説明

シート材巻回装置、シート材巻回方法及び耐火二層管継手の製造方法

【課題】耐火二層管継手のような筒状部を有する物品の外周部にシート材を隙間なく巻き付け、固定することができ、作業の効率化を図ることが可能なシート材巻回装置、シート材巻回方法及びこれを用いた耐火二層管継手の製造方法を提供する。
【解決手段】合成樹脂製内管Wの受け口部W2の外周面にシート材Sを巻き付けるシート材巻回装置1において、ロールRから端部が繰り出されたシート材Sを受け口部W2の外周側に周回させる周回機構2と、受け口部W2の外周側に周回されたシート材Sを締め付けるとともに該シート材Sの巻き始め部分と巻き終わり部分とを重合する締付機構3と、シート材Sの重合部分を受け口部W2に向かって押圧しながら加熱して、重合部分と受け口部W2とを熱溶着する加熱押圧機構80とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート材巻回装置、シート材巻回方法及びこれを用いた耐火二層管継手の製造方法に関する。さらに詳しくは筒状部を有する物品の外周面に帯状のシート材を高速で巻回することが可能なシート材巻回装置、シート材巻回方法及びこれを用いた耐火二層管継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂管は、金属管に比べ軽量であり、また耐薬品性、耐衝撃性等にも優れていることから、排水管、換気管等に使用されている。しかし、合成樹脂管は耐火性に劣るため、火災時には延焼するとともに焼失して有毒ガスが発生する危険がある。そのため、合成樹脂管の外周面に繊維含有セメントモルタル層で被覆した耐火二層管が一般に使用されている。
【0003】
この耐火二層管を接続するための上記二層構造を有する継手(耐火二層管継手)においては、セメントモルタル層の割れが発生することがある。この割れの要因のひとつとして合成樹脂管(合成樹脂製内管)とセメントモルタル層の熱膨張係数の差がある。即ち、合成樹脂管はセメントモルタルに比べて熱膨張係数がほぼ一桁大きいため、合成樹脂管の外周面をそのままセメントモルタルで被覆したのでは、排水時等の温度変化により発生する応力及びセメントモルタルの乾燥収縮によって、当該セメントモルタルに亀裂が生じてしまうのである。また、この他、継手と直管とを繋ぐ施工時において継手が直管によって押し広げられることで発生する応力によってもセメントモルタルに亀裂が生じることがある。
【0004】
この亀裂を防止する手段のひとつとして合成樹脂管の外周面に紙等の緩衝材層を設け、その上をセメントモルタル層で被覆することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
この緩衝材層を設けるには、紙等を合成樹脂管の外周面に巻き付けるとともに接着剤で固定する必要があるが、従来この作業は専ら手作業により行われていた。そのため、生産効率が低く、かつ、人件費がかさむという問題があった。
【0005】
ここで、物品の外周面に帯状のシートを高速、かつ、自動で巻き付ける装置としては、はがき、封筒等の被結束物を帯状のテープで自動的に結束するための自動結束装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この自動結束装置においては、ロールから繰り出されたテープを被結束物に巻回するとともに、テープの巻き始め部の外面と巻き終わり部の内面とを重合させ、この重合部分にヒータの加熱押圧機構を押し当てることによってテープの重合部分を熱融着する。これによって、被結束物がループ状のテープによって結束される。なお、テープの重合部分と被結束物との間には受け板が介在されており、該受け板によって、加熱押圧機構の熱による被結束物の焼損を防止している。
【0006】
なお、この自動結束装置においては、上記テープとして紙に薄い樹脂フィルムをラミネートして成形した厚み数十μmのものを用いている。上記樹脂フィルムが加熱押圧機構に融解されることでテープ同士が熱融着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−197626号公報
【特許文献2】特開2005−247373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記合成樹脂管の外周面に緩衝材層を設ける際には、該緩衝材層を外周面に隙間無く密着させるとともに、該緩衝材層が剥離しない程度に外周面に固定する必要がある。
しかしながら、上記特許文献2に記載の自動結束装置においては、テープを単に被結束物に巻き付けるのみの構成のため、該テープを被結束物に固定することはできない。また、テープの重合部分と被結束物の間に受け板が介在されているため、結束時にテープと被結束物との間に隙間が生じてしまう。
したがって、上記自動結束装置を合成樹脂管への緩衝材層の巻き付けに転用することはできず、作業の効率化を図ることができないという問題があった。
【0009】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、耐火二層管継手のような筒状部を有する物品の外周部にシート材を隙間なく巻き付け、固定することができ、作業の効率化を図ることが可能なシート材巻回装置、シート材巻回方法及びこれを用いた耐火二層管継手の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するため、従来の自動結束装置に改良を加えることで筒状部を有する物品の円筒状外側面に緩衝材としてのシート材を高速で巻き付け固定することが可能となり、このシート材巻回装置を用いることで生産効率よく低コストで耐火二層管継手を製造することができることを見出した。即ち、本発明は以下のシート材巻回装置、シート材自動巻回方法及びこれを用いた耐火二層管継手の製造方法に関する。
【0011】
