説明

シール部材およびそれを用いた試薬容器のキャップ

【課題】試薬容器の開口を封止するシール部材が開閉の際に開口に落ち込むことを規制し
、円滑な開閉動作が可能なシール部材および構成部品数が少なく、構造が簡単な試薬容器
のキャップを提供すること。
【解決手段】試薬容器に被着されるキャップに用いられ、所定位置を中心として起伏され
てキャップの開口を開閉自在に覆うシール部を有するシール部材5とシール部材を用いた
試薬容器のキャップ。シール部5gは、開口の外方へ延出する延出部5jが所定位置側の
外周に設けられ、延出部は、シール部が開口を覆った状態で開口の上縁に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材およびそれを用いた試薬容器のキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置で使用する試薬容器は、自動分析装置の試薬庫内に回転可能に設け
た載置台上に周方向に沿って開封状態で複数配置し、載置台を回転させて分注位置へ移動
させることによって、試薬が反応容器に分注される。このとき、自動分析装置は、試薬の
質的劣化を防止するため、通常、試薬庫内が5〜10℃に保冷され、湿度が低い状態にあ
る。このため、従来の試薬容器は、収容した試薬の蒸発を抑えるため特殊構造のキャップ
を容器に被着したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−177255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された試薬容器のキャップは、試薬容器の開口を封止する
封止体を保持した保持部材に連結部を設け、一端が軸支され、弾性部を有するアーム状の
開閉部材の他端と前記連結部とを連結し、前記開閉部材に押圧力を作用させ、或いは解除
することで前記保持部材を連結部と共に起伏させて開口を開閉している。即ち、特許文献
1のキャップは、アーム状の開閉部材の回動を前記連結部を介して保持部材に伝達してい
る。このため、特許文献1の封止体は、試薬容器の開口を開閉する際に、応力が伝達され
る開閉部材,連結部,保持部材を連結する方向に動いてずれを生じ易く、前記保持部材の
起伏動作時に封止体の前記開閉部材側が開口に落ち込み、封止体の開閉動作が阻害される
ことがあるという問題があった。また、特許文献1のキャップは、構成部品数が多く、構
造が複雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試薬容器の開口を封止するシール部材
が開閉の際に開口に落ち込むことを規制し、円滑な開閉動作が可能なシール部材および構
成部品数が少なく、構造が簡単な試薬容器のキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係るシール部材は、試薬容
器に被着されるキャップに用いられ、所定位置を中心として起伏されて前記キャップの開
口を開閉自在に覆うシール部を有するシール部材であって、前記シール部は、前記開口の
外方へ延出する延出部が前記所定位置側の外周に設けられ、前記延出部は、前記シール部
が前記開口を覆った状態で前記開口の上縁に当接することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るシール部材は、上記の発明において、前記シール部材は、前記延
出部を前記所定位置側に位置決めする位置決め部が前記シール部の近傍に設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項3に係る試薬容器のキャ
ップは、試薬を収容する本体の開口筒部に被着される試薬容器のキャップであって、前記
開口筒部と連通する挿通筒部を有し、前記開口筒部に被着される固定部材と、前記固定部
材にスライド自在に嵌合されて前記固定部材を覆い、前記固定部材に対するスライド動作
に伴い前記挿通筒部によって起伏される起伏部を有するスライド部材と、前記起伏部に支
持されて前記挿通筒部の開口を開閉自在に封止する前記シール部材と、前記固定部材と前
