説明

シート状不燃成形体

【課題】 高度の不燃性を有し、曲げ強度及び剥離強度に優れたシート状不燃成形体の提供。
【解決手段】 この課題は、含水無機化合物、または含水無機化合物及び炭酸塩60〜95質量%(固形分)、セルロース繊維0.4質量%(固形分)以上2質量%(固形分)未満、セルロース繊維と無機繊維の合計3〜25質量%(固形分)およびフェノール樹脂1〜20質量%(固形分)より成り、レゾール樹脂とノボラック樹脂との固形分質量比が30/70〜75/25である該フェノール樹脂を芯部においても含有するシート状熱圧成形体であることを特徴とするシート状不燃成形体によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状不燃成形体に関し、更に詳しくは、高度な不燃性を有し、かつ、機械的強度に優れたシート状不燃成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の防火対策上、各種建材に不燃性を付与する不燃性建材として、水酸化アルミニウム粉体を多量に含有せしめた基材が使用されている。この水酸化アルミニウム粉体を多量に含有せしめた基材は水酸化アルミニウムの200〜300℃における脱水吸熱反応によって不燃化が図られている。
【0003】
しかるに、この水酸化アルミニウムの如き含水無機化合物を多量に含有せしめた基材は、一般に、強度がきわめて弱いという難点を有していた。かかる難点を解決するために、現在までいくつかの提案がなされてきた。
【0004】
たとえば、参考文献1では、含水無機化合物と炭酸塩を特定配合比率で併用することによる不燃性の向上効果により含有し得る合成高分子の量を増加せしめ、かかる不燃性基材の強度を向上せしめるという技術が開示されている。しかし、かかる分野での性能向上要求はさらに強いものがあり、より高度の不燃性を確保するために合成高分子の配合量を少なくすると強度の低下は避けられない。
【0005】
また、参考文献2では、含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩を高配合し、その他にセルロース繊維、無機繊維及び熱硬化性樹脂を含有する不燃性基材において、該熱硬化性樹脂の所定量を該不燃性基材の表層部に含有せしめることにより、不燃性を維持しつつ、強度を向上させることができるという技術が開示されている。しかし、参考文献2による技術では、不燃性基材中に熱硬化性樹脂が均一には含有されていない。すなわち、表層部には熱硬化性樹脂が比較的多く含有されるが、中芯部には熱硬化性樹脂が非常に少量しか含有されないため、表層部に含有せしめられた熱硬化性樹脂による強度発現効果が有効に作用する曲げ強度は比較的強くせしめることができるものの、基材中芯部のわずかな熱硬化性樹脂による強度発現効果はきわめて不十分なものとなり、基材中の最弱部の強度に依存する剥離強度等はきわめて弱いものとなる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−112659号公報
【特許文献2】特開平8−198980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたもので、高度の不燃性を有し、曲げ強度及び剥離強度に優れたシート状不燃成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート状不燃成形体は、含水無機化合物、または含水無機化合物及び炭酸塩60〜95質量%(固形分)、セルロース繊維0.4質量%(固形分)以上2質量%(固形分)未満、セルロース繊維と無機繊維の合計3〜25質量%(固形分)およびフェノール樹脂1〜20質量%(固形分)より成り、レゾール樹脂とノボラック樹脂との固形分質量比が30/70〜75/25である該フェノール樹脂を芯部においても含有するシート状熱圧成形体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート状不燃成形体は、含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維、およびレゾール樹脂とノボラック樹脂との固形分質量比30/70〜75/25のフェノール樹脂という構成成分から成り、各成分を特定量含有せしめたので、高度の不燃性を有し、かつ機械的強度に優れている。すなわち、本発明のシート状不燃成形体は、曲げ強度と剥離強度の両方において優れた性能を保持するとともに、ISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、かつ、JIS A―1321:1994の表面試験において、亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、かつ発煙量も少なく、該表面試験の1級に合格できる高度な不燃性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記した含水無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウム(xCaO・Al・yHO;x=1〜4、y=5〜19)等を挙げることができる。これらの化合物は何れも分子内に結晶水を持ち化学的に類似した構造を有する。また、含水無機化合物は、その種類によって分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により難燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した含水無機化合物の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると水酸化アルミニウムが最適である。