[1] ワークの筒状部の外周面にシート材を巻き付けるシート材巻回装置であって、ロールから端部が繰り出された前記シート材を、前記ワークの筒状部の外周側に周回させる周回機構と、前記筒状部の外周側に周回された前記シート材を前記筒状部の外周面に締め付けるとともに該シート材の巻き始め部分と巻き終わり部分とを重合する締付機構と、前記シート材の重合部分を前記筒状部に向かって押圧しながら加熱して、前記重合部分と前記筒状部とを熱溶着する加熱押圧機構とを備えることを特徴とするシート材巻回装置。
【0012】
[2] 前記加熱押圧機構の押圧に抗して前記ワークを支持するワーク支持部を備えることを特徴とする[1]に記載のシート材巻回装置。
【0013】
[3] 前記シート材が、ポリエステル不織布、ナイロン又はポリプロピレン又はポリエチレンからなる樹脂繊維不織布、ウレタン又はポリプロピレン又はポリスチレンからなる発泡樹脂シートのいずれかであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のシート材巻回装置。
【0014】
[4] 前記ワークが、耐火二層管継手における合成樹脂製内管であって、前記筒状部が、前記合成樹脂製内管の受け口部であることを特徴とする[1]から[3]のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【0015】
[5] 前記加熱押圧機構に、凹凸形状、剣山形状、円筒面形状のいずれかが付与されていることを特徴とする[1]から[4]のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【0016】
[6] 前記加熱押圧機構に、フッ素系樹脂がコーティングされていることを特徴とする[1]から[5]のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【0017】
[7] 前記加熱押圧機構が、前記筒状部の外周面に追従するように揺動自在とされていることを特徴とする[1]から[6]のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【0018】
[8] 前記加熱押圧機構が前記重合部分を押圧する時間を制御するタイマー機構を備えることを特徴とする[1]から[7]のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【0019】
[9] ロール体から端部が繰り出されたシート材を、ワークの筒状部の外周側に周回させた状態とする第1の工程と、周回させた前記シート材を前記筒状部の外周面に締め付けて、該シート材の巻き始め部分と巻き終わり部分とを重合する第2の工程と、前記シート材の重合部分を前記筒状部に押し当てながら加熱して、これら重合部分と筒状部とを熱溶着する第3の工程とを備えることを特徴とするシート材巻回方法。
【0020】
[10] 前記シート材が、ポリエステル不織布、ナイロン又はポリプロピレン又はポリエチレンからなる樹脂繊維不織布、ウレタン又はポリプロピレン又はポリスチレンからなる発泡樹脂シートのいずれかであることを特徴とする[9]に記載のシート材巻回方法。
【0021】
[11] 前記ワークが、耐火二層管継手における合成樹脂製内管であって、前記筒状部が、前記合成樹脂製内管の受け口部であることを特徴とする[9]又は[10]に記載のシート材巻回方法。
【0022】
[12] [11]に記載のシート材巻回方法により、前記耐火二層管継手における合成樹脂製内管の受け口部に前記シート材を巻回する工程を有することを特徴とする耐火二層管継手の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシート材巻回装置及びシート材巻回方法によれば、耐火二層管継手のような筒状部を有するワークの外周部にシート材を隙間なく巻回、固定することができるため作業の効率化を図ることができる。
即ち、従来手作業で行っていた耐火二層管継手の合成樹脂製内管の受け口部への紙の巻き付け及び接着剤による固定作業に代えて、本発明のシート材巻回装置及びシート材巻回方法を用いて行うことにより、生産効率よく低コストで耐火二層管継手を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るシート材巻回装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るシート材巻回装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】合成樹脂製内管の縦断面図である。
【図4】支持機構及び加熱押圧機構の斜視図である。
【図5】支持機構の斜視図である。
【図6】受け口部、ワーク支持部、シート支持部及び加熱押圧機構の位置関係を説明する図である。
【図7】加熱押圧機構の斜視図である。
【図8】加熱押圧機構の側面図である。
【図9】加熱押圧面の形状を説明する図である。
【図10】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である。
【図11】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である。
【図12】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である
【図13】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である
【図14】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である。
【図15】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である。
【図16】図15の一部拡大図である。
【図17】実施形態のシート材巻回装置によるシート材巻回方法の工程図である。
【図18】図17の一部拡大図である。
【図19】合成樹脂製内管の受け口部外周面にシート材を巻き付け固定した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すシート材巻回装置1は、ワークとしての合成樹脂製内管Wの受け口部W2にロールRから繰り出されるシート材Sを巻回させる装置であって、周回機構2及び締付機構3によってシート材Sを受け口部W2に巻き付けるとともに、加熱押圧機構80によりシート材Sと受け口部W2とを熱溶着するものである。
