説明

シート状物の延伸機

【課題】ガイドレールの製作精度、取付精度により微妙に変動する走行速度を検出し、その検出速度に合わせ下流側の設備を制御することによりシート状物のたるみ、巻取り不良等を防止したシート状物を延伸する延伸機を提供する。
【解決手段】折尺状に形成された複数個の等長リンク装置から成る無端リンク装置を用いてシート状物を延伸する延伸機において、前記複数個の等長リンク装置の各リンクに設けられた検出片と、シート状物の出口側に設けられ前記検出片の移動速度を検出する検出器と、この検出器で検出された移動速度に基いて速度指令を発する延伸機制御盤と、この速度指令により巻取り速度を制御されるシート状物の巻取り装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物、例えば熱可塑性樹脂フィルム等を延伸する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連続したフィルムを縦方向(フィルムの移送方向、MD方向)及び横方向(TD方向)の両軸に同時で、かつ連続的に延伸するためのシート状物の延伸機の従来装置は、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この装置は、シート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備し、折尺状に形成された複数個の等長リンク装置より構成された無端リンク装置を設け、該無端リンク装置をシート状物の入口側スプロケットより駆動することにより、進行方向に末広がり状に配置されたガイドレールに案内されて前記掴み装置の掴みピッチを徐々に拡大させ、前記端部が把持されたシート状物を縦横二方向に同時に延伸する。そして該延伸後、前記シート状物の端部を前記掴み装置から外して、前記無端リンク装置を出口側スプロケットにより駆動して前記入口側スプロケットに戻るように構成される。
【0004】
一般に構造物には寸法誤差や取付け誤差があり、前記末広がり状に配置されたガイドレールにも、機械加工精度、取付精度等により設定寸法に対し取付誤差が発生する。前記折尺状に形成されたリンク装置の掴みピッチ寸法、このピッチを徐々に拡大する速度、及びリンク装置全体の走行速度は、前記ガイドレールに規制されるため、ガイドレールの取付誤差により前記掴みピッチ寸法が変わり、また前記二種の速度も変動が生じるという問題を有していた。
【0005】
特に末広がり状に配置されたガイドレールを任意の間隔に変え、縦方向寸法を自在に替えられる同時二軸延伸機においては、そのガイドレール間隔精度のばらつきも大きくなっていた。そして、上記のようにして縦横二方向に同時に延伸されたシート状物は、下流側装置の巻取り機で巻きとられる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−257791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシート状物の延伸機は、前述のように掴みピッチ寸法と前記二種の速度の変動により、巻取り機直前のシート状物の走行速度がランダムに変動するため、巻取り機の巻取り遅れによるシート状物のたるみや、巻取り進みによるシート状物の引っ張りが起り、巻取り不良が発生する。これは、シート状物を弛んだ状態で巻き取ったり、シート状物が無理なストレスで切断を起こす恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、シート状物の走行速度の変動に合わせて巻取り機を動作させることにより、シート状物を正常に巻取りできるシート状物の延伸機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は熱可塑性樹脂のシート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備し、折尺状に形成された複数個の等長リンク装置より構成された無端リンク装置を設け、該無端リンク装置をシート状物の入口側スプロケットより駆動することにより進行方向に末広がり状に配置されたガイドレールに案内されて前記掴み装置の掴みピッチを徐々に拡大させて前記端部が把持されたシート状物を縦横二方向に同時に延伸し、さらに該延伸後前記シート状物の端部を前記掴み装置から外して前記無端リンク装置を出口側スプロケットにより駆動して前記入口側スプロケットに戻るように構成したシート状物の延伸機において、前記複数個の等長リンク装置の各リンクに設けられた検出片と、シート状物の出口側に設けられ前記検出片の移動速度を検出する検出器と、この検出器で検出された移動速度に基いて速度指令を発する延伸機制御盤と、この速度指令により巻取り速度を制御されるシート状物の巻取り装置を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記検出片は前記掴み装置の近傍位置に設けられ、前記検出器は前記掴み装置の掴みピッチが最大ピッチとなってその後変化しない位置に設置される。また、前記検出器は、前記検出片の移動方向に所定ピッチだけ離して少なくても2個設けられている。また、前記検出器は、前記掴み装置の最大掴みピッチより小さなピッチだけ離して少なくても2個設けられている。
