シールドトンネルの分岐構築方法およびスライドゲート装置
【課題】 地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない。
【解決手段】 横方向に構築された一方のシールドトンネル1の側部に他方のシールドトンネル2を接合する、トンネルの分岐構築方法において、一方のシールドトンネル1の構築時に、他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置4を設置し、スライドゲート装置4にエントランスボックス17を取り付け、エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、他方のシールドトンネルを掘削するシールド掘削機の発進あるいは到達時に、スライドゲート装置のスライドゲート9を開く。スライドゲート9を一方のシールドトンネルのセグメント22の幅に合わせて3分割し、一方のシールドトンネル1の構築時に一体的に連結する。
【解決手段】 横方向に構築された一方のシールドトンネル1の側部に他方のシールドトンネル2を接合する、トンネルの分岐構築方法において、一方のシールドトンネル1の構築時に、他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置4を設置し、スライドゲート装置4にエントランスボックス17を取り付け、エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、他方のシールドトンネルを掘削するシールド掘削機の発進あるいは到達時に、スライドゲート装置のスライドゲート9を開く。スライドゲート9を一方のシールドトンネルのセグメント22の幅に合わせて3分割し、一方のシールドトンネル1の構築時に一体的に連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールドトンネルの分岐構築方法およびスライドゲート装置、特に、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のシールドトンネルまたはヒューム管推進トンネル等のトンネルを接合する際に、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない、シールドトンネルの分岐構築方法およびこれに使用されるスライドゲート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のトンネルを接合してシールドトンネルを分岐構築するには、立坑を構築して行うのが通常であった。しかし、過密化した都市部では用地不足や地価の高騰等の理由によって、立坑用地の確保が困難となっている。
【0003】
そこで、立坑を構築しないでシールドトンネルの分岐構築が行われている。この構築方法は、例えば、図16に示すように、横方向に構築された一方のシールドトンネル1に他方のシールドトンネル2を接合する場合、シールド掘削機3の到達部W(図中、ハッチングで示す)を地盤改良工法によって固め、シールド掘削機3が一方のシールドトンネル1に到達したら一方のシールドトンネル1の側部を部分的に開口し、シールド掘削機3を一方のシールドトンネル1内に到達させて、接合を完了するものであった。以下、この構築方法を従来技術という。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、以下のような問題があった。
【0005】
(1)地盤改良費用が高価であるので、分岐構築費用がかかる。
(2)地盤改良工事のため交通に支障を来たす恐れがある。
(3)地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じる恐れがある。
【0006】
従って、この発明の目的は、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない、シールドトンネルの分岐構築方法およびこれに使用されるスライドゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
請求項1記載の発明は、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のシールドトンネルを接合する、シールドトンネルの分岐構築方法において、前記一方のシールドトンネルの構築時に、前記他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置を設置し、前記スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、前記他方のトンネルを掘削する掘削機の発進あるいは到達時に、前記スライドゲート装置のスライドゲートを開くことに特徴を有するものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持するために、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填することに特徴を有するものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、スライドゲートを一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割し、一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結することに特徴を有するものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、スライドゲートの背面にシール用充填部材を、スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能に設けることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に形成された、掘削機の発進あるいは到達のための開口部に他方のトンネルを接合して、シールドトンネルの分岐構築を行う際に、前記掘削機の発進あるいは到達するまでの間、前記開口部を閉鎖しておくための、シールドトンネルのスライドゲート装置において、前記一方のシールドトンネルにスライドゲートが前記一方のシールドトンネルに沿って開閉可能に設けられていることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、スライドゲートは、一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割され、一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結されることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、スライドゲートの背面には、スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能なシール用充填部材が設けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、この例は、一方のシールドトンネルにシールド掘削機を到達させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合である。
