説明

シート給送装置

【課題】シートが可逆性感熱記録媒体のような厚みと剛性を有し、さらにシート間に油分が介在し、シート同士が密着している状態であっても、積層されたシートから最上位のシートのみを確実に分離して搬送することができるシート給送装置を提供する。
【解決手段】シートの搬送方向前方を吸引保持し、積層されたシートの水平面に対し傾斜させて持ち上げるよう回動する吸引手段3と、シートの搬送方向後方を抑える押圧手段5と、吸引手段3の回動に追従して持ち上げられたシート1にエアを吹き付けて1枚ずつ分離させる分離手段4と、吸引手段3により持ち上げられた最上位のシートと当接するように配置されたエアガイド板7とを備え、エアガイド板7が、分離手段4から噴射されたエアを、最上位のシートと次位以下のシートとを分離するように案内することを特徴とするシート給送装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚積層されたシートからシート1枚のみを分離して搬送するシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層されたシートから吸引手段により1枚ずつシートを分離して吸引し、吸引されたシートを搬送経路へ給送するシート給送装置が知られている。シート給送装置としては、摩擦式(例えば、特許文献1参照)、及びエア式(例えば、特許文献2参照)のものがある。前記エア式の給紙装置は、エアを吹き付けることによりシート束からシートを分離させ、分離された最上位の1枚のシートを吸着しつつ給送するものである。
【0003】
特許文献2には、積層されたシート状用紙の進行方向先端側にエアを吹き付けるさばき用ノズルと、バキュームチャンバーに吸着されたシート状用紙の進行方向先端にエアを吹き付ける分離用ノズルとを備え、前記さばき用ノズル及び前記分離用ノズルにそれぞれエアを供給する供給源には共通のブロワーと、このブロワーに連通するダクトと、該ダクトの内部でエアの供給方向を切り換える流路切り換え手段とが備えられたシート給送装置が開示されている。
【0004】
従来のハードコピーは、紙などのシート状記録媒体に外部からインクあるいはトナーなどの着色剤を付着固定して画像形成を行なうか、あるいは感熱記録紙のように紙などの基材上に記録層を設け、これにエネルギーを加えて可視画像を形成するものであった。ところが、複写機やファクシミリの普及、コンピューターからの情報出力によって紙を主体とする記録媒体の消費量が急増し、自然破壊やエネルギー消費、廃棄物処理などの社会問題を引き起こしている。この問題を解決するため、一旦記録した可視画像を消去でき、繰り返して画像形成が可能な可逆性の記録媒体が注目されている。
【0005】
可逆性の記録媒体は、例えば、機械の組立工場等などの工程管理などに使用され、具体的には部品箱の情報を表示するのに用いられる。このような使用において、部品自体に油や鉄粉等が使用されている場合、部品箱に添付された可逆性記録媒体にもその油や鉄粉などの汚れが付着してしまうことがある。このような汚染した可逆性記録媒体を回収して積層し、消去を行うのにあたり、汚れを落とす必要があり、可逆性感熱記録媒体の機能を損なうことなく洗浄できる可逆性感熱記録媒体用洗浄液及び洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。一方、上記のように、油の付着があり、密着した状態で集められたシート状の可逆性感熱記録媒体の印字及び消去を行う装置においては、シート表面に油が介在するため、例えば、特許文献1に記載されたような摩擦力を使う給送装置であると、スリップが発生し、不送りや重送が発生してしまう可能性がある。
【0006】
特許文献4には、可逆性記録媒体を記録(書込/消去)装置内の搬送経路、例えば給紙トレイに複数積層しても媒体同士が貼りついた重送状態で搬送されずに、連続給紙可能な記録媒体が提案されている。しかしながら、記録装置内において積層された可逆性記録媒体を剪断方向(積層する方向に対し垂直方向)に分離搬送するとき、積層された可逆性記録媒体に油が介在し、密着している状態では、分離するための搬送負荷が非常に大きくなり、また給紙ローラや分離ローラに油が付着し、摩擦係数も落ちるため、不給紙や重送等が多発してしまうことがある。また、マグネット部材が用いられた可逆性記録媒体を使用した場合でも、マグネットによる搬送方向に引っ張る力より、分離するための搬送負荷の方が大きく、不給紙が多発してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2には、シートを分離搬送する装置が記載されている。このシート紙給送装置は、一般的な用紙を分離搬送するための装置であるため、積層されたシートを分離する負荷としてはシート間の摩擦力になる。可逆性感熱記録媒体の搬送に適用する場合、積層された可逆性記録媒体を剪断方向(積層する方向に対し垂直方向)に分離搬送するため、積層された可逆性記録媒体に油が介在し、密着している状態では分離するための搬送負荷が非常に大きくなるため、エア吸着ベルト手段での搬送力では不足する。
また、エア吸着ベルト手段で最上位の1枚だけを吸着しても、積層された可逆性記録媒体に油が介在して、媒体同士が密着している状態では、2枚同時に吸着されて重送が生じることがある。さらに、進行方向先端側にエアを吹き付けるさばき用ノズルにより、積層された最上位のシートと次位以下のシートをさばく場合にも、可逆性記録媒体のように厚みと剛性を有するシートで、シート間に油が介在し、密着している状態では、エアを吹き付ける力だけではシートを分離することが出来ず、やはり重送がおこる可能性がある。
【0008】
一方、特許文献1には、積層されたシートのうち最上位のシートを吸盤により吸着し、傾けることにより、紙のコシを利用して2枚目以降の紙を平面上に復元させて分離し、最上位のシートのみを搬送する装置が記載されているが、可逆性記録媒体に適用した場合、積層された可逆性記録媒体に油が介在し、密着している状態では密着力が大きすぎるため、シートのコシの復元力だけでは分離されず、2枚目以降のシートも傾いたまま最上位のシートと密着したままとなる可能性がある。
また、特許文献1の実施例では、吸引手段である吸盤を傾けたときに、用紙先端方向と用紙後端方向では吸盤に掛かる応力が不均等であり、吸盤自体に上下方向への可動の自由度がないため、吸盤の耐久性が大きく影響して劣化し易くなる問題がある。
【0009】
上述の特許文献1及び2の技術を組み合わせた搬送装置を検討した場合、特許文献2に記載されたさばき用ノズルから進行方向先端側にエアを吹き付ける位置が、積層されたシートの最上位と次位との境界面にピンポイントで当たらないと分離させることができず、また、エアが最上位のシートと吸盤との吸着部に当たると、吸盤が最上位のシートから外れてしまう可能性があるため、さばき用ノズルからのエアを吹き付け位置のコントロールが重要である。
【0010】
さらに、特許文献1には吸着手段(吸盤)を傾ける態様が記載されているが、傾きの方向が用紙の搬送方向と平行であるため、シートの密着力が、シートの先端方向と後端方向で均一であり、シートの先端部分をエアで剥離するためには大きな噴射力が必要になる。さらに、傾斜部分以外の後端側において、最上位と次位のシートの境界部分は密着しているため、シートのコシによる復元力は分離する方向ではなく密着する方向に働いてしまう。さらに、特許文献1に記載されているようなシート最上位の位置を保つための昇降可能な給紙台を設けている場合は、上昇の圧力がシートの傾斜部分以外の後端側の最上位と次位のシートの境界部分に加わるため、シートの後端部にまでエアが到達するような大きな噴射力が必要となり、装置自体も大きく強力なものが必要になるため、コスト高となる問題がある。
