説明

ジアミン、液晶配向剤、液晶配向膜、および液晶表示素子

【課題】本発明の目的は、液晶配向膜に求められる特性(電圧保持率が高い、残留DCが小さい、液晶配向性が高い、耐ラビング性が高いなど)の多くを達成することのできるポリアミック酸を開発することである。
【解決手段】式(1)で表されるジアミン。Yは単結合または炭素数1〜9の直鎖アルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−N(CH)−、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;nは0または1であり;そして、アミノ基が結合しているベンゼン環の1つの水素は−OHで置き換えられてもよい。但し、Yがアルキレンであってnが0であるとき、アミノ基が結合する−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられることはない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ジアミンとこれを用いて得られるポリアミック酸に関し、さらにその用途に関する。なお、本発明における用語「液晶配向剤」は、液晶配向膜を形成させるために用いるポリマー含有組成物を意味する。
【0002】
液晶表示素子は、携帯電話の表示部、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイなど様々な表示装置に使われており、最近ではテレビにも用いられるようになってきた。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブなどのオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子としては、ネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、1)90度ツイストしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子、2)通常180度以上ツイストしたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子、3)薄膜トランジスタを使用したいわゆるTFT(Thin Film Transistor)型液晶表示素子等が実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの液晶表示素子は画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストの低下および中間調での輝度反転を生じるという欠点を有している。近年、この視野角の問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN−TFT型液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、3)垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi Domain Vertical Alignment)型液晶表示素子、または4)横電界方式のIPS(In-Plane Switching)型液晶表示素子、5)ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子、6)光学補償ベンド(Optically Compensated Bend、またはOptically self-Compensated Birefringence:OCB)型液晶表示素子などの技術により改良され、それらの素子は実用化されている。
【0004】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0005】
液晶配向膜は、液晶配向剤より調製される。現在、主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性ポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱などの手段により成膜してポリイミド系配向膜を形成する。ポリアミック酸以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
【0006】
液晶表示素子(LCD)の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される特性として、電圧保持率(VHR)が高いことが必要とされる。アクティブマトリックス型LCDにおいて、例えば電圧保持率が低いと、フレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が変化してしまい、正常な諧調とならない。特に最近LCDがテレビ用途に用いられるようになり、VHRの経時劣化が小さいことも重要となってきた。大画面で表示のきれいなLCDを作製するため、バックライトの輝度が高くなっており、光や熱によってもVHRが劣化しない配向膜が求められるようになっている。
【0007】
次に、配向膜に求められる重要な特性として、残留電荷(DC)が小さいことが挙げられる。残留DCとはLCDの駆動に伴い電極間に溜まる電荷のことであり、この現象により余分な電圧が電極に印加され、例えば電圧を切った後も表示画像が消えずに残る、いわゆる「残像」が発生する。残留DCを小さくする方法の一つとして、最近、窒素原子を持つジアミンを用いることで、残留DCが小さい液晶配向膜を製作できることが報告されている(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2004−053583号パンフレット
【特許文献2】国際公開2004−021076号パンフレット
【特許文献3】特開平10−104633号公報
【0009】
しかしながら、液晶表示素子の高性能化が進むにつれて、さらに残留DCを低減することができる配向膜が必要であり、従来提案されている技術のみでは、要求される特性を完全に満足させることが難しくなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、液晶配向膜に求められる特性(電圧保持率が高い、残留DCが小さい、液晶配向性が高い、耐ラビング性が高いなど)の多くを達成することのできるポリアミック酸を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を行い、ポリアミック酸の原料であるジアミンに1−フェニルインドール構造を導入することにより、このポリマーから成る配向膜を有する液晶表示素子に、高い電圧保持率を保ちつつ残留DCを低下させることができることを見出した。さらに本発明のジアミンおよび本発明のジアミンを用いたポリアミック酸またはポリイミドは通常使用される溶剤に対して高い溶解性を持つことを見出し本発明を完成させた。
【0012】
本発明のジアミンは次の[1]項で示される。
[1] 式(1)で表されるジアミン:


ここに、Yは単結合または炭素数1〜9の直鎖アルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−N(CH)−、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;nは0または1であり;そして、アミノ基が結合しているベンゼン環の1つの水素は−OHで置き換えられてもよい。但し、Yがアルキレンであってnが0であるとき、アミノ基が結合する−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられることはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジアミンは特殊な反応装置を使わずとも容易に合成でき、また本発明の液晶配向剤は当該技術において通常用いられる溶剤に可溶であり、保存時に沈殿を生ずることがない。そして本発明により、電圧保持率が高く、残留DCの小さい液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず最初に、本発明で用いる用語について説明する。式(1)で表されるジアミンをジアミン(1)と称することがある。他の式で表されるジアミンも同様の略記法で示すことがある。ジアミン以外の化合物については、例えば式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物を酸無水物(A)と略記することがある。化学式について説明する際に用いる用語「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。
【0015】
環を構成する炭素との結合位置が明確でない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時に同じ基でなければならないことを意味しない。複数の式において同じ基であってもよいし、式ごとに異なる基であってもよい。
【0016】
本発明は前記の[1]項と次の[2]〜[11]項で構成される。
[2] アミノ基が結合しているベンゼン環が−OHを置換基として持たないベンゼン環である、[1]項に記載のジアミン。
【0017】
[3] アミノ基が結合しているベンゼン環がアミノ基に対してオルト位の1つに置換基−OHを有するベンゼン環である、[1]項に記載のジアミン。
【0018】
[4] Yが単結合または1,4−フェニレンであり、そしてnが0である、[1]項に記載のジアミン。
【0019】
[5] Yが単結合、または任意の−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられてもよい炭素数1〜9の直鎖アルキレンであり;そしてnが1である、[1]項に記載のジアミン。
【0020】
[6] [1]項に記載のジアミンの少なくとも1つまたは[1]項に記載のジアミンの少なくとも1つとその他のジアミンの少なくとも1つからなるジアミン混合物と、少なくとも1つのテトラカルボン酸無水物とを反応させて得られるポリアミック酸。
【0021】
[7] 少なくとも1つのテトラカルボン酸無水物が式(A1)〜式(A63)で表される化合物から選択されるテトラカルボン酸無水物である、[6]項に記載のポリアミック酸。


【0022】


【0023】


【0024】


【0025】
[8] [6]項に記載のポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミド。
【0026】
[9] [6]項に記載のポリアミック酸および[8]項に記載のポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーを含有する溶液。
【0027】
[10] [9]項に記載のポリマー溶液からなる液晶配向剤。
【0028】
[11] [10]項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【0029】
本発明のジアミンは式(1)で表される。


