説明

シーリング材用プライマー組成物

【課題】難接着部材(特に、アクリル電着塗装またはフッ素塗装された部材)に対する優れた接着性とを有するシーリング材用プライマー組成物を提供する。
【解決手段】溶媒(a)と、ポリメチルメタクリラート(b)と、芳香族変性テルペン樹脂(c)と、相溶化剤(d)とを含有するシーリング材用プライマー組成物であって、溶媒(a)がセステル系有機溶媒であり、相溶化剤(d)が、メチル(メタ)アクリラートと、1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物と、(メタ)アクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つをアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルオキシアルキル基で置換したモノマー成分とする共重合体であり、溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、(b)5.0〜20.0質量部、(c)0.5〜10.0質量部および(d)2.0〜12.0質量部を含有するシーリング材用プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材用プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築分野において、建築用部材とシーリング材との間の接着性(密着性)をよくするためプライマー(下塗り剤)が用いられている。シーリング材用プライマーは、通常、建築用部材(被着体)に対する接着成分とシーリング材に対する接着成分とを含有するものである。
【0003】
従って、シーリング材用プライマーは、シーリング材の種類によって異なることはもちろん、被着体の種類によっても異なるものであった。ここで、シーリング材としては、主なものとして、ポリウレタン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系およびシリコーン系シーリング材を挙げることができ(それぞれ、1成分形および2成分形がある。)、その他には、例えば、変性ポリサルファイド系、アクリル系、アクリルウレタン系、スチレンブタジエンゴム(SBR)系、ブチルゴム(IIR)系およびポリイソブチレン(PIB)系を挙げることができる。また、被着体としては、あらゆる建築用部材が被着体となりうるが、例えば、アクリル電着塗装またはフッ素塗装された難接着部材やガラス、アルミ、コンクリートまたはモルタルの部材、シリコーン等シーリング材やゴム部材を挙げることができる。
【0004】
しかし、シーリング材または被着体部材ごとに、異なるプライマーを準備し、使用をすることは煩雑である等の理由から、より多くの種類のシーリング材およびより多くの種類の被着体に1種類のプライマーで対応できるよう、適用範囲が広いプライマーが求められている。
【0005】
特許文献1には、粘着付与剤と、ケチミン基、オキサゾリジン基およびアミノ基から選択される少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤とを含み、任意成分として、活性化イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物および塩素化ポリマーから選ばれる少なくとも1つ、有機チタネート触媒、その他配合剤をさらに含むプライマー組成物が記載されている。
【0006】
このプライマー組成物は、建築用シーリング材の種類を問わず、優れた接着性を示すこと、また、このプライマー組成物は、フッ素塗装面、ガラス、モルタル等の難接着性の建築部材の接着に好適に使用することができ、特に、アルミアクリル系電着塗装に対して使用した場合であっても界面剥離を生じず、優れた接着性を示すことが記載されている。また、実施例には、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系およびシリコーン系シーリング材に対して優れた接着性を有することならびにアルミニウム材のアクリル系電着塗装板である被着体に対して優れた接着性を有することが記載されている。
【0007】
ところで、わが国においては大気汚染防止法(昭和43年法律第97号、平成16年一部改正)に基づくVOC(揮発性有機化合物)の排出規制制度や化学物質排出把握管理促進法(平成11年法律第86号、平成14年一部改正)に基づくPRTR制度が実施され、トルエン、キシレン、n−ヘキサン等の揮発性有機溶剤の使用、移動および排出がより厳しく規制されるようになった。欧州、米国、その他諸外国においても、有機溶剤の使用等について類似の制度が実施され、規制が行われている。そのため、トルエン、キシレン、クロロホルム等の有機溶剤は、従来、揮発性が適度で様々な物質を溶解することができるため汎用されてきたが、人体や地球環境に対する負荷が大きいため、今後、シーリング材用プライマー組成物に含有しないことが望ましい。
【0008】
また、近年、ハロゲンフリー化に対する要求が強いため、クロロホルム等の塩素系有機溶剤はもちろんのこと、接着性向上のための塩素化ポリマー等もシーリング材用プライマー組成物に含有しないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−309182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、シーリング材および被着体に対する接着性が優れるのみならず、耐光性にも優れるシーリング材用プライマーが求められている。
この点につき、耐光性を向上させるためにはポリメチルメタクリラート(以下「PMMA」ともいう。)の配合が有効であり、また、接着性を向上させるためには芳香族変性テルペン樹脂の配合が有効であり、PMMAは極性溶媒と、芳香族変性テルペン樹脂は非極性溶媒と、それぞれ相溶性が比較的よいことが知られている。
しかし、これらを同一溶媒中で併用することは困難であり、要求される接着性を得ることができる含有量でシーリング材用プライマー組成物中に含有することは不可能であった。
【0011】
そこで、本発明は、PMMAと芳香族変性テルペン樹脂とが同一溶媒中に相溶化され、良好な耐光性と難接着部材(特に、アクリル電着塗装またはフッ素塗装された部材)に対する優れた接着性とを有するシーリング材用プライマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、酢酸メチル(δ≒9.6)、酢酸エチル(δ≒9.1)、酢酸イソブチル(δ≒8.3)等の酢酸アルキルエステルからなる溶媒に、PMMA(δ≒9.1〜9.5)と、芳香族変性テルペン樹脂(δ≒7.5〜9.0)と、1分子中に極性基および非極性基の両方を有する重合体である相溶化剤とを特定割合で配合すると、PMMAと芳香族変性テルペン樹脂とが同一溶媒中に相溶化され、良好な耐光性と難接着部材(特に、アクリル電着塗装またはフッ素塗装された部材)に対する優れた接着性とを有するシーリング材用プライマー組成物を提供することができることを知得した。
なお、ここで、δはヒルデブラント(Hildebrand)の溶解パラメータ(SP値,単位=(cal・cm−31/2)を表し、また、SP値が近い(SP値の差が小さい)ものは相溶性がよいことが知られている。
すなわち、本発明は、以下に掲げる(1)〜(9)を提供する。
