説明

シールド掘進機およびチャンバ内の凍結方法

【課題】 薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部内への地下水の流入を阻止し、チャンバ内の不具合を好適に解消することができるシールド掘進機およびシールド掘進機におけるチャンバ内の凍結方法を提供する。
【解決手段】 シールド掘進機1におけるカッタヘッド11および仕切り板12には、チャンバ13内における土砂や泥水を凍結させる凍結管20が設けられている。チャンバ13内に土塊や岩などの異物Xが混入して排泥管16が取り付けられた取込口12Aが閉塞した際、凍結管20に冷凍液を循環供給して異物Xの周囲における泥水を凍結させてアイスバルブBを形成する。その状態で排泥管16を仕切り板12Aから取り外して、異物Xを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機およびシールド掘進機におけるチャンバ内に滞留する異物を除去するなどのためにチャンバ内の土砂等を凍結させるチャンバ内の凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土圧式シールド掘進機においては、外筒部の前面にカッタヘッドが設けられており、このカッタヘッドにおけるビットで地山を掘削しながら掘進を行う。カッタヘッドの後方には隔壁が形成されており、カッタヘッドと隔壁との間におけるチャンバには、カッタヘッドで掘削した土砂が充満している。土圧式シールド掘進機では、チャンバに充満する土砂をスクリューコンベアなどで排出するようにしている。土圧式シールド掘進機において、チャンバ内に岩などの大きな異物が混入すると、この異物がスクリューコンベアの入口を塞いでしまい、土砂の排出の障害となることあるという問題があった。
【0003】
このようにチャンバに異物が混入した場合、チャンバ内に作業員が外筒部内とチャンバとを連通させて連通口を形成し、その連通口を通じてチャンバ内の異物を外筒部内に引き取ることが求められる。ところが、外筒部内とチャンバとを連通させようとすると、チャンバ内あるいは周囲の地山に含まれる地下水が外筒部内に流入してしまうこと防止するため、連通口を止水することが求められる。
【0004】
この連通口を止水するために、たとえば、土圧式シールド掘進機の掘進方向前方の地山に薬液を注入して止水性を向上させた地盤改良領域を形成する作業領域形成方法がある(たとえば特許文献1)。この作業領域形成方法では、カッタヘッドの交換作業について説明しているが、地盤改良領域にシールド掘進機が到達したときにチャンバ内の泥水を排出させている。このときに、チャンバ内の異物を取り除くことができる。止水性を向上させた地盤では、チャンバ内に対する地下水の流入を防止することができることから、外筒部の内部への地下水の流入を阻止しながらチャンバ内の異物を容易に取り除くことができる。
【特許文献1】特開2007−77682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された作業領域形成方法では、シールド掘進機の掘進方向前方の地山を地盤改良する必要がある。地盤改良を行うには時間が掛かることから、その分異物除去作業も時間が掛かることになるという問題がある。また、地盤改良は、主に地上から薬液を注入することによって行われる。このため、チャンバ内に薬液が流入した場合に、その薬液を除去する作業が発生したり、地盤に薬液を残してしまったりという問題もある。この問題は、異物除去作業を含めて、たとえばチャンバ内におけるアジテータなどの機材を交換する作業といったチャンバ内の不具合を解消する際にも生じるものである。
【0006】
そこで、本発明の課題は、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部内への地下水の流入を阻止し、チャンバ内の不具合を好適に解消することができるシールド掘進機およびシールド掘進機におけるチャンバ内の凍結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るシールド掘進機は、前部が開口する外筒部の内側と外筒部の前方外側部とを仕切る仕切り板および外筒部における前方に地盤を掘削するカッタ部が設けられ、仕切り板とカッタ部との間にチャンバが形成され、チャンバに充填物が滞留しており、チャンバに取り込まれた充填物を凍結させ、外筒部内への地下水の流入を阻止するアイスバルブを形成する凍結装置が設けられているものである。
【0008】
