説明

シール材料

【課題】冷媒の透過を確実に防止することにより優れたシール性を発揮でき、しかも組み付け作業性にも優れたシール材料を提供する。
【解決手段】冷媒不透過性材料(たとえば、金属、セラミックス)の繊維からなる織物33をコア31とし、該コア31の表面にエラストマ(たとえば、ゴム、樹脂)を含浸させることで、エラストマ層32を形成させたO−リング30等のシール材料。なお、エラストマ層32は、コア31の表面にエラストマを溶射、塗布等により形成することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材料に関し、とくに圧縮機の冷媒シール用のO−リングとして好適なシール材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機の冷媒シール用のO−リングとしては、たとえばゴム等のエラストマからなるO−リング、あるいは金属やセラミックスからなるO−リングが知られている。また、車両用空調装置の圧縮機のO−リングとしては、ゴム製O−リングが多く使用されている。このようなO−リングのうち、たとえば、ゴム製のエラストマからなるゴム製O−リングは、シール面に多少の凹凸があってもシール面に密着し微小な隙間を埋めることができるが、冷媒の透過漏れ生じるおそれがある。一方、金属やセラミックスからなるO−リングは、冷媒の透過漏れを防止できるが、ゴム製O−リングのようにシール面に密着できない。このため、金属やセラミックスからなるO−リングを使用する場合には、極力シール面の面粗さを小さくするような対応が必要になる。また、金属やセラミックスからなるO−リングはゴム製O−リングのように伸縮性がないため組み付け作業性が低下するおそれがある。
【0003】
上記のような問題点を解消すべく、金属コイルスプリングからなる芯材の表面にエラストマをライニングしたO−リングの提案もなされている(特許文献1)。該提案に係るO−リングは伸縮性を有するため優れた組み付け性を発揮するが、金属コイルスプリングを形成する線材の隙間を冷媒が簡単に透過しシール性が損なわれるおそれがある。
【特許文献1】実開昭63−119965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冷媒の透過を確実に防止することにより優れたシール性を発揮でき、しかも組み付け作業性にも優れたシール材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るシール材料は、冷媒不透過性材料の繊維からなる織物をコアとし、該コアの表面にエラストマ層を設けたことを特徴とするものからなる。このような構成においては、コアの表面にはエラストマ層が設けられているので、シール面に多少の凹凸があってもエラストマ層をシール面に沿って密着できシール面の微細な凹凸を埋めることができる。また、コアは金属やセラミックス等の冷媒不透過性材料の繊維からなる織物から形成されているので、表面のエラストマ層を冷媒が透過したとしても、冷媒不透過性材料が複雑に絡み合って形成された織物により冷媒の透過は確実に防止される。また、コアは冷媒不透過性材料の繊維からなる織物から形成されるので、優れた伸縮性を有する。したがって、組み付け作業性を向上できる。
【0006】
上記エラストマ層は、たとえばコアにエラストマ(たとえば、ゴム、樹脂等のエラストマ)を含浸させることにより簡単に形成できる。なお、エラストマ層は、コアにエラストマを溶射、塗布等することにより形成することも可能である。
【0007】
上記冷媒不透過性材料としては、たとえば金属やセラミックスを挙げることができる。
【0008】
本発明に係るシール材料はO−リング用として好適であり、このようなO−リングとくに車両用空調装置の圧縮機の冷媒シール用として好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシール材料によれば、冷媒の透過を確実に防止しシール性を向上できる。また、組み付け作業性を向上できる。また、既存のシール部材と簡単に置換することも可能である。さらに、コアの表面にはエラストマ層が設けられるので、シール面の面粗さを小さくするような加工を省略することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係るシール材料の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明の一実施態様に係るシール材料により形成されたO−リングが適用された圧縮機を示しており、該圧縮機は車両空調装置用の圧縮機に構成されている。図1において、1は圧縮機を示している。圧縮機1は、フロントハウジング2とシリンダブロック3とシリンダヘッド4とを有している。フロントハウジング2とシリンダブロック3との間にはクランク室5が形成されている。
【0011】
シリンダブロック3には、周方向に複数のシリンダボア6が設けられており、各シリンダボア6内にはピストン7が往復動自在に挿入されている。ピストン7は、ピストンロッド8を介してクランク室5内に設けられた斜板9側に連結されている。斜板9の中央部には駆動軸10が挿通されている。斜板9の一面上にはロータ11側に向かって延びる耳部12が設けられている。耳部12には長穴13が穿設されている。長穴13にはピン28が挿通され、斜板9の傾斜角が変更した場合にも斜板9とロータ11が連結されるようになっている。ロータ11は、フロントハウジング2の内壁にスラストベアリング14を介して支持されており、駆動軸10と一体回転するようになっている。
