説明

シール構造

【課題】ハウジング部材を含む装置全体を小型化可能なシール構造を提供すること。
【解決手段】シール溝Gの内壁部52eを、収容空間に収容される収容体52または蓋部材に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に収容空間を形成するハウジング部材と、ハウジング部材の開口部を閉塞する蓋部材と、ハウジング部材の開口部側端部と蓋部材との間に挟持され、収容空間内部を液密状態に保持するシール部材と、を備え、ハウジング部材の開口部側端部に凹状のシール溝を形成し、その内部にシール部材を設置するシール構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−264379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシール構造では、ハウジング部材の開口部側端部にシール溝の内壁部(収容空間側の壁部)と外壁部(外部空間側の壁部)を形成しているため、上記開口側端部の(シール溝幅方向)寸法を抑制できない。よって、ハウジング部材や蓋部材により構成される装置全体が大型化する、という課題があった。
本発明の目的とするところは、ハウジング部材を含む装置全体を小型化可能なシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のシール構造は、シール溝の内壁部を、収容空間に収容される収容体または蓋部材に設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって、ハウジング部材の開口部側端部にシール溝の内壁部を形成する必要がないため、上記開口側端部の(シール溝幅方向)寸法を抑制することができ、ハウジング部材を含む装置全体を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の電動パワーステアリング装置のシステム構成図である。
【図2】実施例1のハウジング本体に設けられたモータECUユニットの部分断面図である(図3のA−A断面)。
【図3】実施例1のハウジング本体に設けられたモータECUユニットの正面図である。
【図4】実施例1のシール溝部分および基板設置部の断面を示す(図3のB−B断面)。
【図5】実施例1のモータハウジング部と基板ハウジング部との境界部位におけるシール溝部分を示す(図3の部分F)。
【図6】実施例1のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図7】実施例1のシール部材の断面を示す。
【図8】実施例2のシール部材の断面を示す。
【図9】実施例3のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図10】実施例4のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図11】実施例5のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図12】実施例6のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図13】実施例7のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図14】実施例8のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図15】実施例9のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図16】実施例10のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図17】実施例11のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図18】実施例12のシール溝部分の断面を示す(図3のC−C断面)。
【図19】実施例13のハウジング本体に設けられたモータECUユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のシール構造を実現する形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0009】
実施例1のシール構造は、自動車の電動パワーステアリング装置のユニットを構成するハウジング部材および蓋部材に適用される。
【0010】
図1は、電動パワーステアリング装置EPSのシステム構成図である。
EPSが適用されるステアリング装置は、操作機構とギヤ機構とリンク機構を有している。操作機構は、ステアリングホイールSWとステアリングシャフトSS(コラムシャフト)を有している。ステアリングシャフトSSは第1シャフトS1と第2シャフトS2(中間シャフト)からなる。ギヤ機構はラック&ピニオン型であり、ラックRとピニオンPを有している。ピニオンPは、第2シャフトS2に連結されたピニオンシャフトPSの先端に設けられており、ラックRと噛み合っている。リンク機構は、ラックRに連結されたタイロッドTRと、タイロッドTRに連結された転舵輪FL,FRとを有している。
【0011】
電動パワーステアリング装置EPSは、電動モータ3がギヤを直接駆動して補助力を発生する電動直結式であり、ピニオンシャフトPSに取り付けられてピニオンシャフトPSの回転に対して補助動力を与えるピニオンアシスト式である。EPSは、電源としてのバッテリBATTから供給される電力により駆動される電動式のモータ3と、モータ3の回転を減速する減速ギヤ機構4と、操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段としてのトルクセンサTSと、モータ3の回転(回転角ないし回転位置)を検出するモータ回転検出手段としてのレゾルバ33と、上記検出手段から信号の入力を受けてモータ3の駆動を制御するモータ制御装置としての電子制御ユニットECUとを有している。これらの構成部品は同一のハウジングHSGの内部に収容されており、EPSは機電一体型のユニットとして構成されている(以下、これをEPSユニットという。)。
【0012】
ハウジングHSGは、ハウジング本体1とギヤハウジング2を有している。図2は、EPSユニットの部分断面図であり、ハウジング本体1およびその内部に収容された部品(言い換えると、ギヤハウジング2およびその内部の部品を除いた部分)の部分断面を示す。破線でギヤハウジング2の側面を模式的に示す。ハウジング本体1は、モータユニットが収容されるモータハウジング部1aと、ECUユニットが収容ないし設置される基板ハウジング部1bとから構成されており、モータECUユニットを収容する。モータハウジング部1aと基板ハウジング部1bは一体に形成されており、両者は1つのハウジング部材(ハウジング本体1)を構成している。ギヤハウジング2は、ハウジング本体1の蓋部材として機能するハウジング部材である。ギヤハウジング2がハウジング本体1の開口部を閉塞することで1個のハウジングHSGが形成される。ギヤハウジング2にはピニオンシャフトPSが貫通して設置され、ギヤハウジング2内に設置された軸受BRGによりピニオンシャフトPSが回転自在に支持される。
【0013】
モータ3は、ステータ30とロータ31と出力軸32を有している。出力軸32はロータ31と一体に設けられており、ロータ31と一体に回転する。出力軸32にはレゾルバ33が設けられている。ECUは、レゾルバ33が検出するロータ31の回転位置に基づきステータ30のコイルに通電を行う。モータ3とレゾルバ33はモータユニットとして一体に構成され、同一のハウジング(ハウジング本体1)に収容されている。
【0014】
減速ギヤ機構4は、モータ3の出力軸32上に設けられたウォームシャフトと、ウォームシャフトと噛み合うウォームホイールWWとを有するウォームギヤ機構である。ウォームホイールWWは、ピニオンシャフトPSと同軸に設けられてピニオンPと一体に回転する。操舵アシスト時には、モータ3の駆動力は減速ギヤ機構4を介してピニオンPに伝達される。ピニオンシャフトPSにおいてウォームホイールWWよりも第2シャフトS2側にはトルクセンサTSが設けられ、ECUに接続されている。減速ギヤ機構4とトルクセンサTSはギヤユニットとして一体に構成され、同一のハウジング(ギヤハウジング2)に収容されている。
【0015】
ECUは、制御基板5上に設けられている。制御基板5は、センサ入力信号に基づきモータ3の駆動信号を出力する信号系基板50(回路基板)と、この駆動信号に基づきモータ3の電流を制御するパワー系基板(バスバアセンブリ)51とを有している(図2参照)。信号系基板50とパワー系基板51は一体のECUユニットとして構成されている。モータユニットとECUユニットは一体のモータECUユニットとして構成されており、同一のハウジング(ハウジング本体1)に収容されている。なお、制御基板5の一部(信号系基板50)はギヤハウジング2の内部に入り込んでいる。制御基板5は、ウォームシャフト(モータ出力軸32)に対してほぼ垂直に設置されている。
【0016】
信号系基板50は、トルクセンサTS、パワー系基板51、およびレゾルバ33と電気的に接続されている。パワー系基板51はコネクタ6を介してバッテリBATTと接続されている。モータ3のステータ30はパワー系基板51と接続されており、パワー系基板51から電源供給を受ける。
【0017】
パワー系基板(バスバアセンブリ)51は、バスバ部5aと電子部品部5bとを有している。バスバ部5aは、樹脂材料で形成された樹脂基板52と、樹脂基板52内にインモールドされるとともに樹脂基板52の一側面に突出するように設置されたバスバ53(電力供給用の金属板)とから構成されている。電子部品部5bは、樹脂基板52の他側面に設置された複数の電子部品(パワー系素子)54から構成されている。樹脂基板52は、樹脂材料で形成されているため、線膨張係数が金属材料よりも大きい。
【0018】
運転者によりステアリングホイールSWが操舵されると、ステアリングシャフトSSを介してピニオンシャフトPSに入力される操舵トルクがトルクセンサTSにより検出される。検出された操舵トルクは信号系基板50に出力される。信号系基板50は、検出された操舵トルクに基づいてパワー系基板51に駆動信号を出力し、モータ3を駆動制御する。モータ3により回転駆動されるピニオンPがラックRを駆動して軸方向移動させる。これにより運転者の操舵力がアシストされる。
【0019】
[ハウジングの詳細]
図3は、内部に部品を収容した状態のハウジング本体1の正面図であり、同図のA−A断面が図2に相当する。以下、説明の便宜上、3次元の直交座標系を設け、出力軸32が延びる方向にz軸をとり、ハウジング本体1の底部10に対して開口部の側を正方向とする。図3で、基板ハウジング部1bの長辺が延びる方向にy軸をとり、基板ハウジング部1bに対してモータハウジング部1aの側を正方向とする。y軸およびz軸に対して垂直方向にx軸をとり、ボルト穴13dに対してボルト穴13cの側(図3の左側)を正方向とする。
【0020】
ハウジング本体1は、金属材料(アルミニウム合金)によって底部10と外壁11が一体形成されており、z軸負方向側が底部10により閉塞され、z軸正方向側が開口するケースハウジングである。具体的には、ハウジング本体1は、アルミダイキャストにより成形されており、強度が高い。底部10は、xy平面とほぼ平行な板状に形成されており、底部10のy軸正方向側には、z軸方向から見てほぼ円形のモータ挿入孔100が開口して形成されている。
【0021】
外壁11は、底部10の外周からz軸方向に延びる側壁部分である。外壁11は、湾曲部11aと直線部11b,11cと小直線部11d,11eと小湾曲部11fを有している。
湾曲部11aは、モータ挿入孔100のy軸正方向側のほぼ2/3を取り囲む部分であり、z軸方向から見て、モータ挿入孔100と同様のほぼ円弧状である。
直線部は、湾曲部11aのy軸負方向側に連続してy軸方向に延びて形成され、z軸方向から見てほぼ直線状の部分であり、x軸正方向側の第1直線部11bとx軸負方向側の第2直線部11cとを有している。
小直線部は、直線部11b,11cのy軸負方向側に連続して形成され、z軸方向から見てほぼ直線状の部分であり、第1直線部11bのy軸負方向側の端からx軸負方向に向かってy軸負方向寄りにオフセットしつつ(傾きつつ)延びる第1小直線部11dと、第2直線部11cのy軸負方向側の端からx軸正方向に向かって第1小直線部11dと同様に傾きつつ延びる第2小直線部11eとを有している。
小湾曲部11fは、第1、第2小直線部11d,11eを接続する部分であって、z軸方向から見て、y軸正方向側に窪むように小さく湾曲して形成されている。
【0022】
外壁11のz軸正方向側の端部111は、端部111以外の外壁部分よりも外径側に突出して形成されている。以下、xy平面内でハウジング本体1の内周側(内部)から外周側(外部)へ向かう方向を外径方向ないし外径側といい、外周側(外部)から内周側(内部)へ向かう方向を内径方向ないし内径側という。端部111には、その外周に、外径方向に向かって延びるフランジ部12が形成されている。フランジ部12のz軸正方向側の面120と外壁11(端部111)のz軸正方向側の端面110は、同一平面上に設けられており、xy平面とほぼ平行である。言い換えると、端部111はフランジ部12の一部である。
【0023】
