説明

シールド部材

【課題】部品点数を少なくしつつ作業性、接触性、強度の向上を図ったシールド部材を提供する。
【解決手段】シールド本体31が、金属板の互いに対向する一端部31A1及び他端部31A2を重ねて設けたラップ部31A、及び、導電板の一端部31A1及び他端部31A2の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部31B、から構成される。シールドシェル32が、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の端部に嵌め込まれた蓋部32A、蓋部32Aの筒長さ方向Y1に沿った側面に設けられた開口32B、開口32Bの縁部に沿って突出して設けられたフランジ部F、及び、フランジ部Fに設けられたネジ穴H、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド部材に係り、特に、電線を包囲してノイズから保護するためのシールド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等に装備される各種センサ等は、ホーンやワイパモータのような高周波成分を持った電磁波ノイズ源からの伝導ノイズや、ネオンサイン等からの外来ノイズや、誘導ノイズ等が電線に伝わって入力されることがあり、これによって誤動作を引き起こしてしまうという問題が生じていた。また、近年、自動車内に使用される電線が大電流化、高電圧化になり、電磁波ノイズ対策が重要となってきた。
【0003】
そのため、自動車等に搭載される電線等においては、そのノイズ対策として、電線を導電性のシールド部材で包囲することが知られている。このようなシールド部材として、例えば図14に示されたものが提案されている。同図に示すように、シールド部材3は、金属パイプ8と、網組線9と、カシメリング10と、シールドシェル32と、カシメリング11と、を備えている。
【0004】
金属パイプ8は、円筒状に形成されていて、その筒内に複数の電線2が通される。網組線9は、導電性の金属細線をメッシュ状に編み込んだものであり、筒型に形成されている。網組線9の筒長さ方向の一端は、金属パイプ8の一端部の外周に嵌められている。これに対して、網組線9の筒長さ方向の他端は、後述するシールドシェル32の筒部に嵌められている。カシメリング10は、金属パイプ8との間に網組線9を挟むように金属パイプ8の一端部の外周に嵌められていて、金属パイプ8と網組線9とを固着するものである。
【0005】
シールドシェル32は、網組線9が取り付けられる筒部32Fと、フランジ部Fと、から構成されている。カシメリング11は、筒部32Fとの間に網組線9を挟むように筒部32Fの外周に嵌められていて、シールドシェル32と網組線9とを固着するものである。そして、上記シールドシェル32のフランジ部Fをネジなどによりシールドケースとしての機器ケース7に取り付けることにより、シールド部材3を接地することができる。
【0006】
しかしながら、上述したシールド部材3では、1)金属パイプ8の電線2を挿入する必要があり、作業性が悪い、2)電線2の端末処理が金属パイプ8を付けた状態のため作業性が悪い、3)金属パイプ8内部のバリやゴミにより品質が低下する、4)金属パイプ8の薄型化が難しく重量が重くなる、という問題があった。
【0007】
また、上述したシールド部材3では、変形可能な網組線9を介して金属パイプ8にフランジ部Fを有するシールドシェル32を取り付けていた。このため、金属パイプ8と網組線9との固定及び電気的な接続が難しい。また、網組線9は金属パイプ8に比べて強度が弱いため、網組線9で覆われている電線2が飛び石などによって傷つきやすい。さらに、部品点数が多く、加工数も多く、コストと品質が悪い、という問題があった。
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、部品点数を少なくしつつ作業性、接触性、強度の向上を図った電線のシールド部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、導電板の互いに対向する一端部及び他端部を重ねて設けたラップ部、及び、前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部、から構成されるシールド本体と、前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれた蓋部、前記蓋部の前記筒長さ方向に沿った側面に設けられた開口、前記開口の縁部に沿って突出して設けられたフランジ部、及び、前記フランジ部に設けられた取付穴、から構成されるシールドシェルと、を有することを特徴とするシールド部材に存する。
【0010】