【0013】
(1)溶媒(a)と、ポリメチルメタクリラート(b)と、芳香族変性テルペン樹脂(c)と、相溶化剤(d)とを含有するシーリング材用プライマー組成物であって、
当該溶媒(a)が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチルおよび酢酸tert−ブチルならびにこれらのうち2種類以上のものの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶媒であり、
当該相溶化剤(d)が、メチル(メタ)アクリラート(d)と、1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物(d)と、(メタ)アクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つを炭素数3以上のアルキル基、炭素数4以上のアルキルオキシ基もしくは炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基で置換した化合物(d)とをモノマー成分とする共重合体であり、
当該溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、当該ポリメチルメタクリラート(b)5.0〜20.0質量部、当該芳香族変性テルペン樹脂(c)0.5〜10.0質量部および当該相溶化剤(d)2.0〜12.0質量部を含有するシーリング材用プライマー組成物。
【0014】
(2)上記相溶化剤(d)が(メタ)アクリルアミド(d)をさらにモノマー成分とする、上記(1)に記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0015】
(3)上記ポリメチルメタクリラート(b)と上記芳香族変性テルペン樹脂(c)との含量比が質量比で10:1〜1:1である、上記(1)または(2)に記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0016】
(4)上記溶媒(a)100.0質量部に対して、エポキシ樹脂と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応して得られる反応生成物(A)0.1〜50.0質量部をさらに含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0017】
(5)上記溶媒(a)100.0質量部に対して、ポリイソシアネート化合物と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応して得られる反応生成物(B)0.1〜50.0質量部をさらに含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0018】
(6)さらに、上記溶媒(a)100.0質量部に対して、1種類以上のシランカップリング剤を合計で0.1〜100.0質量部含有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0019】
(7)さらに、上記溶媒(a)100.0質量部に対して、有機チタネート0.1〜10.0質量部を含有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0020】
(8)さらに、上記溶媒(a)100.0質量部に対して、ポリイソシアネート化合物1.0〜50.0質量部を含有する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【0021】
(9)上記ポリメチルメタクリラート(b)の重量平均分子量が5000〜100000である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、PMMAと芳香族変性テルペン樹脂とが同一溶媒中に相溶化され、良好な耐光性と難接着部材(特に、アクリル電着塗装またはフッ素塗装された部材)に対する優れた接着性とを有するシーリング材用プライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のシーリング材用プライマー組成物は、
溶媒(a)と、ポリメチルメタクリラート(b)と、芳香族変性テルペン樹脂(c)と、相溶化剤(d)とを含有するシーリング材用プライマー組成物であって、
当該溶媒(a)が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチルおよび酢酸tert−ブチルならびにこれらのうち2種類以上のものの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶媒であり、
当該相溶化剤(d)が、メチル(メタ)アクリラート(d)と、1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物(d)と、(メタ)アクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つを炭素数3以上のアルキル基、炭素数4以上のアルキルオキシ基もしくは炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基で置換した化合物(d)とをモノマー成分とする共重合体であり、
当該溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、当該ポリメチルメタクリラート(b)5.0〜20.0質量部、当該芳香族変性テルペン樹脂(c)0.5〜10.0質量部および当該相溶化剤(d)2.0〜12.0質量部を含有するシーリング材用プライマー組成物である。
【0024】
なお、本発明において、(メタ)アクリラートの用語はアクリラートおよび/またはメタクリラートを意味し、メチル(メタ)アクリラートの用語はメチルアクリラートおよび/またはメチルメタクリラートを意味する。
【0025】
[シーリング材用プライマー組成物]
1.溶媒(a)
溶媒(a)について、以下に説明する。
溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒である。
PMMAとSP値が近く、PMMAとの相溶性に優れる。
これらの酢酸アルキルエステルは、トルエン、キシレン、クロロホルム等の揮発性有機化合物に比べ、人体に対する毒性や環境に対する負荷が比較的低いという利点を有する。
【0026】
2.ポリメチルメタクリラート(b)
ポリメチルメタクリラート(b)について、以下に説明する。
ポリメチルメタクリラート(b)は、本発明のシーリング材用プライマー組成物に、耐光性を改良することを意図して含有される。
ポリメチルメタクリラート(b)としては、ポリメチルメタクリラートであれば特に制限されず、任意のものを使用することができる。
重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、Mw=5000〜100000のものが好ましく、Mw=10000〜15000のものがより好ましい。
【0027】
ポリメチルメタクリラート(PMMA)が耐光性を発揮するメカニズムは、PMMAが紫外線等の短波長の光を殆ど吸収せず透過してしまうこと、また、その側鎖を持つ炭素が第4級炭素であることにより結合力が強くなっているためであると考えられているが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
