説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】輸送時等のシート積載部のロックを簡便かつ確実に行うことが可能で、使用開始時のロック解除も極めて簡便に行うことが可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】給紙デッキ2における昇降機構は、シート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dを所定位置で当接させて収納部61に対しロック可能な突当て部101a〜101dを有している。更に、昇降機構は、パルスモータ27と、ワンウェイクラッチ40を有している。制御部5は、パルスモータ27をシート積載台52の上昇方向に回転駆動させ、ワイヤ吊下げ部64a〜64dが突当て部101a〜101dに当接した後も同方向に更に回転駆動させて脱調させた後に非通電とする。これにより、ワイヤ吊下げ部を突当て部に当接させた状態でシート積載台をワンウェイクラッチによりロックさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積載部に積載したシートを画像形成部に給送するためのシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、画像形成部にシートを給送するシート給送装置を備えたものがある。このようなシート給送装置としては、収納部に昇降可能に配置されたシート積載台にシートを積載し、このシート積載台をシート給送可能位置に上昇させた後、給送ローラによりシートを画像形成部に向けて送り出すように構成されている。
【0003】
ところで、例えばシート給送装置には、シート積載台に積載された最上位シートの高さ位置を検知する紙面検知センサが設けられている。この紙面検知センサは、例えば、最上位シートが給送可能な高さ位置にあるときにはOFFとなり、最上位シートの高さ位置が給送可能な高さより低くなったときにはONとなる。
【0004】
そして、紙面検知センサがONとなると、制御部がモータを駆動して例えば巻取りドラムを回転させて、シート積載台に取り付けられたワイヤを巻き取るように構成されている。これにより、シート積載台が上昇し、最上位シートの高さ位置が給送可能な給送位置に達すると、紙面検知センサがOFFとなって駆動が止まり、シート積載台が停止する。そして、シートの給送中、この動作を繰り返すことにより、最上位シートの高さ位置がシートを給送可能な高さに保持される。
【0005】
近年、物流の効率化が求められる中で梱包材の小型軽量化が進み、その結果として、シート給送装置を備える画像形成装置の輸送時に、装置本体に加わる振動や衝撃が大きくなる傾向にある。そのため、シート給送装置のシート積載台が振動して積載台自体に損傷を受けたり、シートを給送する給送ローラにシート積載台が衝突してローラ部を破損させたりするおそれが出てきている。
【0006】
そのため、シート給送装置において、輸送用のロック部材等を施してシート積載台をロックして、輸送時の振動や衝撃に起因する傷や破損を防止する構成が提案されている。このシート給送装置は、シートが収容される収容面上に上下動可能に設けられたシート積載台を上下に貫通するリフト孔を有すると共に、リフト板が収容面に沿って位置するときにリフト孔とその対向する収容面上の部位とを貫通する係止孔を有している。輸送時等には、上記リフト孔及び係止孔に上記ロック部材としてのストッパを係合させ、ストッパの支持板により、収容面からシート積載台が上方に移動しないように押さえて、シート積載台の不要な動きを規制する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−197204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、輸送用のロック部材を使用する場合には、組立て時にロック部材を取り付け、ユーザの使用前にはロック部材を必ず外さなければ使用できない。これは、ロック部材の着脱の作業が生じ煩わしいと共に、使用する前にロック部材を外し忘れた場合は、ロック部材が着いたままの状態でシート積載台が上昇することで、シート積載台やその周囲の部材が傷付いたり破損したりするおそれがあった。
【0009】
