説明

シール材用樹脂組成物

【課題】プラスチック製容器、特に、耐衝撃性ポリスチレンの容器に用いるヒートシール材として好適で、容器本体構成材に対し従来品に比べより適正な範囲の剥離強度を有すると共に、食品等容器内容物の密封保護性等、この種のヒートシール材として必要とされる諸物性を従来品とほぼ同等に保持し、然も従来品に比べより高い耐熱性と低温でのヒートシール処理でも剥離時にスムーズで且つ快適な剥離感を呈するヒートシール性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)30〜80質量部、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)1〜45質量部及び粘着性付与樹脂(C)3〜30質量部(但し(A)、(B)、(C)樹脂の合計量は100質量部)を含んでなるシール材用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材用樹脂組成物に関し、より詳細には、エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂及び粘着性付与樹脂との特定配合量比の樹脂組成物からなり、プラスチック容器、特に、耐衝撃性ポリスチレン製容器と蓋体とのシールに好適に用いられるシール材用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー、プリン、ヨーグルト、豆腐、即席メン、ヌードル類など各種の食品類や医薬品容器として、易開封性蓋を備えたプラスチック容器が広く使用されている。
特に、カップ入り即席メン、ヌードル、汁粉などの容器素材には発泡ポリスチレンシート又はこれに耐衝撃性ポリスチレンフィルムを貼り合わせたもの、耐衝撃性ポリスチレンシート、ポリエチレンラミネート紙などを素材とする容器が広く用いられている。
そしてこれらプラスチック容器を蓋体で易開封状に密封シールするためのヒートシール材として従来から種々のものが提案、実用化されているが、中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体と粘着性付与樹脂との組成物、これにポリエチレンや低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体などを配合した組成物は、容器本体と蓋体との密封性が比較的良好で、且つ、蓋体剥離時の剥離強度が概ね妥当なことから広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン・酢酸ビニル共重合体とポリエチレンと粘着性付与剤の特定配合量比の樹脂組成物からなり、発泡ポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン製容器と蓋材とのヒートシーラントに用いられる接着性組成物の発明が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、エチレン・不飽和エステル共重合体と水素添加スチレン・ブタジエン共重合体とを必須成分としてなる耐衝撃性ポリスチレン容器と蓋体とのヒートシールに用いられる樹脂組成物の発明が開示されている。
【0005】
しかしながら、最近では、上記容器と蓋との易開封性の最適化、特にシール剥離時の剥離強度が適正で、低温でも適正強度でのスムーズな剥離が達成されることが強く求められている。
又、用途によっては、容器本体や蓋材のコート層等に用いられる材質の関係等からヒートシールを通常よりやや低い温度、例えば、120℃近傍の温度で実施することが求められる等、望まれるヒートシール特性が異なっていたり、他の特性が要求されたりすることがあり、このような要求にも耐えられるようなシール材が望まれている。
【0006】
又、上記剥離を途中で止める部分剥離が好適に遂行できるために、剥離時にスムースで良好な剥離感を与えることも要求されるが、従来、既存のシール材を用いると、あるものは低温で良好なシール処理が出来なかったり、あるものはシール強度が小さかったり、あるものは初期シール強度として充分な値を示すが経時的にシール強度が低下するといった欠点を示し、実使用にはそれぞれ何らかの問題を包含し、上記要件を完全に満たすシール材を選択することは可成り困難であった。
【特許文献1】特開昭58−15545号公報
【特許文献2】特開平09−188786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、上記要件を完全に充足するシール材を開発することを目指して鋭意研究を重ねた結果、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等のエチレン・ビニルエステル共重合体樹脂とエチレン・(メタ)アクリル酸エステルと粘着性付与樹脂との特定配合量比からなる樹脂組成物が上記要件を充足出来ることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
従って、本発明の目的は、発泡ポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン等のプラスチック材に対するヒートシール性に優れ、特に、従来品より低温でヒートシールを実施してもシール性に顕著に優れるヒートシール材用樹脂組成物を提供するにある。
又、本発明は、従来品ヒートシール材に比べて耐熱性に優れ、且つ、発泡ポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン等のプラスチック材に対し適度な剥離強度とスムーズで快い剥離感触を有し、プラスチック容器と易開封性蓋との間のヒートシール材として好適なヒートシール材用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)30〜80質量部、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)1〜45質量部及び粘着性付与樹脂(C)3〜30質量部(但し(A)、(B)、(C)樹脂の合計量は100質量部)を含んでなるシール材用樹脂組成物が提供される。