【0030】
式(1)において、Yは単結合または炭素数1〜9の直鎖アルキレンである。そして、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−N(CH)−、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよい。Yの好ましい例は、単結合、1,4−フェニレン、ピペラジン−1,4−ジイルおよび任意の−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられてもよい炭素数1〜9の直鎖アルキレンである。Yのより好ましい例は、1,4−フェニレンおよび任意の−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられてもよい炭素数1〜9の直鎖アルキレンである。nは0または1である。しかしながら、Yが前記のアルキレンであってnが0であるとき、アミノ基が結合する−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられることはない。そして、アミノ基が結合しているベンゼン環の1つの水素は−OHで置き換えられてもよい。このベンゼン環が1つの置換基−OHを有するとき、その位置はアミノ基の結合位置に対してオルト位またはメタ位であり、オルト位が好ましい。
【0031】
ジアミン(1)をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸は、溶剤への溶解性が高く、冷蔵庫中等での保存時にポリマーの析出を防ぐことができる。ジアミン(1)以外の原料組成に依存して、より溶解性の悪いポリアミック酸となることが予想される場合、nが0である非対称なジアミン(1)を使用することが、溶解性を向上させるために好ましい。またポリアミック酸より溶解性の低いポリイミドを配向剤に用いる場合も、式(1)におけるnが0であるジアミン(1)を使用することが好ましい。
【0032】
さらに大きな配向規制力を持つ配向膜を得るためには、Yが炭素数1〜9の直鎖アルキレンであることが好ましく、炭素数2〜9の直鎖アルキレンがより好ましい。この場合のアルキレンは−CH−が他の基で置き換えられないアルキレンである。
【0033】
本発明のジアミンを原料とするポリアミック酸から得られる配向膜は、残留DCを低減する効果が著しく大きい。従って、下記に示すような配向規制力の特に大きな公知のその他のジアミンをジアミン(1)と組み合わせて使用することによっても、液晶に対する配向規制力が大きく、残留DCが低い配向膜を得ることができる。
【0034】
Yの直鎖アルキレンにおける任意の−CH−は、配向膜の電気特性を所望する値に調製するために、−O−またはN(CH)−で置き換えることができる。そのとき、原料の入手し易さから、インドール環に隣接する−CH−が−O−またはN(CH)−で置き換えられているものが好ましく、化合物の安定性から−O−とN(CH)−が隣り合わないことが好ましい。
【0035】
ジアミン(1)の具体例を以下に示す。


【0036】


【0037】




【0038】
Yが単結合であり、nが0であるジアミン(1)は以下に示す経路で合成できる。


Scheme1中、(S1−1)で表される市販の5−アミノインドールまたは6−アミノインドールを水素化ナトリウムなどの塩基存在下、4−フルオロニトロベンゼンと反応させ(S1−2)で表される化合物を得る。次いで、(S1−2)で表される化合物を水素接触還元でニトロ基を還元することにより、式(1)で表されるジアミンを合成できる。
【0039】
Yが炭素数1〜9の直鎖アルキレン基であり、nが1である化合物は以下に示す経路で合成できる。


上記Scheme2中、(S2−1)で表されるジアミン(ここでYは単結合または炭素数1〜9の直鎖アルキレンである)とトリエタノールアンモニウムクロライドとをTetrahedron Letters 41(11),1811−1814(2000)に記載の方法に従い反応させて(S2−2)で表される化合物を得る。次いで、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、4−フルオロニトロベンゼンと反応させ(S2−3)で表される化合物を得る。次いで(S2−3)で表される化合物を水素接触還元でニトロ基を還元することで、式(1)で表されるジアミンが合成できる。
【0040】
Yが炭素数2〜9の直鎖アルキレンであり、nが0である化合物は以下に示す経路で合成できる。


上記Scheme3中、(S3−1)で表される化合物とアミノアセチライド(ここでY’は単結合または炭素数1〜7の直鎖アルキレンである)とをTetrahedron Letters 34(40), 6403-6406(1993)に記載の方法に従い反応させて、(S3−2)で表される化合物を得る。次いで、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、4−フルオロニトロベンゼンと反応させ(S3−3)で表される化合物を得る。次いで(S3−3)で表される化合物を水素接触還元でニトロ基を還元することで、式(1)で表されるジアミンが合成できる。
【0041】
Yが炭素数1のメチレンであり、nが0である化合物は次に示す経路で合成できる。


上記Scheme4中、(S4−1)で表される市販の5−(アミノメチル)インドールまたは6−(アミノメチル)インドールと水素化ナトリウムなどの塩基存在下、4−フルオロニトロベンゼンとを反応させ(S4−2)で表される化合物を得る。次いで(S4−2)で表される化合物を水素接触還元でニトロ基を還元することで、式(1)で表されるジアミンが合成できる。
【0042】
Yが1,4−フェニレンであり、nが0である化合物は以下に示す経路で合成できる。


上記Scheme5において、(S5−1)で表される市販の5−ブロモインドールまたは6−ブロモインドールと、市販の4−アミノフェニルボロン酸とをパラジウム触媒を用いたカップリング反応により(S5−2)で表される化合物を得る。次いで、水素化ナトリウムなどの塩基存在下、4−フルオロニトロベンゼンと反応させ(S5−3)で表される化合物を得る。次いで(S5−3)で表される化合物を水素接触還元でニトロ基を還元することで、式(1)で表されるジアミンが合成できる。
【0043】
次に、本発明のポリアミック酸について具体的に説明する。ジアミン(1)を溶剤中でテトラカルボン酸二無水物と反応させることにより、ポリアミック酸、部分的にイミド化されたポリアミック酸、またはこれらの混合物を含有する溶液が得られる。以下の説明ではこれらの溶液をワニスと称することがある。さらに、これらのワニスに含まれるポリアミック酸、部分的にイミド化されたポリアミック酸またはこれらの混合物を脱水反応により閉環させることでポリイミドを含有するワニスが得られる。本発明においては、ジアミン(1)を単独で使用してもよいが、2つ以上のジアミン(1)を組み合わせてもよい。また、式(1)で表されるジアミンと他の公知のジアミンとを併用することもできる。以下の説明では、ポリアミック酸、または部分的にイミド化されたポリアミック酸、またはこれらの混合物などのポリアミック酸類、およびポリアミック酸、または部分的にイミド化されたポリアミック酸、またはこれらの混合物を脱水閉環して得られるポリイミド類を総称してポリマーという。
【0044】
本発明のポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量で、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは10,000〜250,000である。重量平均分子量が10,000以上であれば、配向膜を形成する際の基板焼成工程においてポリマーの昇華を抑えられ、重量平均分子量が250,000以下であれば、溶剤への溶解性の低下を防ぐことができ、基板へ配向剤を塗布する際の、ポリマー分の析出などが抑えられるからである。
【0045】
本発明ではテトラカルボン酸二無水物を殊更に限定する理由はないが、使用するのに好ましいテトラカルボン酸二無水物の具体例を次に示す。