そこで本発明は、輸送時等のシート積載部のロックを簡便にかつ確実に行うことが可能で、使用開始時のロック解除も極めて簡便に行うことが可能なシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シート積載部を昇降可能に有する収納部と、前記シート積載部に積載されたシートを給送する給送部と、前記シート積載部を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を制御する制御部と、を備えたシート給送装置において、前記昇降機構は、上昇する前記シート積載部を所定位置で当接させて前記収納部に対しロック可能な突当て部と、前記昇降機構の駆動源となるパルスモータと、前記パルスモータと前記シート積載部との間に介在され、前記シート積載部の上昇方向にはフリー回転し且つ前記シート積載部の下降方向には回転をロックするワンウェイクラッチと、を有し、前記制御部は、前記パルスモータを前記シート積載部の上昇方向に回転駆動させ、前記シート積載部が前記突当て部に当接した後も同方向に更に回転駆動させて脱調させた後に非通電とすることで、前記シート積載部を前記突当て部に当接させた状態で前記シート積載部を前記ワンウェイクラッチによりロックさせることを特徴とする。
【0011】
本発明は、シート積載部を昇降可能に有する収納部と、前記シート積載部に積載されたシートを給送する給送部と、前記給送部により給送されたシートに画像を形成する画像形成部と、前記シート積載部を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を制御する制御部と、を備えた画像形成装置において、前記昇降機構は、上昇する前記シート積載部を所定位置で当接させて前記収納部に対しロック可能な突当て部と、前記昇降機構の駆動源となるパルスモータと、前記パルスモータと前記シート積載部との間に介在され、前記シート積載部の上昇方向にはフリー回転し且つ前記シート積載部の下降方向には回転をロックするワンウェイクラッチと、を有し、前記制御部は、前記パルスモータを前記シート積載部の上昇方向に回転駆動させ、前記シート積載部が前記突当て部に当接した後も同方向に更に回転駆動させて脱調させた後に非通電とすることで、前記シート積載部を前記突当て部に当接させた状態で前記シート積載部を前記ワンウェイクラッチによりロックさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート給送装置及び画像形成装置によると、輸送時等にロック部材等を使用せずに、簡便な操作でシート積載部を確実にロックすることができる。このため、ロック部材の付け外し等の煩雑な操作を不要とし、ロック部材の外し忘れによる破損を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態における輸送時の収納部を説明するための斜視図。
【図2】本実施形態のシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す断面図。
【図3】シート給送装置を枠板等の図示を省略した状態で示す斜視図。
【図4】画像形成装置をドア開放状態で示す斜視図。
【図5】シート給送装置の給送時の状態を示す斜視図。
【図6】図5の矢印A方向に見た状態で示す側面図であり、(a)は給送ローラの退避状態を示し、(b)は給送ローラの給送状態を示す。
【図7】シート積載状態での収納部を示す斜視図。
【図8】図5の矢印A方向に見た状態で示す側面図であり、(a)は給送時の状態を示し、(b)は輸送時の状態を示す。
【図9】本実施形態におけるパルスモータの回転数及びトルクの特性を示す特性グラフ図。
【図10】本実施形態のシート積載台を上昇させる駆動ユニットの構成を説明する斜視図。
【図11】駆動ユニットの平面図(上面図)。
【図12】駆動ユニットの側面図。
【図13】変形例におけるシート積載台を固定する構成を説明する左側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、図2は、本発明に係る実施の形態におけるシート給送装置の一例であるデッキタイプのシート給送装置を備えた画像形成装置1の概略構成を示す断面図である。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置1は画像形成装置本体(以下、装置本体という)10を備えており、装置本体10には、中央部にシート給送部4が備えられ、下部にデッキタイプのシート給送装置(以下、給紙デッキという)2が備えられている。シート給送部4は、積載されたシート束(S)の最上位シートに当接して送り出す給送ローラ6、及び、給送ローラ6により送り出されたシートSを分離する分離ローラ対7を有している。
【0016】
装置本体10は、給紙デッキ2を含む画像形成装置1の各部を統括的に制御する制御部5、及び、電子写真方式によりシートに画像形成を行う画像形成部3等を備えている。なお、本実施形態では、制御部5を、給紙デッキ2を含む画像形成装置1全体に対して設けたものとして説明するが、これに限らず、画像形成部3及びシート給送部4と、給紙デッキ2とに分けて構成した制御部とすることもできる。
【0017】
制御部5は、給送制御においては、後述する紙面検知フラグ62及び紙面検知センサ63の情報に基づき、シート積載台52に積載された最上位シートの高さが給送可能な高さとなるように制御する。
【0018】
