説明

シート搬送装置および画像形成装置

【課題】専用の駆動源を用いることなく、過積載防止部材を記録シートから退避させることで、コストダウンを図ることを目的とする。
【解決手段】シート搬送装置(手差し給紙機構100)は、載置面221上の記録シートを搬送する供給ローラ110と、供給ローラ110を上方の待機位置から下方に移動させて記録シートに当接させる支持機構140および駆動機構150と、第1の位置と第2の位置とに変位可能な規制面301を有する過積載防止部材300と、駆動機構150から駆動力を受けて過積載防止部材300を変位させる連動機構400を備える。連動機構400は、供給ローラ110が待機位置に位置するときに規制面301を第1の位置に配置させ、駆動機構150により供給ローラ110が待機位置から下方に下がるときに、規制面301を第2の位置に向けて変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートを搬送するシート搬送装置と、シート搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙の過積載を防止するために、用紙を載置する載置面から所定距離離れた位置に用紙の積載枚数を制限するための過積載防止板を備えたシート搬送装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、用紙の搬送時に過積載防止板が用紙に接触していると、用紙搬送の負荷になるため、用紙搬送時にはソレノイドによって過積載防止板を用紙から離間させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−86632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、過積載防止板を用紙から離間させるための専用のソレノイドを用いているため、コストがかかるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、専用の駆動源を用いることなく、過積載防止部材を記録シートから退避させることで、コストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシート搬送装置および画像形成装置は、複数枚の記録シートを積載可能な載置面を有する筐体と、前記載置面上に積載された記録シートを搬送する供給ローラと、前記供給ローラを上下に移動可能に支持する支持機構と、前記載置面上の記録シートを搬送する際に、前記支持機構に作用して前記供給ローラを上方の待機位置から下方に移動させて記録シートに当接させる駆動機構と、前記供給ローラよりも搬送方向上流側に設けられ、前記載置面から所定距離離れて前記載置面上の記録シートの積載枚数を制限する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記載置面から離れた第2の位置とに変位可能な規制面を有する過積載防止部材と、前記駆動機構または前記支持機構から駆動力を受けて前記過積載防止部材を変位させる連動機構と、を備え、前記連動機構は、前記供給ローラが前記待機位置に位置するときに前記規制面を前記第1の位置に配置させ、前記駆動機構の駆動により前記供給ローラが前記待機位置から下方に下がるときに、前記規制面を前記第2の位置に向けて変位させるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、供給ローラが待機位置から下方に下がる動作に連動して、規制面が第2の位置に向けて退避する、すなわち駆動機構からの駆動力を利用して過積載防止部材を退避させるので、専用の駆動源を用いる必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、専用の駆動源を用いることなく、過積載防止部材を記録シートから退避させることができるので、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
【図2】手差しトレイを開いた状態を示す断面図である。
【図3】手差し給紙機構を示す分解図である。
【図4】手差し給紙機構の差込口に用紙を差し込んだ状態を上フレームを外して示す斜視図である。
【図5】支持機構を示す斜視図である。
【図6】通常時の駆動機構を示す図(a)と、ラッチ機構が外れたときの駆動機構を示す図(b)である。
【図7】過積載防止部材が用紙から退避した状態を上フレームを外して示す斜視図である。
【図8】過積載防止部材が第1の位置に位置する状態を示す図(a)と、過積載防止部材が第2の位置に位置する状態を示す図(b)である。
【図9】他の実施形態に係る過積載防止部材を示す分解斜視図である。