【0026】
シート材巻回装置1によるシート材Sの巻回対象となる合成樹脂製内管Wは、耐火二層管継手を製造する際に用いられる部材であって、一例として例えば硬質塩化ビニール等の合成樹脂から構成されたエルボ管状をなしたものを図3に示した。
即ち、この合成樹脂製内管Wは、互いに直交する方向を向くように屈曲された屈曲管部W1と、該屈曲管部W1の両端にそれぞれ円筒状をなして連続する受け口部W2,W2とを備えた構成とされている。
なお、耐火二層管継手に用いられる部材には図3に示した90度のエルボ管状の他、45度のエルボ管状やY字管状、T字管状等さまざまな形状、サイズのものがある。
【0027】
この合成樹脂製内管Wの受け口部W2外周面に上記シート材Sが緩衝材として巻回され、さらに、該シート材Sを被覆するようにしてセメントモルタル層が形成されることで耐火二層管継手が製造される。本実施形態のシート材巻回装置1は、合成樹脂製内管Wの受け口部W2外周面にシート材を巻回、固定するために使用される。
【0028】
シート材巻回装置1は、図1及び図2に示すように、シート材Sを繰り出すロールRが設置される装置本体10と、一対のガイド部20,21と、送りローラ30と、締付ローラ40と、挟持部50と、反転挟持部60と、シート支持部71及びワーク支持部72を備えた支持機構70と、上記加熱押圧機構80とを備えた概略構成とされている。
なお、上記周回機構2は、送りローラ30と、ガイド部20,21と、反転挟持部60とから構成され、上記締付機構3は、締付ローラ40とシート支持部71とから構成されている。
【0029】
装置本体10は略直方体箱状をなす筐体であって、その上面はテーブル11で形成されている。このテーブル11は、ワークとしての上記合成樹脂製内管Wを載置するためのものであって、該テーブル11における装置本体10の前面10a寄りの箇所には、該前面10aに沿って延びる通過溝(図示省略)が形成されている。この通過溝はシート材Sの巻回作業時に該シート材Sが通過するものである。そして、合成樹脂製内管Wは、その受け口部W2が通過溝上に位置するようにテーブル11上に載置される。
【0030】
なお、以下、上記装置本体10の前面10aに沿った水平方向を左右方向X、該左右方向Xに直交する水平方向(図2における紙面奥行き方向)を前後方向Y、これら左右方向X及び前後方向Yに直交する鉛直方向を上下方向Zと称することとする。
【0031】
装置本体10における左右方向Xの両端面は、それぞれ左側面10b及び右側面10cとされている。また、装置本体10内部における上記左側面10b寄りの位置には、ロールRが、前後方向Yに沿ったロール支持軸10d回りに回転可能に設置されている。このロールRは、シート材Sを巻いて構成したものであって、本実施形態においては、シート材Sとして例えば厚みが0.44mmのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)不織布が用いられている。
【0032】
なお、シート材Sは、上記ポリエステル不織布の他、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂繊維不織布や、ウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の発泡樹脂シートを採用してもよい。
【0033】
ガイド部20,21は、上記テーブル11上における通過溝の両端において該テーブル11から上方へ突出するように設置されており、これらガイド部20,21の互いに対向する面には、下方から上方に向かって湾曲して延びるガイド面20a,21aがそれぞれ形成されている。これらガイド面20a,21aは、シート材Sの走行を案内するものであり、円滑にシート材Sによるループが形成され、かつ、このループ形状が保持されるようにする役割を有している。
【0034】
送りローラ30はテーブル11内部における左右方向X中央よりも僅かにロールR寄りの位置に設けられており、ロールRから繰り出されたシート材Sの送り出しを行なうものである。この送りローラ30は、下側に配置された駆動ローラ30a及び上側に配置された従動ローラ30bから構成されており、これら駆動ローラ30a及び従動ローラ30bによってシート材Sを挟持可能な構成とされている。
【0035】
この送りローラ30における下側に配置された駆動ローラ30aは、図示しない電動モータにより前後方向Yに沿った回転軸回りに回転駆動可能とされており、上側に配置された従動ローラ30bは、前後方向Yに沿って延びる回転軸回りに回動自在とされている。そして、シート材Sがこれら駆動ローラ30aと従動ローラ30bとの間に挟持された状態で、駆動ローラ30aが反時計回りに回転することによりシート材Sの送り出しが行なわれるようになっている。即ち、送りローラ30によって、ロールRから繰り出されたシート材Sが、右側面10c寄りのガイド部20のガイド面20aから左側面10b寄りのガイド部21のガイド面21aへ向けて送り出されて、シート材Sによるループが拡大されるようになっている。
【0036】
なお、この送りローラ30のうち従動ローラ30bは上下方向Zに変位可能とされており、これによって、従動ローラ30bと駆動ローラ30aによるシート材Sの挟持及び開放が可能とされている。
【0037】
締付ローラ40は、上記送りローラ30よりも右側面10c側、即ち、シート材Sの送り出し側に隣接して配されており、上記送りローラ30によって送り出されたシート材Sの引き戻しを行なうものである。
【0038】
締付ローラ40における下側に配置された駆動ローラ40aは、図示しない電動モータにより前後方向Yに沿った回転軸回りに回転駆動可能とされており、上側に配置された従動ローラ40bは、前後方向Yに沿って延びる回転軸回りに回動自在とされている。そして、シート材Sがこれら駆動ローラ40a及び従動ローラ40bとの間に挟持された状態で駆動ローラ40aが時計回りに回転することによりシート材Sの引き戻しが行なわれるようになっている。即ち、締付ローラ40によって、シート材Sを引き戻して、該シート材Sによるループを縮小するようになっている。