画像形成部3は、トナー像を形成する感光体ドラム14、この感光体ドラム14に画信号に応じた光を照射するレーザスキャナ12、及び、感光体ドラム14に形成されたトナー像をシートSに転写する転写ローラ15等を備えている。画像形成部3には、制御部5の制御によりシート給送部4または給紙デッキ2からシートSが送られて画像形成される。
【0019】
上記構成の画像形成部3において画像形成動作が開始されると、まずレーザスキャナ12によって、画信号に応じた光が感光体ドラム14に照射されることにより、感光体ドラム14上に静電潜像が形成される。引き続き、この静電潜像を、トナーカートリッジ13に収納されたトナーで現像することにより、感光体ドラム14上にトナー画像(可視像)が形成される。
【0020】
また、このようなトナー画像形成動作に並行して後述のように給紙デッキ2からシートSが給送されると、このシートSは、搬送ローラ11及びレジストローラ11Aによって、感光体ドラム14に形成された画像と同期をとって転写部28に搬送される。転写部28は、感光体ドラム14と転写ローラ15とにより構成されており、この転写部28において、転写ローラ15にバイアス電圧を印加することにより、トナー画像がシートSに転写される構成となっている。
【0021】
このようにトナー画像を転写されたシートSは、その後、定着部16へ搬送され、この定着部16で加熱されることによりトナー画像を定着され、更にその後、排出ローラ17によって、装置本体10上部の排出部18へ排出される。
【0022】
給紙デッキ2は、収納部61内に、シート束(S)を積載可能に構成されて昇降可能なシート積載部としてのシート積載台52、給送ローラ54、分離ローラ対66、及び搬送ローラ57等を備えている。更に、収納部61内には、後述する基準側サイド規制部材58、非基準側サイド規制部材59、後端規制部材60等が備えられている。給送ローラ54は、シート積載台52に積載されたシートを給送する給送部を構成している。
【0023】
分離ローラ対66は、給送ローラ54により送り出されたシートSを分離するフィードローラ55及びリタードローラ56により構成されている。搬送ローラ57は、分離ローラ対66によって1枚ずつに分離給送されたシートSを装置本体10に搬送する。なお、図2中の符号27は、後述するパルスモータ(ステッピングモータ)を示している。
【0024】
図4は、画像形成装置1をドア開放状態で示す斜視図である。図4に示すように、画像形成装置1の下側に位置する給紙デッキ2は、シート積載台52にシート束(S)を積載する際に開放されるドア2Aを開閉自在に備えている。ドア2Aは、装置本体10の正面側に配置されており、装置本体10の操作側からシートSを出し入れすることが可能に構成されている。
【0025】
図1は、本実施形態における輸送時の収納部61を示す斜視図であり、図5は、給送時の収納部61を示す斜視図である。図1及び図5に示すように、収納部61は、互いに対向する状態でシート積載台52を挟むように配置された枠板19,20を有している。枠板19には、左右方向に所定の距離をあけた状態で上下方向に長尺状に貫通されたガイド溝65a,65bが形成されている。枠板20には、左右方向に所定の距離をあけた状態で上下方向に長尺状に貫通されたガイド溝65c,65dが形成されている。シート積載台52のシート給送方向上流の上側には、給送ローラ54、分離ローラ対66、紙面検知フラグ62、紙面検知センサ63を一体的に装置本体10側に支持するユニット枠26が配設されている。ガイド溝65a〜65dは、シート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dを移動ガイドし且つ上端部に突当て部101a〜101dが形成されたガイド部を構成している。
【0026】
紙面検知フラグ62は、側面視L字状に形成され(図8参照)、ユニット枠26の下側にてユニット枠26に対し回動可能に支持されている。紙面検知センサ63は、フォト・インタラプタで構成され、L字状の紙面検知フラグ62の上端部によって発光・受光部を遮光状態と透光状態とに切換え可能な位置に固定されている。なお、紙面検知フラグ62及び紙面検知センサ63により、シート積載台52に積載された最上位シートS1の高さが所定の位置になるとON/OFF信号が切り換わる検知部が構成されている。
【0027】
図3は、本実施形態における給紙デッキ(シート給送装置)2を枠板等の図示を省略した状態で示す斜視図である。図1及び図3に示すように、シート積載台52には、枠板19,20間に配置された状態で分離ローラ対66に向かって右側に切欠き部52aが形成され、向かって左側に切欠き部52bが形成されている。更に、シート積載台52には、シート給送方向の上流側に切欠き部52cが形成されている。これら切欠き部52a,52b,52cにはそれぞれ、給紙デッキ2側に立設された基準側サイド規制部材58、非基準側サイド規制部材59、後端規制部材60が摺動自在に係合している。
