説明

シーリング材吐出装置

【課題】 シーリングガンの軽量化とシーリング材の吐出流量の一定化及び安定化を同時に図ると共に、大型のエアーポンプや長いホースを用いることもなく、作業性を向上させると同時に、後ダレ現象をも生じることのないシーリング材吐出装置を提供する。
【解決手段】 携帯可能なバッテリー10により同じく携帯可能なエアーポンプ11を作動させ、流量調整弁13を介してシーリングガン15に加圧エアーを供給し、カートリッジ17内のピストン20を所定の一定速度で押し込んでシーリング材16をノズル19から所定流量で吐出させる。シーリングガン15の開閉レバー30は、カートリッジ17の加圧室17Aへ加圧エアーを供給する給気バルブ40とこの加圧エアーの供給を停止したとき、加圧室17Aを大気に開放する排気バルブ60とを有し、後ダレ現象の発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコンコーキング材等のシーリング材を充填したカートリッジをシーリングガンに装着し、このシーリングガンによりシーリング材を吐出させてシーリングを行うシーリング材吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなシーリング材吐出装置は、シーリングガンによりカートリッジから所定流量のシーリング材を安定して吐出させるため、シーリングガンにモータを取り付け、このモータによりカートリッジ内のピストンをラックギヤ方式などの機械式駆動機構により所定の一定速度で押し込む方式を採用するものがあった。また、カートリッジ内のピストンを機械式駆動機構によらず加圧エアーで押し込む方式のものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記機械式駆動機構のシーリングガンは、モータおよびラックギヤなどの機械式駆動機構を内蔵するため、シーリングガンが重く作業性に劣る欠点があり、また、従来の加圧エアーによるものは、比較的大型のエアーポンプを作業場の近くに置いて長いホースを用いて加圧エアーをシーリングガンに導く方式を採用しており、作業性が劣る欠点があった。さらにまた、従来の加圧エアーによるものは、加圧エアーの供給を止めてシーリング材の吐出を停止したとき、カートリッジ内に残っている加圧エアーによりシーリング材が押し出される後ダレ現象を生じる欠点もあった。
そこで、この発明は、シーリングガンの軽量化とシーリング材の吐出流量の一定化及び安定化を同時に図ると共に、大型のエアーポンプや長いホースを用いることもなく、作業性を向上させると同時に、後ダレ現象をも生じることのないシーリング材吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、第一発明は、携帯可能なバッテリーと、このバッテリーからの給電により作動する同じく携帯可能なエアーポンプと、シーリング材を充填したカートリッジを着脱可能に取り付け、前記エアーポンプから流量調整弁を介して所定流量で供給される加圧エアーにより前記カートリッジ内のピストンを押し込んでシーリング材を吐出させるシーリングガンとからなり、このシーリングガンは、前記加圧エアーの供給・停止を行う給気バルブに、カートリッジ内に残る加圧エアーを排気するための排気バルブを併設してなることを特徴とするシーリング材吐出装置である。
また、第二発明は、上記排気バルブが、給気バルブを開く前に閉じ、給気バルブを閉じた直後に開くように構成されていることを特徴とするシーリング材吐出装置である。
【発明の効果】
【0007】
第一発明ないし第二発明によれば、シーリングガンは、モータ及び機械式駆動機構に代えて給気バルブと排気バルブを内蔵する構成であるため、大幅に軽量化されて作業性が向上し、また、加圧エアーは携帯可能なバッテリー及びエアーポンプから供給されるため、作業性を阻害することがなく、加圧エアーは所定流量で供給されるため、吐出流量の一定化及び安定化を同時に図ることができ、さらに、給気バルブに排気バルブを併設することにより後ダレ現象をもなくすことができる優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態を示す一部破断概要構成図である。
【図2】図1に示すこの発明の一実施形態の部分拡大断面図である。