【0011】
よって、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、シートが可逆性感熱記録媒体のような厚みと剛性を有し、さらにシート間に油分が介在し、シート同士が密着している状態であっても、積層されたシートから最上位のシートのみを確実に分離して搬送することができるシート給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るシート給送装置は、以下のとおりである。
〔1〕 積層されたシートのうち、最上位のシートのみを分離して搬送路へ給送するシート給送装置において、
シートの搬送方向前方を吸引保持し、積層されたシートの水平面に対し傾斜させて持ち上げるよう回動する吸引手段と、
シートの搬送方向後方を抑える押圧手段と、
前記吸引手段の回動に追従して持ち上げられたシートにエアを吹き付けて1枚ずつ分離させる分離手段と、
前記吸引手段により持ち上げられた最上位のシートと当接するように配置されたエアガイド板とを備え、
前記エアガイド板が、前記分離手段から噴射されたエアを、前記最上位のシートと次位以下のシートとを分離するように案内することを特徴とするシート給送装置である。
〔2〕 前記エアガイド板が、シート搬送方向の先端側に凸部を有し、該凸部の突出部分の厚みが前記シート1枚の厚みよりも少ないことを特徴とする前記〔1〕に記載のシート給送装置である。
〔3〕 前記分離手段がエア噴射装置であり、前記エアガイド板に固定されて設けられていることを特徴とする前記〔1〕から〔2〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔4〕 前記吸引手段は、吸引部がゴム製部材で構成され、かつベローズ形状を有する吸引パッドからなることを特徴とする前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔5〕 前記吸引手段がシートの搬送方向前端側の角部を吸着するよう配置され、かつ回動する回転軸がシートの搬送方向に対し略45°の角度をなすことを特徴とする前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔6〕 前記吸引手段が、シートの搬送方向前端側の両方の角部を吸着するよう配置されていることを特徴とする前記〔5〕に記載のシート供給装置である。
〔7〕 前記エア噴射装置の噴射口が、シートの搬送方向前端側の角部に向けて配置されていることを特徴とする前記〔5〕から〔6〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔8〕 積層されたシートからなるシート束の最上面が前記押圧手段に当接するまで上昇させる上昇手段と、前記上昇手段により上昇した前記シート束の最上面と前記押圧手段とが当接する圧力を制御する圧力制御手段とを有し、
前記圧力制御手段によって、前記シート束の最上面と前記押圧手段とが圧力0で当接するよう制御されているとき、前記分離手段が、エアを吹き付けることを特徴とする前記〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔9〕 前記分離手段が、前記吸引手段が回動してシートの水平面と形成した傾斜角に準じた角度でエアを噴出することを特徴とする前記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔10〕 前記押圧手段が押圧ローラであり、該押圧ローラはトルクリミッタを介してシート搬送方向と逆方向に回転駆動され、次に給送されるシートの位置を調整することを特徴とする前記〔1〕から〔9〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔11〕 前記分離手段が、前記エアガイド板に固定された第1のエア噴射装置と、積層されたシートを収容するシートホルダに固定された第2のエア噴射装置とからなることを特徴とする前記〔1〕から〔10〕のいずれかに記載のシート供給装置である。
〔12〕 前記第2のエア噴射装置が、前記吸引手段に吸引保持された最上位のシートの先端が噴射口上を通過したタイミングでエアの噴出を行うことを特徴とする前記〔11〕に記載のシート供給装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートが可逆性感熱記録媒体のような厚みと剛性を有し、さらにシート間に油分が介在し、シート同士が密着している状態であっても、積層されたシートから最上位のシートのみを確実に分離して搬送することができる。
【0014】
本発明の効果として、請求項1によれば、積層されたシートのうち、最上位のシートのみを分離して搬送路へ給送するシート給送装置において、シートの搬送方向前方を吸引保持し、積層されたシートの水平面に対し傾斜させて持ち上げるよう回動する吸引手段と、
シートの搬送方向後方を抑える押圧手段と、前記吸引手段の回動に追従して持ち上げられたシートにエアを吹き付けて1枚ずつ分離させる分離手段と、前記吸引手段により持ち上げられた最上位のシートと当接するように配置されたエアガイド板とを備え、前記エアガイド板が、前記分離手段から噴射されたエアを、前記最上位のシートと次位以下のシートとを分離するように案内するシート給送装置であるため、確実に最上位のシートのみを分離することができ、例えば、可逆性記録媒体のような厚みや剛性のあるシートである場合や、シート間に油分が介在している場合や、シート同士が密着している場合であっても分離することができる。また、エア吹き付けによって、シート間の異物などの汚れを除去する効果も得られる。
請求項2の発明によれば、請求項1のシート給送装置において、前記エアガイド板が、シート搬送方向の先端側に凸部を有し、該凸部の突出部分の厚みが前記シート1枚の厚みよりも少ないため、エアを最上位のシートと次位のシートの接触面に対しシート1枚の厚み以下の精度で吹き付けることができ、最上位のシートを確実に分離することができる。さらに、前記吸引手段と最上位のシートとの間にエアが吹きつけられることが無くなり、吸着された最上位のシートが前記吸引手段から外れるのを防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、請求項1から2のいずれかに記載のシート給走装置において、前記分離手段がエア噴射装置であり、前記エアガイド板に固定されて設けられているため、最上位のシートと次位のシートとの境界部分に確実にエアを吹き付けて分離することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載のシート給送装置において、前記吸引手段は、吸引部がゴム製部材で構成され、かつベローズ形状を有する吸引パッドからなるため、例えば、可逆性記録媒体のような厚みと剛性があるシートを吸着して持ち上げ、反り上げるようにした場合など、前記吸引パッドに対し部分的に圧縮と引張の力がかかる状態であっても、吸着した前記シートを確実に保持することができ、ベローズ形状によって前記吸引パッドにかかる圧縮と引張の力を分散緩和することにより、局部的な応力がかからないようにして、前記吸引パッドの耐久性を向上させることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載のシート給送装置において、前記吸引手段がシートの搬送方向前端側の角部を吸着するよう配置され、かつ回動する回転軸がシートの搬送方向に対し略45°の角度をなすため、密着面積が小さく密着力の弱いシート角部が吸着されて持ち上げられ、反り上がる状態となることにより、先端角部から離れるほどシートの剛性によりシートは撓んだ状態から平面に戻ろうとする復元力が大きくなり、前記吸引手段により吸着された前記最上位のシートから吸着されていない次位以下のシートは平面に戻るため、前記最上位のシートのみをより確実に分離することができる。