記スライド部材との間に配置して前記スライド部材を前記固定部材から離反する方向へ付
勢し、前記スライド部材を介して前記シール部材に前記挿通筒部の開口を封止する付勢力
を付与する付勢部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるシール部材は、キャップの開口の外方へ延出する延出部がシール部の所
定位置側の外周に設けられ、前記延出部は、前記シール部が前記開口を覆った状態で前記
開口の上縁に当接するので、シール部材が開口に落ち込むことを延出部が規制する。この
ため、シール部材は、円滑な開閉動作が可能となり、このシール部材を用いた試薬容器の
キャップは、構成部品数が低減され、構造が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のシール部材およびそれを用いた試薬容器のキャップにかかる実施の形態
を試薬容器に関する図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明のシール部材およ
び試薬容器のキャップを用いた試薬容器の上部及びキャップを断面にして示した正面図で
ある。図2は、キャップを構成する固定部材の右半断面正面図である。図3は、固定部材
の平面図である。図4は、図3に示す固定部材のC1−C1線に沿った断面図である。
【0011】
試薬容器1は、高密度ポリエチレン等の合成樹脂から成形され、図1に示すように、本
体1aの上部に形成された開口筒部1bにキャップ2が被着されている。本体1aは、略
円筒状に成形され、側面の一部に情報ラベルを貼付する平面部1cが形成され、開口筒部
1bの外周には雄ねじが形成されている。前記情報ラベルには、試薬容器1に保持されて
いる試薬の種類や有効期限等の試薬情報が記録されている。
【0012】
キャップ2は、図1に示すように、固定部材3、スライド部材4、シール部材5及び付
勢部材6を備え、試薬容器1の開口筒部1bを開閉自在に封止している。
【0013】
固定部材3は、ポリプロピレン等の合成樹脂から成形され、図1〜図8に示すように、
試薬容器1の開口筒部1bにねじ止めによって被着される被着部3aと、被着部3aに連
設される案内筒部3bと、案内筒部3bの中央に配置される挿通筒部3cとを有している
。被着部3aは、外周にローレット3d(図2,図5参照)が加工され、内面には雌ねじ
が形成されている。案内筒部3bは、図2に示すように、上部外周に係合部3eが形成さ
れている。挿通筒部3cは、下部が開口筒部1bと連通し、自動分析装置の分注プローブ
が上方から挿通される筒体である。挿通筒部3cは、試薬容器1内に収容した試薬の蒸発
と変質並びに外部からの液体の侵入を防止するため、上部開口3fがシール部材5によっ
て開閉自在に封止されている。挿通筒部3cは、図3及び図4に示すように、互いに対向
する部分を平行に形成した平面部3gが上部に形成されている。平面部3gは、挿通筒部
3cの筒中心を挟んで上部外周の対向する位置に係合突起3h(図2〜図5参照)が設け
られている。また、挿通筒部3cは、図2及び図4に示すように、被着部3a側へ延出し
、開口筒部1bの内側に当接する当接筒3jが下端全周に形成されている。挿通筒部3c
は、図3及び図7に示すように、係合突起3h近傍の上部外周に当接部となる2つのリブ
3kが設けられている。さらに、挿通筒部3cは、図8に示すように、2つのリブ3kの
間においては上部外周が僅かに上方へ突出した突出部3mが設けられ、上部内周部分には
僅かに内側へ膨出させたシール部3nが全周に亘って形成されている。突出部3m及びシ
ール部3nは、シール部材5のシール部5g下面が当接して上部開口3fを封止する部分
であるため段差等のない滑らかな面に形成されている。
【0014】
スライド部材4は、ポリプロピレン等の合成樹脂から成形され、固定部材3に上方から
嵌合して鉛直方向にスライド自在に取り付けられ、固定部材3の上部を覆う部材である。
スライド部材4は、図1,図9〜図15に示すように、天板4aの外周にスライド筒部4
bが一体に垂設されている。ここで、スライド部材4は、起伏部4hにシール部材5が支