【0017】
図1は、この発明の、シールド掘削機の到達によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、シールド掘削機がスライドゲート装置に到達した状態を示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(c)は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機が止水されたエントランスボックス内に推進後、エントランスパッキンを膨らませた状態を示す正面図である。
【0018】
図2は、一方のシールドトンネルに構築されたスライドゲート装置を示すトンネル内側から見た側面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図3の部分拡大図、図5は、図2のB−B線断面図、図6は、図5の部分拡大図、図7は、スライドゲートの結合部分を示す断面図である。
【0019】
図8は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す断面図、図9は、分割スライドゲートにジャッキが当接された状態を示す断面図、図10は、図9のジャッキ当接部分を示す断面図、図11は、図9の推力伝達部材が当てがわれたスライドゲート部分を示す断面図、図12は、図11のC−C線断面図、図13は、掘削中のシールド掘削機を示す概略断面図、図14は、シールド掘削機のテールシール部分を示す拡大図である。
【0020】
先ず、この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法に使用するスライドゲート装置について説明する。なお、この例は、スライドゲートを3分割したものであるが、分割数は、これに限定されない。
【0021】
図2から図12において、4は、横方向に構築された一方のシールドトンネル1の側部に取り付けられたスライドゲート装置である。スライドゲート装置4は、右側、左側縦梁5A、5Bと上部、下部横梁6A、6Bとを四角形状に組んだ梁材7と、梁材7に固定された開口部10が形成されたゲート支持枠8と、ゲート支持枠8に水平方向、すなわち、シールドトンネル1方向(図2中、矢印で示す)に移動可能に設けられた四角形状のスライドゲート9とを備えている。右側縦梁5Aには、図4に示すように、スリットSが形成され、スリットSからスライドゲート9が出入りする。
【0022】
右側、左側縦梁5A、5B、ゲート支持枠8の鉛直部分およびスライドゲート9は、その鉛直方向に一方のシールドトンネル1の曲率に合わせて円弧状に湾曲している。ゲート支持枠8は、開口部10が形成された2枚の面板10A、10Bを梁材7の内側および外側に固定することによって構成されている。なお、内側面板10Aには、シールド掘削機3の外径に応じた大きさの矩形状開口が形成され、外側面板10Bには、円形状開口が形成されている。スライドゲート9の一端には、フック11が取り付けられていて、ジャッキまたはチェーンブロック等によりスライドゲート9を水平方向に引き抜くことができる。
【0023】
上部横梁6Aには、複数本のゲート支持ボルト12が取り付けられている。図6に示すように、各ゲート支持ボルト12は、上部ゲート支持板13を介してスライドゲート9の上端と接している。スライドゲート9の下端は、下部ゲート支持板14を介して下部横梁6Bに接している。ゲート支持ボルト12を締めれば、スライドゲート9は、上部ゲート支持板13を介して下部ゲート支持板14に押し付けられる。なお、下部ゲート支持板14にゲート支持ボルト12を設けて上下からスライドゲート9を押し付けても良い。
【0024】
ゲート支持枠8の内側の面板10Aには、その全周に亘って間隔をあけて複数本のゲート押し込みボルト15が取り付けられている。ゲート支持枠8の面板10Bの内面には、その全周に亘って四角形状に背面パッキン16が取り付けられている。ゲート押し込みボルト15を締めれば、スライドゲート9は、背面パッキン16に押し付けられて、水密性が保たれる。面板10Aのゲート押し込みボルト15の内側には、エントランスボックス17をボルト止めするためのナット18が複数個取り付けられている。
【0025】
スライドゲート9の背面には、シール用充填部材19が設けられている。シール用充填部材19は、図13および図14に示すように、一方のシールドトンネル1の掘削時、シールド掘削機3のテールシール3Aによるシール機能が損なわれないようにするためのものである。シール用充填部材19は、シールド掘削機3により容易に開口されるように、発泡モルタル等の硬化度の小さい材料からなり、スライドゲート9の開放時にスライドゲート9の背面から容易に離脱するように取り付けられている。なお、スライドゲート9の開放前にシール用充填部材19がスライドゲート9から脱落しないように、外側面板10Bの円形開口に沿って設けられた充填部材保持金具32を介してシール用充填部材19が取り付けられている。
【0026】
ゲート支持枠8の一端側には、図4に示すように、スライドゲート9の引き抜きに伴うスリットSからの漏水を防止するために、セルフシール20およびOリング21からなる二重止水機構が設けられている。なお、これらのシール機構は、何れか一方でも良い。
【0027】
上述のように構成されているスライドゲート装置4は、第1、第2および第3ブロック4A、4B、4Cに3分割され、各ブロック幅は、セグメント22の幅と一致している。第1ブロック4Aは、右側縦梁5A、分割された上部、下部横梁6A(R)、6B(R)、分割されたゲート支持枠8(R)、背面にシール用充填部材19(R)が設けられた分割されたスライドゲート9(R)から構成されている。第2ブロック4Bは、分割された上部、下部横梁6A(C)、6B(C)、分割されたゲート支持枠8(C)、背面にシール用充填部材19(C)が設けられた分割されたスライドゲート9(C)から構成されている。第3ブロック4Cは、左側縦梁5B、分割された上部、下部横梁6A(L)、6B(L)、分割されたゲート支持枠8(L)、背面にシール用充填部材19(L)が設けられた分割されたスライドゲート9(L)から構成されている。ここで、R、C、Lは、図2において、右側(Right)、中央(Center)、左側(Left)を意味する。
