説明

シート状物の延伸機

【課題】シート状物の損傷を抑制して信頼性の高いシート状物の延伸機を提供する。
【解決手段】連結された複数の折れ尺状のリンク装置200が、無端リンク装置同士の間に供給されたシート状物をリンク装置により保持して経路の走行に伴って延伸したのちシート状物を開放するシート状物の延伸機であって、リンク装置のシート状物側の先端に配置され、上下方向に延在するアームとこのアームをシート状物の方向及びその反対の方向に回動させるように軸支する回転軸とアームの下端部に連結されて配置された上掴み子とアームの下方に配置されシート状物を間に挟んで上掴み子に当接する下掴み子とを備えて、アームの回動に伴ってシート状物を上掴み子212及び下掴み子213との間で挟んで保持し或いは開放を行う掴み装置202と、アームに取り付けられ上掴み子の表面と当接してこの上掴み子を保持する2つの湾曲部を有する不勢部材とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物の延伸機に係り、シート状物を相互に連結された折れ尺状のリンク装置を所定の経路上を搬送しつつ延伸するシート状物の延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなシート状物の延伸機では、従来より、相互に連結されて輪をなす複数の折れ尺状のリンク装置が特定の経路に沿って、回転駆動される無端リンク装置が用いられている。延伸対象の略矩形状のシート状物は搬送されて、その両端側各々に無端リンク装置が配置された延伸機の中央部に搬送され、この中央部を上記無端リンク装置の各リンク装置に保持された状態で出口側(下流側)に向かって搬送される所定の方向に延伸される。
【0003】
このようなシート状物の延伸機では、無端リンク装置の各リンクが、上記所定の経路状であって延伸されていないシート状物が搬送される入口側(上流側)に位置する予め定められた箇所で延伸対象のシート状物の一端を保持した後、この経路上に沿って搬送するに伴いシート状物の端部を保持しつつ各リンク装置の間隔が増大されてシート状物の延伸を行う構成を備えている。
【0004】
この延伸を行った後、所定の箇所において各リンク装置は保持していたシート状物を開放してから、上記した経路に沿って元の位置に戻り搬送されてきた上記シート状物の未延伸の部分を再度保持して上記周回を行う。上記各リンク装置は、周回の経路上でシート状物を保持、開放するための掴み装置をシート状物の端部に面する位置に有している。
【0005】
このような掴み装置を有するリンク装置を周回させつつシート状物を延伸するシート状物の延伸装置の従来の技術は、例えば、特開2004−322365号公報(特許文献1),特開2004−322367号公報(特許文献2)。
【0006】
上記従来技術では、各リンク装置のシート状物側の先端部に配置された掴み装置が、無端リンクの閉じた経路上を走行しつつシート状物を掴み経路に沿って移動し、シート状物を搬送しながら延伸した後、所定の位置で掴み装置がシート状物を放して無端リンクの経路の元の位置に戻る。放されたシート状物は、搬送されて来た方向に沿って下流側へ搬送されて取り出される構成となっている。
【0007】
この掴み装置は、レバーの中央部で軸支され、この軸の上端側にバネ等の付勢手段が連結され下端側にシート状物を上下から挟み保持する上下の掴み子が配置されている。レバー上端に外力を加えて位置を変えることでレバーに連結された上側の掴み子を軸周りに回動させ、掴み子を開閉して間隔を増減してシート状物を上下の掴み子間で保持、あるいは開放する。
【0008】
【特許文献1】特開2004−322365号公報
【特許文献2】特開2004−322367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような動作をする上側の掴み子は、軸周りに回動するレバーの動きに伴って軸を中心とする略円周を描く経路上を移動して開閉する。このため、掴み子がシート状物を挟んで保持する直前ではシート状物の表面方向に沿って上側掴み子が移動することになり、掴み子のシート状物表面と接する上下の掴み面がと並行でない場合には、上下の掴み子が閉じられた際に掴み面の外縁でシート状物に傷を付けたり、ひいては破損するといった損傷が生じる虞が有る。
【0010】
これを抑制するため、上の掴み子をレバー下端において軸支して、この軸周りに回動可能にすることで、下の掴み子との間でシート状物を挟む際には、両者の掴み面が並行となるように構成されるものが知られている。一方、このような回動するレバー下端で回転する掴み子を備えた場合、掴み子の姿勢が精密に保持されることが必要となる。
【0011】