持されているが、スライド部材4の構造を明示するため、シール部材5は図12及び図1
3のみに示している。
【0015】
天板4aは、上面外周寄りに周方向に沿って突条4c,4dが設けられている。突条4
cは、突条4dよりも長く形成され、それぞれの突条4c,4dの外周には外方に向かっ
て連続して低くなる位置調整リブ4eが放射状に複数設けられている。複数の位置調整リ
ブ4eは、図10に示すように、挿着孔4iを中心として同一半径上に設けられている。
また、天板4aは、突条4dに隣接する部分を薄肉にしたヒンジ部4fと開口4gとによ
って中央に起伏部4hが形成されている。起伏部4hは、シール部材5を挿着する挿着孔
4iが中央に形成されている。ここで、挿着孔4iは、ヒンジ部4fの反対側にシール部
材5を位置決めする凹部4j(図10,図14参照)が設けられている。また、起伏部4
hは、ヒンジ部4f近傍の互いに対向する位置に起伏部4hの起伏を案内する案内片4k
が垂設されている。さらに、起伏部4hは、ヒンジ部4fと挿着孔4iとの間の下面両側
に挿着孔4iの中心を中心として半径方向に配置される突部Pが設けられている。
【0016】
案内片4kは、固定部材3の係合突起3hが係合するガイド孔4m(図13,図15参
照)が設けられている。ガイド孔4mは、図15に示すように、天板4aと平行な水平方
向に延びる長孔Hhと水平方向に対して傾斜した長孔Hsとから構成されている。また、2
つの案内片4kは、図15に示すように、下縁側が深く、ガイド孔4mに接近するに従っ
て浅くなるように傾斜した傾斜溝4nが対向する位置に設けられている。さらに、起伏部
4hは、図14及び図15に示すように、僅かに窪んだ凹部4pが下面のヒンジ部4fと
挿着孔4iとの間に設けられている。凹部4pは、シール部材5が起伏部4hと共に起伏
して上部開口3fを開閉する際、シール部材5の傾斜部5kが起伏部4h下面と接触しな
いように規制する。ここで、案内片4kは、係合突起3hが係合すれば、長孔に代えて溝
としてもよい。
【0017】
スライド筒部4bは、案内筒部3bの外周に配置され、下部にはスリット4sを介して
係合片4tが周方向に沿った3箇所に設けられている。各係合片4sは、下部内側に設け
た突起4uが案内筒部3bの上部外周に形成した係合部3eと係合して、スライド部材4
の上昇位置を規制する。
【0018】
シール部材5は、例えば、エチレンポリエチレンターポリマー(EPDM)等の弾性を
有する合成樹脂から成形され、起伏部4hに支持されて固定部材3の上部開口3fを封止
し、起伏部4hの起伏によって上部開口3fを開閉する。シール部材5は、図16〜図1
8に示すように、支持部5aとシール部5gとを有している。支持部5aは、上係止部5
bと下係止部5cとの間に小径部5dが配置され、下係止部5cの下部に円盤状のシール
部5gが設けられている。また、支持部5aは、上係止部5bの半径方向中心に上係止部
5bから小径部5dの中間に至る穴5eが形成されている。支持部5aは、穴5eを形成
したことにより、上係止部5bから小径部5dが撓み易く、起伏部4hに形成した挿着孔
4iへの取り付けが容易になる。また、支持部5aは、小径部5dに起伏部4hの凹部4
jと係合し、フランジ5jがヒンジ部4f側に配置されるように位置決めする位置決めリ
ブ5fが設けられている。
【0019】
一方、シール部5gは、上部開口3fの内直径と挿通筒部3c上部における外直径との
間の直径を有し、上面外周に外方に向かって低くなる傾斜部5kが形成されている。傾斜
部5kは、シール部材5を起伏部4hに取り付けたとき、凹部4pの位置と対応するよう
にシール部5gの上面外周に形成されている。シール部5gは、下面の半径方向中央に周
方向に沿って形成した凹部5hによって下部外周に下方へ膨出するシール突条5iが設け
られ、穴5eを挟んで位置決めリブ5fの反対側には半径方向外方へ延出する延出部であ
る四角形状のフランジ5jが形成されている。シール部材5は、位置決めリブ5fが凹部
4jと係合することによってフランジ5jがヒンジ部4f側に配置され、起伏部4hが起