請求項6の発明によれば、請求項5に記載のシート給送装置において、前記吸引手段が、シートの搬送方向前端側の両方の角部を吸着するよう配置されているため、より確実に最上位のシートを分離することができる。
請求項7の発明によれば、請求項5から6のいずれかに記載のシート給送装置において、前記エア噴射装置の噴射口が、シートの搬送方向前端側の角部に向けて配置されているため、シート間の密着面積が小さく密着力の弱い箇所から剥離が広がり、確実に分離を行うことができる。また、エアの噴射力を小さな出力とすることができるため、装置のコストダウンも可能になる。
請求項8の発明によれば、請求項1から7のいずれかに記載のシート給送装置において、積層されたシートからなるシート束の最上面が前記押圧手段に当接するまで上昇させる上昇手段と、前記上昇手段により上昇した前記シート束の最上面と前記押圧手段とが当接する圧力を制御する圧力制御手段とを有し、
前記圧力制御手段によって、前記シート束の最上面と前記押圧手段とが圧力0で当接するよう制御されているとき、前記分離手段が、エアを吹き付けるため、最上位のシートと次位のシートとの間の摩擦力が低減されて、吹き付けたエアにより前記最上位シートと前記次位のシートとが接触しない状態で分離搬送されるため、重送を防止することができる。
請求項9の発明によれば、請求項1から8のいずれかに記載のシート給送装置において、前記分離手段が、前記吸引手段が回動してシートの水平面と形成した傾斜角に準じた角度でエアを噴出するため、複数のシートが束状に吸着されて反り上がった状態であっても、最上位のシートと次位のシートとの接触面に対し、エアがシートの水平面への復元方向に当たることにより、風圧が分離方向に作用し、最上位のシートのみを確実に分離することができる。
請求項10の発明によれば、請求項1から9のいずれかに記載のシート給送装置において、前記押圧手段が押圧ローラであり、該押圧ローラはトルクリミッタを介してシート搬送方向と逆方向に回転駆動され、次に給送されるシートの位置を調整するため、最上位のシートが分離搬送されることを繰り返すことにより生じる静電気によって、次位のシートが追従して移動し、位置がずれた場合であっても、前記押圧ローラにより元の位置に戻され、さらに本来のセット位置から搬送方向の逆方向へは搬送されないように規制されるため、連続の分離搬送を確実に行うことが可能となる。
請求項11の発明によれば、請求項1から10のいずれかに記載のシート給送装置において、前記分離手段が、前記エアガイド板に固定された第1のエア噴射装置と、積層されたシートを収容するシートホルダに固定された第2のエア噴射装置とからなるため、第1のエア噴射装置がシートとともに移動し、次位以下のシートに吹きつけられるエア量が減少しても、第2のエア噴射装置により補填されるため、確実な分離が可能となる。
請求項12の発明によれば、請求項11のシート給送装置において、前記第2のエア噴射装置が、前記吸引手段に吸引保持された最上位のシートの先端が噴射口上を通過したタイミングでエアの噴出を行うため、前記最上位のシートが前記吸引パッドから外れることが防止でき、確実に分離を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における全体の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における全体の概略構成を示す上面図である。
【図3】本発明のシート給送装置における最上位のシートを吸着する要部の構成を示す断面図である。
【図4】本発明のシート給送装置における最上位のシートの吸着の動きを説明する断面図である。
【図5】(A)は本発明のシート給送装置における最上位のシートを吸着する要部の構成を示す上面図であり、(B)はシート間密着力と先端からの長さの関係を示すグラフである。
【図6】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における概略構成を示す上面図であって、分離ユニット移動シリンダがOFFの状態を示した図である。
【図7】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における概略構成を示す上面図であって、分離ユニット移動シリンダがONの状態を示した図である。
【図8】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図9】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図10】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図11】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図12】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における制御ブロック図を示したものである。
【図13】本発明のシート給送装置の第1の実施態様における一連の動作を示したフローチャートである。
【図14】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における全体の概略構成を示す正面図である。
【図15】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における全体の概略構成を示す上面図である。
【図16】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における概略構成を示す上面図であって、分離ユニット移動シリンダがOFFの状態を示した図である。
【図17】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における概略構成を示す上面図であって、分離ユニット移動シリンダがONの状態を示した図である。
【図18】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図19】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図20】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図21】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における最上位のシートを吸着する要部の構成と動きを示す断面図である。