ポリメチルメタクリラート(b)としては、メタクリラートモノマーから合成してもよいが、市販品を利用することもできる。
ポリメチルメタクリラートの市販品としては、例えば、アクリペットシリーズ(三菱レイヨン社製)やデルペットシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)を使用することができる。
本発明のプライマー組成物中のポリメチルメタクリラート(b)の含有量は、溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、5.0〜20.0質量部、好ましくは10.0〜15.0質量部である。
【0029】
3.芳香族変性テルペン樹脂(c)
芳香族変性テルペン樹脂(c)について、以下に説明する。
芳香族変性テルペン樹脂(c)は、本発明のシーリング材用プライマー組成物に、接着性を向上することを意図して含有される。
【0030】
芳香族変性テルペン樹脂(c)としては、芳香族変性テルペン樹脂であれば特に制限されず、任意のものを使用することができる。
芳香族変性テルペン樹脂(c)は、テレピン油とフェノールとを原料に合成してもよいが、市販品を利用することもできる。
市販品としては、例えば、YSレジンTOシリーズ(ヤスハラケミカル社製)等を使用することができる。
芳香族変性テルペン樹脂(c)の含有量は、溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、0.5〜10.0質量部、好ましくは2.5〜5.0質量部である。
【0031】
4.相溶化剤(d)
相溶化剤(d)について、以下に説明する。
相溶化剤(d)は、本発明のシーリング材用プライマー組成物において、ポリメチルメタクリラート(b)および芳香族変性テルペン樹脂(c)を同一溶媒中に相溶化することを意図して含有される。
【0032】
相溶化剤(d)としては、メチル(メタ)アクリラート(d)と、1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物(d)と、(メタ)アクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つを炭素数3以上のアルキル基、炭素数4以上のアルキルオキシ基もしくは炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基で置換した化合物(d)と、所望により(メタ)アクリルアミド(d)とをモノマー成分とする共重合体であれば特に限定されない。
相溶化剤(d)は、ランダム共重合体であってもよいしブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0033】
相溶化剤(d)の含有量は、溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、2.0〜12.0質量部、好ましくは2.0〜8.0質量部、より好ましくは3.0〜5.0質量部である。
相溶化剤(d)は、各モノマーを原料として、公知の方法によって付加重合して得ることができるが、市販品を利用することもできる。
【0034】
以下、各モノマー成分について説明する。
(1)メチル(メタ)アクリラート(d
メチル(メタ)アクリラート(d)はメチルアクリラートまたはメチルメタクリラートであれば特に限定されないが、メチルメタクリラートであると好ましい。メチル基が結合する炭素が第4級炭素であることにより結合力が強くなっているため、組成物全体としての耐光性の改良に寄与することが考えられるからである。
【0035】
(2)非極性化合物(d
非極性化合物(d)は1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物であれば特に限定されないが、スチレンまたはスチレンのフェニル基の水素がアルキル基等の非極性置換基で置換された化合物であると好ましく、スチレンであるとより好ましい。
【0036】
(3)化合物(d
化合物(d)はアクリルアミドまたはメタクリルアミド、好ましくはアクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つを炭素数3以上のアルキル基、炭素数4以上のアルキルオキシ基もしくは炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基で置換した化合物であれば特に限定されない。
炭素数3以上のアルキル基は、特に制限されず、直鎖アルキル基でもよく分枝アルキル基でもよい。例えば、直鎖アルキル基としては、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−セプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等、分枝アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができる。
炭素数4以上のアルキルオキシ基は、特に制限されず、アルキル部分が直鎖でも分枝していてもよい。例えば、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基等を挙げることができる。
炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基は、一般式 C2m+1OC2n−2− (ここで、m,nはそれぞれ1以上の整数を表す。)で表されるものであれば特に制限されず、C2m+1は直鎖アルキル基でもよく分枝アルキル基でもよく、C2m+1は直鎖アルケニル基でもよく分枝アルケニル基であってよい。例えば、n−ブトキシメチル基、n−プロピルオキシエチル基、エトキシn−プロピル基、メトキシn−ブチル基等を挙げることができる。
化合物(d)は、一般的には、例えば、N−(アルキルオキシアルキル)アクリルアミド、N,N−ビス(アルキルオキシアルキル)アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ビス(アルキル)アクリルアミド、N−(アルキルオキシ)アクリルアミド、N,N−ビス(アルキルオキシ)アクリルアミド等で表されるが、これらのうちで、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミドが特に好ましい。
【0037】
(4)(メタ)アクリルアミド(d
(メタ)アクリルアミド(d)は、任意のモノマー構成成分であり、相溶化剤(d)は第4のモノマー成分として含むことができる。
(メタ)アクリルアミド(d)は、メタクリルアミドまたはアクリルアミドであれば特に限定されないが、アクリルアミドであると好ましい。
【0038】
共重合体中の各モノマー成分の構成比(モノマー構成比)は特に限定されないが、相溶化剤(d)は、スチレン含量が1〜50質量%であるのが好ましい。1質量%よりも少ないと芳香族変性テルペン樹脂が溶けず、50質量%よりも多いと密着性が低下するからである。
【0039】
5.任意成分(I)
本発明のシーリング材用プライマー組成物には、脱水剤、ポリイソシアネート化合物、反応生成物(A)、反応生成物(B)、シランカップリング剤および触媒からなる群から選ばれる1以上の成分を含有することが好ましい。