【図10】図9の過積載防止部材が第1の位置に位置する状態を示す図(a)と、過積載防止部材が第2の位置に位置する状態を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0011】
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0013】
給紙部20は、装置本体10内の下部に設けられ、装置本体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22とを備えている。給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Pが、用紙供給機構22によって一枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0014】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、転写ユニット70と、定着装置80とを備えている。
【0015】
LEDユニット40は、感光ドラム53を露光するべく、複数のLEDを備えて構成されている。
プロセスカートリッジ50は、感光ドラム53や、符号を省略して示す公知の帯電器、現像ローラ、トナー収容室などを備えて構成されている。
【0016】
転写ユニット70は、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、ベルト73と、転写ローラ74とを備えている。
定着装置80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置され加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0017】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム53の表面が、帯電器により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に現像ローラよりトナーが供給されることで、感光ドラム53上にトナー像が担持される。
【0018】
次に、ベルト73上に供給された用紙Pが各感光ドラム53と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム53上に形成されたトナー像が用紙P上に転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0019】
排紙部90は、複数対の搬送ローラ91と、一対の排紙ローラ92とを備えている。そして、この排紙部90では、定着装置80から出た用紙Pが、複数対の搬送ローラ91と一対の排紙ローラ92とで搬送されて、排出トレイ11に排出される。
【0020】
また、装置本体10の前側には、シート搬送装置の一例としての手差し給紙機構100が設けられている。手差し給紙機構100は、装置本体10に対して揺動可能な手差しトレイ12と、手差しトレイ12上に載置した用紙Pを装置本体10内に向けて搬送する供給ローラ110と、供給ローラ110から用紙Pが重なった状態で送られてきた際に、重なった用紙Pを1枚ずつに分離する分離ローラ120および分離パッド130とを備えている。なお、手差し給紙機構100の詳細については、後で説明する。
【0021】
そして、この手差し給紙機構100では、図2に示すように、略水平状態に倒された手差しトレイ12上に用紙Pを載せた状態で、手差しトレイ12上の用紙Pの印字を実行する指令が入力されると、供給ローラ110が下がって用紙Pに接触する。このように用紙Pと接触した供給ローラ110が回転することで、最上位に位置する用紙Pが分離ローラ120等を介して、装置本体10内の画像形成部30に供給される。
【0022】
そして、1枚の用紙Pを送った後は、供給ローラ110は上方の待機位置まで戻され、次の指令が入力されるまで、この待機位置で保持される。なお、以下の説明では、前述したような1枚の用紙Pを送るための供給ローラ110の動作を、ピックアップ動作とも呼ぶこととする。
【0023】
<手差し給紙機構の構造>
次に、手差し給紙機構100の構造について詳細に説明する。
図3〜図5に示すように、手差し給紙機構100は、筐体200と、供給ローラ110と、支持機構140と、駆動機構150と、過積載防止部材300と、連動機構400とを備えて構成されている。
【0024】
筐体200は、上フレーム210および下フレーム220を有し、上フレーム210と下フレーム220との間で、用紙Pを筐体200内に差し込むための差込口201が形成されるとともに、用紙Pを画像形成部30に向けて搬送するための搬送路202が形成されている。そして、差込口201内には、複数枚の用紙Pを積載可能な載置面221(詳しくは、開放状態の手差しトレイ12の上面と面一であり、手差しトレイ12の上面とともに用紙Pを支持する面)が形成されている。
