説明

シート装置

【課題】座った人が容易かつ安全に左右に移動することができるシート装置を提供する。
【解決手段】複数人掛けのベンチシートを有し、タクシーの後部座席として使用されている。着座部11は、ベルトコンベアのように動力により回転駆動する無端ベルトを有し、無端ベルト上に左右に並んだ複数の着座位置を有する。着座位置の座面11aは左右にスライド可能に構成されている。左側の着座位置の座面11aが右側の着座位置までスライドし、右側の着座位置までスライドした座面11aが左側の着座位置までスライドして戻るようになっている。着座部11は、右側または左側の端部で座面11aが収納され、反対側の端部から新たな座面11aが現れるようになっている。操作部13が、座面11aのスライド方向、スライドの開始および停止を操作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーの後部座席等で好適に使用されるシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタクシーでは、客を乗せるとき、後部左側のドアを開けることにより、客が開いたドアから後部座席に乗り込んでいた(例えば、特許文献1参照)。客が数人のときは、後部座席に先に乗り込んだ客が後部座席の右側に寄って左側の座席を開けてから、同じドアから次の客が乗り込んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−118135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の一般的なタクシーでは、先に乗り込んだ客が後部座席の左側から右側に移動するとき、天井が低く車内が狭いため、移動しづらいという課題があった。また、移動するとき、天井に頭をぶつけたり、足がもつれてひっくり返ったりする危険があるという課題もあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、座った人が容易かつ安全に左右に移動することができるシート装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るシート装置は、左右に並んだ複数の着座位置を有するシート装置であって、所定の着座位置の座面が他の着座位置までスライド可能に構成されていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係るシート装置は、所定の着座位置の座面が他の着座位置までスライド可能であるため、所定の着座位置に座った人が、座ったままの状態で他の着座位置まで移動することができる。このため、座った人が容易かつ安全に左右に移動することができる。所定の着座位置の座面がスライドした後、その所定の着座位置に別の座面が現れることが好ましい。また、スライドする座面の下の、所定の着座位置や他の着座位置に、別の座面が設けられていてもよい。安全のため、他の着座位置に人や物体が存在しているとき、所定の着座位置の座面が移動しないように構成されていてもよい。所定の着座位置に人が座ったときに、自動的に他の着座位置までスライドしてもよい。
【0008】
本発明に係るシート装置は、複数人掛けのベンチシートを有し、前記着座位置が前記ベンチシートに設けられ、前記座面が一方の端部側から他方の端部側に向かってスライドするとともに、他方の端部で前記座面が収納され、一方の端部から新たな座面が現れる構成を有することが好ましい。この場合、一方の端部側の座面に座った人が、一方の端部側から他方の端部側に座面がスライドして移動した後、一方の端部から現れた新たな座面に別の人が座ることができる。また、スライド前の他方の端部側の座面が、スライドしたときに収納されるため、場所をとらない。例えば、ベルトコンベアのように動力により回転駆動する無端ベルトを座面にすることにより構成可能である。
【0009】
本発明に係るシート装置は、タクシー内に後部座席として設けられていてもよい。後部座席の左側から右側にスライド可能に構成することにより、タクシーの後部座席に先に乗り込んだ客が、後部座席の左側から右側に容易かつ安全に移動することができる。本発明に係るシート装置は、タクシーの後部座席に限らず、自動車の前部座席や後部座席など、座る人が左右に移動することがあるシートに使用されると効果的である。
【0010】
本発明に係るシート装置は、前記座面が左右両方向にスライド可能に設けられていることが好ましい。この場合、逆方向への移動も行うことができ、用途を拡げることができる。タクシーの後部座席に使用されたとき、タクシーから降りる際にも、後部座席の右側に座った人が座ったままの状態で左側に移動することができ、容易かつ安全にタクシーに乗り降りすることができる。
【0011】
本発明に係るシート装置は、動力により回転駆動する無端ベルトを有し、前記着座位置が前記無端ベルトに設けられ、前記座面のスライド方向、スライドの開始および停止を操作可能な操作部を有することが好ましい。この場合、操作部により無端ベルトの動力を制御し、所望のスライド操作を行うことができる。タクシーの後部座席に使用されたとき、後部座席に乗り込んだ客が操作部を操作可能であっても、運転手が操作部を操作可能であってもよい。操作部は、押しボタンスイッチやスライドスイッチ、レバースイッチなど、いかなるスイッチから成っていてもよい。無端ベルトの動力は、モータであっても、油圧シリンダであってもよい。
【0012】
