説明

シート穿孔装置及びこれを備えた後処理装置

【課題】直線方向に複数配列したパンチ部材を、小型でコンパクトな機構で上下動することが可能であると共に、その製造コストも安価であるシート穿孔装置を提供する。
【解決手段】装置フレームに複数のパンチ部材を所定の間隔を隔てて直線上に配置し、この各パンチと交差する方向(穿孔方向と直交する方向)に駆動モータに連結した回転軸を配置する。各交差部の回転軸側に駆動側歯車手段を、パンチ部材側に受動側歯車手段を互いに噛合するように配置する。このとき駆動側と従動側の歯車手段を食い違い軸歯車で形成すると共に、受動側歯車手段は各パンチ部材を構成するロッド部に穿孔方向に摺動可能に嵌合支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、印刷機、プリンタなどの画像形成装置から搬出されるシートにパンチ穴を穿孔する穿孔装置及びこの穿孔装置を備えた画像形成装置などの後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙などの紙葉類にファイリング用のパンチ穴を穿孔する穿孔装置は、載台上に1枚若しくは複数枚のシート(束)を載置し、載台の上部に昇降可能に配置したパンチ部材をハンドルレバーの手動操作で押下して穿孔するものと、印刷機、複写機などから搬出されたシートをその経路途中で自動的に穿孔するものが知られている。
【0003】
前者はシート(束)を載置する載台と、この載台上方に円柱状のパンチ部材を上下動自在に配置し、これを操作レバーで押し下げてシートを貫通させる穿孔機構として広く知られている。
また、後者は順次搬出されるシートを所定の処理位置にセットし、これにパンチ部材を駆動モータで押下して穴あけする穿孔機構として印刷システムの仕上げ装置などに組み込まれて使用されている。
そしてこれらの装置は、2個所、3個所若しくは4個所など統一した規格に従って穴数、穴間隔が設定されている。
【0004】
そこで従来、後者の装置としては例えば特許文献1に開示されている構造が知られている。同文献には複数のパンチ部材を直線上に配列し、このパンチ部材と直交する方向に往復動するカム板を設けた穿孔機構が開示されている。
そしてカム板に設けた溝カムにパンチ部材のフォロアピンを係合し、カム板の移動でパンチ部材が上下動することによってシートに穿孔するように構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、直線上に配列した複数のパンチ部材を、回転軸に設けた偏心カムと係合し、この回転軸の回転でパンチ部材を穿孔方向に作動する穿孔機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−009791号公報(図6乃至図8)
【特許文献2】特開2001−026370号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように複数のパンチ部材をカム機構で穿孔方向に上下動する際に、前述の特許文献1のように駆動モータに連結したカムプレートなどのスライド部材をパンチ部材と直交する方向に所定ストロークで往復動移動可能に配置し、このカムプレートに駆動モータを連結するか、或いは前述の特許文献2のように駆動回転軸に偏心カムを設け、このカムで複数のパンチ部材を上下動するか、いずれかの方法が採られている。
【0008】
上記特許文献1のようにパンチの穿孔方向と直交する方向にカムプレートなどのスライド部材を所定ストロークで往復動可能に配置すると次の不都合がある。
複数のパンチ部材をシート幅方向に所定間隔で配列し、このパンチ列と同方向(シート幅方向)にカムプレートなどのスライド部材を所定ストロークで往復動可能に配置するため、スライド部材自体及びこれを支持するフレーム機構がシート幅方向に大型となる。
つまり、ユニットフレームがシート幅方向に長尺となり大型化とコスト高の問題を招く。
【0009】
上記特許文献2のように、パンチ列の上方に駆動軸と、これに嵌挿した偏心カムを配置すると次の不都合がある。
直線配列されたパンチ部材に対し、その穿孔方向の上方に駆動軸と偏心カムを配置しているため、装置の高さ寸法が大きくなり大型化とコスト高の問題を招くこととなる。
【0010】
また、複数のパンチ部材と交差する方向(食い違い軸関係;non-parallel and non-intersecting axes)に駆動軸を配置し、各パンチ部材に歯車機構で回転運動を伝達し、その回転をカム機構で穿孔方向に変換する。このときパンチ部材側に溝カム(逆V字状溝)を、フレーム側にカムピン(カムフォロア)を配置すると、各パンチ部材は溝カムに沿ってカムピンから反作用を受ける。このシートの穿孔負荷によって各パンチ部材がカムピンから受ける反作用は軸部材を曲げるようなベンディング力として作用する。
【0011】
このとき、各カムピンと歯車機構の歯先係合部が180度異なった反対方向に位置すると、カムピンがカム面に作用する力は、上方の待機位置から穿孔位置に移動するときには、その反対方向に反力として作用するから各パンチ部材にはカム係合部を中心に反り返えらせる力が作用する。
この力の影響でパンチ部材とフレームとの軸受部のクリアランス、或いはパンチ部材自体の弾性変形によってパンチ部材はカムピンから反対側に逃れる方向に反り返る。このパンチ部材の反り返り方向に歯先係合部が位置するとバッククラッシュ(刃先の動作間隙)が失われる。
これによってパンチ部材にマウントされている受動歯車とフレームにマウントされている駆動歯車は噛みついて動作不良を引き起こし、ロック状態となる。
【0012】
このような不具合化が生ずると、駆動モータに連結された駆動側歯車と各パンチ部材に一体的に配置された受動歯車は運動不能に陥り、故障の原因となる。
本発明者は、駆動系の動作不良が、カム機構部に作用する負荷重と歯車機構の噛合い部との角度位置に影響することを究明した。そしてこの角度位置が±45度(計90度)範囲が好適であることを究明した。
【0013】
上述したように従来は、直線上に配列した複数のパンチ部材を、その配列方向に所定ストロークで往復動するスライド部材で上下動するか、パンチ列の上方に配置した偏心カムで上下動するか、いずれかの機構であるため、装置の大型化とコスト高を招いている。
