説明

シール部材

【課題】シール性を確保しつつ、取り付け作業を簡便にする。
【解決手段】パネル計器1の取り付けの際にケーシング2と前面カバー3との間に介装されると、突条5bがパネル4の取付用開口部4aの周縁に凹凸が生じていてもその形状に応じて弾性変形することにより密着性を確保してシール性を向上させ、また内向きの突片5cが図2の上部側に拡大して示すように、前面カバー3の上部後縁側の開口が大きく、この間に突片5cが内側に入り込むことにより、この部位における密着性とシール性を確保している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤などのパネルに取り付けられ、温度などのプロセス量の制御を行うパネル計器におけるパネルとケーシングとの間及び前面カバーとケーシング間のシールを行えるようにしたシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シーケンサや温度調節計などのパネル計器は、例えば温度、圧力、流量などの所定のパラメータを設定する操作部及び計測結果や機器の状態などを表示するための表示部をその前面カバーに備え、制御盤などのパネルに取付けられて使用される。この種のパネル計器においては、機器のケーシング内部に収納された回路基板などの内器の部品交換や、仕様変更に応じたCPUの書換えなどの作業を簡単に行う必要上、前面カバーごと簡単にパネル及びケーシング前面から引出して、それらメンテナンス作業に供することが必要である反面、パネル取付状態においては、ケーシングのパネルに対する防水・防塵性、及びケーシングに対する前面カバーの防水・防塵性を確保する必要がある。。
【0003】
このような課題を達成するため、下記特許文献1には、ケーシングのフランジとパネル間に第1のパッキンを介在するとともに、ケーシングの開口縁と前面カバーとの間に第2のパッキンを介在したパネル計器が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、ケーシングと前面カバーに共通するパッキンにより防水機能を達成する用にした計器ケースの防水構造が開示されている。
【特許文献1】特開平9−229723号公報
【特許文献2】特開平11−160115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、パネルとケーシングとの間、前面カバーとケーシングとの間にそれぞれ1つずつパッキンを介在させる必要であるため、部品数が多くなり、コスト増の原因となる。これに対し、特許文献2の構造では、パッキンが1つで済むが、パッキンの構造上、前面カバーに装着した後にケーシングに嵌め付けなければならず、前面カバーに複雑な成形を必要とし、且つ複雑な取付構造となりパネル計器の取り付け作業が煩雑であった。
【0006】
そこで本発明は以上の課題を解決するものであって、防水・防塵性を確保しつつ、容易に取り付け可能なシール部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のシール部材は、前面周縁に一体化されたフランジを有し、所定のパネルに形成された開口部に挿入されて取り付けられるケーシングと、該ケーシングの前面開口に嵌め付けられる前面カバーとを備えるパネル計器をシールするシール部材であって、
前記フランジに嵌合される断面凹状をなし、前記前面カバーを嵌め付ける際に端面がパネルの開口部周縁に当接するとともに、先端面が前面カバーの後部周縁に当接する矩形枠状であることを特徴としている。
【0008】
請求項2のシール部材は、請求項1記載のシール部材において、前記シール部材の後端面には、断面半円弧状の突条を形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項3のシール部材は、請求項1又は2記載のシール部材において、前記シール部材の先端面には枠内側に向けて傾斜する突片を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシール部材によれば、シール部材をケーシングのフランジに嵌め付けるだけで、その後端がパネルとケーシング間のシールを行うとともに、先端部がケーシングと前面カバー間のシールを行うため、シールの共用化を図るとともに、構造が簡単で複雑な取付構造も不要となる。
【0011】
また、パネルの取付用開口部周縁に多少の凹凸があっても、ケーシングの嵌め付け時に、突条がその凹凸形状に応じて弾性変形してその凹凸形状に沿って密着するため、パネルとケーシング間のシールが確実となる。
【0012】
さらに、突片がケーシングと前部カバーとの隙間に入り込んで、弾性変形しつつ両者の隙間を密封するため、ケーシングと前部カバー間のシールが確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はパネル計器の組立状態を示す斜視図、図2は同パネル計器をパネルに嵌め付け固定した状態を示す断面図、図3はパネル計器の前面カバーを引出すとともに、シール部材も抜出した状態を示す一部拡大の斜視図である。
【0014】
まず、本例のシール部材が用いられるパネル計器の構成例について、図1〜3を参照しながら説明する。各図において、パネル計器1は、前面開口した直方体状のケーシング2と、ケーシング2の前面開口に取付けられた前面カバー3を備え、ケーシング2の前面周縁に一体化されたフランジ2a及び前面カバー3の後部周縁を、制御盤などのパネル4に形成された矩形状開口部4aにシール部材5を介して嵌め付け固定されている。