【0012】
斜板9にはスラストベアリング15を介して揺動板16が設けられている。揺動板16の球面座17にはピストンロッド8のピボット8aが接続されている。
【0013】
フロントハウジング2の端部には、クラッチ機構18が設けられており、該クラッチ機構のオンオフにより駆動軸10に外部駆動源(たとえば、車両駆動用のエンジン等)か羅の駆動力が伝達されたり遮断されたりするようになっている。
【0014】
シリンダヘッド4内は、内壁19により吸入室20と吐出室21とに区画されている。シリンダブロック3とシリンダヘッド4との間には弁板22が介装されており、該弁板22には、吸入室20とシリンダボア6内とを連通する吸入孔23、および吐出室21とシリンダボア6内とを連通する吐出孔24が設けられている。吸入孔23には、該吸入孔23を開閉する吸入弁25が設けられている。また、吐出孔24には、該吐出孔24を開閉する吐出弁26が設けられている。なお、吐出弁26の開度は吐出室21内に設けられたリテーナ27により規制されるようになっている。
【0015】
上記のように構成された圧縮機1のたとえば弁板22とシリンダブロック3との間には冷媒シール用のO−リング30が設けられている。O−リング30は、図3、図4に示すように環状に形成されたコア31と該コア31の表面に設けられたエラストマ層32とを有している。コア31は、冷媒不透過性材料(たとえば、金属、セラミックス)の繊維から成る織物33からなっている。そして、このようなコア31にエラストマ(たとえば、ゴム、樹脂)を含浸させることにより該コア31の表面にエラストマ層32が形成されるようになっている。なお、エラストマ層32は、コア31の表面にエラストマを溶射、塗布等することにより形成することも可能である。
【0016】
本実施態様においては、O−リング30のコア31の表面にはエラストマ層32が設けられているので、弁板22とシリンダブロック3のシール面に多少の凹凸があってもエラストマ層32をシール面に沿って密着できシール面の微細な凹凸を埋めることができる。また、コア31は金属やセラミックス等の冷媒不透過性材料の繊維からなる織物から形成されているので、表面のエラストマ層31を冷媒が透過したとしても、冷媒不透過性材料が複雑に絡み合って形成された織物33により冷媒の透過は確実に防止される。また、コア31は冷媒不透過性材料の繊維からなる織物34から形成されるので、優れた伸縮性を有する。したがって、組み付け作業性を向上できる。
【0017】
なお、上記例は、圧縮機の特定部位に設けられるO−リングに本発明を適用した場合を示したが、本発明は、その他の適用箇所に対しても、現行のゴム製のO−リングと単純置換が可能であり、シール面の設計変更なしで使用できる(たとえば、円筒シールが要求される配管接合部等への組み付けも可能である。)。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係るシール材料は、各種シール部材に適用できるが、O−リングとして好適であり、とくに高圧シールが要求される圧縮機、中でも車両空調装置用の圧縮機の冷媒シール用のO−リングに最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施態様に係るシール材料により形成されたO−リングが適用された圧縮機の断面図である。
【図2】図1の圧縮機の部分拡大図である
【図3】本発明の一実施態様に係るシール材料により形成されたO−リングの正面図である。
【図4】図3のO−リングのIV−IV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 圧縮機
2 フロントハウジング
3 シリンダブロック
4 シリンダヘッド
5 クランク室
6 シリンダボア
7 ピストン
8 ピストンロッド
8a ピボット
9 斜板
10 駆動軸
11 ロータ
12 耳部
13 長穴
14 スラストベアリング
15 スラストベアリング
16 揺動板
17 球面座
18 クラッチ機構
19 内壁
20 吸入室
21 吐出室
22 弁板
23 吸入孔
24 吐出孔
25 吸入弁
26 吐出弁
27 リテーナ
28 ピン
30 O−リング
31 コア
32 エラストマ層
33 織物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒不透過性材料の繊維からなる織物をコアとし、該コアの表面にエラストマ層を設けたことを特徴とするシール材料。
【請求項2】
前記エラストマ層が、コアにエラストマを含浸させることにより形成されている、請求項1に記載のシール材料。
【請求項3】
前記冷媒不透過性材料が金属またはセラミックスからなる、請求項1または2に記載のシール材料。
【請求項4】
前記シール材料がO−リング用のシール材料である、請求項1〜3のいずれかに記載のシール材料。
【請求項5】
前記O−リングが圧縮機の冷媒シール用のO−リングである、請求項4に記載のシール材料。
【請求項6】
前記圧縮機が車両空調装置用である、請求項5に記載のシール材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−115127(P2009−115127A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286006(P2007−286006)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】