説明

シート構造

【課題】シートベルトが設けられているシート構造においてシートベルトを案内するベルトガイドを設けることに伴う部品点数の増加を抑えることができるシート構造の提供。
【解決手段】シートバックを有すシート構造であって、シートバック1の骨組みをなすシートバックフレーム10と、シートバックフレーム10の車両上方から車両下方に向かってシートバックフレームに架設されたサブフレーム16と、シートバック1に設けられ、シートベルトWを巻き取るリトラクタ12と、を備え、サブフレーム16の上端がシートベルトWをガイドするベルトガイド部17とされているシート構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート構造にかかり、特に、シートベルトが設けられているシート構造においてシートベルトを案内するベルトガイドを有するシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員を拘束するためのシートベルトと、このシートベルトが巻き取られるシートベルトリトラクタとを設けたリアシートの構造として、リアシートのシートバックの枠状フレームにおける上下の横フレーム間に縦フレームを架設し、この縦フレームの上端部と上側横フレームとの交差部の車両後方から見て左下側に前後のブラケットを介してリトラクタを前記縦フレームと前記上側横フレームとに亘り掛け渡した状態で取り付けた構造が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−129416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記リアシートは、上側横フレームの上面にベルトガイド取付け部材が溶接され、このベルトガイド取付け部材にベルトガイドが取り付けられるという構成とされている。したがって、部品点数が増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、シートベルトが設けられているシート構造においてシートベルトを案内するベルトガイドを設けることに伴う部品点数の増加を抑えることができるシート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、シートバックを有するシート構造であって、前記シートバックの骨組みをなすシートバックフレームと、前記シートバックフレームの車両上方から車両下方に向かって前記シートバックフレームに架設された補強部材と、前記シートバックに設けられ、シートベルトを巻き取るリトラクタと、を備え、前記補強部材の上端が前記リトラクタから巻き出されたシートベルトをガイドするベルトガイド部とされているシート構造である。
【0007】
前記シート構造においては、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトは、前記補強部材の上端に設けられたベルトガイド部を通ってシート前方に向かって案内される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記補強部材の上端が、前記シートバックフレームの上縁部から上方に突出している請求項1に記載のシート構造である。
【0009】
前記シート構造においては、シートベルトは、前記シートバックフレームの上縁部よりも上方に突出したベルトガイド部によって案内される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記シートバックフレームの後ろ側にはバックパネルが設けられ、前記リトラクタは前記バックパネルの表側面に設けられ、前記バックパネルには、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトを前記バックパネルの裏側に取り回すための開口部が形成されている請求項2に記載のシート構造である。
【0011】
前記シート構造においては、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトは、前記バックパネルの開口部からバックパネルの裏面に至り、前記補強部材の上端に設けられたベルトガイド部を通ってシート前方に案内される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記補強部材は車両後方に向かって開口するハット型の開断面とされているとともに、前記バックパネルとともに閉断面を形成し、前記補強部材におけるベルトガイド部とされた部分は開断面とされている請求項3に記載のシート構造である。
【0013】
前記シート構造においては、前記補強部材は、車両後方に向かって、換言すれば前記バックパネルに向かって開口するハット型の開断面とされているから、前記バックパネルとともに閉断面を形成する。したがって、前記補強部材と前記バックパネルとが閉断面を形成しないものと比較して断面係数が高くなる。一方、前記補強部材における前記バックパネルよりも上方の部分は、車両後方に向かって開口する開断面のままであるから、前記補強部材の上端に巻き掛けられたシートベルトは、前記補強部材における車両側方に沿った壁面によって所定経路を通過するように案内される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記ベルトガイド部の上縁にはフランジ部が設けられ、このフランジ部とシートベルトとが摺接可能とされている請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート構造である。
【0015】