【0040】
(1)脱水剤
本発明の目的を損なわない範囲で脱水剤を含有することが好ましい。脱水剤を含有すると、水が存在することによるインシデントを回避し得るからである。
例えば、水が含まれると、イソシアネート化合物と反応したり、加水分解性シリル基含有化合物と反応したりするが、こういった反応を抑制することができる。
【0041】
脱水剤は、溶媒(a)100.0質量部に対して、好ましくは1.0〜20.0質量部、より好ましくは1.0〜10.0質量部、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部含有することができる。
【0042】
(2)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
【0043】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、低分子量のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0044】
低分子量のポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4´−MDI)、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4´−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)のような芳香族炭化水素基含有ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネートのようなアラルキル基含有ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートが挙げられる。また、脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4´−MDIを水素添加することにより得られうるジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート(水添MDI)のような芳香族炭化水素基含有ポリイソシアネートの水素添加物、アラルキル基含有ポリイソシアネートの水素添加物が挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネート化合物は、溶媒(a)100.0質量部に対して、好ましくは1.0〜15.0質量部、より好ましくは3.0〜12.0質量部、さらに好ましくは5.0〜9.0質量部含有することができる。
【0046】
(3)反応生成物(A)
反応生成物(A)について以下に説明する。
反応生成物(A)は、エポキシ樹脂と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応させることにより得られうる反応生成物である。
【0047】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化樹脂、フルオレン基を有するエポキシ化合物のような2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0048】
また、3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型のようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノールのようなグリシジルアミノ型エポキシ樹脂が挙げられる。さらに、エポキシ官能基を導入したエポキシ変性シリコーンやエポキシ変性アクリル、エポキシ変性ポリブタジエンのようなエポキシ変性樹脂が挙げられる。
【0049】
中でも、プライマー層の接着性の観点から、ビスフェノールF型が好ましい。また、エポキシ樹脂は、液状であるのが取り扱いの観点から好ましい。エポキシ樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
第二級アミンについて以下に説明する。
本発明に用いられる第二級アミンは、加水分解性シリル基を有する。
加水分解性シリル基は、加水分解性基を少なくとも1個有するシリル基であれば、特に限定されない。例えば、アルコキシシリル基が挙げられる。アルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。アルコキシシリル基は、硬化物の物性に優れる点から、アルコキシ基を2つ以上有するのが好ましい。
【0051】
アルコキシシリル基において、アルコキシ基以外の基は、特に限定されず、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基のような炭素数が20以下のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基のような炭素数が20以下のアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基のような炭素数が20以下のアラルキル基が挙げられる。
【0052】
アルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、ジエチルエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2−メトキシエトキシ)シリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が挙げられる。中でも、硬化性、接着性の点で、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2−メトキシエトキシ)シリル基が好ましい。
【0053】
第二級アミンとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化1】

【0055】
【化2】

【0056】
式(1)で表される化合物について以下に説明する。
式(1)中、Rは炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基であり、nは0〜2の整数である。
【0057】
炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、2−メチル−1,3−トリメチレン基(イソブチレン基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基が挙げられる。入手が容易で接着性が優れる点から、トリメチレン基、2−メチル−1,3−トリメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基(3,3−ジメチル−1,4−ブチレン基)が好ましい。
【0058】
炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。これらの基は二重結合または三重結合を含むことができる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。なお、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。
nは、0または1であるのが好ましい。
【0059】