【0014】
本発明は、直線方向に複数配列したパンチ部材を、小型でコンパクトな機構で上下動することが可能であると共に、その製造コストも安価である紙葉類穿孔装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
なお本発明にあって「食い違い軸とは、互いに交差することも平行でもない2つの軸関係を云い、「食い違い軸歯車」とは食い違い軸を連結するねじ歯車、ウォーム歯車、ハイポイド歯車などの歯車を云いう。
上記課題を達成するため本発明は、装置フレームに複数のパンチ部材を所定の間隔を隔てて直線上に配置し、この各パンチと交差する方向(穿孔方向と直交する方向)に駆動モータに連結した回転軸を配置する。各交差部の回転軸側に駆動側歯車手段を、パンチ部材側に受動側歯車手段を互いに噛合するように配置する。
このとき駆動側と従動側の歯車手段を食い違い軸歯車で形成すると共に、受動側歯車手段は各パンチ部材を構成するロッド部に穿孔方向に摺動可能に嵌合支持することを特徴としている。
【0016】
また、各パンチ部材の受動歯車と、駆動回転軸の駆動歯車とを噛合する歯先係合部(歯車噛合部)と、各パンチ部材に設けたV字状溝カムとカムピンのカム係合部との角度関係を同一方向に配置するか、若しくはその位置から±45度以内の角度位置に配置する。
これによってカム係合部に作用する穿孔負荷でパンチ部材が傾くとき歯先係合部は互いに離れる方向となり、バックラッシュがゼロとなるように接近することがない。従って円滑な刃車伝動が保証されることとなる。
【0017】
更にその構成を詳述すると紙葉類に複数のパンチ穴を穿孔する装置であって、所定間隔で直線上に配列された複数のパンチ部材(40)と複数のパンチ部材を往復動可能に支持する装置フレーム(30)と複数のパンチ部材を穿孔方向に往復動する駆動手段(50)とを備える。
複数のパンチ部材は先端に穿孔刃(41)を基端にロッド部(42)を有すると共にこのロッド部を装置フレームに往復動可能に軸受け支持され、前記駆動手段は駆動モータ(M)とこの駆動モータの回転を複数のパンチ部材各々に回転運動として伝達する伝動手段(51)と各パンチ部材と装置フレームとの間に配置されたカム手段(45)とで構成され伝動手段は駆動モータに連結する。
【0018】
パンチ部材の穿孔方向と直交する方向で複数のパンチ部材それぞれと交差するように配置された回転軸(52)とこの回転軸に取付けられた駆動側歯車手段(55)と各パンチ部材に取付けられた受動側歯車手段(44)とで構成され回転軸と複数のパンチ部材とは、互いに食い違い軸関係に配置されていると共に駆動側歯車手段と受動側歯車手段は食い違い軸歯車で互いに噛合するように構成され、前記カム手段は、各パンチ部材と装置フレームとの間に配置され、受動側歯車手段でパンチ部材を回転しながら穿孔方向に移動するように構成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、直線上に配列した複数のパンチ部材に対して、穿孔方向と直交する回転軸から各パンチ部材に回転運動を伝達し、パンチ部材と装置フレームとの間のカム手段でパンチ部材を回転しながら穿孔方向に移動するようにしたものであるから以下の効果を奏する。
【0020】
複数のパンチ部材と回転軸とは食い違い軸関係に配置されると共にウォーム歯車、ネジ歯車、ハイポイド歯車などの食い違い軸歯車で回転軸の回転をパンチ部材に伝達するから装置幅方向の小型化と、動力伝達機構を簡素化することが出来る。
【0021】
この場合、装置幅方向の小型化は、パンチ部材の配列方向に配置した回転軸の駆動回転をこれと直交するパンチ部材のロッド部に回転運動として伝達しているのでパンチ配列方向に所定ストロークで往復動するスライドカムなどのカム機構を用いる必要が無く装置幅方向の小型化が達成される。
【0022】
また、動力伝達機構を簡素化は、複数のパンチ部材の各ロッド部と駆動モータに連結した回転軸とは食い違い軸関係に配置される。このため複数のパンチ部材の各ロッド部は両端をフレームに軸受け支持され、正しい位置に正しい姿勢で位置決めされることとなり、駆動モータから各パンチ部材に至る動力伝達機構の簡素化が達成される。
【0023】
直線上に配列した複数のパンチ部材と食い違い軸関係に駆動モータに連結した駆動回転軸を配置し、この各パンチ部材側にV字状溝カムと受動歯車を配置し、装置フレーム側に駆動歯車とカムピンを配置し、各パンチ部材の回転軸中心に対して歯車噛合部とカム係合部を同一角度位置に配置したものであるから、穿孔負荷がカムピンから溝カムに作用すると各パンチ部材はカムピンから反り返る方向に傾く力(反力)を受ける。この穿孔動作の反力によってパンチ部材は軸受支持部のクリアランス、パンチ軸の弾性変形で反り返.方向に傾く。
【0024】
このとき各パンチ部材の受動歯車は、装置フレーム側の駆動歯車と離れる方向に変位するから両歯車間にバックラッシュが確実に確保され互いの噛合運動を損なうことがなく円滑な伝動動作が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる紙葉類穿孔装置の一実施形態を示す説明図であり、装置全体の斜視構成図を示す。
【図2】図1の装置における回転軸とパンチ部材の伝動系を示す要部説明図。
【図3】図1の装置における各パンチ部材の縦断面と、X−X線横断面の説明図。
【図4】図1の装置の駆動機構部の正面構成の説明図。
【図5】(a)は図1の装置のパンチ部材の配列構成の説明図であり、(b)(c)(d)は各パンチ部材の刃先形状の異なる形態を示す。
【図6】図1の装置の動作状態説明図であり、(a)はパンチ部材が上死点に位置する待機状態を示し、(b)はパンチ部材が下死点に位置する穿孔状態を示す。また、(c)は各パチン部材に一体形成した溝カムの形状説明図。
【図7】第1第2グループのパンチ部材に形成された溝カムの形状を示す説明図であり、(a)は溝カムを平面状態に展開したカム線図であり、(b)は各パンチ部材の角度位置関係を示す説明図。
【図8】図1の装置における各パンチ部材とフレーム構造を示し、(a)はその組み立て分解図、(b)はフレーム形状が異なる形態の組み立て分解図を示す。
【図9】第1第2グループのパンチ部材の動作制御方法の概念を示すフローチャートである。