【0028】
図7に示すように、スライドゲート9同士は、連結板23をボルト止めすることによって連結される。スライドゲート9の背面側の接合部分は、スライドゲート9の背面にシール用充填部材19が設けられるために、ボルト24用のナット25は、予めスライドゲート9に埋め込まれている。ボルト24の周囲の空間には、セルフシール3Aの損傷防止のためにコーキング材26が充填されている。図7は、スライドゲート9(R)と9(C)との接合構造であるが、スライドゲート9(C)と9(L)との接合も同様である。
【0029】
分割された上部横梁6A(R)、6A(C)、6A(L)、分割された下部横梁6B(R)、6B(C)、6B(L)は、それぞれ、ボルト27によって連結されている。
【0030】
次に、以上のように構成されている、この発明のスライドゲート装置4を使用した、この発明のシールドトンネルの分岐構築方法を説明する。
【0031】
先ず、工場段階での製作方法について説明する。
【0032】
工場では、3つに分割されたスライドゲート4を仮組みし、同時に分割されたスライドゲート4も一体化する。その上でゲート押し込みボルト15、ゲート支持ボルト12によりスライドゲート4を所定位置に固定する。次に、ゲート背面の接続位置に沿って仕切り板を配置した後、ゲート背面側にシール用充填部材19を流し込み、固化させる。なお、スライドゲート4の背面には、これにシール用充填部材19が付着しないように付着防止剤を予め塗布しておく。その後、横桁接合用ボルト27およびゲート接合用ボルト24を外して3分割状態に戻す。この際、シール用充填部材19は、仕切り板により簡単に分割される。なお、仕切り板は、撤去する。また、その際、スライドゲート4Bが運搬等により変形しないように、変形防止用補強材33を設置する。
【0033】
以上のようにすることによって、分岐構築現場では、スライドゲート4を所定位置に固定する作業を省略することができ、単に3分割されたスライドゲートを組み立てれば良い。
【0034】
分岐構築現場では、先ず、一方のシールドトンネル1をシールド掘削機3によって構築する。この際、例えば、第1ブロック4Aを構築後、ジャッキ28による押し込みを行う場合には、スライドゲート9(R)の断面位置がトンネル内側に偏心するために、ジャッキシューが当たる中心がシール用充填部材19(R)の位置になってシール用充填部材19(R)が砕ける恐れがある。そこで、図9、図10、図11に示すように、スライドゲート9(R)の一端に仮受けリング29を仮止めして、シール用充填部材19(R)にジャッキ圧がかからないようにし、スライドゲート9(R)の他端に推力伝達部材30を取り付ける。なお、この場合、ジャッキ28を直接、セグメント22に当てて押し込みを行う場合と比べて、スライドゲート9(R)がセグメント22の中心側に寄るので、縦リブ補強材31をセグメント22の縦リブ22Aに固定してセグメント22を補強する。縦リブ補強材31は、ゲート引抜き部セグメントの縦桁高さが制約される場合に、その補強も兼ねる。
【0035】
同様にして、第2、第3ブロック4B、4Cを構築する。分割されたスライドゲート、および、分割された上下部横梁の接合は、上述したようにして結合し、一体化する。
【0036】
このようにして、一方のシールドトンネル1の構築が完了したら、次に、他方のシールドトンネル2を一方のシールドトンネル1に分岐構築するのであるが、この構築方法として、一方のシールドトンネル1内からシールド掘削機3を発進させて構築する場合と、シールド掘削機3を一方のシールドトンネル1に到達させて構築する場合とがあるが、ここでは、後者を例にとって説明する。
【0037】
図1(a)に示すように、シールド掘削機3が一方のシールドトンネル1の開口部(スライドゲート装置4)に到達したら、図1(b)および図8に示すように、スライドゲート装置4に、閉塞板17Aにより閉塞されたエントランスボックス17をスライドゲート装置4におけるゲート支持枠8のナット18を使用してボルト止めする。次に、エントランスボックス17内に高濃度泥水34を充填して、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持する。
【0038】
なお、高濃度泥水34としては、例えば、粘土鉱物系材料と急硬化剤との混合物で、粘性が1.5〜3万cpの高濃度泥水を使用する。
【0039】
このようにして、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持したら、図1(c)および図8に示すように、スライドゲート9のフック11にジャッキまたはチェーンブロック等を装着して、スライドゲート9を引き抜く。この引き抜きに際しては、セルフシール20およびOリング21の二重止水機能によって漏水の恐れはない。スライドゲート9を引き抜くと、シール用充填部材19は、スライドゲート9から離脱し、開口部10は、シール用充填部材19によって塞がれる。
【0040】
次に、同図(d)に示すように、シールド掘削機3をシール用充填部材19を切り欠いてエントランスボックス17内に到達させる。この際、エントランスパッキン35を膨らませて止水する。そして、閉塞板17Aを撤去し、他方のシールドトンネル2を一方のシールドトンネル1に接合することによって分岐構築が完了する。
【0041】
以上のようにして、一方のシールドトンネル1にシールド掘削機3を到達させることによって、他方のシールドトンネルの分岐構築が行われる。
【0042】
以上は、一方のシールドトンネルにシールド掘削機を到達させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合であるが、一方のシールドトンネルからシールド掘削機を発進させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図15は、この発明の、シールド掘削機の発進によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、スライドゲート装置が設置された一方のシールドトンネルを示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスが取り付けられ、シールド掘削機が据え付けられた状態を示す正面図、同図(c)は、エントランスボックスにシールド掘削機を挿入し、エントランスパッキンを膨らませ、高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機の発進状態を示す正面図である。
【0044】