式(1)で表される化合物としては、例えば、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン(以上、東レ・ダウコーニング社製)が挙げられる。
【0060】
式(2)で表される化合物について以下に説明する。
式(2)中、RおよびRは、式(1)のRおよびRと同義であり、Rは式(1)のRと同義であり、Rは炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基または芳香族炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。
【0061】
は、中でも、メチレン基、トリメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基(3,3−ジメチル−1,4−ブチレン基)のような炭素数1〜6の分岐していてもよいアルキレン基が好ましい。
【0062】
において、炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキル基は式(1)のRと同義である。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、トリル基、キシリル基、ヒドロキシフェニル基が挙げられる。中でも、フェニル基、炭素数2〜4の分岐していてもよいアルキル基(エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が好ましい。
nは、0または1であるのが好ましい。
【0063】
式(2)で表される化合物としては、例えば、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0064】
第二級アミンは、これらのうちでも、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0065】
また、第二級アミンとして、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のA−Link15、Y−9669、A1170;旭化成ワッカーシリコーン社製のXL−924、XL−926、XL−972、XL−973が挙げられる。
第二級アミンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
エポキシ樹脂と第二級アミンとの付加反応は、特に限定されない。例えば、従来公知の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、エポキシ樹脂と第二級アミンとを好ましくは後述する付加率となる量比で混合し、60〜100℃(通常80℃前後)に加熱して付加反応させる方法が挙げられる。
【0067】
付加反応において、エポキシ樹脂中の全エポキシ基に対する第二級アミンの付加率が、10〜100モル%であると、プライマー層の接着性の観点から好ましい。このような効果がさらに優れることから、付加率が50〜100モル%であるのがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ基に第二級アミンが付加することにより得られる反応生成物(A)は、主として、加水分解性シリル基とヒドロキシ基とを有する第三級アミンである。
【0068】
反応生成物(A)は、溶媒(a)100.0質量部に対して、好ましくは0.1〜20.0質量部、より好ましくは1.0〜15.0質量部、さらに好ましくは5.0〜10.0質量部含有することができる。このような範囲の場合、溶媒は反応生成物(A)を溶解または分散させることができ、組成物の溶液安定性、塗布性に優れる。
【0069】
(4)反応生成物(B)
反応生成物(B)は、ポリイソシアネート化合物と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応させることにより得られうる反応生成物である。
ポリイソシアネート化合物は上記した低分子量のポリイソシアネート化合物に加え、ウレタンプレポリマーを用いることができる。
【0070】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、上記の低分子量のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応物が挙げられる。ポリオール化合物は、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールのようなポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオール、および、これらの混合ポリオールが挙げられる。
【0071】
ウレタンプレポリマーに用いられるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせは、特に限定されない。例えば、ポリオール化合物のそれぞれと、上記の低分子量のポリイソシアネート化合物のそれぞれとを任意の組み合わせで用いることができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、および、ポリオキシプロピレントリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、HDI、および、MDIの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種とから得られるウレタンプレポリマーが、シーリング材用プライマー組成物から得られうるプライマー層が黄色に変色するのを防止しうる点、コスト、入手の容易さの点から好ましい。
【0072】
ウレタンプレポリマーに用いられるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との混合比は、ポリオール化合物中のヒドロキシ基に対するポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が1.3〜2.5であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。このような範囲である場合、ウレタンプレポリマーの粘度が適度であり、硬化物の伸びが優れている。
【0073】
ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、特に限定されない。例えば、上述の量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50〜160℃で加熱し撹拌して製造する方法が挙げられる。必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0074】
ウレタンプレポリマーは、取り扱いの観点から室温で液状であるのが好ましい。また、ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基のほかに、例えば、ヒドロキシ基、酸無水物基、アミノ基、潜在性アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基のような基を分子内に有することができる。これらのようなイソシアネート基と反応し架橋できる基を有する場合、得られうる硬化物の架橋密度が向上し、物性に優れる。
【0075】