【図3】この発明の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の一実施形態を、図1ないし図2に示す。
バッテリー10は市販の携帯可能なものであり、作業者の腰などに装着される。バッテリー10には、同じく市販の携帯可能なものであって、作業者の腰などに装着されるエアーポンプ11が接続されている。なお、12は、エアーポンプ11の吐出圧力が設定値を超えたとき、エアーポンプ11から吐出される加圧エアーを逃がすリーク弁である。エアーポンプ11から吐出された加圧エアーは、つまみ14により流量を適宜に調整設定される流量調整弁13を介してシーリングガン15へ送られるように構成されている。
【0010】
シーリングガン15は、シリコンコーキング材等のシーリング材16を充填したカートリッジ17を図1において上方から着脱可能に装着する上方を開放した樋状のホルダ18を有している。カートリッジ17は、先端(図1において左端)に、シーリング材16を吐出するノズル19を有し、蓋を兼ねたピストン20を押し込むことにより、シーリング材16をノズル19から吐出する。
【0011】
ホルダ18内の後端(図1において右端)寄り位置には、カートリッジ17の後端を着脱可能に閉じる蓋21が置かれている。この蓋21のカートリッジ17側には、カートリッジ17の後端を蓋21により気密に閉じて加圧室17Aを形成するゴム等からなるパッキン22が取り付けられている。蓋21の背面には3本以上、例えば4本のボルト23がホルダ18の後端に向けて取付固定されており、これらのボルト23は押し付け板24を出入自在に貫通している。押し付け板24は、ホルダ18の後端にねじ係合された押し付けねじ25の先端に回転と角度が共に自在な自在継手26を介して取り付けられている。ボルト23には、蓋21と押し付け板24の間にあって蓋21をカートリッジ17の後端に向けて押し付ける圧縮コイルバネ27がそれぞれ係合されている。なお、28は、押し付け板24からボルト23が抜け出すのを防止するためのナットである。
【0012】
ホルダ18の後端寄り位置の下部には、作業者(使用者)が握る把持部29が設けられ、この把持部29には開閉レバー30が取り付けられている。
【0013】
図2に拡大して詳細に示すように、開閉レバー30は、把持部29に取り付けられた軸31に回動自在に取り付けられ、非作動時にはつる巻きバネ32により図2に示す位置に置かれ、作業者(使用者)が握ることにより反時計方向へ回動される。把持部29には、同把持部29側に向いている開閉レバー30の操作面30Aに対向させて給気バルブ40と排気バルブ60が設けられている。
【0014】
給気バルブ40は、押さえ蓋41により把持部29内に取り付けられた弁座スリーブ42と、この弁座スリーブ42の図2において右端面の弁座に対向させて配置された弁体43とからなっている。なお、押さえ蓋41にはO(オー)リング44が設けられ、弁座スリーブ42の弁座の周囲の把持部29に対向する面にはパッキン45が設けられ、弁体43の弁座に対向する面にもパッキン46が設けられている。
【0015】
弁座スリーブ42は、弁座を有する右端側が大径、残部は小径の中空形状をしており、小径部には弁座スリーブ42の内部の中空穴47を外周側へ連通させる横穴48を有している。弁体43は、弁座スリーブ42の中空穴47に対しては隙間を有してこの中空穴47を貫通すると共に、押さえ蓋41に対しては気密可能に貫通して、開閉レバー30の操作面30Aに対向する操作ロッド49を有し、弁体43の図2において右端側には、弁体43を弁座スリーブ42の弁座に向けて押圧する圧縮コイルバネ50が配置されている。
【0016】
圧縮コイルバネ50が配置されている弁体43の図2において右端側の室(入口室)51には、図1に示したエアーポンプ11から加圧エアーが供給され、弁体43を弁座から離したとき、加圧エアーが弁座スリーブ42の中空穴47及び横穴48を通って弁座スリーブ42の小径部の外周側の室(出口室)52へ流れるように構成されている。出口室52は、給気路53、チューブ54及び図1に示す蓋21に取り付けられた継手55によりカートリッジ17の後端の加圧室17Aに接続される。
【0017】