なお本発明において(メタ)アクリル酸エステルとはメタクリル酸エステルあるいはアクリル酸エステルを意味する。
【0010】
本発明のヒートシール性樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等のエチレン・ビニルエステル共重合体樹脂とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂と粘着性付与樹脂とを特定量比で配合して得られた樹脂組成物である点を構成上の特徴とする。
上記組成物は、類似の従来品ヒートシール材に比較して低温でのヒートシール処理が可能であるにもかかわらず、耐熱性に優れ、且つ、特に発泡ポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン等に対し適度な剥離強度とスムーズで快い剥離感触を有する。
【0011】
本発明の上記樹脂組成物は、 190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999に準拠して測定)が0.1〜100g/10分であることが好ましい。
又、前記エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)が酢酸ビニル成分単位含有率5〜30質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂であることが好ましい。
又、前記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)のエステル成分単位の含有率が2〜48質量%であるものが好ましく、その内でも、チューブラー高圧重合法により得られたものが特に好ましい。
又、前記粘着性樹脂(C)は水素添加石油樹脂であることが好ましい。
更に、本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性ポリスチレン製容器のヒートシールに特に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートシール材用樹脂組成物は、上記特定構成により、プラスチック製容器、特に、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン等の素材プラスチックからなる容器に用いるヒートシール材として好適で、従来品に比べより低温で良好なヒートシール処理が可能で、且つ、容器本体構成材に対し適正な範囲の剥離強度を有すると共に、食品等容器内容物の密封保護性等この種のヒートシール材として必要とされる諸物性を従来品とほぼ同等に保持する。
然も従来品に比べより高い耐熱性と剥離時にスムーズで且つ快適な剥離感を呈する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る好適実施形態について、詳細且つ具体的に説明する。
本発明のヒートシール材用樹脂組成物は、エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)とエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)及び粘着性付与樹脂(C)を特定量比で組合せ配合してなる。
【0014】
本発明の樹脂組成物に於いて(A)成分であるエチレン・ビニルエステル共重合体樹脂としては、例えば、エチレンと酢酸ビニルやエチレンとプロピオン酸ビニル等のビニルエステルとの共重合体樹脂を挙げることが出来る。
本発明ではこれらの内でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましく、特に共重合体中に存在するビニルエステル成分単位含有率(エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂の場合、酢酸ビニル成分単位含有率)が5〜30質量%、より好ましくは9〜28重量%、の範囲のものが好ましい。
ビニルエステル含量がこの範囲内にあると、ヒートシール強度とイージーピール性とのバランスを良好に保ち、かつ食品充填時に必要な耐熱性を有しているので好都合である。
【0015】
また、この共重合体樹脂のメルトフローレート(JIS K7210−1999に準拠して測定、MFR:190℃、2160g荷重)は、その押出加工性や機械的強度の観点から、通常0.1〜100、好ましくは1〜50g/10分である。
【0016】
次に、本発明の樹脂組成物の(B)成分であるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂に於いて(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0017】
該共重合体樹脂(B)の(メタ)アクリル酸エステル単位として具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等からなる単位を例示することができる。
【0018】
又、共重合体樹脂(B)のメルトフローレート(MFR:JIS K7210−1999に準拠して測定、190℃、2160g荷重)は0.1〜100g/10分であることが、それを配合して得られる組成物のヒートシール材としての特性や加工性の点から好ましく、特に1〜50g/10分が好ましい。
【0019】
更に、共重合体樹脂(B)の(メタ)アクリル酸エステル単位含量は2〜48質量%の範囲が好ましく、特に3〜40質量%の範囲が好ましい。