先ず、図15(a)に示すように、一方のシールドトンネル1を構築する。次に、同図(b)に示すように、スライドゲート装置4にエントランスボックス17を取り付けると共に、シールド掘削機3を据え付ける。次に、同図(c)に示すように、シールド掘削機3をエントランスボックス17内に挿入し、エントランスパッキン35を膨らませて止水し、この後、エントランスボックス17内に高濃度泥水34を充填して、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持する。そして、スライドゲート9を開き、シールド掘削機3を発進させる。これによって、一方のシールドトンネル1からシールド掘削機3を発進させることによって、他方のシールドトンネルの分岐構築が行われる。
【0045】
以上は、他方のトンネルをシールド掘削機により構築する場合であるが、ヒューム管推進トンネル等であっても良い。
【0046】
上述した、この発明によれば、従来技術のように、地盤改良を行う必要がないので、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、シールド掘削機がスライドゲート装置に到達した状態を示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(c)は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機が止水されたエントランスボックス内に推進後、エントランスパッキンを膨らませた状態を示す正面図である。
【図2】一方のシールドトンネルに構築されたスライドゲート装置を示すトンネル内側から見た側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】スライドゲートの結合部分を示す断面図である。
【図8】スライドゲートを引き抜いた状態を示す断面図である。
【図9】分割スライドゲートにジャッキが当接された状態を示す断面図である。
【図10】図9のジャッキが当接部分を示す断面図である。
【図11】図9の推力伝達部材が当てがわれたスライドゲート部分を示す断面図である。
【図12】図11のC−C線断面図である。
【図13】掘削中のシールド掘削機を示す概略断面図である。
【図14】シールド掘削機のテールシール部分を示す拡大図である。
【図15】この発明の、シールド掘削機の発進によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、スライドゲート装置が設置された一方のシールドトンネルを示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスが取り付けられ、シールド掘削機が据え付けられた状態を示す正面図、同図(c)は、エントランスボックスにシールド掘削機を挿入し、エントランスパッキンを膨らませ、高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機の発進状態を示す正面図である。
【図16】従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:一方のシールドトンネル
2:他方のシールドトンネル
3:シールド掘削機
3A:テールシール
4:スライドゲート装置
4A:第1ブロック
4B:第2ブロック
4C:第3ブロック
5A:右側縦梁
5B:左側縦梁
6A:上部横梁
6B:下部横梁
7:梁材
8:ゲート支持枠
8A:開口部
9:スライドゲート
9A:後面
10:開口部
10A:面板
10B:面板
11:フック
12:ゲート支持ボルト
13:上部ゲート支持板
14:下部ゲート支持板
15:ゲート押し込みボルト
16:背面パッキン
17:エントランスボックス
17A:閉塞板
18:ナット
19:シール用充填部材
20:セルフシール
21:Oリング
22:セグメント
22A:縦リブ
23:連結板
24:ボルト
25:ナット
26:コーキング材
27:ボルト
28:ジャッキ
29:仮受けリング
30:推力伝達部材
31:縦リブ補強材
32:充填部材保持金具
33:変形防止用補強材
34:高濃度泥水
35:エントランスパッキン
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールドトンネルの分岐構築方法およびスライドゲート装置、特に、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のシールドトンネルまたはヒューム管推進トンネル等のトンネルを接合する際に、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない、シールドトンネルの分岐構築方法およびこれに使用されるスライドゲート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のトンネルを接合してシールドトンネルを分岐構築するには、立坑を構築して行うのが通常であった。しかし、過密化した都市部では用地不足や地価の高騰等の理由によって、立坑用地の確保が困難となっている。
【0003】
そこで、立坑を構築しないでシールドトンネルの分岐構築が行われている。この構築方法は、例えば、図16に示すように、横方向に構築された一方のシールドトンネル1に他方のシールドトンネル2を接合する場合、シールド掘削機3の到達部W(図中、ハッチングで示す)を地盤改良工法によって固め、シールド掘削機3が一方のシールドトンネル1に到達したら一方のシールドトンネル1の側部を部分的に開口し、シールド掘削機3を一方のシールドトンネル1内に到達させて、接合を完了するものであった。以下、この構築方法を従来技術という。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、以下のような問題があった。
【0005】
(1)地盤改良費用が高価であるので、分岐構築費用がかかる。
(2)地盤改良工事のため交通に支障を来たす恐れがある。
(3)地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じる恐れがある。
【0006】
従って、この発明の目的は、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない、シールドトンネルの分岐構築方法およびこれに使用されるスライドゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