【0046】


【0047】


【0048】


【0049】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、特に好ましい例は酸無水物(A1)、酸無水物(A2)および酸無水物(A20)であり、これらの少なくとも1つを使用することで、より電圧保持率の高い液晶表示素子を提供することができる。
【0050】
本発明のポリマーを調製するとき、本発明の効果を損なわない範囲であれば、式(1)で表されるジアミンと式(1)で表されない公知のジアミンを併用することができる。このとき、本発明の効果を最大限に発揮するためには、式(1)で表されるジアミンの含有割合は、ジアミンの全量を100モル%とするとき0.5〜95モル%であり、好ましくは5〜90モル%である。
【0051】
公知のジアミンの好ましい例は、下記に示す式(II)〜式(VIII)で表される化合物の群から選択されるジアミンである。これらのジアミンの少なくとも1つをジアミン(1)と併用することができる。なお、式(II)〜式(VIII)で表されないジアミンも併用することができる。


【0052】
式(II)〜式(VIII)において、mは1〜12の整数であり、Gは独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、または−S−(CH−S−、−N(CH)−(CH−N(CH)−であって、kは1〜12の整数であり;Gは独立して、単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−または炭素数1〜3のアルキレンであり;シクロヘキサン環およびベンゼン環の任意の水素は、フッ素または−CHで置き換えられていてもよい。式(III)においては、2つのアミノ基が同じ炭素原子に結合しないことが好ましい。式(IV)におけるアミノ基は、Gが結合している炭素原子に結合しないことが好ましい。
【0053】
ジアミン(II)〜ジアミン(IV)の具体例を以下に示す。


【0054】
ジアミン(V)の具体例を以下に示す。


【0055】
ジアミン(VI)の具体例を以下に示す。


【0056】

【0057】
ジアミン(VII)の具体例を以下に示す。


【0058】
ジアミン(VIII)の具体例を以下に示す。


【0059】
ジアミン(II)〜ジアミン(VIII)は、これらのジアミンの少なくとも1つと本発明のジアミン(1)とを併用することにより、液晶分子のプレチルト角を0°〜3°に調整することができるため、IPS用の配向膜原料として好適である。
【0060】
より電圧保持率が高いIPS用配向膜を得るためには、ジアミン(VI−1)またはジアミン(VI−2)を併用することが好ましい。
【0061】
より残留DCの低い配向膜を得るためには、ジアミン(VI−14)、ジアミン(VI−15)またはジアミン(VI−22)を併用するのが好ましく、特にジアミン(VI−22)を併用するのが好ましい。
【0062】
液晶表示素子の黒表示特性を向上させる配向膜を得るためには、ジアミン(VI−10)またはジアミン(VIII−3)で表されるジアミンを併用するのが好ましい。
【0063】
他の公知のジアミンとしては、側鎖構造を持つジアミンが挙げられる。側鎖構造を持つ公知のジアミンの例は、下記のジアミン(IX)〜ジアミン(XII)である。これらのジアミンの少なくとも1つをジアミン(1)と併用することができる。ジアミン(II)〜ジアミン(VIII)の少なくとも1つとジアミン(IX)〜ジアミン(XII)の少なくとも1つとをジアミン(1)と併用してもよい。なお、本発明では、ジアミン(II)〜ジアミン(XII)に加えてこれら以外のジアミンを使用することもできる。


【0064】
式(IX)中、Gは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−または−(CH−であって、kは1〜12の整数である。Rは炭素数3〜20のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(IX−S)で表される基である。このアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。このフェニルの水素は、−F、−CH、−OCH、−OCHF、−OCHFまたは−OCFで置き換えられてもよい。ベンゼン環へのアミノ基の結合位置は任意であるが、2つのアミノ基の結合位置関係はメタまたはパラであることが好ましい。即ち、基「R−G−」の結合位置を1位としたとき、2つのアミノ基はそれぞれ、3位と5位、または2位と5位に結合していることが好ましい。
【0065】


式(IX−S)中、Rは水素、フッ素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のフッ素置換アルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHFまたは−OCFであり、G、GおよびGは結合基であって、これらは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−または炭素数1〜12のアルキレンであり、A、AおよびAは環であって、これらは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルであり、すべての環において、任意の水素はフッ素または−CHで置き換えられてもよく;b、cおよびdは独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり;b、cまたはdが2であるとき、2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして2つの環は同じであっても異なってもよい。
【0066】
式(X)および式(XI)中、Rは独立して水素またはメチルである。Rは独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルである。Gは独立して単結合、−CO−または−CH−である。式(XII)におけるベンゼン環の1つの水素は、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置き換えられてもよい。
【0067】
式(X)中、2つの基「NH−フェニレン−G−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(XI)における2つの基「NH−フェニレン−G−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XI)および式(XII)において、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は、Gの結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0068】
式(XII)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであって、このアルキルのうち炭素数2〜20のアルキルにおける任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Gは−O−または炭素数1〜6のアルキレンである。Aは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、Gは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、そしてaは0または1である。ベンゼン環へのアミノ基の結合位置は、Gの結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0069】
ジアミン(IX)の具体例を以下に示す。