【0015】
前面カバー3のほぼ中央部は開口され、この開口部3aの背面には保護シートを介してLCDなどの薄形表示部6が嵌め付け固定されている。また、前面カバー3における表示部6の下方には横長の凹部3bが形成されており、この凹部3bには、操作部を構成する横長長方形のスイッチボックス7が前面カバー3の下縁に形成された薄肉の樹脂ヒンジ7aを介して前方に傾動可能に嵌め付けられている。
【0016】
スイッチボックス7の前面には、図1に示すように、カーソルキー8、並びに各種操作キー9が配列され、さらにスイッチボックス6の上部中央には操作摘み10が突設されている。スイッチボックス7は、図3に示すように、操作摘み10を手前側に引くことにより、ヒンジ7aを基点に下方に回動し、凹部3bを覗くことができる構成である。
【0017】
前記凹部3bの内奥部には、図3に示すように、ケーシング2の前面内底部側に形成されたねじ孔(図略)に連通する左右一対の取付孔3cが開口され、この取付孔3cを通じて固定手段であるビスBをねじ込むことによって前面カバー3をケーシング2の前面に強固に固定し、図3に図示するごとく、ビスBを取外すことによって、前面カバー3をケーシングから引抜くことが可能となっている。
【0018】
次に、本例のシール部材5について説明すると、シール部材5は、図3に示すように防水性に優れたゴム、合成樹脂材料から構成される矩形枠状の成形体であり、ケーシング2とパネル4との間に対する防水・防塵性確保と、前面カバー3とケーシング2との間に対する防水・防塵性とを共用するものである。
このシール部材5は、図2の円内に拡大して示すように、前記フランジ2aに嵌合される第一凹部5a、第二凹部5bを有する断面形状であり、その後面をパネル4の開口部4aの周縁に、前面をケーシング2の先端と前面カバー3の背面との間に狭着されてそれぞれの周縁をシール封止するものである。また、シール部材5に第二凹部5bが設けられているため、フランジ2aにしっかりと固定されるとともに、前面カバー3の着脱時にシール部材5の捩れが生じにくくなっている。
【0019】
但し、図2のシール部材5の介装状態では、各部が圧縮されることにより、元の形状が潰されており、介装前の形状は、図3の円内に拡大して示すように、シール部材5の後部にはその枠の全周に亘って半円弧状の突条5cが形成されているとともに、シール部材5の前面には枠の内側に向く突片5dがその枠の全周に亘って形成されている。
【0020】
このような形状のシール部材5は、パネル計器1の取り付けの際にケーシング2と前面カバー3との間に介装されると、突条5cがパネル4の取付用開口部4aの周縁に凹凸が生じていてもその形状に応じて弾性変形することにより密着性を確保してシール性を向上させ、また内向きの突片5dが図2の上部側に拡大して示すように、前面カバー3の上部後縁側の開口が大きく、この間に突片5dが内側に入り込むことにより、この部位における密着性とシール性を確保している。
これにより、ケーシング2とパネル4との間に対する防水・防塵性確保と、前面カバー3とケーシング2との間に対する防水・防塵性とを1つの部材で共用でき、且つシール部材5の取り付けに際し複雑な構造や煩雑な取り付け作業をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るパネル計器の組立状態を示す斜視図である。
【図2】同パネル計器をパネルに取付けた状態を示す一部拡大部分を含む後部省略の断面図である。
【図3】同パネル計器の前面カバーを引出すとともに、シール部材も抜出した状態を示す一部拡大部分を含む斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 パネル計器
2 ケーシング
2a フランジ
3 前面カバー
4 パネル
4a 取付用開口部
5 シール部材
5a 第一凹部
5b 第二凹部
5c 突条
5d 突片
6 表示部
7 スイッチボックス
8 カーソルキー
9 各種操作キー
10 操作摘み
11 フレキシブルフラットケーブル
12 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面周縁に一体化されたフランジを有し、所定のパネルに形成された開口部に挿入されて取り付けられるケーシングと、該ケーシングの前面開口に嵌め付けられる前面カバーとを備えるパネル計器をシールするシール部材であって、
前記フランジに嵌合される断面凹状をなし、前記前面カバーを嵌め付ける際に端面がパネルの開口部周縁に当接するとともに、先端面が前面カバーの後部周縁に当接する矩形枠状であることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記シール部材の後端面には、断面半円弧状の突条を形成したことを特徴とする請求項1記載のシール部材。
【請求項3】
前記シール部材の先端面には枠内側に向けて傾斜する突片を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−236217(P2009−236217A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83121(P2008−83121)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】