるときの音を低減できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンターには、給紙カセット上に積載されたシートを機内へと給紙搬入するための給紙部が設けられている。この給紙部は、給紙カセット上に積載された最上位置のシートを取り出すピックアップローラ、取り出されたシートを給紙カセットからシート搬送経路へと引き出す給紙ローラ、及び、この給紙ローラに対面して配置され、シートが二枚以上重なって搬送されるのを防止する分離ローラを備える。
【0003】
上記分離ローラの回転軸にはトルクリミッタが設けられており、このトルクリミッタの回転制限力を上回る回転力が分離ローラに加わると、この分離ローラが回転することになる。
【0004】
ここで、上記トルクリミッタの回転制限力は、シート同士の摩擦力よりも大きく設定される一方、シートと分離ローラとの間の摩擦力よりも小さく設定され、二枚以上のシートが給紙ローラによって搬送されてしまうのを防止している。
【0005】
また、シート搬送経路では、上記給紙ローラと分離ローラから成る給紙・分離ローラ対よりもシート搬送方向の下流側に位置する搬送ローラ対の周速度を低速にし、搬送中にシートがローラ対間で引っ張られてしまうのを防止しているが、このような速度差を生じさせると、上記給紙・分離ローラ対と上記搬送ローラ対との間において、上記シートにループが形成されることになる。
【0006】
しかし、上記シート搬送経路上に上記ループ形成のための大きなスペースを確保することは難しく、上記ループを大きくすることにも限界があるので、上記ループが一定の大きさとなるときに上記給紙ローラの回転駆動を停止するようにしている。
【0007】
図1は上記給紙ローラ及び上記搬送ローラ対における周速度変化と上記シートに形成されるループの量の変化を示したグラフである。
【0008】
このグラフには、上記給紙ローラの周速度変化A1と、上記搬送ローラ対の周速度変化B1と、上記シートのループ量変化C1とが示されている。上記給紙ローラ及び搬送ローラ対は同時に起動し、上記シートに所定量のループが発生すると、すなわち上記シートの先端が搬送ローラに入り込んでから所定時間が経過すると、上記給紙ローラの回転停止制御が実行されるが、この停止後も上記搬送ローラ対は回転し続けるためにシートのループ量は急速に減少していくことになる。
【0009】
ここで、上記分離ローラのトルクリミッタが上記シートの搬送に対して抵抗となるため、上記ループが解消されるときには、シートがぴんと張られ、このときにシート自体が大きな音を発生する。この音は、上記ループの解消の速度(シートの面に直交する方向にシートのループ部分が減少していく速度)が高速であるほど、大きくなることが知られている。
【0010】
そして、特許文献1に開示された画像形成装置においては、用紙にループが形成された後の二次給紙において、レジストローラ対を搬送ローラ対よりも先に駆動させると共に上記用紙のループが解消するまで上記レジストローラ対や搬送ローラ対を駆動する駆動手段における駆動速度を段階的に制御していくことにより、用紙がガイドに叩きつけられるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−154119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1の画像形成装置は、上記レジストローラ対の回転速度を段階的に上昇させるものであるから、上記レジストローラ対によるシート搬送の立ち上がり速度が遅くなり、画像形成効率が低下するという欠点がある。このため、特許文献1に開示された技術を、上記トルクリミッタ付きの分離ローラを備えた給紙部に適用した場合にも、画像形成効率の低下等の同様の問題が生じると考えられる。
【0013】
本発明は、トルクリミッタ付きのローラを用いてシートを搬送するシート搬送装置における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0014】
