説明

シール装置

【課題】
回転部のグリースシールにおいて、Vリング構造と油吸着シートを適用することにより、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのないシール装置を提供する
【解決手段】
回転部のグリースシール装置に用いられ、フレーム1と、シャフト2と、前記フレーム1に備えられた仕切り板4と、前記シャフト2を押圧するVリング3とからなるシール装置において、油吸着シート5は、仕切り板4の内周面とVリング3の外周面の間に配置され、フランジ6により固定されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型モータのように回転部をもつ機構部のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシール装置は、3つの提案がなされている。第1には、Vリングがシャフトに押し付けられ、オイルシールした構成である(例えば、非特許文献1参照)。この構成について図3を用いて説明する。図3において、1はフレーム、2はシャフト、3はVリング、4は仕切り板である。仕切り板4は、フレーム1に取り付けられ、Vリング3と接触している。Vリング3は、バネ構造になっており、シャフト2に押し付けられている。
第2には、バネによってシールリップ部を軸に押し付け、オイルシールした構成である(例えば、非特許文献2参照)。この構成について図4を用いて説明する。図4において、7はオイルシール、8はバネ、9はシールリップである。シールリップ9は、バネ8によりシャフトに押し付けられており、オイルシール7により潤滑材の流出を防止している。
次に、第3には、L字断面の補強環をもち、シール自体に剛性を持たせ、シャフトに押し付け可能とした構成である(例えば、特許文献1参照)。この構成について図5を用いて説明する。図5において、金属製の補強環25を、合成ゴム、合成樹脂等の弾性材料によりほぼ全体を包囲するように接着して構成される第1シール20が設けられる。この第1シール20の補強環25の径方向部分26の内周側には、軸方向外側に突き出し、ロッド2の表面に当接するシールリップ21が備えられている。前記補強環25の軸方向部分27と径方向部分26とによる空所22内には、第2シール30が圧入されている。この第2シール30は合成ゴム、合成樹脂等の弾性材料から構成され、外周側リップ32と内周側リップ31とを備えている。このように、外周側部分32と内周側リップ31との間に十分な容積を持つ凹部または谷部35を備えているため潤滑剤の保持量も多く、また第2シール30により掻き取られた液体も十分溜めることができ、さらにシールされた水がフレーム1の金属部分に直接触れることがないため錆の発生もない構成となっている。
【非特許文献1】NOK株式会社オイルシールカタログ Cat.No.014/02−97 H−47
【非特許文献2】NOK株式会社オイルシールカタログ Cat.No.014/02−97 H−2
【特許文献1】特許−2638961(第5頁 図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のシール装置において、Vリングを用いてオイルシールした構成では、グリースの漏れを完全にとめることができないという問題が生じていた。
また、シールリップをシャフトに押し付ける構成では、摩擦ロスが大きく、動作させるのに必要な駆動容量が大きくなることや発熱量が多いという問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、Vリング構造を適用し、グリースが漏れ出る側に油吸着シートを配置することによって、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのないシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、回転部のグリースシール装置に用いられ、フレームと、シャフトと、前記フレームに備えられた仕切り板と、前記シャフトを押圧するVリングとからなるシール装置において、油吸着シートが、仕切り板の内周面とVリングの外周面の間に配置され、フランジにより固定されたものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記油吸着シートがポリプロピレン繊維からなるものである。
また、請求項3に記載の発明は、回転部のグリースシール装置に用いられ、フレームと、シャフトと、前記フレームに備えられた仕切り板とからなるシール装置において、油吸着シートが、前記シャフトに押圧され、仕切り板の内周面に配置され、フランジにより固定されたものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1および2に記載の発明によると、Vリングと油吸着シートを併用して、摩擦ロスが少なく、グリース漏れのないシール装置を構成できる。
請求項3に記載の発明によると、油吸着シートを直接シャフトに接触させることで、摩擦ロスが少なく、グリース漏れのないシール装置を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のシール装置の断面図である。図において、1はフレーム、2はシャフト、3はVリング、4は仕切り板、5は油吸着シート、6はフランジである。仕切り板4は、フレーム1に取り付けられ、Vリング3と接触している。Vリング3は、バネ構造になっており、シャフト2に押し付けられている。油吸着シート5は、仕切り板4の内周面とVリング3の外周面の間に配置され、フランジ6で軸方向に固定されている。この油吸着シート5は、ポリプロピレン繊維からなり、ドーナツ状に形成されている。
本発明が非特許文献1および特許文献1と異なる点は、Vリング構造を適用し、グリースが漏れ出る側に油吸着シートを配置することによって、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのない構造にした部分である。
次に、矢印A方向よりグリースが流出しようとした場合の漏れの防止方法について説明する。グリースは、仕切り板4は、Vリング3と接触しているので、リップ面でシールされているが、Vリング3は仕切り板4に接触しているだけに過ぎないので、シール性については十分でなく、グリースは矢印A方向に一部漏れ出る。ここで、仕切り板4の内周面とVリング3の外周面の間に配置された油吸着シート5により、一部漏れたグリースは吸着される。
このように、Vリングとその近傍、グリースが漏れ出る側に油吸着シートを配置して、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのないシール装置を提供することができる。
【実施例2】
【0008】
図2に本発明の第2の実施例を示す。図2において、1はフレーム、2はシャフト、4は仕切り板、5は油吸着シート、6はフランジである。仕切り板4は、フレーム1に取り付けられている。油吸着シート5は、仕切り板4の内周面に配置され、フランジ6で軸方向に固定されており、シャフト2に押し付けられている。この油吸着シート5は、ポリプロピレン繊維からなり、ドーナツ状に形成されている。
本発明が実施例1と異なる点は、油吸着シート5が直接シャフト2に押し付けられることによって、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのない構造にした部分である。
次に、矢印A方向よりグリースが流出しようとした場合の漏れの防止方法について説明する。グリースは、矢印A方向に漏れ出ようとするが、油吸着シート5により吸収、保持される。
このように、油吸着シートを直接シャフトに押し付けることにより、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのないシール装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
Vリングとその近傍、グリースが漏れ出る側に油吸着シートを配置して、摩擦ロスが小さく、グリース漏れのないシール装置を提供することができるので、小形モータ等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す側断面図
【図2】本発明の第2の実施例を示す側断面図
【図3】従来のVリングによるシール装置を説明する側断面図
【図4】従来のバネを用いたシール装置を説明する側断面図
【図5】従来の補強環を用いたシール装置を説明する側断面図
【符号の説明】
【0011】
1 フレーム
2 シャフト
3 Vリング
4 仕切り板
5 油吸着シート
6 フランジ
7 オイルシール
8 バネ
9 シールリップ
20 第1シール
21 シールリップ
22 空所
25 補強環
26 径方向部分
27 軸方向部分
30 第2シール
31 内周側リップ
32 外周側リップ
35 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部のグリースシール装置に用いられ、フレームと、シャフトと、前記フレームに備えられた仕切り板と、前記シャフトを押圧するVリングとからなるシール装置において、
油吸着シートは、仕切り板の内周面とVリングの外周面の間に配置され、フランジにより固定されたことを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記油吸着シートはポリプロピレン繊維からなることを特徴とする請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
回転部のグリースシール装置に用いられ、フレームと、シャフトと、前記フレームに備えられた仕切り板とからなるシール装置において、
油吸着シートは、前記シャフトに押圧され、前記仕切り板の内周面に配置され、フランジにより固定されたことを特徴とするシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−283950(P2006−283950A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108501(P2005−108501)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】