説明

シート

【課題】外観を向上させることができるシートを提供する。
【解決手段】座面2Zの高さを変更調節するリフター機構を備え、側部カバー19を備えているシートであって、側部カバー19は、位置固定された下側カバー20と、リフター機構の作動により昇降する上側カバー30とに上下に分割され、下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kがシート幅方向で互いに重なり、上側カバー30の全昇降ストロークにおいて下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの重なり状態が解除されないように、下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの重なり代が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
座面の高さを変更調節するリフター機構を備え、
側部カバーを備えているシートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のシートの側部カバーは、シートクッションの下部に取り付けられるスライド機構やシートバックの角度を調整するリクライニング機構などを覆っている。
従来、この側部カバーは単一の部材で形成され、リフター機構の作動により側部カバー全体が昇降していた。そのために、リフター機構の作動域によってはシートフレームの一部分が見えてしまう問題があった。
この対策として、特許文献1に開示されているように、側部カバーとシートクッションの間に遮蔽部材を設け、座面の高さを変更した時の隙間を塞ぐ技術があるが、この技術では遮蔽部材が外観に違和感を与える虞がある。
また、シートバックからシートクッションにかけてシートヒーターやエアバッグ用のハーネスが配索されるシートにおいては次の問題もあった。
すなわち、前記ハーネスは、リフター機構により座面の高さを変更した時にシートクッション等に強く引っ張られて損傷しないように長めに設定されているために、上記従来の構造によれば、リフター機構を下降駆動した時に、弛んだハーネスが側部カバーの外方に見えてしまい、外観を損ねていた。
この対策として、特許文献2に開示されているように、シートバックの下部にハーネスを隠す保護用カバーを設ける技術があるが、この技術でも外観に違和感を与えるのを避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−188235号公報
【特許文献2】実開平5−93300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、外観を向上させることができるシートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
座面の高さを変更調節するリフター機構を備え、
側部カバーを備えているシートであって、
前記側部カバーは、位置固定された下側カバーと、前記リフター機構の作動により昇降する上側カバーとに上下に分割され、
前記下側カバーの上部と前記上側カバーの下部がシート幅方向で互いに重なり、
前記上側カバーの全昇降ストロークにおいて前記下側カバーの上部と上側カバーの下部の重なり状態が解除されないように、前記下側カバーの上部と上側カバーの下部の重なり代が設定されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成により、下側カバーは前記リフター機構が作動しても作動前と同様に位置固定状態でシート側部を覆っている。一方、上側カバーはリフター機構が作動すると、シート側部を覆ったまま昇降する。
前記下側カバーはリフター機構が作動しても作動前と同様に位置固定状態にあるから、シート側部の一定の範囲を常に覆うことができる。さらに、下側カバーが車体のフロアや他部品に干渉することを回避することができ、リフター機構の昇降ストロークが下側カバーによって制限されることがなくなって、昇降ストロークの設計の自由度を向上させることができる。
また、上側カバーはリフター機構が作動すると、シート側部を覆ったまま昇降するから、リフター機構の作動後にシート側部がシート側方に露出することを防止できる。そして、上側カバーの全昇降ストロークにおいて下側カバーの上部と上側カバーの下部の重なり状態が解除されないから、リフター機構の作動前に下側カバーと上側カバーで覆っていたシート側部が、リフター機構の作動後に下側カバーの上部と上側カバーの下部の間から側方に露出することを防止でき、シートの外観品質を向上させることができる。