本発明に係るシールド掘進機においては、チャンバに取り込まれた充填物を凍結させ、外筒部内への地下水の流入を阻止するアイスバルブを形成する凍結装置が設けられている。このため、チャンバ内における不具合を解消する際に、止水を施したい部分に凍結装置によってアイスバルブを形成することにより、外筒部内への地下水の流入を阻止することができる。このような凍結装置を用いることにより、薬液注入による地盤改良の必要もないので、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部内への地下水の流入を阻止し、チャンバ内の不具合を好適に解消することができる。
【0009】
なお、本発明における「充填物」とは、チャンバ内に充填される土砂や泥水をいい、いわゆる土圧式シールド掘進機では「土砂」をいい、いわゆる泥水式シールド掘進機では「土砂および泥水」をいう。
【0010】
ここで、チャンバ内に異物が侵入した際における異物の周囲にアイスバルブを形成する態様とすることができる。また、仕切り板に取り付けられ、仕切り板から取り外すことによりチャンバと外筒部の内側とが連通する付属機器が設けられており、凍結装置は、チャンバ内から付属機器に至るまでの間に介在される充填物を凍結させてアイスバルブを形成する態様とすることもできる。本発明における「仕切り板に取り付けられ、仕切り板から取り外すことによりチャンバと外筒部の内側とが連通する付属機器」としては、土砂取込管、アジテータ、スクリューコンベア、排泥バルブなどを挙げることができる。
【0011】
さらに、凍結装置が、仕切り板およびカッタ部のうちの少なくとも一方に設けられている態様とすることもできる。
【0012】
凍結装置は、チャンバを囲む仕切り板およびカッタ部のうちの少なくとも一方に設けるのが好適となる。
【0013】
また、カッタ部は、外筒部の延在方向に沿った軸周りに回転可能であるカッタヘッドを備えており、凍結装置が、カッタヘッドに取り付けられている態様とすることもできる。
【0014】
このように、外筒部の延在方向に沿った軸周りに回転可能であるカッタヘッドに凍結装置が設けられていることにより、チャンバ内におけるアイスバルブを形成しようとする位置が変化した場合でも、アイスバルブを形成しようとする位置に応じて凍結装置を移動させることができる。
【0015】
さらに、異物の周囲における充填物に対して、凍結防止剤を添加する凍結防止剤添加装置が設けられており、凍結装置は、異物の周囲における充填物に対して凍結防止剤を添加した後、凍結防止剤を添加した充填物の周囲の充填物を凍結させる態様とすることもできる。
【0016】
このように、異物の周囲における充填物に対して凍結防止剤を添加することにより、異物を除去するにあたり、凍結した充填物を破壊する作業を少なくすることができる。
【0017】
また、上記課題を解決した本発明に係るシールド掘進機におけるチャンバ内の凍結方法は、前部が開口する外筒部の内側と、外筒部の前方外側部とを仕切る仕切り板および外筒部における前方に地盤を掘削するカッタ部が設けられ、仕切り板とカッタ部の間にチャンバが形成され、チャンバに充填物が滞留させられたシールド掘進機におけるチャンバ内に侵入した異物を除去するにあたり、チャンバに取り込まれた充填物を凍結させ、充填物の外筒部内への流入を阻止するアイスバルブを凍結装置によって形成するものである。
【0018】
ここで、チャンバ内に異物が侵入した際における異物の周囲にアイスバルブを形成した後、異物を除去する態様とすることができる。
【0019】
また、異物の周囲における充填物に対して凍結防止剤を添加し、続いて凍結防止剤が添加された充填物の周囲の充填物を凍結させ、凍結させられた充填物とともに異物を除去する態様とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシールド掘進機およびシールド掘進機におけるチャンバ内の凍結方法によれば、薬液注入による地盤改良を行うことなく、チャンバ内の不具合を好適に解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。図1は第1の実施形態に係るシールド掘進機の側断面図、図2は第1の実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