ハウジング本体1のy軸正方向側の端には、外径側(y軸正方向側)に突出する幅広のフランジ部12aが形成されており、フランジ部12aにはボルト孔13aがz軸方向に貫通形成されている。同様に、ハウジング本体1のy軸負方向側の端には、小湾曲部11fの窪み部分を覆うように外径側(y軸負方向側)に突出する幅広のフランジ部12bが形成されており、フランジ部12bにはボルト孔13bが形成されている。第1直線部11bと湾曲部11aの境界部位には、両部11a,11bに跨って、外径側(x軸正方向側)に突出する幅広のフランジ部12cが形成されており、フランジ部12cにはボルト孔13cが形成されている。同様に、第2直線部11cと湾曲部11aの境界部位には、外径側(x軸負方向側)に突出するフランジ部12dが形成されており、フランジ部12dにはボルト孔13dが形成されている。
【0024】
モータハウジング部1aは、モータ挿入孔100を取り囲む部位に形成されている。基板ハウジング部1bは、モータハウジング部1aのy軸負方向側に、モータハウジング部1aと一部重なりつつ形成されている。モータハウジング部1aと基板ハウジング部1bとの(y軸方向における)重なり部分をδとする。
【0025】
モータハウジング部1aは、外壁11と内壁14と蓋部15とを有している。モータハウジング部1aを構成する外壁11は、湾曲部11aおよび直線部11b,11cの一部(重なり部分δ)である。内壁14は、重なり部分δにおいて底部10からz軸正方向に延びて形成された壁部分であり、モータ挿入孔100を取り囲んで、z軸方向から見て円弧状に形成されている。内壁14は、湾曲部11aと一体になって円筒状のステータ設置部101を形成している。ステータ設置部101のz軸負方向側はモータ挿入孔100を介して外部に開口している。この開口部において、モータ挿入孔100の外周にはフランジ部13が形成されている。
【0026】
蓋部15は、外壁11(具体的には、湾曲部11aおよびこれに隣接する直線部11b,11cの一部(部分ε))のz軸正方向側の部位から内径方向に向かって広がり、xy平面とほぼ平行な板状に形成された部分であり、z軸方向から見て、ステータ設置部101のy軸正方向側の大部分を閉塞している。蓋部15は、外壁11の端面110から底部10に向かって(z軸負方向側に)やや落ち込んだ位置に形成されている。蓋部15の外周には、外壁11の端部111と蓋部15とに挟まれて、突出部16がz軸正方向に突出するように形成されている。突出部16は、z軸方向から見て、ステータ設置部101の形状にほぼ沿った円弧状である。
【0027】
蓋部15のy軸負方向側の端部151は、そのx軸方向中央部がy軸正方向側にほぼ矩形状に切り欠かれた凹形状である。端部151は、ハウジング本体1のz軸正方向側(開口側)において、モータハウジング部1aと基板ハウジング部1bとの境界を形成している。端部151のx軸正方向側は、外壁11の部分εと部分δとの境界からx軸負方向に向かって所定距離だけ延びる直線状の縁152と、縁152のx軸負方向側の端からy軸正方向に向かって所定距離だけ伸びる直線状の縁153とにより囲まれている。同様に、端部151のx軸負方向側は、部分εと部分δとの境界からx軸正方向に向かって延びる縁154と、縁154のx軸正方向側の端からy軸正方向に向かって伸びる縁155とにより囲まれている。縁153,155のy軸正方向側の端は、外壁11における湾曲部11aと直線部11b,11cとの境界とほぼ重なるy軸方向位置にある。
【0028】
蓋部15のz軸方向から見たほぼ中央には、z軸負方向側に落ち込んだ段差部156が形成されており、段差部156のほぼ中央には、モータ3の出力軸32より若干大径の貫通孔157が形成されている。段差部156のz軸負方向側には、貫通孔157の外周からz軸負方向に延びる突出部158が設けられており、突出部158の内周には軸受34が設置されている。
【0029】
ステータ設置部101の内周には、モータ3のステータ30が設置される。設置されたステータ30の一部はモータ挿入孔100からz軸負方向側に突出し、この突出部分はカップ状のモータカバー(フレーム)36により覆われている。モータカバー36は、z軸正方向側で開口し、この開口部の外周にはフランジ部360が設けられている。フランジ部360がハウジング本体1のフランジ部13に取り付けられることで、モータカバー36がハウジング本体1(モータハウジング部1a)に固定される。フランジ部13,360の間はシールされており、モータハウジング部1aがモータ挿入孔100を介して外部と連通することを防止している。
【0030】
モータカバー36の底部361のほぼ中央には軸受設置部362が形成されており、軸受設置部362には軸受35が設置されている。軸受35には、モータ3の出力軸32のz軸負方向側の端が設置されている。出力軸32のz軸正方向側の端は、貫通孔157を貫通して蓋部15から突出し、接続部材によりウォームシャフトと接続している。貫通孔157において、出力軸32は軸受34に設置されている。軸受34,35間における出力軸32には、ロータ31が一体に固定されている。ロータ31は、ステータ30の内周側に配置されている。すなわち、出力軸32は、ロータ31のz軸方向両側で、両軸受34,35により回転自在に支持されている。突出部16に囲まれた空間内であって段差部156のz軸正方向側には、レゾルバ33が、出力軸32の外周に設置されている。
【0031】
各部品の組付け時には、モータカバー36の内周面にステータ30が設置され、軸受35に出力軸32が設置され、出力軸32にロータ31が設置された状態のユニットが、モータ挿入孔100からモータハウジング部1a(ステータ設置部101)に挿入・設置される。
【0032】
基板ハウジング部1bは、第1収容部1cと第2収容部1dを有している。第1収容部1cは、底部10と外壁11と内壁14とにより囲まれている。第1収容部1cを構成する外壁11は、z軸正方向側の端部111を除いた部分であって、直線部11b,11c、小直線部11d,11e、および小湾曲部11fである。第2収容部1dは、外壁11の端部111と蓋部15の端部151とにより囲まれている。第2収容部1dを構成する外壁11(端部111)は、直線部11b,11cのεを除いた部分、小直線部11d,11e、および小湾曲部11fである。以下、これらの部位における外壁11をハウジング外壁11gという。
【0033】
第1、第2収容部1c、1dに囲まれて収容空間Rが形成されており、収容空間Rはz軸正方向側で開口している。言い換えると、ハウジング外壁11gは、内部に収容空間Rを形成するとともに、z軸正方向側に開口部を有し、この開口部は収容空間Rと連通する。
収容空間Rには、収容体として、パワー系基板(バスバアセンブリ)51が収容される。第2収容部1dには、バスバ部5a、言い換えると樹脂基板52が設置ないし収容される。第1収容部1cには、収容体として、電子部品部5b、すなわち樹脂基板52に設置された電子部品54が収容される。電気的絶縁確保のため、第1収容部1cの内周面には絶縁シートが貼付されている。なお、基板ハウジング部1bは、金属材料(アルミニウム合金)によって形成されているため、放熱性が良い。
【0034】
第1、第2収容部1c、1dの境界部位には、基板設置部112が形成されている。基板設置部112は、ハウジング外壁11gの周方向において4箇所に設けられている。なお、ハウジング外壁11gの周方向全範囲に設けることとしてもよい。図4は、図3のB−B部分断面を示す。基板設置部112は、周壁113と底部114を有しており、樹脂基板52の外周部52dを支持する。周壁113は、端部111の内周により構成されており、周壁113の内周面は端部111の内周面115と共通である。端部111の内周面115は、z軸方向から見て、樹脂基板52の外周面520とほぼ同様の形状を有している。
底部114は、第1収容部1cにおけるハウジング外壁11gのz軸正方向側の端から内径方向に突出するように形成されている。底部114のz軸正方向側の面(以下、底面116という。)は、xy平面とほぼ平行な平面状に形成されている。
【0035】
基板設置部112の底面116と端部111の端面110との間のz軸方向距離L1は、樹脂基板52のz軸方向厚さL0よりも、僅かな距離βだけ長く設けられている(L1=L0+β。図6参照)。言い換えると、樹脂基板52が基板設置部112に設置され、樹脂基板52のz軸負方向側の面523と底面116が当接した状態で、樹脂基板52のz軸正方向側の面522は、端面110に対して僅かにz軸負方向側に落ち込んだ位置にある。すなわち、樹脂基板52を設置した状態で、両面110,522間に所定の隙間(この隙間の大きさをβとする。)が形成されるように、端面110と底面116のz軸方向位置関係(距離L1)ないし樹脂基板52のz軸方向寸法L0が設定されている。βは、樹脂基板52およびハウジング本体1の線膨張係数や寸法を考慮して、所定の温度範囲内で、樹脂基板52の面522と(端面110に当接して設置され面522に対向する)ギヤハウジング2の端面20とが接触しないか、または接触したとしても樹脂基板52に不都合な応力が作用しないような値に設定されている。
また、上記設置状態で、周壁113の内周面115と樹脂基板52の外周面520との間に、ハウジング外壁11gの周方向全範囲において所定の大きさの隙間(この隙間の大きさをαとする。)が形成されるように、周壁113ないし樹脂基板52の形状や寸法が設定されている。αは、樹脂基板52およびハウジング本体1の線膨張係数や寸法を考慮して、所定の温度範囲内で内周面115と外周面520が接触しないか、または接触したとしても樹脂基板52に不都合な応力が作用しないような値に設定されている。
【0036】
樹脂基板52は、延設部52aと肩部52bと突出部52cとを有している。延設部52aは、樹脂基板52のy軸正方向側から突出して形成されている。肩部52bは、延設部52aのx軸方向両側に設けられている。突出部52cは、樹脂基板52のy軸負方向側から突出するように形成され、(図3のA−Aの)x軸方向両側に設けられている。z軸方向から見た樹脂基板52の外周の形状は、第2収容部1dの内周の形状とほぼ同じ(凸形状)である。樹脂基板52がハウジング本体に設置された状態で、延設部52aと蓋部15(モータハウジング部1a)の端部151との間の隙間はαと同様の大きさに設定されている。
【0037】
樹脂基板52のz軸正方向側には、面522から所定のz軸方向距離をおいて、信号系基板50が設置されている。信号系基板50は、樹脂基板52とほぼ平行に、外壁11の端面110に対してz軸正方向側にオフセットして設置されている。信号系基板50は、z軸方向から見て、樹脂基板52よりも若干小さく、樹脂基板52とほぼ相似した凸形状であり、y軸正方向側に突出した延設部50aを有している。レゾルバ33は、信号系基板50のy軸正方向側に隣接した位置に設置されている。z軸方向から見て、レゾルバ33の出力端子33aは、信号系基板50の延設部50aと重なる位置に配置され、z軸方向に延びて延設部50aに接続されている。
【0038】
樹脂基板52は、x軸両方向の肩部52b, 52bおよび突出部52c, 52cの計4箇所にボルト孔52k〜52nが設けられている。ボルト孔52k〜52nにボルトb1〜b4がそれぞれ挿通し、各基板設置部112に形成された雌ねじにボルトb1〜b4の雄ねじが螺合することで、樹脂基板52がハウジング本体に締結固定される。
図4に示すように、樹脂基板52の各ボルト孔52k〜52nには、インモールド成型により、位置決め部材8がインサート(固定設置)されている。位置決め部材8は、金属材料で形成された円筒状の部材(ボルト穴形成用の金属環ないしスリーブ)であり、その内周にボルトb1〜b4がそれぞれ挿通される。位置決め部材8の長さは樹脂基板52のz軸方向厚さL0よりも所定量だけ長く設定されている。位置決め部材8のz軸正方向側の端面は樹脂基板52のz軸正方向側の面522とほぼ同一面上に配置される一方、位置決め部材8のz軸負方向側は樹脂基板52のz軸負方向側の面523から上記所定量だけ突出するようにインモールドされている。
【0039】
基板設置部112には、位置決め部材8に対応して、位置決め部80が形成されている。位置決め部80は、位置決め部材8の外径よりも僅かに大きい直径を有し、基板設置部112の底面116からz軸負方向側に所定の深さまで形成された位置決め穴(嵌合孔)である。位置決め部80のz軸方向深さは、位置決め部材8の上記突出量よりも若干大きい寸法に設定されている。上記突出する位置決め部材8が位置決め部80に印ろう嵌合することにより、ハウジング本体1に対する樹脂基板52のxy平面内での位置決めが行われる。すなわち、位置決め部80の内周面は、位置決め部材8の外周面の相手側となり、上記内周面と上記外周面との間に僅かな隙間を有して(できるだけ小さい隙間を介して)位置決め部材8が位置決め部80に係合する。これにより、各基板設置部112で樹脂基板52が位置決めされる。このように、位置決め部材8と位置決め部80は、位置決め手段を構成している。
【0040】
ギヤハウジング2のz軸負方向側には開口部が設けられており、開口部の端面20は、ハウジング本体1の外壁11の(開口部側)端面110と当接(面接触)するように平面で形成されている。ギヤハウジング2の開口部の外周にはフランジ部2aが設けられている。フランジ部2aは、ハウジング本体1のフランジ部12に取り付けられる。ギヤハウジング2が蓋部材としてハウジング本体1の開口部を覆って閉塞し、上記端面20,110が当接した状態で、ボルト孔13a〜13d(とこれらに対応してフランジ部2aに設けられたボルト孔)にボルトが挿入され、フランジ部12,2a同士が締結される。すなわち、ギヤハウジング2とハウジング本体1が締結固定される。
【0041】
(シール構造)