他方、排気バルブ60は、開閉レバー30の操作面30Aに対向して出入自在に把持部29に設けられた円筒状の弁体61からなり、弁体61の図2において右端面にはO(オー)リング62が一部突出するように取り付けられている。このO(オー)リング62が突出する室(排気室)63は、給気バルブ40の出口室52から伸びる給気路53に接続され、開閉レバー30が図2に示す非作動状態にあって、弁体61が開いた状態にあるとき、給気路53を排気路64により大気へ開放し、開閉レバー30を握って弁体61を押し込んでO(オー)リング62により排気バルブ60を閉じたとき、給気路53を大気から遮断するように構成されている。
【0018】
なお、この排気バルブ60は、開閉レバー30の操作面30Aを図2に二点鎖線30A1で示す位置まで回動させたとき、給気路53を大気からほぼ遮断するように形成されている。これに対し、上記給気バルブ40は、操作面30Aが上記二点鎖線30A1で示す位置へ回動するまで、すなわち、排気バルブ60がほぼ閉じるまでは、開かないように操作ロッド49の長さが設定され、開閉レバー30の操作面30Aを二点鎖線30A1から二点鎖線30A2で示す位置まで回動させることにより開かれるように形成され、このとき排気バルブ60は閉じた状態を保つようになっている。
【0019】
次いで、この装置の作用について説明する。まず、カートリッジ17を装着するため、押し付けねじ25を緩める方向へ回し、自在継手26を介して押し付け板24を後退(図1において右方へ移動)させる。押し付け板24と蓋21は、ボルト23、ナット28及び圧縮コイルバネ27により連結されているため、蓋21も押し付け板24と共に後退する。
【0020】
この蓋21を後退させた状態でカートリッジ17を図1に示すようにホルダ18に上方から挿入し、押し付けねじ25を締め付ける方向へ回す。この押し付けねじ25の回転により、押し付け板24及び蓋21は前進し、蓋21がカートリッジ17の後端に係合し、パッキン22がカートリッジ17の後端に押し付けられる。さらに、押し付けねじ25を締め付ける方向へ回すと、押し付け板24はナット23から離れ、圧縮コイルバネ27を圧縮させて前進し、4本の圧縮コイルバネ27のバネ力により蓋21を介してパッキン22をカートリッジ17の後端に押し付け、カートリッジ17の後端側に加圧室17Aを形成する。
【0021】
以上でカートリッジ17の装着を終わり、シーリング作業に入るが、このシーリング作業は、開閉レバー30を握ってエアーポンプ11からの加圧エアーを加圧室17Aへ供給することにより行う。図2において開閉レバー30を握ると、開閉レバー30は反時計方向へ回動し、まず、排気バルブ60の弁体61を押し込む。開閉レバー30の操作面30Aが二点鎖線30A1まで回動すると、排気バルブ60がほぼ閉じると同時に、給気バルブ40の操作ロッド49が開閉レバー30の操作面30Aに当たり、給気バルブ40が開き始める。操作面30Aが二点鎖線30A2まで回動すると、給気バルブ40が完全に開くと共に排気バルブ60が完全に閉じ、エアーポンプ11からの加圧エアーを加圧室17Aへ供給する。
【0022】
エアーポンプ11から加圧室17Aへ供給される加圧エアーは、流量調整弁13のつまみ14により流量が適宜に設定されているため、カートリッジ17内のピストン20を所定の一定速度で前進させ、シーリング材16をノズル19から所定流量で安定して吐出させる。そこで、ノズル19からのシーリング材16の吐出流量は、一定化と安定化を同時に図られ、シーリング作業は容易かつ的確に行われる。
【0023】
シーリング材16の吐出停止には、開閉レバー30の握りを離して開閉レバー30を図2に示す位置に戻す。これにより給気バルブ40と排気バルブ60は、上記の開閉レバー30を握ったときとは逆に動作して、まず、給気バルブ40が閉じ、次いで排気バルブ60が開く。これにより給気路53への加圧エアーの流れが停止し、続いて、この給気路53が大気へ開放される。そこで、カートリッジ17の加圧室17Aは、開閉レバー30を離すことにより、加圧エアーの供給を停止されると共に、この停止に続いて大気に開放される。このため、カートリッジ17内のピストン16は、開閉レバー30を離すことにより直ちに停止し、残圧が開放されるため、残圧によりピストン16が前進して後ダレ現象を生じることはない。