【0028】
また、シート積載台52は、切欠き部52aの両側部から外側に突出するように形成されたワイヤ吊下げ部64a,64b、及び、切欠き部52bの両側部から外側に突出するように形成されたワイヤ吊下げ部64c,64dを有している。ワイヤ吊下げ部(シート積載部の少なくとも一部)64a,64b,64c,64dは、対向するガイド溝65a,65b,65c,65dにそれぞれ摺動自在に貫通・係合している。なお、シート積載台52は例えば合成樹脂材料から構成され、ワイヤ吊下げ部64a〜64dも同材料によって形成されている。
【0029】
ワイヤ吊下げ部64a,64b,64c,64dにはそれぞれ、可撓性部材であるワイヤ51a,51b,51c,51dの各一端が取り付けられている。ワイヤ51a〜51dの各他端は、シート積載台52の幅方向に延在するワイヤ巻取り軸53の両端部にそれぞれ固着されたプーリ21,21に巻取り可能に取り付けられている。
【0030】
図1、図3及び図5に示すように、枠板19,20における分離ローラ対66が位置する側の下部には、不図示の孔部が形成されている。この孔部にワイヤ巻取り軸53の両端が回転自在に貫通した状態で支持されている。枠板19,20におけるワイヤ巻取り軸53の上方には、ワイヤ51aとワイヤ51dを支持する円周溝が2列形成されたプーリ22とプーリ24がそれぞれ回転自在に取り付けられている。枠板19,20におけるガイド溝65bとガイド溝65dの上部近傍には、ワイヤ51bとワイヤ51dを支持する円周溝が1列形成されたプーリ23とプーリ25がそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0031】
以上の構成を有する本実施形態では、制御部5による制御でパルスモータ(駆動源)27が、選択されたモードに基づいて駆動すると、ワイヤ巻取り軸53が所定の回転方向及び所定の回転速度で回転する。これにより、ワイヤ吊下げ部64aがワイヤ51aで巻取り又は巻出され、ワイヤ吊下げ部64bがワイヤ51bで巻取り又は巻出され、ワイヤ吊下げ部64cがワイヤ51cで巻取り又は巻出され、ワイヤ吊下げ部64dがワイヤ51dで巻取り又は巻出される。このため、シート積載台52は、切欠き部52a,52b,52cを基準側サイド規制部材58、非基準側サイド規制部材59及び後端規制部材60にそれぞれ沿わせながら昇降動作する。
【0032】
ここで、画像形成装置を輸送する時のシート積載台52のロックをするための構成に関して詳細に説明する。なお、図7は、本実施形態におけるシート給送装置のシート積載状態での収納部を示す斜視図である。
【0033】
図1及び図7に示すように、枠板19,20には、収納部61のガイド溝65a〜65dの各上端部に、シート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dを夫々下方から当接させる突当て部101a,101b,101c,101dが設けられている。これら突当て部101a〜101dは、上昇するシート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dを所定位置で当接させて、シート積載台52を収納部61に対しロック可能に構成されている。所定位置とは、給送ローラ54及びパルスモータ27を制御部5により制御する給送制御時におけるシート積載台52の移動範囲を上方に超えた位置(ロック位置)である。つまり、このロック位置は、ワイヤ吊下げ部64a〜64dをそれぞれ対応する突当て部101a〜101dに押しつけることで、シート積載台52が振動や衝撃等で移動しないように固定保持する位置である。
【0034】
ワイヤ吊下げ部64a〜64dはいずれも、シート積載台52の両側部において同レベルに位置している。突当て部101a〜101dはいずれも、対応するワイヤ吊下げ部64a〜64dからそれぞれ均等に押し当て力が付与されるように、収納部61において同レベルに位置するように形成されている。これら突当て部101a〜101dは、金属製等の枠板19,20における各ガイド溝65a〜65dの最上部に対応する部位を外側に折曲することで形成されている。或いは、枠板19,20が合成樹脂材料から構成される場合、突当て部101a〜101dは、射出成形等によりガイド溝65a〜65dと一体に形成される。
【0035】
突当て部101a〜101dは、制御部5の制御によるシート積載台52の高さより更に上昇した位置である上記ロック位置において、シート積載台52に当接可能に設けられてシート積載台52の移動を規制する。なお、パルスモータ27、後述するワンウェイクラッチ40、ガイド溝65a〜65d及び突当て部101a〜101dにより、制御部5によって昇降駆動を制御される昇降機構が構成されている。
【0036】