【0011】
また、本発明は、熱可塑性樹脂のシート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備し、折尺状に形成された複数個の等長リンク装置より構成された無端リンク装置を設け、該無端リンク装置をシート状物の入口側スプロケットより駆動することにより進行方向に末広がり状に配置されたガイドレールに案内されて前記掴み装置の掴みピッチを徐々に拡大させて前記端部が把持されたシート状物を縦横二方向に同時に延伸し、さらに該延伸後前記シート状物の端部を前記掴み装置から外して前記無端リンク装置を出口側スプロケットにより駆動して前記入口側スプロケットに戻るように構成したシート状物の同時二軸延伸機において、末広がり状に配置されたガイドレールの機械加工精度、取付精度等により微妙に変わる走行速度を検出し、この速度を下流側設備(例えば巻き取り装置)へ送信することにより、走行速度の変動によるフィルムのたるみ、巻き取り不良を防止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、末広がりに配置されたガイドレールの加工精度、取付精度に関係なく下流側の速度制御が可能となり、フィルムのたるみ、巻き取り不良を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るシート状物の延伸機の実施例について図面を用いて説明する。図1は本発明の実施例である同時二軸延伸機の平面図、図2は等長リンク31の断面図で、その構成及び動作は以下の通りである。
【0014】
図1において、シート状物1の端部を把持する複数の掴み装置2をシート状物1の両側に具備した無端リンク装置3(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略して示す。)は、折尺状に形成された複数個の等長リンク31よりなり、シート状物の入口側スプロケット4で駆動される。無端リンク装置3は掴み装置2で入口側でシート状物1を掴み、進行方向に末広がり状に配置されたガイドレール5、6に案内されて、掴みピッチがP1からP2に徐々に拡大することにより、シート状物1を縦横二方向に同時に延伸させる。その後掴み装置2は、シート状物1を外し、出口側スプロケット7により駆動されて、入口側スプロケット4に戻るように構成されている。
【0015】
図2において、前記ガイドレール5、6は一対の組になったもので、シート状物1に近い方のシート側ガイドレール5には、シート状物1を把持する掴み装置2が連結されたリンク軸8が、配置される。そして、他方の反シート側ガイドレール6には、掴み装置2を有さないリンク軸9が配置される。
【0016】
前記リンク軸8の最下端には軸受ローラ10が連結され、軸受ローラ10の外周部に一対の鍔付ラジアル軸受12(12a、12b)を具備し、該鍔付ラジアル軸受12は、リンク装置の動きを規制する案内用ガイドレール5の両側面を転動する。前記リンク軸9の最下端には軸受ローラ11が連結され、軸受ローラ11の外周部に一対の鍔付ラジアル軸受13(13a、13b)を具備し、該鍔付ラジアル軸受13は、リンク装置の動きを規制する案内用ガイドレール6の両側面を転動する。
【0017】
前記案内用ガイドレール5(又は6)の上面と鍔付ラジアル軸受12(又は13)の鍔の接触で、リンク装置の自重を保持するよう配置され、リンク軸8、9はリンクプレート14及び15により連結される。このため、例えば、リンクが閉じた状態と開いた状態でリンクプレートとガイドレールの交差角度が異なる時でも、ラジアル軸受12(又は13)は軸受ローラ10(又は11)の働きにより、常にガイドレールと垂直に位置するよう変化する。
【0018】
図2において、16は各等長リンク31に設けた突起状の検出片で、リンクプレート14の各掴み装置2の真裏に1個ずつ設けられている。17(17a、17b)は、前記検出片16の通過を検出する検出器で、掴み装置2がシート状物1を外す位置付近の出口側スプロケット7の直前に設置される。この位置のシート状物1の移動速度は、掴み装置2の掴みピッチが最大ピッチP2となってその後変わらないので、シート状物1の出口の移動速度、即ち、後述する巻取装置の巻取り速度と一致する。
【0019】
なお、検出器17の設置位置は、掴みピッチが最大ピッチP2となってその後変化しない位置であれば良いので、シート状物1の出口より上流側でも良い。また、掴み装置2の移動速度は、まさにシート状物1の移動速度であり、検出片16を掴み装置2近傍に設けるのが、正確にシート状物1の移動速度を検出するのに適している。
【0020】