シート装置は、着座部位置の底面を上側に弾力的に押し上げるバネ材を着座部位置の底面の下側に有していてもよい。さらに、バネ材は、着座部位置の底面に弾力的に接触する付勢位置と、底面に接触しないよう下側に離れた非接触位置との間で移動可能に設けられていてもよい。この場合、バネ材を着座部位置の底面から離した非接触位置にして座面をスライドさせ、スライド後、バネ材を付勢位置にして着座部位置の底面に弾力的に接触させ、座面にクッション性を持たせることができる。さらに、付勢位置では、着座部位置の座面への圧力を段階的または連続的に調整可能に座面に対する位置を調整可能であってもよい。この場合、バネ材の座面に対する位置を調整することにより、座面の弾力性を調整することができる。これにより、座面に適度な弾力性をもたらし、快適に座ることができる。なお、バネ材は、コイルバネ、板バネのほか、ウレタンその他のクッション材から成ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、座った人が容易かつ安全に左右に移動することができるシート装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態のシート装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態のシート装置の操作部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態のシート装置を示している。
図1に示すように、シート装置10は、複数人掛けのベンチシートを有し、タクシーの後部座席として使用されている。
【0016】
図1に示すように、シート装置10は、着座部11と背もたれ12とを有している。着座部11は、ベルトコンベアのように動力により回転駆動する無端ベルトを有し、無端ベルト上に左右に並んだ複数の着座位置を有している。着座位置の座面11aは無端ベルトの回転により左右にスライド可能であり、左側の着座位置の座面11aが右側の着座位置までスライドし、右側の着座位置までスライドした座面11aが左側の着座位置までスライドして戻るようになっている。また、着座部11は、無端ベルトの回転により右側または左側の端部で座面11aが収納され、反対側の端部から新たな座面11aが現れるようになっている。
【0017】
図2に示すように、シート装置10は、タクシーの助手席または運転席の背もたれ1の背面に、操作部13を有している。操作部13は、左右にスライド可能に設けられたツマミ13aを有し、ツマミ13aを移動させることにより無端ベルトの動力を制御し、座面11aのスライド方向、スライドの開始および停止を操作可能になっている。操作部13は、ツマミ13aを右に移動させると座面11aが左から右にスライドし、ツマミ13aを左に移動させると座面11aが右から左にスライドするようになっている。また、操作部13は、ツマミ13aを左端または右端まで移動させることにより、座面11aが左側または右側いっぱいまでスライドした後、スライドを停止し、ツマミ13aを左端または右端から移動させることにより、座面11aがスライドを開始するようになっている。
【0018】
次に、作用について説明する。
シート装置10は、複数の客をタクシーに乗せるときに効果的である。客がタクシーの後部の左側のドアから乗り込むとき、後部座席に先に乗り込んだ客が、操作部13のツマミ13aを左端から右端に移動させることにより、後部座席に座ったままの状態で、後部座席の左側から右側に容易に移動することができる。また、後から後部座席に乗り込んだ客は、スライド時に左側の端部から現れた新たな座面11aに座ることができる。
【0019】
客がタクシーの後部の左側のドアから降りるとき、後部座席の左側に座った客が降りた後、後部座席の右側に座った人が、操作部13のツマミ13aを右端から左端に移動させることにより、後部座席に座ったままの状態で、後部座席の右側から左側に容易に移動することができる。このように、シート装置10は、天井が低く狭い車内を座ったままの状態で客が移動できるため、移動時に天井に頭をぶつけたり、足がもつれてひっくり返ったりする危険がなく、安全にタクシーに乗り降りすることができる。
【0020】
操作部13のツマミ13aを動かす方向と座面11aのスライド方向とが一致しているため、初めての客でも操作方法がわかりやすく、操作しやすい。
【符号の説明】
【0021】
10 シート装置
11 着座部
11a 座面
12 背もたれ
13 操作部
13a ツマミ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に並んだ複数の着座位置を有するシート装置であって、
所定の着座位置の座面が他の着座位置までスライド可能に構成されていることを、
特徴とするシート装置。
【請求項2】
複数人掛けのベンチシートを有し、前記着座位置が前記ベンチシートに設けられ、前記座面が一方の端部側から他方の端部側に向かってスライドするとともに、他方の端部で前記座面が収納され、一方の端部から新たな座面が現れる構成を有することを、特徴とする請求項1記載のシート装置。
【請求項3】
タクシー内に後部座席として設けられていることを、特徴とする請求項1または2記載のシート装置。
【請求項4】
前記座面が左右両方向にスライド可能に設けられていることを、特徴とする請求項1、2または3記載のシート装置。
【請求項5】
動力により回転駆動する無端ベルトを有し、前記着座位置が前記無端ベルトに設けられ、前記座面のスライド方向、スライドの開始および停止を操作可能な操作部を有することを、特徴とする請求項4記載のシート装置。



【図1】
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【図2】
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