伏するときにフランジ5jが上部開口3f上縁及び挿通筒部3cの上部外周に設けた2つ
のリブ3kの上面に当接する。これにより、フランジ5jは、起伏部4hが起伏動作をし
たときに、シール部5gのヒンジ部4f側が上部開口3f内へ落ち込むことがないように
規制している。このため、フランジ5jは、起伏部4hの起伏に伴うシール部材5の上部
開口3fの半径方向外方に沿った移動量を考慮してヒンジ部4f側への延出量が決められ
る。シール部材5は、凹部5hを形成することによってシール部5gに可撓性が付与され
、シール突条5iがシール部3n(図8参照)に隙間なく密着する。
【0020】
付勢部材6は、固定部材3とスライド部材4との間に配置してスライド部材4を固定部
材5から離反する上方へ付勢し、シール部材5に上部開口3fを封止する付勢力を付与す
るコイルばねである。付勢部材6は、例えば、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂か
ら成形され、図19〜図22に示すように、2つのばねユニット61とばねユニット62
とを積層して構成されている。
【0021】
ばねユニット61は、図20に示すように、コイル部61aとコイル部61aの両側に
配置されるリング状の支持部61bとを有している。コイル部61aは、巻き数が1/2
ターンであり、巻き方向が右巻きである2本のコイル部材61cが、その両端を周方向に
それぞれ180°位相をずらして両側の支持部61bと連結されている。下側に配置され
る支持部61bは、下面の複数個所に突起61d(図22参照)が設けられている。
【0022】
ばねユニット62は、図21に示すように、コイル部62aと支持部62bとを有して
ばねユニット61と略同様に構成される。但し、ばねユニット62は、ばねユニット61
と異なり2本のコイル部材62cの巻き方向が左巻きであり、上側に配置される支持部6
2bは、上面の複数個所に凹部62d(図21,図22参照)が設けられている。凹部6
2dは、突起61dと係合させたときに、コイル部材61cとコイル部材62cとが周方
向に90°位相がずれる位置に設けてばねユニット61とばねユニット62とを位置決め
する。
【0023】
ここで、ばねユニット61,62は、ばね力を大きくするためピッチ角を20°よりも
大きくするか、巻き数を1/2ターンよりも多くすると、圧縮時にコイル部材61c,6
2cが中心軸から半径方向外方へ膨出してしまう傾向がある。このようなコイル部材61
c,62cの膨出が生じると、ばねユニット61,62は、固定部材3の案内筒部3bや
スライド部材4のスライド筒部4bの内壁と接触し、ばね機能が阻害され、或いは内壁と
の摩擦によって十分なばね力を発揮することができなくなる。但し、ばねユニット61,
62は、コイル部材61c,62cのピッチ角や巻き数があまりに小さいと必要なばね力
が得られない。
【0024】
付勢部材6は、図22に示すように、ばねユニット61とばねユニット62とを積層し
、それぞれ対応する突起61dと凹部62dとを係合させて製造される。このとき、付勢
部材6は、ばねユニット61とばねユニット62の互いに対向する支持部61b,62b
を接着剤で接着してもよい。また、ばねユニット61やばねユニット62は、単独で使用
したときに、応力が作用して伸縮すると、コイル部材61c,62cの巻き方向に対応し
て支持部61bや支持部62bが回転することがある。しかし、付勢部材6のように、巻
き方向の異なるばねユニット61とばねユニット62とを積層すると、伸縮の際に支持部
61bや支持部62bが回転しても、ばねユニット61とばねユニット62とで回転方向
が異なるため回転が相殺される。このため、付勢部材6は、支持部61bや支持部62b
の回転による摩擦抵抗に起因したコイル部材61cやコイル部材62cの伸縮機能の阻害
を回避することができ、ばね機能を十分に発揮することができる。
【0025】
ここで、付勢部材6は、隣接するばねユニット間でコイル部材61c,62cの巻き方
向を異ならせてばねユニット61,62を奇数段積層する場合、1個多いばねユニットに
おけるコイル部材61c,62cのピッチ角を20°以下に設定する。このようにすると