【0022】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機1は、いわゆる泥水式シールド掘進機であり、外筒部10を備えている。外筒部10の前端開口部よりも前方位置には、カッタ部となるカッタヘッド11が設けられている。さらに、外筒部10の前端部よりやや後方位置に仕切り板12が設けられている。これらのカッタヘッド11と仕切り板12との間にチャンバ13が形成されている。
【0023】
カッタヘッド11の正面には、多数のカッタビット11Aが設けられている。カッタヘッド11は、回転軸14を介して仕切り板12に取り付けられている。この回転軸14が回転することによりカッタヘッド11が回転する。カッタヘッド11の回転によって地山がカッタビット11Aを削り、掘削が行われる。
【0024】
仕切り板12は、外筒部10の前方開口部を塞ぐようにして配設されている。この仕切り板12は、チャンバ13内における泥水やその周囲の地山に含まれる地下水の外筒部10の内部への浸入を阻止している。また、仕切り板12は、チャンバ13における泥水が外筒部10の内側に流入するのを防止している。
【0025】
仕切り板12における中央部には、回転軸14が接続されており、回転軸14の後方には、モータ15が接続されている。このモータ15の作動によって回転軸14および回転軸14に取り付けられたカッタヘッド11が回転する。
【0026】
仕切り板12の下方位置には、取込口12Aが形成されており、取込口12Aには排泥管16が接続されている。また、仕切り板12の上方位置には、図示しない送泥管が設けられている場合もある。排泥管16は、チャンバ13内の泥水を排出する。排泥管16は、取込口12Aを貫通しており、排泥管16の中にスクリューコンベアが設けられていたり、排泥管16の後方に排泥バルブが設けられていたりする場合もある。排泥管16は、外筒部10の内側からチャンバ13内に向けてその先端がわずかに突出して配置されている。排泥管16によってチャンバ13から排出された泥水は、図示しないポンプによって外筒部10の外部に搬送される。
【0027】
仕切り板12の前面上部には、アジテータ17および攪拌棒18が取り付けられている。さらに、カッタヘッド11の後面側にも攪拌棒18が取り付けられている。これらのアジテータ17や攪拌棒18により、カッタヘッド11が回転している際などにチャンバ13内の泥水を攪拌している。
【0028】
チャンバ13内には、カッタヘッド11におけるカッタビット11Aで掘削された泥水が充満している。チャンバ13内における充填物である土砂や泥水は、排泥管16を介して外筒部10の内側に排出される。
【0029】
また、チャンバ13内の土砂や泥水は、シールド掘進機1における周囲の地山とつながっており、チャンバ13内の土砂や泥水に対しても地山中の地下水が流入している。この地下水は、仕切り板12によって外筒部10内への流入が阻止されている。ところが、仕切り板12には、掘削等に必要な機材が取り付けられており、これらの機材の取り付け位置を通じて外筒部10内へ地下水が流入することも阻止する必要がある。本実施形態では、仕切り板12に取り付けられた機器類である排泥管16およびアジテータ17が、仕切り板12に取り付けられ、仕切り板12から取り外すことにより13チャンバと10外筒部の内側とが連通する付属機器となる。
【0030】
さらに、外筒部10における後部には、シールドジャッキ19が設けられている。シールドジャッキ19は、シールドジャッキシリンダ19Bおよびシールドジャッキロッド19Aを備えており、シールドジャッキロッド19Aの先端は、組み立てられたセグメントSを押圧する。シールドジャッキロッド19AでセグメントSを押圧することにより、セグメントSに反力をとってシールド掘進機1を前進させる。
【0031】
さらに、外筒部10の後端部には、テールシールTが設けられている。テールシールTは、シールド掘進機1の後端部において、セグメントSとシールド掘進機1との間を止水している。
【0032】
また、仕切り板12における取込口12Aの周囲およびカッタヘッド11には、本発明の凍結装置である凍結管20が設けられている。凍結管20は、冷媒タンク21に接続されており、図示しないポンプを作動させることにより、凍結管20に対してマイナス温度とされた冷却流体が循環供給される。この凍結管20に冷凍液が循環供給されることにより、チャンバ13内における取込口12Aの周囲近傍の土砂や泥水を凍結させることができる。なお、冷却流体としては、冷却流体が冷熱を有する液体や気体、たとえば液体窒素や液体空気などを用いることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係るシールド掘進機1におけるチャンバ内の凍結方法および異物除去方法の手順について説明する。本実施形態では、チャンバ13内における泥水が本発明の土砂となる。