請求項2記載の発明は、導電板の互いに対向する一端部及び他端部を重ねて設けたラップ部、及び、前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部、から構成されるシールド本体と、前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれたシェル側筒部、前記シェル側筒部の前記筒長さ方向の前記本体側筒部から離れた側の開口の縁部に沿って突出して設けられたフランジ部、及び、前記フランジ部に設けられた取付穴、から構成されるシールドシェルと、を有することを特徴とするシールド部材に存する。
【0011】
請求項3記載の発明は、電線を包囲して電磁波ノイズから保護するシールド部材であって、導電板を互いに対向する一端部及び他端部に重ねて設けたラップ部と、前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部と、前記本体側筒部の筒長さ方向の一端を前記筒長さ方向の他端に向けて曲げて設けたフランジ部と、前記フランジ部に設けられた取付穴と、を有することを特徴とするシールド部材に存する。
【0012】
請求項4記載の発明は、複数の前記電線を結束する結束手段と嵌合する嵌合部が前記本体側筒部内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のシールド部材に存する。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれる筒長さ方向に曲げ加工が施された曲げ筒部をさらに有することを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載のシールド部材に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、導電板上に電線を載せた状態でラップ部及び本体側筒部が形成されるように導電板を曲げて本体側筒部内に電線を挿入することができるため、電線にパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、導電板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、シールドシェルを直接、シールド本体に嵌め込むことにより部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。さらに、蓋部の側面に設けられた開口の縁部に沿って突出するフランジ部を設けることにより、シールドケースに沿って電線を配策できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、導電板上に電線を載せた状態でラップ部及び本体側筒部が形成されるように導電板を曲げて本体側筒部内に電線を挿入することができるため、電線をパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、導電板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、シールドシェルを直接、シールド本体に取り付けることにより部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。さらに、本体側筒部にシェル側筒部を嵌め込むことにより、シールド部材の筒長さ方向を調整することができ、シールドケースに取付易い。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、導電板上に電線を載せた状態でラップ部及び本体側筒部が形成されるように導電板を曲げて本体側筒部内に電線を挿入することができるため、電線をパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、導電板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、本体側筒部の筒長さ方向の端部を曲げてフランジ部を設けることにより、部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、嵌合部により本体側筒部内に電線が固定されるので本体側筒部内で電線が振れることなく、異音の原因や損傷の懸念がなくなる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、直線状の本体側筒部と曲げ筒部との組み合わせによってシールド部材の配索向きを自由に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図6を参照して説明する。図1は、第1実施形態における本発明のシールド部材3を示す斜視図である。図2は、図1に示すシールド部材3を組み込んだシールド機能付き電線1を機器ケース7に取り付けた状態での断面図である。図3は、図1に示すシールド部材3を構成するシールド本体31の曲げ前の状態を示す斜視図である。図4は、図2に示すシールド機能付き電線1の組み付け手順を説明するための斜視図である。図5は、図2に示すシールド機能付き電線1の組み付け手順を説明するための斜視図である。図6は、図5のI−I線断面図である。