【図22】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における制御ブロック図を示したものである。
【図23】本発明のシート給送装置の第2の実施態様における一連の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシート給送装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0017】
本発明のシート給送装置の第1の実施態様における全体の概略構成を図1及び図2に示す。図1は本発明のシート給送装置の第1の実施態様の正面図であり、図2はその上面図である。
本発明のシート給送装置100は、シート1の搬送方向前方を吸引保持し、積層されたシートからなるシート束1Aの水平面に対し傾斜させて持ち上げるよう回動する吸引手段3と、シート1の搬送方向後方を抑える押圧手段5と、吸引手段3の回動に追従して持ち上げられたシート1にエアを吹き付けて1枚ずつ分離させる分離手段4と、吸引手段3により持ち上げられた最上位のシートと当接するように配置されたエアガイド板7とを備える。エアガイド板7が、分離手段4から噴射されたエアを、最上位のシートと次位以下のシートとを分離するように案内する。
【0018】
シート給送装置100にはベルトコンベア6が接続されている。積層されたシート1から分離された1枚の最上位のシートは、ベルトコンベア6まで搬送されてセットされ、次工程の洗浄装置に搬送される。
【0019】
図1に示すように、積層されたシート1の束1Aは、シートホルダ2にセットされている。図2に示すように、積層されたシート1の束1Aはシートホルダ2により前後左右方向の位置が規制されている。なお、本実施態様において、特に断りが無い限り、シート1は可逆性記録媒体のICタグシートであるものとして説明する。
【0020】
積層されたシートの束1Aは底板52の上に載置されている。シート束1Aの最上面が押圧手段5に当接するまで上昇させる上昇手段と、前記上昇手段により上昇したシート束1Aの最上面と押圧手段5とが当接する圧力を制御する圧力制御手段とを有する。前記上昇手段は、シート上昇モータにより駆動されるシート上昇駆動部51と連結されたシート上昇版53からなり、シート上昇モータ50の正転によりシート上昇版53が上昇し、上昇により生じる圧力がシート加圧スプリング8を介して底板52加えられ、底板52とともにシート束1Aが持ち上げられる。シート上昇モータ50が逆転するとシート上昇板53は下降するよう構成されている。シート上昇板53は、シート上昇ホームポジション(HP)検知センサ12、及びシート上限検知センサ11によって、最も下降した位置と最も上昇した位置とがそれぞれ検出される。また、停止状態のシート上昇板53は、シート上昇HP検知センサ12位置で待機している。
【0021】
シート束1Aの最上位シートは、押圧手段である押圧ローラ(シート搬送ローラ)5と、シート加圧スプリング8により付勢されている。シート束1Aの最上面と押圧ローラ5とが当接する高さと同じ位置に、シート圧力センサ15が配置され、押圧ローラ5にかかる力Rが検出される。
【0022】
押圧ローラ5は、図2に示すように、トルクリミッタ44を介して、押圧ローラ駆動プーリ43と連結され、さらに押圧ローラ駆動ベルト42、押圧ローラモータプーリ42、押圧ローラ回転モータ40に連結駆動されている。押圧ローラ回転モータ40が回転すると、押圧ローラ5は図1および図2の矢印の搬送方向と逆方向に回転する構成となっている。このとき、最上位のシート1がシートホルダ2により前後左右方向に位置規制されているため、トルクリミッタ44が働き、最上位のシート1はシートホルダ2の搬送方向と逆方向の面(図1の破線A)に付勢された状態で停止する。
【0023】
図3及び図4は、最上位のシートを吸着する要部の構成を示す断面図であり、図5はその上面図である。
図3及び図4に示すように、吸引手段である吸引パッド3は、積層されたシート1の束の最上面に当接して最上位シートを吸着し、図5(A)に示すように、吸引パッド3は最上位のシートの搬送方向の先端部の中央を吸着する位置(3A)又は角部を吸着する位置(3B、3C)に配置されている。
【0024】
吸引パッド3は、吸引パッド移動レバー30の先端部分に固定され、吸引パッド移動レバー30は、中心軸31を中心に回転自在に構成されている。さらに吸引パッド移動レバー30と吸引パッド移動シリンダ9が回転自在に固定され、吸引パッド移動シリンダ9がONになると、図4に示すように、吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に持ち上げられる。吸引パッド3が最上位のシートの搬送方向先頭の両角部分を吸着している場合、少なくとも最上位のシート1の搬送方向先頭の両角部分が反り上がる。押圧ローラ5はシート加圧スプリング8により圧力Rで付勢されており、シート1の束の搬送方向後方部分を押さえている状態になる。
【0025】
また、吸引パッド3が最上位のシート1と当接する先端部分はゴム製部材で構成さており、図4に示すようにシート1の搬送方向先頭の両角部分が反り上がった場合、吸引パッド3のゴム製部材の部分に対し、矢印で示すように先端には引張の力がかかり、後端には圧縮の力がかかる。さらに、吸引パッド3はベローズ形状3Dを有し、上下方向に伸縮の自由度を有している。このため吸引パッド3にかかる先端の引張力及び後端の圧縮力が、ベローズ形状3Dによってパット全体に分散緩和し、局部的な応力がかからないようになっている。
【0026】
図3及び図4に示した最上位のシートを吸着する要部を上側から示したのが図5(A)である。
吸引パッド3B及び3Cは、最上位のシートの搬送方向前端側の角部を吸着するように配置され、かつ回動する回転軸がシートの搬送方向に対し略45°の角度、例えば、40〜50°程度をなす。吸引パッドが最上位のシートを吸着し、次位以下のシートから離間するように移動し、水平面に対し傾斜するよう回動する動きによって、最上位のシートの吸着部は、図5(A)の白抜きの矢印で示す方向に反り上がる。
【0027】
図5(B)は、シート先端からの長さLの位置における、最上位のシートと次位のシートとの間の密着力を示すグラフである。破線は、吸引パッド3Aが搬送方向に対し水平方向に回動し、最上位のシートの吸着部を持ち上げた場合の密着力を示し、実線は、吸引パッド3B及び3Cが搬送方向に対し約45°をなす軸に沿って回動し、最上位のシートの吸着部を持ち上げた場合の密着力を示している。
吸引パッド3B及び3Cは、最上位シートを角部分からシートの搬送方向に対し45°近傍方向に持ち上げる為、先端からの長さLが短いほど密着部分の長さも短いため、密着力も小さくなる。一方、吸引パッド3Aは、搬送方向に対して水平に持ち上げるため、シート間の密着部分の長さが先端からの長さLが小さい場合は、角部を持ち上げるのに比べて先端部分の密着力が大きくなる。
【0028】