【0039】
なお、この締付ローラ40のうち従動ローラ40bは上下方向Zに変位可能とされており、これによって、従動ローラ40bと駆動ローラ40aによるシート材Sの挟持及び開放が可能とされている。
また、上記送りローラ30の従動ローラ30bが下方に変位して該従動ローラ30bと駆動ローラ30aとによりシート材Sを挟持している際には、締付ローラ40はその従動ローラ40bが上方に変位することによりシート材Sを開放状態としている。一方、締付ローラ40の従動ローラ40bが下方に変位して該従動ローラ40bと駆動ローラ40aとによりシート材Sを挟持している際には、送りローラ30はその従動ローラ30bが上方に変位することによりシート材Sを開放状態としている。
これにより、シート材Sは送りローラ30又は締付ローラ40のいずれか一方により挟持された状態となる。
【0040】
挟持部50は、上記締付ローラ40よりも右側面10c側、即ち、シート材Sの送り出し側に配置されており、締付ローラ40から送り出し側に延びるシート材Sを上下から挟持可能な固定側挟持部材51及び移動側挟持部材52とから構成されている。
上方に配置された固定側挟持部材51は装置本体10に固定されており、下方に配置された移動側挟持部材52は上下方向に移動可能な移行機構(図示省略)に連動して昇降されるようになっている。
【0041】
反転挟持部60は、上記挟持部50よりも右側面10c側、即ち、挟持部50の直下流に配置されており、シート材Sを挟持して前後方向Y、上下方向Zに移動可能とされるとともに前後方向Yに沿った軸線回りに回転可能とされた部材である。
即ち、この反転挟持部60は、固定側挟持部材51の高さからテーブル11に近接した高さまでの距離を上下に移動できるとともに、前後方向Yに進退することで通過溝側への進出が可能とされている。また、反転挟持部60は、上述した上下間の距離を移動する際に、挟持部材61,62の位置を上下で転換しながら一回転するようになっている。
【0042】
また、反転挟持部60は、一対の挟持部材61,62により構成されており、一対の挟持部材61,62は、互いに重ね合わされた一対の鋼製の板ばねで構成され、上記の前後方向Yの進退移動による通過溝への進出によってシート材Sを挟持するようになっている。
このように反転挟持部60がシート材Sを挟持した状態で上記一回転することに伴って、シート材Sの端部にループが形成される。
【0043】
支持機構70は、シート材Sを合成樹脂製内管Wの受け口部W2外周面との間で挟持して止定するシート支持部71と、合成樹脂製内管Wの受け口部W2内周面に当接して該受け口部W2を下方からの押圧に対して支持するワーク支持部72とを備えており、図4に示すように、詳細は後述する加熱押圧機構80と連動する構成とされている。
【0044】
支持機構70は、詳しくは図5に示すように略上下方向にわたって延びる第1揺動アーム73を備えており、該第1揺動アーム73はその延在方向の略中央部が、左右方向Xに沿って延びる第1支軸73aに回動可能に支持されている。これによって第1揺動アーム73は前後方向Y及び上下方向Zを含む平面に沿って、即ち、Y−Z平面に沿って回転可能とされる。
【0045】
また、第1揺動アーム73の上端側は、一端が装置本体10に固定されたコイルスプリング75の他端が接続されており、これによって第1揺動アーム73はその上端が前後方向Yの前方側、即ち、進出方向に向かって付勢されている。
さらに、第1揺動アーム73の下端側には、左右方向X右側に向かって突出する円筒状をなすカムフォロワ74が設けられている。このカムフォロワ74の外周面は、左右方向Yに沿って延びる第1駆動軸77に固定された第1カム78の外周面に当接している。
【0046】
上記第1駆動軸77は、その一端側(左右方向X左側)に配された駆動モータ76によってその軸線回りに回転可能とされている。また、第1カム78は、Y−Z平面に沿って配置される略扇形板状をなしており、該略扇形の頂角付近に上記第1駆動軸77が貫通固定されている。したがって、第1駆動軸77の回転駆動により第1カム78は偏心状態で回転することになり、該第1カム78の外周面に当接するカムフォロワ74が第1カム78の外周面形状に従って転動することになる。
【0047】
このようにして第1揺動アーム73の上端側がコイルスプリング75によって進出方向に付勢されるとともに、該第1揺動アーム73の下端側が第1カム78に従って転動することにより、第1揺動アーム73が第1支軸73a回りにY−Z平面に沿って左右方向Yに揺動することになる。
【0048】
また、第1揺動アーム73の上端側には、進出方向(前後方向Y前方側)に向かって延在するバー部材79が回動自在に取り付けられており、このバー部材79の左右方向X左側には、装置本体10に固定されたガイド部材(図示省略)により前後方向Yに進退可能に支持されたワーク支持部72が設けられている。
【0049】
このワーク支持部72は、前後方向Yに沿って延びており、その先端部は他の部分よりも一段高く形成され、板面が上下方向を向くように配置されている。そして、ワーク支持部72はバー部材79に対して前後方向Yに沿って伸縮可能なコイルスプリング75aを介して連結されており、これによって、第1揺動アーム73の揺動に伴ってバー部材79が前後方向Yに移動した際には、コイルスプリング75aを介してワーク支持部72も前後方向Yに移動することになる。
【0050】
なお、ワーク支持部72の前方側には、該ワーク支持部72の所定位置以上の前方側への移動を規制するストッパー部(図示省略)が設けられている。これによって、バー部材79が進出する際には、ワーク支持部72は所定位置まではバー部材79ととも前進出するが該所定位置においてストッパー部により移動が停止され、それ以降はバー部材79のみが進出することになる。
【0051】