すなわち、掴み装置が閉じられる際に掴み子同士が並行にすることができるように構成されていても、上側掴み子の掴み面がシート状物へ接近する方向とは反対方向に向いた姿勢である場合には、却ってシート状物を確実に挟む子とができなくなり、その箇所で局所的に延伸が不十分、または不実施となるという問題が生じてしまう。
【0012】
このような掴み子の揺動はレバーの回動に伴って発生するので、揺動の大きさを低減するためには、掴み子を大きくすること或いは掴み子の姿勢を所定の位置に制限するストッパー等の位置制御装置を配置することが考えられる。掴み子を大きくすると、シート状物の上記損傷が生じた際の範囲が大きくなりできるだけ小さくすることが望ましい。一方、掴み子を小さくすると揺動の大きさが増大することに繋がり、姿勢をより確実に実現する構成が必要とされることについて、上記従来技術では十分に考慮されていなかった。
【0013】
本発明の目的は、シート状物の損傷を抑制して信頼性の高いシート状物の延伸機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、連結された複数の折れ尺状のリンク装置が所定の経路を走行して周回する無端リンク装置が相対して配置され、これらの無端リンク装置同士の間に供給されたシート状物を前記リンク装置により保持して前記経路の走行に伴って延伸したのち前記シート状物を開放するシート状物の延伸機であって、前記リンク装置の前記シート状物側の先端に配置され、上下方向に延在するアームとこのアームを前記シート状物の方向及びその反対の方向に回動させるように軸支する回転軸と前記アームの下端部に連結されて配置された上掴み子と前記アームの下方に配置され前記シート状物を間に挟んで前記上掴み子に当接する下掴み子とを備えて、前記アームの前記回動に伴って前記シート状物を前記上掴み子及び下掴み子との間で挟んで保持し或いは開放を行う掴み装置と、前記アームに取り付けられ前記上掴み子の表面と当接してこの上掴み子を保持する2つの湾曲部を有する不勢部材とを備えたシート状物の延伸機により達成される。
【0015】
さらに、前記アームの下端部に配置され前記上掴み子をこのアームに対して回動可能に軸支するシャフトを備え、前記湾曲部が前記シャフトを挟んでシート状物の反対側に位置する前記上掴み子の異なる2つの面と当接することにより達成される。
【0016】
さらにまた、前記上掴み子が前記付勢部材の前記湾曲部に当接した状態において、前記シート状物の中心側に開いた角度で前記下掴み子と前記シート状物を間に挟んで当接するにより達成される。
【0017】
さらにまた、前記付勢部材が前記アームの前記回転軸を挟んで前記シート状物の反対側の側面に取り付けられた板バネから構成されたことにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を以下図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図4を用いて、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明のシート状物の延伸機の構成の概略を示す上面図である。
【0020】
本実施例のシート状物の延伸機(以下、延伸機)100は、中央にシート状物101を図上左から右側に搬送するための搬送空間102が配置され、シート状物101または搬送空間102の左右(図上上下)方向の両端側にシート状物101の両端を保持して搬送しつつ所定の方向に延伸する無端リンク装置103,104が配置されている。
【0021】
図上、無端リンク装置103,104は、環状に連結された複数のリンク装置とその環の内部に配置されて各リンク装置と係号して、これを搬送方向に移動させて周回させるスプロケット105,106,107及び108,109,110を備えている。また、図示していないが、少なくとも1つのこれらスプロケットに連結されてこれを回転駆動するための駆動モータを備えている。本実施例では、無端リンク装置103のスプロケット
105,106は、シート状物101の上流側に隣り合って配置され、スプロケット107は下流側端部に配置されている。同様に無端リンク104のスプロケット105,106は、シート状物101の上流側に隣り合って配置され、スプロケット107は下流側端部に配置されている。
【0022】
搬送空間102あるいは、無端リンク装置103,104のシート状物に面する側の経路は、シート状物101の延伸の状態に応じて、3つの部分に大きく分けられる。すなわち、延伸を受けていないシート状物101が搬入されてこれを保持する予熱部111と、この予熱部111のシート状物101搬送方向の下流側に位置し予熱部111で予熱されたシート状物101を保持しつつ幅方向または搬送方向に延伸する延伸部112、さらにこの搬送方向下流側に配置され延伸部112からのシート状物101を保持しつつ冷却する冷却部113とで構成される。
【0023】