ポリイソシアネート化合物は、シーリング材用プライマー組成物から得られうるプライマー層が黄色に変色するのを防ぐ観点から、脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートであるのが好ましい態様の一つである。脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートは、低分子量のもの、ウレタンプレポリマーであるものが挙げられる。例えば、それぞれ、上記と同様のものが挙げられる。中でも、HDI、IPDI、水添MDI、NBDIが好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
第二級アミンは上述したものを用いることができる。
【0077】
ポリイソシアネート化合物と第二級アミンとの付加反応は、特に限定されない。例えば、従来公知の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物と第二級アミンとを好ましくは後述する付加率となる量比で混合し、室温(通常20℃前後)で撹拌して付加反応させる方法が挙げられる。
【0078】
付加反応において、ポリイソシアネート化合物中の全イソシアネート基に対する第二級アミンの付加率が、10〜100モル%であると、プライマー層の接着性の観点から好ましい。このような効果がさらに優れることから、付加率が50〜100モル%であるのがより好ましい。
【0079】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に第二級アミンが付加することにより得られる反応生成物(B)は、主として、加水分解性シリル基と、第三級窒素原子を含むウレア結合(−NH−CO−N<;ここで、Nは第二級アミン由来の第三級窒素原子を表す。)とを有するウレタン化合物である。
【0080】
反応生成物(B)は、溶媒(a)100.0質量部に対して、好ましくは0.1〜50.0質量部、より好ましくは3.0〜9.0質量部、さらに好ましくは3.0〜6.0質量部含有することができる。このような範囲の場合、溶媒(a)は反応生成物(B)を溶解させまたは分散させることができ、組成物の溶液安定性、塗布性に優れる。
【0081】
(5)シランカップリング剤
シランカップリング剤を含有すると、被着体との接着性をより優れたものとすることができる。
【0082】
シランカップリング剤は、特に限定されない。例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのような(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤;ポリメトシキシロキサン、ポリエトシキシロキサンのようなシリケート;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンのようなケチミンシラン;1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートのようなイソシアヌレートシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランが挙げられる。
【0083】
中でも、接着性の観点から、ポリメトキシシロキサン、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。シランカップリング剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シランカップリング剤の量は、溶媒(a)100.0質量部に対して、0.1〜40.0質量部であるのが好ましく、5.0〜25.0質量部であるのがより好ましい。このような範囲の場合、プライマー層の接着性がより優れる。
【0084】
(6)触媒
本発明のシーリング材用プライマー組成物は、さらに、触媒を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。これにより、シーリング材用プライマー組成物の硬化を促進させることができる。
【0085】
触媒としては、例えば、N,N,N´,N´−テトラメチルプロピレンジアミン、トリエチレンジアミンのような第三級アミン化合物;錫、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、コバルト、カルシウム、セリウムのような金属のカルボン酸塩;チタン、ジルコニウムのような金属のアルキレート;チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、コバルトのような金属のキレートが挙げられる。中でも、硬化性、接着性、造膜性の観点から、有機チタネート(チタンのアルキレート)が好ましい。有機チタネートとしては、例えば、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、および、これらの縮合物が挙げられる。触媒は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
触媒は、硬化性の観点から、溶媒(a)100.0質量部に対して、好ましくは0.01〜20.0質量部、より好ましくは0.5〜8.0質量部、さらに好ましくは1.0〜5.5質量部含有することができる。
【0087】
6.任意成分(II)
本発明のシーリング材用プライマー組成物は、上述の任意成分(I)に挙げた、脱水剤、ポリイソシアネート化合物、反応生成物(A)、反応生成物(B)、シランカップリング剤および触媒のほか、本発明の目的を損わない範囲で、配合剤を含有することができる。
任意成分(II)に属する配合剤としては、例示列挙すれば、防錆剤、充填剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、無機顔料、有機顔料、難燃剤、チクソトロピー付与剤、帯電防止剤が挙げられる。
配合剤の量は、特に制限されず、プライマー組成物において一般的に使用されうる量を配合することができる。
【0088】
防錆剤としては、例えば、ジンクフォスフェート、タンニン酸誘導体、リン酸エステル、塩基性スルホン酸塩が挙げられる。
【0089】
[製造方法]
本発明のシーリング材用プライマー組成物は、その製造について、特に限定されない。
例えば、溶媒(a)と、PMMA(b)と、芳香族変性テルペン樹脂(c)と、相溶化剤(d)と、任意成分(I)と、任意成分(II)に例示した成分その他の配合できる成分とを、容器に入れ、ボールミルのような混合装置を用いて十分に混合することにより得ることができる。
各成分はよく乾燥させてから調製するのが好ましい態様の1つである。得られたシーリング材用プライマー組成物は、容器内を窒素ガスで置換し、密閉して保存するのが好ましい。
【0090】
[被着体]
本発明のシーリング材用プライマー組成物に対して用いられうる被着体としては、例えば、ガラス;アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;モルタルや石材のような多孔質部材;フッ素電着塗装、アクリル電着塗装やフッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装された部材;シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系のようなシーリング材の硬化物;塩化ビニノ樹脂、アクリル樹脂;NBR、EPDMのようなゴム類が挙げられる。