請求項1記載の発明は、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のシールドトンネルを接合する、シールドトンネルの分岐構築方法において、前記一方のシールドトンネルの構築時に、前記他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置を設置し、前記スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、前記他方のトンネルを掘削する掘削機の発進あるいは到達時に、前記スライドゲート装置のスライドゲートを開くことに特徴を有するものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持するために、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填することに特徴を有するものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、スライドゲートを一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割し、一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結することに特徴を有するものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、スライドゲートの背面にシール用充填部材を、スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能に設けることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に形成された、掘削機の発進あるいは到達のための開口部に他方のトンネルを接合して、シールドトンネルの分岐構築を行う際に、前記掘削機の発進あるいは到達するまでの間、前記開口部を閉鎖しておくための、シールドトンネルのスライドゲート装置において、前記一方のシールドトンネルにスライドゲートが前記一方のシールドトンネルに沿って開閉可能に設けられていることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、スライドゲートは、一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割され、一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結されることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、スライドゲートの背面には、スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能なシール用充填部材が設けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、地盤改良が不要となる結果、分岐構築費用を大幅に削減することができ、また、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、この例は、一方のシールドトンネルにシールド掘削機を到達させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合である。
【0017】
図1は、この発明の、シールド掘削機の到達によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、シールド掘削機がスライドゲート装置に到達した状態を示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(c)は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機が止水されたエントランスボックス内に推進後、エントランスパッキンを膨らませた状態を示す正面図である。
【0018】
図2は、一方のシールドトンネルに構築されたスライドゲート装置を示すトンネル内側から見た側面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図3の部分拡大図、図5は、図2のB−B線断面図、図6は、図5の部分拡大図、図7は、スライドゲートの結合部分を示す断面図である。
【0019】
図8は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す断面図、図9は、分割スライドゲートにジャッキが当接された状態を示す断面図、図10は、図9のジャッキ当接部分を示す断面図、図11は、図9の推力伝達部材が当てがわれたスライドゲート部分を示す断面図、図12は、図11のC−C線断面図、図13は、掘削中のシールド掘削機を示す概略断面図、図14は、シールド掘削機のテールシール部分を示す拡大図である。
【0020】
先ず、この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法に使用するスライドゲート装置について説明する。なお、この例は、スライドゲートを3分割したものであるが、分割数は、これに限定されない。
【0021】
図2から図12において、4は、横方向に構築された一方のシールドトンネル1の側部に取り付けられたスライドゲート装置である。スライドゲート装置4は、右側、左側縦梁5A、5Bと上部、下部横梁6A、6Bとを四角形状に組んだ梁材7と、梁材7に固定された開口部10が形成されたゲート支持枠8と、ゲート支持枠8に水平方向、すなわち、シールドトンネル1方向(図2中、矢印で示す)に移動可能に設けられた四角形状のスライドゲート9とを備えている。右側縦梁5Aには、図4に示すように、スリットSが形成され、スリットSからスライドゲート9が出入りする。
【0022】
右側、左側縦梁5A、5B、ゲート支持枠8の鉛直部分およびスライドゲート9は、その鉛直方向に一方のシールドトンネル1の曲率に合わせて円弧状に湾曲している。ゲート支持枠8は、開口部10が形成された2枚の面板10A、10Bを梁材7の内側および外側に固定することによって構成されている。なお、内側面板10Aには、シールド掘削機3の外径に応じた大きさの矩形状開口が形成され、外側面板10Bには、円形状開口が形成されている。スライドゲート9の一端には、フック11が取り付けられていて、ジャッキまたはチェーンブロック等によりスライドゲート9を水平方向に引き抜くことができる。
【0023】
上部横梁6Aには、複数本のゲート支持ボルト12が取り付けられている。図6に示すように、各ゲート支持ボルト12は、上部ゲート支持板13を介してスライドゲート9の上端と接している。スライドゲート9の下端は、下部ゲート支持板14を介して下部横梁6Bに接している。ゲート支持ボルト12を締めれば、スライドゲート9は、上部ゲート支持板13を介して下部ゲート支持板14に押し付けられる。なお、下部ゲート支持板14にゲート支持ボルト12を設けて上下からスライドゲート9を押し付けても良い。
【0024】