前記エステル単位含量が2質量%未満のものはヒートシール材として耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン等のプラスチック容器本体構成材に対するシール性や剥離時感触が充分でなくなり、一方48質量%を超えるものは、例え、下記に説明するチューブラー高圧重合法で製造されたものであっても耐熱性や耐熱油性の良好な共重合体を得ることが難しい。
【0020】
本発明においては、上記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)はオートクレーブ高圧重合法、チューブラー高圧重合法 いずれの方法によって製造されたものであってもよいが、特に、チューブラー高圧重合法により製造された共重合体樹脂を用いることが好ましい。
この方法で得られた共重合体樹脂は、通常のラジカル重合法等の他の方法で製造されたエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体に比較して、例え共重合組成や平均分子量が同じものであっても融点が高く、然も、軟化〜溶融状態での粘弾性挙動等の熱的諸物性やその他の属性が異なり、このためそれを配合して得られた組成物は前述した本発明の組成物の特性をより良好に発現することが出来る。
【0021】
チューブラー高圧重合法とは、チューブラー反応器を使用し、高圧で遊離基触媒を用いてラジカル重合する方法であり、例えば、特開昭62−273214号公報等に記載されている方法が例示できる。
【0022】
上記重合法で得られた共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル含量:E(重量%)と共重合体融点:T(℃)との関係が下記式(I)、
−0.8×E+115≧T≧−0.8×E+109…(I)
を満足することが特徴であって、他の重合法で得られた相当組成の共重合体に比べて融点が高く耐熱性に優れる。
上記重合法で得られた共重合体は通常のラジカル重合法によるランダム性良好な共重合体に比較して、エチレン単位や(メタ)アクリル酸エステル単位のランダム配列が少なく、即ち、配列不均一性が高く、ブロック共重合体にやや似た重合体構造、物性を有する。
このため融点とエステル単位含量が上記のような関係を有するものと考えられる。
【0023】
上記重合法に於ける遊離基触媒としては、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、アミンオキシド化合物、酸素等の通常の開始剤を挙げることが出来る。
又、連鎖移動剤としては水素、プロピレン、ブテン−1、C〜C20又はそれ以上の飽和脂肪族炭化水素及びハロゲン置換炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロパラフィン類、クロロホルム及び四塩化炭素、C〜C20又はそれ以上の飽和脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、C〜C20又はそれ以上の飽和脂肪族カルボニル化合物、例えば二酸化炭素、アセトン及びメチルエチルケトン並びに芳香族化合物、例えばトルエン、エチルベンゼン及びキシレンのような化合物が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物の(C)成分である粘着性付与樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などの他、石油ナフサの熱分解留分から得られる石油樹脂やその水素添加物を挙げることができる。
【0025】
脂肪族炭化水素樹脂の例としては、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどの炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも一種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0026】
又、脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
【0027】
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
ポリテルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体などを挙げることができる。
【0028】
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。
スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の一種又は二種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0029】
石油樹脂は、石油ナフサの熱分解により、エチレン、プロピレン、ブタジエン等を分留した残りのスペントC〜C留分のオレフィンを、混合状態のまま重合して得られた樹脂状物質の総称であるが、その主成分組成により脂肪族系、芳香族系、ジシクロペンタン系等があり、その組成、性状は、それぞれ既に述べた脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂に類似する。
芳香族系やジシクロペンタン系のものは特にエチレン・ビニルエステル共重合体樹脂との相溶性がよい。
又、これら石油樹脂を水素添加して得られた物は樹脂の色調や臭気が改善されるだけでなく流動性も向上し粘着性付与樹脂として特に好適である。
【0030】
本発明の樹脂組成物には、前記本発明のヒートシール特性を害しない限りに於いて、必要により任意の樹脂成分、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・エタクリル酸共重合体、エチレンマレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体等のエチレン不飽和カルボン酸共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂類等を配合することが出来る。