【0070】


【0071】


【0072】
ジアミン(X)の具体例を以下に示す。


【0073】
ジアミン(XI)の具体例を以下に示す。


【0074】
ジアミン(XII)の具体例を以下に示す。


【0075】


【0076】
ジアミン(IX−1)〜ジアミン(IX−4)、ジアミン(IX−25)〜ジアミン(IX−28)、およびジアミン(XII−1)〜ジアミン(XII−6)は、これらの少なくとも1つを本発明のジアミン(1)と併用することにより、液晶分子のプレチルト角を3°〜15°に調整できるため、TN、STN、OCB用の配向膜原料として好適である。
【0077】
より電圧保持率が高く、残留DCを低く抑えることができ、かつ、配向膜形成工程の条件に因らず安定して一定の所望するプレチルト角を液晶分子に与えることができるTN、STN、OCB用の配向膜の原料としては、ジアミン(IX−2)、ジアミン(XII−1)、ジアミン(XII−4)およびジアミン(XII−6)の少なくとも1つをジアミン(1)と併用することが好ましい。
【0078】
ジアミン(IX−7)、ジアミン(IX−8)、ジアミン(IX−13)〜ジアミン(IX−16)、ジアミン(IX−29)〜ジアミン(IX−33)、ジアミン(X−1)〜ジアミン(X−4)、ジアミン(XI−1)〜ジアミン(XI−4)、およびジアミン(XII−7)〜ジアミン(XII−11)は、これらの少なくとも1つをジアミン(1)と併用することにより液晶分子のプレチルト角を90°に調整できるため、VA用の配向膜原料として好適である。
【0079】
より電圧保持率が高く、残留DCを低く抑えることができ、かつ、配向膜形成工程の条件に因らず安定して一定の所望するプレチルト角を液晶分子に与えることができるVA用の配向膜の原料としては、ジアミン(IX−7)、ジアミン(IX−8)、ジアミン(IX−13)、およびジアミン(IX−14)の少なくとも1つをジアミン(1)と併用することが好ましい。
【0080】
さらに、本発明のジアミンと併用できるジアミンとして、シロキサン結合を含むシロキサン系ジアミンを挙げることができる。このシロキサン系ジアミンは特に限定されるものではないが、式(S1)で表されるジアミンが好ましく使用される。


