説明

シート用サスペンション装置

【課題】X型リンク機構のリンクアームの可動端部に設けられるローラをガタが生じることなくロアフレームおよびアッパーフレームに組み込むことができるとともにローラの摩耗を抑えることができるシート用サスペンション装置を提供する。
【解決手段】リンク機構30の各リンクアーム31,32の後端部(可動端部)に、可動軸31B,32Bを介してスライダ70とローラ60を回転可能に設け、常に、ローラ60の上下方向の外側の端面のみをレールメンバー11,21のローラ当接部53aに当接させるとともに、スライダ70の上下方向の内側の端面のみをレールメンバー11,21の幅小板部52(スライダ当接部)に当接させることにより、ローラ60にガタを生じさせず、かつ、ローラ60の摩耗を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両用のシートを支持するサスペンション装置に係り、特にX型のリンク機構の改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トラックやバス等の大型自動車のシートにおいては、X型のリンク機構を用いたエアサスペンション装置が用いられている(特許文献1,2等参照)。この種のサスペンション装置は、フロア等の固定部材に固定されるロアフレームの上方にX型のリンク機構を介してアッパーフレームが上下動可能に支持され、アッパーフレームに車両用シートのシートクッションが固定され、ロアフレームとアッパーフレームとの間に、シートに着座した乗員の荷重をアッパーフレームを介して受けるエアスプリング等の緩衝手段が配されている。
【0003】
リンク機構は、一対のリンクアームがリンク軸を介してX状に組まれ、上下方向に伸縮可能とされた構成である。ロアフレームとアッパーフレームは、前後方向に延びる左右一対のメンバーを有し、リンク機構の一対のリンクアームは、前後の端部のうちの一方の端部が固定端部とされてロアフレームおよびアッパーフレームにそれぞれ回転可能に支持されている。リンクアームの他端部は可動端部とされてローラが回転可能に設けられており、これらローラが、ロアフレームおよびアッパーフレームに設けられた断面コ字状のレール状部分に嵌合され、リンク機構が伸縮するに伴い、ローラがロアフレームおよびアッパーフレームを転動するように構成されている(特許文献2,3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−117543号公報
【特許文献2】実開平7−24635号公報
【特許文献3】特開2006−219123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のサスペンション装置にあっては、リンクアームの可動端部に設けられてロアフレームおよびアッパーフレームを転動するローラは、これらフレームにおける断面コ字状のレール状部分に回転可能に収容されている。したがってローラと各フレームとの間にはどうしても隙間が生じ、これがガタを生じさせることになっていた。また、ローラは、POM(ポリオキシメチレン)等の摺動性や滑走性に優れた樹脂製が用いられるが、フレームに対する摩擦が大きくなると転動せずに摺動してしまい、ローラの周面の一部が偏って摩耗しまう場合があった。このような偏摩耗は、ローラの転動を阻害して摩耗の促進を招くため、抑制されねばならない。
【0006】
よって本発明は、X型リンク機構のリンクアームの可動端部に設けられるローラをガタが生じることなくロアフレームおよびアッパーフレームに組み込むことができるとともにローラの摩耗を抑えることができるシート用サスペンション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート用サスペンション装置は、ロアフレームと、このロアフレームの上方に配され、シートを支持するアッパーフレームと、リンク軸を介してX状に組まれた一対のリンクアームを有し、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持するリンク機構と、前記アッパーフレームにかかる荷重を緩衝する緩衝手段とを備えたシート用サスペンション装置において、前記一対のリンクアームの各可動端部には、前記リンク軸と平行な回転軸を介してローラが回転可能に支持されるとともに、該ローラの軸方向に隣接してスライダが設けられ、前記ロアフレームと前記アッパーフレームには、前記スライダの上端面または下端面のうちの一方側のみが当接し、前記リンク機構の伸縮に伴って該スライダが前後方向に摺動するスライダ当接部と、前記ローラの上端面または下端面のうちの前記スライダが前記スライダ当接部に当接している面とは反対側の面のみが当接し、前記リンク機構の伸縮に伴って該ローラが前後方向に転動するローラ当接部とを有するリンクガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、スライダの上端面または下端面のうちの一方側がロアフレームおよびアッパーフレームに常に当接し、ローラの上端面または下端面のうちの他方側(スライダの上端面が当接している場合には下端面、スライダの下端面が当接している場合には上端面)がロアフレームおよびアッパーフレームに常に当接する。このようにスライダとローラとでロアフレームおよびアッパーフレームにそれぞれ当接する1組のガイド部材を構成することにより、ローラはガタなく各フレームに組み込まれる。また、スライダがロアフレームおよびアッパーフレームに摺動することによりローラへの荷重が減少するため、ローラが摺動しても摩耗しにくい。
