説明

シート装置

【課題】下部シートバックと上部シートバックの両背もたれ面間に段差を生じさせることなく、シートに着座する人に対して着座姿勢を快適な状態にすることのできるシート装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るシート装置は、二分割構造とされた下部シートバック1と上部シートバック3のうち、上部シートバック3から下部シートバック1へ向かって突出する上部側突起部6を背もたれ面7A側に設ける。そして、この上部側突起部6を、下部シートバック1に接触させた状態で、その上部側突起部6の接触点Pを両シートバックの中折れ点として両シートバック1、3の背もたれ面7A、7Bの連続状態を保ちながら下部シートバック1に対して上部シートバック3を傾動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックを下部シートバックと上部シートバックの2つに分割したシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シートに着座する人の体格や好みに応じて着座姿勢を快適にするために、シートバックを下部シートバックと上部シートバックの2つに分割し、下部シートバックをシートクッションに対して角度設定可能とすると共に上部シートクッションも同じくシートクッションに対して角度設定可能としたシート装置が提案されている(例えば、特許文献1に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−81355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシート装置では、下部シートバックと上部シートバックがそれぞれ独立してシートクッションに対して回動する構造であるため、下部シートバックの背もたれ面と上部シートバックの背もたれ面との間に前後方向で段差が生じる。そのため、シートに着座する人は、前記段差に背部が接触することで違和感を感じ、快適な着座姿勢を得ることができない。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下部シートバックと上部シートバックの両背もたれ面間に段差を生じさせることなく、シートに着座する人に対して着座姿勢を快適な状態にすることのできるシート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート装置は、二分割構造とされた下部シートバックと上部シートバックの何れか一方に、一方のシートバックから他方のシートバックへ向かって突出する突起部を背もたれ面側に設ける。そして、この突起部を、他方のシートバックに接触させた状態で、その突起部の接触点を両シートバックの中折れ点として両シートバックの背もたれ面の連続状態を保ちながら下部シートバックに対して上部シートバックを傾動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシート装置によれば、何れか一方のシートバックから他方のシートバックへ向かって突出する突起部を背もたれ面側に設け、その突起部を他方のシートバックに接触させた状態で、その突起部の接触点を中折れ点として両シートバックの背もたれ面の連続状態を保ちながら下部シートバックに対して上部シートバックを傾動させると、前記突起部が他方のシートバックに接触した状態を維持して上部シートバックが下部シートバックに対して傾動することになり、上部シートバックの背もたれ面と下部シートバックの背もたれ面間に隙間が生じない。その結果、下部シートバックと上部シートバックの連続した背もたれ面により、シートへ着座する人に快適な着座姿勢を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は第1実施形態のシート装置を示す斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態のシート装置を示し、下部シートバックに対して上部シートバックが傾動していない着座前状態を示す概略図である。
【図3】図3は第1実施形態のシート装置を示し、下部シートバックに対して上部シートバックが前方へ傾動した状態を示す概略図である。
【図4】図4は第1実施形態のシート装置において、下部シートバックと上部シートバックの両背もたれ面を共に連続した湾曲状とした例を示す概略図である。
【図5】図5は第2実施形態のシート装置を示し、下部シートバックに対して上部シートバックが前方へ傾動した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態のシート装置は、図1ないし図3に示すように、下部シートバック1及び下部シートバック1に設けた回動軸2を中心として前方方向X及び後方方向Yに傾動する上部シートバック3とからなる二分割構造のシートバック4と、シートクッション5とを備えている。第1実施形態は、本発明を自動車用のシート装置に適用した例である。もちろん、本発明は、自動車以外のシート装置に適用することもできる。
【0010】
シートクッション5は、スライド及びリフタ機能を備えたシート位置調整機構(図示は省略する)を介して車両用フロアに取り付けられている。
【0011】
シートバック4は、シートクッション5の後方に回動自在に取り付けられた下部シートバック1と、この下部シートバック1の上部に傾動自在とされた上部シートバック3とから構成されている。
【0012】