【図10】図1の装置の制御構成を示す説明図。
【図11】図1と異なる実施形態(第2実施形態)を示す斜視構成図。
【図12】図1及び図11の装置における各パンチ部材の歯車噛合部とカム係合部の角度位置関係を示す説明図であり、(a)はカム係合部と歯車噛合部とが同一角度位置の状態を示し、(b)は+45°方向に離れた角度位置を、(c)は−45°方向に離れた角度位置を示す。
【図13】本発明に係わる穿孔装置を内蔵した画像形成システムにおける後処理装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる紙葉類穿孔装置の全体構成を示す斜視図であり、図2は伝動系の要部説明図である。図3は図1の装置の断面図を示し、図4及び図5は正面図を示す。
【0027】
[第1実施形態]
図1に示すシート穿孔装置Aはシートに2穴又は3穴の穿孔を選択的に施す装置構成を示す。シート穿孔装置Aは装置フレーム30とパンチ部材40と駆動手段50で構成されている。
【0028】
装置フレーム30は、シートを載置する紙載フレーム35とパンチ部材40を装備するベースフレーム31で構成されている。紙載フレーム35はシートを載置する為に少なくともシート幅(シート搬送方向と直交する長さ)Lxより長く形成され、シートを載置して支持する。
この紙載フレーム35には後述するパンチ部材40と対向する位置にダイ(刃受孔)38が設けられている。そして紙載フレーム35の下方にはダイ38から落下した屑紙片を収納する屑ボックス33が設けられている。
【0029】
また、ベースフレーム31は、紙載フレーム35との間にシートを挿入する隙間Sdを形成してその上方に配置されている。つまりシートの挿入隙間Sdを形成して下方に紙載フレーム35が、上方にベースフレーム31が配置されている。
このベースフレーム31には、複数のパンチ部材40a〜40eが直線上に所定間隔でそれぞれ穿孔方向(図1上下方向)に上下動可能に支持されている。
【0030】
図示のベースフレーム31は、図3にその断面形状を示すように断面コの字状のチャンネル材で構成され、上部フレーム31aと下部フレーム31bが上下に間隔を隔てて対向配置されている。
この上部フレーム31aに後述するパンチ部材40の上半部が軸受孔31gに軸受支持され、パンチ部材の下半部が軸受孔31hに軸受支持されている。
このようにベースフレーム31は必ずしも断面コの字状に形成する必要はないが、パンチ部材40を上下2個所で軸受支持することが好ましい。
【0031】
紙載フレーム35には前述したようにダイ(刃受孔)38が設けられ、パンチ部材40の穿孔動作で屑紙片は下方に落下する。この紙載フレーム35には屑ボックス33が配置してあり、このボックス内に屑紙片を収納する。
このとき、パンチ部材40を回転することなく穿孔方向にのみ上下移動する穿孔機構では、屑紙片が落下するダイ38の直下に山盛り状態に積み上がる。
このため屑ボックス33内には収納可能な空間が存在しても部分的に山積した屑紙片がダイ38からあふれて装置内に散乱しないように満杯として処理しなければならない
本発明はパンチ部材40をシートの穿孔の都度回転方向も反転させるから、ダイ38から落下する屑紙片は右方向あるいは左方向に広範に分散される。このため屑ボックス33内に収納する屑紙片の許容容量が増大する。
【0032】
パンチ部材40は穿孔数に応じて複数で構成され、図示のものは同一の構造で5つのパンチ部材40a〜40eで構成されている。各パンチ部材40は図3に示すように先端に穿孔刃41が、基端に軸状のパンチ軸(ロッド部)42が形成されている。
【0033】
穿孔刃41は円筒形状を斜裁した断面U字形状或いは円筒形状を擦り割りした断面逆V字形状など、先鋭形状であると共に左右旋回時に回転切刃を有する形状に構成する。
これと共に穿孔刃41は回転方向に切り刃を有するように逆V字形状(図5(b))、逆U字形状(図5(c))、或いは斜裁形状(図5(d))形成されている。
このように穿孔刃41はパンチ部材40を穿孔方向に回転しながら穿孔方向に移動する際に、シートに穿孔方向のせん断力と、回転方向のせん断力の両方を作用させるためである。
【0034】
パンチ部材40の基端はパンチ軸42で構成され、このパンチ軸42は断面が円形形状の軸形状に形成され、前述のベースフレーム31に軸支持されている。特に図示のパンチ軸は断面円形状で、上部の軸受孔31gと下部の軸受孔31hに回転可能に嵌合されている。
【0035】
また各パンチ部材40には、駆動モータMの回転で穿孔刃41を回転と同時に穿孔方向に推進する受動歯車(受動側歯車手段;以下同様)44と円筒カム(カム手段)45が設けられている。受動歯車44は各パンチ部材40のパンチ軸42に後述するキィ構造で取付けられ駆動手段50から各パンチ部材40に回転運動を伝達する。
円筒カム45は各パンチ部材40に回転運動を穿孔方向(図1上下方向)に変換するためパンチ部材40とベースフレーム31との間に設けられる。
【0036】
駆動手段50は、駆動モータMと、このモータの回転を各パンチ部材40に回転運動として伝達する駆動回転軸52と、各パンチ部材40とベースフレーム31との間に設けられた前述の円筒カム45とで構成される。
【0037】
上記駆動モータMは、通常の正逆転モータで構成され、上記駆動手段50は駆動モータMの回転を複数のパンチ部材40に伝達するための駆動回転軸52と、この回転軸の回転をパンチ部材40に回転運動として伝える駆動歯車(駆動側歯車手段;以下同様)55と、これと係合する受動歯車44で構成されている。
【0038】
駆動回転軸52は図1に示すように各パンチ部材40のパンチ軸42と食い違い軸関係(交わらず、かつ平行でもない2軸関係)に形成されている。
図1の装置は駆動回転軸52と各パンチ軸42とは略直交する方向に交差する(食い違い軸関係)ように構成されている。
【0039】
このため駆動回転軸52はベースフレーム31を構成する左右一対の側枠フレーム48a、48bに軸受支持されている(図1参照)。
駆動回転軸52の一端部には傘歯車46が設けられ、駆動モータMの回転軸49からの回転を伝達するための傘歯車56と互いに噛合している。
【0040】