【0034】
シールド掘進機1によって掘進を行っている際には、カッタヘッド11を回転させることにより、地山を掘削する。地山を掘削することによって発生する泥水は、排泥管16によって外筒部10内へと排出される。また、チャンバ13内では、カッタヘッド11や仕切り板12に取り付けられた攪拌棒18およびアジテータ17によって泥水が攪拌されている。こうして、チャンバ13内は、土砂や泥水が充満した状態に維持されている。
【0035】
掘進を進行するにあたり、チャンバ13内では、地山を掘削した際に大きな岩などと当たった場合、この岩がチャンバ13内に入り込んでしまうことがある。このような岩などの異物がチャンバ13内に発生し、取込口12Aの近傍に位置すると、異物が泥水の排出の妨げとなり、泥水をスムースに排出できなくなってしまう。この場合、たとえば排泥管16を取込口12Aから取り外して、取込口12Aの後方から異物を撤去する。ここで、異物が取込口12Aの近傍にあるときに問題が生じるので、取込口12Aの後方から異物を撤去するのが好適である。
【0036】
異物を取り除く際には、まず、カッタヘッド11の回転を止めて掘進を中断する。続いて、図3(a)に示すように、凍結管20内に冷凍液を循環供給する。凍結管20は、取込口12Aの周囲に設けられていることから、凍結管20内に冷凍液が循環供給されることにより、チャンバ13内における取込口12Aの周囲の温度が0℃以下となり、取込口12Aの周囲の泥水が凍結する。
【0037】
さらに凍結管20内における冷凍液の循環供給を継続すると、図3(b)に示すように、チャンバ13内における下方位置に、アイスバルブBが形成される。このアイスバルブBは、異物Xを包含し、取込口12Aを閉塞する大きさまで成長させる。
【0038】
異物Xを包含し、取込口12Aを閉塞する大きさまでアイスバルブBを成長させたら、図3(c)に示すように、排泥管16を取込口12Aから取り外す。こうして、取込口12Aから排泥管16を取り外したら、作業員は、このアイスバルブBを削りながら取込口12Aの内面の土砂を撤去する。
【0039】
アイスバルブBを削りながら土砂を撤去すると、やがて異物Xとぶつかることになる。それから、作業員は異物Xを取り出し、取込口12Aを通して外筒部10の内側へと排出する。また、異物Xが巨大である場合には、異物Xを砕きながら異物Xを取り出す。
【0040】
こうして、異物Xをチャンバ13内から取り出したら、取込口12Aに排泥管16を取り付けて、取込口12Aを閉塞する。それから、凍結管20に対する冷凍液の循環供給を停止して、チャンバ13内の温度を0度以上とする。この状態をある程度の時間維持することにより、図3(d)に示すように、アイスバルブBが消滅する。このとき、凍結管20に温水を循環供給することにより、アイスバルブBをさらに早期に消滅させることもできる。アイスバルブBが消滅したら、再びカッタヘッド11を回転させて、掘削を再開する。
【0041】
なお、取込口12Aが作業員がチャンバ13内に進入するにあたり、十分な大きさである場合には、作業員が取込口12Aからチャンバ13内に進入してアイスバルブBおよび異物を撤去する作業を行うこともできる。
【0042】
このように、本実施形態に係るシールド掘進機1では、凍結管20内に冷凍液を流通させることにより、チャンバ13内における排泥管16が貫通する取込口12Aの近傍位置を凍結させることができる。チャンバ13内における取込口12Aの近傍位置を凍結させることにより、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、異物除去作業を行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、凍結管の取り付け位置が異なっている。図4に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機2においては、排泥管16が先端部16Aおよび後方部16Bを備えており、先端部16Aと後方部16Bとは取り外し可能となっている。また、凍結管20が排泥管16における先端部16Aに取り付けられている。その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0044】
以上の構成を有する本実施形態に係るシールド掘進機2におけるチャンバ内の凍結方法および異物除去方法について説明する。本実施形態に係るシールド掘進機2では、排泥管16における後方部16Bで異物が混入したりして排泥管16を閉塞し、または土砂の流通が悪くなった場合に好適に用いられる。
