説明

ジアルジア症の処置のためのニフルチモックスの使用

本発明は、特にイヌおよびネコにおける、ジアルジア症の処置のためのニフルチモックスの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にイヌおよびネコにおける、ジアルジア症の処置のためのニフルチモックスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
原生動物疾患に対するニトロ−複素環式化合物の効力は、知られている(1)。
原生動物には、その基礎的な構造が真核細胞である単核の生物が含まれる。しかしながら、より正確な分類学により、個々の系統、綱、属および種の習性、形態および生化学的代謝の大きな差異が明らかになっている。これは、化学物質が、それらの標的および活性原理に応じて、通常、全ての原生動物に対して同等に良好に作用しないが、原生動物の特定の群に対してのみ良好に作用する理由である(2、3、4)。
【0003】
今日までに、ニフルチモックスの効力は、トリパノソーマ属の原生動物の種、例えば、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)およびトリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)に対して記載されたのみであった(5)。トリパノソーマは、基底小体(「キネトソーム」)から生じる鞭毛を有し、基底小体と共に、波状の膜を発達させる。この基礎的な形態のタイプを有する寄生生物は、原生動物の分類学において、キネトプラスト目に属する。トリパノソーマは、主に血漿中で増殖し、吸血性節足動物により伝染する。これらの病原体は、ヒトのシャガス病(「トリパノソーマ症」)の原因である。ニフルチモックスは、現在、これらの病原体に対して有効なほぼ唯一の化合物である。この活性は、恐らく、特異的なトリパノソーマの酵素である、酵素トリパノチオンレダクターゼの阻害に基づく。この酵素は、他の原生動物の病原体には存在しない。
トリコモナス目に対するニフルチモックスの活性は、並行して出願された特許出願に記載されている。
【0004】
ジアルジア症(Giardiosis)は、ジアルジア属の鞭毛のある単細胞の寄生生物に起因する感染症である。この属は、ディプロモナス目に属する。その最も重要な代表例は、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)(類義語:ジアルジア・インテスティナリス(Giardia intestinalis)、ジアルジア・デュオデナリス(Giardia duodenalis))である。陽性のイヌおよびネコのサンプルの割合は、全世界で50%に、中欧で2−7%に上る。感染は、持続性の下痢を導き、いくつかの場合では、特に、生後半年までの非常に若い動物において、十二指腸および空腸の炎症に起因する血便を導く。慢性疾患は、やがて、発達遅延を導き得る(6)。
【0005】
7を超える遺伝子型(A−G)が、ジアルジア単離株について記載された。遺伝子型A+Bは、ヒトに感染性であり、ネコ、イヌ、ビーバー、ヒツジ、仔ウシ、ウマ、ブタおよびサルでも生じ得る。これは、この疾患が「人畜共通感染症」と見なされる理由である:ヒトは、汚染された飲用水を介して、イヌおよびネコ由来のシストに感染し得る。ジアルジア感染は、ヒトの飲用水媒介による大流行として知られるものの最も頻繁な原因物質の1つとして、世界中に及ぶものである(7)。
【0006】
感染は、通常、シスト形態を介し、経口経路により、汚染された飲用水または感染性糞便によるものである。腸内で、いわゆる栄養体がシストから孵化する。栄養体は、11−17x7−11μmの寸法であり、2個の核および8本の鞭毛を含む。他の鞭毛のある寄生生物の群とは対称的に、ジアルジアの栄養体は、細胞内で上皮に侵入しない。栄養体は吸盤を有し、それを利用して、ヒト、サル、ブタ、イヌおよびネコの腸管内腔の外側にそれら自体を固定することができ、そこで分裂により増殖する。大規模な攻撃は、吸収する腸の表面を遮断および改変し、いくつかの場合では、血性下痢を引き起こす。一次感染後5ないし16日間のプレパテント時間(prepatency time)で再度シストが虫垂で形成され、再度糞便を介して排出される。シストは、4ないし5週間の期間にわたって排出され得、数週間にわたり感染性のままである(8、9)。
【0007】
キネトプラスト目に対して、実質的な形態学的および生化学的差異がある:ディプロモナス目は、8本の鞭毛および2個の核を有するが、ミトコンドリアおよびゴルジ体はなく、生活環中に細胞内の段階は知られていない。トリパノソーマと対称的に、ジアルジアの表面タンパク質は、GPIアンカーを持たない(10)。
【0008】
イヌおよびネコでは、12.5−22mg/体重kgの投与量で、1日2回投与、5日間にわたるメトロニダゾール(Clont(登録商標)、Flagyl(登録商標)、Elyzol(登録商標))による治療が現在推奨されている(11)。メトロニダゾールおよび他の5−ニトロイミダゾール類は、酵素ピルビン酸−フェレドキシンオキシドレダクターゼにより活性化され、遊離のニトロラジカルを形成させ、次いで、それが寄生生物のDNA代謝に関与する。これは、イプロニダゾール(Ipropan(登録商標)、126mg/飲用水1l、7日間)およびチニダゾール(Fasigyn(登録商標)、44mg/体重kg、3日間)も、イヌのジアルジア症の治療に適する理由である(12、13)。
【0009】
ベンゾイミダゾール類の群からの推奨される物質は、メベンダゾール、アルベンダゾールまたはフェンベンダゾール(経口、3日間)である。ベンゾイミダゾール類は、β−チューブリンのサブユニットに結合することにより、微小管の重合を妨げる。微小管は、特定の様式で栄養体の吸盤を安定化する、この寄生生物の重要な細胞骨格要素である。
【0010】
ヒトの分野で用いられる物質には、抗生物質(例えば、パロモマイシン(paramomycin)、25−35mg/kg/日、3回投与、7−10日間)、キナクリンおよびフラゾリドン(100mg、1日3回投与、7日間)またはニタゾキサニド(500mg、1日2回投与、3日間)が含まれる(14)。
【0011】
これらのクラスの活性物質の多くは、長きに亘りジアルジア症の処置に用いられており、殆どについて耐性の発生が検出され、確認された処置の失敗を導いた。従って、新規活性物質および処置概念の開発が必要不可欠である(15)。
【0012】
驚くべきことに、我々はこの度、ニフルチモックスがジアルジアの種に対して活性を有することを見出した。この活性は、今日まで記載されてこなかった。この活性は、腸の病原性段階に対するものであり、シスト形成を防止する。
【発明の概要】
【0013】
従って、本発明は、ジアルジアの種に起因する疾患の処置用の医薬の製造のための、ニフルチモックスの使用に関する。
ニフルチモックスは、式(I)
【化1】