ハウジング本体1(外壁11)の端部111には、ハウジング本体1とギヤハウジング2との間をシールするシール部材7を設置するための構造(シール部材7を収容するシール溝G)が設けられている。図5は、図3の破線で囲んだ部分Fの拡大図である。図5中、モータハウジング部1aにおけるシール溝GのD−D断面、および基板ハウジング部1bにおけるシール溝GのE−E断面を併せて示す。図6は、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面を模式的に拡大して示す図であり、図3のC−C断面に相当する。シール溝Gの断面とは、外壁11(シール溝G)を垂直に横切りz軸に平行な平面で切った断面である。
【0042】
基板ハウジング部1bでは、ハウジング外壁11gの周方向全範囲にわたって、端部111の内周側に断面L字状の切り欠き部117が設けられている。切り欠き部117により、シール溝Gの外周面118を構成する外壁部11hと、シール溝Gの底面119を構成する底部11iとが形成されている。一方、シール溝Gの内壁部(内周面)は、バスバ部5a(樹脂基板52)の外周部52d(外周面520)により構成されている。すなわち、基板ハウジング部1bには、(ギヤハウジング2が接合される開口側である)z軸正方向側に、収容体としてパワー系基板51(バスバ部5a)が設置される。このため、シール溝Gの内壁部を構成するために、収容体(バスバ部5a)を利用している。
【0043】
一方、モータハウジング部1aでは、湾曲部11aの周方向全範囲および直線部11b,11cの一部(湾曲部11aと基板ハウジング部1bとの間の接続部分ε)において、端部111の端面110に、断面凹状のシール溝Gが形成されている。シール溝Gの外周面118を構成する外壁部11hと、シール溝Gの底面119を構成する底部11iは、基板ハウジング部1bと共通である。しかし、モータハウジング部1aには、(ギヤハウジング2が接合される開口側である)z軸正方向側に、突出部16や蓋部15が端部111の内周に連続して形成されており、(シール溝内壁部として利用しうる)収容体が配置されていない。このため、シール溝Gを構成する内壁部11jは、外壁部11hおよび底部11iとともに、端部111に直接形成されている。内壁部11jは、シール溝底面119を挟んで外壁部11hと対向するように形成され、凹状のシール溝Gを構成している。内壁部11jのz軸正方向側の端面と、外壁部11hのz軸正方向側の端面は、ともに端部111の端面110であり、共通している。
【0044】
シール溝Gは、z軸方向から見て、外壁11とほぼ同一形状に設けられている。端部111においてシール溝Gが形成された部位の外周側には、フランジ部12が形成されている。すなわち、蓋部材としてのギヤハウジング2とハウジング本体1とを締結する部位(ボルト孔13)は、シール溝Gの外周側(外径側)に配置されている。
【0045】
(基板ハウジング部のシール溝)
図6に示すように、切り欠き部117は、端部111を開口部側(z軸正方向側)および収容空間R側(図6のx軸負方向側)から断面四角状に削り取った形状である。シール溝底面119は、切り欠き部117において、端面110からz軸負方向側に落ち込んだ位置にxy平面とほぼ平行に形成されており、端部111の内周面115に対してほぼ垂直な平面である。
【0046】
シール溝外壁部11hは、切り欠き部117において、シール溝底面119の外周(外径側)に位置する壁部であり、シール溝底面119よりもz軸正方向側、すなわちギヤハウジング2の側に突出して形成されている。シール溝外壁部11hのz軸正方向側の端面は、端部111の端面110である。すなわち、シール溝外壁部11hの開口部側の端面110は、ギヤハウジング2の端面20と(面同士で)当接するように形成されている。
【0047】
シール溝外壁部11hのz軸正方向側の端の内周(内径側)には、小切り欠き部11kが設けられている。小切り欠き部11kは、端部111(外壁部11h)を開口部側(z軸正方向側)および収容空間R側(図6のx軸負方向側)から四角状に削り取った形状である。小切り欠き部11kは、(モータハウジング部1aを含む)シール溝外壁部11hの周方向全範囲に設けられている。
【0048】
シール溝内壁部52eは、収容体に形成されており、樹脂基板52の外周部52dに設けられている。すなわち、樹脂基板52を基板ハウジング部1b(第2収容部1d)に設置した状態で、シール溝外壁部11hと対向する部位の樹脂基板52の外周部52dが、シール溝内壁部52eを構成している。シール溝内壁部52eは、ハウジング外壁11gと対向する外周部52dの周方向全範囲に設けられている。
【0049】
シール溝内壁部52eのz軸正方向側(ハウジング本体1の開口部側)の端には、小切り欠き部52fが設けられている。小切り欠き部52fは、樹脂基板52を開口部側(z軸正方向側)および収容空間R側(図6のx軸正方向側)から四角状に削り取った形状である。小切り欠き部52fは、シール溝内壁部52eの周方向全範囲に設けられている。なお、モータハウジング部1aの内壁部11jにも、同様の小切り欠き部が設けられている。
【0050】
上記底面119と外壁部11h(外周面118)と内壁部52e(内周面520)とにより、基板ハウジング部1bのシール溝Gが形成されている。
図6に示すシール溝Gの断面において、外壁部11hと内壁部52eの間の距離をW2とする。距離W2は、シール溝Gの幅(溝幅)に相当する。底面119は(図6のx軸方向で)所定の幅W1を有している。シール溝Gの幅W2は、底面119の幅W1よりも上記αだけ大きく設けられている(W1+α=W2)。
【0051】
底面119に対する外壁部11hの高さ(底面119と端面110との間のz軸方向距離)をH2とする。高さH2は、外壁部11hの側でのシール溝Gの深さに相当する。H2は、シール溝Gの幅W2よりも大きい値に設定されている(H2>W2)。
底面119に対する内壁部52eの高さ(底面119と樹脂基板52の面522との間のz軸方向距離)をH1とする、高さH1は、内壁部52eの側でのシール溝Gの深さに相当する。H1は、H2よりも小さく設けられている。差(H2−H1)が上記βに相当する(H1+β=H2)。よって、ギヤハウジング2をハウジング本体1に締結した図6の状態で、樹脂基板52の面522とギヤハウジングの端面20との間には大きさβの隙間が存在する。
一方、H1は、H2の半分よりも大きく設けられている(H1>H2/2)。言い換えると、シール溝Gの内壁側の深さ(シール溝内壁部52eの高さ)は、外壁側の深さ(シール溝外壁部11hの高さ)の半分以下とならないように設定されている。
なお、モータハウジング部1aにおいて、シール溝Gの外壁部11hおよび内壁部11jの高さはともにH2に設定され、底面116の幅(シール溝Gの幅)はW2に設定されている。
【0052】
シール溝外壁部11hには、図3に示すように、突起部9が設けられている。突起部9は、モータハウジング部1aにおいては湾曲部11aで3箇所(9a〜9c)に設けられ、基板ハウジング部1bにおいては直線部11b,11cおよび小湾曲部11fで3箇所(9d〜9f)に設けられている。突起部9は、シール溝Gのz軸方向における一部(開口側の端部)にのみ設けられており、シール溝Gのz軸方向全範囲にわたって設けられていない。突起部9は、シール溝内壁部11j,52eに向かって内径方向に突出する凸形状に形成されている。
【0053】
(モータハウジング部と基板ハウジング部との境界)
図3、図5に示すように、シール溝Gにおいて、モータハウジング部1aと基板ハウジング部1bの境界は、外壁11の直線部11b,11cに存在している。すなわち、ハウジング本体1(端部111)に設けられたシール溝内壁部11jと、樹脂基板52に設けられたシール溝内壁部52eとの境界は、直線部11b,11cに形成されている。直線部11b,11cでは、シール溝Gが直線形状に設けられている。
【0054】
図5に示すように、直線部11bにおける上記境界部では、モータハウジング部1aの蓋部15の縁152と、基板ハウジング部1bに設置された樹脂基板52の肩部52bのy軸正方向側の縁とが、僅かな隙間(この隙間の大きさをγとする。)を介して対向している。γは上記αとほぼ等しい。対向するこれらの縁152等はx軸方向に延びており、y軸方向に延びる直線部11bに対してほぼ直角をなしている。言い換えると、上記境界部におけるモータハウジング部1aの側の角部(エッジ)11lが、シール溝内壁部11jと縁152とにより挟まれてなす角度は、z軸方向から見てほぼ直角である。また、上記境界部における基板ハウジング部1bの側の角部(エッジ)52gが、シール溝内壁部52eと肩部52bの上記縁とにより挟まれてなす角度は、z軸方向から見てほぼ直角である。直線部11cにおける上記境界部でも同様に構成されている。
【0055】
上記角部11lはz軸方向から見てアール形状で形成されている。言い換えると、シール溝内壁部11jは、上記境界部に向かうにつれてシール溝外壁部11hから徐々に(内径側へ)離間するように形成された面取り部を有している。
同様に、上記角部52gはz軸方向から見てアール形状で形成されている。言い換えると、樹脂基板52に設けられたシール溝内壁部52eは、上記境界部に向かうにつれてシール溝外壁部11hから徐々に離間するように形成された面取り部を有している。
【0056】
(シール部材)
シール部材7は、弾性材料、具体的にはゴム系材料で形成されたシールリング(Oリング)である。図7は、シール部材7の径方向断面を模式的に示す。シール部材7の断面形状は完全な円形ではなく、楕円ないし扁平に設けられている。無負荷状態で、シール部材7のシール溝幅方向(シールリングの径方向)における最大寸法(直径d1)は、シール溝深さ方向(シールリングの軸方向)における最大寸法(直径d2)よりも小さく設けられている(d1<d2)。d1はシール溝幅W2より若干大きく、d2はシール溝深さH2より若干大きく設けられている。無負荷状態におけるシール部材7の断面の中心をOとする。
【0057】
シール部材7がシール溝Gに設置され、ギヤハウジング2がハウジング本体1に被せられ、締結固定されることで、シール部材7はシール溝底面119とギヤハウジング2の面20との間でz軸方向に押し潰され、シール溝G内で変形する。d1は若干大きくなる一方、d2は若干小さくなってH2と一致する。この設置状態におけるシール部材7の断面の中心をO' とする。
内壁部52eは、そのz軸正方向側の端面522が、シール溝に設置されたシール部材7の中心Oおよび中心O'よりも開口部側(z軸正方向側)に位置するように設けられている。具体的には、図4に示すように、基板設置部112の底面116からシール部材7の中心O'までのz軸方向距離L3よりも、樹脂基板52の厚さL0のほうが大きく設けられている。言い換えると、シール溝Gの外壁側深さH2またはシール部材7のシール溝深さ方向寸法d2は、中心O'が樹脂基板52の面522よりもz軸負方向側に位置する寸法に設定されている。中心O、O'間の距離は僅かであるため、中心Oについても同様である。
【0058】
(シール構造の作用)
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、シール溝底面119とギヤハウジング2の端面20との間で挟持される。シール部材7のz軸正方向側の端部は端面20に密着してシール面pを形成し、シール部材7のz軸負方向側の端部は底面119に密着してシール面qを形成する。これによりシール部材7は、外壁11(ハウジング本体1)とギヤハウジング2で包囲される空間内部を液密状態に保持し、外気とハウジングHSGの内部とを遮断するシール機能を発揮する。基板ハウジング部1bでは、ギヤハウジング2のフランジ部2a(端面20)とハウジング外壁11gの端面110との間の隙間を通って、ハウジングHSGの外部が内部(ハウジング外壁11gの内周面115と樹脂基板52の外周面520との間の隙間、およびギヤハウジング2の端面20と樹脂基板52の面522との間の隙間)と連通することが、シール面p,qにより防止される。
【0059】
モータハウジング部1aでは、外壁11の端部111に設けられたシール溝内壁部11jとシール溝外壁部11hが、シール部材7の内径側および外径側への移動を規制する。基板ハウジング部1bでは、樹脂基板52に設けられたシール溝内壁部52eがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、シール溝外壁部11hがシール部材7の外径側への移動を規制する。このように、シール溝内壁部11j ,52eおよびシール溝外壁部11hを有するシール溝Gにシール部材7を設置してハウジングHSGの内外をシールするため、内圧が大きいときも外圧が大きいときもシール性能を確保することができる。また、シール部材7が脱落することも防止できる。
【0060】
基板ハウジング部1bでは、シール溝内壁部52eを収容体であるバスバアセンブリ51(樹脂基板52)に形成したため、外壁11にシール溝内壁部を形成する必要がない。よって、外壁11をシール溝内壁部の分だけ薄く形成することができる。
すなわち、本実施例1と同様のEPSユニットにおいてシール溝内壁部を外壁11(端部111)に形成した場合を想定し、そのシール溝内壁部のシール溝幅方向寸法をΔとする。このEPSユニットのx軸方向寸法をX0とし、y軸方向寸法をY0とすると、X0,Y0には、Δの分が含まれている。
これに対し、本実施例1のシール構造を適用したEPSユニットでは、基板ハウジング部1bの外壁11(ハウジング外壁11gの端部111)にシール溝内壁部を設けないため、この外壁11(ハウジング外壁11gの端部111)をΔ分だけ薄く形成することができる。よって、ユニットの外径寸法は、x軸方向についてみると、外壁11の厚さが直線部11b,11cにおいてそれぞれΔだけ小さくなる分だけ、寸法X(図3参照)が上記寸法X0よりもΔ×2だけ小さくなる(X=X0−Δ×2)。y軸方向についてみると、小直線部11d,11eおよび小湾曲部11fにおける外壁11の厚さがそれぞれΔだけ小さくなる分だけ、寸法Y(図3参照)が上記寸法Y0よりもΔだけ小さくなる(Y=Y0−Δ)。x軸方向の寸法については、正負両側2箇所(直線部11b,11c)にΔ分の減少を適用できるため(Δ×2の分だけ小さくできるため)、コンパクト化の効果が大きいことがわかる。