ここに、Rは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。RおよびRは独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルである。そしてfは1〜10の整数である。これらのシロキサン系ジアミンの使用量は本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0081】
本発明の液晶配向剤について説明する。本発明の液晶配向剤は、本発明のポリマーから選ばれた1つ以上を含有するポリマー溶液である。本発明の液晶配向剤の具体的な例は、ジアミン(1)と酸二無水物とを反応させることによって得られる本発明のポリアミック酸の溶液、このポリアミック酸の溶液から溶剤を除去して得られるポリアミック酸のポリマーを溶剤に溶解させて得られるポリアミック酸の溶液およびそれらの混合物などである。本発明の液晶配向剤は、本発明のポリマーの調製に用いられた反応溶液そのものであってもよいが、反応溶液から溶剤を留去して得られたポリマーを、この反応に用いたのと異なる溶剤に溶解させた溶液であってもよい。
【0082】
本発明の液晶配向剤に用いる溶剤は特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。本発明においては、上記溶剤から選ばれた2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明のポリマーが可溶であれば上記以外の溶剤を用いてもよい。
【0083】
本発明の液晶配向剤には、配向膜としてのよりよい特性を発現させるため、さらに公知の全てのポリマーから選ばれる1種類以上を加えてもよい。このとき、全ポリマー中に占める本発明ポリマーの好ましい割合は、本発明の効果を発現させるために、50〜100重量%であり、より好ましい割合は70〜100重量%である。このようなポリマーの例として、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコン変性ポリウレタン、シリコン変性ポリエステルなどを挙げることができる。
【0084】
本発明の液晶配向剤に含まれるポリマーの割合は特に限定されるものではなく、液晶表示素子を作製する際の工程に合わせ、最適な値を選べばよい。通常、ガラス基板への塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、液晶配向剤全重量に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0085】
本発明の液晶配向剤に有機ケイ素化合物を添加すれば、配向膜のガラス基板への密着性や硬さの調節が可能となり、ラビング等によりポリイミドが削れることに起因する表示不良を改善することができる。本発明の液晶配向剤に添加する有機ケイ素化合物は特に限定されるものではないが、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルであり、特に、アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを添加することが好ましい。
【0086】
この有機ケイ素化合物の液晶配向剤への添加割合は、上記の配向膜に要求される特性を損なうことなく、表示不良を改善することができる範囲であれば特に制限はない。しかしながら、これらを多く添加すると、配向膜としたとき液晶の配向不良が生ずる。したがって、これらの濃度は液晶配向剤に含有されるポリマーの全重量に対し、0.01〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。
【0087】
異なる種類のポリマーを混合して用いることによっても、所望するプレチルト角を与えうる液晶配向剤を調製することができる。これは、表面エネルギーが異なる複数のポリマーを混合すると、これらのポリマーが薄膜となるとき、表面エネルギーが小さいポリマーが表面に偏析しやすいことを利用したものである。このようなポリマーブレンドを行うことによって、配向膜の表面に、液晶分子にプレチルト角を付与し、かつ良好な液晶配向性を示す成分(ポリマーAという)の層を形成し、そして塗布基板側に良好な電気的特性を発現する成分(ポリマーB)の層を形成することができる。即ち、これら両方の特性に優れた配向膜を得ることができる。この方法に関しては特開平8−43831号公報に開示されている。
【0088】
本発明の液晶配向剤においてもポリマーブレンドを行うことができる。本発明のポリマーは電気特性の優れた配向膜となるので、ポリマーBの成分として好適である。また、先に述べたように、本発明のポリマーは式(1)で表される本発明のジアミンと他のジアミンを適宜組み合わせることにより、ポリマーAの成分としても使用できる。
【0089】
ポリマーAとポリマーBの混合比は、それぞれ1重量%〜99重量%の間で任意に選択できる。しかしながら、良好な液晶配向特性およびプレチルト角を保持したまま良好な電気的特性を発現させるために好ましいポリマーAの割合は、ポリマー全重量を基準として1〜50重量%であり、より好ましくは5〜30重量%である。
【0090】
ポリアミック酸のカルボン酸残基と反応する架橋剤を本発明の液晶配向剤に添加することも、特性の経時劣化や環境による劣化を防ぐために重要である。このような架橋剤としては、特許第3049699号公報、特開2005−275360号公報、特開平10−212484号公報等に記載されているような多官能エポキシ、イソシアネート材料等が挙げられる。また架橋剤自身が反応して網目構造のポリマーとなり、ポリアミック酸またはポリイミド膜強度を向上させるような材料も、上記と同様な目的に使用することができる。このような架橋剤としては、特開平10−310608号公報、特開2004―341030号公報等に記載されているような多官能ビニルエーテル、マレイミド誘導体、またはビスアリルナジイミド誘導体等が挙げられる。なお、本発明に用いられる架橋剤はこれら以外でもよい。架橋剤を使用するとき、本発明の効果を発現させるために好ましいその割合は、本発明のポリマーに対する重量比で、0.05〜0.5であり、より好ましくは0.1〜0.3である。
【0091】
本発明の液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリマーの種類や濃度、溶剤の種類などによるが、好ましくは5〜100mPa・s、より好ましくは10〜80mPa・sである。十分な膜厚を得るためには5mPa・sより大きい粘度であることが望ましく、印刷ムラを発生させないためには、100mPa・sより小さい粘度であることが望ましい。ただし、インクジェット法による印刷を行う場合は、粘度が5mPa・s以下のものでも使用することができる。
【0092】
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。本発明の液晶表示素子は、(1)対向配置された一対の基板、(2)前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜、および(3)前記一対の基板間に挟持された液晶層を含む。この一対の基板の双方に電極が配置されていてもよいが、IPS型液晶表示素子である場合は、一対の基板の一方に、電極(櫛型またはジグザグ構造の電極でありうる)が配置されている。
【0093】
前記液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を前記基板に塗布し、加熱することによって形成される液晶配向膜である。ここで液晶配向膜の膜厚は、10〜300nmであることが好ましく、30〜100nmであることがより好ましい。また、液晶配向膜はラビング処理されていることが好ましい。
【0094】
前記対向配置された一対の電極付き基板は、透明基板(例えばガラス基板)であることが好ましい。
【0095】
前記一対の基板間に挟持された液晶層は液晶組成物を含む。ここで液晶組成物は特に制限はされず、駆動モードに応じて、誘電率異方性が正の液晶組成物および誘電率異方性が負の液晶組成物のいずれの組成物も用いることができる。誘電率異方性が正である好ましい液晶組成物の例は、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1)、特開平9−302346号公報(EP806466A1)、特開平8−199168号公報(EP722998A1)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1)、特開平10−204016号公報(EP844229A1)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040号公報、特開2001−48822号公報などに開示されている。
【0096】
VA型液晶表示素子において用いられる液晶組成物は、誘電率異方性が負の各種の液晶組成物とすることができる。好ましい液晶組成物の例は、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307号公報、特開2001−019965号公報、特開2001−072626号公報、特開2001−192657号公報などに開示されている。
【0097】
前記誘電率異方性が正または負の液晶組成物に、一つ以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0098】
本発明の液晶表示素子は、その他の部材を有していてもよい。例えば、薄膜トランジスタを使用したカラー表示のTFT型液晶素子においては、第1の透明基板上に薄膜トランジスタ、絶縁膜、保護膜、信号電極、画素電極などが形成されており、第2の透明基板上に画素領域以外の光を遮断するブラックマトリクス、カラーフィルター、平坦化膜および画素電極などを有する。
【0099】
VA型液晶表示素子、特にMVA型液晶表示素子においては、第1の透明基板上にドメインと称される微小な突起物が形成されている。また、基板間のセルギャップの調製用にスペーサーが形成されていてもよい。
【0100】
本発明の液晶表示素子は任意の方法で製作されるが、例えば、(1)前記2枚の透明基板上への液晶配向剤塗布工程、(2)塗布された液晶配向剤の乾燥工程、(3)乾燥された液晶配向剤を脱水・閉環反応させるための加熱処理工程、(4)得られた配向膜の配向処理工程、(5)2枚の基板を張り合わせた後の基板間への液晶封入工程、または一方の基板に液晶を滴下させた後に、もう一方の基板を張り合わせる工程を含む方法で製作される。
【0101】
前記液晶配向剤を塗布する工程における塗布方法としては、スピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法などが一般に知られている。これらの方法が本発明においても適用可能である。
【0102】
前記乾燥工程および脱水・閉環反応に必要な加熱処理工程の方法として、オーブン中または赤外炉中での加熱処理、ホットプレート上で加熱処理などが一般に知られている。これらの方法が本発明においても適用可能である。乾燥工程は、溶剤の蒸発が可能な範囲内の比較的低温(50〜100℃)で実施することが好ましい。加熱処理工程は一般に150〜300℃程度の温度で行うことが好ましい。
【0103】
配向処理は、OCB型液晶表示素子、TN型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、IPS型液晶表示素子では通常ラビング処理を行う。VA型液晶表示素子ではラビング処理を行わないことが多いが、行ってもよい。
【0104】
次いで、一方の基板上に接着剤を塗布して貼りあわせ、減圧下で液晶を注入する。滴下注入法の場合には、貼りあわせる前に液晶を基板上に滴下し、その後もう一方の基板を貼りあわせる。貼りあわせに使用した接着剤を熱または紫外線で硬化させて本発明の液晶表示素子が作製される。
【0105】
本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路などが実装されてもよい。
【0106】
本発明の液晶表示素子は、電圧保持率が高く、かつ残留DCが低いという特徴を有する。これは本発明の液晶表示素子の液晶配向膜が、ジアミン(I)で表される化合物を用いて合成されるポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤により形成されていることによるものである。このことは、後述する実施例においても説明されている。
【実施例】
【0107】
以下実施例により、本発明のジアミン、このジアミンを用いることによって得られる液晶配向剤および液晶表示素子を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、1H−NMR測定は重ジメチルスルホキシド中で行った。分子量の測定はGPCを用い、ポリスチレンを標準溶液とし、溶出液にはDMFを用いた。なお、以下の実施例においては、容積の単位リットルをLで表示する。従って、mLはミリリットルを意味する。
【0108】
まず、実施例で用いた液晶表示素子の評価法を説明する。
(1)残留DC
30Hz、3Vの矩形波に1Vの直流電圧を30分間重畳した後、10分後のフリッカー消去電圧を測定し、この値の絶対値を残留DCとした。残留DCが小さいほど焼き付きが少なく良好といえる。
(2)電圧保持率
「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78」に記載の方法に従った。測定は、ゲート幅69μs、周波数0.3Hz、波高±5.0Vの矩形波をセルに印可して行った。測定温度は60℃であった。
(3)プレチルト角
プレチルト角の測定はクリスタルローテーション法により行った。測定に用いた光の波長は589nmである。
【0109】
[実施例1]
<ジアミン(1−1)の合成>
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した1L3つ口フラスコに、60%水素化ナトリウム11.4g(0.46mol)を入れ、DMF100mLを加えた。溶液を5℃に冷却させ、そこに市販の5−アミノインドール30g(0.23mol)をDMF200mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下1時間攪拌させた。再び溶液を5℃に冷却させ、そこに4−フルオロニトロベンゼン39g(0.28mol)をDMF200mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下12時間攪拌させた。反応溶液を酢酸エチル500mLおよび純水500mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を純水500mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1(v/v))で分離精製し、N−(4−ニトロフェニル)−5−アミノインドールを得た(収量35.0g、収率60%)。
【0110】
オートクレーブ用反応管に、得られたN−(4−ニトロフェニル)−5−アミノインドール35.0g(0.14mol)、パラジウム炭素粉末3.5gを入れ、エタノール350mLおよび酢酸エチル35mLを加えた。系内を水素雰囲気下とし、水素圧0.49MPa、室温で12時間攪拌させた。パラジウム炭素粉末を除去し、得られた溶液を濃縮して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1(v/v))で分離精製し、ジアミン(1−1)(N−(4−アミノフェニル)−5−アミノインドール)を得た(収量28.8g、収率92%)。
H−NMR(ppm);3.53(−NH,br.s,2H),3.74(−NH,br.s,2H),6.43−7.25(arm.H,m,9H).
【0111】
[実施例2]
<ジアミン(1−2)の合成>
5−ニトロインドールを6−ニトロインドールに代えた以外は、実施例1に記載の方法に準じて、ジアミン(1−2)(N−(4−アミノフェニル)−6−アミノインドール)を得た。
H−NMR(ppm);3.52(−NH,br.s,2H),3.75(−NH,br.s,2H),5.85−8.18(arm.H,m,9H).
【0112】
[実施例3]
<ジアミン(1−5)の合成>
Tetrahedron Letters 41 ,1815-1818(2000)に記載の方法に準じ、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入口を装着した1L3つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルメタン50g(0.25mol)、トリエタノールアミンハイドロクロリド18.6g(0.10mol)、塩化すず(II)二水和物11.3g(0.05mol)、塩化ルテニウム(III)n水和物1.0g(0.005mol)およびトリフェニルホスフィン3.9g(0.015mol)を入れ、ジオキサン500mLおよび純水50mLを加えた。系内を窒素雰囲気下とし。180℃で20時間攪拌させた。放冷後、反応溶液を5%塩酸500mLにあけ、クロロホルム500mLで抽出した。有機層を純水500mLで3回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、無水硫酸マグネシウムを除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))で分離精製し、ビス(5−インドーリル)メタンを得た(収量7.3g、収率59%)。
【0113】
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した1L3つ口フラスコに、60%水素化ナトリウム1.3g(0.056mol)を入れ、DMF10mLを加えた。溶液を5℃に冷却させ、そこにビス(5−インドーリル)メタン7g(0.028mol)をDMF20mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下1時間攪拌させた。再び溶液を5℃に冷却させ、そこに4−フルオロニトロベンゼン4.7g(0.034)をDMF20mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下12時間攪拌させた。反応溶液を酢酸エチル100mLおよび純水100mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を純水100mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1(v/v))で分離精製し、ビス(5−N−(4−ニトロフェニル)インドーリル)メタンを得た(収量9.3g、収率68%)。
【0114】
オートクレーブ用反応管に、得られたビス(5−N−(4−ニトロフェニル)インドーリル)メタン9.0g(0.018mol)、パラジウム炭素粉末0.9gを入れ、エタノール100mLおよび酢酸エチル10mLを加えた。系内を水素雰囲気下とし、水素圧0.49MPa、室温で12時間攪拌させた。パラジウム炭素粉末を除去し、得られた溶液を濃縮して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1(v/v))で分離精製し、ジアミン(1−5)(ビス(5−N−(4−アミノフェニル)インドーリル)メタン)を得た(収量7.1g、収率91%)。
H−NMR(ppm);3.86(−CH−,s,2H),4.1(−NH,br.s,4H),6.52−8.72(arm.H,m,18H).
【0115】
[実施例4]
<ジアミン(1−9)の合成>
4,4’−ジアミノジフェニルメタンを1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパンに代えた以外は実施例3に記載の方法に準じて、ジアミン(1−9)(1,3−ビス(5−N−(4−アミノフェニル)インドーリル)プロパン)を得た。
H−NMR(ppm);1.95(−CH−,q,2H),2.62(−CH2−,t,4H),3.72(−NH,br.s,4H),6.51−8.78(arm.H,m,18H).
【0116】
[実施例5]
<ジアミン(1−28)の合成>
4,4’−ジアミノジフェニルメタンを4,4’−ジアミノジフェニルエーテルに代えた以外は実施例3に記載の方法に準じて、ジアミン(1−28)(ビス(5−N−(4−アミノフェニル)インドーリル)エーテル)を得た。
H−NMR(ppm);3.79(−NH,br.s,4H),6.52−8.04(arm.H,m,18H).
【0117】
[実施例6]
<ジアミン(1−31)の合成>
4,4’−ジアミノジフェニルメタンをN,N’−ジメチル−N,N’−ビス(4−アミノフェニル)エチレンジアミンに代えた以外は実施例3に記載の方法に準じて、ジアミン(1−31)(N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(5−N−(4−アミノフェニル)インドーリル)エチレンジアミン)を得た。
H−NMR(ppm);2.75(>NCH,s,4H),3.58(−CH−,s,4H),3.69(−NH,br.s,4H),6.52−7.76(arm.H,m,18H).
【0118】
[実施例7]
<ジアミン(1−35)の合成>
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入口を装着した1L3つ口フラスコに、市販の5−ブロモインドール20g(0.10mol)、市販の4−アミノフェニルボロン酸15.1g(0.11mol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)0.35g(0.0005mol)、炭酸カリウム20.7g(0.15mol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド8.1g(0.025mol)を入れ、エタノール150mL、トルエン75mLおよび純水100mLを加えた。窒素雰囲気下3時間加熱還流させた。放冷後、反応溶液を水にあけ、トルエン200mLで抽出し、有機層を純水200mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1(v/v))で分離精製し、5−(4−アミノフェニル)インドールを得た(収量17.9g、収率86%)。
【0119】
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した1L3つ口フラスコに、60%水素化ナトリウム3.8g(0.16mol)を入れ、DMF40mLを加えた。溶液を5℃に冷却させ、そこに5−(4−アミノフェニル)インドール16.7g(0.08mol)をDMF200mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下1時間攪拌させた。再び溶液を5℃に冷却させ、そこに4−フルオロニトロベンゼン14.1g(0.10mol)をDMF150mLに溶解させた溶液を滴下した。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下12時間攪拌させた。反応溶液を酢酸エチル500mLおよび純水500mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を純水500mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、無水硫酸ナトリウムを除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=5:1(v/v))で分離精製し、N−(4−ニトロフェニル)−5−(4−アミノフェニル)インドール(収量16.6g、収率63%)。
【0120】
オートクレーブ用反応管に、N−(4−ニトロフェニル)−5−(4−アミノフェニル)インドール16.0g(0.049mol)、パラジウム炭素粉末1.6gを入れ、エタノール200mLおよび酢酸エチル20mLを加えた。系内を水素雰囲気下とし、水素圧0.49MPa、室温で12時間攪拌させた。パラジウム炭素粉末を除去し、得られた溶液を濃縮して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:1(v/v))で分離精製し、ジアミン(1−35)(N−(4−アミノフェニル)−5−(4−アミノフェニル)インドール)を得た(収量13.3g、収率91%)。
H−NMR(ppm);3.53(−NH,br.s,2H),3.74(−NH,br.s,2H),6.42−8.18(arm.H,m,13H).
【0121】
[実施例8]
<ポリアミック酸の調製>
温度計、攪拌機および窒素ガス導入口を装着した200mL3つ口フラスコに(1−1)2.59gを入れ脱水NMP60gに溶解させた。溶液を5℃に保ちながら化合物(A14)1.14gおよび化合物(A1)1.27gを加えた。溶液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下12時間反応させた後、γ−ブチロラクトン10gおよびBC25gを加え、さらに3時間攪拌させた。得られた溶液の粘度を低下させるために、溶液の粘度が35mPa・sになるまで溶液を60℃で加熱攪拌してポリアミック酸濃度5重量%の溶液を得た。この溶液をワニスAとする。このワニスA中のポリアミック酸の重量平均分子量は64,000であった。
【0122】
[実施例9〜25、比較例1〜2、および参考例1]
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を表1に示すように用いて、実施例8と同様にしてポリアミック酸を製造し、ワニスB〜Uを調製した。
<表1>