の化合物である。
【0014】
必要に応じて、常套の医薬的に許容し得る塩の形態での使用も適する。さらに、必要に応じて、活性物質の水和物または他の溶媒和物、または、必要に応じて、それらの塩の使用も適する。
【0015】
使用は、予防的および治療的の両方であり得る。活性は、病原体の様々な段階に対するものである;特に、ニフルチモックスは、腸の病原性段階に対して作用し、シスト形成を防止する。
【0016】
ジアルジアの種の中で、特に重要なのは、ジアルジア・ランブリア(類義語:ジアルジア・インテスティナリス、ジアルジア・デュオデナリス)、ジアルジア・ボビス(Giardia bovis)およびジアルジア・カプラエ(Giardia caprae)である。ここで挙げる種は、頻繁に相互に類義で使用され、宿主特異性を殆ど示さない。
【0017】
本発明に従い処置される生物は、動物(肉食動物および野生動物)、好ましくは哺乳動物、例えば、ウマ、ブタ、ウサギ、特にイヌまたはネコである。
ある実施態様によると、哺乳動物の中でも好ましい処置は、野生動物および特に肉食動物(イヌ、ネコ)の処置である。
ヒトは汚染された飲用水を介して動物に病原性のジアルジア種に感染し得るので、ヒトも処置に適する。
ジアルジア症は、主に若い、好ましくは3−10週齢の動物に見られ、重篤な下痢および体重増加の低下を引き起こす。
【0018】
活性物質は、直接、または、適する製剤の形態で、経腸、非経腸、皮膚経路で投与される。
活性物質の経腸投与は、例えば、経口で、散剤、坐剤、錠剤、カプセル剤、ペースト、飲料、顆粒剤、水薬、巨丸剤、薬物添加した飼料または飲用水の形態で実施する。皮膚投与は、例えば、浸漬、噴霧、入浴、洗浄、ポアオン(pouring-on)およびスポットオン(spotting-on)および散布の形態で実施する。非経腸投与は、例えば、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内)の形態で、または、インプラントにより実施する。
【0019】
適する製剤は、以下のものである:
液剤、例えば、注射用液剤、経口液剤、希釈後に経口投与するための濃縮物、皮膚または体腔に使用するための液剤、ポアオンおよびスポットオン製剤、ゲル剤;
経口または皮膚投与用および注射用の乳剤および懸濁剤;半固体製剤;
活性物質が軟膏基剤または水中油もしくは油中水乳剤基剤に組み込まれている製剤;
固体製剤、例えば、散剤、プレミックス(premixe)または濃縮物、顆粒剤、ペレット剤、錠剤、巨丸剤、カプセル剤;エアロゾルおよび吸入剤、活性物質を含有する造形品。
【0020】
注射用液剤は、例えば、静脈内、筋肉内および皮下に投与する。
経口液剤は、直接投与する。濃縮物は、事前に使用濃度に希釈した後に、経口で投与する。
皮膚への適用のために使用するための液剤は、滴下し、塗布し、擦り込み、散布し、噴霧し、または、浸漬、入浴もしくは洗浄により投与する。
ゲル剤は、皮膚に投与または塗布するか、または、体腔に導入する。
ポアオンおよびスポットオン製剤は、皮膚の限定された領域に注ぐか、または滴下し、活性物質は、皮膚を透過し、全身的に作用するか、または、体表に分布する。