【0009】
本発明では、前記アッパーフレーム側の前記リンクガイド部においては、前記スライダの下端面のみが前記スライダ当接部に当接し、前記ローラの上端面のみが前記ローラ当接部に当接し、前記ロアフレーム側の前記リンクガイド部においては、前記スライダの上端面のみが前記スライダ当接部に当接し、前記ローラの下端面のみが前記ローラ当接部に当接する形態を含む。この形態では、アッパーフレームが下降するシートのバウンド時においてローラが各フレームに大きな荷重で当接する。すなわち、スライダよりも、転動するローラが大きな荷重を受けるように設定しており、このため、大きな荷重による摩擦が低減する。なお、アッパーフレームが上昇するシートのリバウンド時にはローラよりもスライダが各フレームに大きな荷重で当接するが、リバウンド時の荷重はバウンド時の荷重よりも小さく、スライダの摺動抵抗も小さい。これらのことから、リンク機構は円滑に作動する。
【0010】
また、本発明の前記リンクガイド部は、具体的には、前後方向に延びる上下一対の水平板部と、これら水平板部の幅方向一端部を連結する縦板部とからなる断面コ字状に形成され、一方の水平板部が前記スライダ当接部を有し、他方の水平板部が前記ローラ当接部を有している形態が挙げられる。
【0011】
また、本発明では、前記スライダの前記スライダ当接部に対する接触面積が、前記ローラの前記ローラ当接部に対する接触面積よりも大きい形態を含む。この形態によれば、スライダで受ける荷重が大きくなり、ローラの摩擦を低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、X型リンク機構のリンクアームの可動端部に設けられるローラをガタが生じることなくロアフレームおよびアッパーフレームに組み込むことができるとともにローラの摩耗を抑えることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート用サスペンション装置の全体を示す斜視図である。
【図2】同装置の全体側面図である。
【図3】図2のIII−III矢視に相当する図であって、上下のレールメンバーに対するリンクアームのガイド構造を示す断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図3のV−V矢視におけるスライダおよび先端軸部を示す断面図である。
【図6】スライダの斜視図であって、(a)外側の端面、(b)内側の端面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るシート用サスペンション装置の一実施形態を説明する。
【0015】
(1)基本構成
図1は一実施形態に係る車両用シートのサスペンション装置1の全体を示す斜視図であり、図2は同装置1の側面図である。このサスペンション装置1は、水平に設置されて互いに平行な上下のアッパーフレーム10およびロアフレーム20と、ロアフレーム20に対しアッパーフレーム10を上下動可能に支持する左右一対のリンク機構30を備えている。図1および図2の矢印Fは車両に組み込まれた状態での前方、矢印Rは後方を示しており、以下の説明での前後方向、左右方向および上下方向は、これら図面に基づくものとする。
【0016】
アッパーフレーム10上には、図示せぬ車両用シートのシートクッションが設置される。図2に示すように、アッパーフレーム10とロアフレーム20との間には、シートクッションを介してアッパーフレーム10が上方から受ける荷重を受けるエアスプリング40と、このエアスプリング40の振動を吸収する油圧シリンダ式のダンパ41が配設されている。
【0017】
ロアフレーム20は、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー21と、レールメンバー21の前端部どうし、および後端部どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー22とを備えている。ロアフレーム20は、前端部および後端部にそれぞれ左右一対に設けられたブラケット23,24を介して、図示せぬ車両のフロアに水平に固定される。
【0018】