図5(A)に示すように、分離手段であるエア噴射装置4の噴射口は、シートの搬送方向前端側の角部に向けて配置されることが好ましい。具体的には、エア噴射ノズル4のうち、角部の吸着部位にエアを噴射する4A及び4Bは、シートの搬送方向に対し約45°方向に持ち上げられたシート1の搬送方向先端の両角部分の外側から、同じく搬送方向に対し約45°の角度をなすようエアを吹き付けるよう配置される。この場合、搬送方向と水平にエアを噴射する場合に比較して、図5(B)で示したとおりシート間の密着力も小さいため、エア噴射の出力を小さくすることができる。
【0029】
図8〜図11は、本発明のシート給送装置における最上位のシートを吸着する要部と、その動きを説明する断面図である。
図8に示すように、シート1の上面にはエアガイド板7が配置されている。エアガイド板7の一部には穴部が設けられ、この穴部を通して吸引パッド3が配置されている。このような構成とすることにより、図9に示すように、吸引パッド3がシート1の搬送方向の両角部分を吸着し持ち上げた際に、シート1とエアガイド板7とが当接し、シート1が角度θをなすように反り上がる。このように吸引パッド3が回動してシートの水平面と形成した傾斜角θに準じた角度で、エア噴射装置4はエアを噴出する。すなわち、分離手段であるエア噴射装置4のノズルは、傾斜角θと近似の角度となるように設置されている。
【0030】
エアガイド板7の先端部分は、図8に示すように高さHの凸部が設けられている。凸部の突出部分の厚み(高さ)Hは、シート1の1枚相当の厚みTより少ない値に設定されている。このため、図9に示すように、吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分を吸着して持ち上げた時に、シート1がエアガイド板7の段差Hの内側に入り込む。エアガイド板7の先端は、エア噴射装置4の噴射口近傍に配置され、エア噴射装置4のノズルからエアが噴射されると、エアガイド板7により反り上がった状態のシート1の搬送方向先頭の両角部分にエアが当たるように構成されている。さらに、エアガイド板7の段差Hにより、噴射されたエアは最上位のシートと次位のシートとの境界面に当たり、最上位のシートと吸引パッド3との接触面には当たらない。
【0031】
図8に示すように、押圧ローラ5は、トルクリミッタ44を介して矢印の搬送方向と逆方向(矢印aの方向)に回転駆動される。これにより押圧ローラと当接するシート1は、シートホルダ2における搬送方向と逆方向の面(破線A)に付勢された状態で停止する構成となっている。この状態で図10に示すように最上位のシートと、破線で示す次位のシートとが分離されると、最上位のシートと押圧ローラ5との摩擦力がトルクリミッタ44の空転負荷より大きい場合には、押圧ローラ5が図10の矢印bの方向に回転することになる。
【0032】
図11に示すように、最上位のシートの後端が押圧ローラ5を抜け、次位のシートが最上面となり押圧ローラ5が当接した場合、該最上面のシート1はシート加圧スプリング8により圧力Rで付勢され、押圧ローラ5の摩擦力により、搬送方向と逆方向の面(破線A)に突き当たるまで戻され、シート1の後端がシートホルダ2の搬送方向と逆方向の面(破線A)に突き当たるとトルクリミッタ44が再度空転し、シート1は付勢された状態で停止する。このようにシート1の位置が制御されることによって、最上位のシートが分離搬送されることを繰り返すことにより生じる静電気により次位のシートが追従して移動し、位置がずれた場合であっても、元の位置に戻されるため、連続の分離搬送を確実に行うことができる。
【0033】
図6及び図7は、本発明のシート給送装置の概略構成を示す上面図である。
図6に示すよう、吸引パッド3、エアガイド板7、吸引パッド移動シリンダ9は、移動テーブル33上に構成され、移動テーブル33はスライドレール32上にセットされて左右の移動が可能である。また、移動テーブル33は、分離ユニット移動シリンダ10と連結されており、分離ユニット移動シリンダ10がOFFのときは、吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分と当接する位置で止まるように構成されている。さらに、この移動テーブル33の位置をホームポジションとして検出する分離ユニットHPセンサ13が配置されている。
【0034】
図7に示すように、分離ユニット移動シリンダ10がONのときは、移動テーブル33上のエアガイド板7及び吸引パッド移動シリンダ9は、スライドレール32に沿ってベルトコンベア6上に移動する。シート1は、吸引パッド3から解放されると、ベルトコンベア6上に乗せられる。また、移動テーブル33の位置を検出する分離ユニット開放位置検知センサ14が配置されている。なお、シートホルダ2、エア噴射装置4、及び押圧ローラ5は、構造体に固定されている。
図2に示した吸引パッド3、エア噴射装置4、吸引パッド移動シリンダ9、分離ユニット移動シリンダ10は、エアチューブ21によりコンプレッサー20と接続され、その間にエア噴射ノズル電磁弁22、吸引パッド移動シリンダ電磁弁23、吸引パッド電磁弁24、分離ユニット移動シリンダ電磁弁が設けられ、エア供給のON/OFFの切換が行われる。
【0035】
また、図2に示したように、シート1の搬送方向の先頭両角部分に対応する吸引パッド3と吸引パッド電磁弁24との間には、真空発生機26が連結されている。吸引パッド電磁弁24がONになってエアが供給されると、真空発生機26により吸引パッド3の吸着部分が真空になり、シート束1Aの最上位のシートを吸着する構成となっている。さらに、吸引パッド電磁弁24がOFFになると、吸引パッド3の吸着部分の真空状態が破壊され、シート1の表面が解放されて離れる。
【0036】
図12は本発明のシート給送装置の第1の実施態様における制御ブロック図を示したものである。
図12に示すように、シート給送装置100はシート給送装置コントローラ101により制御される。操作部200とシート給送装置コントローラ101とが接続され、処理枚数、スタート、ストップ等の情報入力と、終了や異常表示等の画面表示がコントロールされている。給送装置コントローラ101は、シート上限検知センサ11、シート上昇HP検知センサ12、分離ユニットHPセンサ13、分離ユニット開放位置検知センサ14、シート圧力センサ15、シート有無検知センサ16の入力情報により、エア噴射ノズル電磁弁22、吸引パッド移動シリンダ電磁弁23、吸引パッド電磁弁24、分離ユニット移動シリンダ電磁弁25、押圧ローラ回転モータ40、シート上昇モータ50の動作を制御する。
【0037】
図13は、本発明のシート給送装置の第1の実施態様における一連の動作を示したフローチャートである。以下、その動作を説明する。
STARTで操作部200から開始ボタンが押され、開始信号が入力される(S0)。入力が無ければ待機状態が維持される。開始信号が入力されると各動作部分がデフォルトの位置に配置されているか確認を行う。まず、シート上昇HP検知センサ12を確認する(S1)。図1に示すシート上昇板53がデフォルト位置に有るときはONであるが、OFFの場合はシート上昇板53がデフォルト位置に無いので、シート上昇モータ50を逆転させ(S2)、シート上昇板53をデフォルト位置まで下げる。シート上昇HP検知センサ12がONであれば(S3)、シート上昇モータ50を停止させる(S4)。
【0038】