さらに、上記バー部材79及びワーク支持部72の左右方向X左側には、Y−Z平面に沿ったL字状をなすシート支持部71が設けられている。このシート支持部71は、L字上の一方の辺が進出方向に向かって延在するとともに他方の辺が下方に向かって延在している。そして、他方の辺における下端部が、左右方向Xに沿った回転軸71aを介してバー部材79の先端と回動可能に連結されており、L字状の角部が左右方向Xに沿った回転軸72aを介してワーク支持部72と回動可能に連結されている。
【0052】
シート支持部71が上記のようにバー部材79及びワーク支持部72に連結されていることにより、バー部材79が進出する際には、シート支持部71もワーク支持部72と同様に進出する。そして、ワーク支持部72の進出がストッパー部により停止されてバー部材79のみが進出する状態になると、シート支持部71は回転軸72aを中心として回転する。即ち、ワーク支持部72との連結箇所である回転軸72aの位置が停止された状態でバー部材79より回転軸71aを介して進出方向に押されることにより、シート支持部71は回転軸72a回りのトルクを受けて回動するのである。これにより、シート支持部71のL字状の一辺をなす部分(以下、シート支持部71の先端部と称する)が上方へと向かって回動する。
【0053】
このような構成の支持機構70は、第1揺動アーム73の揺動によりシート支持部71及びワーク支持部72が前後方向Yに沿って進退移動する。そして、これらシート支持部71及びワーク支持部72が進出した状態においては、テーブル11上に載置された合成樹脂製内管Wとの位置関係は、図6に示すようになる。
【0054】
即ち、シート支持部71は合成樹脂製内管Wの受け口部W2の外周側に位置しており、該シート支持部71と受け口部W2との間にシート材Sが存在する際にシート支持部71の先端部が上方に回動することで、該シート支持部71がシート材Sを受け口部W2との間で挟み込む。これによって、受け口部W2の外周面にシート材Sを支持することができるようになっている。
また、ワーク支持部72は合成樹脂製内管Wの受け口部W2の内周側に位置しており、ワーク支持部72の下面が該受け口部W2の内周面に対して上方から当接する。これにより、後述する加熱押圧機構80が受け口部W2を下方から上方に向かって押圧した際の押圧力に抗して受け口部W2を支持することができるようになっている。
【0055】
加熱押圧機構80は、シート材S同士を熱溶着すると同時にシート材Sと合成樹脂製内管Wの受け口部W2の外周面とを熱溶着するための部材であって、図1及び図2に示すようにワーク支持部72の下方に上下動自在に配設されている。
【0056】
この加熱押圧機構80は、詳しくは図7及び図8に示すように、略立方体形状をなす加熱押圧機構本体81を有している。この加熱押圧機構本体81にはヒータが内蔵されており、これによって該加熱押圧機構本体81の上面である加熱押圧面82が高温に加熱されるようになっている。また、加熱押圧機構本体81の片面、即ち、左右方向X左側の側面には、前後方向Yに沿って延びる刃を備えたカッタ83が固定されている。
なお、上記ヒータによる加熱押圧面82の加熱温度は、例えば270℃〜300℃の範囲に設定されており、シート材S及び受け口部W2を溶融可能な温度とされている。
【0057】
上記加熱押圧面82の形状としては、図9(a)〜(c)に示すような種々の形状が挙げられる。
即ち、図9(a)に示すように、上方向に突出し先端が平坦状をなす凸部が複数並設されることにより、加熱押圧面82に凹凸形状が付与されていてもよい。
また、図9(b)に示すように、加熱押圧面82が、円弧状を前後方向Yに沿って延在させた円筒面形状をなしていてもよい。
さらに、図9(c)に示すように、上方向に突出し先端が尖った凸部が複数並設されることにより、加熱押圧面82に剣山形状が付与されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、上記加熱押圧面82の表面に、フッ素系樹脂のコーティングが施されている。
【0059】
この加熱押圧機構本体81は、受け口部W2の外周面に沿って形成されたシート材Sの重合部分Saを、加熱押圧面82によって上方向に押圧するとともに加熱する。これによって、重合部分Saを熱溶着するとともに該重合部分Saと受け口部W2の外周面とを熱溶着させる。そして、加熱押圧機構80による押圧を強められた際に、カッタ83によってシート材Sを切断する構成とされている。
【0060】
次に、加熱押圧機構80における加熱押圧機構本体81を上下動させる機構について説明する。
この加熱押圧機構80には、略水平方向に延在するように配される第2揺動アーム84が設けられている。この第2揺動アーム84の一端側は、装置本体10に固定され前後方向に沿った第2支軸84aに回動可能に支持されており、これによって第2揺動アーム84は、左右方向Xと上下方向Zとを含む平面、即ちX−Z平面上に沿って回動可能とされる。
【0061】
上記第2揺動アーム84の延在方向中央部よりもわずかに第2支軸84a側の位置には、前後方向Y前方側に円筒状をなして突出するようにカムフォロワ85が設けられている。このカムフォロワ85の外周面は、前後方向Xに沿って延びる第2駆動軸86に固定された第2カム87の外周面に当接している。
【0062】
上記第2カム87は、X−Z平面に沿って配置される略扇形板状をなしており、該略扇形の頂角付近に上記第2駆動軸86が貫通固定されている。したがって、第2駆動軸86の回転駆動に伴って第2カム87は偏心状態で回転することになり、該第2カム87の外周面に上方から当接するカムフォロワが第2カム87の外周面形状に従って転動することになる。
【0063】
このようにして、第2揺動アーム84のカムフォロワ85が第2カム87に従って転動することにより、第2揺動アーム84の先端側が、第2支軸84a回りにX−Z平面に沿って上下方向に揺動する。
【0064】