ところで、ワイヤ巻取り軸53の端部には、図10に示すようにワイヤ巻取り軸53を回転させてシート積載台52をシート給送可能位置まで上昇させ、かつこのシート給送可能位置に保持するための駆動ユニット30が配設されている。この駆動ユニット30に設けられたパルスモータ27の駆動によってシート積載台52を上昇させることができる。
【0037】
ここで、駆動ユニット30は、図10〜図12に示すように、パルスモータ27と、モータギヤ27aの回転をワイヤ巻取り軸53に伝達する4つの段ギヤ31a,31b,31c(31eを含む),31dと、駆動解除部材32とを備えている。駆動解除部材32は、ギヤ31bを保持すると共に、段ギヤ31aを回転自在に支持する軸33を中心として揺動可能に支持されている。駆動ユニット30は、給紙デッキ2の本体側に固定支持された支持フレーム34を有している。この支持フレーム34に突出状態で支持された軸33に、駆動解除部材32が揺動支持されている。駆動解除部材32の上端部32bと支持フレーム34の係止部34aとの間に引張りコイルばね41が設けられている。
【0038】
駆動ユニット30は、駆動解除部材32の下端部32aの回動(揺動)を検知可能な位置に、フォト・インタラプタである検知センサ37を備えている。また段ギヤ31dは、図11に示すように、プーリ21を端部に有するワイヤ巻取り軸53に、同軸上に連結されている。なお、図1、図3、図5及び図7に示すプーリ21は、図10及び図11に示すプーリカバー21aを図示省略している。
【0039】
段ギヤ31aには、ワンウェイクラッチ40が内蔵されている(図11、図12)。ワンウェイクラッチ40は、パルスモータ27とシート積載台52との間に介在され、シート積載台52の上昇方向にはフリー回転し、且つシート積載台52の下降方向には回転をロックするように構成され、シート積載台52を上昇位置で保持することができる。
【0040】
ドア2A(図4)が開かれると、まずドア2Aに設けられた引掛け部(不図示)により、駆動ユニット30によるシート積載台52の保持を解除する解除部である駆動解除部材32が、軸33を中心として図12中の矢印B方向に回動させられる。これにより、駆動解除部材32に支持されてパルスモータ27により回転する段ギヤ31bと、パルスモータ27の回転をワイヤ巻取り軸53に伝達する段ギヤ31c(31e)との間の歯合が解除される。
【0041】
これにより、ワイヤ巻取り軸53に対するパルスモータ27の駆動伝達が解除され、これに伴い、駆動ユニット30のワンウェイクラッチ40によるシート積載台52の保持が解除され、ワイヤ巻取り軸53が回転自在となる。その結果、ワイヤ51a〜51dを介してワイヤ巻取り軸53に加わっている、シート積載台52に積載されたシートS及びシート積載台自体の荷重により、ワイヤ巻取り軸53がワイヤ51a〜51dを巻き出す方向に回転する。これにより、シート積載台52が最下部の積載位置まで下降する。
【0042】
そして、積載位置でシート積載台52へのシート束(S)の積載が終了し、ドア2Aが閉止されると、ドア2Aに設けられた押し当て部(不図示)により駆動解除部材32が押圧されて図12中の矢印A方向に回動させられる。これにより、駆動解除部材32に支持された段ギヤ31bと、段ギヤ31c(31e)とが噛み合い、ワイヤ巻取り軸53に対してパルスモータ27の駆動力を伝達可能な状態となる。
【0043】
この駆動解除部材32の回動を検知センサ37が検知すると、検知センサ37からの検知信号に基づき制御部5がパルスモータ27をシート積載台52の上昇方向に回転駆動させる。これにより、ワイヤ巻取り軸53がワイヤ巻取り方向に回転し、ワイヤ51a,51b,51c,51dがプーリ21,21に巻き取られて、シート積載台52が上昇する。
【0044】
この際、パルスモータ27を上昇方向に回転駆動させる制御部5は、シート積載台52の一部であるワイヤ吊下げ部64a〜64dが突当て部101a〜101dに当接した後も同方向に更に回転駆動させて脱調させた後に非通電とする。これに伴い、ワイヤ吊下げ部64a〜64dが突当て部101a〜101dに当接した状態で、シート積載台52はワンウェイクラッチ40によりロックされる。
【0045】
図8は、図5の矢印A方向に見た状態で示す側面図であり、図8(a)は給送時の状態を示し、図8(b)は輸送時の状態を示している。図8(a),(b)は、シート積載台52上にシートが載置されていない状態で示している。
【0046】
図8(a)に示すように、突当て部101a〜101dは、シート積載台52が紙面検知センサ63からの信号に基づく制御部5でパルスモータ27が駆動されてシート積載台52が給送位置に上昇した際、シートの給送を妨げないように構成されている。つまり、シートが載置されていない状態においてもワイヤ吊下げ部64a〜64dと突当て部101a〜101dの間に、一定以上の隙間Z1をあけることが可能となるように各位置が設定されている。