、付勢部材6は、1個多いばねユニットに起因した支持部61bや支持部62bの回転を
抑えることができる。なお、付勢部材6は、合成樹脂によって一体成形し、図23に示す
ように、2つのコイル部6aをリング状の3つの支持部6bによって連結すると共に、各
コイル部6aの2本のコイル部材6cの巻き方向を右巻きと左巻きのそれぞれ逆方向とし
てもよい。
【0026】
以上のように構成される試薬容器1は、被着部3aを開口筒部1bにねじ止めして固定
部材3を被着し、案内筒部3bの内周に付勢部材6を配置した後、上方からスライド部材
4を固定部材3に被着するだけで、スライド筒部4bが案内筒部3bの外側に配置され、
簡単に組み立てることができる。
【0027】
このとき、シール部材5は、上部開口3fの上縁に当接し、上部開口3fの外方へ延出
する延出部としてフランジ5jがシール部5gの外周に設けられている。このため、シー
ル部材5は、起伏部4fと共に起伏する際、フランジ5jが上部開口3fの上縁に当接し
てシール部5gが上部開口3f内に落ち込むのを規制するので、円滑に開閉動作をする。
また、シール部材5を用いたキャップ2は、従来のキャップに比べて構造が簡単であり、
構成部品数が少ないので、安価に製造することができる。
【0028】
次に、以上のように構成される試薬容器1を使用する自動分析装置10を図24に基づ
いて説明する。自動分析装置10は、複数の試薬容器1を円周状に配列載置して回動され
る載置台11と、載置台11に載置された複数の試薬容器1を冷却手段(図示せず)によ
って一定温度(たとえば、5〜10℃に保冷)の下に格納する格納ケース12と、試薬容
器1の開口筒部1bを封止するキャップ2を選択的に開放する蓋開放装置20と、開放装
置20を駆動してキャップ2による開口筒部1bの封止を開放し、プローブ30を降下さ
せて試薬容器1内に進入させる制御装置19とを備えている。
【0029】
載置台11は、軸受15によって回転自在に支持された軸16に連結されている。軸1
6は、モータ18に連結されたギア18aと噛み合うギア16aを備えている。載置台1
1は、制御装置19の指令によりモータ18が作動し、ギア18a,16aを介して軸1
6が回転することにより、所定量回動するように構成されている。
【0030】
格納ケース12は、蓋開放装置20を試薬庫13とプローブ30挿通用の開口部14a
を有した蓋14とを備え、内部に蓋開放装置20が設けられている。
【0031】
制御装置19は、開放装置20を駆動する際、載置台11に載置された試薬容器1の位
置を検出する位置検知センサS及び試薬容器1の平面部1cに貼付された情報ラベルから
試薬情報を読み取る読取装置Rからの信号を受けて載置台11を回動させ、所定の試薬容
器1を分注位置に位置決めする。
【0032】
蓋開放装置20は、試薬容器1のキャップ2を開くアーム21と、アーム21を上下方
向に移動させるスライド軸22と、連結部23を介してスライド軸22を上下動させるロ
ータリー式のソレノイド24と、スライド軸22を案内するガイド25とを備えている。
このとき、アーム21は、複数の位置調整リブ4eと係合することにより、アーム21に
対する試薬容器1の位置を調整する開口21aがキャップ2の直上部分に設けられている

【0033】
このように構成される自動分析装置10は、制御装置19の制御の下に、モータ18を
駆動して選択された分析項目に対応した試薬容器1をプローブ30の真下に移動し、開放
装置20を駆動してアーム21によって試薬容器1のキャップ2を下方に押圧する。この
とき、キャップ2は、天板4aの上面に外周側に向かって連続して低くなる複数の位置調
整リブ4eが設けられているので、開口21aに複数の位置調整リブ4eが係合すること
によって試薬容器1がアーム21に対して常に同じ位置となるように位置調整される。
【0034】
そして、アーム21によってキャップ2を下方に押圧すると、試薬容器1は、キャップ
2のスライド部材4が押し下げられて起伏部4hが挿通筒部3cの上部開口3fを封止し
ているシール部材5と共に起立し、上部開口3fが開放される。つぎに、図示しない駆動