【0091】
[シーリング材]
本発明のシーリング材用プライマー組成物に対して用いられうるシーリング材としては、例えば、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系、ポリイソブチレン系が挙げられる。
【0092】
本発明のシーリング材用プライマー組成物は、優れた接着性を有するので、被着体とシーリング材との組み合わせは特に限定されない。幅広い組み合せに対して使用することができる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0094】
1.シーリング材用プライマー組成物の調製
第1表に示す各成分を第1表に示す量(単位は質量部)で混合し、各シーリング材用プライマー組成物を調製した。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
第1表の各成分の詳細は以下のとおりである。
〈a成分〉
・有機溶媒1:酢酸エチル
【0098】
〈b成分〉
・PMMA1:ポリメチルメタクリラート(アクリペットVH001,三菱レイヨン社製;Mw(数平均分子量(以下同じ))=100000)
・PMMA2:ポリメチルメタクリラート(アクリペットVHS001,三菱レイヨン社製;Mw=70000)
・PMMA3:ポリメチルメタクリラート(デルペット720V,旭化成ケミカルズ社製;Mw=10000)
・PMMA4:ポリメチルメタクリラート(デルペット80N,旭化成ケミカルズ社製;Mw=30000)
【0099】
〈c成分〉
・芳香族テルペン樹脂:芳香族変性テルペン樹脂(YSレジン TO−105,ヤスハラケミカル社製)
【0100】
〈d成分〉
・相溶化剤A:メチルメタクリラート、アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミドおよびスチレンをモノマー成分としてなるランダム共重合体であって、モノマー組成比(質量比)が52.0:41.0:3.5:3.5であるもの(下記第2表を参照)。
・相溶化剤B:メチルメタクリラートおよびスチレンをモノマー成分としてなるランダム共重合体であって、モノマー組成比(質量比)が60.0:40.0であるもの(下記第2表を参照)。
・相溶化剤C:メチルメタクリラート、アクリル酸およびスチレンをモノマー成分としてなるランダム共重合体であって、モノマー組成比(質量比)が55.0:40.0:5.0であるもの(下記第2表を参照)。
・相溶化剤D:メチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびスチレンをモノマー成分としてなるランダム共重合体であって、モノマー組成比(質量比)が88.0:2.0:10.0であるもの(下記第2表を参照)。
・相溶化剤E:メチルメタクリラート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリラートおよびスチレンをモノマー成分としてなるランダム共重合体であって、モノマー組成比(質量比)が25.0:15.0:60.0であるもの(下記第2表を参照)。
【0101】
【表3】

【0102】
〈その他の成分〉
・脱水剤:無水ゼオライト(ゼオラムA3,東ソー社製)
・ポリイソシアネート:デスモジュールHL(住化バイエルウレタン社製)
・反応生成物(A)、反応生成物(B):下記のとおり合成したもの
・シランカップリング剤A:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503,信越化学工業社製)
・シランカップリング剤B:ポリメトキシシロキサン(MS51,三菱化学社製)
・シランカップリング剤C:N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン(S340,チッソ社製)
・シランカップリング剤D:1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Yl1597,東レ・ダウコーニング社製)
・シランカップリング剤E:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A187,東レ・ダウコーニング社製)
・触媒:TBT(テトラ−n−ブトキシチタン)重合体(B−10、日本曹達社製)
【0103】
《反応生成物(A)、(B)の合成方法》
・反応生成物(A)
下記第3表A欄に示す各成分をそこに示す量(単位:質量部)で混合し、80℃に加熱して24時間反応させ、付加物Aを合成した。
また、得られた付加物Aについて、エポキシ樹脂中の全エポキシ基に対する第二級アミンの付加率を下記第3表に示す(第3表の付加物のシラン化率のA欄、単位:モル%)。
・反応生成物(B)
下記第3表B欄に示す各成分をそこに示す量で(単位:質量部)で混合し、20℃で撹拌しながら24時間反応させ、付加物Bを合成した。
また、得られた付加物Bについて、ポリイソシアネート中の全イソシアネート基に対する第二級アミンの付加率を下記第3表に示す(第3表の付加物のシラン化率のB欄、単位:モル%)。
【0104】
【表4】


なお、第3表の各成分の詳細は、以下の通りである。
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:YDF−170(東都化成工業社製)
・水添メチレンジフェニルイソシアネート:デスモジュールW(住化バイエルウレタン社製)
・N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン:A−Link15(東レ・ダウコーニング社製)
【0105】
2.シーリング材用プライマー組成物の性能評価
(1)溶解性(相溶性)
〈方法〉
実施例1〜8および比較例1〜8のシーリング材用プライマー組成物を目視により観察した。
PMMAおよび芳香族変性テルペン樹脂を含み、かつ、各成分を十分に溶解できたものを「○」、「○」ではないが、各成分を十分に溶解できたものを「△」、各成分が十分に溶解せず沈殿が生じる等したものを「×」と評価した。
〈結果〉
評価を第4表に示す。
「○」と評価されたものが、PMMAと芳香族変性テルペン樹脂とが同一溶媒に相溶化されたシーリング材用プライマー組成物である。
【0106】
【表5】

【0107】
(2)耐光性
〈方法〉
実施例1〜8および比較例1〜8の各シーリング材用プライマー組成物を、被着体(50mm×50mm)のガラスに塗布し、乾燥させ、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐侯試験(JIS K 5600−7−7:1999に準拠)を実施して評価した。MWOMは(KU−R5CI−A,ダイプラウインテス社製)を用いて100時間の試験を行った。
目視による外観検査で異常が認められないものを「○」と評価した。
〈結果〉
第5表に示すように、実施例1〜8および比較例1〜8のすべてのシーリング材用プライマーについて、耐光性は「○」と評価された。
「○」と評価されたものが、良好な耐侯性を有するシーリング材用プライマー組成物である。
【0108】
【表6】

【0109】
(3)接着性
(3.1)試験体の作製
アクリル電着塗装部材(MMA+メラミン)、フッ素塗装部材(カイナー系)、ガラス部材(フロートガラス)、アルミ部材(陽極酸化Al)、モルタル部材(JISモルタル)またはゴム部材(EPDM)からなる被着体(縦50mm×横50mm)を準備した。