【0024】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、シーリングガン15は、従来のモータ及び機械式駆動機構に代えて給気バルブ40と排気バルブ60を内蔵する構成であり、これらはモータ及び機械式駆動機構に対して重量が軽いため、大幅に軽量化できて作業性を向上させることができ、また、加圧エアーは携帯可能なバッテリー10及びエアーポンプ11から供給されるため、作業性を阻害されることがなく、加圧エアーは所定流量で供給されるため、吐出流量の一定化及び安定化を同時に図ることができ、また、給気バルブ40に排気バルブ60を併設することにより後ダレ現象をなくすことができ、さらにまた、給気バルブ40と排気バルブ60は、開閉のタイミングが、吐出開始時には、排気バルブ60がほぼ閉じた後に給気バルブ40が開き、吐出停止時には、給気バルブ40が閉じた後に排気バルブ60が開くように設定されているため、エアーポンプ11からの加圧エアーの漏れがなく、的確な開閉を行うことができる優れた効果が得られる。
【0025】
「他の実施形態」
図1ないし図2の実施形態では、給気バルブ40と排気バルブ60の開閉のタイミングを上記のように設定したが、開閉レバー30による開閉動作は、瞬時に行われるため、必ずしも上記のように設定する必要はなく、図3に示すような構成としてもよい。
【0026】
図3に示す装置は、開閉レバー30を図3に示す非作動位置に置くために、図2に示したつる巻きバネ32を用いず、給気バルブ40の操作ロッド49を長く形成し、弁体43を弁座に押し付けるための圧縮コイルバネ50により開閉レバー30を図3に示す非作動位置へ戻すようにしたものである。
【0027】
この構成によれば、図3から明らかなように、給気バルブ40と排気バルブ60の開閉のタイミングを上記のように設定することはできず、両バルブ40、60が同時に開閉することになるが、上記のように開閉レバー30による両バルブ40、60の開閉動作は、瞬時に行われるため、実用上ほとんど問題はない。
【0028】
前述した実施形態では、給気バルブ40と排気バルブ60を並列に配置した例を示したが、直列に配置してもよく、弁の形式も図示のものに限らず、種々の形式のものを採用できる。また、前述した実施形態では、図1に示したように、カートリッジ17の後端を閉じる蓋21を3本以上である4本の圧縮コイルバネ27のバネ力で押し付けるようにした例を示したが、この発明は、これに限定されるものではなく、図1に示すボルト23、押し付け板24、圧縮コイルバネ27及びナット28を削除して、自在継手26を蓋21に取り付け、押し付けねじ25により蓋21を直接押し付けるようにしてもよいなど、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 バッテリー 11 エアーポンプ 12 リーク弁
13 流量調整弁 14 つまみ 15 シーリングガン
16 シーリング材 17 カートリッジ 17A 加圧室
18 ホルダ 19 ノズル 20 ピストン
21 蓋 22 パッキン 23 ボルト
24 押し付け板 25 押し付けねじ 26 自在継手
27 圧縮コイルバネ 28 ナット 29 把持部
30 開閉レバー 30A 操作面 31 軸
32 つる巻きバネ
40 給気バルブ 41 押さえ蓋 42 弁座スリーブ
43 弁体 44 O(オー)リング 45、46 パッキン
47 中空穴 48 横穴 49 操作ロッド
50 圧縮コイルバネ 51 入口室 52 出口室
53 給気路 54 チューブ 55 継手
60 排気バルブ 61 弁体 62 O(オー)リング
63 排気室 64 排気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可能なバッテリーと、このバッテリーからの給電により作動する同じく携帯可能なエアーポンプと、シーリング材を充填したカートリッジを着脱可能に取り付け、前記エアーポンプから流量調整弁を介して所定流量で供給される加圧エアーにより前記カートリッジ内のピストンを押し込んでシーリング材を吐出させるシーリングガンとからなり、このシーリングガンは、前記加圧エアーの供給・停止を行う給気バルブに、カートリッジ内に残る加圧エアーを排気するための排気バルブを併設してなることを特徴とするシーリング材吐出装置。
【請求項2】
上記排気バルブが、給気バルブを開く前に閉じ、給気バルブを閉じた直後に開くように構成されていることを特徴とする請求項1記載のシーリング材吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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