乳剤は、油中水タイプまたは水中油タイプのいずれかであり、経口で、皮膚に、または、注射として投与できる。
懸濁剤は、経口で、皮膚に、または、注射として投与できる。
半固体製剤は、経口で、または皮膚に、投与できる。それらは、上記の懸濁剤および乳剤と、それらがより粘稠性であるという点のみで異なる。
【0021】
固体製剤を製造するために、活性物質を適する担体と、必要に応じて補助剤を添加して混合し、所望により製剤化する。
本発明により特に好ましいのは経口投与であり、通常の経口使用形態の中で、錠剤が特に好ましい。
すべての上述の医薬形態、使用すべき添加物および補助剤およびこれらの医薬形態の製造は、原則として当業者に知られている。
【0022】
活性物質は、共同薬またはさらなる活性物質と組み合わされて存在できる。言及し得るさらなる活性物質は、抗コクシジウム剤、例えばロベニジンまたはアンプロリウム、葉酸アンタゴニスト(例えば、ピリメタミン、エピロプリム(epiroprim)、トリメトプリム)と組み合わせる場合もある;抗生物質、例えば、クリンダマイシン、パロモマイシンまたはスピラマイシン;スルホンアミド類、例えば、スルファジメトキシン、スルファジミジン、スルファジアジン;駆虫剤、例えば、環状デプシペプチド(例えばエモデプシド、PF1022A)、アミジン誘導体(トリベンジミジン、アミダンテル、bay d 9216)、プラジカンテルまたは安息香酸ベンジルである。
【0023】
長期の処置効果のために、動物の飼育の日常業務の一部として、定期的に消毒することが推奨される。
【0024】
駆虫剤、特にPF1022Aまたはエモデプシドなどの環状オクタデプシペプチドは、ヒトおよび動物における線虫感染の制御に適する(16)。ここで、イヌのものを含む胃腸管にいる経済的に重要な線虫は、全て駆除される。これらの動物を処置しない場合、免疫応答(GALT=腸管関連リンパ組織)が虫に対して向けられることも知られている(17)。これは、免疫系のTh2応答と呼ばれる。非感染の場合、免疫応答は、通常均衡している、即ち、原生動物、ウイルスおよび細菌に対して向けられるTh1応答と呼ばれるTh2応答の拮抗作用は、Th2応答と同じくらい強い。
【0025】
線虫感染、例えば、鉤虫、回虫または鞭虫による感染が、問題の動物、例えばイヌに存在するならば、その均衡は悪影響を受け、その結果は、例えば、ジアルジアの種に起因する、腸における優勢な原生動物感染である。この線虫感染が適する駆虫剤により克服されるならば、Th1応答をこれらの原生動物に対して作用させることにより、ジアルジアの種に対する防御は間接的に増強される。ニフルチモックスと駆虫剤の組合せでは、ニフルチモックスはより良好なジアルジア感染の制御を発揮できる。なぜなら、それは、線虫制御の結果として間接的に増強されたTh1応答の結果として、既に部分的に含まれているから、即ち、腸における寄生生物の数は、既に低減されているからである。
【0026】
好ましい実施態様によると、ニフルチモックスを駆虫剤と組み合わせて用いる。
好ましく用いられる駆虫剤は、24員のシクロデプシペプチド(シクロオクタデプシペプチド)である。以下のものに言及し得る:
式(IIa)
【化2】