上下方向に揺動可能とされた第2揺動アーム84の先端には、上方向に向かって延びる立設バー88が回動可能に取り付けられている。この立設バー88は、上下方向Zに沿った配置状態を維持する構成とされており、第2揺動アーム84の揺動によって上下移動することができるようになっている。また、立設バー88の左右方向X右側を向く面にはスプリング載置板89が突設され、さらに、該スプリング載置板89の上方に、加熱押圧機構本体81を備えたスライダ90が立設バー88に対して上下方向Zにスライド可能に設けられている。このスライダ90の下面とスプリング載置板89との間には、上下方向Zに沿って延びるコイルスプリング91が設けられており、即ち、スライダ90はコイルスプリング91を介して立設バー88に支持された状態とされている。
【0065】
なお、上記加熱押圧機構本体81とスライダ90とは、図8に示すように、左右方向Xに沿った回転軸81a及び前後方向Yに沿った回転軸81bを介してこれら回転軸81a,81b回りに回動可能に連結されている。これにより、加熱押圧面82が任意の方向を向くことができるようになっている。
なお、加熱押圧機構本体81は、少なくとも左右方向X及び前後方向Yを含む平面に沿った少なくとも一軸回りに回動可能とされていればよく、また、この他、例えばナックル継手を介して連結されることで加熱押圧面82が任意の方向を向くことができるように構成されていればよい。
【0066】
そして、加熱押圧機構本体81が上死点において上記重合部分Sa及び受け口部W2の外周面をコイルスプリング91を介して弾性的に押圧する。これにより、コイルスプリング91のバネ定数に応じた押圧力が重合部分Sa及び受け口部W2に付与される。なお、このコイルスプリング91のバネ定数は50〜300N/mmの範囲に設定さえていることが好ましい。
【0067】
ここで、第1駆動軸77と第2駆動軸86とはベベルギア77a,86aによって連結されており、これらベベルギア77a,86aを介して第1駆動軸77の駆動力が第2駆動軸86に伝達されることで第2駆動軸86が駆動するように構成されている。これによって、支持機構70のシート支持部71及びワーク支持部72が進出してから所定時間経過した後に加熱押圧機構本体81が上方向に移動するように、支持機構70と加熱押圧機構80とが連動する構成とされている。
【0068】
なお、本実施形態においては、上記第2駆動軸86に、上記第2カム87の別にセンサカム92が設けられている。該センサカム92は第2カム87と同様の構成をなしており、第2駆動軸86に偏心状態で取り付けられている。
また、センサカム92の近傍には、近接センサ93が設けられている。この近接センサ93は、第2駆動軸86の駆動により加熱押圧機構本体81が上死点に到達した際にセンサカム92を検出するように構成されている。
そして、上記センサカム92によるセンサカム92の検出信号は、図示しない制御部に送出される。この制御部においては検出信号に基づいて、駆動モータ76を一定時間停止させる。
【0069】
これにより、加熱押圧機構本体81が上死点に到達して加熱押圧面82が重合部分Sa及び受け口部W2を押圧する時間を任意に定めることができる。即ち、本実施形態においては、上記センサカム92、近接センサ93及び図示しない制御部によって、加熱押圧面82による押圧時間を制御するタイマー機構が構成されている。本実施形態においては、タイマ機構によって加熱押圧面82が例えば0.1〜5秒の時間だけ重合部分Sa及び受け口部W2を押圧する構成とされていることが好ましい。
【0070】
次いで、図10〜図19を参照して、実施形態に係るシート材巻回装置1によるシート材巻回方法の作業工程を順次説明する。
まず、図10に示すように、シート材Sは、ロールRから送りローラ30(駆動ローラ30a、従動ローラ30b)及び締付ローラ40(駆動ローラ40a、従動ローラ40b)の間に挟まれた状態(但し、チャックはされていない)、かつ、挟持部50における互いに離反された固定側挟持部材51及び移動側挟持部材52の間を通過した状態とされ、このようなシート材Sの先端が、下方位置に移動している反転挟持部60に挟持されている。
【0071】
そして、シート材Sを送る場合送りローラ30bが上下方向Z下側に動いてローラ30aとチャックすると同時に、締付ローラ40bが上下方向Z上側に動いてローラ40aとのチャックが開放された状態となる。この状態から、反転挟持部60が略一回転しながらテーブル11より僅かに下方に後退した位置(以下、上部位置と称する)まで移動し、その結果、図11に示すように、小ループL1が形成される。
【0072】
次いで、送りローラ30が正回転し、所定量のシート材Sがガイド部20のガイド面20aからガイド部21のガイド面21aに沿って送り込まれてループが膨らまされ、図12に示すように、大ループL2に形成される。
これにより、送りローラ30と、ガイド部20,21と、反転挟持部60とからなる周回機構2によるシート材Sの周回工程が終了する。
【0073】
このように大ループL2が形成された後、第1揺動アーム73の揺動によりバー部材79は、ワーク支持部72がストッパー部に停止される位置まで進出する。この状態においては、シート支持部71の先端部は上方へ回動しておらず、該シート支持部71の上方にシート材Sの端部が位置している(図13参照)。
そして、受け口部W2の内周側にワーク支持部72を入り込ませるようにしてテーブル11上に合成樹脂製内管Wを載置する。これにより、シート支持部71と受け口部W2の外周面との間にシート材Sが侵入した状態となる。また、ワーク支持部72の下面が受け口部W2の内周面に上方から当接する。
【0074】
次に、第1揺動アーム73の揺動によりさらにバー部材79が進出すると、シート支持部71の先端部が上方に回動して、該シート支持部71と受け口部W2の外周面との間でシート材Sの端部が挟持される(図14参照)。即ち、シート支持部71の動作によってシート材Sの端部が受け口部W2の外周面上に下方から支持されるのである。
【0075】