【0025】
供給ローラ110は、手差しトレイ12および載置面221上に積載された用紙Pを搬送するローラであり、支持機構140および駆動機構150によって上下動するようになっている。
【0026】
支持機構140は、供給ローラ110を上下に移動可能に支持する機構であり、主に、供給ローラ110および分離ローラ120を回転可能に支持する支持部材170と、右端側(一端側)が支持部材170と係合する長尺状の揺動アーム180とを有している。
【0027】
支持部材170は、下方に開口した容器状に形成されており、その内部には、供給ローラ110および分離ローラ120が回転可能に設けられているとともに、分離ローラ120から供給ローラ110へ駆動力を伝達するためのギヤ171が設けられている。そして、この支持部材170は、分離ローラ120を中心にして上下に揺動可能に筐体200(上フレーム210)に支持されており、その一部には、揺動アーム180の右端側と係合する係合突起172が形成されている。
【0028】
揺動アーム180は、第1アーム181と第2アーム182とが組み合わされることで構成されている。具体的に、第1アーム181の左側に形成された一対の孔183に、第2アーム182の右側に形成された一対の凸部184が嵌め合わされることで、長尺状の揺動アーム180が構成されている。
【0029】
揺動アーム180の中央部(詳しくは一対の凸部184の間)には、第1アーム181と第2アーム182とに貫通する貫通孔185が形成されている。そして、この貫通孔185が筐体200(上フレーム210)に回転可能に取り付けられることで、揺動アーム180が水平面内にて前後に揺動可能となっている。
【0030】
揺動アーム180(第1アーム181)の右端側には、支持部材170の係合突起172と係合する係合孔186が形成されている。これにより、揺動アーム180の右端部が後方に揺動したときには、係合孔186の縁で係合突起172が後方に押されることで、支持部材170が分離ローラ120を中心にして上方に揺動して、供給ローラ110が上昇するようになっている。
【0031】
また、これとは逆に、揺動アーム180の右端部が前方に揺動したときには、係合孔186の縁で係合突起172が前方に押されることで、支持部材170が分離ローラ120を中心にして下方に揺動して、供給ローラ110が下降するようになっている。そして、揺動アーム180(第2アーム182)の左端部187は、図6(a)に示す駆動機構150のストッパ部材151と係合することで、後方への移動が規制されている。
【0032】
駆動機構150は、載置面221上の用紙Pを装置本体10内に向けて搬送する際(手差し用の印字指令が入力されたとき)に、支持機構140に作用して供給ローラ110を上方の待機位置から下方に移動させて用紙Pに当接させる機構である。具体的に、駆動機構150は、ストッパ部材151と、欠歯ギヤ153と、ラッチ機構154とを備えて構成されている。
【0033】
ストッパ部材151は、供給ローラ110の回転軸に平行な軸回りで揺動可能に筐体200(下フレーム220)に支持され、その上端部には、揺動アーム180の左端部187に後側から係合して供給ローラ110を待機位置に規制するストッパ面151Aが形成されている。そして、ストッパ部材151が揺動することによって、ストッパ面151Aは、供給ローラ110を待機位置に規制する規制位置(図6(a)の位置)と、その規制を解除する解除位置(図6(b)の位置)との間で変位するようになっている。
【0034】
具体的に、ストッパ部材151は、通常時(手差し用の印字指令が入力されていないとき)において、そのストッパ面151Aが揺動アーム180の左端部187に係合するとともに、ストッパ面151Aとは反対側の後面151Bが、欠歯ギヤ153に一体に形成される第1カム部531の膨出部531Aに当接している。これにより、通常時において、供給ローラ110の自重やばね等によって揺動アーム180の左端部187が後方に移動しようとしても、この移動がストッパ部材151によって規制されている。
【0035】
そして、図6(b)に示すように、第1カム部531が初期位置から回動することによって、ストッパ部材151から第1カム部531の膨出部531Aが外れると、ストッパ部材151による規制が解除されて、揺動アーム180の左端部187がストッパ部材151を揺動させつつ後方に移動するようになっている。
【0036】
欠歯ギヤ153は、前述した第1カム部531と、始動カム532(図4参照)と、入力側欠歯ギヤ部533と、出力側欠歯ギヤ部534(図4参照)と、第2カム部535とを備えている。なお、第2カム部535は、後述する連動機構400の一部であるため、後で詳述することとする。