さらに、各無端リンク103,104は、シート状物101に面してこれを保持する側(シート側)の反対の側(反シート側)は、搬送方向下流側端部に達した無端リンク114,115がスプロケット107,110と係号して上流方向に向きを変えて戻る戻り経路を備えている。この戻り経路を上流側に移動した無端リンク114,115は、スプロケット105,108と係号し、さらにリンク同士の間隔が調節されて、スプロケット106,109と係号して再度予熱部111に供給される。
【0024】
このように、無端リンク114,115は、無端リンク装置103,104において環状の経路上を周回する。また、これら無端リンク装置103,104の各無端リンクの周回経路は、シート状物101を把持して搬送を開始する予熱部111において、無端リンク114,115の把持部が平行となるように配置されている。さらに、シート状物101を延伸する延伸部112では、無端リンク114,115の各リンク装置が末広がり状に移動するように、さらに下流側の冷却部113では再度平行に移動するように、周回経路が配置されている。
【0025】
また、予熱部111のシート状物101の入口側であるスプロケット106,109のシート側のリンク装置上方には、各リンク装置に備えられてシート状物を把持する掴み装置を動作させるための押板116,117が配置されている。さらに、冷却部113の下流端部であってスプロケット107,110のシート側のリンク装置上方には、掴み装置を動作させてシート状物101を開放させる押板118,119と備えている。
【0026】
無端リンク114,115が周回する無端リンク装置103,104の間の搬送空間
102の入口側に延伸対象のシート状物101が搬送されてくると、予熱部111において、周回に伴い押板116,117により開閉される各リンク装置の掴み装置に把持されて、これらの下流方向への移動により搬送空間102の出口側に搬送される。
【0027】
無端リンク114,115の周回経路が末広がり状にされる延伸部112にシート状物が搬送されると、シート状物の幅方向にシート状物が延伸される。さらに、本実施例では、延伸部112において無端リンク114,115の各リンク装置の掴み装置同士の間隔も広げられており、周回経路の方向についてもシート状物が延伸されることになる。つまり、延伸部112においては、シート状物が搬送方向及び幅方向の2方向に延伸される。
【0028】
図2は、図1に示す実施例に係る無端リンクの各リンク装置の構成の概略を示す上面図及び側面図である。図2(a)はリンク装置200の上面図、(b)は側面図である。
【0029】
図2において、リンク装置200は、折れ尺状に連結された上下の等長リンク201と、この等長リンク201のシート側に配置された掴み装置202とに大きく分けられる。等長リンク201は、上下に距離をあけて重ねられて配置された2つのリンクアーム204,205及び204′,205′とこれら上下を連結する3つのリンク軸206,206′,207、さらには、リンク軸206,206′に連結されて等長リンク202の最大ピッチを制限する繋げられたチェーンリンク203a,203bとを備えている。
【0030】
なお、図示していないが、リンク軸206,206′は隣接したリンク装置200の等長リンク201に連結されており、両者で共有されている。なお、無端リンク装置4または5のリンク構成としては、特公平5−4896号公報に記載された無端リンク装置を参照することができる。
【0031】
また、等長リンク201を構成するリンクアーム204,205は、リンク軸207の上で同軸状に連結されており、この軸を中心にした周りに両者が回転して等長リンク201の形状が変化する。さらに、各リンクアーム204,205は、反シート側の端部で各々リンク軸206,206′と連結されるとともに、リンク軸207の下部でリンクアーム204′,205と連結されている。このため、上記変形の際に上下のリンクは、同じ形状となるように同期して変形される。
【0032】
各リンク軸206,206′及び207の下方には、リンク装置200が、上述の周回の経路を構成するレール208,209とが配置されている。このため、リンク装置200下方には、リンク装置200をこれらレール208,209に沿わせて移動させるよう、断面矩形状の各レール208,209の左右両側を挟んで配置されこれらと当接して回転する軸受ローラ213a,213b及び214a,214bとが配置される。
【0033】
このように、リンク装置200をシート状物101を把持しつつ走行させるレール208,209のシート側(周回経路では外周側)のレール209上方にはシート状物101を把持する掴み装置202が連結されたリンク軸207が配置され、反シート側(内周側)のレール206上方には掴み装置202を有さないリンク軸206,206′が配置される。