よって、特に構成部品を増やすことなく容易に、EPSユニットの小型化を図ることができる。特に、機電一体型のユニットとして構成された本実施例1のような装置では、限られた車両スペースの中に設置するため、本実施例1のシール構造は好適である。
【0061】
また、基板ハウジング部1bにおいて、シール溝Gを構成する切り欠き部117(シール溝外壁部11hおよびシール溝底面119)の形状は段差形状であり、モータハウジング部1aのような凹形状ではないため、機械加工が容易である。すなわち、切り欠き部117は、シール溝幅方向の内径側がシール溝内壁部で閉鎖されておらず開放された構造であるため、切り欠き部117を例えば切削加工により形成する場合、加工用の機械をハウジング本体1の内周側(収容空間Rの側)にはみ出して設置することが可能である。よって、端部111に切り欠き部117を形成するのが容易である。また、凹形状の溝を形成する場合と異なり、シール溝底面119を精度よく加工することが容易である。
さらに、切り欠き部117を機械加工ではなく鋳造(ダイキャスト)によって形成することも可能である。この場合、切り欠き部117が段差形状であるため、シール溝底面119の精度を確保しつつ切り欠き部117を成型できる。よって、加工コストを低減できる。
【0062】
ギヤハウジング2とハウジング本体1とを締結する部位(フランジ部12のボルト孔13)は、シール溝Gの外周側(外径側)に配置されている。よって、シール溝Gに設置されるシール部材7以外に、ハウジング部材1,2同士の締結部位に別途シール部材を設置する必要がない。このため、部品点数を削減してコストを低減しつつ、ハウジングHSGのシール機能を実現できる。
【0063】
収容体である樹脂基板52は、樹脂材料で形成されているため、任意の形状を容易に形成することができる。
一方、ハウジング外壁11g(端部111)と樹脂基板52との間に大きさαの隙間を設けているため、ハウジング本体1と樹脂基板52の線膨張係数の違いを吸収させることができる。すなわち、ハウジングHSGの周囲(外気)または内部の温度が変化し、樹脂材である樹脂基板52とアルミ材であるハウジング本体1の熱膨張係数の違いにより、両者の径方向での(xy平面内での)相対位置が変化した場合でも、樹脂基板52とハウジング本体1が干渉しない。よって、例えば高温時に樹脂基板52が膨張しても、(樹脂製であり変形しやすい)樹脂基板52(バスバ部5a)にハウジング本体1からの押圧力が作用せず、樹脂基板52に応力が作用することが抑止される。
なお、樹脂基板52の延設部52aと蓋部15(モータハウジング部1a)の端部151との間にもαと同様の大きさの隙間が設けられているため、蓋部15(ハウジング本体1)と延設部52a(樹脂基板52)が干渉することが防止される。
【0064】
同様に、ハウジング外壁11gの端面110と樹脂基板52の面522との間に設けられた大きさβの隙間によって、樹脂基板52がギヤハウジング2と干渉することを防止できる。すなわち、ハウジング本体1とギヤハウジング2は突き当て面110,20によって突き当たる(当接する)ことで互いに位置決めされる。ここで、ギヤハウジング2の端面20と樹脂基板52の面522との間に大きさβの隙間が設けられることで、ギヤハウジング2と樹脂基板52とは接触せず、ギヤハウジング2が密着することにより発生する力は全てアルミ強度部材であるハウジング本体1が負担するため、(樹脂製であり変形しやすい)樹脂基板52(バスバ部5a)には外力が作用しない。
さらに、ハウジングHSGの周囲(外気)または内部の温度が変化し、樹脂基板52とハウジング本体1の線膨張係数の違いにより、樹脂基板52(面522)とギヤハウジング2(端面20)のz軸方向での相対位置が変化した場合でも、大きさβの隙間が設けられていることで、上記線膨張係数の違いを吸収させることができる。すなわち、樹脂基板52とギヤハウジング2が干渉せず、樹脂基板52にギヤハウジング2からの押圧力がほとんど作用しないため、樹脂基板52に応力が発生することが抑止される。
【0065】
一方、βは過度に大きくならないように設定されている。すなわち、樹脂基板52を基板設置部112に設置した状態で、シール溝内壁部52eの高さH1は、シール溝外壁部11hの高さH2の半分よりも大きくなるように設定されている。図6に示す組付け状態において、高さH2はシール部材7のz軸方向寸法に相当するため、シール溝底面119から高さH2のほぼ半分を隔てたz軸方向位置には、シール部材7の中心O' が存在する。このため、シール溝内壁部52eの端面522が、シール部材7の中心O'よりも開口部側に位置することになる。ギヤハウジング2をハウジング本体1に組付ける組付け前のシール部材7の中心Oについても、中心O'と同様である。よって、シール溝Gにシール部材7を設置した状態でギヤハウジング2を組付ける際、または組付けた後、シール部材7が樹脂基板52とギヤハウジング2との間の(大きさβの)隙間に噛み込まれるのを抑制できる。したがって、シール部材7が傷ついてシール性能が悪化することを防止できる。
【0066】
また、シール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部52eには、小切り欠き部11k,52fが設けられている。よって、シール部材7の逃げができ、シール溝Gにおいてシール部材7が占める体積の割合(充填率)を下げることができる。すなわち、ハウジング外壁11g(端部111)の幅をより小さく(厚さをより薄く)するためシール溝底面119の幅W1ないしシール溝Gの幅W2を小さく設定すると、シール溝Gにおける充填率が上がり、シール部材7がシール溝G内から幅方向にはみ出そうとしてシール溝外壁部11hやシール溝内壁部52eの開口側端部と干渉する場合がある。この場合、シール部材7が傷ついてシール性能が悪化するおそれがある。これに対し、本実施例1では小切り欠き部11k,52fを設けてシール溝Gに逃げを作っているため、充填率を下げることができ、これによりハウジング外壁11g(端部111)の幅を可及的に小さくしつつシール部材7の劣化を防止してシール性能を確保することが可能である。
【0067】
位置決め手段(位置決め部材8および位置決め部80)によって樹脂基板52がハウジング外壁11gに対して位置決めされている。よって、位置決め手段を設けず単にボルト等で締結した場合と比べ、樹脂基板52とハウジング外壁11gとの相対位置決め精度が高く、シール溝外壁部11hに対するシール溝内壁部52eの位置の精度が高い。よって、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの幅にバラツキが生じることを防止し、シール性を向上させることができる。また、樹脂基板52とハウジング外壁11g(端部111)の間の隙間の大きさを正確に(樹脂基板52の全周囲でバラツキなく)αに設定し、温度変化により樹脂基板52に押圧力が作用することをより確実に防止することができる。また、位置決め手段としては、位置決め部材8(金属環)を樹脂基板52にインモールドし、この位置決め部材8に嵌合する位置決め部80をハウジング本体1に形成するだけでよいため、部品点数を増加させることなく、簡易に位置決め手段を構成することができる。また、位置決め後、位置決め部材8の内周にボルトを挿通し、そのままねじ締結するだけでよいため作業性も良好であり、正確な位置決めを実現しつつ組付けコストを低減できる。
【0068】
シール溝Gは、幅方向よりも深さ方向に長い形状である。すなわち、シール溝Gの幅W2は、シール溝Gの外壁側深さH2よりも小さい値に設定されている(H2>W2)。
よって、シール部材7をシール溝Gに挿入する際、シール部材7がシール溝幅方向に短くなるように弾性変形すると同時に、シール部材7とシール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部52eとの間に接触面圧が生じる。よって、シール溝Gに組付けられたシール部材7が抜けにくくなり、シール溝Gにシール部材7を設置した状態でギヤハウジング2を組付ける際の作業性(組立作業性)を向上できる。
言い換えると、シール溝Gを上記のような細長形状とすることで、シール部材7の断面がほぼ円形に近いような場合(d1≒d2)には接触面圧を大きくすることができる一方、シール部材7の断面の扁平率が高い場合(d2>d1)には所定の接触面圧を確保することが可能になる。
【0069】
またシール部材7は、その断面がシール溝Gの幅方向よりも深さ方向に長い形状である。すなわち、シール部材7のシール溝深さ方向寸法(直径d2)は、シール溝幅方向寸法(直径d1)よりも大きい(d2>d1)。よって、シール溝Gに挿入されたシール部材7とシール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部52eとの間に、d1≒d2である場合よりも多くの接触面積が得られる。よって、シール溝Gに組付けられたシール部材7を更に抜けにくくし、組立作業性をより向上できる。
【0070】
シール溝外壁部11hには突起部9が設けられているため、シール部材7がシール溝から脱落するのをより確実に抑制することができる。すなわち、ハウジング本体1の開口部を封止する蓋部材は(減速ギヤ機構4等を収容する)ギヤハウジング2であり、質量の大きいアセンブリ体である。このため、組付け時には、より軽いハウジング本体1(モータECU)のシール面を鉛直方向下側や水平方向に向けながら組付けることが有利である。このように組付ける場合、シール溝Gに嵌め込んだシール部材7がシール溝Gから脱落しないようにする必要性が高くなる。本実施例1では、シール溝Gの周方向の複数箇所において突起部9を設けてシール溝Gの幅を狭くし、上記複数個所でシール部材7をシール溝幅方向に締め付ける。よって、上記組付け時に、シール部材7の脱落をより確実に抑制し、組立作業性をより向上できる。
【0071】
モータハウジング部1a(シール溝内壁部52eの設けられない領域)において、外壁11(端部111)にはシール溝内壁部11jが形成されており、このシール溝内壁部11jがシール溝底面119を挟んでシール溝外壁部11hと対向することでシール溝Gが構成されている。よって、樹脂基板52が設置されない領域(湾曲部11aおよび直線部11b,11cの部分ε)においても、シール部材7をシール溝Gの内外壁部11j,11hによって保持することができため、シール性を向上させることができる。
【0072】
モータハウジング部1aにおいて外壁11(端部111)に設けられたシール溝内壁部11jと、基板ハウジング部1bにおいて樹脂基板52に設けられたシール溝内壁部52eとの境界部は、直線部11b,11cに形成されている(図3、図5参照)。直線部11b,11cにおいてはシール溝Gが直線状に設けられており、シール部材7がほぼ真直ぐな状態でシール溝Gに配置される。よって、上記境界部を例えば湾曲部11aと直線部11b,11cとが接続する屈曲部に設けた場合と異なり、シール部材7が境界部へ噛み込まれることが抑制される。すなわち、シール溝内壁部11jとシール溝内壁部52eとの境界部(大きさγの隙間)にシール部材7が挟み込まれるのを抑制することができる。
また、上記境界部において、樹脂基板52(角部52g)と蓋部15(角部11l)の境界面(大きさγの隙間)とシール溝G(に収容されるシール部材7)とがなす角度はほぼ直角である。よって、例えばシール部材7をシール溝Gに組み込む際にシール部材7が周方向にずれ、そのズレを修正しようとする場合でも、上記境界面においてシール部材7が角部52gに引っかかることも角部11lに引っかかることも抑制されるため、修正が容易である。また、その際にシール部材7を傷つけることも防止できる。
【0073】
さらに、シール溝内壁部11j,52e(角部11l, 52g)は、上記境界部(大きさγの隙間)に向かうにつれてシール溝外壁部11hから徐々に離間するように形成された面取り部(アール形状)をそれぞれ有している。このように面取り部を形成することにより、シール部材7がシール溝内壁部11j,52e(角部11l, 52g)によって傷付けられるのを抑制することができる。すなわち、シール部材7がシール溝内壁部11g,52e(角部11l, 52g)に密着した場合であっても、上記境界部を通過するシール部材7の部分に作用する圧力が小さくなるため、上記部分におけるシール部材7の傷付きや切れの発生を抑制できる。
【0074】
[実施例1の効果]
以下、実施例1から把握される本発明のシール構造の効果を列挙する。
【0075】
(1)実施例1のシール構造は、内部に収容空間Rを形成するように設けられ、一方側(z軸正方向側)に収容空間Rと連通する開口部を有するハウジング外壁11gと、上記開口部を閉塞する蓋部材(ギヤハウジング2)と、ハウジング外壁11gの開口部側端部111と蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、ハウジング外壁11gと蓋部材で包囲される収容空間R内部を液密状態に保持するシール部材7と、収容空間Rに収容される収容体(樹脂基板52)と、ハウジング外壁11gの開口部側端部111に形成され、蓋部材との間にシール部材7を挟持するシール溝底面119と、ハウジング外壁11gの開口部側端部111であってシール溝底面119よりも外周側(外径側)に設けられ、シール溝底面119よりも蓋部材側(z軸正方向側)に突出するように形成され、開口部側の端面110が蓋部材と当接するように形成されると共に、シール部材7の外周側を包囲するシール溝外壁部11hと、収容体に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側(内径側)への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部52eと、を有することとした。