すなわち、本発明においては、上記のようなシート搬送装置で搬送するシートのループを解消していくときに、上記トルクリミッタの回転制限力によってシートがぴんと張って大きな音を発生するという問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシート搬送装置は、上記の課題を解決するため、トルクリミッタの回転制限力が付与されるローラを有した第1ローラ対と、上記第1ローラ対よりもシートの搬送方向の下流側に配置された第2ローラ対と、上記第1ローラ対を上記第2ローラ対よりも速い周速度で回転させる第1駆動状態、上記第2ローラ対の回転を継続する一方で上記第1ローラ対を駆動しない第2駆動状態、及び上記第1ローラ対を上記第2ローラ対の周速度よりも遅い周速度で回転させる第3駆動状態を切り替える駆動制御手段と、上記駆動制御手段に上記第1駆動状態を選択させて上記第1ローラ対と第2ローラ対との間で上記シートにループを形成させる第1制御、上記駆動制御手段に上記第2駆動状態を選択させて上記ループを減少させる第2制御、及び上記ループの量が所定量となった後に上記駆動制御手段に上記第3駆動状態を選択させて上記第2制御時よりも上記ループの解消の速度を減速させる第3制御を行うループ制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、上記第2制御時よりも上記ループの解消の速度を減速させる第3制御が実行されるので、この減速された分だけループ解消音を小さくできることになる。そして、上記第3制御では、上記ループの解消の速度を減速させる制御を、上記第1ローラ対の周速度を制御することによって行っており、上記第2ローラ対の周速度は低下させていないので、第2ローラ対の周速度で決まるシート搬送効率が低下することもない。
【0017】
このようなシート搬送装置において、上記ループ制御手段は、上記第3制御の実行中に上記ループが解消されたと判断したとき、上記駆動制御手段に第2駆動状態を選択させることとしてもよい。
【0018】
あるいは、このようなシート搬送装置において、上記ループ制御手段は、上記第3制御を一定時間実行した後に上記第2制御を実行する処理を、上記ループが解消されたと判断されるまで繰り返すこととしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、シートに形成されたループが解消されるときに、ループの解消速度が低速化されるので、ループ解消時の音の発生を低減できる。そして、この低速化は、第2ローラ対の周速度を低下させるものではないので、シート搬送効率も低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術を示す図であって、給紙ローラ及び搬送ローラ対における周速度変化とシートに形成されるループの量の変化を示したグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係るシート搬送装置を設けた画像形成装置の機構構成図である。
【図3】図2に示した画像形成装置におけるシート搬送制御系を示した概略のブロック図である。
【図4】図2に示した画像形成装置における給紙ローラと分離ローラと搬送ローラ対が配置される箇所を拡大して示した機構構成図である。
【図5】図2に示した画像形成装置におけるシート搬送装置の駆動力伝達機構を示した説明図である。
【図6】図2に示した画像形成装置におけるシート搬送装置において、給紙ローラの周速度を制御する実施例を示し、給紙ローラ及び搬送ローラ対における周速度変化とシートに形成されるループの量の変化の関係を示したグラフである。
【図7】図6に示すループ量変化でループ解消が行われるときの制御内容を示したフローチャートである。
【図8】図2に示した画像形成装置におけるシート搬送装置において、給紙ローラの周速度を制御する他の実施例を示し、給紙ローラ及び搬送ローラ対における周速度変化とシートに形成されるループの量の変化の関係を示したグラフである。
【図9】図8に示すループ量変化でループ解消が行われるときの制御内容を示したフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係るシート搬送装置を画像読取装置に設けた状態を示した機構構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、この発明の実施形態に係るシート搬送装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るシート搬送装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0022】