【0031】
本発明の樹脂組成物における上記必須樹脂成分(A)、(B)、(C)の配合割合は、エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)30〜80質量部、好ましくは35〜75質量部、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)1〜45質量部、好ましくは5〜40質量部、及び、粘着性付与樹脂(C)3〜30質量部、好ましくは5〜25質量部(但し(A)、(B)、(C)樹脂の合計量は100質量部)である。
【0032】
エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)の配合量が80質量部を上回ると、得られる樹脂組成物の耐熱性が悪化するだけでなく、ヒートシール強度の温度依存性も大きくなりすぎるため好ましくない。
一方、エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)の配合量が30質量部を下回ると、容器構成材に対するシール強度が大きくならず、密封性に問題を生じる。
【0033】
又、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)配合量が45質量部を上回ると、前記エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)の場合と同様、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン等の容器構成材に対するヒートシール強度が強くなりすぎ、開封性も悪化するのみならず、ヒートシール強度の温度依存性も大きくなりすぎるため好ましくない。
一方、(B)成分の配合量が上記下限を下回るものは、配合量が少なすぎるため本発明の組成物の特徴である低温ヒートシール性、適正剥離強度、容器内容物の密封保護性等の諸特性を具現出来ず、又、剥離時にスムーズで且つ快適な剥離感を呈することが出来ない。
【0034】
粘着性付与樹脂(C)の配合量が30質量部を上回るものは、得られる樹脂組成物のブロッキングが著しくなりペレット化が困難となる。
又、シール材としてのシール強度も強くなりすぎるだけでなく、食品包装用途等の場合においては油抽出分が多くなるため好ましくない。
一方配合量が3質量%を下回る場合は、シール強度が適正値より低くなる傾向を示し、特に、低温シール性が悪化する。
【0035】
尚、任意成分として他の樹脂成分を配合する場合は、前記(A)、(B)、(C)合計量100質量部に対し1〜30質量部程度が好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物においては、必要に応じて更に各種添加剤を配合することができる。
かかる添加剤の代表例としては、押出加工性、離ロール性、フイルムの滑り性などの改善の目的で使用される滑剤及び/又は離ロール剤を挙げることができる。
【0037】
より具体的には、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油、シリカ、タルク、ゼオライトなどの無機質添加剤などである。
これらの配合量は、樹脂成分量に対し無機質添加剤の場合は0.1〜3質量%程度、それ以外のものは0.01〜1質量%程度の範囲が適当である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、上記(A)、(B)、(C)の各必須樹脂成分、及び任意に配合される樹脂成分や添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。
樹脂組成物を調製するに当たっては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にはとくに制限はない。
【0039】
かくして得られる本発明の樹脂組成物は、押出加工性、シール強度、耐ボイル性等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに1〜30g/10分程度となるように調製されていることが望ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、プラスチック製容器のヒートシール材、とりわけ耐衝撃性ポリスチレンや発泡ポリスチレン等の容器とその蓋材との易開封性シール材料として好適である。
【0041】
又、本発明のヒートシール性樹脂組成物は、このような用途に使用される場合、通常は各種基材に積層した形で使用される。
かかる目的に使用される基材としては、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、(高衝撃)ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどを挙げることができる。
このような基材は単層である必要はなく、2層以上の積層体であってもよい。
【0042】
かくして得られる積層体は、各種包装材料として使用することができる。
本発明のヒートシール性樹脂組成物は、プラスチック単体や上述のような積層体からなる各種の易開封シール蓋付き容器、とりわけ耐衝撃性ポリスチレン容器と蓋材との間のヒートシール材として使用するときに密封性、易開封性等に優れたものとなる。
更にポリスチレン製容器のみならず、他の材料の容器、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の容器と蓋材のヒートシール用として有効に利用できる。