よって、ハウジング外壁11g(開口部側端部111)をシール溝内壁部の分だけ薄く形成できるため、本シール構造が適用される装置(EPSユニット)の寸法を抑制して小型化を図ることができる。
【0076】
(2)ハウジング外壁11gは金属材料によって形成され、収容体(樹脂基板52)は、金属材料よりも線膨張係数が大きい樹脂材料で形成され、かつハウジング外壁11gとの間に(大きさαの)隙間が設けられるように形成されることとした。
よって、任意の形状の収容体を容易に形成することができる。また、(大きさαの)隙間によってハウジング外壁11gと収容体の線膨張係数の違いを吸収し、収容体の変形を防止することができる。
【0077】
(3)シール溝内壁部52eは収容体(樹脂基板52)に形成され、ハウジング外壁(外壁11)は、収容体のシール溝内壁部52eの設けられない領域(モータハウジング部1a)においてシール溝底面119を挟んでシール溝外壁部11hと対向するように形成された(ハウジング外壁側)シール溝内壁部11jを更に備えることとした。
よって、収容体の設けられない領域においてもシール部材7をシール溝Gの内外壁部11j,11hによって保持することができ、シール性を向上させることができる。
【0078】
(4)ハウジング外壁(外壁11)は、シール溝外壁部11hおよびシール溝底面119が湾曲するように形成された湾曲部11aとこれらシール溝外壁部11hおよびシール溝底面119がほぼ直線形状に形成された直線部11b,11cとを有し、ハウジング外壁(外壁11)は、湾曲部11aにおいてシール溝底面119を挟んでシール溝外壁部11hと対向するように形成された(ハウジング外壁側)シール溝内壁部11jを更に備え、シール溝内壁部52eは収容体(樹脂基板52)に形成され、(ハウジング外壁側)シール溝内壁部11jと収容体のシール溝内壁部52eとの境界部は、ハウジング外壁(外壁11)の直線部11b,11cに形成されることとした。
よって、シール溝内壁部11jとシール溝内壁部52eとの間の隙間(境界部)にシール部材が挟み込まれるのを抑制し、シール部材7の耐久性を向上しつつシール性を確保することができる。
【0079】
(5)(ハウジング外壁側)シール溝内壁部11jまたは収容体のシール溝内壁部52eは、境界部に向かってシール溝外壁部11hと徐々に離間するように形成された面取り部を有することとした。
よって、ハウジング外壁側シール溝内壁部または収容体の角部11l, 52gによってシール部材が傷付けられるのを抑制し、シール部材7の耐久性を向上しつつシール性を確保することができる。
【0080】
(6)収容体のシール溝内壁部52eは、このシール溝内壁部52eの開口部側端面522が、ハウジング外壁11gへの組み付け状態において、シール部材7の断面における中心Oよりも開口部側(z軸正方向側)に位置するように形成されることとした。
よって、シール部材7が収容体(樹脂基板52)と蓋部材(ギヤハウジング2)との間に挟み込まれるのを抑制し、シール部材7の耐久性を向上しつつシール性を確保することができる。
【0081】
(7)シール部材7は、このシール部材7の断面形状が、シール溝外壁部11h、シール溝底面119およびシール溝内壁部52eとから形成されるシール溝Gの幅方向(の寸法)d1よりも深さ方向の寸法d2が大きくなるように形成されることとした。
よって、シール溝Gに組付けられたシール部材7が抜けにくく、組付けの作業性を向上できる。
【0082】
(8)シール溝外壁部11hは、このシール溝外壁部11hに設けられシール溝内壁部52eに向かって凸形状に形成された突起部9d〜9fを有することとした。
よって、突起部9d〜9fによりシール部材7の脱落を抑制し、組付けの作業性を向上できる。
また、シール溝外壁部11hの開口部側端部に突起部9d〜9fを設けたため、突起部9d〜9fを形成する際にいわゆる無理抜きをする必要がなく、型抜きが容易である。
また、収容体が設けられない領域(モータハウジング部1a)のシール溝外壁部11hにも突起部9a〜9cを設けたため、より効果的にシール部材7の脱落を抑制することができる。
【0083】
(9)シール溝内壁部52eは収容体(樹脂基板52)に形成され、収容体は、樹脂材料で形成されると共に、この収容体にインモールドされ金属材料で形成された位置決め部材8を更に備え、ハウジング外壁11gは、位置決め部材8が係合することによりこのハウジング外壁11gに対する収容体の位置決めを行う位置決め部80を有することとした。
よって、シール溝外壁部11hとシール溝内壁部52eの相対位置精度を高くし、シール性を向上させることができる。
【実施例2】
【0084】
実施例2のシール構造では、シール部材7の断面形状が、シール溝底面119の側においてほぼ矩形形状に形成されている。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
図8は、実施例2のシール部材7の径方向断面を模式的に示す。シール部材7の断面形状は、中心Oを挟んで、シール溝Gの開口側(z軸正方向側)は実施例1と同様の楕円である一方、シール溝底面119の側(z軸負方向側)はほぼ矩形である。すなわち、中心Oよりシール溝底面119の側の半分は、シール溝幅方向における長さがd1、シール溝深さ方向における長さがd2の半分(d2/2)の長方形であり、平面状の底面70とz軸にほぼ平行な側面71,72とを有している。
【0086】
シール部材7の底面70とシール溝Gの底面119との接触面積は、実施例1よりも多い。よって、EPSユニットの組み立て時、シール溝G内に組み付けられたシール部材7がシール溝Gの幅方向や周方向にズレようとしても、両底面70,119の間の接触による滑り抵抗が大きいため、ズレが防止される。よって、シール部材7の組み付け状態においてシール部材7を実施例1よりも抜けにくくすることができる。
また、シール部材7の側面71,72と、シール溝内外壁部11j,52e,11hとの間に、実施例1よりも多くの接触面積が得られる。よって、シール部材7がシール溝Gの開口側に向かってシール溝深さ方向にズレようとしても、側面71,72とシール溝内外壁部11j,52e,11hとの間の接触による滑り抵抗が大きいため、ズレが防止される。よって、シール部材7の組み付け状態においてシール部材7をより抜けにくくすることができる。
【0087】
(10)シール部材7は、このシール部材7の断面形状が、シール溝底面119の側においてほぼ矩形形状に形成されることとした。
よって、シール部材をより抜けにくくすることができる。
【実施例3】
【0088】
実施例3のシール構造は、シール溝内壁部が、蓋部材であるギヤハウジング2に設けられている。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
図9は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
樹脂基板52の外周部52dのz軸正方向側の端には、ハウジング外壁11gの端部111と対向する部位において、切り欠き部521が設けられている。切り欠き部521は、外周部52dを開口部側(z軸正方向側)およびハウジング外壁11gの側(図9のx軸正方向側)から断面四角状に削り取った形状である。
【0090】
ギヤハウジング2のフランジ部2aには、シール溝内壁部2bが設けられている。シール溝内壁部2bは、フランジ部2aの端面20からz軸負方向側に突出するように形成されている。
シール溝内壁部2bのz軸負方向側(ハウジング本体1の開口部側)の端の外周には、小切り欠き部24が設けられている。小切り欠き部24は、シール溝内壁部2bをz軸負方向側およびハウジング外壁11gの側(図9のx軸正方向側)から四角状に削り取った形状である。小切り欠き部24は、シール溝内壁部2bの周方向全範囲に設けられている。
【0091】
ギヤハウジング2をハウジング本体1に設置した状態で、シール溝内壁部2bは、樹脂基板52の切り欠き部521内に、所定の隙間を介して配置される。内壁部2b(の内周面22)と切り欠き部521との間には、(図9のx軸方向で)大きさα' の隙間が設けられている。内壁部2b(の先端面23)と切り欠き部521との間には、(z軸方向で)大きさβ'の隙間が設けられている。上記α' は、ハウジング外壁11g(端部111の内周面115)と樹脂基板52との間に設けられた隙間の大きさαとほぼ等しく設けられている。また、上記β'は、樹脂基板52の面522と端面110(端面20)との間に設けられた隙間の大きさβとほぼ等しく設けられている。なお、α' ,β' は、樹脂基板52とハウジング本体1の線膨張係数の違いを吸収できる大きさであれば足り、それぞれα、βと異なっていてもよい。
【0092】
シール溝内壁部2bの外周面21は、シール溝外壁部11h(シール溝Gの外周面118)と対向しており、外周面21はシール溝Gの内周面として機能する。底面119と外壁部11h(外周面118)と内壁部2b(内周面21)とにより、基板ハウジング部1bのシール溝Gが形成されている。
外壁部11hと内壁部2bの間の距離W2は、シール溝Gの幅(溝幅)に相当する。z軸方向から見て、内壁部2bの外周面(シール溝Gの内周面)21は、樹脂基板52の外周面520とほぼ一致しているため、外周面520と外壁部11hとの間の距離もW2である。距離W2は、底面119の幅W1よりもαだけ大きく設けられている(W1+α=W2)。なお、シール溝Gの内周面21と樹脂基板52の外周面520は、必ずしも一致していなくてもよい。
【0093】
端面20に対する内壁部2bの高さ(端面20と先端面23との間のz軸方向距離)をH3とする。高さH3は、内壁部2bの側でのシール溝Gの深さに相当する。H3は、H2よりも小さく、かつH2の半分よりも大きく設けられている(H3>H2/2)。言い換えると、シール溝Gの内壁側の深さ(シール溝内壁部2bの高さ)は、外壁側の深さ(シール溝外壁部11hの高さ)の半分以下とならないように設定されている。
【0094】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、シール溝底面119とギヤハウジング2の端面20との間で挟持され、外壁11とギヤハウジング2で包囲される空間内部を液密状態に保持する。基板ハウジング部1bでは、シール溝内壁部2bがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、シール溝外壁部11hがシール部材7の外径側への移動を規制する。
基板ハウジング部1bでは、シール溝内壁部2bを蓋部材であるギヤハウジング2に形成したため、外壁11にシール溝内壁部を形成する必要がない。
【0095】
(11)蓋部材に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部2bを有することとした。
よって、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0096】
実施例4のシール構造は、実施例1のシール構造(シール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部52e)にテーパ面を設けたものである。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
図10は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝外壁部11hは、シール溝底面119から開口部側(z軸正方向側)に向かって、端部111の内周面115との間の(図10のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように、テーパ(勾配ないし傾き)が付けられている。すなわち、外壁部11hにおいて構成されるシール溝Gの外周面118は、開口部に向かって外径側に傾くテーパ面(斜面)として形成されている。
一方、シール溝内壁部52eは、シール溝底面119から開口部側(z軸正方向側)に向かって、樹脂基板52の外周面520との間の(図10のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように、テーパが付けられている。すなわち、内壁部52eにおいて構成されるシール溝Gの内周面は、開口部に向かって内径側に傾くテーパ面として形成されている。
【0098】
言い換えると、シール溝Gの外壁部11hおよび内壁部52eは、シール溝底面119の側から開口部側に向かって、外壁部11hと内壁部52eとの間の間隔が徐々に大きくなるように、テーパ面が形成されている。このように、シール溝Gにおいては、上方(z軸正方向側)と下方(z軸負方向側)の口径に差が設けられており、開口側(z軸正方向側)の口径(溝幅)のほうが大きい。
なお、本実施例4では、実施例1と異なり、小切り欠き部11k,52fは設けられていない。テーパ面を形成することで、小切り欠き部11k,52fの機能は実現されるからである。
【0099】
型を用いてシール溝外壁部11hまたはシール溝内壁部52eを成形することとした場合、抜き勾配をそのままテーパ面として利用できるため、加工が容易である。例えば、ハウジング本体1をアルミダイキャストによって成形する際、シール溝外壁部11hを同時に形成することとした場合も、抜き勾配をテーパ面として利用できるため、加工コストを低減できて有利である。