【0123】
[実施例26]
<電気特性用測定セルの作製>
実施例8で調製したワニスAをNMP/BC=6/4(v/v)の混合溶剤で希釈して、ポリアミック酸濃度を3重量%に調整し、これを塗布用ワニスとした。
【0124】
この塗布用ワニスをITO電極付きガラス基板上にスピンナー法により塗布した。塗布条件は2,000rpm、15秒で行った。塗布後、基板を80℃に加熱して5分間予備焼成した後、210℃で20分間加熱処理を行って、膜厚がおよそ80nmの液晶配向膜を形成した。得られた配向膜にラビング処理を施した。ラビング処理は、毛足長1.9mmレーヨン製ラビング布を用い、毛足押し込み量0.40mm、ステージ移動速度60mm/sec、ローラー回転数1,000rpmの条件で施した。
【0125】
ラビング処理後のガラス基板を、超純水中で5分間超音波洗浄後、オーブン中120℃で30分間乾燥させた。片方の基板に7μmのギャップ剤を散布し、もう片方の基板をギャップ剤を挟むように重ね合わせてエポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmのアンチパラレルセルを作製した。このセルに下記の液晶組成物Aを液晶材料として注入し、注入口を光硬化樹脂で封止した。次いでセルを110℃で30分間加熱処理を行って、電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角測定用セルを得た。
【0126】
<液晶組成物A>