【0045】
図4に示すように、排泥管16の下流位置において、異物Xが生じて排泥管16が閉塞し、または排泥管16内の土砂の流通が悪くなった場合に、凍結管20に冷凍液を循環供給し、排泥管16の先端部内における泥水を凍結してアイスバルブBを形成する。
【0046】
この状態で、排泥管16の後方部16Bを先端部16Aから取り外す。排泥管16の先端部16A内にアイスバルブBを形成することにより、チャンバ13内や地山の土砂に含まれる地下水が排泥管16を介して外筒部10の内側に流入するのが防止される。続いて、取り外した後方部16Bに含まれる異物Xを除去して、後方部16Bを先端部16Aに再度取り付ける。こうして、排泥管16の閉塞等を解消する。
【0047】
このように、本実施形態に係るシールド掘進機2では、凍結管20内に冷凍液を流通させることにより、排泥管16の先端部16Aにおける泥水を凍結させることができるので、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、異物除去作業を行うことができる。
【0048】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係るシールド掘進機3は、いわゆる土圧式シールド掘進機であり、図5に示すように、上記第1の実施形態に示す排泥管16に代えてスクリューコンベア30が用いられている。
【0049】
本実施形態に係るシールド掘進機3では、スクリューコンベア30の保守、点検、修理等のために、スクリューコンベア30を仕切り板12から取り外す場合に、アイスバルブBを形成する。スクリューコンベア30の保守、点検、修理等を行う際には、凍結管20に冷凍液を循環供給し、チャンバ13内におけるスクリューコンベア30の取り付け位置にアイスバルブBを形成する。その後、スクリューコンベア30を仕切り板12から取り外す。このとき、スクリューコンベア30の取り付け位置はアイスバルブBによって閉塞されていることから、チャンバ13内や地山の土砂に含まれる地下水が排泥管16を介して外筒部10の内側に流入するのが防止される。その後、スクリューコンベア30の保守等を行った後、スクリューコンベア30を仕切り板12に取り付ける。
【0050】
このように、本実施形態に係るシールド掘進機3では、チャンバ13内におけるスクリューコンベア30の取り付け位置における土砂を凍結させることにより、外筒部10内への地下水の流入を阻止することができる。したがって、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、スクリューコンベア30の保守、点検、修理等の作業を行うことができる。特に、土圧式であるシールド掘進機3では、チャンバ13内で土砂を攪拌してはいるものの、攪拌しきれない土砂が塊となって土塊が発生することがある。このような土塊についても、土砂を取り込む際の妨げとなる異物となる。
【0051】
また、図6に示すように、泥水式シールド掘進機1における排泥管16には、排泥バルブ16Vが設けられている。この排泥バルブ16Vの保守等を行う際にも、図5に示すスクリューコンベア30の保守等を行う場合と同様の処置をとることができる。ここでは、図6に示す排泥管16における先端部16Aに凍結管20を配設しておく。この凍結管20に冷凍液を循環供給することにより、排泥管16の先端部16Aにおける土砂が凍結してアイスバルブBを形成し、外筒部10内への地下水の流入を阻止する。
【0052】
この状態で排泥バルブ16Vを取り外して、排泥バルブ16Vの保守等を行う。このとき、排泥管16の先端部16AはアイスバルブBによって閉塞されていることから、外筒部10内への地下水の流入を阻止することができる。したがって、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、排泥バルブ16Vの保守等の作業を行うことができる。
【0053】
さらに、上記第1の実施形態におけるアジテータ17の保守等の作業を行う際にも、図5に示すスクリューコンベア30の保守等を行う場合と同様の処置をとることができる。この場合には、図7に示すように、仕切り板12におけるアジテータ17の取り付け位置に凍結管20を配設しておく。この凍結管20に冷凍液を循環供給することにより、チャンバ13内におけるアジテータ17の取り付け位置の周囲における土砂が凍結してアイスバルブBを形成し、外筒部10内への地下水の流入を阻止する。