【0047】
更に、図8(b)に示すように、制御部5が紙面検知センサ63の信号に基づいてシート積載台52を昇降制御する以外の制御では、次のようになる。即ち、シート積載台52が紙面検知フラグ62を押し上げて上昇した際に、制御部5は、上述のようにワイヤ吊下げ部64a〜64dを突当て部101a〜101dに当接させ、この状態からパルスモータ27を更に同方向に駆動させ脱調させる。そして、パルスモータ27への通電を遮断する。これにより、シート積載台52が、制御部5にて紙面制御しているときのシート積載台52の移動範囲を更に上方に超えたロック位置に保持される。
【0048】
この場合、制御部5は給送ローラ54をシート積載台52の上方に退避させるが、その退避状態にて給送ローラ54とシート積載台52との間に一定の隙間Z2をあける。つまり、突当て部101a〜101dは、シート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dが当接した状態にて、シート積載台52を給送ローラ54に当接させないように機能する。このように、輸送時の振動や衝撃で給送ローラ54に傷や破損が生じないように各位置が設定されている。
【0049】
また、制御部5は、装置本体10に配置された不図示の手動スイッチの操作状況に応じて、開放されたドア2Aが閉止された際に、以下の異なるモードによる制御を行う。
【0050】
即ち、パルスモータ27の特性は、図9のグラフに示すように、パルスモータ27の回転数が高いほどモータのトルクは低下する。実際の給送動作等の実使用時においてパルスモータ27は、シート積載台52にシートを満載した場合であってもいわゆる「脱調」しないように、その回転数及びトルクが設定されている。このときの回転数及びトルクは、図9のaとして設定されている通常モード(給送モード)である。
【0051】
さらに、制御部5は、通常モード(給送モード)による実使用時より速い回転数でパルスモータ27を回転させる出荷モード(ロックモード)を有しており、このときの回転数及びトルクは、図9のbとして設定されている。このときのトルクは、シート積載台52上にシートがない状態での必要最低限のトルクとして設定されている。
【0052】
このように、制御部5は、給送ローラ54によるシート給送時に用いる通常制御の通常モードと、この給送モードよりも低トルク且つ高回転でシート積載台52を速く上昇させる加速制御の出荷モードとを切換え可能に備えている。制御部5は、出荷モードへの切換え時には、パルスモータ27を脱調させるまで回転駆動させる。これらモードの切り換えは、上記手動スイッチ(不図示)の操作によって行われる。
【0053】
以上の構成を備えた本実施形態では、図4のようにドア2Aが開放されると、ドア2Aの引掛け部(不図示)等の作用で、上昇していたシート積載台52がその自重等によりワイヤ51a〜51dを介してワイヤ巻取り軸53を巻出し方向に回転させる。これにより、シート積載台52は、シート給送可能位置から、図4のようにシートを積載可能な最下部の積載位置まで下降する。
【0054】
そして、上記手動スイッチが通常モード側に切換えられ、シート積載台52へのシート補給が終了してドア2Aが閉止されると、制御部5が検知センサ37の信号に基づき、図9のaに示す回転数及びトルクでパルスモータ27を巻取り方向に駆動させる。これにより、ワイヤ51a〜51dがそれぞれにプーリ21,21に巻き取られ、シート積載台52は、図5に示すように、制御部5にて紙面制御しているときのシート積載台52の移動範囲内を上昇する。
【0055】
この後、シート積載台52に積載されたシート束(S)の最上位のシートS1が、図7のように紙面検知フラグ62に当接し、紙面検知フラグ62が回動すると、紙面検知センサ63のON/OFF信号が切り換えられる。このため、紙面検知センサ63の信号に基づく制御部5により、シート積載台52は、最上位シートS1が給送ローラ54で送り出されて分離ローラ対66のニップにスムーズに進入できる高さ位置に移動させられ、この位置を維持するように昇降制御される。
【0056】
この際、給送ローラ54は、送られてきた給送信号に基づき、図6(b)に示すようにシート束(S)の最上位シートに当接して給送方向に回転することで、最上位シートを下流側の分離ローラ対66に送り出す。これにより、分離ローラ対66は、給送ローラ54から送り込まれたシートSを1枚ずつ分離給送して、画像形成部3(図2参照)に向けて送り出す。またその際、給送ローラ54は、分離ローラ対66にシートを送り出すと、図6(a)に示すように、分離ローラ対66でシートSを分離する際の妨げとならないように、シート上方に退避してシートSと当接しないように動作する。給送ローラ54は、給送信号が送られる度に上記動作を繰り返し、画像形成部3に向けてシートSを1枚ずつ送り出す。
【0057】