さらに、側部カバーが樹脂で成形される構造では、上側カバーと下側カバーを成形する成形型を、両側部カバーを一体に成形する場合よりも小型化できて側部カバーの型費を削減できる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記シートバックが下端部側の横軸芯周りに揺動回転することを許容するヒンジ機構が設けられ、
シートクッションの後端部にシートベルトバックルが配置され、
前記上側カバーは前記ヒンジ機構と前記シートベルトバックルを覆っていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記ヒンジ機構とシートベルトバックルが位置するシートクッションの後端部側は、リフター機構が作動した時に大きく位置変更するために、例えば、上側カバーと下側カバーが一体になった従来の一枚のカバーで前記シートクッションの後端部側を覆うとカバーが大型化する。これに対して、本発明の上記構成によれば、前記シートクッションの後端部側を上側カバーだけで覆うのでカバーを小型化できる。
また、上側カバーはリフター機構の作動により昇降するから、ヒンジ機構とシートベルトバックルの位置変更量が大きくても、前記ヒンジ機構とシートベルトバックルを確実に覆い隠すことができて、外観品質を向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
シート側部に配索されたハーネスをシート後方側から覆うカバー部が前記上側カバーに連設されていると、前記カバー部でハーネスを覆い隠すことで見栄えをよくすることができるとともに、後席乗員の脚がハーネスに干渉することを防止できる。(請求項3)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リフター機構の昇降ストロークの設計の自由度を向上させることができ、カバーの型費を削減することができて製作コストを低廉化でき、シートの外観品質を向上させることができるシートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は座面が最も低所(低位置)にある状態のシートの側面図、(b)は座面が最も高所(高位置)にある状態のシートの側面図
【図2】斜め後ろ側から見たシートの一部切り欠き斜視図
【図3】ハーネスの位置を示すシートの後端部の縦断側面図
【図4】上側カバーの斜視図
【図5】(a)は図5(c)のD−D断面図、(b)は下側カバーの平面図、(c)は下側カバーの側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1(a),図1(b),図2に自動車のフロントシート1(以下、「シート1」と称する)を示してある。このシート1は乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の腰部及び背中を支持するシートバック3とを備え、シートバック3の上端部に、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4が連結されている。
【0013】
前記シートクッション2は、シートフレーム5(図3参照)と、シートフレーム5に支持されるシートクッションパッドと、シートクッションパッドを覆う表皮材とを備え、前記シートバック3は、シートバックフレーム6と、シートバックフレーム6に支持されるシートバックパッドと、シートバックパッドを覆う表皮材とを備えている。シートクッションパッドとシートバックパッドはいずれも発泡ウレタンで構成されている。
【0014】
また、シートバック3の右側のサイド部に、乗員の上半身をシート幅方向で保持するサイドサポート部7(図2参照)が隆起形成され、このサイドサポート部7にサイドエアバッグ8が内蔵されている。サイドエアバッグ8は衝撃を受けた時にインフレータからガスを供給され、サイドサポート部7の外側に瞬時に膨張展開して乗員の右側の側部を保護する。
【0015】
図2,図3に示すように、シートクッション2の後端部の左側の側部とシートバック3の下端部の左側の側部には、サイドエアバッグ8に接続するハーネス9が配索されている。ハーネス9は、サイドエアバッグ8の上端部から下方に延びるとともに、シートバック3の右側の下端部側から左側に延び、シートバック3の裏面のバネ部10の固定部を経由してシートクッション2の後端部の左端部に達し、シートクッション2の下方の車体のフロア面に配置されたコネクタに連結している。このハーネス9の長さは長めに設定され、後述のリフター機構によりシートクッション2の座面2Zの高さを変更させた時にハーネス9がシートクッション2等に強く引っ張られないようにされている。
【0016】
また、図1(a),図1(b)に示すように、シートクッション2の後端部の側方に位置するシートフレーム5(図3参照)から前上方に支持アーム12が立ち上がり、この支持アーム12の上端部に、シートベルトのタングを挿入係合させるシートベルトバックル13が連結されている。