【0011】
本発明で使用する炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ベリリウム、炭酸亜鉛等を挙げることができる。これらの炭酸塩はその種類により、分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により難燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した炭酸塩の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると、炭酸カルシウムが最適である。なお、炭酸塩配合によるもうひとつの重要な効果として本発明者が特開平5―112659号公報で指摘したところの発煙量低減効果を挙げることができる。
【0012】
本発明に係るシート状不燃成形体中の含水無機化合物を固形分で60〜95質量%とするか、あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計の含有率範囲を固形分で60〜95質量%とする。好ましくは70〜92質量%、さらに好ましくは75〜88質量%である。その含有率が60質量%未満では十分な不燃性が得られない。反対に95質量%を超えた場合は、含水無機化合物の過多あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計量の過多により十分な抄紙性あるいは機械的強度が得られず不適である。なおシート状不燃成形体中の含水無機化合物を固形分で70〜92質量%の範囲とするか、あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計の含有率を70〜92質量%の範囲とすることで十分な不燃性と抄紙性あるいは機械的強度を確保しやすくなり、75〜88質量%の範囲とすることで、一際、十分な不燃性と抄紙性あるいは機械的強度を確保しやすくなる。
【0013】
また、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とするのが好ましい。含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とすることでより十分な不燃性を確保しやすくなる。
上記したセルロース繊維としては、針葉樹系あるいは広葉樹系の化学パルプ、機械パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプあるいは木綿パルプ、麻パルプ、各種古紙などの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上を併用して使用すればよい。木材パルプは供給量及び品質が安定しており価格も比較的安価であることから最も使いやすいセルロース繊維原料である。木綿パルプ及び麻パルプは供給量が不安定であり価格も高価であるが、本発明におけるような吸熱分解性を有する無機化合物を多量に含有するシート状成形体においては、必要に応じて該木綿パルプあるいは麻パルプを使用することによりシート状成形体の機械的強度の低下を最小限にとどめることができる。
【0014】
本発明に係るシート状不燃成形体中のセルロース繊維の含有率範囲は固形分で0.4質量%以上2質量%未満、好ましくは0.6質量%以上2質量%未満、さらに好ましくは0.8質量%以上2質量%未満である。その合計の含有率が0.4質量%未満では、セルロース繊維の過少により十分な抄紙性か得られないとともに、機械的強度も不十分となる。反対に、2質量%以上の場合は、有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない。なお、シート状不燃成形体中のセルロース繊維の含有率を固形分で0.6質量%以上2質量%未満の範囲とすることで、十分な抄紙性、機械的強度及び不燃性を確保しやすくなり、0.8質量%以上2質量%未満の範囲とすることで、一際、十分な抄紙性、機械的強度及び不燃性を確保しやすくなる。
【0015】
上記した無機繊維としては、ロックウール繊維、ガラス繊維、セラミック繊維あるいは炭素繊維などの中から少なくとも1種類を選択して使用する。
本発明のシート状不燃成形体中のセルロース繊維と無機繊維の合計含有率範囲は固形分で3〜25質量%、好ましくは3〜22質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。その合計含有率が3質量%未満では十分な抄紙性が得られないとともに、無機繊維も過少となり十分な不燃性も得られにくくなる。また、合計含有率が25質量%を超えた場合は無機繊維が過多となり十分な抄紙性か得られない。なお、シート状不燃成形体中のセルロース繊維と無機繊維の合計含有率を固形分で3〜22質量%の範囲とすることで、十分な不燃性及び抄紙性を確保しやすくなり、3〜20質量%の範囲とすることで、一際、十分な不燃性及び抄紙性を確保しやすくなる。
【0016】