次に分離ユニットHPセンサ13を確認する(S5)。分離ユニットHPセンサ13がONの場合は、移動テーブル33がデフォルト位置に有ることを示している。OFFの場合は、移動テーブル33がデフォルト位置に無いので、始めに吸引パッド移動シリンダ電磁弁23をONにして(S6)、図4に示すように吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に持ち上げられた状態とする。この状態で、分離ユニット移動シリンダ電磁弁25をONにして(S7)、分離ユニット移動シリンダ10をONにして、移動テーブル33を図7に示すようにシート1が吸引パッド3から解放される位置まで移動させる。次いでデフォルト位置に戻すため、吸引パッド移動シリンダ電磁弁23をOFFにし(S8)、分離ユニット移動シリンダ10をOFFにして、分離ユニットHPセンサ13がONとなるデフォルト位置まで移動テーブル33を戻す。
【0039】
次に吸引パッド移動シリンダ電磁弁23をOFFにして(S9)、吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分を吸着可能となる位置にセットする。この状態で押圧ローラ回転モータ40をONすると、図8に示すように押圧ローラ5は矢印の搬送方向と逆方向に回転駆動されるが、このときはシート上昇板53がデフォルト位置に有るため、シート1の最上面と押圧ローラ5は離間している。ここまでが、シート給送前の準備動作である。
【0040】
次に「A」で示される実際の給紙動作について説明する。
シート上昇モータ50が正転し(S11)、シート上昇板53が上昇し、最上位のシート1は押圧ローラ5及びシート圧力センサ15と当接する。この瞬間にシート圧力センサ15がONになり(S12)、さらにシート上昇モータ50が正転すると、シート上昇板53が上昇し、シート加圧スプリング8が圧縮される。押圧ローラ5にかかる力Rにより、圧力センサ15が規定の圧力を検出すると(S13)、シート上昇モータ50を停止する(S14)。このときの規定の圧力の値は、図4で示すようにシート1の搬送方向先頭の両角部分がソリ上がり、シート1が撓んでも、最上位のシート1と押圧ローラ5とが離れない値に設定されている。
【0041】
次いで、シート有無検知センサ16によりシート1の有無を確認する(S15)。シート有無検知センサ16がOFFの場合、底板52上にシート1が無いため、操作部にシート無しの表示を行い(S16)、「B」で示される終了動作を行う。シート有無検知センサ16がONの場合は、底板52上にシート1が少なくとも1枚以上有るため、シートの給送動作を開始する。
【0042】
吸引パッド電磁弁24をONにすることにより(S17)、吸引パッド3の吸着部分が真空発生機26により真空になり、図8に示すようにシート1上面を吸着する(図1のa)。この状態の吸引パッド3の吸着力Fは、シート1が束の状態で撓んだ時に、シート1が平面に戻ろうとする抗力Wより大きく設定されている。従って、シート間に油等が介在し密着力が強くなっている場合には、シートが複数枚の束で持ち上げられることがある。
【0043】
次に、吸引パッド移動シリンダ電磁弁23がONになり(S18)、吸引パッド移動シリンダ9がONになると、図4に示すように吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に回動し、連結した吸引パッド3が持ち上げられる。吸引パッド3はシート1の搬送方向先頭の両角部分を吸着しているので、吸引パッドの上昇に伴いシート1の搬送方向先頭の両角部分が持ち上げられ、反り上がる。押圧ローラ5がシート加圧スプリング8により圧力Rで付勢され、シート1の搬送方向後方部分が押さえられる。図5(A)に示すシート1の搬送方向先頭の両角部分が矢印のシートの搬送方向に対し約45°をなす角度で反り上がり、エアガイド板7とシート1とが当接し、図9で示される状態となる(図1のb)。
【0044】
この状態で、エア噴射装置ノズル電磁弁22がONになり(S19)、エア噴射装置4のノズルよりエアが噴射され、エアはエアガイド板7により最上位のシートと次位のシートとの境界部分に吹き付けられるようにガイドされる。反り上がっているシートが2枚以上の束である場合、撓んで戻ろうとする抗力Wにエアの剥離力Nが加わることになる。最上位のシートと次位のシートとの境界部分に油が介在しても剥離させることができるエアの量、エアの速度、及びシート1を撓ませる角度θを設定しておくことにより、シート1の状況に応じて確実に分離を行うことができる(図1のc)。
【0045】
最上位のシートが次位以下のシートから剥離された後、シート上昇モータ50が逆転方向にONとなり(S20)、シート上昇板53が下降し、シート加圧スプリング8の加圧力が低下し、シート圧力センサ15の値が0となる(S21)。この瞬間に、シート上昇モータ50を停止させることにより(S22)、積層されたシート1の束の最上面が押圧ローラ5に対して加圧する力Rは0となるため、その時点における最上位のシートと次位のシートとの間での摩擦力は0となる。この状態で分離ユニット移動シリンダ電磁弁25をONとすると(S23)、分離ユニット移動シリンダ10がONになり、図10及び図7に示すように移動テーブル33上のエアガイド板7、及び吸引パッド移動シリンダ9が分離されたシート1を保持した状態で、スライドレール32に沿ってベルトコンベア6上に移動する(図1のd)。
この間に、エア噴射ノズル電磁弁22がOFFされて(S24)、エア噴射装置4からのエア噴射が止まる。
【0046】
スライドレール32に沿ってベルトコンベア6上にシート1が移動しているので、吸引パッド電磁弁24をOFFにし(S25)、シート1を吸引パッド3から解放し、ベルトコンベア6上にセットする(図1のe)。シートの束1Aから分離された最上位のシートは、ベルトコンベア6により、次工程洗浄を行うための洗浄装置へ搬送される。
【0047】
分離ユニット移動シリンダ電磁弁25がOFFになり(S26)、分離ユニット移動シリンダ10がOFFになって、移動テーブル33上のエアガイド板7、及び吸引パッド移動シリンダ9を、スライドレール32に沿って図6に示す位置、すなわち吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分と当接するデフォルトの位置に移動する(図1のf)。
【0048】
吸引パッド移動シリンダ電磁弁23がOFFになると(S27)、吸引パッド移動シリンダ9がOFFになり、図3に示すように吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に回動し、吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分を吸着可能なデフォルト位置に戻る(図1のg)。
【0049】
ここで、2枚目以降のシートの給送を行うリピート信号が無い場合は、終了動作「B」を行う。一方、2枚目以降のシートの給送を行うリピート信号が有る場合は、この状態でシート有無検知センサ16によりシート1の有無を確認する(S29)。
シート有無検知センサ16がOFFの場合は、底板52上にシート1が無いため、操作部にシート無し表示を行い(S30)、終了動作「B」を行う。シート有無検知センサ16がONの場合、繰り返し給送動作「A」を行う。
【0050】