装置によりプローブ30を下降して挿通筒部3cの上部開口3fから試薬容器1内部に進
入させ、試薬を吸引する。自動分析装置10は、試薬を吸引下後、開放装置20の駆動を
停止してアーム21によるキャップ2の押圧を解除すると、付勢部材6の付勢力によって
前記と逆の動作によってスライド部材4が押し上げられる。これにより、試薬容器1は、
スライド部材4が初期位置に復帰して起伏部4hが倒伏し、シール部材5によって挿通筒
部3cの上部開口3fが封止される。
【0035】
このときのキャップ2の動きを図25〜図31に基づいて以下に説明する。まず、キャ
ップ2は、図1の上部を拡大した図25に示すように、通常は、付勢部材6の付勢力によ
ってスライド部材4が押し上げられ、上部開口3fが略同じ直径を有するシール部材5に
よって封止されている。このとき、キャップ2は、固定部材3の挿通筒部3c上部に設け
た固定点としての突起3hが案内片4kに形成したガイド孔4mの水平方向に延びる長孔
Hhに係合している。このため、起伏部4hは、付勢部材6の付勢力により、突起3hと
係合している案内片4kが下方へ押し下げられ、図25に示すように、ヒンジ部4fと対
向する側が、ヒンジ部4を中心として僅かな角度θだけ下がっている。この状態において
は、シール部材5は、下部外周のシール突条5i(図16参照)がシール部3n(図8参
照)に隙間なく密着し、上部開口3fを封止している。
【0036】
次に、開放装置20が駆動されてアーム21によってキャップ2のスライド部材4が僅
かに押し下げられると、突起3hによって案内片4kが僅かに押し上げられるため、図2
6に示すように、起伏部4hがヒンジ部4fを中心として反時計方向に僅かに回動して略
水平となる。但し、起伏部4hが略水平となっても、シール突条5i(図16参照)がシ
ール部3n(図8参照)に隙間なく密着し、シール部材5は、上部開口3fを封止してい
る。このとき、突起3hは、図26に示すように、ガイド孔4mの水平方向に延びる長孔
Hhと水平方向に対して傾斜した長孔Hsとの境界部分に位置している。
【0037】
次いで、キャップ2のスライド部材4が更に押し下げられると、突起3hが固定点であ
るため、ガイド孔4mの長孔Hsが突起3h側へ徐々に移動し、見掛け上突起3hが長孔
Hsを左方へ移動し、起伏部4hがヒンジ部4fを中心として更に反時計方向に回動して
起立し始める。この結果、試薬容器1は、図27に示すように、シール部材5による上部
開口3fの封止が解除され、起伏部4hがシール部材5と共にヒンジ部4fを中心として
傾斜状態となる。このとき、シール部材5は、起伏部4hと一体に起立し始めるが、シー
ル部5gが上部開口3fの内直径と挿通筒部3c上部における外直径との間の直径を有し
、フランジ5jは上部開口3fの上縁及び挿通筒部3cの上部外周に設けた2つのリブ3
kの上面に下面が当接してシール部5gが上部開口3f内に落ち込むのを規制している。
このため、シール部材5は、シール部5gが上部開口3f内に落ち込むことなく円滑に開
閉動作をする。そして、スライド部材4が押し下げられることによるガイド孔4mの長孔
Hsの突起3h側への移動は、図28に示すように、長孔Hsが水平になるまで続き、起伏
部4hがヒンジ部4fを中心として反時計方向に回動して略45°起立する。
【0038】
キャップ2のスライド部材4が図28に示す位置から更に押し下げられると、突起3h
によって案内片4kが押し上げられ、起伏部4hがヒンジ部4fを中心として反時計方向
に回動し、図29に示すように、更に起立する。
【0039】
次いで、キャップ2のスライド部材4が図29に示す位置から更に押し下げられると、
図30に示すように、ガイド孔4mの長孔Hsが下方へ移動し、見掛け上突起3hが長孔
Hsから長孔Hhへと移動し、起伏部4hがヒンジ部4fを中心として更に反時計方向に回
動し起立する。
【0040】
そして、スライド部材4が最下部まで押し下げられると、図31に示すように、見掛け
上、突起3hが長孔Hhの端部まで移動すると共に、起伏部4hがヒンジ部4fを中心と