【0037】
第1カム部531は、前述したようにストッパ面151Aを前記規制位置と前記解除位置との間で変位させるカムであり、欠歯ギヤ153と同軸に一体形成されて、欠歯ギヤ153と一体に回転可能となっている。
【0038】
図4に示すように、始動カム532は、欠歯ギヤ153の左右方向外側の端面(第1カム部531とは反対側の端面)に設けられている。始動カム532は、通常時において、トーションバネ155によって図示反時計回りに付勢されているが、欠歯ギヤ153にラッチ機構154が係合することで、欠歯ギヤ153の回動が規制されている。
【0039】
出力側欠歯ギヤ部534は、全周の一部がギヤ歯となり、他部が欠歯となるギヤであり、通常時において、欠歯部分が図示せぬ分離ローラ駆動ギヤと対向している。なお、分離ローラ駆動ギヤは、分離ローラ120と一体回転するように、連結軸522を介して分離ローラ120に同軸に固定されている。
【0040】
図6(a)に示すように、入力側欠歯ギヤ部533は、全周の一部がギヤ歯となり、他部が欠歯となるギヤであり、通常時において、欠歯部分が入力ギヤ13と対向している。ここで、入力ギヤ13には、装置本体10に設けられた図示せぬモータ(駆動源)から駆動力が伝達されるようになっている。
【0041】
ラッチ機構154は、揺動可能なラッチアーム541と、ラッチアーム541の基端部を押し引きするソレノイド542とを備えて構成されている。
【0042】
以上のように構成される駆動機構150は、図6(a)に示す通常時においては、揺動アーム180の左端部187の後方への移動を、ストッパ部材151、欠歯ギヤ153およびラッチ機構154によって規制している。そして、この状態からソレノイド542を作動させることで、図6(b)に示すように、欠歯ギヤ153からラッチアーム541を外すと、トーションバネ155の付勢力により欠歯ギヤ153が図示時計回りに所定量だけ回動する。
【0043】
これにより、欠歯ギヤ153と一体に回動する第1カム部531の膨出部531Aがストッパ部材151から外れて、ストッパ部材151が揺動するとともに揺動アーム180の左端部187が後方へ移動する。また、この際、欠歯ギヤ153と一体に回動する入力側欠歯ギヤ部533のギヤ歯と入力ギヤ13とが噛み合う。
【0044】
これにより、モータの駆動力が、入力ギヤ13と欠歯ギヤ153を介して分離ローラ120および供給ローラ110に伝達される。
【0045】
そして、入力ギヤ13と入力側欠歯ギヤ部533の欠歯部分とが対向して入力ギヤ13からの駆動力の伝達が切れるまでの間において、第1カム部531の膨出部531Aでストッパ部材151が前方に押されて初期位置に戻される。さらに、欠歯ギヤ153がラッチアーム541と再び係合する。以上により、駆動機構150が初期位置に復帰するようになっている。
【0046】
図4および図7に示すように、過積載防止部材300は、連動機構400を介して駆動機構150に連結されることで、供給ローラ110のピックアップ動作に連動して上方に退避するように構成されている。これにより、供給ローラ110による給紙時に、過積載防止部材300が用紙Pの抵抗になるのを抑えることが可能となっている。
【0047】
具体的に、過積載防止部材300は、板状の部材であり、供給ローラ110よりも前側(搬送方向上流側)の位置で、かつ、用紙Pの搬送方向に面直となる向きで配置されている。そして、過積載防止部材300の下面(載置面221側の面)は、用紙Pの積載枚数を制限するための規制面301となっている。
【0048】
規制面301は、待機位置に位置する供給ローラ110の下端部よりも下方に配置されている。これにより、供給ローラ110と、規制面301で規制した最大積載枚数の用紙Pの最上位の用紙Pとの間に隙間を形成することができるので、ピックアップ動作を確実に行うことが可能となっている。
【0049】
また、過積載防止部材300は、連動機構400を構成する連動アーム410で支持されており、連動アーム410が上下に揺動することで上下に移動可能となっている。これにより、規制面301は、載置面221から上下方向に所定距離離れて載置面221上の用紙Pの積載枚数を制限する第1の位置(図8(a)の位置)と、第1の位置よりも載置面221から離れた第2の位置(図8(b)の位置)とに変位可能となっている。
【0050】
また、過積載防止部材300は、用紙P(カラープリンタ1で印字可能な最大サイズの用紙)の幅よりも短い長さで形成されている。これにより、過積載防止部材を用紙Pの幅方向全体にわたって形成する場合に比べ、過積載防止部材300を軽くすることができるので、過積載防止部材300の上下動をスムーズに行うことが可能となっている。
【0051】