前記シート構造においては、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトは、前記ベルトガイド部におけるフランジ部上を摺動してシート前方に向かって案内される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記シートバックフレームは矩形枠状とされており、前記補強部材はシートバックフレームに対して斜めに架設されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート構造である。
【0017】
前記シート構造においては、前記補強部材は、シートバックフレームの隣り合う2つの部材に亘って架設されているから、シートベルトからベルトガイド部材に加わった荷重は、前記補強部材を介して、前記補強部材が架設された前記隣り合う2つの部材に伝達される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、シートベルトが設けられているシート構造においてベルトガイドを設けることに伴う部品点数の増加を抑えることができるシート構造が提供される。
【0019】
請求項2の発明によれば、ベルトガイド部はシートバックフレームの上縁部よりも上方に設けられているから、シートバックフレームの上縁部を摺動することによるシートベルトの傷つきが防止される。また、シートベルトからの荷重が補強部材に直接に入力されるから、補強部材を介するシートベルトからの荷重のシートバックフレームへの伝達が特に効率的に行われるシート構造が提供される。
【0020】
請求項3の発明によれば、シートベルトはバックパネルの開口部を通ってベルトガイド部に案内されるから、シートバルトが装着時の荷重によって前記ベルトガイド部に対して車両幅方向にずれるのを抑止できるシート構造が提供される。
【0021】
請求項4の発明によれば、補強部材はバックパネルとともに閉断面を構成し、断面係数を高く取れる故にシートベルトからの荷重による断面崩れの発生を効果的に抑止できるとともに、前記補強部材の上端に巻き掛けられたシートベルトが前記補強部材における車両側方に沿った壁面によって所定経路を通過するように案内されるために、シートベルトの車両幅方向に沿った位置ずれを効果的に抑止できるシート構造が提供される。
【0022】
請求項5の発明によれば、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトは、前記ベルトガイド部におけるフランジ部上を摺動してシート前方に向かって案内されるから、シートベルトの摺動が特に円滑なシート構造が提供される。
【0023】
請求項6の発明によれば、シートベルトからベルトガイド部材を介してシートバックフレームに加わった荷重によってシートバックフレームが歪むことが効果的に抑止されるシート構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、実施形態1に係るリアシートにおけるベルトガイド部およびその近傍を車両左方斜め上方から見た構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るリアシートを車両前方から見た構成を示す正面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るリアシートを図1における平面X−Xに沿って切断した断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.実施形態1
以下、本発明のシート構造を有するシートバックの一例について図面を参照して説明する。図1以下において、矢印FR、RR、UP、DN、L、およびRは、それぞれ車両前方、車両後方、車両上方、車両下方、乗員から見て車両左側、および乗員から見て車両右側を示す。
【0026】
実施形態1に係るシートバック1は、リアシートのシートバックであって、図1〜図3に示すように、シートバックの骨組みをなすシートバックフレーム10と、シートバックフレーム10の車両後方側に設けられたバックパネル11と、バックパネル11の車両前方側の面に固定されたリトラクタ12と、リトラクタ12から巻き出されるシートベルトWと、を備える。
【0027】
シートバックフレーム10は、全体として矩形状のフレームであり、車両左右方向、言い換えれば車両幅方向に沿って延在するとともにシートバックフレーム10の上縁部を構成する部材であるアッパフレーム13と、シートバックフレーム10の下縁部を構成する水平な部材であるロアフレーム14と、車両右側および車両左側の縁部を形成する垂直な部材である一対のサイドフレーム15と、アッパフレーム13から車両右側のサイドフレーム15にかけて斜めに架設された補強部材の一例としてのサブフレーム16と、を有する。バックパネル11は、アッパフレーム13、ロアフレーム14、サイドフレーム15、およびサブフレーム16に対して車両後方側に固定されている。
【0028】
アッパフレーム13、ロアフレーム14、サイドフレーム15、サブフレーム16は、いずれも車両後方に向かって開口したハット型の開断面形状とされているとともに、バックパネル11とともに閉断面を形成する。また、バックパネル11は、バックパネル本体部と、バックパネル本体部の上部に設けられ、車両後方に開口を有する断面略コの字型に屈曲された補強部11Aと、を有している。
【0029】
図1〜図3に示すように、アッパフレーム13の車両上方の面と車両下方の面とには切欠き部が設けられ、アブフレーム16はこの切欠き部に挿通されている。言い換えれば、サブフレーム16の上部は、アッパフレーム13より上方に位置している。また、バックパネル11の補強部11Aはアッパフレーム13の上方に位置している。サブフレーム16は、この補強部11Aを貫通して上方に突出しており、サブフレーム16においてアッパフレーム13よりも上方に突出している部分が、シートベルトWを車両後方から車両前方に案内可能に形成された開断面形状のベルトガイド部17とされている。そして、補強部11Aとサブフレーム16との交差部分に形成されるバックパネル11の本体部上端が、シートベルトWをシートベルトガイド部17に導入するベルト入口部11Bとされている。