図2はこの実施形態のシート搬送装置を備えた画像形成装置を示している。この画像形成装置は、例えば、外部からネットワーク等を介してデータ入力された画像データやテキストデータに基づく画像をシートに画像形成するプリンターであり、装置本体1内に、給紙部10、シート搬送路20、画像形成部30、定着部40、排紙部50などを備えたものである。
【0023】
給紙部10は、給紙トレイ11、ピックアップローラ12、給紙ローラ13、及び分離ローラ14などを備えている。上記ピックアップローラ12が回転すると、上記給紙カセット11に積載されたシートの一番上のシートが給紙ローラ13と分離ローラ14とから成るローラ対の間に送り込まれる。
【0024】
上記分離ローラ14の回転軸には、図示していないトルクリミッタが設けられている。上記トルクリミッタの回転制限力は、シート同士の摩擦力よりも大きく設定される一方、シートと分離ローラ14との間の摩擦力よりも小さく設定される。
【0025】
このため、上記給紙ローラ13と分離ローラ14との間に一枚のシートが送り込まれた場合は、この一枚のシートと分離ローラ14との間の摩擦力は上記トルクリミッタの回転制限力を上回ることになり、分離ローラ14も回転して上記一枚のシートを搬送することになる。一方、上記給紙ローラ13と分離ローラ14との間に二枚以上のシートが送り込まれたときには、シート同士の摩擦力は上記トルクリミッタの回転制限力を下回るため、分離ローラは回転せず、上記給紙ローラ13に接触しているシートだけが給紙ローラ13によって搬送されることになる。
【0026】
シート搬送路20は、画像形成経路20A、排紙/反転経路20B、両面搬送経路20C、これら経路上に配置される各種ローラなどにより構成される。画像形成経路20Aには、搬送ローラ対21、レジストローラ対22、二次転写ローラ34、定着部40などが設けられており、上記給紙ローラ13によって取り出されたシートは、その下流に位置する上記搬送ローラ対21を通り、レジストローラ対22の箇所で一旦待機され、画像形成のタイミングに合わせてレジストローラ対22によって搬送される。
【0027】
排紙/反転経路20Bには、排紙ローラ23A及び反転ローラ23Bが設けられている。片面印刷の場合、前記画像形成経路20Aを通過したシートは、前記排紙/反転経路20Bに導かれ、排紙ローラ23Aが順方向回転することで排紙される。一方、両面印刷の場合、前記画像形成経路20Aを通過した片面印刷済のシートは、切替爪24によって反転ローラ23B側へ導かれ、この反転ローラ23Bが順方向回転の後に逆方向回転することで、後端であったシート端が先端となって両面搬送経路20Cへと導かれる。
【0028】
画像形成部30は、イエロー色用の画像形成ユニット30Yと、マゼンダ色用の画像形成ユニット30Mと、シアン色用の画像形成ユニット30Cと、ブラック用の画像形成ユニット30Kと、中間転写ベルト33と、二次転写ローラ34とを備えている。例えば、前記画像形成ユニット30Yは、感光体ドラム31、その周囲に配置された図示していない帯電装置、露光装置、現像装置、一次転写ローラ、及び清掃装置等を備える。他の色の画像形成ユニット30M,30C,30Kも、上記の画像形成ユニット30Yと同様の構成を有している。
【0029】
上記各色の画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kの各感光体ドラム31に形成されたトナー画像が中間転写ベルト33上に順々に一次転写されて、中間転写ベルト33の上にはフルカラーのトナー画像が形成される。中間転写ベルト33と二次転写ローラ34との間をシートが通過するときに、中間転写ベルト33上のトナー画像がシートの片側の面に転写される。
【0030】
定着部40は、例えば、熱源を有する加熱定着ローラ41と、この加熱定着ローラ41に接する加圧ローラ42とからなり、両ローラ41,42間を通過するトナー画像が形成されたシートを加熱・加圧し、シートに転写されたトナー画像をシートに定着させる。この定着処理がなされたシートは排紙部50上に積載されていく。
【0031】