【0054】
この状態でアジテータ17を取り外して、アジテータ17の保守等を行う。このとき、チャンバ13内におけるアジテータ17の取り付け位置はアイスバルブBによって閉塞されていることから、外筒部10内への地下水の流入を阻止することができる。したがって、薬液注入による地盤改良を行うことなく、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、アジテータ17の保守等の作業を行うことができる。
【0055】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図8に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機4は、チャンバ13内に凍結防止剤を添加する凍結防止剤添加装置40を備えている。凍結防止添加装置は、仕切り板12におけるチャンバ13側に設けられた吹出口41と、吹出口41に対して凍結防止剤を供給する供給装置42とを備えている。その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0056】
次に、本実施形態に係るシールド掘進機4におけるチャンバ内の凍結方法および異物除去方法について説明する。
【0057】
図9(a)に示すように、排泥管16の下流位置において、異物Xが生じて排泥管16が閉塞し、または排泥管16内の泥水の流通が悪くなった場合、まず、異物Xの周辺に対して吹出口41から凍結防止剤を噴出し、図9(b)に示すように、異物Xの周囲に凍結防止領域Yを形成する。凍結防止剤としては、適宜のものを用いることができ、たとえば塩化カルシウム、塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、蟻酸ナトリウム、またはこれらの混合体やこれらに増粘剤を添加したものなどを用いることができる。
【0058】
凍結防止剤を噴出して凍結防止領域Yを形成したら、凍結管20に冷凍液を循環供給して、図9(c)に示すように、凍結防止領域Yの周囲にアイスバルブBを形成する。このとき、アイスバルブB内においては、凍結防止剤が添加されている部分は凍結せず、泥水のままとなっている。このため、異物Xについても凍結していない状態となっている。その一方で、このアイスバルブBは、異物Xを包含し、取込口12Aを閉塞する大きさまで成長させる。
【0059】
その後、図9(d)に示すように、排泥管16を取込口12Aから取り外し、外筒部10の内側から見て開口した取込口12Aから作業員がチャンバ13内へと進入して、異物Xを除去する。このときに、異物Xの周囲には凍結防止領域Yが形成されていることから、作業員は、異物Xの除去を容易に行うことができる。以後は、上記第1の実施形態と同様の手順によってアイスバルブBを消滅させて、掘削を再開する。
【0060】
このように、アイスバルブBを形成するにあたり、異物Xの周囲に凍結防止剤を添加することにより、外筒部10内への地下水の流入を阻止しながら、異物Xを容易に除去することができる。また、図5に示す土圧式シールド掘進機3で凍結防止剤を添加する場合には、凍結防止剤添加装置としてスクリューコンベア30を用いることができる。この場合、泥水を排出する場合と逆に、スクリューコンベア30を作動させることにより、チャンバ13内に凍結防止剤を逆送することができる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記第1の実施形態では凍結管20を仕切り板12およびカッタヘッド11に設けているが、外筒部10の先端部であるフードプレートの下方位置や回転軸14に設けることもできる。また、冷凍管以外の凍結装置を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
【図3】チャンバ内の異物を除去する工程を示す工程図である。
【図4】第2の実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図5】第3の実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図6】第1の実施形態に係るシールド掘進機において、土砂取込管の先端にアイスバルブを形成した状態の側断面図である。
【図7】第1の実施形態に係るシールド掘進機において、アジテータの取り付け位置にアイスバルブを形成した状態の側断面図である。