【0030】
図1〜図3に示すように、ベルトガイド部17の上端部は、ベルト入口部11Bよりも車両上方に向かって延在するフランジ部17Aとされ、フランジ部17Aの上縁は外側に向かって車両下方に円筒状にカーリングされている。バックパネル11におけるベルト入口部11Bが形成された部分は、図3において符号17Bで示すように車両前下方に向かってカーリングされている。
【0031】
バックパネル11におけるベルト入口部11Bとリトラクタ12との間には、リトラクタ12から巻き出されたシートベルトWをバックパネル11の車両後方側に取り回すための開口部としてのスリット18が形成されている。
【0032】
以下、シートバック1の作用について説明する。
【0033】
シートバック1において、リトラクタ12から巻き出されたシートベルトWは、スリット18を通ってバックパネル11の車両後方側に案内され、ついで、ベルトガイド部17によってシートバック1の車両前方側に案内される。
【0034】
したがって、たとえば衝突時などにシートベルトWに作用する加重は、先ずベルトガイド部17に作用するが、サブフレーム16は、アッパフレーム13と車両右側のサイドフレームとの間に斜めに架設されているとともに、サブフレーム16の上端がベルトガイド部17とされているから、前記衝撃は、サブフレーム16、アッパフレーム13、および車両右側のサイドフレーム15を介してシートバックフレーム10全体に伝達される。
【0035】
また、アッパフレーム13とサブフレーム16と車両右側のサイドフレームとは三角形を形成するから、シートベルトWに作用する荷重によってシートバックフレーム10が歪むことが効果的に抑止される。
【0036】
加えて、ベルトガイド部17を構成するための部材は特に必要ないから、サブフレーム16とは別個にベルトガイド部材を設ける場合とは異なり、ベルトガイド部17を設けることによる部品点数の増加がない。
【0037】
更に、ベルトガイド部17の上端部はフランジ部17Aとされ、更にフランジ部17Aの上縁が外側に向かって車両下方に円筒状にカーリングされているから、前記部分を摺動することによるシートベルトWの磨耗が効果的に抑止される。
【0038】
更に加えて、衝突時においては、シートベルトWには、車両左方向への荷重も作用するが、シートベルトWは、スリット18とベルトガイド部17の車両左右側の側壁とによって案内されるから、前記車両左方向への加重によってシートベルトWが幅方向に沿って車両左側にずれることが抑止される。
【0039】
シートベルトWは、シートバック1の背面を取り回してベルトガイド部17に巻き掛けているから、シートバック1の内部を取り回す場合と比較してシートバック1そのものの厚みを薄くできる。
【0040】
以上、シートバックフレーム10にアッパフレーム13を設けるとともに、補強部材としてのサブフレーム16をアッパフレーム13およびサイドフレーム15に対して斜めに架設したシートバック1の例について述べたが、シートバックム1は、シートバックフレーム11にアッパフレーム13を設けた形態には限定されず、また、サブフレーム16がアッパフレーム13およびサイドフレーム15に対して斜めに掛け渡された形態にも限定されない、
【符号の説明】
【0041】
1 シートバック
10 シートバックフレーム
11 バックパネル
12 リトラクタ
13 アッパフレーム
15 サイドフレーム
16 サブフレーム
17 ベルトガイド部
17A フランジ部
18 スリット
W シートベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを有するシート構造であって、
前記シートバックの骨組みをなすシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの車両上方から車両下方に向かって前記シートバックフレームに架設された補強部材と、
前記シートバックに設けられ、シートベルトを巻き取るリトラクタと、
を備え、
前記補強部材の上端が前記リトラクタから巻き出されたシートベルトをガイドするベルトガイド部とされているシート構造。
【請求項2】
前記補強部材の上端は、前記シートバックフレームの上縁部から上方に突出している請求項1に記載のシート構造。
【請求項3】
前記シートバックフレームの後ろ側にはバックパネルが設けられ、
前記リトラクタは前記バックパネルの表側面に設けられ、
前記バックパネルには、前記リトラクタから巻き出されたシートベルトを前記バックパネルの裏側に取り回すための開口部が形成されている
請求項2に記載のシート構造。
【請求項4】
前記補強部材は車両後方に向かって開口するハット型の開断面とされているとともに、前記バックパネルとともに閉断面を形成し、
前記補強部材におけるベルトガイド部とされた部分は開断面とされている
請求項3に記載のシート構造。
【請求項5】
前記ベルトガイド部の上縁にはフランジ部が設けられ、このフランジ部とシートベルトとが摺接可能とされている請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート構造。
【請求項6】
前記シートバックフレームは矩形枠状とされており、
前記補強部材はシートバックフレームに対して斜めに架設されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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