終了動作「B」は、押圧ローラ回転モータ40をOFFし(S31)、押圧ローラ5の回転を停止する。次いで、シート上昇モータ50を逆転させ(S32)、シート上昇板53をデフォルト位置まで下げ、シート上昇HP検知センサ12がONになったら(S33)、シート上昇モータ50を停止させ(S34)、すべての動作を終了する。
【0051】
本発明のシート給送装置の第2の実施態様の全体の概略構成を図14及び図15に示す。図14は本発明のシート給送装置の第2の実施態様の正面図であり、図15はその上面図である。
図14及び図15に示すように、シート給送装置100にはベルトコンベア6が接続されており、シート給送装置100により分離された1枚のシートはベルトコンベア6にセットされ、ベルトコンベア6により次工程の洗浄を行う洗浄装置へ搬送される。
【0052】
本発明の第2の実施態様のシート給送装置は、図14に示すように、分離手段として第1のエア噴射装置4Aと第2のエア噴射装置4Bとを有し、第1のエア噴射装置4Aのノズルはエアガイド板7に固定され、第2のエア噴射装置4Bのノズルは積層されたシートを保持するフレームのシート搬送方向の先端部に固定されている。
【0053】
図16に示すように、第1のエア噴射装置4Aは、吸引パッド3、エアガイド板7、吸引パッド移動シリンダ9とともに移動テーブル33上に設けられ、移動テーブル33はスライドレール32上にセットされて左右移動可能となっている。
図17に示すように、分離ユニット移動シリンダ10がONされると、移動テーブル33上のエアガイド板7、吸引パッド移動シリンダ9に加え、第1のエア噴射装置4Aはスライドレール32に沿ってベルトコンベア6上に移動する。
【0054】
図17に示すように、最上位のシート1をベルトコンベア6上に移動しても、第2のエア噴射装置4Bのノズルは構造体のフレーム2に固定されているため、動かない。
また、第2のエア噴射装置4Bは、図15に示すようにコンプレッサー20と固定エア噴射ノズル電磁弁27を介してエアが供給され、第1のエア噴射装置4Aとは別にエア噴射の制御が可能である。
【0055】
図22は、本発明のシート給送装置の第2の実施態様の制御ブロック図を示す。
上述の第1の実施態様における制御ブロック図に対し、固定エア噴射ノズル電磁弁27が追加されており、該固定エア噴射ノズル電磁弁27は、図22に示すとおりシート給送装置コントローラ101により制御される。
【0056】
図23は、本発明のシート給送装置の第2の実施態様における一連の動作を示したフローチャートであって、図13に示した第1の実施態様におけるフローと異なる動作を示している。なお、図23に示すS35〜S41のステップは、図13に示したS11〜S17のステップと同一である。以下、S41以降のステップについて説明する。
【0057】
吸引パッド電磁弁24がONし(S41)、図18に示すように、吸引パッド3は真空発生機26により吸着部分が真空になり、シート1上面を吸着する(図14のa)。この状態の吸引パッド3の吸着力Fは、シート1を束の状態で撓ませた時に平面に戻ろうとする抗力Wより大きく設定している。従って、複数のシート間に油等が介在し密着力が強くなっている場合、複数のシートが追従して束状に持ち上げられる場合がある。
【0058】
次に、吸引パッド移動シリンダ電磁弁23がONになると(S42)、吸引パッド移動シリンダ9がONになり、図4に示すように吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に持ち上げられる。吸引パッド3が吸着しているシート1搬送方向前端側の両角部分持ち上げられて反り上がった状態となる。押圧ローラ5は、シート加圧スプリング8を介してシート束1Aの上面から圧力Rで付勢され、シート1の搬送方向後方部分を押さえる。図5の3B及び3Cに示す吸引パッドにより、シート1の搬送方向前端側の両角部分が矢印で示すように約45°の方向に反り上げられる。そしてエアガイド板7とシートとが当接し、図19に示す状態になる(図1のb)。
【0059】
次いで、エア噴射装置ノズル電磁弁22がONになり(S43)、図19に示すように、エアガイド板7に固定されたエア噴射装置4Aより噴射されたエアが、エアガイド板7によりガイドされて最上位のシートと次位のシートとの境界部分に吹き付けられる。最上位のシートに追従して持ち上がった次位以下のシートが、分離しない状態で動いた場合であっても、エア噴射装置4Aもエアガイド板とともに動くため、最上位のシートと次位のシートとの境界部分にエアを吹き付けることができる。
【0060】
持ち上げられたシートが2枚以上の束で有った場合、シート束が撓んで平面に戻ろうとする抗力Wに、エア噴射装置から噴射されたエアによる剥離力Nが加わる。また、最上位シートと次位のシートとの境界部分に油が介在しても剥離することができるエアの量、速度、およびシート1を撓ませる角度θは設定されていることが好ましい(図1のc)。
【0061】
最上位のシートが次位のシートから剥離された後、シート上昇モータ50が逆転方向にONとなり(S44)、シート上昇板53が下降し、シート加圧スプリング8の加圧力が低下し、シート圧力センサ15の値が低下する。シート圧力センサ15の出力値が0になったか判断する(S45)。この瞬間、シート上昇モータ50の逆転をOFFにして停止させることにより(S46)、シート束1Aの最上面が押圧ローラ5と当接したときの圧力Rは0となるため、最上位のシートと次位のシートの間での摩擦力は0となる。
【0062】
この状態で分離ユニット移動シリンダ電磁弁25をONすることにより(S47)、分離ユニット移動シリンダ10がONになり、図17及び図20に示すように、移動テーブル33上のエアガイド板7、吸引パッド移動シリンダ9、エア噴射装置4は、分離されたシート1を保持した状態で、スライドレール32に沿ってベルトコンベア6上に移動する(図1のd)。
【0063】
図20に示すように、分離されたシート1の先端が、第2のエア噴射装置4Bの噴射口の垂直方向の位置Pを通過したタイミングで、第2のエア噴射装置ノズル電磁弁27がONになり(S48)、第2のエア噴射装置4Bのノズルから、エアが噴射される。噴射されたエアは、吸引パッド3により吸着保持されてエアガイド板に当接した最上位のシートの裏面に沿って流れ、該最上位のシートと次位のシートとの境界部分に流れ込む。その後、第1のエア噴射装置ノズル電磁弁22がOFFになり(S49)、第1のエア噴射装置4Aからのエア噴射が止まる。
【0064】
さらに図21に示すように、分離され搬送された最上位のシートの後端が、第2のエア噴射装置4Bの噴射口の垂直方向の位置Pを通過するタイミングで、第2のエア噴射装置ノズル電磁弁27がOFFになり(S40)、第2のエア噴射装置4Bのノズルからのエアの噴射が止まる。
【0065】
ベルトコンベア6上に分離されたシート1が移動しているので、吸引パッド電磁弁24をOFFにし(S51)、シート1を吸引パッド3から解放し、ベルトコンベア6上にセットする(図14のe)。シート束1Aから分離された最上位のシートは、ベルトコンベア6により、次工程洗浄を行うための洗浄装置へ搬送される。
【0066】
次いで、分離ユニット移動シリンダ電磁弁25がOFFになり(S52)、分離ユニット移動シリンダ10がOFFになって、移動テーブル33上のエアガイド板7、及び吸引パッド移動シリンダ9を、スライドレール32に沿って図16に示す位置、すなわち吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分と当接するデフォルトの位置に移動する。(図14のf)