その直後に、締付ローラ40bが上下方向Z下側に動いてローラ40aとチャックすると同時に、送りローラ30bは上下方向Z上側に動いてローラ30aとのチャックを開放し、図15に示すように、反転挟持部60は後退するとともに、締付ローラ40がシート材Sを挟持するとともに正回転する。これによりループが絞り込まれて、受け口部W2の外径に合わせた必要量だけの締付け作業が行われる。これにより、詳しくは図16に示すように、受け口部W2の外周面全体にシート材Sが密着するようにして巻き付けられる。この際、シート材Sの巻き始め部分と巻き終わり部分とが重なり合い、重合部分Saが形成される。なお、ここで言う重合部分Saとは、シート材Sの巻き始め部分と巻き終わり部分とが互いに接触して重なり合って形成された状態のみならず、これら巻き始め部分と巻き終わり部分と受け口部W2の径方向に互いに離間して位置している状態も含んでいる。
以上により、締付ローラ40と、シート支持部71とからなる締付機構3による締付工程が終了する。
【0076】
上記のような締付け作業が完了すると、図17に示すように、移動側挟持部材52が押し上げられ、該移動側挟持部材52と固定側挟持部材51との間でシート材Sを挟持するとともに、加熱押圧機構80が作動し、加熱押圧機構本体81が上方に向かって移動する。この際、図18に示すように、加熱押圧面82が、シート材Sの巻き始め部分と巻き終わり部分が重なり合って形成される重合部分Saを下方から上方に所定時間にわたって押圧する。これにより、ヒータの加熱にて重合部分Saが熱溶着されるとともに、該ヒータの熱が重合部分Saを介して受け口部W2まで伝達され、重合部分Saと受け口部W2の外周面とが一体に熱溶着される。そして、さらなる加熱押圧面82の押圧により、カッタ83が重合部分Saを切断する。
【0077】
次いで加熱押圧機構80が下降して、重合部分Saと受け口部W2との接着部分から離れ、さらに、移動側挟持部材52が固定側挟持部材51から離れることにより、巻回作業が完了して次の巻回作業の準備状態、即ち、図10に示す状態となる。
【0078】
以上のようにして、本実施形態のシート材巻回装置1及びシート材巻回方法により、図19に示すように、合成樹脂製内管Wの受け口部W2の外周面にシート材Sを隙間なく密着させることができ、さらに、重合部分Saと合成樹脂製内管Wの外周面とを熱溶着させて一体化させることで、シート材Sを受け口部W2に確実に固定することができる。
【0079】
ここで、合成樹脂製内管Wの外周面にシート材Sを設ける際には、該シート材Sを外周面に隙間無く密着させるとともに、シート材Sが剥離しない程度に外周面に固定する必要がある。
【0080】
この点、以上説明した本実施形態のシート材巻回装置1によれば、周回機構2と締付機構3とによってシート材Sを受け口部W2外周面に確実に高速で巻き付けることができる。
また、加熱押圧機構80の加熱押圧面82がシート材Sの重合部分Saを押圧する際に、該重合部分Saと受け口部W2との間に介在される部材がないため、加熱押圧面82による熱が受け口部W2にも伝達され、重合部分Saと受け口部W2とを熱溶着して一体化させることができる。これによって、シート材Sを受け口部W2の外周面に確実に固定することが可能となる。
【0081】
ここで、シート材Sとして、例えば従来の自動結束装置で用いられているような薄い樹脂フィルムを紙にラミネートして成形したものを本実施形態で使用する樹脂繊維不織布や発泡樹脂シートの代わりに採用した場合、樹脂分が少ないため溶着が不十分となり易い。また、樹脂フィルムも紙も密な材質であるため緩衝材としての機能を適切に発揮できない。
これに対し、本実施形態においては、シート材Sとして、ポリエステル不織布や、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンのいずれかからなる樹脂繊維不織布や、ウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレンのいずれかからなる発泡樹脂シートを採用しており、これらの厚みが例えば0.44mm程度とされているため、シート材Sの緩衝材としての機能を適切に発揮することが可能となる。
【0082】
また、ワーク支持部72が受け口部W2の内周面に上方から当接しているため、加熱押圧機構80の加熱押圧面82の押圧力が受け口部W2に及んだ場合であっても、受け口部W2を支持固定することができる。したがって、加熱押圧機構80の押圧力を確実に受けることができるため、受け口部W2とシート材Sの重合部分Saとの熱溶着をより確実に行なうことが可能となる。特に、本実施形態においては厚みが例えば0.44mm程度のシート材Sを使用しているが、上記加熱押圧機構80を採用することでこのような比較的厚みの大きいシート材Sであっても確実に熱溶着することができる。
【0083】
さらに、本実施形態においては、加熱押圧機構80の加熱押圧面82に、凹凸形状、剣山形状、円筒面形状のいずれかが付与されているため、加熱押圧面82と重合部分Sa及び受け口部W2との接触面積を小さくすることができる。これにより、加熱押圧面82の押圧による面圧が大きくなるため、受け口部W2とシート材Sの重合部分Saとの熱溶着をより確実に行なうことができる。また、シート材Sに未溶融部分を残すことでシート材Sの破断を防止することができる。
なお、特に、加熱押圧面82に凹凸形状又は剣山形状が付与されている場合には、シート材Sを溶融させながら受け口部W2に食い込ませることができる。よって、重合部分Saと受け口部W2との熱溶着をより強固に行なうことができる。
【0084】
さらにまた、加熱押圧機構80の加熱押圧面82の表面にフッ素系樹脂がコーティングされているため、重合部分Saと受け口部W2とを熱溶着させた後に、容易に加熱押圧面82を重合部分Saから剥離させることができる。
【0085】
さらに、加熱押圧機構本体81がスライダ90に対して回転軸81a,81b回りに回動可能に連結されているため、加熱押圧機構本体81は、X−Z平面及びY−X平面に沿って揺動可能となる。即ち、加熱押圧面82が任意の方向を向くことが可能な首振り機構が備えられているため、合成樹脂製内管Wの載置した際に該合成樹脂製内管Wに傾きが生じた場合であっても、合成樹脂製内管Wの受け口部W2に加熱押圧面82が当接する際に加熱押圧機構本体81は受け口部W2の形状に追従するように揺動する。これにより、加熱押圧面82が受け口部W2に対して片当たりするのを防止することができ、加熱押圧面82による押圧力を均等に与えることが可能となる。