ロアフレーム20の上方に平行に配設されたアッパーフレーム10もロアフレーム20と同様の構成であって、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー11と、レールメンバー11の前端部どうし、および後端部どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー12とを備えている。
【0019】
左右一対のリンク機構30は、2本のリンクアーム31,32、すなわち、前上がりに傾斜するリンクアーム31と前下がりに傾斜するリンクアーム32の中間部がリンク軸33を介してX状に組まれ、リンク軸33を支点として相対回転可能とされたものである。リンク機構30はリンク軸33を共有しており、換言すると、1本のリンク軸33の両端部に、リンク機構30の2本のリンクアーム31,32がそれぞれ回転可能に支持されている。
【0020】
図2に示すように、左右のリンク機構30における前上がり側のリンクアーム31は、前端部が左右方向に延びる固定軸31Aを介してアッパーフレーム10の各レールメンバーの前端部に回転可能に支持され、またこれと同様に、前下がり側のリンクアーム32は、前端部が左右方向に延びる固定軸32Aを介してロアフレーム20の各レールメンバー21に回転可能に支持されている。アッパーフレーム10側の固定軸31Aは、左右一対のレールメンバー11の前端部に架け渡されてこれらレールメンバー11に固定されており、ロアフレーム20側の固定軸32Aは、左右一対のレールメンバー21の前端部に架け渡されて固定されている。
【0021】
一方、各リンクアーム31,32の後端部は前後方向に移動可能な可動端部となっており、これら後端部は、可動軸31B,32Bを介して、それぞれアッパーフレーム10およびロアフレーム20の各レールメンバー11,21に沿って前後方向に移動可能に支持されている。アッパーフレーム10側の可動軸31Bは、左右一対のレールメンバー11の後端部に架け渡され、これらレールメンバー11に沿って前後方向に移動可能に支持されている。また、ロアフレーム20側の可動軸32Bは、左右一対のレールメンバー21の後端部に架け渡され、これらレールメンバー21に沿って前後方向に移動可能に支持されている。
【0022】
左右のリンク機構30は、ロアフレーム20側の固定軸32Aを支点として伸縮し、伸縮に伴ってアッパーフレーム10が昇降する。すなわち、リンクアーム31,32が開くようにして立ち上がるとリンク機構30は上方に伸張してアッパーフレーム10が上昇し、リンクアーム31,32が閉じるように折り畳まれるとリンク機構30は下方に縮小してアッパーフレーム10が下降する。リンク機構30が伸張してアッパーフレーム10が上昇する際には、各リンクアーム31,32の後端部は可動軸31B,32Bとともに前方の固定軸31A,32Aにそれぞれ接近し、縮小してアッパーフレーム10が下降する際には、各リンクアーム31,32の後端部は可動軸31B,32Bとともに固定軸31A,32Aから離間する。
【0023】
アッパーフレーム10内には、アッパーフレーム10と一体に昇降する受圧板13が固定されており、この受圧板13に、上記エアスプリング40の上端部が固定されている。エアスプリング40には、図示せぬエア供給源から圧縮空気が供給され、また、内部の空気が排気される。エアスプリング40に対する給排気は、ロアフレーム20内に配置されたバルブ42を操作することによってなされる。
【0024】
アッパーフレーム10上に設置されたシートに着座する乗員の荷重は、受圧板13を介してエアスプリング40で受けられ、緩衝される。また、エアスプリング40は、空気が供給されると上方に膨出し、これによりアッパーフレーム10が上昇してシートが高く調整され、排気されると下方に縮小し、これによりアッパーフレーム10が下降してシートを低く調整される。車両がエアブレーキ装置を備えている場合には、該エアブレーキ装置用のエアコンプレッサをエアスプリング40のエア供給源とすることができる。
【0025】
上記ダンパ41は、エアスプリング40に生じる振動を吸収するもので、上端部が一方のリンク機構30(この場合、前方に向かって左側のリンク機構30)の前下がり側のリンクアーム32の上端部に軸受けロッド34を介して回転可能に、また、他端部がロアフレーム20側の固定軸32Aに回転可能に装着されている。このダンパ41はリンク機構30の伸縮に追従して伸縮し、伸縮時の抵抗作用により、エアスプリング40に生じる振動が吸収されてシートの上下動が緩衝される。
【0026】
図1で符号15はアッパーフレーム10の前端部に設けられたフックであり、このフック15をロアフレーム20の前端部に設けられたピン25に掛けることにより、アッパーフレーム10の昇降が強制的に停止させられるようになっている。
【0027】
(2)リンクアームのガイド構造