【0020】
図5に示すように、シールド機能付き電線1は、電線2と、シールド部材3と、を有している。電線2は、導体(図示せず)と、この導体を被覆する絶縁性の被覆部21と、から構成されている。上記電線2の両端には、LA端子4が電気的に接続されている。LA端子4は、電線2の両端における被覆部21を所定範囲で除去することにより剥き出しになった導体に対して圧着接続されている。なお、電線2の両端に接続する端子としては、図2に示すLA端子4に限らずコネクタ端子などであってもよい。
【0021】
また、上記複数の電線2の被覆部21の両端には、図5に示すように、結束手段としての一対の結束バンド5が巻き付けられている。この一対の結束バンド5により複数の電線2が結束される。結束バンド5は、バンド部51と、クリップ部52と、を備えている。バンド部51は、電線2の被覆部21の両端に巻き付けられている帯状のバンドである。クリップ部52は、バンド部51に取り付けられていて、後述する嵌合部としてのステー部31B8を挟んでステー部31B8に固定する狭持部が形成されている。
【0022】
上記シールド部材3は、シールド本体31と、シールドシェル32と、を有している。シールド本体31は、図3に示すように、1枚の矩形状の例えば金属板(導電板)から構成されている。シールド本体31は、図1に示すように、ラップ部31Aと、本体側筒部31Bと、リベット穴31Cと、を備えている。ラップ部31Aは、図3に示すような矩形状の金属板を曲げて互いに対向する一端部31A1及び他端部31A2を重ねて設けられている。
【0023】
本体側筒部31Bは、一端部31A1及び他端部31A2の間の金属板を略四角筒状に曲げて設けられている。この本体側筒部31Bの内部には、電線2が挿入されている。リベット穴31Cは、ラップ部31Aを構成する一端部31A1及び他端部31A2の各々を貫通するように設けられていて、一端部31A1及び他端部31A2を固定するためのリベット6(図1)が挿入される。
【0024】
上記本体側筒部31Bは、図1及び図4に示すように、第1側面31B1と、上面31B2と、第2側面31B3と、底面31B4と、折曲溝31B5〜31B7と、一対のステー部31B8と、が設けられている。第1側面31B1は、図1に示すように、一端部31A1と直交するように予めプレス機によって曲げ加工を施して設けられている。上面31B2は、図1に示すように、第1側面31B1と直交しかつ後述する底面31B4と対向する。第2側面31B3は、図4に示すように、上面31B2と直交しかつ第1側面31B1と対向する。
【0025】
底面31B4は、他端部31A2の一端部31A1側に隣接して設けられていて、ラップ部31Aと同一平面上に連なるように設けられている。折曲溝31B5〜31B7は各々、第1側面31B1及び上面31B2の間、上面31B2及び第2側面31B3の間、及び、第2側面31B3及び底面31B4の間、の各々に設けられている。折曲溝31B5〜31B7は、予めプレス機などによって筒長さ方向Y1に沿った本体側筒部31B外に向けて突出する凸状に曲げ加工を施して形成されている。
【0026】
一対のステー部31B8は、筒長さ方向Y1に沿って並べて上面31B2上に突設されている。この一対のステー部31B8に一対の結束バンド5のクリップ部52を挟むと、複数の電線2を本体側筒部31Bに固定することができる。
【0027】
上記シールドシェル32は、導電部材から構成されている。シールドシェル32は、図4及び図5に示すように、蓋部32A、開口32B、フランジ部F、及び、取付穴としてのネジ穴Hを有している。蓋部32Aは、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の端部の外周に嵌め込まれるように、本体側筒部31Bと同様に略四角筒状に設けられている。蓋部32Aは、筒長さ方向Y1の本体側筒部31B側が開口されると共に筒長さ方向Y1の本体側筒部31Bから離れた側が立壁部32A1によって塞がれている。また、蓋部32Aの筒長さ方向Y1に沿った側面には開口32Bが設けられている。
【0028】
言い換えると、蓋部32Aは、本体側筒部31Bの上面31B2に重ねられる上壁部32A2と、上壁部32A2の直交方向Y2側の端部から立設され、第1側面31B1及び第2側面31B3に重ねられる一対の立壁部32A3及び32A4と、上壁部32A2の筒長さ方向Y1の本体側筒部31Bから離れた側の端部から立設された立壁部32A1と、から構成されている。