ゲート支持枠8の内側の面板10Aには、その全周に亘って間隔をあけて複数本のゲート押し込みボルト15が取り付けられている。ゲート支持枠8の面板10Bの内面には、その全周に亘って四角形状に背面パッキン16が取り付けられている。ゲート押し込みボルト15を締めれば、スライドゲート9は、背面パッキン16に押し付けられて、水密性が保たれる。面板10Aのゲート押し込みボルト15の内側には、エントランスボックス17をボルト止めするためのナット18が複数個取り付けられている。
【0025】
スライドゲート9の背面には、シール用充填部材19が設けられている。シール用充填部材19は、図13および図14に示すように、一方のシールドトンネル1の掘削時、シールド掘削機3のテールシール3Aによるシール機能が損なわれないようにするためのものである。シール用充填部材19は、シールド掘削機3により容易に開口されるように、発泡モルタル等の硬化度の小さい材料からなり、スライドゲート9の開放時にスライドゲート9の背面から容易に離脱するように取り付けられている。なお、スライドゲート9の開放前にシール用充填部材19がスライドゲート9から脱落しないように、外側面板10Bの円形開口に沿って設けられた充填部材保持金具32を介してシール用充填部材19が取り付けられている。
【0026】
ゲート支持枠8の一端側には、図4に示すように、スライドゲート9の引き抜きに伴うスリットSからの漏水を防止するために、セルフシール20およびOリング21からなる二重止水機構が設けられている。なお、これらのシール機構は、何れか一方でも良い。
【0027】
上述のように構成されているスライドゲート装置4は、第1、第2および第3ブロック4A、4B、4Cに3分割され、各ブロック幅は、セグメント22の幅と一致している。第1ブロック4Aは、右側縦梁5A、分割された上部、下部横梁6A(R)、6B(R)、分割されたゲート支持枠8(R)、背面にシール用充填部材19(R)が設けられた分割されたスライドゲート9(R)から構成されている。第2ブロック4Bは、分割された上部、下部横梁6A(C)、6B(C)、分割されたゲート支持枠8(C)、背面にシール用充填部材19(C)が設けられた分割されたスライドゲート9(C)から構成されている。第3ブロック4Cは、左側縦梁5B、分割された上部、下部横梁6A(L)、6B(L)、分割されたゲート支持枠8(L)、背面にシール用充填部材19(L)が設けられた分割されたスライドゲート9(L)から構成されている。ここで、R、C、Lは、図2において、右側(Right)、中央(Center)、左側(Left)を意味する。
【0028】
図7に示すように、スライドゲート9同士は、連結板23をボルト止めすることによって連結される。スライドゲート9の背面側の接合部分は、スライドゲート9の背面にシール用充填部材19が設けられるために、ボルト24用のナット25は、予めスライドゲート9に埋め込まれている。ボルト24の周囲の空間には、セルフシール3Aの損傷防止のためにコーキング材26が充填されている。図7は、スライドゲート9(R)と9(C)との接合構造であるが、スライドゲート9(C)と9(L)との接合も同様である。
【0029】
分割された上部横梁6A(R)、6A(C)、6A(L)、分割された下部横梁6B(R)、6B(C)、6B(L)は、それぞれ、ボルト27によって連結されている。
【0030】
次に、以上のように構成されている、この発明のスライドゲート装置4を使用した、この発明のシールドトンネルの分岐構築方法を説明する。
【0031】
先ず、工場段階での製作方法について説明する。
【0032】
工場では、3つに分割されたスライドゲート4を仮組みし、同時に分割されたスライドゲート4も一体化する。その上でゲート押し込みボルト15、ゲート支持ボルト12によりスライドゲート4を所定位置に固定する。次に、ゲート背面の接続位置に沿って仕切り板を配置した後、ゲート背面側にシール用充填部材19を流し込み、固化させる。なお、スライドゲート4の背面には、これにシール用充填部材19が付着しないように付着防止剤を予め塗布しておく。その後、横桁接合用ボルト27およびゲート接合用ボルト24を外して3分割状態に戻す。この際、シール用充填部材19は、仕切り板により簡単に分割される。なお、仕切り板は、撤去する。また、その際、スライドゲート4Bが運搬等により変形しないように、変形防止用補強材33を設置する。
【0033】
以上のようにすることによって、分岐構築現場では、スライドゲート4を所定位置に固定する作業を省略することができ、単に3分割されたスライドゲートを組み立てれば良い。
【0034】
分岐構築現場では、先ず、一方のシールドトンネル1をシールド掘削機3によって構築する。この際、例えば、第1ブロック4Aを構築後、ジャッキ28による押し込みを行う場合には、スライドゲート9(R)の断面位置がトンネル内側に偏心するために、ジャッキシューが当たる中心がシール用充填部材19(R)の位置になってシール用充填部材19(R)が砕ける恐れがある。そこで、図9、図10、図11に示すように、スライドゲート9(R)の一端に仮受けリング29を仮止めして、シール用充填部材19(R)にジャッキ圧がかからないようにし、スライドゲート9(R)の他端に推力伝達部材30を取り付ける。なお、この場合、ジャッキ28を直接、セグメント22に当てて押し込みを行う場合と比べて、スライドゲート9(R)がセグメント22の中心側に寄るので、縦リブ補強材31をセグメント22の縦リブ22Aに固定してセグメント22を補強する。縦リブ補強材31は、ゲート引抜き部セグメントの縦桁高さが制約される場合に、その補強も兼ねる。
【0035】
同様にして、第2、第3ブロック4B、4Cを構築する。分割されたスライドゲート、および、分割された上下部横梁の接合は、上述したようにして結合し、一体化する。
【0036】
このようにして、一方のシールドトンネル1の構築が完了したら、次に、他方のシールドトンネル2を一方のシールドトンネル1に分岐構築するのであるが、この構築方法として、一方のシールドトンネル1内からシールド掘削機3を発進させて構築する場合と、シールド掘削機3を一方のシールドトンネル1に到達させて構築する場合とがあるが、ここでは、後者を例にとって説明する。
【0037】
図1(a)に示すように、シールド掘削機3が一方のシールドトンネル1の開口部(スライドゲート装置4)に到達したら、図1(b)および図8に示すように、スライドゲート装置4に、閉塞板17Aにより閉塞されたエントランスボックス17をスライドゲート装置4におけるゲート支持枠8のナット18を使用してボルト止めする。次に、エントランスボックス17内に高濃度泥水34を充填して、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持する。
【0038】
なお、高濃度泥水34としては、例えば、粘土鉱物系材料と急硬化剤との混合物で、粘性が1.5〜3万cpの高濃度泥水を使用する。
【0039】