本発明で使用するフェノール樹脂は、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分質量比で30/70〜75/25、好ましくは35/65〜70/30、さらに好ましくは40/60〜65/35である。75/25よりもレゾール樹脂過多側とした場合、JIS A−1321:1994の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保できない。反対に、30/70よりもレゾール樹脂過少側とした場合、JIS A−1321:1994の表面試験で発煙量が過多となりやすくなり十分な不燃性能を確保できなくなるとともに、機械的強度も不十分となる。なお、レゾール樹脂/ノボラック樹脂の固形分質量比を35/65〜70/30の範囲とすることで、JIS A−1321:1994の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が発生しにくく、発煙量も過多となりにくくなり、十分な不燃性を確保しやすくなるとともに十分な機械的強度も確保しやすくなる。また、レゾール樹脂/ノボラック樹脂の固形分質量比を40/60〜65/35の範囲とすることで、さらにJIS A−1321:1994の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が発生しにくく、発煙量も過多となりにくくなり、一際、十分な不燃性を確保しやすくなるとともに十分な機械的強度も確保しやすくなる。
【0017】
本発明のシート状不燃成形体中のフェノール樹脂の含有率範囲は固形分で2〜20質量%、好ましくは3〜17質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。その含有率が2質量%未満では十分な機械的強度が得られず、20質量%を超えた場合は有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない。なお、シート状不燃成形体中のフェノール樹脂の含有率を固形分で3〜17質量%の範囲とすることで、十分な機械的強度及び不燃性を確保しやすくなり、5〜15質量%の範囲とすることで、一際、十分な機械的強度及び不燃性を確保しやすくなる。
【0018】
本発明に係るシート状不燃成形体は、上記配合のもとに、含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分質量比で30/70〜75/25から成るフェノール樹脂という構成であればよく、その製造法は、湿式抄造法、乾式成形法などの任意の方法を適用可能であり、特定の製造法に限定するものではないが、湿式抄造法が最も好ましい。以下において、湿式抄造法を適用した場合を例にとって製造法にも言及しながらさらに詳述する。
【0019】
本発明に係るシート状不燃成形体は含水無機化合物または炭酸塩の歩留を向上せしめるための各種歩留向上剤あるいは必要に応じて着色のための合成染料、顔料等を含有せしめてもよい。また、用途によっては、機械的強度もしくは後加工性の改善等を図るべく乾燥または湿潤紙力増強剤、サイズ剤、耐水化剤、はっ水剤等を含有せしめるべきことは言うまでもない。
【0020】
本発明のシート状不燃成形体に、フェノール樹脂を含有せしめる方法としては、フェノール樹脂の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を原料中に内添したり、紙層形成後に塗布または含浸するなどすればよい。ただし、厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中にフェノール樹脂の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を内添する方法が最も好ましい。
含水無機化合物または炭酸塩を含有せしめる方法としては、含水無機化合物または炭酸塩を含有する塗料を基材に塗布あるいは含浸せしめるなどの方法も考えられるが、所定の含有量を確保し、あるいは厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中に含水無機化合物または炭酸塩を粉体状あるいはスラリー状にて内添する方法が最も好ましい。
この場合、含水無機化合物、炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維及びフェノール樹脂の添加方法及び添加順序等は任意であり、必要に応じて叩解処理等を施してもよい。
【0021】
こうして得た原料スラリーを用いて湿式抄造するには、通常の抄造法によればよい。すなわち、長網、円網あるいは傾斜網等の抄造網上に前記原料スラリーを供給し、濾過、脱水した後、圧搾、乾燥すればよい。また、必要により各種コンビネーション網や、多漕円網及び各種ラミネーター等によりシート層を2層以上重ね合わせてもよい。
熱圧成形については、従来慣用の熱圧プレス成形、予熱―コールドプレス成形、高周波加熱成形などを単独であるいは2種以上組み合せて適用すればよい。
【0022】
本発明のシート状不燃成形体は、含水無機化合物と無機繊維を含有するか、または含水無機化合物と炭酸塩と無機繊維を含有するだけで優れた不燃性を発揮するが、従来慣用の難燃剤の使用を妨げるものではない。併用可能な難燃剤としては、有機リン化合物、含リン含窒素化合物、スルファミン酸グアニジン等のスルファミン酸塩、無機リン酸塩、含ハロゲン化合物及びアンチモン系化合物等の公知の難燃剤を挙げることができる。また、難燃剤の使用方法としては、原料スラリー中に内添せしめるか抄造工程中もしくは抄造後または熱圧成形後に塗布または含浸せしめる等の方法が挙げられる。ただし、一般に、難燃剤は高温加熱時に有害ガスを発生しやすい等の難点もあるため、好ましくは難燃剤を使用すべきではない。難燃剤を使用する場合、含水無機化合物とロックウール繊維の含有率または含水無機化合物と炭酸塩とロックウール繊維の含有率を考慮して難燃剤の含有量を必要最小限にすべきことは当然である。
さらに、用途によっては、得られたシート状不燃成形体に各種塗料の吹付けもしくは塗布あるいは印刷などの表面処理を施したり、化粧紙、レザー、合成樹脂膜、突板、金属板もしくは金属箔等の面材を貼り合わせるなどして固着せしめ、該シート状不燃成形体の付加価値を一段と高めることができることは言うまでもない。