【0100】
例えば、組付け誤差により樹脂基板52がハウジング外壁11gに対して傾いて組付けられた場合であっても、テーパ面が形成されていることによって、シール溝Gの開口端の隙間(溝幅)が狭められることを抑制することができる。また、製造誤差により例えば樹脂基板52の外周面520が側面522,523に対して傾いて形成されることを予め防止し、シール溝Gの開口端の隙間(溝幅)が狭められることを抑制することができる。
よって、実施例1と同様の作用効果を得つつ、シール部材7の挿入性が悪化することを抑制し、シール部材7の組付け性を向上させることができる。
テーパ面の傾き(勾配)は、製造・組付け誤差やシール部材7の挿入性を考慮した所定の大きさに設定されている。
【0101】
なお、外壁部11hまたは内壁部52eの一方のみに上記テーパ面を形成することとしてもよい。この場合、樹脂基板52が傾いて組付けられたとき、傾いた一方側のシール溝Gにおける開口端の隙間は狭められるが、他方側のシール溝Gにおける開口端の隙間は逆に広げられる。上記一方側の開口端の隙間が狭められても、外壁部11hまたは内壁部52eの一方に上記テーパ面が形成されているため、隙間が過度に小さくなることが抑制され、これによりシール部材7の挿入性の悪化を抑制できる。
【0102】
本実施例4では、外壁部11hおよび内壁部52eの両方に上記テーパ面を形成しており、外壁部11hおよび内壁部52eにより形成されるテーパ角は、多少の組付け誤差があっても、(基板ハウジング部1bにおける)シール溝Gの全周にわたって、開口側へ向かって開くように設けられている。よって、樹脂基板52が傾いて組付けられた場合、傾いたどちらの側においても、すなわち(基板ハウジング部1bにおける)シール溝Gの全領域において、溝幅が底面119の側よりも開口部側のほうが大きくなる。よって、シール溝Gにおける開口端の隙間が狭められることがより確実に防止される。したがって、樹脂基板52がハウジング外壁11gに対して傾いて組付けられた場合であっても、シール部材7が設置される全領域においてシール部材7の挿入性が良好であり、シール部材7の組付け性をより向上させることができる。
【0103】
(12)シール溝内壁部52eは収容体(樹脂基板52)に形成され、シール溝外壁部11hまたはシール溝内壁部52eは、シール溝外壁部11hとシール溝内壁部52eとの間の間隔がシール溝底面119の側から開口部側端部に向かって徐々に大きくなるように形成されたテーパ面を有することとした。
よって、シール部材7の挿入性の悪化を抑制し、組付け性を向上することができる。
【0104】
(13)シール溝外壁部11hまたはシール溝内壁部52eに形成されたテーパ面は、シール部材7が設けられる全領域においてシール溝外壁部11hとシール溝内壁部52eとの間の間隔がシール溝底面119の側から開口部側端部に向かって徐々に大きくなるように形成されることとした。
よって、シール部材が設けられる全領域においてシール部材7の組付け性を向上させることができる。
【実施例5】
【0105】
実施例5のシール構造は、実施例3のシール構造(シール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部2b)にテーパ面を設けたものである。他の構成は実施例3と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
図11は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝外壁部11hは、実施例4と同様のテーパが付けられており、シール溝Gの外周面118は開口部に向かって外径側に傾くテーパ面として形成されている。
シール溝内壁部2bは、端面20から収容空間Rの側(z軸負方向側)に向かって、端部111の内周面115との間の(図11のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように、テーパが付けられている。すなわち、内壁部2bにおいて構成されるシール溝Gの内周面21は、ハウジング本体1の開口部と反対方向に向かって内径側に傾くテーパ面として形成されている。
なお、本実施例4では、実施例1と異なり、小切り欠き部11k,52fは設けられていない。テーパ面を形成することで、小切り欠き部11k,52fの機能は実現されるからである。
【0107】
シール部材7を切り欠き部117に設置した状態で、ハウジング本体1をギヤハウジング2に組付ける際、シール溝内壁部2b(シール溝Gの内周面21)は、シール部材7の内周側に挿入される。その際、内壁部2bにテーパ面が形成されているため、シール溝内壁部2bの挿入性が悪化することを抑制し、ハウジング本体1とギヤハウジング2の組付け性を向上させることができる。例えば、組付け時にシール溝内壁部2bがシール溝外壁部11hに対して傾く場合があっても、テーパ面によって、シール溝内壁部2b(の先端部)とシール溝外壁部11hの間の(x軸方向)隙間が狭められるのを抑制することができる。また、製造誤差があったとしても、テーパ面を設けることにより、シール溝内壁部2bが端面20に対して(外径側に)傾くことを予め防止できる。よって、シール溝内壁部2bの挿入性が悪化しない。
そして、シール溝外壁部11hにもテーパ面が形成されているため、上記挿入性を向上することができる。
型を用いてシール溝外壁部11hまたはシール溝内壁部2bを成形することとした場合、抜き勾配をそのままテーパ面として利用できるため、加工が容易である。
テーパ面の傾き(勾配)は、シール溝内壁部2bの挿入性を考慮した所定の大きさに設定されている。
なお、外壁部11hまたは内壁部2bの一方のみに上記テーパ面を形成することとしてもよい。
よって、シール部材7がハウジング本体1および基板に組付けられた状態でギヤハウジング2を組み込む際、シール溝内壁部52eのシール部材7内周への挿入性が悪化することを抑制し、ギヤハウジング2の組付け性を向上させることができる。
【0108】
(14)シール溝内壁部2bは蓋部材(ギヤハウジング2)に形成され、シール溝内壁部2bは、その外周側に、シハウジング外壁11gにより形成される収容空間Rに向かってハウジング外壁11g(の内周面115)からの距離が徐々に大きくなるように形成されたテーパ面を有することとした。
よって、ハウジング本体1とギヤハウジング2の組付け性を向上させることができる。
【実施例6】
【0109】
実施例6のシール構造は、基板ハウジング部1bにおいて、シール溝底面がハウジング外壁11gではなく、収容体である樹脂基板52に形成されている。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
図12は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
ハウジング外壁11gの端部111には、実施例1のような切り欠き部117が設けられておらず、シール溝外壁部11hのみが設けられている。シール溝外壁部11hの内周面は、端部111の内周面115であり、この内周面115がシール溝Gの外周面を構成している。
シール溝外壁部11hのz軸正方向側の端に小切り欠き部11kが設けられている点は、実施例1と同様である。
【0111】
シール溝Gの内壁部および底面は、樹脂基板52の外周部52dにより構成されている。すなわち、外周部52dのz軸正方向側の端には、シール溝外壁部11hと対向する部位において、切り欠き部524が設けられている。切り欠き部524は、外周部52dを開口部側(z軸正方向側)およびハウジング外壁11gの側(図12のx軸正方向側)から断面四角状に削り取った形状である。切り欠き部117により、シール溝Gの内周面525を構成する内壁部52eと、シール溝Gの底面526を構成する底部52hとが形成されている。
シール溝内壁部52eのz軸正方向側の端に小切り欠き部52fが設けられている点は、実施例1と同様である。
【0112】
上記底面526と外壁部11h(外周面115)と内壁部52e(内周面525)とにより、基板ハウジング部1bのシール溝Gが形成されている。
外壁部11hと内壁部52eの間の距離(シール溝Gの幅)W2は、底面526の幅W1よりもαだけ大きく設けられている(W1+α=W2)。シール部材7のシール溝幅方向における最大寸法(直径d1)は、設置状態でシール部材7が押し潰されたときに、シール溝幅W2より若干大きくなるように設けられている。
【0113】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、樹脂基板52のz軸正方向側の端部に形成されたシール溝底面526とギヤハウジング2の端面20との間で挟持され、外壁11とギヤハウジング2で包囲される空間内部を液密状態に保持する。シール部材7のz軸正方向側の端部は端面20に密着してシール面pを形成する。挟持されてシール溝幅方向に膨らむシール部材7の外径側(図12のx軸正方向側)の端部はシール溝外壁部11hの内周面115に密着してシール面rを形成する。
すなわち、ギヤハウジング2のフランジ部2a(端面20)とハウジング外壁11gの端面110との間の隙間を通って、ハウジングHSGの外部が内部(ハウジング外壁11gの内周面115と樹脂基板52の外周面520との間の隙間)と連通することは、シール面p,rにより防止される。
シール溝内壁部52eがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、シール溝外壁部11hがシール部材7の外径側への移動を規制する。
【0114】
基板ハウジング部1bでは、シール溝内壁部52eを収容体である樹脂基板52に形成したため、外壁11にシール溝内壁部を形成する必要がない。よって、実施例1と同様、外壁11をシール溝内壁部の分だけ薄く形成することができ、装置の小型化を図ることができる。
また、本実施例6では、シール溝Gの内壁部52eだけでなく底面526をも収容体である樹脂基板52に形成したため、外壁11にシール溝底面を形成する必要がない。よって、外壁11をシール溝内壁部の分だけでなくシール溝底面の分も薄く形成することができ、装置のより一層の小型化を図ることができる。
また、実施例1のような切り欠き部117を端部111に設ける必要がなく、ハウジング本体1の作成がより容易である。
【0115】
(15)内部に収容空間Rを形成するように設けられ、一方側に収容空間Rと連通する開口部を有するハウジング外壁11gと、上記開口部を閉塞する蓋部材(ギヤハウジング2)と、収容空間Rに収容される収容体(樹脂基板52)と、収容体と蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、ハウジング外壁11gと蓋部材で包囲される収容空間R内部を液密状態に保持するシール部材7と、収容体の蓋部材側(z軸正方向側)端部に形成され、蓋部材との間にシール部材7を挟持するシール溝底面526と、ハウジング外壁11gの開口部側端部111であってシール溝底面526よりも蓋部材側に突出するように形成され、開口部側の端面110が蓋部材と当接するように形成されると共に、シール部材7の外周側を包囲するシール溝外壁部11hと、収容体に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部52eと、を有することとした。
よって、ハウジング外壁11gをシール溝内壁部52eおよびシール溝底面526の分だけ薄く形成することができる。よって、装置の小型化を図ることができる。
【実施例7】
【0116】
実施例7のシール構造は、実施例6のシール構造(シール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部52e)に、実施例4と同様のテーパ面を設けたものである。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0117】
図13は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝外壁部11hは、シール溝底面526の近傍から開口部側(z軸正方向側)に向かって、端部111の内周面115との間の(図13のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように、テーパが付けられている。すなわち、外壁部11hにおいて構成されるシール溝Gの外周面115は、開口部に向かって外径側に傾くテーパ面として形成されている。
一方、シール溝内壁部52eは、シール溝底面526から開口部側(z軸正方向側)に向かって、樹脂基板52の外周面520との間の(図13のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように、テーパが付けられている。すなわち、内壁部52eにおいて構成されるシール溝Gの内周面525は、開口部に向かって内径側に傾くテーパ面として形成されている。
【0118】
言い換えると、シール溝Gの外壁部11hおよび内壁部52eは、シール溝底面526の側から開口部側に向かって、外壁部11hと内壁部52eとの間の間隔が徐々に大きくなるように、テーパ面が形成されている。また、実施例6のような小切り欠き部11k,52fは設けられていない。
シール部材7の寸法(直径d1、d2)や、外壁部11hと内壁部52eのテーパ角ないし両者間の距離(シール溝Gの幅)は、設置状態でシール部材7が押し潰されたときに、シール面rが形成されるように設けられている。
なお、外壁部11hまたは内壁部52eの一方のみに上記テーパ面を形成することとしてもよい。
【0119】