このように、給送ローラ54は、給送開始時にシート積載台52上の最上位シートS1に接し、このシートS1を給送するための給送位置(図6(b))と、シート給送中にシート上方に退避する退避位置(図6(a))に移動する。突当て部としての突当て部101a〜101dは、給送ローラ54が退避位置にある場合に、給送ローラ54とシート積載台52が当接するより前にシート積載台52に当接する(図8(b)参照)。
【0058】
一方、工場出荷時等の輸送時には、ドア2Aを開放してシート積載台52を最下部に下降させ、シート積載台52にシート束がある場合はそれを取り除き、上記手動スイッチを出荷モード側に切換える。この状態でドア2Aを閉めると、制御部5が、図9のbに示す回転数及びトルクでパルスモータ27をワイヤ巻取り軸53の巻取り方向に駆動させて、シート積載台52を上昇させる。この際の上昇量としては、シート積載台52が紙面検知フラグ62に当接して紙面検知センサ63のON/OFF信号を変化させてから更に図8(a)のZ1以上に上昇するように設定されている。
【0059】
そして、シート積載台52が上昇し、ワイヤ吊下げ部64a〜64dが突当て部101a〜101dに当接すると、同方向にそれ以上に回転しようとするパルスモータ27が脱調する。しかしこのときのトルクは、シート積載台52上にシートが無い状態での必要最低限のトルクであるため、ワイヤ吊下げ部64a〜64dと突当て部101a〜101dとに掛かる力は軽微であり、問題なく当接させることができる。
【0060】
このように、出荷モードに切り換えることで、制御部5により紙面制御しているときのシート積載台52の移動範囲を上方に超えたロック位置にてパルスモータ27を脱調するまで回転駆動させることで、シート積載台52を確実にロックすることができる。従って、パルスモータ27の制御だけで、出荷時等にはシート積載台52を簡単に且つ確実にロックすることができる。このため、給紙デッキ2を画像形成装置1に含んだ状態で、或いは給紙デッキ2単体で輸送する場合における輸送時の振動や衝撃による傷や破損等を、コストアップを招かない簡素な構成により防止することができる。またこのとき、紙面検知センサ63は紙面有りの状態であるため、万が一ユーザがこのままの状態で主電源を入れたとしても、シート積載台52が更に上昇することはない。従って、シート積載台52の上昇時にシート積載台52或いはその周りの部材に対する傷や破損するおそれはない。
【0061】
また、輸送後に使用を開始する場合、ユーザ等によりドア2Aが開放されると、制御部5が開放を検知すると共に、引掛け部(不図示)により駆動解除部材32が回動させられて段ギヤ31bと段ギヤ31c(31e)との歯合が解除される。これにより、ワンウェイクラッチ40によるシート積載台52の保持が解除され、シート積載台自体の自重等により、ワイヤ巻取り軸53がワイヤ51a〜51dを巻き出す方向に回転し、シート積載台52が最下部の積載位置まで下降する。
【0062】
そして、シート積載台52へのシート束の積載終了後、上記手動スイッチ(不図示)を通常モード側に切換えてドア2Aを閉めると、ドア2Aの押し当て部(不図示)により駆動解除部材32が押圧されて段ギヤ31bと段ギヤ31c(31e)とが噛み合う。そして、駆動解除部材32の回動が検知センサ37で検知されると、制御部5が、脱調していたパルスモータ27を再び同期回転させ、ワイヤ51a〜51dを介してシート積載台52を上昇させる。
【0063】
なお、前述したように、突当て部101a〜101dは金属または合成樹脂材料から構成され、ワイヤ吊下げ部64a〜64dは合成樹脂材料から構成されているが、これに代えて、次のように構成することもできる。例えば、突当て部101a〜101d及びワイヤ吊下げ部64a〜64dの少なくとも一方を、弾力性を有する弾性部材で構成することも可能である。この場合、突当て部101a〜101dとワイヤ吊下げ部64a〜64dとの当接によるロック状態を、より一層安定化させることができる。
【0064】
本実施形態では、パルスモータ27を脱調させて、ワイヤ吊下げ部64a〜64dと突当て部101a〜101dを当接させてシート積載台52を固定(ロック)したが、突当て部101a〜101dに代えて、以下の変形例のように構成することも可能である。
【0065】
例えば、図13に示すように、枠板20に軸103を突出固定し、軸103に、略L字状の当接部材(突当て部)102をその上端部102aをガイド溝65cの上端部近傍に位置させて回動自在に支持する。さらに、枠板20における当接部材102の下端部102bと対向する位置に係止部材35を固定し、下端部102bと係止部材35との間に引張りコイルばね(弾性体)104を張設する。そして、他のワイヤ吊下げ部64a,64b,64dに対応する位置にも、同様に当接部材102等を配置する。
【0066】