【0023】
本発明の重要な点は、特定の樹脂組成を有するフェノール樹脂を用いることにより、含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩を多量に含有し、その他にセルロース繊維と無機繊維の所定量を含有し、さらに、所定量の前記フェノール樹脂を含有するシート状熱圧成形体が、曲げ強度と剥離強度の両方において優れた性能を保持するとともに、ISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、かつ、JIS A―1321:1994の表面試験において、亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、かつ発煙量も少なく、該表面試験の1級に合格できる高度な不燃性を有する点にある。
フェノール樹脂は比較的少量の配合で機械的強度を発現でき、かつフェノール樹脂そのものも比較的耐熱性に優れているため、高度な不燃性を必要とする材料には好適であると言えよう。しかし、フェノール樹脂といえども有機物質であるため、たとえ少量配合であっても、ある程度の不燃性の悪化は避けられない。また、優れた機械的強度を得るためには、ある程度の量のフェノール樹脂を配合する必要がある。
従って、優れた機械的強度と高度な不燃性の両立、特に、曲げ強度と剥離強度の両方において優れた性能を保持するとともに、高度な不燃性を確保することは、きわめて困難であった。
【0024】
そこで、本発明者は、多量の含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩と比較的少量のフェノール樹脂及びセルロース繊維並びに無機繊維を含有するシート状成形体において、本来、背反の関係にある優れた機械的強度と高度な不燃性を両立すべく、多数次の実験を行ったところ、特定の樹脂組成を有するフェノール樹脂を用い、かつ、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率及びセルロース繊維の含有率を特定することにより、かかる目的を達成することができることを見出した。すなわち、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分質量比で30/70〜75/25から成るフェノール樹脂を用い、かつ、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率を3〜25質量%(固形分)に特定し、さらにセルロース繊維の含有率を固形分で0.4質量%以上2質量%未満というきわめて少量の範囲に押えることにより、優れた機械的強度と高度な不燃性を両立、特に、曲げ強度と剥離強度の両方において優れた性能を保持するとともに、ISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が小さく、かつ、JIS A―1321:1994の表面試験の1級に合格できる高度な不燃性を確保させるという目的に適うことを見出した。
【0025】
実施例:
次に、本発明を以下の実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例中の各項目の測定は次の方法によった。
(1)厚さ及び密度:JIS P―8118:1998による。
(2)曲げ強度:JIS A―5905:1994による。繊維配向性がある場合、繊維配向方向とこれに直角をなす方向について測定し両者の平均を求めた。
(3)剥離強度:JIS K―6853:1994の割裂接着強さ試験による。繊維配向性がある場合、繊維配向方向とこれに直角をなす方向について測定し両者の平均を求めた。
(4)不燃性1:ISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験(加熱強度;50kW/m、過熱時間;20分)の総発熱量で評価した。
(5)不燃性2:JIS A―1321:1994の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形の有無で評価した。
(6)不燃性3:JIS A―1321:1994の発煙係数で評価した。
(7)不燃性4:JIS A―1321:1994の表面試験の1級の合否で評価した。
【実施例1】
【0026】
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと繊維長3mmのロックウール繊維(以下、無機繊維aと略称する。)を離解機にて離解して得たセルロース繊維と無機繊維の混合分散液の所定量を取り、これに水酸化アルミニウム粉体(平均粒径5.7μmである。以下同じ)、炭酸カルシウム粉体(平均粒径1.5μmである。以下同じ)、及びレゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分重量比で65/35であるフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂aと略称する。)を添加し、攪拌機にて十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄造し、圧搾、乾燥(ほぼ絶乾状態、水分1質量%以下)した後、熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、シート状成形体Aを得た。
シート状成形体Aについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例2】
【0027】