このように駆動モータMで正逆回転可能に構成された駆動回転軸52と食い違い軸関係に配列された複数のパンチ部材40a〜40eのパンチ軸42は互いに食い違い軸歯車で連結され駆動モータMの回転を各パンチ部材に伝達する。
図示の食い違い軸歯車はねじ歯車で構成され、駆動回転軸52に取付けられた駆動歯車55a、55b、55c、55d、55eの捩れ角度と各パンチ部材40a〜40eに取付けられた受動歯車44a、44b、44c、44d、44eの捩れ角度はそれぞれ約45度に設定されている。
【0041】
従って図1の状態で駆動回転軸52を時計方向に回転すると複数のパンチ部材40a〜40eは、それぞれ反時計方向に回転する。
そして受動歯車(ねじ歯車)44と各パンチ部材40のパンチ軸42とは穿孔方向に摺動可能に嵌合されている。図3に示すように受動歯車44は各パンチ部材のパンチ軸42に上下方向に移動可能に遊嵌され、この受動歯車44と各パンチ軸42とは貫挿ピン43と長溝47で係合されている。
【0042】
従って受動歯車44の回転運動はパンチ軸42に貫挿ピン43で伝達され、パンチ軸42はこの受動歯車44と一体に回転する。またパンチ軸42は受動歯車44から分離して長溝47に沿って穿孔方向に移動可能となる。
なお、穿孔方向に遊嵌状態で嵌合するパンチ軸42と受動歯車44とは、長溝−ピン結合の他、キィ−キィ溝結合であっても良い。
パンチ部材40は4本構成、5本構成その他複数本で構成され、4本構成の場合は2穴と4穴パンチ穴を選択可能であり、5本構成の場合は2穴3穴のパンチ穴を選択可能となる。
【0043】
各パンチ部材40のパンチ軸42と受動歯車44とは、次のように嵌合されている。図3に示すように受動歯車44には穿孔方向に長溝47が形成してあり、この溝にパンチ軸42に設けた貫通ピン43が嵌合してある。
このため受動歯車44の回転はパンチ軸42に伝達され、パンチ軸42は受動歯車44と一体に回転し、これと分離した状態で独立して穿孔方向に上下動する。
このとき受動歯車44は駆動歯車55と結合しているため駆動歯車55を一体的に支持する駆動回転軸52によって穿孔方向の位置も固定され、位置保持されている。
【0044】
このように本発明はパンチ軸42を装置フレーム30に回転可能で穿孔方向に摺動可能に支持し。このパンチ軸42に受動歯車44を回転方向には係合し穿孔方向には非係合となるようにピン−スリット構造としたことを特徴としている。
【0045】
上述の駆動歯車55と、受動歯車44とは、歯車の回転中心軸(図1に示すo軸とp軸)が食い違い軸関係(互いに交わることなく平行でもない関係)に配置され、食い違い軸歯車で構成されている。
図1に示す装置(実施形態)はねじ歯車で駆動歯車55と、受動歯車44を構成している。駆動歯車55は+側に45度の捩れ角に、受動歯車44は−側に45度の捩れ角に構成され、両歯車は直交方向で噛合している。
【0046】
[第2実施形態]
また、図11に示す駆動歯車70と、受動歯車75とは、駆動歯車70をウォームギアで、受動歯車75をウォームホイールで構成する場合を示している。この他駆動歯車と、受動歯車とは、図示しないがハイポイドギアで構成しても良い。
【0047】
[カム機構]
次に図3に示すカム機構について説明する。各パンチ部材40a〜40eには、パンチ部材40とベースフレーム31との間にパンチ部材の回転運動を回転と穿孔方向運動に変換する円筒カム(カム手段)45が設けられている。
この円筒カム45はパンチ部材40とベースフレーム31との間に配置され、パンチ部材40の回転運動を回転と同時に穿孔方向(図3上下方向)に移動するように運動変換する。このためパンチ部材40とベースフレーム31の一方にV字状溝カム45Cを、他方にカムピン(カムフォロア)37を設ける。
【0048】
図示のものはパンチ部材40にV字状溝カム45Cを有する円筒カム45を設け、ベースフレーム31にV字状溝カム45Cと係合するカムピン37を設けている。
V字状溝カム45Cはパンチ部材40の回転方向に沿って山形と谷形の波形形状に形成され、カムピン37はフレーム固定されたピンで構成されている。
【0049】
従ってパンチ部材40が図1時計方向に回転し、カムピン37がV字状溝カム45Cの谷形部45x1に位置するとパンチ部材40は待機位置に位置付けされ、カムピン37がV字状溝カム45Cの山形部45x2に位置するとパンチ部材40は穿孔位置に位置づけされる。
このようにパンチ部材40をホームポジションからV字状溝カム45Cの谷形部45x1にカムピン37が位置するように回転制御すると図6(a)の状態にパンチ部材40は上死点に待機する。このとき紙載フレーム35上のシートに対して穿孔刃41は上方に退避した状態に保持され、この位置が待機位置に設定されている。
【0050】
また、パンチ部材40をV字状溝カム45Cの山形部45x2にカムピン37が位置するように回転制御すると図6(b)の状態にパンチ部材40は下死点に位置する。このとき紙載フレーム35上のシートに対して穿孔刃41は貫通した穿孔状態となり、この位置が穿孔位置に設定されている。
【0051】
そこで図示の装置は2穴穿孔(第1グループ)と3穴穿孔(第2グループ)を選択的に実行するため、円筒カム45の回転角度に対して第1グループ用溝カムと第2グループ用溝カムの角度を異ならせている。
例えば円筒カム45の角度ゼロで第1第2グループいずれの溝カムも谷形部45x1で待機位置、円筒カム45の角度90度で第1グループの溝カムは山形部45x2で穿孔位置、第2グループの溝カムは谷形部45x1で待機位置に設定し、円筒カム45の角度180度で第1グループの溝カムは谷形部45x1で待機位置、第2グループの溝カムは山形部45x2で穿孔位置に設定する。
【0052】
すると円筒カム45を0〜90度間で回転すると第1グループのパンチ部材が穿孔運動し、第2グループのパンチ部材は待機位置に保持される。また円筒カムを90〜180度間で回転すると第2グループのパンチ部材が穿孔運動し、第1グループのパンチ部材は待機位置に保持される。尚この場合円筒カムの回転角度範囲は90度180度に限らず360度以内で自由に設定することが出来る。
【0053】
また図示の装置は、2穴穿孔時及び3穴穿孔時に複数のパンチ部材が同時にシートを穿孔しないように溝カムの回転角度に位相差を持たせ、2穴穿孔の場合に第1のパンチ部材が先に穿孔し、次いで第2のパンチ部材が穿孔するように所定角度(例えば5度)位相差を形成している。3穴穿孔の場合も同様に第1パンチ部材、第2、第3のパンチ部材の順に穿孔動作するように角度設定されている。