【0034】
上記の通り、リンク装置200のシート側端部には掴み装置202が配置されている。本実施例の掴み装置は、リンクアーム204′のシート側先端に連続した部材として配置されて上下に分岐した2つの腕を備える掴みアーム210と、この掴みアーム210に連結されて回転する回動アーム211及び、この回動アーム211の下端に回転可能に連結された上掴み子212,掴みアーム210の下側のアーム上面に配置されて上掴み子212との間でシート状物101を挟んで保持する下掴み子213とを備えている。
【0035】
掴みアーム210の上側のアームの先端には、シート状物101の搬送方向(図上は図面に垂直な方向、本実施例では略水平方向)に軸を有するシャフト214が配置され、図上上下方向(シート状物の上下方向、本実施例では略垂直の方向)に延在する棒状の部材である回動アーム211の中央部分及び掴みアーム210の上側アーム先端とを貫通している。このシャフト214の軸周りに回動アーム211が、掴みアーム210或いはリンクアーム204,204に対してシート側/反シート側にその先端を移動させるように回転する。さらに、回動アーム211の下端部には、シート状物101の搬送方向に軸を有するシャフト215が配置され、回動アーム211先端及び上掴み子212とを貫通している。このシャフト215周りに上掴み子212が回動アーム211或いはリンクアーム204,204′に対してシート側/反シート側に回転する。
【0036】
上記回動アーム211のシャフト214周りの回転動作を行えるように、回動アーム
211の上端及びシャフト214との間の箇所とリンクアーム204上面とを連結するコイルバネ216が配置され、回動アーム211は、常にその下端をシート側に回転させるように付勢されている。このため、前述の押板116,117等で回動アーム211の上端をシート側に押し付ける力を加えることで回動アーム211が回転して前到し下端側の上掴み子212及び下掴み子213の間が離間され、押し付け力が解除されるとコイルバネ216の付勢力により回動アーム211が反シート側に回転して戻り、この結果上掴み子212及び下掴み子213の間が接近し両者が当接する。
【0037】
このような構成において、リンク装置200のレール208,209同士の間隔は、周回経路上で増減するように配置され、これらに沿った移動に伴って、等長リンク201がリンク軸207周りに回動して伸縮し、リンクアーム204,204′及び205,
205′の反シート側の端部の間隔を増減させる。すなわち、レール208,209の間隔が減少するとリンクアーム204,204′及び205,205′の先端側の間隔が増大し、この結果リンク軸206,206′で連結されたリンク装置200同士の間隔が増大する。一方、リンクアーム204,204と205,205′はリンク軸207で連結されているので、そのリンク軸207のシート側先端に配置された掴み装置202の掴みアーム210先端同士の間隔も増大する。
【0038】
このため、掴み装置202により保持されたシート状物101では、保持された箇所同士の間隔が増大し、弾性を備えたシート状物101はその増大方向について延伸される。一方、レール208,209同士の間隔が増大すると、等長リンク201におけるリンクアーム204,204′及び205,205′の反シート側の端部の間隔が減少し、掴みアーム210同士またはシート状物101の掴み装置202に保持された箇所同士の間隔も減少することになる。
【0039】
本実施例の延伸機100では、搬送空間102の入口側(予熱部111)において、図示しない上下の軸周りに回転するスプロケット105,108及び106,109と係号して移送されてきた各リンク装置200の掴み装置202に配置された回動アーム211の上端部に力を作用させて前到させて、上掴み子212及び下掴み子213の間を開いた後、リンク装置200を移動して搬送されたシート状物101がこれらの間に位置させる。この後、回動アーム211の前到を元に戻して下端部の上掴み子212及び下掴み子
213の間の距離を接近、当接させてシート状物101の端部を掴み装置202により把持する。
【0040】
このシート状物101の把持を維持しつつリンク装置200を周回経路に沿って移動させて延伸部112にシート状物101を搬送する。延伸部112では、周回経路を構成するレール208,209が反シート側に曲げられて、シート状物101の両端に対向するレール208,209同士は上方からみてシート状物101搬送方向について両端側に末広がり形状に配置される。このため、このような周回経路上を移動するリンク装置200に保持されたシート状物101は、上記シート状物の両端の方向に延伸される。
【0041】