【0029】
フランジ部Fは、上記開口32Bの縁部に沿って突出するように設けられている。即ち、フランジ部Fは、立壁部32A1、32A3、32A4の上壁部32A2から離れた側の端部に突設されている。また、フランジ部Fは、開口32Bの貫通方向と直交する方向に向かって突出して設けられている。
【0030】
図4及び図6に示すように、上記フランジ部Fと立壁部32A3との境界、立壁部32A3と上壁部32A2との境界、上壁部32A2と立壁部32A4との境界、及び、フランジ部Fと立壁部32A4との境界、の本体側筒部31B側の端部には、各々筒長さ方向Y1に沿ったスリットSL1〜SL4が設けられている。上記スリットSL2には、図6に示すように、シールド本体31にシールドシェル32を取り付けたときに折曲溝31B5が挿入される。上記スリットSL3には、シールド本体31にシールドシェル32を取り付けたときに折曲溝31B6が挿入される。上記スリットSL4には、シールド本体31にシールドシェル32を取り付けたときに折曲溝31B7が挿入される。ネジ穴Hは、上記フランジ部Fのラップ部31Aと重ねられない部分には複数設けられている。
【0031】
次に、上述した構成のシールド機能付き電線1の組付手順について説明する。まず、予め複数の電線2に端末処理を施してLA端子4を圧着接続しておく。次に、一対の結束バンド5のバンド部51を複数の電線2の被覆部21に巻いて、複数の電線2を結束する。
【0032】
その後、図3に示す状態のシールド本体31を折曲溝31B5に沿って第1側面31B1及び上面31B2が直交するように折り曲げる。折曲溝31B6に沿って上面31B2及び第2側面31B3が直交するように折り曲げる。また、折曲溝31B7に沿って他端部31A2が一端部31A1から離れる方向に向けて折り曲げる。これにより、図4に示すように、シールド本体31は本体側筒部31Bの上面31B2の上側が開口された状態となる。この状態でシールドシェル32の蓋部32A内に本体側筒部31Bの端部を挿入する。
【0033】
このとき、図6に示すように、スリットSL2に折曲溝31B5が、スリットSL3に折曲溝31B6が、スリットSL4に折曲溝31B7が挿入されるようにする。そして、各スリットSL2〜SL4の本体側筒部31Bから離れた側の端部がそれぞれの折曲溝31B5〜31B7に当接するまで蓋部32A内に本体側筒部31Bの端部を挿入する。これにより、図5及び図6に示すように、一端部31A1の下にフランジ部Fが重ねられ、第1側面31B1の外側に立壁部32A3が重ねられ、上面31B2の外側に上壁部32A2が重ねられ、第2側面31B3の外側に立壁部32A4が重ねられる。即ち、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の端部外周に蓋部32Aが嵌められる。
【0034】
次に、一端部31A1とフランジ部Fとが重ねられた部分、上面31B2と上壁部32A2とが重ねられた部分などをスポット溶接してシールド本体31とシールドシェル32とを固定する。その後、図5に示すように、本体側筒部31Bの上面31B2の上側の開口から電線2を上面31B2に置いて結束バンド5のクリップ部52をステー部31B8に挟んで嵌合して、電線2をシールド本体31に固定させる。次に、図1に示すように、折曲溝31B7に沿って他端部31A2を一端部31A1側に向けて折り曲げると共に一端部31A1及び他端部31A2を重ね合わせる。これにより、電線2が本体側筒部31B内に挿入され、電線2の端部がシールドシェル32の開口32Bから引き出される。その後、図1に示すようにリベット穴31Cにリベット6を挿入した後、リベット6を潰して一端部31A1及び他端部31A2を固定する。
【0035】
次に、図2に示すように、電線2のLA端子4をシールドケースとしての機器ケース7に設けた貫通穴71に通して機器ケース7内の図示しない端子と接続した後、底面31B4を機器ケース7に向けて機器ケース7にシールド機能付き電線1を重ねる。このとき、機器ケース7に設けた貫通穴71とシールドシェル32の開口32Bとが重なり、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと機器ケース7に設けたネジ穴72とが重なるようにする。その後、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと、機器ケース7に設けたネジ穴72と、にネジNを挿入して、機器ケース7にシールド機能付き電線1を固定して、組み付けを終了する。なお、機器ケース7は、電線2に接続される電子機器などが収容される導電性のケースであり、例えば車体などにボディアースされている。よって、上述したようにシールドシェル32を機器ケース7に固定することにより、シールド部材3を接地することができる。