【0054】
次に図7(a)(b)に従ってカム機構について説明する。図7(a)は、円筒カム45の周面(内周面、外周面)に形成したV字状溝カム45Cの形状を示す展開図である。同図(b)は駆動回転軸52の回転ストロークを示す説明図である。
前述したように複数のパンチ部材40a〜40dには、各パンチ部材40と装置フレーム30との間に円筒カム45が配置してある。
この円筒カム45にはV字状溝カム45Cが設けられている。このV字状溝カム45Cが各パンチ部材40を回転と同時に穿孔方向に移動するように運動変換する。これと共にこのV字状溝カム45Cの有無によってパンチ部材40に穿孔動作を執行させるか否かを選定する。
【0055】
以下、このV字状溝カム45Cと駆動回転軸52の回転角度との関係を図7(b)に従って説明する。
駆動回転軸52の回転で各パンチ部材40は回転し、駆動回転軸52の回転方向を正逆異ならせるとパンチ部材40の回転方向も正逆異なる。駆動回転軸52は後述するモータ制御手段64によって所定回転範囲で正転方向(α角度)と逆転方向(β角度)で往復動する。
そして駆動回転軸52には、予め設定した基準点Hpと第1リターンポジションRp1との間の第1穿孔ストロークSR1及び、基準点Hpと第2リターンポジションRp2との間の第2穿孔ストロークSR2で往復回転動する。
このときSR1=(Hp−Rp1)=α角度、SR2=(Hp−Rp2)=β角度となる。
【0056】
第1穿孔ストロークSR1では、シートに2穴穿孔し、第2穿孔ストロークSR2ではシートに4孔穿孔するように設定されている。この設定は前者で2穴穿孔、後者で3穴穿孔に設定することも可能である。
図示の装置では基準点Hpを境に時計方向回転で第1穿孔ストロークSR1が、反時計方向回転で第2穿孔ストロークSR2が形成されている。
第1穿孔ストロークSR1について説明するが、第2穿孔ストロークSR2も同一の動作を行なうのでその説明を省略する。
【0057】
(第1穿孔ストロークによる2穴穿孔の動作)
後述するモータ制御手段64は、ポジションセンサによって予め設定された基準点Hpから穿孔数によって指定された回転方向(時計方向)に駆動回転軸52を回転させる。この回転で円筒カム45も同方向に回転を開始する。
このとき第1パンチ部材40a,第4パンチ部材40dは回転するが穿孔方向には上下動しない(非穿孔動作)。
駆動回転軸52が回転すると、第2パンチ部材40b、第3パンチ部材40cは基準点Hpから図示v0の間(Hp−v0)は回転のみで穿孔方向には移動しない。
次いで駆動回転軸52の回転でv0−v1間で各パンチ部材は徐々に傾斜カム面(V−カム面)45αに沿って回転と同時に下降動作をする。このパンチ部材40b、40cが最下降したv1のときシートへの穿孔動作が終了する。
【0058】
次いで駆動回転軸52の同方向の回転でパンチ部材40b、40cは傾斜カム面(V−カム面)45αに沿ってv1からv2に回転と同時に上昇する(復帰動作)。
そしてパンチ部材40b、40cが上死点に復帰すると各パンチ部材は回転方向にのみ回転し穿孔方向にはその位置に保持される。
【0059】
このように駆動回転軸52を時計方向に回転すると、第1第4パンチ部材40a、40dは上死点に位置保持され、第2第3パンチ部材40b、40cは上死点から下死点に移動し、上死点に復帰移動する。このとき第2第3パンチ部材40b、40cでシートに2穴穿孔が施される。
なお、第2パンチ部材40bと第3パンチ部材40cの間には時間的な遅れ(位相差Δ2)が形成してあり、この遅れ動作で、駆動モータMに作用する第2第3パンチ部材40b、40cの剪断負荷は軽減されることとなる。
【0060】
そこで後述するモータ制御手段64は、駆動回転軸52を基準点Hpから時計方向に所定角度α回転し、第1穿孔ストロークSR1を実行する。このとき駆動回転軸52は基準点Hpから第1リターンポジションRp1に移動する。この状態で紙載フレーム35にセットされたシートに2穴穿孔を施す。
【0061】
次いでモータ制御手段64は、駆動回転軸52を反時計方向に回転して第1リターンポジションRp1から基準点Hpに反転回転する。するとV字状溝カム45Cとカムピン37はv3位置からv2位置に回転移動した後、各パンチ部材40b、40cは傾斜カム面(V−カム面)45αに沿ってv2からv1に下降動作し、この時穿孔動作が行われる。
次いで引き続く駆動回転軸52の回転で各パンチ部材40は上死点位置に上昇し、基準点Hpに戻る。
このようにパンチ部材40は先行するシートには、例えば時計方向回転で穿孔し、後続するシートには反時計方向回転で穿孔することとなる。
このため、パンチ屑はシート穿孔の都度回転方向が異なるので右方向或いは左方向に換算して屑ボックス33に収納される。
【0062】
本発明は第1穿孔ストロークSR1と第2穿孔ストロークSR2のストローク長を異ならせている。これは穿孔数の多いパンチ動作と少ないパンチ動作では穿孔負荷が異なるためである。
そこで穿孔負荷の小さい第1穿孔ストロークSR1は、穿孔数の多い第2穿孔ストロークSR2により短く設定してある。そして図示角度αと角度βは、角度α<角度βに設定してある。
【0063】
[カム係合部と歯車噛合部の角度位置]
本発明は各パンチ部材40(40a〜40e)に受動歯車44とカム手段45を配置する際に、歯車噛合部Egとカム係合部Ecとの位置関係を次のようにしたことを特徴としている。
まず図1(第1実施形態)及び図11(第2実施形態)に示すように直線上に配列した複数のパンチ部材40と駆動回転軸52は交差する方向に食い違い軸関係(non-parallel and non-intersecting axes)に配置されている。
【0064】
図3乃至図5に示すように各パンチ部材40には受動歯車44が設けられ、駆動回転軸52に配置した駆動歯車55と噛合している。この受動歯車44と駆動歯車55とはネジ歯車で構成され、駆動モータMの回転で各パンチ部材40に回転運動を伝達する。