次に、各被着体の片面全体に、実施例1〜8および比較例1〜8のいずれか1種類のシーリング材用プライマー組成物を均一に塗布し、60分間風乾させた。
その後、プライマー層の上に変成シリコーン系シーリング材(ハマタイト スーパーII,横浜ゴム社製)を接着面積10mm×50mm、塗布厚5mmとなるように塗布し、20℃で7日間養生させた後、さらに50℃で7日間養生させて、試験体を作製した。
(3.2)試験方法
作製した各試験体について、90°はく離試験(JIS K 6854−2:1999に準拠)を行い、破壊様式(JIS K 6866:1999)を観察・評価した。
【0110】
(3.3)試験結果
試験結果を第6表に示す。
CFは凝集破壊、AFは接着破壊であることを示す。
アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材について、ともに破壊様式がCFであったものについて、接着性が優れるとして「○」と評価し、そうでないものについて、接着性が優れるとはいえないとして「×」と評価した。
なお、第6表において、被着体1〜6は、それぞれ、以下のものである。
・被着体1:アクリル電着塗装部材(MMA+メラミン)
・被着体2:フッ素塗装部材(カイナー系)
・被着体3:ガラス部材(フロートガラス)
・被着体4:アルミ部材(陽極酸化Al)
・被着体5:モルタル部材(JISモルタル)
・被着体6:ゴム部材(EPDM)
【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
(4)試験結果について
実施例1〜8に係る本発明のシーリング材用プライマー組成物は、PMMAと芳香族変性テルペン樹脂とが同一溶媒に相溶化され(第4表)、良好な耐侯性を有し(第5表)、しかも、アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材に対する接着性に優れた(第6表)シーリング材用プライマー組成物であることが理解される。
一方、比較例1〜8に係るシーリング材用プライマー組成物は、アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材に対する接着性に優れているとはいえないシーリング材用プライマー組成物であることが理解される(第6表)。
ここで、比較例1〜4に係るシーリング材用プライマー組成物は、芳香族変性テルペン樹脂(c)を含まないため、相溶化剤(d)を含まなくとも溶解性(相溶性)に問題は無かったものの、アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材に対する接着性が優れているとはいえない結果になったと考えられる。また、比較例5〜8に係るシーリング材用プライマー組成物は、芳香族変性テルペン樹脂(c)を含むため、相溶化剤(d)を含まないと相溶性が無く、アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材に対する接着性が優れているとはいえない結果になったと考えられる。また、比較例1〜8について、耐侯性が良好であるのは、PMMAによる効果であると考えられる。
さらに、本発明のシーリング材組成物は、アクリル電着塗装部材およびフッ素塗装部材に対する接着性に優れるのみならず、シーリング材やガラス、アルミ、モルタルまたはゴム製の部材に対する接着性にも優れることもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒(a)と、ポリメチルメタクリラート(b)と、芳香族変性テルペン樹脂(c)と、相溶化剤(d)とを含有するシーリング材用プライマー組成物であって、
該溶媒(a)が酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチルおよび酢酸tert−ブチルならびにこれらのうち2種類以上のものの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶媒であり、
該相溶化剤(d)が、メチル(メタ)アクリラート(d)と、1分子中にビニル基およびベンゼン環を有する非極性化合物(d)と、(メタ)アクリルアミドの窒素に結合する水素の少なくとも1つを炭素数3以上のアルキル基、炭素数4以上のアルキルオキシ基もしくは炭素数5以上のアルキルオキシアルキル基で置換した化合物(d)とをモノマー成分とする共重合体であり、
該溶媒(a)100.0質量部に対して、固形分量相当で、該ポリメチルメタクリラート(b)5.0〜20.0質量部、該芳香族変性テルペン樹脂(c)0.5〜10.0質量部および該相溶化剤(d)2.0〜12.0質量部を含有するシーリング材用プライマー組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤(d)が(メタ)アクリルアミド(d)をさらにモノマー成分とする、請求項1に記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項3】
前記ポリメチルメタクリラート(b)と前記芳香族変性テルペン樹脂(c)との含量比が質量比で10:1〜1:1である、請求項1または2に記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項4】
前記溶媒(a)100.0質量部に対して、エポキシ樹脂と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応して得られる反応生成物(A)0.1〜50.0質量部をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項5】
前記溶媒(a)100.0質量部に対して、ポリイソシアネート化合物と加水分解性シリル基を有する第二級アミンとを付加反応して得られる反応生成物(B)0.1〜50.0質量部をさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項6】
さらに、前記溶媒(a)100.0質量部に対して、1種類以上のシランカップリング剤を合計で0.1〜100.0質量部含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項7】
さらに、前記溶媒(a)100.0質量部に対して、有機チタネート0.1〜10.0質量部を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項8】
さらに、前記溶媒(a)100.0質量部に対して、ポリイソシアネート化合物1.0〜50.0質量部を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。
【請求項9】
前記ポリメチルメタクリラート(b)の重量平均分子量が5000〜100000である、請求項1〜8のいずれかに記載のシーリング材用プライマー組成物。

【公開番号】特開2011−236356(P2011−236356A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109952(P2010−109952)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】