【0036】
上述したシールド機能付き電線1によれば、金属板上に電線2を載せた状態でラップ部31A及び本体側筒部31Bが形成されるように金属板を曲げて本体側筒部31B内に電線2を挿入することができるため、電線2にパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線2の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、金属板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、フランジ部Fを有するシールドシェル32を直接、シールド本体31に取り付けることにより部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。
【0037】
上述したシールド機能付き電線1によれば、シールド本体31とは別にシェル側筒部32Eを有するシールドシェル32を設けている。これにより、シールド本体31とシールドシェル32とが重なる部分の長さL(図2)を調整することにより、シールド部材3全体にの筒長さ方向Y1を調整することができ、機器ケース7に取り付け易い。さらに、蓋部32Aの側面に設けられた開口32Bの縁部に沿って突出するフランジ部Fを設けることにより、図2に示すように、機器ケース7に沿って電線2を配策できる。
【0038】
また、上述したシールド機能付き電線1によれば、ステー部31B8により本体側筒部31B内に電線2が固定されるので本体側筒部31B内で電線2が振れることなく、異音の原因や損傷の懸念がなくなる。
【0039】
また、上述したシールド機能付き電線1によれば、折曲溝31B5〜31B7に沿って金属板を曲げるだけで簡単に本体側筒部31Bを形成して、本体側筒部31B内に電線2を挿入することができるので、より一層作業性の良いシールド部材3を提供することができる。
【0040】
なお、上述した第1実施形態によれば、フランジ部Fは立壁部32A1、32A3、32A4の上壁部32A2から離れた側の端部に設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。フランジ部Fとしては、開口32Bの少なくとも一部の縁部に沿って設けられていればよく、例えば、立壁部32A1の端部にフランジ部Fが突設されていなくてもよい。
【0041】
第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における本発明のシールド部材3を示す分解斜視図である。図8は、図7に示すシールド部材3を組み込んだシールド機能付き電線1を機器ケース7に取り付けた状態での断面図である。なお、同図において、図1〜図6について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、シールドシェル32の形状である。図7に示すようにシールドシェル32は、シェル側筒部32E、フランジ部F及びネジ穴Hから構成されている。シェル側筒部32Eは、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の端部内部に嵌め込まれるように、本体側筒部31Bと同様に略四角筒状に設けられている。シェル側筒部32Eは、筒長さ方向Y1の両端が開口されている。フランジ部Fは、シェル側筒部32Eの筒長さ方向Y1の本体側筒部31Bから離れた側の開口縁に突設して設けられてる。ネジ穴Hは、フランジ部Fに複数設けられている。
【0043】
次に、上述した構成のシールド機能付き電線1の組付手順について説明する。まず、一対の結束バンド5のバンド部51を複数の電線2の被覆部21に巻いて、複数の電線2を結束する。その後、シールドシェル32のシェル側筒部32Eに電線2を通す。その後、複数の電線2に端末処理を施してLA端子4を圧着接続しておく。
【0044】
その後、第1実施形態と同様に、折曲溝31B5に沿って第1側面31B1及び上面31B2が直交するように折り曲げる。折曲溝31B6に沿って上面31B2及び第2側面31B3が直交するように折り曲げる。また、折曲溝31B7に沿って他端部31A2が一端部31A1から離れる方向に向けて折り曲げる。これにより、図4に示すように、シールド本体31は本体側筒部31Bの上面31B2の上側が開口された状態となる。
【0045】
次に、本体側筒部31Bの上面31B2の上側の開口から電線2を上面31B2に置いて結束バンド5のクリップをステー部31B8に挟んで嵌合して、電線2をシールド本体31に固定させる。次に、折曲溝31B7に沿って他端部31A2を一端部31A1側に向けて折り曲げると共に一端部31A1及び他端部31A2を重ね合わせる。その後、リベット穴31Cにリベット6を挿入した後、リベット6を潰して一端部31A1及び他端部31A2を固定する。