さらに、本実施例では、延伸部112においてレール208,209の間隔が、予熱部111における間隔より減少されて狭められ、リンク装置200同士の間隔も増大される。この結果、シート状物101がレール208,209あるいはリンク装置200の搬送方向に延伸される。
【0042】
この後、リンク装置200は、シート状物101を保持したまま冷却部113に移動される。冷却部113において、シート状物101両端側のリンク装置103,104同士の周回経路は平行に配置され、さらに、レール208,209同士も延伸部113の出口における間隔で平行に配置される。このため、掴み装置202に保持されたシート状物
101は、その両端の間隔及びリンク装置200同士の間隔或いは掴み装置202に保持された箇所同士の間隔を維持しつつ冷却部113において温度が下げられる。
【0043】
冷却部113の下流端部において、予熱部111の入口部と同様、回動アーム211の上端に力を作用させ回動アーム211を前到させて、上掴み子212及び下掴み子213間を離間させることで、シート状物101と掴み装置202から開放する。開放されたシート状物101は、搬送方向に移動し続け延伸機100から搬出される。一方、リンク装置200は、シート状物101の開放後、回動アーム211に作用させた力が解除されてコイルバネ216からの力で再度上掴み子212及び下掴み子213を当接させて両者間を閉塞するとともに、スプロケット108,110に係号されてシート状物101の上流側に向かって戻り経路を移送される。このように無端リンク装置103,104の無端リンク114,115が所定経路上を周回して、シート状物101を把持して保持しつつ延伸、開放する動作を繰り返す。
【0044】
次に、図3を用いて、図2に示す掴み装置202の構成の詳細を説明する。図3は、図2に示す掴み装置の構成の概略を説明する拡大図である。図3(a)は、掴み装置202の構成を拡大して示す側面,前面,後面図である。図3(b)は、掴み装置202の上掴み子212と下掴み子213とが離間された状態を説明する側面図である。
【0045】
上記の通り、掴み装置202は、リンクアーム204′のシート側先端に配置された上部アーム210aの先端にシャフト214により連結された回動アーム211を備えている。回動アーム211はその下端に上掴み子212がシャフト215により連結されて配置され、シャフト214上方に配置された貫通孔302にコイルバネ216の先端が掛けられてこれと連結されている。
【0046】
さらに、図3(a)に示す通り、掴みアーム210先端の下部アーム210bのシート側先端の上部には、上掴み子212と当接する下掴み子213が配置され、その上面は上掴み子212の下面と同様平面上にされ、上掴み子212と下掴み子213とが当接した状態で、これらの面の間でシート状物101の端部を平行に挟持する。上掴み子212と下掴み子213とが当接した状態で、図3(a)に示すようにシャフト214は、その軸がシャフト215の軸よりシート側に位置しており、このため状態で回動アーム211には、コイルバネ216からの付勢力による回転モーメントが印加されている。
【0047】
一方、上掴み子212と下掴み子213とが掴み面で当接していることで、掴み面に対して略垂直にこれらから押圧力が印加されることになり、この押圧力によってシート状物101を上掴み子212と下掴み子213との間で挟持することができる。
【0048】
また、本実施例の回動アーム211の反シート側の面には、上掴み子212の反シート側の面に当接してシート側に押圧する力を印加する板バネ301が配置され、その上端部がボルト306により回動アーム211の反シート面に締結されている。この板バネ301の下端部は、後述の通り、上掴み子212側に丸められ、この丸くされた湾曲部が上掴み子212と当接する。
【0049】
図3(b)は、リンク装置200が移動するに伴い、回動アーム211が、押板116または117,118,119のシート側先端部と接触し、シート側に押されて傾いた状態を示す側面図である。回動アーム211の上端部には、上記押板116または117,118,119の先端部307と接触するローラ303が配置されている。ローラ303の回転軸は、回動アーム211の上下方向に沿って配置され、ローラ303がリンク装置200の移動に伴い回転することで、これに押し当てられる押板116または117,
118,119の先端部307との間の摩擦力を低減しリンク装置200の移動が安定化される。
【0050】
また、回動アーム211がシート方向に前傾した状態で、上掴み子212は下部アーム210bの上面の下掴み子213に対して反シート側の上方に離間して、両者の間に空間が形成される。この状態で、上掴み子212はその反シート側の面に配置された板バネ
301の下端部の2つの湾曲部304,305の各々が当接することで押圧されており、これらの湾曲部304,305によりその姿勢が保持されている。