なお、受動歯車44は各パンチ部材40のロッド部(パンチ軸)42に遊嵌され、貫挿ピン43で受動歯車44の回転をロッド部42に回転運動として伝達するが、各パンチ部材40は受動歯車44に拘束(運動規制)されることなく穿孔方向に上下動する。このため各受動歯車44には長溝47が貫通ピン43の上下動を許容するように設けてある。
【0065】
また、図3及び図6に示すように各パンチ部材40には、回転運動を穿孔方向運動に変換するカム手段(円筒カム)45が装置フレーム30(ベースフレーム31)との間に配置されている。
図示のカム手段(円筒カム)45は、各パンチ部材40に一体形成したV字状溝カム45Cと、ベースフレーム31に固定したカムピン(カムフォロア)37で構成されている。
このような構成において各パンチ部材40は上死点から回転しながら下死点に移動する動作でシート上に所定数のファイル穴を穿孔する。
【0066】
そこで図8及び図12に示すように上記受動歯車44と駆動歯車55との歯車噛合部Egと、溝カム45Cとカムピン37のカム係合部Ecは、各パンチ部材の回転軸中心(図示p)に対して同一方向(図示p−y0方向)か、若しくは所定角度範囲内±η(図示p−y1方向(図12(b)参照,p−y2方向(図12(c)参照)
この角度範囲(カム係合部Ecと歯車噛合部Egとの角度差)が±η(η=45度)のときには、カムピン37から図8矢印方向に反力Fが作用したとすると、各パンチ部材40の軸部(パンチ軸42)は同図一点差線方向に例えば角度γで傾くように反り返る。このときカム係合部Ecと歯車噛合部Egは±45度角度範囲に設定されているから歯先間のバックラッシュは確保され、駆動・受動歯車の回転を阻害(ロッキング)することがない。
【0067】
[作用の説明]
上述の構成についてその作用を説明する。パンチ部材40は4本構成、5本構成、その他複数本で構成され、各パンチ部材40は所定間隔で直線上に配列されている。
各パンチ部材40は装置フレーム30に穿孔方向に往復動(レシプロ運動)可能に支持されている。各パンチ部材40は断面が円形などの軸形状のパンチ軸42を有するように構成されている。
そしてこのパンチ軸42をベースフレーム31の上部の軸受孔31gと下部の軸受孔31hに嵌合支持され、図3断面図上下方向(穿孔方向)に往復動可能に支持されている。
これと共に各パンチ部材40は上部の軸受孔31gと下部の軸受孔31hに回転可能に軸支持されている。
【0068】
上記各パンチ部材40の先端部には穿孔刃41が設けられ、それぞれの穿孔刃は先鋭形状で、断面U字形状、断面逆V字形、斜裁形状などパンチ部材の右回転左回転いずれでも剪断歯形状となるように構成されている。
【0069】
各パチン部材40には、回転運動を伝達する受動歯車44と、回転運動から穿孔方向直線運動を生起するカム手段45が配置されている。受動歯車44はウォームギア、ねじ歯車、ハイポイドギアなどの食い違い軸歯車で構成されている。
そして装置フレーム30には各パンチ部材を軸承する上部の軸受孔31gと下部の軸受孔31hの中間位置に駆動回転軸52が食い違い軸関係に配置されている。
【0070】
そして駆動回転軸52に設けられた駆動歯車55は、この回転軸に固定され、複数のパンチ部材40の受動歯車44と対向する位置に複数配置されている。この駆動歯車55と受動歯車44とは、図示のねじ歯車構成の場合、駆動歯車55は+側に所定角度の捩れ角に、受動歯車44は−側に所定角度の捩れ角で構成され、両歯車は直交方向で噛合している。
また上述の各受動歯車44は各パンチ部材40のパンチ軸42に穿孔方向に移動可能に遊嵌され、駆動歯車55と噛合して位置決メされる受動歯車44に対して各パンチ部材40は穿孔方向に移動可能に構成されている。
【0071】
一方、各パンチ部材40と装置フレーム30との間の円筒カム45は、図示の実施形態においてパンチ部材40に円筒カム45が一体形成されている。各パンチ部材40のパンチ軸42は硬質金属で構成され、円筒カム45は樹脂のモールド成型で構成されている。このため樹脂の円筒カム成形時にパンチ軸42をインサート成型して、両者を一体化している。
【0072】
この状態を図6に従って説明すると、図6(a)の待機位置に位置するパンチ部材40は、駆動モータMの回転制御によって円筒カム45のV字状溝カム45Cの谷形部45x1がカムピン37と係合する位置に角度調整する。
この状態でパンチ部材40はカムピン37で高さ位置が規制され、穿孔刃41は紙載フレーム35のシートから上方に退避した位置に待機する。
【0073】
次にパンチ部材40の穿孔動作状態を説明する。上述の待機位置の状態において、装置の制御手段60(制御CPUなど)は駆動モータMを回転駆動し、モータ回転軸49と、これに連結した駆動回転軸52を所定方向に回転駆動する。
図示のものはモータ回転軸49の回転が傘歯車(伝動歯車)46で駆動回転軸52に伝達される。この駆動回転軸52の所定方向回転で複数の駆動歯車55が軸と一体に回転し、受動歯車44を連動回転する。
【0074】
受動歯車44の回転で各パンチ部材40は歯車と同方向に回転する。この回転力は受動歯車44と各パンチ部材40のパンチ軸42とを結合する貫挿ピン43から付与される。
次に各パンチ部材40の回転運動は、このパンチ部材40に一体形成された円筒カム45とカムピン37によって図6(a)の待機位置から図6(b)の穿孔位置にパンチ部材40を位置移動する。
【0075】
なお、図6(a)の待機状態は、図示の実施形態において2穴穿孔と3穴穿孔ではパンチ部材40の角度は異なる位置に設定され、例えばホームポジション(角度ゼロ)から第1角度位置(a度)のとき2穴穿孔の待機位置に、第2角度位置(b度;a<b)のとき待機位置に設定してある。
【0076】
図2及び図4に従って駆動モータMの構成について説明すると、図示の装置は装置フレーム30に駆動モータMが支持されている。そのモータ回転軸49にはエンコーダ57が設けてあり、回転軸の回転数(回転角度)をカウントする。
駆動モータMはPWM制御が可能なように図示しないドライブ回路に電気的に結線されている。この他、駆動モータをステッピングモータで構成して、PWM制御しても良い。
【0077】
[穿孔動作のフロー]
以上説明した装置構成において、2穴、若しくは4穴の孔開けを施す穿孔動作は次のように行う。シート穿孔動作を図9のフローチャートに従って説明する。