【0046】
次に、本体側筒部31Bの端部にシールドシェル32のシェル側筒部32Eを挿入する。このとき、フランジ部Fが、本体側筒部31Bの端部に当たるまで挿入した後、リベット6などによりシールド本体31とシールドシェル32とを固定する。次に、電線2のLA端子4を機器ケース7に設けた貫通穴71に通して機器ケース7内の図示しない端子と接続した後、フランジ部Fを機器ケース7に向けて機器ケース7にシールド機能付き電線1を重ねる。このとき、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと機器ケース7に設けたネジ穴72とが重なるようにする。その後、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと、機器ケース7に設けたネジ穴72と、にネジNを挿入して、機器ケース7にシールド機能付き電線1を固定して、組み付けを終了する。
【0047】
上述したシールド機能付き電線1によれば、金属板上に電線2を載せた状態でラップ部31A及び本体側筒部31Bが形成されるように金属板を曲げて本体側筒部31B内に電線2を挿入することができるため、電線2にパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線2の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、金属板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、シールドシェル32を直接、シールド本体31に取り付けることにより部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、上述したシールド機能付き電線1によれば、シールド本体31とは別にシェル側筒部32Eを有するシールドシェル32を設けている。これにより、シールド本体31とシールドシェル32とが重なる部分の長さL(図8)を調整することにより、シールド部材3全体の筒長さ方向Y1を調整することができ、機器ケース7に取付易い。
【0049】
また、上述した第2実施形態のシールドシェル32によれば、シェル側筒部32Eの筒長さ方向Y1の開口縁の全周に亘ってフランジ部Fを設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。フランジ部Fとしては、ネジ穴Hを少なくとも2箇所設けることができれば、開口縁の全周に亘って設ける必要はなく、開口縁に沿って部分的に設けてもよい。
【0050】
第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態における本発明のシールド部材3を示す斜視図である。図10は、曲げ作業前の図9に示すシールド部材3を示す斜視図である。なお、同図において、図1〜図8について上述した第1及び第2実施形態で既に説明した部分と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
上述した第1及び第2実施形態と、第3実施形態と、で大きく異なる点は、シールドシェル32を設けていない点である。同図に示すように、シールド部材3は、ラップ部31Aと、本体側筒部31Bと、リベット穴31Cと、フランジ部Fと、を有している。ラップ部31A、本体側筒部31B、リベット穴31Cについては上述した第1及び第2実施形態と同様の構成のためここでは詳細な説明を省略する。
【0052】
フランジ部Fは各々、上面31B2、第1側面31B1、第2側面31B3、及び、上面31B2、の筒長さ方向Y1の端部に突設して設けられている。金属板は、最初の状態では上面31B2、第1側面31B1、及び、第2側面31B3、及び、上面31B2、の筒長さ方向Y1の端部が凸状となるように打ち抜かれている。そして、フランジ部Fは各々、図10に示すように、上述した凸状の部分をプレス機によって上面31B2、第1側面31B1、第2側面31B3及び上面31B2と垂直になるように曲げ加工を施して設けられている。
【0053】
次に、上述した構成のシールド機能付き電線1の組付手順について説明する。まず、予め複数の電線2に端末処理を施してLA端子4を圧着接続しておく。次に、一対の結束バンド5のバンド部51を複数の電線2の被覆部21に巻いて、複数の電線2を結束する。
【0054】
その後、折曲溝31B5に沿って第1側面31B1及び上面31B2が直交するように折り曲げる。折曲溝31B6に沿って上面31B2及び第2側面31B3が直交するように折り曲げる。また、折曲溝31B7に沿って他端部31A2が一端部31A1から離れる方向に向けて折り曲げる。これにより、シールド本体31は本体側筒部31Bの上面31B2の上側が開口された状態となる。