【0051】
上掴み子212のシャフト215を挟んで反シート側の側面とその上方の隣り合う斜め上面の2面は、湾曲部304,305の各々と当接し、2面の間の角部がこれらの湾曲部304,305の間の凹み部に入り込むように位置して、謂わば、湾曲部304,305に挟まれて嵌まるように構成されている。シャフト215に対して反シート側の2面をそれぞれ板バネ301の部分である湾曲部304,305により付勢されていることにより、回動アーム211の回動に伴う遠心力やリンク装置200の走行に伴う振動等の外力が印加された場合にも、上掴み子212の姿勢を確実に保持し、シート状物101を挟んで下掴み子213と接する際に、それぞれの掴み面がシート状物(の中心側)に開くように角度をなしている状態を実現している。
【0052】
予熱部111の入口部及び冷却部113の出口部において、掴み装置202は、図3
(b)の状態にされて、未延伸のシート状物101がその上掴み子212及び213の間の空間に配置され、或いは延伸済のシート状物101を開放する。
【0053】
次に、図4を用いて、掴み装置202のシート状物101の掴み動作を詳細に説明する。図4は、図3に示す掴み装置のシート状物の掴み動作を説明する模式図である。
【0054】
図4(a)は、予熱部111入口で押板116または117の先端部307により回動アーム211上端部のローラ303が、シート側に押されて回動アーム211がシート側に傾いた状態を示す図である。この図において、上記の通り、回動アーム211下端部の上掴み子212は、反シート側上方に持ち上げられた状態で、板バネ303の湾曲部304,305に当接して姿勢が定められている。
【0055】
この後、リンク装置200の移動に伴って先端部307が掴み装置202の反シート側に相対的に移動すると、コイルバネ216により付勢されている(図示せず)回動アーム211は、ローラ303を先端部307に押し付けたままシャフト214周りに図上反時計周り方向に回転する。この結果、下端部に配置された上掴み子212は、下掴み子213の平面状の掴み面上方に配置されたシート状物101表面方向に接近する。この際、上掴み子212の姿勢は板バネ301により保持されている。
【0056】
回動アーム211がさらに反時計周り方向に回転された結果、上掴み子212の掴み面の反シート側の端部がシート状物101と接して、下掴み子213の掴み面との間でこれを挟み込む(図3(b))。この下掴み子213の掴み面は上掴み子212の掴み面よりも径が大きな略円形の形状を備え、近接してきた上掴み子212がシート状物101を間に介して当接した際に、上掴み子212のシート状物101の上面と接する面である掴み面の端面が下掴み子213の掴み面と当接するように構成されている。
【0057】
すなわち、シート状物101と接する直前において、上掴み子212の掴み面は、シート状物101に対してシート状物中央側(リンク装置200のリンク先端側)に向いている姿勢となって、掴み面のシート状物101端部側(リンク装置200のレール側)の端部がシート状物101上面と接して下掴み子213の掴み面との間でシート状物101を挟むように、その姿勢が保持されている。
【0058】
図4(b)の状態は、上掴み子212は、その端部においてのみシート状物101と接してこれを下掴み子213との間に保持しているに過ぎず、保持力は小さく、また、シート状物101表面の面圧力が大きいため損傷を生じる虞が高い。本実施例では、上掴み子212と下掴み子213との間で平面同士でシート状物101を保持するように、回動アーム211を更に反時計周り方向に回転させることで、上掴み子212をシャフト215周りに回動アーム211に対して相対的に時計周り方向に回転させる。
【0059】
このような回転を生じさせる上では、上掴み子212及び下掴み子213の両者がシート状物を挟んで接する(閉じ始める)際の相対的な姿勢を所定の範囲にすることが重要となる。つまり、下掴み子213の掴み面に対しする上掴み子212の掴み面の角度が大きくなりすぎると、両者が接触後に回動アーム211が更に回転しようとしても、回転できなくなったり上掴み子212が下掴み子213の掴み面状を摺動したりしてシート状物を損傷してしまう問題が生じる。
【0060】
本実施例では、板バネ301の湾曲部304,305が上掴み子212の隣り合う2面に当接して、これにより上掴み子212が保持されて姿勢が維持されて回動アーム211の回転に伴って、その軌道上をシート状物101または下掴み子213に接近する。この姿勢で、シート状物101を挟んで上掴み子212の掴み面の端部が下掴み子213の掴み面上面と接する。
【0061】