【0127】
作製したセルを用いて、前記の方法により、電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角を測定したところ、それぞれ96.2%、1.8mVおよび1.7°であった。
【0128】
[実施例27〜43、および比較例3〜4]
ワニスB〜ワニスTを用いて、実施例26に記載の方法に準じてセルを作製し、電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角を測定した。測定結果を表2に示した(実施例26も再掲する)。ただし、ワニスE、ワニスKおよびワニスQを用いて形成される配向膜にはラビング処理を行わず、かつ、注入する液晶材料は液晶組成物Aに代えて液晶組成物Bを用いた。
【0129】
<液晶組成物B>


【0130】
[実施例44および45]
<ブレンド配向剤の電気特性評価>
ワニスAとワニスUを重量比で8:2で混合したワニスAUを調製した。このワニスAUを用いて実施例26に記載の方法に準じてセルを作製した。ワニスBとワニスUを重量比で8:2で混合したワニスBUを調製し、このワニスBUを用いてワニスAUと同様にセルを作製した。これらのセルについて電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角を測定した結果を表2に示した。
【0131】
<表2>

【0132】
[実施例46〜50、および比較例5〜6]
<保存安定性の確認>
ワニスA、ワニスB、ワニスF、ワニスJ、ワニスAU、ワニスSおよびワニスTをワニス調製後、−20℃で60日間保存し、その保存ワニスを用いて実施例26に記載の方法に準じてセルを作製し、電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角を測定した。測定結果を表3に示した。
<表3>