このようにして、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持したら、図1(c)および図8に示すように、スライドゲート9のフック11にジャッキまたはチェーンブロック等を装着して、スライドゲート9を引き抜く。この引き抜きに際しては、セルフシール20およびOリング21の二重止水機能によって漏水の恐れはない。スライドゲート9を引き抜くと、シール用充填部材19は、スライドゲート9から離脱し、開口部10は、シール用充填部材19によって塞がれる。
【0040】
次に、同図(d)に示すように、シールド掘削機3をシール用充填部材19を切り欠いてエントランスボックス17内に到達させる。この際、エントランスパッキン35を膨らませて止水する。そして、閉塞板17Aを撤去し、他方のシールドトンネル2を一方のシールドトンネル1に接合することによって分岐構築が完了する。
【0041】
以上のようにして、一方のシールドトンネル1にシールド掘削機3を到達させることによって、他方のシールドトンネルの分岐構築が行われる。
【0042】
以上は、一方のシールドトンネルにシールド掘削機を到達させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合であるが、一方のシールドトンネルからシールド掘削機を発進させて、他方のシールドトンネルを分岐構築する場合について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図15は、この発明の、シールド掘削機の発進によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、スライドゲート装置が設置された一方のシールドトンネルを示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスが取り付けられ、シールド掘削機が据え付けられた状態を示す正面図、同図(c)は、エントランスボックスにシールド掘削機を挿入し、エントランスパッキンを膨らませ、高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機の発進状態を示す正面図である。
【0044】
先ず、図15(a)に示すように、一方のシールドトンネル1を構築する。次に、同図(b)に示すように、スライドゲート装置4にエントランスボックス17を取り付けると共に、シールド掘削機3を据え付ける。次に、同図(c)に示すように、シールド掘削機3をエントランスボックス17内に挿入し、エントランスパッキン35を膨らませて止水し、この後、エントランスボックス17内に高濃度泥水34を充填して、エントランスボックス17内の圧力を外圧と同等以上に維持する。そして、スライドゲート9を開き、シールド掘削機3を発進させる。これによって、一方のシールドトンネル1からシールド掘削機3を発進させることによって、他方のシールドトンネルの分岐構築が行われる。
【0045】
以上は、他方のトンネルをシールド掘削機により構築する場合であるが、ヒューム管推進トンネル等であっても良い。
【0046】
上述した、この発明によれば、従来技術のように、地盤改良を行う必要がないので、地盤改良工事中、交通に支障を来たす恐れがなく、しかも、地盤改良の不良等により施工上のトラブルが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の、シールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、シールド掘削機がスライドゲート装置に到達した状態を示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、エントランスボックス内に高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(c)は、スライドゲートを引き抜いた状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機が止水されたエントランスボックス内に推進後、エントランスパッキンを膨らませた状態を示す正面図である。
【図2】一方のシールドトンネルに構築されたスライドゲート装置を示すトンネル内側から見た側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】スライドゲートの結合部分を示す断面図である。
【図8】スライドゲートを引き抜いた状態を示す断面図である。
【図9】分割スライドゲートにジャッキが当接された状態を示す断面図である。
【図10】図9のジャッキが当接部分を示す断面図である。
【図11】図9の推力伝達部材が当てがわれたスライドゲート部分を示す断面図である。
【図12】図11のC−C線断面図である。
【図13】掘削中のシールド掘削機を示す概略断面図である。
【図14】シールド掘削機のテールシール部分を示す拡大図である。
【図15】この発明の、シールド掘削機の発進によるシールドトンネルの分岐構築方法を示す工程図であり、同図(a)は、スライドゲート装置が設置された一方のシールドトンネルを示す正面図、同図(b)は、スライドゲート装置にエントランスボックスが取り付けられ、シールド掘削機が据え付けられた状態を示す正面図、同図(c)は、エントランスボックスにシールド掘削機を挿入し、エントランスパッキンを膨らませ、高濃度泥水を充填した状態を示す正面図、同図(d)は、シールド掘削機の発進状態を示す正面図である。
【図16】従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:一方のシールドトンネル
2:他方のシールドトンネル
3:シールド掘削機
3A:テールシール
4:スライドゲート装置
4A:第1ブロック
4B:第2ブロック
4C:第3ブロック
5A:右側縦梁
5B:左側縦梁
6A:上部横梁
6B:下部横梁
7:梁材
8:ゲート支持枠
8A:開口部
9:スライドゲート
9A:後面
10:開口部
10A:面板
10B:面板
11:フック
12:ゲート支持ボルト
13:上部ゲート支持板
14:下部ゲート支持板
15:ゲート押し込みボルト
16:背面パッキン
17:エントランスボックス
17A:閉塞板
18:ナット
19:シール用充填部材
20:セルフシール
21:Oリング
22:セグメント
22A:縦リブ
23:連結板
24:ボルト
25:ナット
26:コーキング材
27:ボルト
28:ジャッキ
29:仮受けリング
30:推力伝達部材
31:縦リブ補強材
32:充填部材保持金具
33:変形防止用補強材
34:高濃度泥水
35:エントランスパッキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のトンネルを接合する、シールドトンネルの分岐構築方法において、