図3は図2に示した画像形成装置におけるシート搬送制御系を示した概略のブロック図である。マイクロコンピュータ等で構成される制御部60は、図示していないCPUと、このCPUを動作させるプログラムや各種情報などを記憶するメモリ(ROM,RAM,EEPROMなど)と、各種センサ、モータ、電磁クラッチの電磁操作部などを前記CPUに接続するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェースなどを備えている。
【0032】
上記制御部60には、図4に示すように、シートが形成するループの量を検出するループ量センサ61、搬送ローラ対21の位置にシートの先端が導かれたことを検出するシートセンサ62、第1電磁クラッチ63における電磁動作部63a、第2電磁クラッチ64における電磁動作部64a、及びモータドライバ65などが接続されている。上記モータドライバ65により図示していないモータを駆動されて、給紙ローラ13や搬送ローラ対21に回転駆動力を付与するようにしている。
【0033】
上記のループ量センサ61は、図4に示すように、給紙ローラ13から搬送ローラ対21に至る彎曲状のシート搬送部上に配置される。このシート搬送部は内側ガイド板25と外側ガイド板26とを備えている。上記の給紙ローラ13と分離ローラ14の間を通過したシートSは、外側ガイド板26の側に膨らむようにして搬送される。なお、図4では、1枚のシートSについて、ループを形成している状態を二点鎖線で示し、ループ量が所定量となった状態を細い点線で示し、ループ量がゼロになった状態を太い点線で示している。
【0034】
上記ループ量センサ61は、回動軸61aと、この回動軸61aに偏心して取り付けられた検知部材61bと、上記回動軸61aの回動角度変化によって動作する図示していない第1スイッチ及び第2スイッチを備えている。上記検知部材61bは、上記内側ガイド板25の側からシート搬送部内に突出するように配置されており、ループ状態を解消していくシートSに上記検知部材61bが押されると、当該検知部材61b及び回動軸61aが反時計回りに回動し、上記第1,第2スイッチがオン動作する。より具体的には、シートSのループ量が上記所定量となるときの上記回動軸61aの回動角度で上記第1スイッチがオンし、シートSのループ量がゼロとなるときの上記回動軸61aの回動角度で上記第2スイッチがオンする。上記回動軸61aには図示していない戻しバネが装着されており、上記シートSによる押圧が無くなると上記回動軸61aが上記戻しバネに付勢されて回動し、上記検知部材61bがシート搬送部内に突出することになる。
【0035】
上記のシートセンサ62も上記シート搬送部に設けられている。このシートセンサ62がシートSの先端を検出すると、制御部60はタイマーをスタートさせ、所定時間が経過した時点で給紙ローラ13の回転を停止させる。上記搬送ローラ対21は、上記給紙ローラ13が回転停止された後も回転してシートSの先端側を搬送していくため、給紙ローラ13の回転停止後には急速にループが解消していくことになる。
【0036】
上記第1電磁クラッチ63及び第2電磁クラッチ64は、図5に示すように、給紙ローラ13の回転軸13aに設けられている。上記制御部60は、上記電磁動作部63a,64aに対する通電制御を行うことで、上記第1,第2電磁クラッチ63,64の各々のギヤ63b,64bの回転力を上記回転軸13aに伝達する回転力伝達状態と、各々のギヤ63b,64bを上記回転軸13aに対して空回りさせる回転力非伝達状態との切り換えを行う。上記ギヤ63b,64bは同じ径を有しており、第1電磁クラッチ63及び第2電磁クラッチ64として同一規格のものを用いている。上記ギヤ63bには小径の中間ギヤ71を介して3段ギヤ70における大径ギヤ部70aに歯合されている。また、上記ギヤ64bには大径の中間ギヤ72を介して3段ギヤ70における小径ギヤ部70bに歯合されている。そして、3段ギヤ70の駆動軸70cには上記モータドライバ65によって駆動されるモータが接続される。
【0037】