装置電源をONするとイニシャライズ動作のために駆動回転軸52をホームポジションに移動する(St100)。この移動はフラグセンサがONされた状態であるか否かを判断し、センサがONになるまで駆動モータMを回転制御する。
【0078】
次にモータ制御手段64はパンチの孔数を設定する(St101)。これは第1グループのパンチ部材40Aに穿孔動させるか(St102)、第2グループのパンチ部材40Bに穿孔動させるかを設定する(St103)。
【0079】
次にモータ制御手段64はシートが初期位置に到達したか否かを図示しないシートセンサで検出する(St104)。シートが初期位置にセットされるとモータ制御手段64は駆動回転軸52のフラグ位置を判別する(St105)。このフラグ位置はホームポジションHp、第1リターンポジションRp1、第2リターンポジションRp2の何れかに設定されおり、何れの位置であるかを計数するように構成されている。
【0080】
そこでモータ制御手段64は、センサフラグがホームポジションに位置することを確認する(St107)と、モータ制御手段64は第1グループパンチ部材40Aの第1穿孔ストロークSR1を選択し(St106)、基準点Hpから駆動モータMをCW方向に回転する(St108)。それ以外の動作は第1穿孔動作と同一であるので説明を省略する。
【0081】
駆動回転軸52を時計方向に回転し、基準点Hpに位置するセンサフラグが第1リターンポジションRp1に到達するまで駆動モータを回転する(St109)。この駆動モータMの駆動回転は、センサフラグがホームポジションHpに位置するとき予め設定したパルス数で回転し同時に所定パルスが経過したところで電気ブレーキを作用させる。そしてセンサフラグ反転位置がONとなるように設定してある。
【0082】
そこでモータ制御手段64は次シートが存在するか否かを検出する(St110)。次シートが存在しない場合には穿孔動作を終了し(St111)、次シートが存在する場合にはセンサフラグ位置を判別し、センサフラグが第1リターンポジションRp1の時(St112)には駆動モータMを反時計方向(CCW)に回転し(St113)、センサフラグが基準点Hpに戻るまで回転させる(St114)。
又はこの位置検出でセンサフラグが基準点Hpにあるときには駆動モータMを時計方向(CW)に回転し、センサフラグが第1リターンポジションRp1になるまで回転させる。この時の駆動モータMの回転制御は先に説明したのと同一である。
このように先行シートには時計方向(CW)で、次シートには反時計方向(CCW)となるように回転方向が反転されることとなる。
【0083】
第2穿孔ストロークSR2を選択したときには、モータ制御手段64は駆動回転軸52を基準点HpからCCW(反時計方向)に回転して第2穿孔ストロークSR2で往復動する。この時の駆動モータMの制御は上述した第1穿孔ストロークSR1と同一である。
なおこの場合に駆動回転軸52は、図7(b)に示す第2リターンポジションRp2と基準点Hpとの間で往復動する。
【0084】
[制御構成]
図10に図1の装置の制御構成を示す。例えば制御CPU60で構成し、図示しないコントロールパネルから穿孔ストローク選択手段61を構成する。そして制御CPU60はROM62のプログラムとRAM63の制御データに従って初期化動作と穿孔動作を実行する。
そしてオペレータが選択した穿孔数を穿孔ストローク選択手段61が認識し、その結果に基づいてモータ制御手段64が駆動モータMを制御するように構成されている。
上記制御CPU60にはフラグセンサの検知信号とエンコーダ57の検知信号がエンコードセンサ57Sから電送される。またジャム検出手段の検知信号が送られる。
【0085】
[後処理装置の説明]
次に本発明に係わる画像形成装置Bにおける後処理装置Cの構成を図13に従って説明する。図13に示す画像形成システムは、シートに順次印刷を施す画像形成装置Bと、この画像形成装置Bの下流側に付設された後処理装置Cとから構成されている。
そして画像形成装置Bで画像形成したシートを後処理装置Cで印刷済のシートに穿孔処理を施すように構成されている。
【0086】
まず画像形成装置Bは複写機、プリンタ、印刷機など種々の構造のものが採用可能であるが図示のものは静電印刷装置を示す。この画像形成装置Bはケーシング1内に給紙部2と、印字部3と、排紙部4と制御部(図示せず)とが内蔵されている。
給紙部2にはシートサイズに応じた複数のカセット5が準備され、制御部から指示されたサイズのシートが給紙経路6に繰り出される。この給紙経路6にはレジストローラ7が設けられ、シートを先端揃エした後所定のタイミングで下流側の印字部3に給送する。
【0087】
印字部3には静電ドラム10が設けられ、このドラム10の周囲には印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。そして印字ヘッド9は例えばレーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着し、転写チャージャ12でシートに印刷する。
この印刷シートは定着器13で定着され排紙経路17に搬出される。排紙部4には上記ケーシング1に形成した排紙口14と排紙ローラ15が配置されている。
尚図示16は循環経路であり、排紙経路17からの印刷シートをスッチバック経路で表裏反転した後再びレジストローラ7に送り、印刷シートの裏面に画像形成する。このように片面若しくは両面に画像形成された印刷シートは排紙口14から排紙ローラ15で搬出される。
【0088】
尚図示20はスキャナユニットであり、上記印字ヘッド9で印刷する原稿画像を光学的に読ミ取ル。その構造は一般的に知られているように原稿シートを載置セットするプラテン23と、このプラテン23に沿って原稿画像をスキャンするキャリッジ21と、このキャリッジ21からの光学像を光電変換する光学読取手段(例えばCCDディバイス)22とから構成されている。また図示のものは原稿シートを自動的にプラテンに給送する原稿送り装置25がプラテン23上に装備してある。
【0089】
そこで上記画像形成装置Bの排紙口14には後処理装置Cが連設してある。この後処理装置Cはシート搬送経路26と、この搬送経路26に配置したパンチユニットAと排紙スタッカ28とから構成されている。シート搬送経路26にはパンチユニットAの上流側に整合手段27が設けられ、シート後端を整合する。