(16)内部に収容空間Rを形成するように設けられ、一方側に収容空間Rと連通する開口部を有するハウジング外壁11gと、開口部を閉塞すると共に、ハウジング外壁11gの開口部側端面110と当接するように形成された蓋部材(ギヤハウジング2)と、ハウジング外壁11gの開口部側端部111と蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、ハウジング外壁11gと蓋部材で包囲される収容空間R内部を液密状態に保持するシール部材7と、収容空間Rに収容される収容体(樹脂基板52)と、ハウジング外壁11gの内周面115において開口部に向かって徐々に外周側(外径側)に傾くように形成されたテーパ状のシール部材第1保持部(シール溝外壁部11h)と、蓋部材に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側(内径側)への移動を規制するように形成されたシール部材第2保持部(シール溝内壁部52e)と、を有することとした。
よって、実施例6と実施例4の作用効果をともに得ることができる。
【実施例8】
【0120】
実施例8のシール構造は、実施例6の樹脂基板52における切り欠き部524の代わりにテーパ部52iを設けたものである。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0121】
図14は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝Gの内壁部および底面は、共通のテーパ面527として、樹脂基板52の外周部52dにより構成されている。すなわち、外周部52dのz軸正方向側の端には、シール溝外壁部11hと対向して、テーパ部52iが設けられている。テーパ部52iは、外周部52dのz軸正方向側の端部を1つの平面によって斜めに削り取って形成されており、断面三角状である。テーパ部52iにより、シール溝Gの内周面を構成する内壁部と、シール溝Gの底面を構成する底部とが一体に形成されている。言い換えると、テーパ部52iが有するテーパ面527は、シール溝Gの底面であると同時に内壁部(シール溝内周面)として機能する。
【0122】
テーパ部52iは、樹脂基板52の外周部52dにおけるz軸方向所定位置から、開口部側(z軸正方向側)に向かって、ハウジング外壁11g(端部111)の内周面115との間の(図14のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように構成されており、これにより、開口部に向かって内径側に傾くテーパ面527が形成されている。このテーパ面527と対向するハウジング外壁11g(端部111)の部位がシール溝外壁部11hとして機能する。シール溝Gは、シール溝外壁部11hとテーパ部52iにより構成される。シール溝Gにおいては、上方(z軸正方向側)と下方(z軸負方向側)の口径に差が設けられており、開口側(z軸正方向側)の口径(溝幅)のほうが大きい。
なお、本実施例8では、実施例6と異なり、小切り欠き部11k,52fは設けられていない。テーパ面527を形成することで、小切り欠き部11k,52fの機能は実現されるからである。
【0123】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、テーパ面527とギヤハウジング2の端面20とハウジング外壁11g(端部111)の内周面115との間で挟持される。シール部材7のz軸正方向側の端部は端面20に密着してシール面pを形成し、シール部材7の外径側(図14のx軸正方向側)の端部は内周面115に密着してシール面rを形成する。
すなわち、ギヤハウジング2のフランジ部2a(端面20)とハウジング外壁11gの端面110との間の隙間を通って、ハウジングHSGの外部が内部と連通することは、シール面p,rにより防止される。
テーパ部52iがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、シール溝外壁部11hがシール部材7の外径側への移動を規制する。
シール部材7の寸法(直径d1、d2)やテーパ面527のテーパ角は、設置状態でシール部材7が押し潰されたときに、シール面p、rが形成されるように設けられている。
【0124】
(17)ハウジング外壁11g(端部111)の内周に形成されたシール部材第1保持部(シール溝外壁部11h)と、収容体(樹脂基板52)に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側(内径側)への移動を規制すると共に、開口部に向かって徐々に内周側に傾くように形成されたテーパ状のシール部材第2保持部(テーパ部52i)と、を有することとした。
よって、実施例6と同様の作用効果のほか、テーパ部52i(テーパ面527)により実施例7と同様の作用効果を得ることができる。また、テーパ面527により、実施例4と同様、シール部材7の組付け性を向上させることができる。テーパ部52iを樹脂基板52に形成するだけでよいため、シール構造の作成が容易である。
【実施例9】
【0125】
実施例9のシール構造は、実施例8のテーパ部(テーパ面)を樹脂基板52の側でなくハウジング外壁11gの側に設けたものである。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0126】
図15は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝Gの外壁部および底面は、共通のテーパ面11nとして、ハウジング外壁11g(端部111)により構成されている。すなわち、端部111のz軸正方向側の端の内周には、シール溝内壁部52eと対向して、テーパ部11mが設けられている。テーパ部11mは、端部111の開口側内周を1つの平面によって斜めに削り取って形成されており、断面三角状である。テーパ部11mにより、シール溝Gの外周面を構成する外壁部と、シール溝Gの底面を構成する底部とが一体に形成されている。言い換えると、テーパ部11mが有するテーパ面11nは、シール溝Gの底面であると同時に外壁部(シール溝外周面)として機能する。
【0127】
テーパ部11mは、端部111におけるz軸方向所定位置から、開口部側に向かって、樹脂基板52の外周面520との間の(図15のx軸方向での)距離が徐々に大きくなるように構成されており、これにより、開口部に向かって外径側に傾くテーパ面11nが形成されている。このテーパ面11nと対向する樹脂基板52の部位がシール溝内壁部52eとして機能する。シール溝Gは、シール溝内壁部52eとテーパ部11mにより構成される。
なお、本実施例9では、実施例8と同様、小切り欠き部11k,52fは設けられていない。
【0128】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、テーパ面11nとギヤハウジング2の端面20と樹脂基板52(シール溝内壁部52e)の外周面520との間で挟持される。シール部材7のz軸正方向側の端部は端面20に密着してシール面pを形成し、シール部材7の外径側の端部はテーパ面11nに密着してシール面rを形成する。すなわち、ハウジングHSGの内外の連通は、シール面p,rにより防止される。
シール溝内壁部52eがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、テーパ部11mがシール部材7の外径側への移動を規制する。
シール部材7の寸法(直径d1、d2)やテーパ面11nのテーパ角は、設置状態でシール部材7が押し潰されたときに、シール面p、rが形成されるように設けられている。
【0129】
(18)ハウジング外壁11gの内周面115において開口部に向かって徐々に外周側(外径側)に傾くように形成されたテーパ状のシール部材第1保持部(テーパ部11m)と、収容体(樹脂基板52)に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側(内径側)への移動を規制するように形成されたシール部材第2保持部(シール溝内壁部52e)と、を有することとした。
よって、実施例8と同様の作用効果を得ることができる。テーパ部11mをハウジング外壁11gに形成するだけでよいため、シール構造の作成が容易である。
【実施例10】
【0130】
実施例10のシール構造は、実施例6と同様、シール溝底面がハウジング外壁11gではなく、収容体である樹脂基板52に形成されている。実施例3と同様、シール溝内壁部が、蓋部材であるギヤハウジング2に設けられている。他の構成は実施例1等と同様であるため、実施例3,6と同一の符号を付して説明を省略する。
【0131】
図16は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝外壁部11hの構成は実施例6と同様である。
樹脂基板52の外周部52dのz軸正方向側の端には、切り欠き部52jが設けられている。切り欠き部52jは、外周部52dを開口部側(z軸正方向側)およびハウジング外壁11gの側(図16のx軸正方向側)から断面四角状に削り取った形状である。切り欠き部52jにより、シール溝Gの底面526を構成する底部52hが形成されている。
ギヤハウジング2のフランジ部2aには、シール溝内壁部2bが設けられている。シール溝内壁部2bの構成は、実施例3と同様である。
【0132】
ギヤハウジング2をハウジング本体1に設置した状態で、シール溝内壁部2bは、樹脂基板52の切り欠き部52j内に、実施例3と同様の大きさα' ,β'の隙間を介して配置される。
この設置状態で、内壁部2bの外周面21から樹脂基板52の外周面520までの間には(図16のx軸方向での)距離W1が設けられており、距離W1が設けられた部分の底部52hにおいて、シール溝Gの底面526が構成されている。
【0133】
シール溝内壁部2bの外周面21は、シール溝外壁部11h(シール溝Gの外周面115)と対向しており、外周面21はシール溝Gの内周面として機能する。底面526と外壁部11h(外周面115)と内壁部2b(内周面21)とにより、シール溝Gが形成されている。
外壁部11hと内壁部2bの間の距離W2はシール溝Gの幅(溝幅)に相当し、底面526の幅W1よりもαだけ大きく設けられている(W1+α=W2)。
【0134】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、シール溝底面526とギヤハウジング2の端面20との間で挟持され、外壁11とギヤハウジング2で包囲される空間内部を液密状態に保持する。実施例6と同様、シール面p,rを形成して、ハウジングHSGの内外の連通を防止する。
シール溝内壁部2bがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、シール溝外壁部11hがシール部材7の外径側への移動を規制する。
【0135】
(19)蓋部材に設けられ、シール部材7の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部2bを有することとした。
よって、実施例6と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例11】
【0136】
実施例11のシール構造は、実施例10のシール構造(シール溝外壁部11hおよびシール溝内壁部2b)にテーパ面を設けたものである。他の構成は実施例10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0137】
図17は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
シール溝外壁部11hは、実施例7と同様のテーパが付けられており、シール溝Gの外周面115は開口部に向かって外径側に傾くテーパ面として形成されている。
シール溝内壁部2bは、実施例5と同様のテーパが付けられており、シール溝Gの内周面21は、ハウジング本体1の開口部と反対方向に向かって内径側に傾くテーパ面として形成されている。
なお、実施例5、7と同様、小切り欠き部11k,52fは設けられていない。
【0138】
シール部材7をシール溝底面526に設置した状態で、ハウジング本体1をギヤハウジング2に組付ける際、シール溝内壁部2bはシール部材7の内周側に挿入される。その際、内壁部2b(シール溝Gの内周面21)にテーパ面が形成されているため、内壁部2bの挿入性が悪化することを抑制できる。また、シール溝外壁部11hにもテーパ面が形成されているため、上記挿入性を向上することができる。テーパ面の傾き(勾配)は、内壁部2bの挿入性を考慮した所定の大きさに設定されている。
よって、実施例10と同様の効果を得つつ、実施例5と同様、ハウジング本体1とギヤハウジング2の組付け性を向上させる等の効果を得ることができる。
なお、外壁部11hまたは内壁部2bの一方のみに上記テーパ面を形成することとしてもよい。
【実施例12】
【0139】
実施例12のシール構造は、実施例3のハウジング外壁11g(端部111)における切り欠き部117の代わりに、実施例9と同様のテーパ部11mを設けたものである。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0140】
図18は、図6と同様、基板ハウジング部1bにおけるシール溝Gの断面の模式図である。
ギヤハウジング2に設けられたシール溝内壁部2bの構成、および樹脂基板52に設けられた切り欠き部521の構成は、シール溝内壁部2bが小切り欠き部24を有していない点を除き、実施例3と同様である。
ハウジング外壁11g(端部111)に設けられたテーパ部11mおよびテーパ面11nの構成は実施例9と同様である。テーパ部11m(テーパ面11n)は、シール溝Gの底面であると同時に外壁部(シール溝外周面)として機能する。