実施例1において、フェノール樹脂aに代えて、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分重量比で55/45であるフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂bと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状成形体Bを得た。
シート状成形体Bについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例3】
【0028】
実施例1において、フェノール樹脂aに代えて、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分重量比で45/55であるフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂cと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状成形体Cを得た。
シート状成形体Cについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例4】
【0029】
実施例2において、各成分の配合量を変えた以外は実施例2と同様にして、シート状成形体Dを得た。
シート状成形体Dについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例5】
【0030】
実施例2において、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は実施例2と同様にして、シート状成形体Eを得た。
シート状成形体Eについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例6】
【0031】
実施例2において、無機繊維aに代えて、繊維長3mmのガラス繊維(以下、無機繊維bと略称する。)を用いた以外は実施例2と同様にして、シート状成形体Fを得た。
シート状成形体Fについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例7】
【0032】
実施例2において、水酸化アルミニウム粉体に代えて、水酸化マグネシウム粉体状(平均粒径10μmである。以下同じ)を用いた以外は実施例2と同様にして、シート状成形体Gを得た。
シート状成形体Gについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例8】
【0033】
実施例3において、各成分の配合量を変えた以外は実施例3と同様にして、シート状成形体Hを得た。
シート状成形体Hについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例9】
【0034】
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと無機繊維aをパルパーにて離解し、これに水酸化アルミニウム粉体、炭酸カルシウム粉体及びフェノール樹脂aを添加し、十分に分散混合後、長網/ワインドアップロール構成の巻取板紙抄紙機にてシート層を15層積層させて抄造し、圧搾、乾燥(ほぼ絶乾状態、水分1質量%以下)した後、熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、シート状成形体Iを得た。
シート状成形体Iについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【実施例10】
【0035】
実施例9において、フェノール樹脂aに代えて、フェノール樹脂bを用い、各成分の配合量を変えた以外は実施例9と同様にして、シート状成形体Jを得た。
シート状成形体Jについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0036】
比較例1:
実施例1において、フェノール樹脂aに代えて、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分重量比で20/80であるフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂dと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状成形体Kを得た。
シート状成形体Kについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0037】
比較例2:
実施例1において、フェノール樹脂aに代えて、レゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分重量比で80/20であるフェノール樹脂(以下、フェノール樹脂eと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状成形体Lを得た。
シート状成形体Lについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0038】
比較例3:
実施例1において、各成分の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、シート状成形体Mを得た。
シート状成形体Mについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0039】
比較例4:
実施例9において、フェノール樹脂aに代えて、フェノール樹脂dを用いた以外は実施例9と同様にして、シート状成形体Nを得た。