【0086】
さらにまた、本実施形態においては、センサカム92、近接センサ93及び図示しない制御部とによって加熱押圧機構80による重合部分Sa及び受け口部W2の押圧時間を任意に定めるタイマ機構が設けられているため、熱溶着に必要な押圧時間を定めることができ、安定した熱溶融状態を作り出すことが可能となる。したがって、個々の合成樹脂製内管Wにおけるシート材Sの固定のばらつきを防止することができる。
【0087】
そして、このようなシート材巻回装置1及びシート材巻回方法によりシート材Sが巻き付け固定された合成樹脂製内管Wを用いて耐火二層管継手を製造することにより、セメントモルタル層の割れの発生を防止することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、本実施形態においては、シート材巻回装置1のワークとしての合成樹脂製内管Wを用い、この合成樹脂製内管Wの受け口部W2に、ポリエステル不織布等からなるシート材Sを巻回する場合について説明したが、これに限定されることはなく、筒状部分を備えたものであれば他の物品でもワークとして用いることができ、また、他の材料からなるシート材Sを用いる場合でも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 シート材巻回装置
2 周回機構
3 締付機構
10 装置本体
20 ガイド部
21 ガイド部
30 送りローラ
40 締付ローラ
50 挟持部
60 反転挟持部
70 支持機構
71 シート支持部
72 ワーク支持部
80 加熱押圧機構
81 加熱押圧機構本体
82 加熱押圧面
83 カッタ
92 センサカム
93 近接センサ
R ロール
S シート材
W 合成樹脂製内管
W2 受け口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの筒状部の外周面にシート材を巻き付けるシート材巻回装置であって、
ロールから端部が繰り出された前記シート材を、前記ワークの筒状部の外周側に周回させる周回機構と、
前記筒状部の外周側に周回された前記シート材を前記筒状部の外周面に締め付けるとともに該シート材の巻き始め部分と巻き終わり部分とを重合する締付機構と、
前記シート材の重合部分を前記筒状部に向かって押圧しながら加熱して、前記重合部分と前記筒状部とを熱溶着する加熱押圧機構とを備えることを特徴とするシート材巻回装置。
【請求項2】
前記加熱押圧機構の押圧に抗して前記ワークを支持するワーク支持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート材巻回装置。
【請求項3】
前記シート材が、
ポリエステル不織布、
ナイロン又はポリプロピレン又はポリエチレンからなる樹脂繊維不織布、
ウレタン又はポリプロピレン又はポリスチレンからなる発泡樹脂シートのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材巻回装置。
【請求項4】
前記ワークが、耐火二層管継手における合成樹脂製内管であって、
前記筒状部が、前記合成樹脂製内管の受け口部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【請求項5】
前記加熱押圧機構に、凹凸形状、剣山形状、円筒面形状のいずれかが付与されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【請求項6】
前記加熱押圧機構に、フッ素系樹脂がコーティングされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【請求項7】
前記加熱押圧機構が、前記筒状部の外周面に追従するように揺動自在とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【請求項8】
前記加熱押圧機構が前記重合部分を押圧する時間を制御するタイマー機構を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のシート材巻回装置。
【請求項9】
ロール体から端部が繰り出されたシート材を、ワークの筒状部の外周側に周回させた状態とする第1の工程と、
周回させた前記シート材を前記筒状部の外周面に締め付けて、該シート材の巻き始め部分と巻き終わり部分とを重合する第2の工程と、
前記シート材の重合部分を前記筒状部に押し当てながら加熱して、これら重合部分と筒状部とを熱溶着する第3の工程とを備えることを特徴とするシート材巻回方法。
【請求項10】
前記シート材が、
ポリエステル不織布、
ナイロン又はポリプロピレン又はポリエチレンからなる樹脂繊維不織布、
ウレタン又はポリプロピレン又はポリスチレンからなる発泡樹脂シートのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のシート材巻回方法。
【請求項11】
前記ワークが、耐火二層管継手における合成樹脂製内管であって、
前記筒状部が、前記合成樹脂製内管の受け口部であることを特徴とする請求項9又は10に記載のシート材巻回方法。
【請求項12】
請求項11に記載のシート材巻回方法により、前記耐火二層管継手における合成樹脂製内管の受け口部に前記シート材を巻回する工程を有することを特徴とする耐火二層管継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−57235(P2011−57235A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206071(P2009−206071)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000187194)昭和電工建材株式会社 (36)
【Fターム(参考)】