(式中、Zは、水素、N−モルホリニル、NH、モノ−またはジメチルアミノを表す)
の化合物。
【0027】
さらに、以下の式(IIb)の化合物に言及し得る:
【化3】

(式中、R、R、R、Rは、相互に独立して、水素、C−C10−アルキルまたはアリール、特にフェニルを表し、これらは、ヒドロキシル、C−C10−アルコキシまたはハロゲンにより置換されていることもある)。
【0028】
一般式(IIb)の化合物は知られており、EP−A−382173、DE−A4317432、DE−A4317457、DE−A4317458、EP−A−634408、EP−A−718293、EP−A−872481、EP−A−685469、EP−A−626375、EP−A−664297、EP−A−669343、EP−A−787141、EP−A−865498、EP−A−903347に記載の方法により得ることができる。
【0029】
24個の環内原子を有する環状デプシペプチドには、一般式(IIc)
【化4】

[式中、
1a、R2a、R11aおよびR12aは、相互に独立して、C1−8−アルキル、C1−8−ハロアルキル、C3−6−シクロアルキル、アラルキル、アリールを表し、
3a、R5a、R7a、R9aは、相互に独立して、水素または直鎖もしくは分枝鎖のC1−8−アルキルを表し、これらの各々は、ヒドロキシル、C1−4−アルコキシ、カルボキシル、
【化5】

、カルボキサミド、
【化6】

、イミダゾリル、インドリル、グアニジノ、−SHまたはC1−4−アルキルチオにより置換されていてもよく、さらにアリールまたはアラルキルを表し、これらの各々は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシにより置換されていてもよく、
4a、R6a、R8a、R10aは、相互に独立して、水素、直鎖C1−5−アルキル、C2−6−アルケニル、C3−7−シクロアルキルを表し、これらの各々は、ヒドロキシル、C1−4−アルコキシ、カルボキシル、カルボキサミド、イミダゾリル、インドリル、グアニジノ、SHまたはC1−4−アルキルチオにより置換されていることもあり、また、アリールまたはアラルキルを表し、これらの各々は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシにより置換されていてもよい]
の化合物、それらの光学異性体およびラセミ体も含まれる。
【0030】
好ましい式(IIc)の化合物は、式中、
1a、R2a、R11aおよびR12aが、相互に独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−、s−、t−ブチルまたはフェニルを表し、これらの各々は、ハロゲン、C1−4−アルキル、OH、C1−4−アルコキシにより置換されていることもあり、また、ベンジルまたはフェニルエチルを表し、これらの各々は、フェニルについて言及した基により置換されていることもあり;
3aないしR10aが上記の意味を有するものである。
【0031】
特に好ましい式(IIc)の化合物は、式中、
1a、R2a、R11aおよびR12aが、相互に独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはn−、s−、t−ブチルを表し、
3a、R5a、R7a、R9aが、水素、直鎖または分枝鎖のC1−8−アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−、s−、t−ブチルを表し、これらの各々は、C1−4−アルコキシ、特にメトキシ、エトキシ、イミダゾリル、インドリルまたはC1−4−アルキルチオ、特にメチルチオ、エチルチオにより置換されていることもあり、さらに、フェニル、ベンジルまたはフェネチルを表し、これらの各々は、ハロゲン、特に塩素により置換されていることもあり、
4a、R6a、R8a、R10aが、相互に独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、ビニル、シクロヘキシルを表し、これらの各々は、メトキシ、エトキシ、イミダゾリル、インドリル、メチルチオ、エチルチオにより置換されていることもあり、さらに、イソプロピル、s−ブチルを表し、さらに、ハロゲンで置換されていることもあるフェニル、ベンジルまたはフェニルエチルを表すものである。
【0032】
式(IIc)の化合物は、EP−A−382173、DE−A4317432、DE−A4317457、DE−A4317458、EP−A−634408、EP−A−718293、EP−A−872481、EP−A−685469、EP−A−626375、EP−A−664297、EP−A−669343、EP−A−787141、EP−A−865498、EP−A−903347に記載の方法により得ることもできる。
【0033】
言及し得ることさら特に好ましいデプシペプチドは、EP−A382173から知られている化合物PF1022である;それは、両方の置換基Zが水素を表す式(IIa)の化合物である。従って、PF1022は、以下の式(IId):
【化7】