【0055】
次に、本体側筒部31Bの上面31B2の上側の開口から電線2を上面31B2に置いて結束バンド5のクリップ部52をステー部31B8に挟んで嵌合して、電線2をシールド本体31に固定させる。次に、折曲溝31B6に沿って他端部31A2を一端部31A1側に向けて折り曲げると共に一端部31A1及び他端部31A2を重ね合わせる。その後、リベット穴31Cにリベット6を挿入した後、リベット6を潰して一端部31A1及び他端部31A2を固定する。
【0056】
次に、第2実施形態と同様の手順で上記シールド機能付き電線1を機器ケース7へ取り付ける。即ち、電線2のLA端子4を図8に示すような機器ケース7に設けた貫通穴71に通して機器ケース7内の図示しない端子と接続した後、フランジ部Fを機器ケース7に向けて機器ケース7にシールド機能付き電線1を重ねる。このとき、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと機器ケース7に設けたネジ穴Hとが重なるようにする。その後、フランジ部Fに設けたネジ穴Hと、機器ケース7に設けたネジ穴72と、にネジNを挿入して、機器ケース7にシールド機能付き電線1を固定して、組み付けを終了する。
【0057】
上述したシールド機能付き電線1によれば、金属板上に電線2を載せた状態でラップ部31A及び本体側筒部31Bが形成されるように金属板を曲げて本体側筒部31B内に電線2を挿入することができるため、電線2にパイプに挿入する必要もなく、また、パイプに挿入した状態で電線2の端末処理を行う必要がなく作業性が良い。また、金属板を用いることにより、バリやゴミの管理が容易になると共に薄型化が可能となるので、安価で軽量で作業性が良い。また、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の端部を曲げてフランジ部Fを設けることにより、第1及び第2実施形態のようにシールドシェル32を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ると共に作業性、接触性、強度の向上を図ることができる。
【0058】
なお、上述した第3実施形態によれば、本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の開口縁の全周に亘ってフランジ部Fを設けるようにしていたが、本発明はこれに限ったものではない。フランジ部Fとしては、ネジ穴Hを少なくとも2箇所設けることができれば、開口縁の全周に亘って設ける必要はなく、例えば上面31B2及び底面31B4の端部に設けて、第1及び第2側面31B1、31B3の端部には設けないようにしてもよい。また、逆に第1及び第2側面31B1、31B3の端部にのみ設けて、上面31B2及び底面31B4の端部には設けないようにしてもよい。
【0059】
また、第1〜第3実施形態では、本体側筒部31Bが略四角筒状となるように金属板を曲げていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、本体側筒部31Bが半円筒状や円筒状になるように金属板を曲げるようにしてもよい。
【0060】
また、図11に示すように、予め筒長さ方向に曲げ加工が施された曲げ筒部12を本体側筒部31Bの筒長さ方向Y1の一端に嵌め込んで、直線状のシールド本体31と曲げ筒部12との組み合わせによってシールド部材3の配索向きを自由に変更できるようにしてもよい。
【0061】
また、図11に示す例では、曲げ筒部12をシールド本体31に直接、嵌め込んでいたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図12に示すように、シールドシェル32を介して曲げ筒部12をシールド本体31に嵌め込むようにしてもよい。この場合、曲げ筒部12の一端をシールドシェル32のフランジ部F側の一端に設けた開口内に挿入して嵌め込む。そして、シールドシェル32のフランジ部Fとは反対側の他端をシールド本体31の本体側筒部32Bの筒長さ方向Y1の一端に嵌め込むようにする。
【0062】
また、図12に示す例では、予め曲げ加工が施された曲げ筒部12と直線状のシールド本体31との組み合わせによってシールド部材3の配索向きを自由に変更できるようにしていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、曲げ筒部12の代わりに図13に示すように網組線9を用いてもよい。網組線9は、導電性の金属細線をメッシュ状に編み込んだものであり、筒型に形成されている。網組線9は筒長さ方向に変形可能である。この場合、網組線9の一端をシールドシェル32のフランジ部Fの外周面に嵌め込む。そして、シールドシェル32のフランジ部Fとは反対側の他端をシールド本体31の本体側筒部32Bの筒長さ方向Y1の一端に嵌め込むようにする。