前記一方のシールドトンネルの構築時に、前記他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置を設置し、前記スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、前記他方のトンネルを掘削する掘削機の発進あるいは到達時に、前記スライドゲート装置のスライドゲートを開くことを特徴とする、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項2】
前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持するために、前記エントランスボックス内に高濃度泥水を充填することを特徴とする、請求項1記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項3】
前記スライドゲートを前記一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割し、前記一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結することを特徴とする、請求項1または2記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項4】
前記スライドゲートの背面にシール用充填部材を、前記スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能に設けることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項5】
横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に形成された、掘削機の発進あるいは到達のための開口部に他方のトンネルを接合して、シールドトンネルの分岐構築を行う際に、前記掘削機の発進あるいは到達するまでの間、前記開口部を閉鎖しておくための、シールドトンネルのスライドゲート装置において、
前記一方のシールドトンネルにスライドゲートが前記一方のシールドトンネルに沿って開閉可能に設けられていることを特徴とする、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【請求項6】
前記スライドゲートは、前記一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割され、前記一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結されることを特徴とする、請求項5記載の、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【請求項7】
前記スライドゲートの背面には、前記スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能なシール用充填部材が設けられていることを特徴とする、請求項5または6記載の、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【請求項1】
横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に他方のトンネルを接合する、シールドトンネルの分岐構築方法において、
前記一方のシールドトンネルの構築時に、前記他方のトンネルとの接合位置に予めスライドゲート装置を設置し、前記スライドゲート装置にエントランスボックスを取り付け、前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持した後、前記他方のトンネルを掘削する掘削機の発進あるいは到達時に、前記スライドゲート装置のスライドゲートを開くことを特徴とする、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項2】
前記エントランスボックス内の圧力を外圧と同等以上に維持するために、前記エントランスボックス内に高濃度泥水を充填することを特徴とする、請求項1記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項3】
前記スライドゲートを前記一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割し、前記一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結することを特徴とする、請求項1または2記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項4】
前記スライドゲートの背面にシール用充填部材を、前記スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能に設けることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の、シールドトンネルの分岐構築方法。
【請求項5】
横方向に構築された一方のシールドトンネルの側部に形成された、掘削機の発進あるいは到達のための開口部に他方のトンネルを接合して、シールドトンネルの分岐構築を行う際に、前記掘削機の発進あるいは到達するまでの間、前記開口部を閉鎖しておくための、シールドトンネルのスライドゲート装置において、
前記一方のシールドトンネルにスライドゲートが前記一方のシールドトンネルに沿って開閉可能に設けられていることを特徴とする、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【請求項6】
前記スライドゲートは、前記一方のシールドトンネルのセグメント幅に合わせて複数枚に分割され、前記一方のシールドトンネルの構築時に一体的に連結されることを特徴とする、請求項5記載の、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【請求項7】
前記スライドゲートの背面には、前記スライドゲートの開放時に前記背面から離脱可能なシール用充填部材が設けられていることを特徴とする、請求項5または6記載の、シールドトンネルのスライドゲート装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−132239(P2006−132239A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324068(P2004−324068)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]