【0067】
吸引パッド移動シリンダ電磁弁23がOFFになると(S53)、吸引パッド移動シリンダ9がOFFになり、図3に示すように吸引パッド移動レバー30が中心軸31を中心に回動し、吸引パッド3がシート1の搬送方向先頭の両角部分を吸着可能なデフォルト位置に戻る。(図14のg)
【0068】
ここで、2枚目以降のシートの給送を行うリピート信号の有無を確認し(S54)、信号が無い場合は、終了動作「B」を行う。一方、2枚目以降のシートの給送を行うリピート信号が有る場合は、この状態でシート有無検知センサ16によりシート1の有無を確認する(S55)。
シート有無検知センサ16がOFFの場合は、底板52上にシート1が無いため、操作部にシート無し表示を行い(S56)、終了動作「B」を行う。シート有無検知センサ16がONの場合、繰り返し給送動作「A」を行う。
【0069】
以上のようにエア噴射装置4がエアガイド板7とシートホルダ2にそれぞれ固定された第2の実施態様によれば、シートが可逆性感熱記録媒体のような厚みと剛性を有し、さらにシート間に油分が介在し、シート同士が密着している状態であっても、積層されたシートから最上位のシートのみをより確実に分離して搬送することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 シート(ICタグシート)
1A シート束
2 シートホルダ
3 吸引手段(吸引パッド)
3D ベローズ形状
4 分離手段(エア噴射装置)
4A 第1のエア噴射装置
4B 第2のエア噴射装置
5 押圧手段(押圧ローラ)
6 ベルトコンベア
7 エアガイド板
8 加圧スプリング
9 吸引パッド移動シリンダ
10 分離ユニット移動シリンダ
11 シート上限検知センサ
12 シート上昇HP検知センサ
13 分離ユニットHPセンサ
14 分離ユニット開放位置検知センサ
15 シート圧力センサ
16 シート有無検知センサ
20 コンプレッサー
21 エアチューブ
22 エア噴射装置ノズル電磁弁
23 吸引パッド移動シリンダ電磁弁
24 吸引パッド電磁弁
25 分離ユニット移動シリンダ電磁弁
26 真空発生機
27 固定エア噴射ノズル電磁弁
30 吸引パッド移動レバー
31 吸引パッド移動レバー中心軸
32 スライドレール
33 移動テーブル
40 押圧ローラ回転モータ
41 押圧ローラモータプーリ
42 押圧ローラ駆動ベルト
43 押圧ローラ駆動プーリ
44 トルクリミッタ
50 シート上昇モータ
51 シート上昇駆動部
52 底板
53 シート上昇板
100 シート給送装置
101 シート給送装置コントローラ
200 操作部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開昭56−65735号公報
【特許文献2】特開2000−177870号公報
【特許文献3】特開2007−261121号公報
【特許文献4】特開2008−068507号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されたシートのうち、最上位のシートのみを分離して搬送路へ給送するシート給送装置において、
シートの搬送方向前方を吸引保持し、積層されたシートの水平面に対し傾斜させて持ち上げるよう回動する吸引手段と、
シートの搬送方向後方を抑える押圧手段と、
前記吸引手段の回動に追従して持ち上げられたシートにエアを吹き付けて1枚ずつ分離させる分離手段と、
前記吸引手段により持ち上げられた最上位のシートと当接するように配置されたエアガイド板とを備え、
前記エアガイド板が、前記分離手段から噴射されたエアを、前記最上位のシートと次位以下のシートとを分離するように案内することを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記エアガイド板が、シート搬送方向の先端側に凸部を有し、該凸部の突出部分の厚みが前記シート1枚の厚みよりも少ないことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記分離手段がエア噴射装置であり、前記エアガイド板に固定されて設けられていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記吸引手段は、吸引部がゴム製部材で構成され、かつベローズ形状を有する吸引パッドからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記吸引手段がシートの搬送方向前端側の角部を吸着するよう配置され、かつ回動する回転軸がシートの搬送方向に対し略45°の角度をなすことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記吸引手段が、シートの搬送方向前端側の両方の角部を吸着するよう配置されていることを特徴とする請求項5に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記エア噴射装置の噴射口が、シートの搬送方向前端側の角部に向けて配置されていることを特徴とする請求項5から6のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項8】
積層されたシートからなるシート束の最上面が前記押圧手段に当接するまで上昇させる上昇手段と、前記上昇手段により上昇した前記シート束の最上面と前記押圧手段とが当接する圧力を制御する圧力制御手段とを有し、
前記圧力制御手段によって、前記シート束の最上面と前記押圧手段とが圧力0で当接するよう制御されているとき、前記分離手段が、エアを吹き付けることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記分離手段が、前記吸引手段が回動してシートの水平面と形成した傾斜角に準じた角度でエアを噴出することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記押圧手段が押圧ローラであり、該押圧ローラはトルクリミッタを介してシート搬送方向と逆方向に回転駆動され、次に給送されるシートの位置を調整することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項11】
前記分離手段が、前記エアガイド板に固定された第1のエア噴射装置と、積層されたシートを収容するシートホルダに固定された第2のエア噴射装置とからなることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシート給送装置。
【請求項12】
前記第2のエア噴射装置が、前記吸引手段に吸引保持された最上位のシートの先端が噴射口上を通過したタイミングでエアの噴出を行うことを特徴とする請求項11に記載のシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−126611(P2011−126611A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283952(P2009−283952)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】