上記駆動軸70cの回転駆動力は、上記二つの第1電磁クラッチ63及び第2電磁クラッチ64にそれぞれ伝達されることになるが、この伝達は上記のごとく3段ギヤ70におけるギヤ径の異なるギヤ部70a,70bを介して行われるため、第1電磁クラッチ63による回転力伝達状態になるときの給紙ローラ13の回転速度(以下、第1回転速度という)よりも、第2電磁クラッチ64による回転力伝達状態になるときの給紙ローラ13の回転速度(以下、第2回転速度という)の方が遅くなる。上記第1回転速度による給紙ローラ13の周速度は、搬送ローラ対21の周速度よりも速く、上記第1回転速度の状態ではシートSのループ量が増大していくことになる。一方、上記第2回転速度による給紙ローラ13の周速度は、搬送ローラ対21の周速度よりも遅く、上記第2回転速度の状態ではシートSのループ量が減少していくことになる。そして、第1電磁クラッチ63及び第2電磁クラッチ64が共に回転力非伝達状態となるとき、給紙ローラ13の回転は停止されるため、この状態ではシートSのループは急激に減少していくことになる。
【0038】
図6は上記給紙ローラ13及び搬送ローラ対21における周速度の変化とシートに形成されるループの量の変化を示したグラフである。このグラフには、上記給紙ローラ13の周速度変化A2及びA2-1と、上記搬送ローラ対21の周速度変化B2と、シートのループ量変化C2とが示されている。
【0039】
このグラフにおいて、上記第1電磁クラッチ63の回転力伝達状態(第1回転速度状態)から回転力非伝達状態に切り換わると、上記給紙ローラ13の回転が停止するが、上記搬送ローラ対21はその後も回転し続けるのでシートのループ量は急速に減少していく。そして、シートのループ量が所定量X1となって上記ループ量センサ61の第1スイッチがオンすると、このオン信号を受けた制御部60は、電磁動作部64aを制御し、上記第2電磁クラッチ64による回転力伝達状態に切り換わる。これにより、給紙ローラ13は上記第2回転速度で回転し、ループ解消の速度を低減させる状態が形成される。そして、シートのループ量がゼロとなって上記ループ量センサ61の第2スイッチがオンすると、このオン信号を受けた制御部60は、電磁動作部64aを制御し、上記第2電磁クラッチ64を回転力非伝達状態にして、給紙ローラ13の回転を停止させる。
【0040】
図7は制御部60による処理内容を示したフローチャートである。このフローチャートでは、給紙ローラ13を上記第1回転速度で回転させてシートを機内に搬入した後における給紙ローラ13の回転制御(ループ形成及びループ解消速度制御)を示している。
【0041】
制御部60は、搬送ローラ対21の手前位置にシートの先端が導かれたことをシートセンサ62の出力により検出してから一定時間が経過したかどうかを判断する(ステップS1)。
【0042】
上記制御部60は、上記一定時間が経過した場合、給紙ローラ13の回転を停止させる(ステップS2)。次に、シートのループ量LについてL≦X1となったかどうかの判断処理を行い(ステップS3)、L≦X1になっていない場合には当該ステップS3に戻り、L≦X1になっている場合、すなわち上記ループ量センサ61における第1スイッチのオンを検出した場合には、給紙ローラ13を上記第2回転速度で回転させる(ステップS4)。
【0043】
次に、シートのループ量LについてL=0となったかどうかの判断処理を行い(ステップS5)、L=0になっていない場合には当該ステップS5に戻り、L=0になっている場合は、給紙ローラ13の回転を停止させて(ステップS6)、処理を終了する。
【0044】
以上の制御により、シートのループ解消の速度を低減させると共にシートのループが解消された時点で給紙ローラ13の回転駆動が停止されることになる。
【0045】
ここで、この給紙ローラ13の回転駆動が停止された時点でシートの後端部分が給紙ローラ13と分離ローラ14との間に残っている場合、上記シートは分離ローラ14におけるトルクリミッタの存在によって搬送に対する抵抗を受けて引っ張られることになるが、上記のごとくループは既に解消されているので、上記給紙ローラ13の回転停止によって音が発生するということはない。
【0046】
そして、上記のごとくステップS6で給紙ローラ13の回転を停止した後に、後続のシートについての画像形成処理が始まるときには、給紙ローラ13が第1回転速度で再び回転駆動されることになる。
【0047】
次に、図8及び図9を用いてループ解消制御における他の例を説明する。
【0048】