して回動し、水平面に対して90°直立する。試薬容器1は、この状態が挿通筒部3cの
上部開口3fが開放された全開の状態である。従って、試薬容器1は、この状態でプロー
ブ30を上部開口3fから挿通することにより、内部に保持した試薬がプローブ30によ
って吸引される。
【0041】
プローブ30によって試薬が吸引された試薬容器1は、アーム21によるスライド部材
4の押圧を解除すると、付勢部材6の付勢力によってスライド部材4が押し上げられて上
記と逆の作動によって起伏部4hが倒伏し、上部開口3fがシール部材5によって再び封
止される。この起伏部4hが倒伏する際、起伏部4hが起立する場合と同様に、シール部
材5は、シール部5gが上部開口3f内に落ち込むことなく円滑に開閉動作をする。ここ
で、起伏部4hは、薄肉に形成したヒンジ部4fによって天板4aに連結されているので
、起伏動作は円滑に行われる。なお、プローブ30によって吸引された試薬は、検体が分
注された図示しない反応容器に吐出され、反応容器内で検体と反応させた反応液が分析さ
れる。自動分析装置10は、このような動作を繰り返すことにより、複数種類の分析項目
につき連続的に分析を実行する。
【0042】
以上説明したように、シール部材5は、上部開口3fの上縁に当接し、上部開口3fの
外方へ延出する延出部としてフランジ5jがシール部5gのヒンジ部4f側の外縁に設け
られている。このため、シール部材5は、起伏部4fと共に起伏する際、フランジ5jが
上部開口3fの上縁に当接してシール部5gが上部開口3f内に落ち込むのを規制する。
従って、シール部材5は、起伏部4fの起伏に伴って上部開口3fを開閉する際、フラン
ジ5jが上部開口3fの上縁及び挿通筒部3cの上部外周に設けた2つのリブ3kの上面
に当接しながら起伏するので、シール部5gが上部開口3f内に落ち込むことなく円滑に
開閉動作をする。このとき、シール部材5は、位置決めリブ5fを設けたので、位置決め
リブ5fを凹部4jと係合させて支持部5aを挿着孔4iに取り付ければ、取り付け方向
を誤ることなくフランジ5jをヒンジ部4f側に位置決めすることができる。また、シー
ル部材5を用いたキャップ2は、特許文献1に開示された従来のキャップに比べて構造が
簡単であり、構成部品数が少ないので、安価に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかるシール部材は、試薬容器の開口を封止するシール部材が
起伏する際に開口に落ち込むことを規制し、円滑な開閉動作を実現するのに有用であり、
このシール部材を用いた試薬容器のキャップは、構成部品数を低減し、構造を簡単にする
のに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のシール部材および試薬容器のキャップを用いた試薬容器の上部及びキャップを断面にして示した正面図である。
【図2】本発明の試薬容器のキャップを構成する固定部材の右半断面正面図である。
【図3】固定部材の平面図である。
【図4】図3に示す固定部材のC1−C1線に沿った断面図である。
【図5】固定部材の一部を破断して示した左側面図である。
【図6】固定部材の底面図である。
【図7】図3のA部拡大図である。
【図8】図3のB部を拡大した断面図である。
【図9】本発明の試薬容器のキャップを構成するスライド部材の正面図である。
【図10】スライド部材の平面図である。
【図11】スライド部材の左側面図である。
【図12】図10に示すスライド部材のC2−C2線に沿った断面図である。
【図13】図10に示すスライド部材のC3−C3線に沿った断面図である。
【図14】スライド部材の底面図である。
【図15】図13の上部を拡大した拡大図である。
【図16】本発明のシール部材の右半断面正面図である。
【図17】シール部材の一部を破断して示した平面図である。
【図18】シール部材の左側面図である。
【図19】本発明の試薬容器のキャップを構成する付勢部材の斜視図である。
【図20】付勢部材を形成するばね体の一方を示す斜視図である。
【図21】付勢部材を形成するばね体の他方を示す斜視図である。