を有する。
【0034】
さらに好ましいデプシペプチドは、PCT出願WO93/19053に開示されている化合物であり、それは、ZがN−モルホリニル、NH、モノ−またはジメチルアミノを表す式(IIa)の化合物である。
【0035】
これらの化合物の中でことさら特に好ましいのは、デプシペプチドのエモデプシド(PF1022−221)である。これは、両方のラジカルZがモルホリニルラジカルを表す式(IIa)の化合物である。INNエモデプシドは、系統名:シクロ[(R)−ラクトイル−N−メチル−L−ロイシル−(R)−3−(p−モルホリノフェニル)ラクトイル−N−メチル−L−ロイシル−(R)−ラクトイル−N−メチル−L−ロイシル−(R)−3−(p−モルホリノフェニル)ラクトイル−N−メチル−L−ロイシルを有する化合物を表す。エモデプシドは、WO93/19053に記載されており、以下の式:
【化8】

を有する。
【0036】
それらの構造次第で、組合せに適する上述の活性物質は、立体異性の形態で、または立体異性体として、例えばエナンチオマーまたはラセミ体として存在し得る。立体異性体混合物および純粋な立体異性体の両方を本発明に従い使用できる。
【0037】
以下のものをさらに場合により使用し得る:活性物質の医薬的に許容し得る酸または塩基との塩、並びに活性物質またはそれらの塩の溶媒和物、特に水和物。
【0038】
組み合わせた使用は、ニフルチモックスおよび第2の活性物質、特にシクロデプシペプチドを、別個または時間差で用い得ることを意味する。この場合、ニフルチモックスおよび第2の活性物質を、別個の医薬として製剤化する。
同時使用も実施可能である。この場合に適する使用形態によると、組合せの活性物質を、共に1つの組成物に製剤化する。
【0039】
すぐに使用できる製剤は、通常、問題の活性物質を、10ppmないし20重量%、好ましくは0.1ないし10重量%の濃度で含有する。
使用に先立ち希釈される製剤は、問題の活性物質を、0.5ないし90重量%、好ましくは5ないし50重量%の濃度で含有する。飲用水に量り入れるための濃縮液剤では、問題の活性物質は、例えば、0.5ないし20重量%、好ましくは1ないし15重量%、特に好ましくは2ないし10重量%の濃度で存在する。
【0040】
一般に、体重1kg当たり、1日当たり、約0.05ないし約400mg、好ましくは0.1ないし200mgの量の活性物質を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。
他の抗コクシジウム剤、抗生物質または駆虫剤との混合物では、本発明による活性物質は、1対0.01ないし50から1対1ないし50までの比で存在する。
【0041】
活性物質は、動物の飼料または飲用水と共に投与することもできる。
飼料および食料は、0.005ないし1000ppm、好ましくは0.05ないし500ppmの活性物質を、適する可食材料と共に含有する。
そのような飼料および食料は、治療および予防の両方の目的で使用できる。
【0042】
ニフルチモックスを補完するために消毒剤を用い得る。消毒剤は、動物(またはヒト)が処置中にいる場所を消毒するために使用する。消毒剤は、好ましくは排出されたシスト形態を破壊することにより寄生虫の持続性段階の排除を担い、それにより処置終了後の再感染を防止する。従って、消毒剤は、ニフルチモックスによる処置の前に既に用いることができる;しかしながら、概して、ニフルチモックスによる処置と同時に、または、少なくとも終了前に、それを用いる方がよい。
【0043】
消毒剤の例は、殺生物性のフェノール類および/またはフェノール誘導体をベースとするものである。殺生物性のフェノール類は、遊離OH基を有し、殺生物活性を有するフェノール化合物を意味すると理解される。これらのフェノール類は、さらに、環の置換基、例えば、ハロゲン類、特に塩素、C1−6−アルキル、C3−6−シクロアルキル、フェニル、クロロフェニル、ベンジルおよび/またはクロロベンジルを有し得る。
【0044】
塩素化されていない殺生物性フェノール類の例は、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、チモール(5−メチル−2−イソプロピルフェノール)、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2−ベンジルフェノールである。好ましく用いられる塩素化されていない殺生物性フェノールは、2−フェニルフェノールである。
【0045】