また、過積載防止部材300は、載置面221に載置される用紙Pの幅方向中央に配置されている。これにより、例えば各サイズの用紙Pを幅方向中央に寄せて搬送する構成の場合には、幅方向中央にある過積載防止部材300によって小サイズの用紙Pであっても過積載を抑制することが可能となっている。
【0052】
連動機構400は、駆動機構150から駆動力を受けて過積載防止部材300を変位させる機構であり、供給ローラ110が待機位置に位置するときに規制面301を第1の位置に配置させ、駆動機構150の駆動により供給ローラ110が待機位置から下方に下がるときに、規制面301を第2の位置に向けて変位させるように構成されている。具体的に、連動機構400は、連動アーム410と、係合アーム420と、前述した第2カム部535(図6参照)とを備えて構成されている。
【0053】
連動アーム410は、左右方向に延びる長尺状の部材であり、その略中央部が前後方向(搬送方向)に平行な軸回りに筐体200(上フレーム210)に揺動可能に支持されている。連動アーム410は、その右端部411で過積載防止部材300を支持し、その左端部412が係合アーム420と上下方向で係合している。
【0054】
係合アーム420は、前後方向に延びる長尺状の部材であり、その略中央部が供給ローラ110の回転軸に平行な軸回りに筐体200(上フレーム210)に揺動可能に支持されている。そして、係合アーム420は、図6(a)に示すように、その前端部421が連動アーム410の左端部412に上から係合し、その後端部422がストッパ部材151によって下から支えられている。これにより、過積載防止部材300の規制面301が第1の位置で保持されるようになっている。
【0055】
第2カム部535は、第1カム部531と同軸に一体形成されており、第1カム部531と一体に回転可能となっている。第2カム部535は、係合アーム420の後端部422に下から係合可能となっており、係合アーム420および連動アーム410を介して過積載防止部材300の規制面301を第1の位置と第2の位置とに変位させるように構成されている。
【0056】
具体的に、第2カム部535は、係合アーム420に接触可能なカム面535Aと、カム面535Aから径方向内側に凹むように形成されて係合アーム420とは接触不能となる逃げ部535Bとを有している。そして、図6(a)に示すように、逃げ部535B内に係合アーム420が入り込んでいる場合には、規制面301が第1の位置で保持される。また、図6(b)に示すように、第2カム部535が回動してカム面535Aで係合アーム420の後端部422を上方に押圧した場合には、係合アーム420および連動アーム410が揺動することで規制面301が第2の位置に移動するようになっている。
【0057】
すなわち、ストッパ部材151のストッパ面151Aが規制位置(図6(a)の位置)であるときに規制面301が第1の位置に配置され、ストッパ面151Aが解除位置(図6(b)の位置)に変位するときに規制面301が第2の位置に変位するように、第1カム部531と第2カム部535が構成されている。なお、規制面301は、過積載防止部材300の自重によって第2の位置から第1の位置に戻すことができるが、確実時に第1の位置に戻すべく、トーションバネなどの付勢部材で過積載防止部材300を常時第1の位置に付勢するようにしてもよい。
【0058】
<連動機構400および過積載防止部材300の動作>
次に、載置面221上にセットした用紙Pを供給ローラ110で搬送するときの連動機構400および過積載防止部材300の動作について説明する。
【0059】
図8(a)に示すように、最大積載枚数以上の用紙Pを過積載防止部材300と載置面221との間に向けて挿入していくと、過積載防止部材300と載置面221との隙間に対応した枚数(最大積載枚数)の用紙Pだけが過積載防止部材300よりも奥(後側)に押し込まれ、過積載分の用紙P1は過積載防止部材300でその位置に止められる。これにより、過積載分の用紙P1が過積載防止部材300で止められていることにユーザが気付いて、ユーザが過積載分の用紙P1を取り除くことができる。また、ユーザが用紙P1を取り除かない場合であっても、過積載防止部材300で過積載分の用紙P1を止めることができるので、供給ローラ110を正常に動作させることが可能となっている。
【0060】
図8(b)に示すように、ピックアップ動作時においては、駆動機構150の駆動によって、過積載防止部材300の規制面301が第2の位置に向けて退避するとともに、供給ローラ110が下方に下がって用紙Pに接触して搬送を開始する。これにより、供給ローラ110で用紙Pを搬送する際には、規制面301が用紙Pと接触しないので、規制面301が搬送の抵抗にならず、供給ローラ110で用紙Pをスムーズに搬送することが可能となっている。
【0061】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