【0017】
シートクッション2のシートフレーム5には、シート1の前後方向の移動を可能とするスライド機構14が連結され、スライド機構14の後方のシートフレーム5には、シートバック3の水平方向に対する角度を調整したり、シートバック3をシート前方側Frに倒伏したりするためのヒンジ機構15を備えたリクライニング機構が設けられている。スライド機構14は、車体のフロアパネルに固定される固定フレーム16と、固定フレーム16に対してシート前後方向(車両前後方向)にスライド移動する可動フレームとを備えている。
【0018】
さらに、シートクッション2のシートフレーム5に、シートクッション2をシートバック3と一体に昇降させてシートクッション2の座面2Zの高さを変更調節するリフター機構(図示せず)が連結されている。リフター機構はリンク機構で構成され、シート前端部側の横軸芯を中心としてシートクッション2及びシートバック3が揺動する。そのために、シート前端部側に比べてシート後端部側の昇降量が大きくなっている。図2の符号70はリフター機構の操作レバーである。図1(a)に、リフター機構によりシート1が最も低位置に位置する状態を示し、図1(b)に,シート1が最も高位置に位置する状態を示してある。
【0019】
[側部カバー19の構造]
図1(a),図1(b),図2に示すように、シート1は、シート下部の側部を覆う左右一対の側部カバー19を備えている。左側の側部カバー19は、位置固定された樹脂製の下側カバー20と、リフター機構の作動により昇降する樹脂製の上側カバー30とに上下に2分割され、下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kがシート幅方向で互いに重なっている。そして、上側カバー30の全昇降ストロークにおいて下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの重なり状態が解除されないように、下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの重なり代が設定されている。
【0020】
[下側カバー20の構造]
図1,図5(a),図5(b),図5(c)に示すように、下側カバー20は、シートクッション2の下方のスライド機構14の側部を覆う第1下側カバー部21と、第1下側カバー部21のシート前方側Frの端部からシート幅方向内側に折曲し、スライド機構14の前部を覆う第2下側カバー部22と、第1下側カバー部21のシート後方側Rrの端部からシート幅方向内側に折曲し、スライド機構14の後部を覆う第3下側カバー部23とから成る。シートバック3の下方に位置する第1下側カバー部21の後端部21Bはシート幅方向外側に膨出している。そして、第1下側カバー部21の内面に突設されたクリップ座24がクリップ72を介してスライド機構14のフレームに固定されている。このフレームにはクリップ孔が形成されている。図3に示すように、第3下側カバー部23の上端部23J(下側カバー20の上端部20Jの一部分に相当する)は上側ほどシート前方側Frに位置するように傾斜している。下側カバー20の内面には補強リブ20Lが立設されている。
【0021】
[上側カバー30の構造]
図4に示すように、上側カバー30は、シートクッション2の後半部の下端部を覆う第1上側カバー部31と、第1上側カバー部31の後端部からシート幅方向内側に延出し、シートクッション2の後端部の側部に配索されたハーネス9をシート後方側Rrから覆う第2上側カバー部32とから成る。つまり、第1上側カバー部31に第2上側カバー部32が連設されている。
【0022】
前記第1上側カバー部31の後半部31Uは、前半部31Mよりも高さ寸法が高く設定されて上端部が円弧状に突曲し、上端部からシート幅方向内側に張り出す第1周壁31S1が形成されている。そして、この第1周壁31S1の上端部に、上方に突出する山形の第1突出壁31Tが形成されている。この第1突出壁31Tの頂部は円弧状にされ、第1突出壁31Tの周部にはシート幅方向内側に張り出す第2周壁31S2が形成されている。さらに、この第2周壁31S2の円弧状の端部から径方向内方側に第1フランジ31Fが張り出している。
【0023】
また、第1上側カバー部31の前半部31Mに段差31Dが設けられ、第1上側カバー部31の前端部31M1が第1上側カバー部31の残部よりもシート幅方向内側に位置している。そして、前記第1上側カバー部31の前端部31M1の裏面(内面)にクリップ座33が突設されている。
【0024】