【0063】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態における本発明のシールド部材を組み込んだシールド部材を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシールド機能付き電線を機器ケースに取り付けた状態での断面図である。
【図3】図1に示すシールド部材を構成するシールド本体の曲げ前の状態を示す斜視図である。
【図4】図2に示すシールド機能付き電線の組み付け手順を説明するための斜視図である。
【図5】図2に示すシールド機能付き電線の組み付け手順を説明するための斜視図である。
【図6】図5のI−I線断面図である。
【図7】第2実施形態における本発明のシールド部材を示す分解斜視図である。
【図8】図7に示すシールド部材を組み込んだシールド機能付き電線を機器ケースに取り付けた状態での断面図である。
【図9】第3実施形態における本発明のシールド部材を示す斜視図である。
【図10】曲げ前の図9に示すシールド部材を示す斜視図である。
【図11】他の実施形態におけるシールド機能付き電線を示す概略断面図である。
【図12】他の実施形態におけるシールド機能付き電線を示す分解斜視図である。
【図13】他の実施形態におけるシールド機能付き電線を示す分解斜視図である。
【図14】従来のシールド部材を組み込んだシールド部材機能付き電線を機器ケースに取り付けた状態での断面図である。
【符号の説明】
【0065】
2 電線
3 シールド部材
5 結束バンド(結束手段)
12 曲げ筒部
31 シールド本体
31A ラップ部
31A1 一端部
31A2 他端部
31B 本体側筒部
31B8 ステー部(嵌合部)
32 シールドシェル
32A 蓋部
32B 開口
H ネジ穴(取付穴)
32E シェル側筒部
F フランジ部
Y1 筒長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電板の互いに対向する一端部及び他端部を重ねて設けたラップ部、及び、前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部、から構成されるシールド本体と、
前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれた蓋部、前記蓋部の前記筒長さ方向に沿った側面に設けられた開口、前記開口の縁部に沿って突出して設けられたフランジ部、及び、前記フランジ部に設けられた取付穴、から構成されるシールドシェルと、
を有することを特徴とするシールド部材。
【請求項2】
導電板の互いに対向する一端部及び他端部を重ねて設けたラップ部、及び、前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部、から構成されるシールド本体と、
前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれたシェル側筒部、前記シェル側筒部の前記筒長さ方向の前記本体側筒部から離れた側の開口の縁部に沿って突出して設けられたフランジ部、及び、前記フランジ部に設けられた取付穴、から構成されるシールドシェルと、
を有することを特徴とするシールド部材。
【請求項3】
電線を包囲して電磁波ノイズから保護するシールド部材であって、
導電板を互いに対向する一端部及び他端部に重ねて設けたラップ部と、
前記導電板の一端部及び他端部の間に設けた電線を包囲するための本体側筒部と、
前記本体側筒部の筒長さ方向の一端を前記筒長さ方向の他端に向けて曲げて設けたフランジ部と、
前記フランジ部に設けられた取付穴と、を有することを特徴とするシールド部材。
【請求項4】
複数の前記電線を結束する結束手段と嵌合する嵌合部が前記本体側筒部内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載のシールド部材。
【請求項5】
前記本体側筒部の筒長さ方向の端部に嵌め込まれる筒長さ方向に曲げ加工が施された曲げ筒部をさらに有することを特徴とする請求項1〜4何れか1項に記載のシールド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−147052(P2009−147052A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321728(P2007−321728)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】