駆動機構150からの駆動力を利用して過積載防止部材300を退避させるので、専用の駆動源を用いる必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0062】
過積載防止部材300が用紙Pの幅方向中央部に配置されているので、例えば各サイズの用紙Pを幅方向中央に寄せて搬送する構成の場合には、幅方向中央にある過積載防止部材300によって小サイズの用紙Pであっても過積載を抑制することができる。
【0063】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、過積載防止部材300を搬送方向に平行な軸回りに回動可能としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図9および図10に示すように、過積載防止部材600を左右方向に平行な軸回りに回動可能に構成してもよい。なお、以下の説明では、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
具体的に、過積載防止部材600は、左右方向に長尺となる板状の部材であり、筐体200(上フレーム210)に回動可能に設けられている。過積載防止部材600は、用紙Pの搬送方向に面直となる向きで配置され、この向きにおいて、用紙Pの積載枚数を制限するための規制面601が下側(載置面221側)に向くように構成されている。
【0065】
また、過積載防止部材600の上端には、筐体200(上フレーム210)に回動可能に支持される回動軸610が設けられている。これにより、過積載防止部材600の下端に位置する規制面601が、回動軸610を中心にして前斜め上方(搬送方向上流側)に移動可能となっている。詳しくは、規制面601は、載置面221から上下方向に所定距離離れて載置面221上の用紙Pの積載枚数を制限する第1の位置(図10(a)の位置)と、第1の位置よりも載置面221から前斜め上方に離れた第2の位置(図10(b)の位置)とに変位可能となっている。
【0066】
回動軸610の両端部には、後斜め上方(回動軸610の径方向外側、かつ、過積載防止部材600とは異なる方向)に延びる一対の係合片620が形成されている。また、支持部材170の前端部(揺動する先端部)の左右両側壁には、左右方向外側に突出して各係合片620に係合する一対の係合ピン173(1つのみ図示)が設けられている。
【0067】
これにより、支持部材170の回動に連動して過積載防止部材600が回動するようになっている。すなわち、各係合片620と各係合ピン173とによって連動機構が構成され、この連動機構によって、過積載防止部材600が、支持機構140から駆動力を受けて変位するように構成されている。
【0068】
なお、過積載防止部材600は、図示せぬトーションバネなどの付勢部材によって規制面601が第1の位置に位置するように付勢されている。なお、付勢部材を設けなくても、過積載防止部材600の自重によって、規制面301が第2の位置から第1の位置に戻るように(付勢されるように)構成されていてもよい。
【0069】
図9および図10に示す構造によれば、前記実施形態に比べ、連動アーム410のような大型の部品を設ける必要がないので、小型化を図ることができる。また、この構造では、過積載防止部材600の規制面601(下端部)が搬送方向上流側に移動するので、図10(b)に示すように、ピックアップ動作時に回動する過積載防止部材600によって過積載分の用紙P1を搬送方向上流側に押し戻すことができ、用紙Pが最大積載枚数以上であることをユーザに喚起することができる。
【0070】
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0071】
前記実施形態では、過積載防止部材300を回動可能とすることで規制面301を円弧状に変位させたが、本発明はこれに限定されず、例えば筐体に対して過積載防止部材を上下に移動可能に設け、規制面を直線状に変位させてもよい。
【0072】
前記実施形態では、上下に揺動する支持部材170と前後に揺動する揺動アーム180とを組み合わせて支持機構140を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば上下に揺動するアームの先端で供給ローラを回転可能に支持する機構を支持機構として採用してもよい。また、供給ローラを回転可能に支持するブラケットを上下動させるピニオン・ラック機構と複数のギヤとによって支持機構を採用してもよい。
【0073】