上部シートバック3は、下部シートバック1の内部に設置されたシートサイドフレーム(図示は省略する)の上端部に設けた回転軸2を中心として前後方向に傾動自在とされている。そして、この上部シートバック3の下部には、下部シートバック1へ向かって突出する突起部である上部側突起部6が背もたれ面7A側に設けられている。また、上部シートバック3の下部には、下部シートバック1の上部に設けられた後述の突起部である下部側突起部8の形状に応じてへこんだ上部側凹部9が背面10A側に設けられている。ここで定義する背もたれ面7Aは、上部シートバック3の背もたれ面を指し、背面10Aは、上部シートバック3の背面を指している。
【0013】
下部シートバック1の上部には、前記上部シートバック3の上部側突起部6の形状に応じてへこんだ下部側凹部11が背もたれ面7B側に設けられている。また、下部シートバック1の上部には、上部シートバック3へ向かって突出する突起部である下部側突起部8が背面側10Bに設けられている。ここで定義する背もたれ面7Bは、下部シートバック1の背もたれ面を指し、背面10Bは、下部シートバック1の背面を指している。
【0014】
前記シートに着座していない状態(例えば、乗員がドアを開けて車室内に乗り込む時やシートクッション5に着座した乗員の背部がシートバック4に接触していない状態など)では、図2に示すように、上部側突起部6が下部側凹部11に嵌合すると共に下部側突起部8が上部側凹部9に嵌合して、下部シートバック1と上部シートバック3の両背もたれ面7A、7B及び背面10A、10Bが何れも連続した直線状とされる。
【0015】
このように構成されたシート装置では、乗員がシートバック5に腰を下ろして背部をシートバック4にもたれかけると、上部シートバック3は、回転軸2を中心として図3中矢印Xで示す前方へ傾動し始める。この時、上部シートバック3は、下部シートバック1に対して、上部側突起部6を下部側凹部11の底部に接触させた状態で、該上部側突起部6の該下部側凹部11との接触点Pをシートバック4の中折れ点として両シートバック1、3の背もたれ面7A、7Bの連続状態を保ちながら該下部シートバック1に対して該上部シートバック3が傾動する。
【0016】
前記上部シートバック3の下部シートバック1に対する傾動動作中は、前記上部側突起部6が下部側凹部11の底部に接触した状態となり、その接触点Pを中折れ点として上部シートバック3が下部シートバック1に対して傾くため、下部シートバック1の背もたれ面7Bと上部シートバック3の背もたれ面7Aとの間に段差が生じない。また、シートバック4の背面では、上部シートバック3が前方へ傾動した場合、下部側突起部8が無いと上部側凹部9が露出して見栄えが悪くなる。しかし、第1実施形態では、図3に示すように、上部シートバック3が前方へ傾動しても上部側凹部9を隠すように下部側突起部8が位置するので、シートバック背面に空間が生じず、見栄えが悪くならない。
【0017】
図2では、下部シートバック1と上部シートバック3の両背もたれ面7A、7B及び両シートバック1、3の背面10A、10Bが、着座する人の背部がシートバック4に接触していない場合に、共に連続した直線状とした。これに対して、乗員の着座状態をより快適なものとするために、図4に示すように、下部シートバック1と上部シートバック3の両背もたれ面7A、7Bを、着座する人の背部がシートバック4に接触していない場合において、共に連続した湾曲状とするようにしてもよい。
【0018】
第1実施形態のシート装置によれば、上部シートバック3から下部シートバック1へ向かって突出する上部側突起部6を背もたれ面7A側に設け、その上部側突起部6を下部シートバック1の下部側凹部11の底部に接触させた状態で、その上部側突起部6の接触点Pを中折れ点として両シートバック1、3の背もたれ面7A、7Bの連続状態を保ちながら下部シートバック1に対して上部シートバック3を傾動可能自在な構成としたことで、上部側突起部6が下部シートバック1に接触した状態を維持して上部シートバック3が下部シートバック1に対して傾動することから、上部シートバック3の背もたれ面7Aと下部シートバック1の背もたれ面7B間に隙間が生じない。その結果、段差の無い連続した背もたれ面7A、7Bにより、シートへ着座する乗員の背筋に下部シートバック1と上部シートバック3が沿うため、乗員に対して違和感を与えることなく、乗員を快適姿勢でシートに着座させることができる。
【0019】
第1実施形態のシート装置において、例えば前記接触点Pであるシートバック4の中折れ点を、人の脊柱の屈曲動作上、最適な中折れ位置になるように設定することにより、シート内部のフレーム可動構造に依存することなく、乗員に快適な中折れ姿勢を提供することができる。その結果、乗員に対して負担の少ない着座姿勢を提供することができる。
【0020】
また、第1実施形態のシート装置によれば、下部シートバック1へ向かって突出する上部側突起部6を上部シートバック3の下部に設ける一方で、上部シートバック3へ向かって突出する下部側突起部8を下部シートバック1の背面側に設けたので、上部シートバック3が着座する人の背筋を支持するために前方へ傾動する場合において、前記下部側突起部9によって上部シートバック3の後方への突出が抑えられ、上部シートバック3の後方空間が狭められることを抑制することができる。
【0021】
また、第1実施形態のシート装置によれば、下部シートバック1と上部シートバック3の両背もたれ面7A、7B及び両シートバック1、3の背面10A、10Bが、着座する人の背部がシートバック4に接触していない場合に、共に連続した直線状となることから、シートに座っていない時のシート外観の見栄えを向上させることができる。