図8は、給紙ローラ13及び搬送ローラ対21における周速度の変化とシートに形成されるループの量の変化を示したグラフである。このグラフには、上記給紙ローラ13の周速度変化A3、A3-1及びA3-2と、上記搬送ローラ対21の周速度変化B3と、シートのループ量変化C3とが示されている。
【0049】
このグラフにおいて、上記給紙ローラ13の回転を停止させてシートのループ量を急速に減少させていく過程で、シートのループ量が所定量X1となって上記ループ量センサ61の第1スイッチがオンすると、このオン信号を受けた制御部60は、電磁動作部64aを制御し、上記第2電磁クラッチ64による回転力伝達状態を一定時間(T1)だけ作用させる。これにより、この一定時間(T1)だけ、給紙ローラ13が上記第2回転速度で回転してループ解消速度を低減させる状態になる。上記制御部60は、シートのループ量がゼロとなって上記ループ量センサ61の第2スイッチがオンするまで、上記一定時間(T1)のループ解消速度の低減状態を繰り返し行う。なお、図8に示す所定量X1は図6における所定量X1と異なる量であってもよい。また、図8における周速度変化A3-1とA3-2との間のループ解消区間は、実際には殆どゼロとすることができる。
【0050】
図9は上記図8に対応した制御部60による処理内容を示したフローチャートである。このフローチャートでは、給紙ローラ13を上記第1回転速度で回転させてシートを機内に搬入した後における給紙ローラ13の回転制御(ループ形成及びループ解消速度制御)を示している。
【0051】
上記制御部60は、搬送ローラ対21の位置にシートの先端が導かれたことをシートセンサ62の出力により検出してから、一定時間が経過したかどうかを判断する(ステップS11)。
【0052】
制御部60は、上記一定時間が経過した場合は、給紙ローラ13の回転を停止させる(ステップS12)。次に、シートのループ量LについてL≦X1となったかどうかの判断処理を行い(ステップS13)、L≦X1になっていない場合には当該ステップS13に戻り、L≦X1になっている場合、すなわち上記ループ量センサ61における第1スイッチのオンを検出した場合には、給紙ローラ13を上記第2回転速度で回転させ(ステップS14)、一定時間(T1)が経過したら給紙ローラ13の回転を停止する(ステップS15)。
【0053】
次に、シートのループ量LについてL=0となったかどうかの判断処理を行い(ステップS16)、L=0になっていない場合にはステップS14に戻り、上述した一定時間(T1)の間、給紙ローラ13の回転動作を実行する。一方、L=0になっている場合は、処理を終了する。
【0054】
このように、シートのループ量LがL≦X1となった以降、給紙ローラ13を一定時間(T1)だけ回転させる処理とシートのループ量Lがゼロになったか否かを判断する処理を、上記ループ量がゼロとなるまで繰り返し行うようにしてもよい。
【0055】
なお、シートのループ量を判定することにおいては、機械的に動作する上記ループ量センサ61の他、例えば内側ガイド板25からシートの中央箇所(ループ頂部)までの距離を光学的検出手法などで検出することによりループ量を判定することも可能である。また、このようにループが解消したことを実測により判定するセンサについては、シートがループを解消するタイミングで当該シートに接触することとなる箇所に設けられるのが望ましい。また、シートの実際のループ量を検出する他に、ループ量を推測するようにしてもよい。すなわち、上記の第1回転速度や第2回転速度によるループ形成やループ解消の速度が既知であるなら、上記給紙ローラ13を回転させてからの経過時間や、シートのジャムや通過を検出するセンサでシートを検出してからの経過時間によって、ループ量を推定することが可能である。
【0056】
また、ループ量が所定量になってから上記第2回転速度で回転させた場合に、ループ量がゼロになるまでの時間が既知であれば、この時間の経過を計測することでシートのループ量がゼロとなったことを推定することもできる。なお、シートの種類によっては、上記推定したループ量と実際のループ量に誤差が発生したり、ループ解消の軌跡が変化したりすることがあるので、このようなことが考えられる場合には、ループ量を実測により検出するのがよい。また、上記図8,9に示した処理においては、給紙ローラの回転オン/オフの繰り返し処理においてループ量の推定誤差が増大していくことが予想されるので、ループ量を実測により検出するのが望ましいといえる。