【図22】2つのばね体を組み合わせて付勢部材とする様子を示す正面図である。
【図23】付勢部材の他の例を示す斜視図である。
【図24】本発明のシール部材および試薬容器のキャップを用いた試薬容器を使用する自動分析装置の概略構成図である。
【図25】シール部材が挿通筒部の開口を封止した図1に示す試薬容器の上部を拡大した拡大図である。
【図26】図25に示すキャップのスライド部材が僅かに押し下げられて起伏部及びシール部材が略水平になった状態を示す拡大図である。
【図27】スライド部材が更に押し下げられて起伏部が起立し、シール部材による挿通筒部の上部開口の封止が解除されて起伏部がシール部材と共に傾斜した状態を示す拡大図である。
【図28】スライド部材が更に押し下げられて起伏部及びシール部材が略45°起立した状態を示す拡大図である。
【図29】スライド部材が図28に示す状態から更に押し下げられた状態を示す拡大図である。
【図30】スライド部材が図29に示す状態から更に押し下げられた状態を示す拡大図である。
【図31】スライド部材が最下部まで押し下げられて起伏部及びシール部材が直立状態まで起立し、挿通筒部の上部開口が全開とされた状態を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1 試薬容器
1a 本体
1b 開口筒部
1c 平面部
2 キャップ
3 固定部材
3a 被着部
3b 案内筒部
3c 挿通筒部
3f 上部開口
3h 係合突起
3k リブ
4 スライド部材
4a 天板
4b スライド筒部
4e 位置調整リブ
4f ヒンジ部
4g 開口
4h 起伏部
4i 挿着孔
4j 凹部
4k 案内片
4m ガイド孔
4n 傾斜溝
4p 凹部
4s スリット
4t 係合片
5 シール部材
5a 支持部
5f 位置決めリブ
5g シール部
5i シール突条
5j フランジ
5k 傾斜部
6 付勢部材
6a コイル部
6b 支持部
6c コイル部材
61,62 ばねユニット
61a,62a コイル部
61b,62b 支持部
61c,62c コイル部材
Hh,Hs 長孔
P 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器に被着されるキャップに用いられ、所定位置を中心として起伏されて前記キャ
ップの開口を開閉自在に覆うシール部を有するシール部材であって、
前記シール部は、前記開口の外方へ延出する延出部が前記所定位置側の外周に設けられ

前記延出部は、前記シール部が前記開口を覆った状態で前記開口の上縁に当接すること
を特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記シール部材は、前記延出部を前記所定位置側に位置決めする位置決め部が前記シー
ル部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
試薬を収容する本体の開口筒部に被着される試薬容器のキャップであって、
前記開口筒部と連通する挿通筒部を有し、前記開口筒部に被着される固定部材と、
前記固定部材にスライド自在に嵌合されて前記固定部材を覆い、前記固定部材に対する
スライド動作に伴い前記挿通筒部によって起伏される起伏部を有するスライド部材と、
前記起伏部に支持されて前記挿通筒部の開口を開閉自在に封止する請求項1又は2に記
載のシール部材と、
前記固定部材と前記スライド部材との間に配置して前記スライド部材を前記固定部材か
ら離反する方向へ付勢し、前記スライド部材を介して前記シール部材に前記挿通筒部の開
口を封止する付勢力を付与する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする試薬容器のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−47048(P2007−47048A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232549(P2005−232549)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】