第2上側カバー部32は、第1上側カバー部31の後半部31Uよりも高さ寸法が短く設定されるとともに、前記第1上側カバー部31の前端部31M1よりも高さ寸法が長く設定されている。そして、第2上側カバー部32のシート幅方向内側の端部に、シート前方側Frに突出する第2突出壁32Tが設けられている。第2突出壁32Tの高さ寸法は第2上側カバー部32の本体部32Hよりも短く設定され、第2突出壁32Tは第2上側カバー部32の上下方向中間部に位置している。第2上側カバー部32の本体部32Hの内面にはシート前方側Frに突出する係合爪34が形成されている。
【0025】
そして、第2上側カバー部32の本体部32Hの内面から第1上側カバー部31の内面にわたって(詳しくは前記係合爪34側から前記クリップ座33側にわたって)上下複数の補強リブ30Lが形成されている。
【0026】
前記第1上側カバー部31で前記ヒンジ機構15とシートベルトバックル13の支持アーム12の下部とを覆い、前記第2上側カバー部32で前述のようにハーネス9を覆っている。第2突出壁32Tはハーネス9を覆うとともに、係合爪34や下部カバー20の上端部23Jが見えるのを防止する役割を果たしている。
【0027】
前記クリップ座33はクリップを介してシートフレーム5のクリップ孔に挿入係合し、前記係合爪34はシートフレーム5の係合孔に係合している。第2上側カバー部32は、傾斜した第3下側カバー部23の上端部23Jをシート後方側Rrから覆っている。
【0028】
上記の構成により、
(1) 下側カバー20は前記リフター機構が作動しても作動前と同様に位置固定状態でシート側部のスライド機構14等を覆っている。一方、上側カバー30はリフター機構が作動すると、シートクッション2の後半部の下端部を覆ったまま昇降する。前記下側カバー20はリフター機構が作動しても作動前と同様に位置固定状態にあるから、シート側部の一定の範囲を常に覆うことができる。さらに、下側カバー20が車体のフロアや他部品に干渉することを回避することができ、リフター機構の昇降ストロークが下側カバー20によって制限されることがなくなって、昇降ストロークの設計の自由度を向上させることができる。
(2) 上側カバー30はリフター機構が作動すると、シート側部を覆ったまま昇降するから、リフター機構の作動後にシート側部がシート側方に露出することを防止できる。そして、上側カバー30の全昇降ストロークにおいて下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの重なり状態が解除されないから、リフター機構の作動前に下側カバー20と上側カバー30で覆っていたシート側部が、リフター機構の作動後に下側カバー20の上部20Jと上側カバー30の下部30Kの間から側方に露出することを防止でき、シート1の外観品質を向上させることができる。
(3) 上側カバー30と下側カバー20を成形する成形型を、これらを一体に成形する場合よりも小型化できてカバーの型費を削減できる。
(4) 前記第2上側カバー部32に覆われる第3下側カバー部23の上端部23Jは、上側ほどシート前方側Frに位置するように傾斜しているから、リフター機構の作動により上側カバー30が前側上方に移動する時の第3下側カバー部23と第2上側カバー部32との干渉を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0029】
2 シートクッション
2Z 座面
9 ハーネス
13 シートベルトバックル
15 ヒンジ機構
19 側部カバー
20 下側カバー
20J 下側カバーの上部
30 上側カバー
30K 上側カバーの下部
32 カバー部(第2上側カバー部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面の高さを変更調節するリフター機構を備え、
側部カバーを備えているシートであって、
前記側部カバーは、位置固定された下側カバーと、前記リフター機構の作動により昇降する上側カバーとに上下に分割され、
前記下側カバーの上部と前記上側カバーの下部がシート幅方向で互いに重なり、
前記上側カバーの全昇降ストロークにおいて前記下側カバーの上部と上側カバーの下部の重なり状態が解除されないように、前記下側カバーの上部と上側カバーの下部の重なり代が設定されているシート。
【請求項2】
前記シートバックが下端部側の横軸芯周りに揺動回転することを許容するヒンジ機構が設けられ、
シートクッションの後端部にシートベルトバックルが配置され、
前記上側カバーは前記ヒンジ機構と前記シートベルトバックルを覆っている請求項1記載のシート。
【請求項3】
シート側部に配索されたハーネスをシート後方側から覆うカバー部が前記上側カバーに連設されている請求項1又は2記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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