【0057】
また、以上の説明においては、シート搬送装置を画像形成装置における給紙部10に用いた例を示したが、シート搬送装置を画像読取装置に用いることもできる。
【0058】
図10に画像読取装置100のシート搬送装置を示す。このシート搬送装置において、ピックアップローラ101が回転すると、原稿台上の一番上のシート(原稿)Sが給紙ローラ102と分離ローラ103との間に送られる。この分離ローラ103の回転軸には、図示していないトルクリミッタが設けられている。このトルクリミッタにより、給紙ローラ102と分離ローラ103との間に二枚以上のシートSが送り込まれても、シート同士の摩擦力は上記トルクリミッタの回転制限力を下回るため、分離ローラ103は回転せず、上記給紙ローラ102に接しているシートだけが給紙ローラ102によって搬送されていくことになる。
【0059】
上記給紙ローラ102と搬送ローラ対105との間のシート搬送路104においてシートSがループを形成する。このループの量については、シートのジャムや通過を検出する図示していないセンサにより、シートSを検出してからの経過時間によって推測するようにしている。そして、搬送ローラ対105の下流側にはレジストローラ対106が設けられており、このレジストローラ対106の下流側には、図示していない原稿読取光学部が設けられる。
【0060】
上記のような原稿読取装置100においても、シートSのループを解消する際にループ解消音が発生することになるが、シートSのループ量に基づいて給紙ローラ102の回転制御を行うことにより、ループ解消速度の低速化してループ解消音の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 装置本体
10 給紙部
12 ピックアップローラ
13 給紙ローラ
14 分離ローラ
20 シート搬送路
21 搬送ローラ対
22 レジストローラ対
30 画像形成部
40 定着部
50 排紙部
60 制御部
61 ループ量センサ
62 シートセンサ
63 第1電磁クラッチ
64 第2電磁クラッチ
70 3段ギア
100 画像読取装置
102 給紙ローラ
103 分離ローラ
104 シート搬送路
105 搬送ローラ対
106 レジストローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクリミッタの回転制限力が付与されるローラを有した第1ローラ対と、
上記第1ローラ対よりもシートの搬送方向の下流側に配置された第2ローラ対と、
上記第1ローラ対を上記第2ローラ対よりも速い周速度で回転させる第1駆動状態、上記第2ローラ対の回転を継続する一方で上記第1ローラ対を駆動しない第2駆動状態、及び上記第1ローラ対を上記第2ローラ対の周速度よりも遅い周速度で回転させる第3駆動状態を切り替える駆動制御手段と、
上記駆動制御手段に上記第1駆動状態を選択させて上記第1ローラ対と第2ローラ対との間で上記シートにループを形成させる第1制御、上記駆動制御手段に上記第2駆動状態を選択させて上記ループを減少させる第2制御、及び上記ループの量が所定量となった後に上記駆動制御手段に上記第3駆動状態を選択させて上記第2制御時よりも上記ループの解消の速度を減速させる第3制御、を行うループ制御手段と、
を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置において、上記ループ制御手段は、上記第3制御の実行中に上記ループが解消されたと判断したとき、上記駆動制御手段に第2駆動状態を選択させることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート搬送装置において、上記ループ制御手段は、上記第3制御を一定時間実行した後に上記第2制御を実行する処理を、上記ループが解消されたと判断されるまで繰り返すことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126492(P2012−126492A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278733(P2010−278733)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】