【0133】
[実施例51]
<ポリイミドの調製>
200mLナスフラスコにワニスAを100g秤り取り、そこに無水酢酸9.5g(0.09mol)、ピリジン4.4g(0.06mol)を加え、120℃で3時間攪拌させた。溶液を純水1000mLにあけ、ポリイミドの4.5gを得た。このポリイミドの重量平均分子量は49,000であり、1H−NMR測定よりこのポリイミドのイミド化率は94%であった。得られたポリイミド4gをNMP−GBL−BC混合溶剤(容量比1:1:1)76gに溶解させ、ポリイミド濃度5%のワニスVを得た。
【0134】
[実施例52]
ワニスVを用いて、実施例26に記載の方法に準じてセルを作製し、電圧保持率、残留DC、およびプレチルト角を測定したところ、それぞれ95.9%、4.2mV、および1.6°であった。
【0135】
[比較例7]
ジアミン(1−1)を特開平10−104633号公報に記載のN,N’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ピペラジンに代えた以外は実施例8に記載の方法に準じて、ワニスWを得た。
【0136】
200mLナスフラスコにワニスWを100g秤り取り、そこに無水酢酸8.2g(0.08mol)、ピリジン3.8g(0.05mol)を加え120℃に加熱したところ、加熱開始1時間で沈殿が析出し、溶液の温度を180℃に昇温しても、その沈殿は溶解しなかった。
【0137】
[実施例53]
<ジアミン(1−11)の合成>
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した500mL3つ口フラスコに、市販の5−ヨードインドール29.0g(102mmol)および炭酸カリウム17.0g(122mmol)を入れ、DMF200mLを加えた。そこに市販の4−フルオロニトロベンゼン17.3g(122mmol)をDMF100mLに溶解させた溶液を加え、窒素雰囲気下140℃で2時間攪拌した。反応液を酢酸エチル500mLおよび純水500mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。得られた粗結晶をトルエンから再結晶し、N−(4−ニトロフェニル)−5−ヨードインドールを得た(収量33g、収率83%)。
【0138】
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した500mL3つ口フラスコに、得られたN−(4−ニトロフェニル)−5−ヨードインドール33g(91mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド3.2g(4.6mmol)およびヨウ化銅(I)0.87g(4.6mmol)を加えトリエチルアミン300mLを加えた。そこに、市販のトリメチルシリルアセチレン10.7g(109mmol)を加え、窒素雰囲気下6時間加熱還流させた。反応液を酢酸エチル500mLおよび純水500mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去してN−(4−ニトロフェニル)−5−((トリメチルシリル)エチニル)−インドールの粗結晶を得た(収量27g、収率88%)。
【0139】
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した500mL3つ口フラスコに、得られたN−(4−ニトロフェニル)−5−((トリメチルシリル)エチニル)−インドール27g(81mmol)を入れ、テトラヒドロフラン200mLに溶解させた。窒素雰囲気下、溶液をドライアイス−アセトンバスで−78℃まで冷却し、そこに市販のテトラブチルアンモニウムフルオライド1mol/L溶液85mLを液温を−78℃に保ちながら滴下した。溶液を−78℃に保ち、2時間攪拌させた後、反応液を酢酸エチル500mLおよび純水500mLの混合溶媒にあけ抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、N−(4−ニトロフェニル)−5−エチニルインドールを得た(収量17g、収率79%)。
【0140】
攪拌機、温度計および空気導入口を装着した500mL3つ口フラスコに、得られたN−(4−ニトロフェニル)−5−エチニルインドール17g(65mmol)、塩化銅(I)1.3g(13mmol)およびN,N’−テトラメチルエチレンジアミン2.5g(21mmol)を入れ、エチレングリコールジメチルエーテル100mLを加えた。水槽用の空気ポンプを用い、系内に空気を送り込みながら、室温で24時間攪拌させた。反応液をろ過し、得られた反応生成物をアンモニア水300mLで一回、純水300mLで2回洗浄し、1,4−ビス(5−(N−(4−ニトロフェニル)−インドリル))−1,3−ブタジインを得た(収量14g、収率82%)
【0141】
オートクレーブ用反応管に、得られた1,4−ビス(5−(N−(4−ニトロフェニル)−インドリル))−1,3−ブタジイン14.0g(27mmol)、パラジウム炭素粉末1.4gを入れ、エタノール150mLおよび酢酸エチル150mLを加えた。系内を水素雰囲気下とし、水素圧0.49MPa、室温で12時間攪拌させた。パラジウム炭素粉末を除去し、得られた溶液を濃縮して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v))で分離精製し、エタノールから再結晶して1,4−ビス(5−(N−(4−アミノフェニル)−インドリル))ブタンを得た(収量12g、収率91%)。
1H−NMR(ppm);1.74−1.76(−CH−、m、4H)2.74−2.76(−CH−、t、J=6.4Hz、4H)、3.76(−NH、br.s、4H)、6.52−7.45(arm.H、18H)
【0142】
[実施例54]
<ジアミン(1−37)の合成>
攪拌機、温度計および窒素ガス導入口を装着した500mL3つ口フラスコに、市販の5−ニトロインドール26.0g(161mmol)および炭酸カリウム27.0g(194mmol)を入れ、DMF200mLを加えた。そこに市販の5−フルオロ−2−ニトロフェノール38.0g(242mmol)をDMF100mLに溶解させた溶液を加え、窒素雰囲気下140℃で2時間攪拌した。反応液を純水1Lにあけ、得られた結晶を純水500mLで2回、エタノール500mLで2回洗浄し乾燥させ、N−(3−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)−5−ニトロインドールを得た(収量45g、収率94%)。
【0143】
オートクレーブ用反応管に、N−(3−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)−5−−ニトロインドール45.0g(150mmol)、パラジウム炭素粉末4.5gを入れ、エタノール500mLを加えた。系内を水素雰囲気下とし、水素圧0.49MPa、室温で12時間攪拌させた。パラジウム炭素粉末を除去し、得られた溶液を濃縮して粗結晶を得た。粗結晶をエタノール/純水=1:1(v/v)から再結晶してN−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−5−アミノインドールを得た(収量30g、収率83%)。
1H−NMR(ppm);4.59(−NH、br.s、2H)、4.66(−NH、br.s、2H)、6.29−6.30(=CH−、d、J=3.0Hz、1H)、6.53−7.13(arm.H、m、6H)、7.24−7.25(=CH−、d、J=3.0Hz、1H)
【0144】
本発明の液晶配向剤を用いた液晶表示素子は、上記のように、従来のものと比べて、電圧保持率が高く、残留DCが小さいなど良好な特性を示す。また、本発明の液晶配向剤は、保存安定性に優れ、かつ、通常使用される溶剤に対しても高い溶解性を有することが解った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジアミン:


ここに、Yは単結合または炭素数1〜9の直鎖アルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−N(CH)−、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;nは0または1であり;そして、アミノ基が結合しているベンゼン環の1つの水素は−OHで置き換えられてもよい。但し、Yがアルキレンであってnが0であるとき、アミノ基が結合する−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられることはない。
【請求項2】
アミノ基が結合しているベンゼン環が−OHを置換基として持たないベンゼン環である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項3】
アミノ基が結合しているベンゼン環がアミノ基に対してオルト位の1つに置換基−OHを有するベンゼン環である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項4】
Yが単結合または1,4−フェニレンであり、そしてnが0である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項5】
Yが単結合、または任意の−CH−が−O−または−N(CH)−で置き換えられてもよい炭素数1〜9の直鎖アルキレンであり;そしてnが1である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項6】
請求項1に記載のジアミンの少なくとも1つまたは請求項1に記載のジアミンの少なくとも1つとその他のジアミンの少なくとも1つからなるジアミン混合物と、少なくとも1つのテトラカルボン酸無水物とを反応させて得られるポリアミック酸。
【請求項7】
少なくとも1つのテトラカルボン酸無水物が式(A1)〜式(A63)で表される化合物から選択されるテトラカルボン酸無水物である、請求項6に記載のポリアミック酸。








【請求項8】
請求項6に記載のポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミド。
【請求項9】
請求項6に記載のポリアミック酸および請求項8に記載のポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーを含有する溶液。
【請求項10】
請求項9に記載のポリマー溶液からなる液晶配向剤。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−70537(P2010−70537A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170956(P2009−170956)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】