以上が一実施形態のサスペンション装置1の基本構成であり、次いで、本発明に係る、リンク機構30における各リンクアーム31,32をレールメンバー11,21に沿って移動させるガイド構造について説明する。
【0028】
図3に示すように、アッパーフレーム10側およびロアフレーム20側の各レールメンバー11,21は、内側に溝部51を有する断面コ字状に形成されたもので、前後方向に延びる互いに平行な上下一対の水平板部52,53と、これら水平板部52,53の幅方向の外側の端部を連結する縦板部54を有している。図3は左側のレールメンバー11,21を示しており、右側のレールメンバー11,21は左右対称の同じ構造である。
【0029】
上下のレールメンバー11,21の各水平板部52,53は幅が異なっており、幅が大きな水平板部(以下、幅大板部)53が上下方向の外側にそれぞれ配され、幅が小さな水平板部(以下、幅小板部)52が上下方向の内側にそれぞれ配された上下対称の構造となっている。幅大板部53は、幅小板部52よりも左右方向内側に突出しており、その突出端部は、ローラ当接部53aとされる。
【0030】
リンクアーム31,32の後端部が回転可能に支持される上記可動軸31B,32Bの両端部には、小径の先端軸部31b、32bがそれぞれ同心状に形成されている。そしてこれら先端軸部31b、32bに、内側から、ローラ60と、矩形状のブロック体からなるスライダ70とが、回転可能に嵌合されている。スライダ70は、一端面の中央部に円形の凹所71が形成され、この凹所71の内周面には、図5に示すように、摩擦を低減させるための複数の軸方向に延びる溝71aが形成されている。
【0031】
上下の可動軸31B,32Bの両端部に上記のように設けられたローラ60およびスライダ70は、図3に示すように、先端側のスライダ70が、上下のレールメンバー11,21の溝部51内に幅大板部53と幅小板部52とに挟み込まれた状態で収容され、スライダ70の内側のローラ60が、幅大板部53のローラ当接部53aの内面に当接した状態に組み込まれる。
【0032】
このような組み込み状態で、常に、スライダ70は4辺の平面のうちの一面のみが幅小板部52の内面に当接し、かつ、幅大板部53には当接せず幅大板部53との間に隙間56が形成される。また、常に、ローラ60は幅大板部53のローラ当接部53aのみに当接し、かつ、幅小板部52には当接しない。
【0033】
すなわち、アッパーフレーム10側においては、スライダ70の下端面のみが幅小板部52に当接し、ローラ60は上端面のみが幅大板部53のローラ当接部53aに当接して下方が開放している。また、ロアフレーム20側においては、スライダ70の上端面のみが幅小板部52に当接し、ローラ60は下端面のみが幅大板部53のローラ当接部53aに当接して上方が開放している。スライダ70およびローラ60をこのように上下のレールメンバー11,21に接触させるには、スライダ70の形状や寸法、スライダ70と先端軸部31b、32bとの位置関係、ローラ60の外径寸法、スライダ70とローラ60の位置関係等を適宜に調整することによって可能とされる。
【0034】
また、図6に示すように、スライダ70の、ローラ60側の端面および縦板部54側の端面には、それぞれ環状の内側スペーサ72および外側スペーサ73が凹所71と同心状に形成されている。内側スペーサ72は全周にわたって高さが均一であるが、外側スペーサ73には軸方向に延びる複数の切欠き73aが等間隔をおいて形成されている。さらに、図3に示すように、凹所71の底部の中心には、凸部74が形成されている。ローラ60は、内側スペーサ72に当接することによりスライダ70との摩擦が低減されるとともに軸方向のガタが抑えられる。また、スライダ70は外側スペーサ73がレールメンバー11,21の縦板部54に当接することにガタが抑えられ、また、凸部74に先端軸部31b,32bの先端面が当接することにより、可動軸31B,32Bの軸方向のガタが抑えられる。
【0035】
ローラ60およびスライダ70は適宜な材料で構成されるが、例えばローラ60は前述のPOM等の摺動性や滑走性に優れた樹脂で構成される。また、スライダ70は、例えば炭素繊維含有でさらに含有タイプのPOMが好適である。
【0036】
このようなリンクアームのガイド構造によると、リンク機構30が伸縮してアッパーフレーム10が昇降する際には、スライダ70が先端軸部31b,32bに対して相対回転しながら幅小板部52の内面に前後方向に摺動するとともに、ローラ60が幅大板部53のローラ当接部53aの内面を転動する。これによりリンクアーム31,32の後端部は、可動軸31B,32Bを介しレールメンバー11,21に沿って前後方向に移動する。
【0037】
本実施形態においては、上下のレールメンバー11,21の後端部であってリンク機構30が伸縮するに伴いスライダ70およびローラ60が移動する領域が、リンクガイド部11A,21Aとされる。本実施形態では、上下のレールメンバー11,21の全長にわたって幅大板部53のローラ当接部53aが形成されているが、少なくともリンクガイド部11A,21Aのみにローラ当接部53aが形成されていればよい。