前記実施形態では、駆動機構として、カムやラッチ機構を利用した駆動機構150を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、揺動アーム180の左端部に対して前後に進退可能なシリンダを駆動機構として、シリンダを後方に退避させたときに揺動アーム180の左端部の後方への移動が許容され、シリンダを前進させたときに、揺動アーム180の左端部が初期位置で保持されるようにしてもよい。
【0074】
前記実施形態では、手差し給紙機構100に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他のシート搬送装置、例えば給紙トレイ内の用紙を搬送する用紙供給装置や、原稿読取装置における用紙搬送装置などに本発明を適用してもよい。また、画像形成装置としては、カラープリンタ1に限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロ用のプリンタや複写機や複合機などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 手差し給紙機構
110 供給ローラ
140 支持機構
150 駆動機構
200 筐体
221 載置面
300 過積載防止部材
301 規制面
400 連動機構
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の記録シートを積載可能な載置面を有する筐体と、
前記載置面上に積載された記録シートを搬送する供給ローラと、
前記供給ローラを上下に移動可能に支持する支持機構と、
前記載置面上の記録シートを搬送する際に、前記支持機構に作用して前記供給ローラを上方の待機位置から下方に移動させて記録シートに当接させる駆動機構と、
前記供給ローラよりも搬送方向上流側に設けられ、前記載置面から所定距離離れて前記載置面上の記録シートの積載枚数を制限する第1の位置と、前記第1の位置よりも前記載置面から離れた第2の位置とに変位可能な規制面を有する過積載防止部材と、
前記駆動機構または前記支持機構から駆動力を受けて前記過積載防止部材を変位させる連動機構と、を備え、
前記連動機構は、
前記供給ローラが前記待機位置に位置するときに前記規制面を前記第1の位置に配置させ、前記駆動機構の駆動により前記供給ローラが前記待機位置から下方に下がるときに、前記規制面を前記第2の位置に向けて変位させるように構成されていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記過積載防止部材は、前記筐体に回動可能に設けられ、
前記規制面が、前記第1の位置から当該第1の位置よりも搬送方向上流側の第2の位置まで変位可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記支持機構は、
前記供給ローラを回転可能に支持するとともに、前記筐体に上下に揺動可能に支持される支持部材と、
水平面内にて揺動可能に前記筐体に支持され、かつ、一端側が前記支持部材と係合して前記支持部材を揺動させることで前記供給ローラを上下動させる揺動アームと、を有し、
前記駆動機構は、
前記供給ローラの回転軸に平行な軸回りに揺動可能に前記筐体に支持され、前記揺動アームの他端側に係合して前記供給ローラを前記待機位置に規制する規制位置と、前記規制を解除する解除位置との間で変位するストッパ面を一端側に有するストッパ部材と、
前記ストッパ部材の他端側に係合し、前記ストッパ面を前記規制位置と前記解除位置との間で変位させる回転可能な第1カム部と、を有し、
前記連動機構は、
前記搬送方向に平行な軸回りに前記筐体に揺動可能に支持され、かつ、一端側で前記過積載防止部材を支持する連動アームと、
前記供給ローラの回転軸に平行な軸回りに前記筐体に揺動可能に支持され、前記連動アームの他端側に一端側が係合する係合アームと、
前記第1カム部と一体に回転可能であり、前記係合アームの他端側に係合し、前記係合アームおよび前記連動アームを介して前記過積載防止部材の規制面を前記第1の位置と前記第2の位置とに変位させる第2カム部と、を備え、
前記ストッパ面が前記規制位置であるときに前記規制面が前記第1の位置に配置され、前記ストッパ面が前記解除位置に変位するときに前記規制面が前記第2の位置に変位するように、前記第1カム部および前記第2カム部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記過積載防止部材は、前記記録シートの幅方向中央部に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−176844(P2012−176844A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41604(P2011−41604)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】