シート状成形体Nについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0040】
比較例5:
実施例9において、フェノール樹脂aに代えて、フェノール樹脂eを用いた以外は実施例9と同様にして、シート状成形体Oを得た。
シート状成形体Oについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、厚さ、密度、曲げ強度、剥離強度、不燃性1、不燃性2、不燃性3及び不燃性4をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
次に、各実施例および比較例についての上記表に記載の実験結果を説明する。
実施例1〜10および比較例1〜4に係るシート状成形体は、含水無機化合物および炭酸塩をその合計で考えた時に、互いにほとんど同一の組成を有している。そして、用いたフェノール樹脂のレゾール樹脂/ノボラック樹脂の固形分質量比は、実施例1および9が65/35、実施例2、4〜7および10が55/45、実施例3および8が45/55、比較例1および3が20/80、比較例2および4が80/20である。曲げ強度は、実施例1〜10では10.2〜17.0MPaであり優れているのに対し、比較例2および4ではそれぞれ12.9MPaおよび13.0MPaであり実施例1〜10と同等であるが、比較例1および3ではそれぞれ6.9MPaおよび6.7MPaであり実施例1〜10の値の約40〜約70%に低下している。剥離強度(割裂接着強さ)は、実施例1〜10では7680〜13800N/mであり優れているのに対し、比較例2および比較例4ではそれぞれ9810N/mおよび9780N/mであり実施例1〜10と同等であるが、比較例1および3ではそれぞれ3830N/mおよび3950N/mであり実施例1〜10の値の約30〜約50%に低下している。次に不燃性について見てみると、実施例1〜10ではJIS A―1321:1994の表面試験で亀裂を発生しないのに対し、比較例1および3でも亀裂を発生しないが、比較例2および4では亀裂を発生した。一方、JIS A―1321:1994の表面試験の発煙係数を見ると、実施例1〜10では9.3〜16.0であり発煙量が少ないのに対し、比較例2および4ではそれぞれ10.7および9.5であり実施例1〜10と同等であるが、比較例1および3ではそれぞれ31.5および32.2であり実施例1〜10に比べ約2〜約3.4倍も発煙量が多くなっている。
【0043】
また、比較例5に係るシート状成形体は、実施例1に係るシート状成形体と比較し、セルロース繊維の含有率が本発明で特定する固形分で0.4質量%以上2質量%未満の範囲の上限を超えている点のみ異なる。その結果、比較例5では、曲げ強度及び剥離強度(割裂接着強さ)は実施例1と同等であり、JIS A―1321:1994の表面試験の1級にも合格であるが、ISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量は9.2MJ/mであり、実施例1の6.2MJ/mに比べ約50%上昇し、不燃性が悪化している。
【0044】
すなわち、多量の含水無機化合物あるいは含水無機化合物と炭酸塩と比較的少量のフェノール樹脂及びセルロース繊維並びに無機繊維を含有するシート状成形体においては、使用するフェノール樹脂の樹脂組成をレゾール樹脂/ノボラック樹脂が固形分質量比で30/70〜75/25の範囲になるように特定し、かつ、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率を3〜25質量%(固形分)に特定し、さらにセルロース繊維の含有率を固形分で0.4質量%以上2質量%未満というきわめて少量の範囲に押えることによりはじめて、優れた機械的強度(曲げ強度と剥離強度)とISO 5660 part 1:1993に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が小さく、かつ、JIS A―1321:1994の表面試験の1級に合格できる高度な不燃性を兼ね備えたシート状不燃成形体を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水無機化合物、または含水無機化合物及び炭酸塩60〜95質量%(固形分)、セルロース繊維0.4質量%(固形分)以上2質量%(固形分)未満、セルロース繊維と無機繊維の合計3〜25質量%(固形分)およびフェノール樹脂1〜20質量%(固形分)より成り、レゾール樹脂とノボラック樹脂との固形分質量比が30/70〜75/25である該フェノール樹脂を芯部においても含有するシート状熱圧成形体であることを特徴とするシート状不燃成形体。
【請求項2】
上記含水無機化合物と炭酸塩との固形分質量比が100/0〜50/50である請求項1記載のシート状不燃成形体。
【請求項3】
上記含水無機化合物が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1または2記載のシート状不燃成形体。
【請求項4】
上記炭酸塩が炭酸カルシウムである請求項1〜3のいずれか一つに記載のシート状不燃成形体。
【請求項5】
2層以上のシート層の積層体からなる請求項1〜4のいずれか一つに記載のシート状不燃成形体。

【公開番号】特開2007−106814(P2007−106814A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297194(P2005−297194)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】