このような蓋付容器は、例えば、即席メン、ヌードル、ゼリー、プリン、ヨーグルト、みつ豆、サワー、豆腐、乳酸飲料、和菓子、加工肉などの飲食物、薬品、医療容器、トナーなどの各種包装に使用することができる。
【実施例】
【0043】
本発明を次の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
尚、下記の実施例、比較例で用いたエチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂)(A)、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(エチレン・アクリル酸メチル共重合体樹脂)(B)及び粘着性付与樹脂(水素添加石油樹脂)(C)、その他樹脂、及び、各種添加剤の組成、性状はそれぞれ下記の通りである。
【0044】
1) エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA):酢酸ビニル成分含量9.1質量%、MFR(190℃、2160g荷重)1.7g/10分
2) エチレン・アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA):アクリル酸メチル成分含量18質量%、MFR(190℃、2160g荷重)2.0g/10分
3) 水素添加石油樹脂(AM1):
4)ポリエチレン(PE):低密度ポリエチレン、MFR3.8g/10分、密度903kg/m
5) ステアリン酸アミド(AHT)
6) エルカ酸アミド(ELA)
7) 合成ゼオライト
【0045】
「実施例1」
(A)成分として上記EVAを63質量部、(B)成分としてEMAを10質量部、(C)成分としてAM1を15質量部及びPEを10質量部配合したものを溶融混合し、これに添加剤としてAHT(ステアリン酸アミド)0.15質量部とELA(エルカ酸アミド)0.15質量部と合成ゼオライト粉末1質量部を添加して樹脂組成物(組成物1)を得た。
この樹脂組成物(組成物1)を加工温度240℃、加工速度80m/分で押出ラミネート加工によりポリエチレンテレフタレート基材層(PET:12μm)/ポリエチレン層(PE:20μm)/組成物1の層(50μm)の積層体を得た。
この積層体(組成物1の積層体)を耐衝撃性ポリスチレンシート(厚さ2mm)縁面上に下記条件でヒートシールし、24時間放置後剥離試験(180°、15mm幅剥離)を実施した。
ヒートシール条件:0.2MPa×0.5sec×120〜160℃
各ヒートシール温度条件での剥離強度を表1に示す。
【0046】
「比較例1」
(A)成分としてEVAを73質量部、(C)成分としてAM1を15質量部及びPEを10質量部配合して溶融混合し、これに添加剤としてAHT0.15質量部とELA0.15質量部と合成ゼオライト粉末1質量部を添加して樹脂組成物(組成物2)を得た。
この樹脂組成物(組成物2)を用いて実施例1と同様に処理し、組成物2の層(50μm)を有する積層体を得た。
この積層体(組成物2の積層体)を実施例1と同様の耐衝撃性ポリスチレン容器縁面上に下記条件でヒートシールし、24時間放置後剥離試験(180°、15mm幅剥離)を実施した。
ヒートシール条件:0.2MPa×1.0sec×120〜160℃
各ヒートシール温度条件での剥離強度を表1に示す。
【0047】
【表1】

表1から明らかなように、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(A)と水素添加石油樹脂(C)にエチレン・アクリル酸メチル共重合体樹脂(B)を特定量比で組み合わせ配合した実施例1の樹脂組成物は(B)成分を配合しない比較例1の樹脂組成物に比べ、ヒートシール温度120〜160℃処理で、その剥離強度が適正な程度に高く、特に比較例品に比して120℃程度の低温でヒートシール処理した場合の剥離強度に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)30〜80質量部、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)1〜45質量部及び粘着性付与樹脂(C)3〜30質量部(但し(A)、(B)、(C)樹脂の合計量は100質量部)を含んでなるシール材用樹脂組成物。
【請求項2】
190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999に準拠して測定)が0.1〜100g/10分である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン・ビニルエステル共重合体樹脂(A)が酢酸ビニル成分単位含有率5〜30質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)のエステル成分単位の含有率が2〜48質量%である請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂(B)がチューブラー高圧重合法により得られたものである請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記粘着性付与樹脂(C)が水素添加石油樹脂である請求項1乃至5の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
耐衝撃性ポリスチレン製容器のヒートシールに用いられる請求項1乃至6の何れかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−95044(P2008−95044A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281589(P2006−281589)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】