検出器17a、17bの一方は発光素子で他方は受光素子であり、移動時の検出片16の通過線を挟んで対をなし、かつ、図3に示すように検出片16の移動方向にピッチP3だけ離して2対設けられている。検出片16は、2対の検出器の最初の対の通過時と、後の対の過時の時間差(T)で速度(P3/T)が求められ、シート状物1の移動速度が得られる。図3に示すように、検出器17のピッチP3は検出片16のピッチP2(掴み装置2のピッチP2で示される。)より小さく設定して(P2>P3)、検出片6の正確な移動速度を検出できるようにしている。P2<P3の場合は、隣り合うリンクの検出片16が一緒に検出されてしまい、正確な移動速度が得られない。
【0021】
上記は検出器17として2対設けた例であるが、1対でも移動速度の検出は可能である。この場合、掴み装置の最大の掴みピッチP2が正確に分かっていることが条件であり、隣り合うリンクの2個の検出片16を1対の検出器17で検出し、2個の検出片16の通過時間(T)から速度(P2/T)が求められる。この場合の検出器17の設置位置は、掴みピッチが最大ピッチP2となってその後変化しない位置であれば良い
18はシート状物を巻き取る巻取装置、19はこの巻取装置18の巻取り速度を制御する巻取り装置制御盤、20は延伸機全体を制御する延伸機制御盤である。延伸機制御盤20は、前記検出器17から検出片16の移動速度を検出し、その検出速度に合った速度指令を前記巻取り装置制御盤19に与える。巻取り装置18は巻取り径が大きくなると円周が長くなるので、図示しない検知器により巻き取り径を計測しながら、検出片16の移動速度に合った巻き取り速度となるように速度指令が与えられる。
【0022】
上記構成によれば、検出器17で検出された検出片16の移動速度に変化があっても、それに合わせて変化させた巻取り速度でシート状物1を巻き取ることができるので、シート状物1が弛んだり、シート状物1に無理な張力が加わることがない。従って、シート状物が均等に効率よく巻かれ、破断を起こすことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例である同時二軸延伸機の平面図である。
【図2】本発明の実施例である等長リンクの断面図である。
【図3】本発明の実施例である検出器と検出片のピッチの関係説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1…シート状物、2…掴み装置、3…無端リンク装置、4…入口側スプロケット、5,6…案内用ガイドレール、7…出口側スプロケット、8,9…ジョイント用リンク軸、10、11…軸受ホルダー、10a,11a…軸受ローラ(軸受)、12,13…鍔付ラジアル軸受、14,15…リンクプレート、16…検出片、17…検出器、18…巻取機、19…巻取装置制御盤、20…延伸機制御盤、P2…掴みピッチ、P3…検出器の設置ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のシート状物の端部を把持する複数の掴み装置を前記シート状物の両側端に具備し、折尺状に形成された複数個の等長リンク装置より構成された無端リンク装置を設け、該無端リンク装置をシート状物の入口側スプロケットより駆動することにより進行方向に末広がり状に配置されたガイドレールに案内されて前記掴み装置の掴みピッチを徐々に拡大させて前記端部が把持されたシート状物を縦横二方向に同時に延伸し、さらに該延伸後前記シート状物の端部を前記掴み装置から外して前記無端リンク装置を出口側スプロケットにより駆動して前記入口側スプロケットに戻るように構成したシート状物の延伸機において、
前記複数個の等長リンク装置の各リンクに設けられた検出片と、シート状物の出口側に設けられ前記検出片の移動速度を検出する検出器と、この検出器で検出された移動速度に基いて速度指令を発する延伸機制御盤と、この速度指令により巻取り速度を制御されるシート状物の巻取り装置を備えたことを特徴とするシート状物の同時二軸延伸機。
【請求項2】
前記検出片は前記掴み装置の近傍位置に設けられ、前記検出器は前記掴み装置の掴みピッチが最大ピッチとなってその後変化しない位置に設置されることを特徴とする請求項1記載のシート状物の延伸機。
【請求項3】
前記検出器は、前記検出片の移動方向に所定ピッチだけ離して少なくても2個設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物の延伸機。
【請求項4】
前記検出器は、前記掴み装置の最大掴みピッチより小さなピッチだけ離して少なくても2個設けられていることを特徴とする請求項3記載のシート状物の延伸機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−292045(P2009−292045A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148041(P2008−148041)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】