【0038】
本実施形態によれば、上下のレールメンバー11,21の溝部51内に対し、常に、スライダ70の上下方向の内側の端面のみが当接し、かつ、ローラ60の上下方向の外側の端面のみが当接するように組み込まれるため、径方向へのローラ60のガタを防ぐことができる。また、スライダ70が各レールメンバー11,21の幅小板部52に摺動することによりローラ60への荷重が減少するため、ローラ60が摺動しても摩耗しにくいものとなっている。
【0039】
また、本実施形態においては、アッパーフレーム10が下降するシートのバウンド時においてローラ60が各レールメンバー11,21のローラ当接部53aに大きな荷重で当接する。すなわち、スライダ70よりも、転動するローラ60が大きな荷重を受けるように設定している。このため、ローラ60およびスライダ70は、ともに大きな荷重による摩擦が低減する。なお、アッパーフレーム10が上昇するシートのリバウンド時にはローラ60よりもスライダ70が各レールメンバー11,21の幅小板部52に大きな荷重で当接するが、リバウンド時の荷重はバウンド時の荷重よりも小さく、スライダ70の摺動抵抗も小さい。これらのことから、リンク機構30は円滑に作動する。
【0040】
また、ローラ60のローラ当接部53aへの接触面積に比べるとスライダ70の幅小板部52に対する接触面積の方が大きいため、スライダ70で受ける荷重がローラ60よりも大きく、これによってもローラ60の摩擦を低減させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…サスペンション装置、10…アッパーフレーム、11A,11B…リンクガイド部、20…ロアフレーム、30…リンク機構、31,32…リンクアーム、31b,32b…先端軸部(回転軸)、33…リンク軸、40…エアスプリング(緩衝手段)、52…幅小板部(水平板部、スライダ当接部)、53…水平板部、53a…ローラ当接部、54…縦板部、60…ローラ、70…スライダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフレームと、
このロアフレームの上方に配され、シートを支持するアッパーフレームと、
リンク軸を介してX状に組まれた一対のリンクアームを有し、前記ロアフレームに対して前記アッパーフレームを上下動可能に支持するリンク機構と、
前記アッパーフレームにかかる荷重を緩衝する緩衝手段と、
を備えたシート用サスペンション装置において、
前記一対のリンクアームの各可動端部には、前記リンク軸と平行な回転軸を介してローラが回転可能に支持されるとともに、該ローラの軸方向に隣接してスライダが設けられ、
前記ロアフレームと前記アッパーフレームには、
前記スライダの上端面または下端面のうちの一方側のみが当接し、前記リンク機構の伸縮に伴って該スライダが前後方向に摺動するスライダ当接部と、前記ローラの上端面または下端面のうちの前記スライダが前記スライダ当接部に当接している面とは反対側の面のみが当接し、前記リンク機構の伸縮に伴って該ローラが前後方向に転動するローラ当接部とを有するリンクガイド部が設けられていること
を特徴とするシート用サスペンション装置。
【請求項2】
前記アッパーフレーム側の前記リンクガイド部においては、
前記スライダの下端面のみが前記スライダ当接部に当接し、前記ローラの上端面のみが前記ローラ当接部に当接し、
前記ロアフレーム側の前記リンクガイド部においては、
前記スライダの上端面のみが前記スライダ当接部に当接し、前記ローラの下端面のみが前記ローラ当接部に当接すること
を特徴とする請求項1に記載のシート用サスペンション装置。
【請求項3】
前記リンクガイド部は、前後方向に延びる上下一対の水平板部と、これら水平板部の幅方向一端部を連結する縦板部とからなる断面コ字状に形成され、
一方の水平板部が前記スライダ当接部を有し、他方の水平板部が前記ローラ当接部を有していること
を特徴とする請求項1または2に記載のシート用サスペンション装置。
【請求項4】
前記スライダの前記スライダ当接部に対する接触面積が、前記ローラの前記ローラ当接部に対する接触面積よりも大きいこと
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート用サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206635(P2012−206635A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74417(P2011−74417)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】