これにより、当接部材102は、上端部102aによってシート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dを付勢する方向に引張りコイルばね104で付勢された状態となる。このため、図13(b)のように、輸送時に当接部材102の弾性力でシート積載台52を固定(ロック)することができ、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また本変形例においても、前述した実施形態と同様、各当接部材102は、シート積載台52のワイヤ吊下げ部64a〜64dに当接した状態にて、シート積載台52を給送ローラ54に当接させない機能を奏するように弾性力等が設定されている。
【0068】
以上の構成により、当接部材102の弾性力でシート積載台52を上端部102aによりロックできるので、簡単な構成でコストアップを招くことなく、輸送時の振動や衝撃による傷や破損を確実に防止することができる。また、このとき紙面検知センサ63は紙面有の状態であるため、万が一ユーザがこのままの状態で電源をいれてもシート積載台52が上昇することはない。従って、シート積載台52の上昇時にシート積載台52或いはその周りの部材を傷つけたり破損させたりするおそれはない。また、パルスモータ27を脱調させることなく、シート積載台52を、移動範囲を上方に超えたロック位置に固定保持することが可能となる。なお、本変形例においても、制御部5が通常モード及び出荷モードを有することは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1…画像形成装置、2…シート給送装置(給紙デッキ)、3…画像形成部、5…制御部、27,65a〜65d,101a〜101d…昇降機構(パルスモータ,ガイド部,突当て部)、52…シート積載部、54…給送部(給送ローラ)、61…収納部、64a〜64d…ワイヤ吊下げ部、102…突当て部(当接部材)、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート積載部を昇降可能に有する収納部と、前記シート積載部に積載されたシートを給送する給送部と、前記シート積載部を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を制御する制御部と、を備えたシート給送装置において、
前記昇降機構は、
上昇する前記シート積載部を所定位置で当接させて前記収納部に対しロック可能な突当て部と、前記昇降機構の駆動源となるパルスモータと、前記パルスモータと前記シート積載部との間に介在され、前記シート積載部の上昇方向にはフリー回転し且つ前記シート積載部の下降方向には回転をロックするワンウェイクラッチと、を有し、
前記制御部は、
前記パルスモータを前記シート積載部の上昇方向に回転駆動させ、前記シート積載部が前記突当て部に当接した後も同方向に更に回転駆動させて脱調させた後に非通電とすることで、前記シート積載部を前記突当て部に当接させた状態で前記シート積載部を前記ワンウェイクラッチによりロックさせる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記所定位置は、前記給送部及び前記パルスモータを前記制御部により制御してシートを給送する制御時での前記シート積載部の移動範囲を上方に超えた位置である、ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記給送部によるシート給送時に用いる給送モードと、前記給送モードよりも低トルク且つ高回転で前記シート積載部を上昇させるロックモードと、を切換え可能に備え、前記ロックモードへの切換え時に、前記パルスモータを脱調させるように制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記所定位置の前記突当て部は、前記シート積載部が当接した状態にて前記シート積載部を前記給送部に当接させない、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、前記シート積載部を移動ガイドし且つ上端部に前記突当て部が設けられたガイド部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記突当て部は、弾性力を有する部材により構成される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置により給送されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−218889(P2012−218889A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86661(P2011−86661)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】