【0022】
また、第1実施形態のシート装置によれば、下部シートバック1と上部シートバック3の両背もたれ面7A、7Bが、着座する人の背部がシートバック4に接触していない場合に、共に連続した湾曲状となることから、人の脊椎の形状に応じた湾曲状の背もたれ面7A、7Bにより着座姿勢がより快適になる。
【0023】
[第2実施形態]
第2実施形態のシート装置においては、図5に示すように、下部シートバック1から上部シートバック3へ向かって突出する下部側突起部8を、下部シートバック1の背もたれ面7B側に設けている。この一方、上部シートバック3から下部シートバック1へ向かって突出する上部側突起部6を、上部シートバック3の背面10A側に設けている。
【0024】
また、上部シートバック3の下部には、前記下部側突起部8の形状に応じてへこんだ上部側凹部9を背もたれ面7A側に設けている。この一方、下部シートバック1の上部には、上部側突起部6の形状に応じてへこんだ下部側凹部11を背面10B側に設けている。
【0025】
この第2実施形態のシート装置では、第1実施形態と同様、乗員がシートバック5に腰を下ろして背部をシートバック4にもたれかけると、上部シートバック3は、回転軸2を中心として図5矢印Xで示す前方へ傾動し始める。この時、上部シートバック3は、下部シートバック1に対して、下部側突起部8を上部側凹部9の底部に接触させた状態で、該下部側突起部8の該上部側凹部9との接触点Pをシートバック4の中折れ点として両シートバック1、3の背もたれ面7A、7Bの連続状態を保ちながら該下部シートバック1に対して該上部シートバック3が傾動する。
【0026】
前記上部シートバック3の下部シートバック1に対する傾動動作中は、前記下部側突起部8が上部側凹部9の底部に接触した状態となり、その接触点Pを中折れ点として上部シートバック3が下部シートバック1に対して傾くため、下部シートバック1の背もたれ面7Bと上部シートバック3の背もたれ面7Aとの間に段差が生じない。また、シートバック4の背面では、上部シートバック3が前方へ傾動した場合、上部側突起部6が無いと下部側凹部11が露出して見栄えが悪くなる。しかし、第2実施形態では、図5に示すように、上部シートバック3が前方へ傾動しても下部側凹部11を隠すように上部側突起部6が位置するので、シートバック背面に空間が生じず、見栄えが悪くならない。
【0027】
第2実施形態のシート装置によれば、第1実施形態と同様、段差の無い連続した背もたれ面7A、7Bにより、シートへ着座する乗員の背筋に下部シートバック1と上部シートバック3が沿うため、乗員に対して違和感を与えることなく、乗員を快適姿勢で着座させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、シートバックを下部シートバックと上部シートバックとに分割した二分割構造のシート装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…下部シートバック(シートバック)
2…回転軸
3…上部シートバック(シートバック)
4…シートバック
5…シートクッション
6…上部側突起部(突起部)
7A、7B…背もたれ面
8…下部側突起部(突起部)
9…上部側凹部
10A、10B…背面
11…下部側凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部シートバック及び該下部シートバックに設けた回動軸を中心として前後方向に傾動する上部シートバックとからなる二分割構造のシートバックと、シートクッションとを備えたシート装置において、
前記下部シートバックと前記上部シートバックの何れか一方に、一方のシートバックから他方のシートバックへ向かって突出する突起部を背もたれ面側に設け、該突起部を他方のシートバックに接触させた状態で、その突起部の接触点を両シートバックの中折れ点として両シートバックの背もたれ面の連続状態を保ちながら該下部シートバックに対して該上部シートバックを傾動可能自在に構成した
ことを特徴とするシート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート装置であって、
前記上部シートバックの下部に、前記下部シートバックへ向かって突出する突起部を背もたれ面側に設ける一方で、
前記下部シートバックの上部に、前記上部シートバックへ向かって突出する突起部を背面側に設けた
ことを特徴とするシート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート装置であって、
前記下部シートバックと前記上部シートバックの両背もたれ面及び両シートバックの背面が、着座する人の背部がシートバックに接触していない場合に共に連続した直線状である
ことを特徴とするシート装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシート装置であって、
前記下部シートバックと前記上部シートバックの両背もたれ面が、着座する人の背部がシートバックに接触していない場合に共に連続した湾曲状である
ことを特徴とするシート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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