先端部307がローラ303から離れたとしても、コイルバネ216により付勢された回動アーム211は、シャフト214の軸周りに反時計方向に回転するモーメントが印加されており、このモーメントの作用により上掴み子212が回動アーム211及び下掴み子213に対して相対的に回転を続ける。そして、平面状の掴み面及び下掴み子213の掴み面とによりシート状物101が挟まれて面接触により保持される(図4(c))。本実施例では、この際、板バネ301の下方の湾曲部305は上掴み子212の反シート側の側面に当接して、上掴み子212に反時計周りの回転モーメントを印加しているが、コイルバネ216の付勢力による時計周りの回転モーメントがより大きいため、シート状物101を上下方向に押し付ける力が保持される。
【0062】
この際、上掴み子212の掴み面の面積は、下掴み子213の掴み面の面積より小さくされ、図4(c)の状態で、下掴み子213の掴み面内側の上方で上掴み子212の掴み面がシート状物101を挟んでいる。このように、本実施例では、上掴み子212の姿勢をこれに当接する2つの湾曲部304,305とで板バネ301姿勢を保持して下掴み子213とシート状物101を挟んで当接させており、上掴み子212の不必要な揺動が抑制され、シート状物101を保持する際の損傷や掴みの不備、ひいてはシート状物の延伸の不備が抑制され、シート状物の延伸の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のシート状物の延伸機の構成の概略を示す上面図である。
【図2】図1に示す実施例に係る無端リンクの各リンク装置の構成の概略を示す上面図及び側面図である。
【図3】図2に示す掴み装置の構成の概略を説明する拡大図である。
【図4】図3に示す掴み装置のシート状物の掴み動作を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0064】
100 延伸機
101 シート状物
102 搬送空間
103,104 無端リンク装置
105,106,107,108,109,110 スプロケット
111 予熱部
112 延伸部
113 冷却部
114,115 無端リンク
116,117,118,119 押板
200 リンク装置
201 等長リンク
202 掴み装置
203a,203b チェーンリンク
204,204′,205,205′ リンクアーム
206,206′,207 リンク軸
208,209 レール
210 掴みアーム
211 回動アーム
212 上掴み子
213 下掴み子
214,215 シャフト
216 コイルバネ
301 板バネ
302 貫通孔
303 ローラ
304,305 湾曲部
306 ボルト
307 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の折れ尺状のリンク装置が所定の経路を走行して周回する無端リンク装置が相対して配置され、これらの無端リンク装置同士の間に供給されたシート状物を前記リンク装置により保持して前記経路の走行に伴って延伸したのち前記シート状物を開放するシート状物の延伸機であって、
前記リンク装置の前記シート状物側の先端に配置され、上下方向に延在するアームとこのアームを前記シート状物の方向及びその反対の方向に回動させるように軸支する回転軸と、前記アームの下端部に連結されて配置された上掴み子と前記アームの下方に配置され前記シート状物を間に挟んで前記上掴み子に当接する下掴み子とを備えて、前記アームの前記回動に伴って前記シート状物を前記上掴み子及び下掴み子との間で挟んで保持し或いは開放を行う掴み装置と、前記アームに取り付けられ前記上掴み子の表面と当接してこの上掴み子を保持する2つの湾曲部を有する不勢部材とを備えたシート状物の延伸機。
【請求項2】
前記アームの下端部に配置され前記上掴み子をこのアームに対して回動可能に軸支するシャフトを備え、前記湾曲部が前記シャフトを挟んでシート状物の反対側に位置する前記上掴み子の異なる2つの面と当接する請求項1に記載のシート状物の延伸機。
【請求項3】
前記上掴み子が前記付勢部材の前記湾曲部に当接した状態において、前記シート状物の中心側に開いた角度で前記下掴み子と、前記シート状物を間に挟んで当接する請求項1または2に記載のシート状物の延伸機。
【請求項4】
前記付勢部材が前記アームの前記回転軸を挟んで前記シート状物の反対側の側面に取り付けられた板バネから構成された請求項1乃至3のいずれかに記載のシート状物の延伸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207508(P2008−207508A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48373(P2007−48373)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】