またシート搬送経路26には正逆転ローラ26aが配置され、搬入口29からのシートを整合手段27に突キ当テ整合し、同時にこの正逆転ローラ26aはパンチユニットAからシートを排紙スタッカ28に搬出する。図示Siはシート検知センサである。
尚パンチユニットAは先に説明した図1に示す装置若しくは図11に示す装置で構成されている。
【0090】
このように構成された後処理装置Cは画像形成装置Bから印刷済のシートを搬入口29から受け取リ、シート後端をシート検知センサSiで検知し、シート後端が整合手段27を通過したタイミングで正逆転ローラ26aを逆転(図示反時計方向)する。するとシートはスイッチバックされシート後端が整合手段27に突き当て整合される。
この整合後に正逆転ローラ26aは停止し、シートをその位置に保持する。この状態でパンチユニット27は駆動モータMを駆動して前述の穿孔動作を実行する。穿孔動作の実行後は前述のポジションセンサからのエンド信号で正逆転ローラ26aを時計方向に回転しパンチ穴を施されたシートを排紙スタッカ28に搬出する。
尚この後処理装置Cには、図示しないがステープルユニット、スタンプユニットなどが装置仕様に応じて組み込まれる。
【符号の説明】
【0091】
A 紙葉類穿孔装置
30 装置フレーム(31,35)
31 ベースフレーム
31a 上部フレーム
31b 下部フレーム
31g 上部軸受孔
31h 下部軸受孔
35 紙載フレーム
37 カムピン(カムフォロア)
38 ダイ(刃受孔)
40 パンチ部材
41 穿孔刃
42 パンチ軸(ロッド部)
43 貫通ピン
44 受動歯車(受動側歯車手段)
45 円筒カム(カム手段)
45C V字状溝カム
47 長溝
50 駆動手段
51 伝動手段
52 駆動回転軸
55 駆動歯車(駆動側歯車手段)
Eg 歯車噛合部
Ec カム係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに複数のパンチ穴を穿孔する装置であって、
直線上に配置された複数のパンチ部材と、
前記複数のパンチ部材を回転と穿孔方向に移動可能に支持する装置フレームと、
前記各パンチ部材を回転しながら穿孔方向に往復動する駆動手段と、
を備え、
前記複数のパンチ部材は、
先端に穿孔刃を基端にロッド部を有すると共にこのロッド部を前記装置フレームに回転可能で穿孔孔方向に往復移動可能に軸受け支持され、
前記駆動手段は、
駆動モータと、
この駆動モータの回転を前記各パンチ部材に回転運動として伝達する駆動回転軸と、
前記各パンチ部材と装置フレームとの間に配置されパンチ部材の回転運動を穿孔方向運動に変換するカム機構と、
で構成され、
前記駆動回転軸は、前記パンチ部材の穿孔方向と直交する方向で前記複数のパンチ部材それぞれと交差するように配置され、
この回転軸に取付けられた駆動側歯車手段と、
前記各パンチ部材に取付けられた受動側歯車手段と、
で構成され、
前記回転軸と前記複数のパンチ部材とは、互いに食い違い軸関係に配置されていると共に前記駆動側歯車手段と受動側歯車手段は食い違い軸歯車で互いに噛合するように構成されていることを特徴とするシート穿孔装置。
【請求項2】
前記駆動側歯車手段と受動側歯車手段は、
ウォームギアとウォームホイールの組合せか、又はネジ歯車の組合せか、又はハイポイドギアの組合せで構成され、
前記受動歯車手段は、前記各パンチ部材に回転を伝達するように配置された受動歯車で構成され、
前記カム機構は、前記各パンチ部材に一体形成された円筒カムと前記装置フレームに配置されたカムピンで構成され、
この各円筒カムには逆V字状溝カムが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項3】
前記駆動歯車と受動歯車との歯車噛合部と、
前記溝カムとカムピンとのカム係合部と、
は前記各パンチ部材の軸中心に対して略同一方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項4】
前記駆動歯車と受動歯車との歯車噛合部と、
前記溝カムとカムピンとのカム係合部と、
は前記各パンチ部材の軸中心に対して同一角度位置又は±45度角度範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項5】
一直線上に間隔を隔てて配列された複数のパンチ部材と、
前記各パンチ部材を回転しながら穿孔方向に移動可能に支持するベースフレームと、
前記穿孔刃に対向するダイを有する紙載フレームと、
駆動モータの回転を前記各パンチ部材に回転運動として伝達する伝動回転軸と、
この伝動回転軸の回転を各パンチ部材に伝達する歯車手段と、
各パンチ部材の回転運動を穿孔方向運動に変換するカム手段と、
を備え、
前記ベースフレームは、
穿孔方向に高さ間隔を有する上下対向する上壁フレームと下壁フレーム及び前記パンチ列方向に幅間隔を有する左右対向する側壁フレームで構成され、
前記各パンチ部材は、
先端に穿孔刃を、基端にロッド部を有すると共に、このロッド部を前記上壁フレームと下壁フレームに穿孔方向に移動可能に軸受け支持され、
前記伝動回転軸は、
穿孔方向と略直交する方向で前記各ロッド部の中心軸と食い違い軸関係となるように前記左右対向する側壁フレームに軸受け支持されると共に、前記複数のパンチ部材と対向する駆動側歯車手段が設けられ、
前記各パンチ部材には、ロッド部に受動側歯車手段が穿孔方向は移動可能で回転方向は固定されるように嵌合され、
前記駆動側歯車手段と受動側歯車手段は食い違い軸歯車で構成されていることを特徴とするシート穿孔装置。
【請求項6】
シート上に画像を形成する画像形成装置と、
この画像形成装置からのシートを所定の処理位置に搬送セットする搬送手段と、
上記処理位置に配置され上記シートに穿孔処理を施すシート穿孔装置と、
上記処理位置からシートを搬出する排紙手段と、を備え、
上記シート穿孔装置は請求項1乃至5の何れかの項に記載の構成を備えていることを特徴とする画像形成装置における後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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