【図8】第4の実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図9】第4の実施形態に係るシールド掘進機において、チャンバ内の異物を除去する工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0063】
1〜4…シールド掘進機
10…外筒部
11…カッタヘッド
11A…カッタビット
12…仕切り板
12A…取込口
13…チャンバ
14…回転軸
15…モータ
16A…先端部
16B…後方部
16…排泥管
16V…排泥バルブ
17…アジテータ
18…攪拌棒
19…シールドジャッキ
19A…シールドジャッキロッド
19B…シールドジャッキシリンダ
20…凍結管
21…冷媒タンク
30…スクリューコンベア
40…凍結防止剤添加装置
41…吹出口
42…供給装置
S…セグメント
T…テールシール
X…異物
Y…凍結防止領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部が開口する外筒部の内側と前記外筒部の前方外側部とを仕切る仕切り板および前記外筒部における前方に地盤を掘削するカッタ部が設けられ、前記仕切り板と前記カッタ部との間にチャンバが形成され、前記チャンバに充填物が滞留しており、
前記チャンバに取り込まれた充填物を凍結させ、前記外筒部内への地下水の流入を阻止するアイスバルブを形成する凍結装置が設けられていることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記チャンバ内に異物が侵入した際における前記異物の周囲に前記アイスバルブを形成する請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記仕切り板に取り付けられ、前記仕切り板から取り外すことにより前記チャンバと前記外筒部の内側とが連通する付属機器が設けられており、
前記凍結装置は、前記チャンバ内から前記付属機器に至るまでの間に介在される充填物を凍結させてアイスバルブを形成する請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記凍結装置が、前記仕切り板および前記カッタ部のうちの少なくとも一方に設けられている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記カッタ部は、前記外筒部の延在方向に沿った軸周りに回転可能であるカッタヘッドを備えており、
前記凍結装置が、前記カッタヘッドに取り付けられている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記異物の周囲における充填物に対して、凍結防止剤を添加する凍結防止剤添加装置が設けられており、
前記凍結装置は、前記異物の周囲における充填物に対して凍結防止剤を添加した後、凍結防止剤を添加した充填物の周囲の充填物を凍結させる請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【請求項7】
前部が開口する外筒部の内側と、前記外筒部の前方外側部とを仕切る仕切り板および前記外筒部における前方に地盤を掘削するカッタ部が設けられ、前記仕切り板と前記カッタ部の間にチャンバが形成され、前記チャンバに充填物が滞留させられたシールド掘進機における前記チャンバ内に侵入した異物を除去するにあたり、
前記チャンバに取り込まれた充填物を凍結させ、充填物の前記外筒部内への流入を阻止するアイスバルブを凍結装置によって形成することを特徴とするシールド掘進機におけるチャンバ内の凍結方法。
【請求項8】
請求項7に記載のチャンバ内の凍結方法における前記アイスバルブを、前記チャンバ内に異物が侵入した際における前記異物の周囲に形成した後、前記異物を除去することを特徴とするチャンバ内における異物の除去方法。
【請求項9】
前記異物の周囲における充填物に対して凍結防止剤を添加し、続いて前記凍結防止剤が添加された充填物の周囲の充填物を凍結させ、
凍結させられた前記充填物とともに前記異物を除去する請求項8に記載のチャンバ内における異物の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−46810(P2009−46810A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211015(P2007−211015)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】