【0141】
シール部材7は、シール溝Gに設置された状態で、テーパ面11nとギヤハウジング2の端面20とシール溝内壁部2bの外周面21との間で挟持され、実施例9と同様にシール面p、rを形成し、ハウジングHSGの内外の連通を防止する。
シール溝内壁部2bがシール部材7の内径側への移動を規制する一方、テーパ部11mがシール部材7の外径側への移動を規制する。
【0142】
よって、実施例9と同様の作用効果を得ることができる。
また、テーパ面11nにより、実施例11と同様、ハウジング本体1とギヤハウジング2の組付け性を向上させる等の効果を得ることができる。
【実施例13】
【0143】
実施例13のシール構造は、樹脂基板52の位置決め手段の構成が実施例1と異なる。他の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0144】
図19は、図3と同様、内部に部品を収容した状態のハウジング本体1の正面図である。説明の便宜上、信号系基板50を取り除いた状態を示す。
樹脂基板52のy軸正方向側において、x軸正方向側の肩部52bに設けられたボルト孔52kは、実施例1と同様に構成されている。すなわち、ボルト孔52kには位置決め部材8がインサートされており、基板設置部112に形成された位置決め部80に位置決め部材8が印ろう嵌合される。また、ボルトb1がボルト孔52k(位置決め部材8)に挿通され、基板設置部112に形成された雌ねじに螺合する。
他のボルト孔52l〜52nには位置決め部材8が設けられていない。これらのボルト孔52l〜52nに対応する各基板設置部112には位置決め部80が設けられておらず、雌ねじのみが形成されている。
x軸負方向側の肩部52bに設けられたボルト孔52lは、y軸方向の幅よりもx軸方向の幅が広い長孔であり、ボルトb2の軸の外周形状にほぼ沿った2つの半円をx軸に平行な2つの直線で結んだ形状を有している。ボルト孔52lのy軸方向幅はボルトb2の軸の直径より僅かに大きく設けられている。ボルトb2がボルト孔52lに挿通され、基板設置部112に形成された雌ねじに螺合する。樹脂基板52がハウジング本体1に設置された状態で、樹脂基板52のy軸方向の移動はボルト孔52lのy軸正負方向側の縁とボルトb2の軸との接触により規制され、移動の自由度は小さい。一方、樹脂基板52のx軸方向の移動はボルト孔52lのx軸正負方向側の縁とボルトb2の軸との間に隙間があるため、移動の自由度が大きい。
樹脂基板52のy軸負方向側において、各突出部52c,52cに設けられたボルト孔52m,52nは円形状であり、それぞれの直径がボルトb3、b4の軸の直径よりも大きく設けられている。ボルトb3、b4がボルト孔52m,52nにそれぞれ挿通され、基板設置部112に形成された雌ねじに螺合する。樹脂基板52がハウジング本体1に設置された状態で、樹脂基板52のx軸方向ないしy軸方向の移動は、ボルト孔52m,52nの内周縁とボルトb3、b4の軸との間に隙間があるため、移動の自由度が大きい。
【0145】
樹脂基板52は、y軸正方向側の締結部によって、ハウジング本体1との相対位置が正確に決定される。すなわち、x軸正方向側の肩部52bにおいては精度のよい位置決め手段(位置決め部材8等)を用いてx軸方向およびy軸方向の相対移動を規制し、x軸負方向側の肩部52bにおいては長孔のボルト孔52lを用いてy軸方向の相対移動(言い換えると、ボルト孔52kを中心とする樹脂基板52の回転)を規制する。よって、実施例1と同様、樹脂基板52の全周囲でバラツキなく、シール溝Gの幅、およびハウジング外壁11gや蓋部15と樹脂基板52との間の隙間(の大きさα)が正確に設定される。特に、寸法精度を出しにくい樹脂基板52の長手方向で構成されるシール溝G(直線部11b,11cのシール溝G)の幅を精度よく設定することができる。
一方、y軸負方向側の締結部は、位置決め機能を有しておらず、ボルトb3、b4の軸とボルト孔52m,52nの内周縁との間に隙間が設けられているため、ボルト締結の作業が容易である。
なお、長孔のボルト孔は、ボルト孔52kを中心とする樹脂基板52の回転を規制できれば足りるため、肩部52b以外の箇所に設けてもよく、また長孔形状に限られない。
【0146】
また、位置決め手段をy軸正方向側のボルト孔に適用したため、位置決め手段よりもy軸正方向側の樹脂基板52の部分(延設部52a)の寸法変化を最小とし、延設部52aと蓋部15(モータハウジング部1a)の端部151との間の距離を正確に確保することができる。よって、位置決め手段をy軸負方向側のボルト孔に適用した場合に比べ、レゾルバ33の出力端子33aと信号系基板50の延設部50aとの接続を正確に行うことができる。
【0147】
実施例1では、全てのボルト孔52l〜52nに位置決め手段を設けたが、本実施例13のように位置決め手段を1つのボルト孔に対して設け、他のボルト孔は通常のボルト孔とすることで、加工工程および部品点数を削減し、締結作業を容易にすることができる。
【0148】
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例1〜13に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1〜31に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0149】
例えば、各実施例では、本発明のシール構造をピニオンアシスト式の装置に適用したが、コラムアシスト式やラックアシスト式の装置に適用することとしてもよい。
各実施例では、本発明のシール構造を電動式(電動直結式)の装置に適用したが、(オイルポンプで発生した油圧を利用する)油圧式の装置に適用してもよいし、(オイルポンプを電動モータで駆動することで発生させた油圧を利用する)電動油圧式の装置に適用してもよい。これらの場合、ポンプユニットのハウジングが、本発明のシール構造が適用されるハウジング部材や蓋部材となる。
【0150】
各実施例では、本発明のシール構造を自動車の電動パワーステアリング装置のハウジング部材や蓋部材に適用することとしたが、他の機械装置のハウジング部材や蓋部材にも適用可能である。
各実施例では、蓋部材としてハウジング部材(ギヤハウジング)を用いたが、(内部に収容物を有しない)専用の蓋部材であってもよい。
要するに、ハウジング内外をシールする構造であれば、どのようなものであっても本発明を適用することができる。
【0151】
実施例1等ではシール溝外壁部およびシール溝内壁部の両方に小切り欠き部を設けたが、どちらか一方のみに小切り欠き部を設けることとしてもよい。また、両方に小切り欠き部を設けないこととしてもよい。また、断面四角状の小切り欠き部の代わりに、テーパや面取りを設けることとしてもよい。
【0152】
各実施例では、ハウジング本体1(モータハウジング部1a)のシール溝内壁部11jと樹脂基板52のシール溝内壁部52e(ないしギヤハウジング2のシール溝内壁部2b)の境界部を直線部11b,11cに設けたが、境界部を湾曲部11aと直線部11b,11cとが接続する屈曲部に設けることとしてもよい。この場合、境界部(屈曲部)において両シール溝内壁部に面取り部を設けることで、境界部を直線部に設けた場合と同様の効果を得ることも可能である。
【0153】
各実施例では、ハウジング本体1(モータハウジング部1a)のシール溝内壁部11j(角部11l)と樹脂基板52のシール溝内壁部52e(角部52g)の両方に面取り部を設けたが、どちらか一方のみに面取り部を設けることとしてもよい。また、両方に面取り部を設けないこととしてもよい。曲面(アール形状)の面取り部の代わりに平面で角面取りしてもよい。
【0154】
各実施例では、凸形状の突起部9d〜9fをシール溝外壁部11hの開口部側端部に設けることとしたが、突起部の形状は任意であり、またシール溝Gの周方向における任意の位置および数で突起部を設けることができる。例えば、収容体が設けられない領域(モータハウジング部1a)の突起部9a〜9cを省略することとしてもよい。また、開口部側端部に限らず、シール溝Gにおける深さ方向(z軸方向)の全てにわたって設けることとしてもよい。また、シール溝外壁部11hではなく(樹脂基板52やギヤハウジング2に形成した)シール溝内壁部に突起部を設けることとしてもよい。
【0155】
実施例2では、シール部材の周方向全範囲で、シール溝底面側の断面を矩形形状としたが、シール部材の周方向における一部分の断面を矩形形状とすることとしてもよい。また、シール溝Gの底面ないし側面との接触面積を増大することができる形状であればよく、特に矩形形状に限定されない。
【0156】
実施例1等ではシール溝底面をxy平面に平行としたが、xy平面に対して傾いたテーパ状のシール溝底面(例えば実施例9のようなテーパ部11mないしテーパ面11n)を設けることとしてもよい。すなわち、シール溝底面とシール溝内外壁部とを共通化してもよい。
【0157】
各実施例を適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0158】
2 ギヤハウジング(蓋部材)
7 シール部材
111 開口部側端部
119 シール溝底面
11g ハウジング外壁
11h シール溝外壁部
52 樹脂基板(収容体)
52e シール溝内壁部
R 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容空間を形成するように設けられ、一方側に前記収容空間と連通する開口部を有するハウジング外壁と、
前記開口部を閉塞する蓋部材と、
前記ハウジング外壁の前記開口部側端部と前記蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、前記ハウジング外壁と前記蓋部材で包囲される前記収容空間内部を液密状態に保持するシール部材と、
前記収容空間に収容される収容体と、
前記ハウジング外壁の前記開口部側端部に形成され、前記蓋部材との間に前記シール部材を挟持するシール溝底面と、
前記ハウジング外壁の前記開口部側端部であって前記シール溝底面よりも外周側に設けられ、前記シール溝底面よりも前記蓋部材側に突出するように形成され、前記開口部側の端面が前記蓋部材と当接するように形成されると共に、前記シール部材の外周側を包囲するシール溝外壁部と、
前記収容体または前記蓋部材に設けられ、前記シール部材の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部と、を有する
ことを特徴とするシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシール構造において、
前記シール溝内壁部は前記収容体に形成され、
前記ハウジング外壁は金属材料によって形成され、
前記収容体は、前記金属材料よりも線膨張係数が大きい樹脂材料で形成され、かつ前記ハウジング外壁との間に隙間が設けられるように形成される
ことを特徴とするシール構造。
【請求項3】
請求項1に記載のシール構造において、
前記シール溝内壁部は前記収容体に形成され、
前記シール溝外壁部または前記シール溝内壁部は、前記シール溝外壁部と前記シール溝内壁部との間の間隔が前記シール溝底面側から前記開口部側端部に向かって徐々に大きくなるように形成されたテーパ面を有する
ことを特徴とするシール構造。
【請求項4】
内部に収容空間を形成するように設けられ、一方側に前記収容空間と連通する開口部を有するハウジング外壁と、
前記開口部を閉塞する蓋部材と、
前記収容空間に収容される収容体と、
前記収容体と前記蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、前記ハウジング外壁と前記蓋部材で包囲される前記収容空間内部を液密状態に保持するシール部材と、
前記収容体の前記蓋部材側端部に形成され、前記蓋部材との間に前記シール部材を挟持するシール溝底面と、
前記ハウジング外壁の前記開口部側端部であって前記シール溝底面よりも前記蓋部材側に突出するように形成され、前記開口部側の端面が前記蓋部材と当接するように形成されると共に、前記シール部材の外周側を包囲するシール溝外壁部と、
前記収容体または前記蓋部材に設けられ、前記シール部材の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール溝内壁部と、を有する
ことを特徴とするシール構造。
【請求項5】
内部に収容空間を形成するように設けられ、一方側に前記収容空間と連通する開口部を有するハウジング外壁と、
前記開口部を閉塞すると共に、前記ハウジング外壁の前記開口部側端面と当接するように形成された蓋部材と、
前記ハウジング外壁の前記開口部側端部と前記蓋部材との間に挟持され、弾性材料で形成され、前記ハウジング外壁と前記蓋部材で包囲される前記収容空間内部を液密状態に保持するシール部材と、
前記収容空間に収容される収容体と、
前記ハウジング外壁の内周面において前記開口部に向かって徐々に外周側に傾くように形成されたテーパ状のシール部材第1保持部と、
前記収容体または前記蓋部材に設けられ、前記シール部材の所定以上の内周側への移動を規制するように形成されたシール部材第2保持部と、を有する
ことを特徴とするシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−223369(P2010−223369A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72592(P2009−72592)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】