塩素化されている殺生物性フェノール類の例は、4−クロロ−3−メチルフェノール(PCMC、p−クロロ−m−クレゾール)、4−クロロ−3−エチルフェノール、2−n−アミル−4−クロロフェノール、2−n−ヘキシル−4−クロロフェノール、2−シクロヘキシル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−キシレノール(xylenol)(PCMX、p−クロロ−m−キシレノール)、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール(DCMX、ジクロロ−p−キシレノール)、4−クロロ−2−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、ベンジル−4−クロロ−m−クレゾール、4−クロロベンジルジクロロ−m−クレゾールである。好ましい塩素化されている殺生物性フェノールは、2−ベンジル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−キシレノール、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール、および、特に4−クロロ−3−メチルフェノールである。
【0046】
この文脈では、フェノール誘導体は、遊離のOH基を含まないようにOH基が誘導体化されている、フェノールから誘導される化合物を意味すると理解される。それらは、好ましくはフェノールエーテル、特に、1個ないし6個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのものである。フェノキシエタノールは、好ましい例として言及し得る。
【0047】
殺生物剤および角質溶解剤を含有するWO2007/009606に記載の消毒剤を用いるのが好ましい。適する殺生物剤または殺生物剤の組合せおよび適する角質溶解剤は、出典明示するWO2007/009606に詳細に記載されている。
【実施例】
【0048】
実施例
製剤の実施例
実施例1(液体製剤):
・500mgニフルチモックス
・1000mgニフルチモックス
を含む、混合比1:10のグリセロールホルマール/グリセロールポリエチレングリコールリシノレート(Cremophor(登録商標) EL)/水100ml中の懸濁剤
実施例2(液体製剤)
・500mgニフルチモックス
・1000mgニフルチモックス
を含む、混合比1:5の Cremophor(登録商標) EL/水100ml中の懸濁剤
実施例3(固体製剤)
下記に詳述する量の活性物質を、粉末の形態でゼラチンカプセルに充填する:
・250mgニフルチモックス
実施例4(錠剤)
ニフルチモックス錠剤は、知られており、例えば商品名 Lampit(登録商標)で医薬として購入できる。
【0049】
生物学的実施例
実施例1
感染させる前に動物センターに11日間住ませた10ないし11週齢のビーグルの子犬を、50000個のジアルジア・デュオデナリスのシストに経口で感染させた。感染用のシストは、ジアルジアのシストを排出するイヌの糞便からスクロースグラジエントを利用して入手し、4℃で、Bacto-Casitone 培地中、2週間以内で保存した。感染の10日後から、各個体の毎日の総糞便を集めるために、子犬を個別のケージで飼育した。シスト排出の定量的測定を処置前の4日間に実施し(−3ないし0日目)、シスト排出を考慮して子犬を無作為に2つの群に分けた。0日目に、7匹の処置群の子犬を経口投与の50mg/kgニフルチモックス(Lampit(登録商標))で1回処置し、対照群の6匹のイヌは、処置しないままにした。シスト排出の定量的測定を、処置後1日目から8日目まで継続した。
【0050】
結果:下式を使用して活性を算出した:
【数1】

単回のニフルチモックス投与時の算出された活性は、90.4%であった(表1参照)。
【0051】
方法:シスト排出の定量的測定は、改変版の Hewlett(18)を使用して実施した:糞便4gを水100mlに溶解し、篩にかけ、沈降させた。沈降物を1Mスクロースグラジエント(比重1.13)にアプライし、遠心分離後にスクロース/水境界層で濃縮されたシストをピペットで取った。洗浄段階と続く遠心分離の後、ペレット中のシストを計数した。この目的で、ペレットのアリコートを顕微鏡下で計数し、糞便1g当たりのシストの数を算出した。
【0052】
表1:ニフルチモックスによる処置前後のジアルジアシスト排出
【表1】

【0053】
【表2】

D−3ないしD−1:処置前の日
D0:処置の日
D1ないしD8:処置後の日
【0054】
【表3】

【0055】
実施例2
感染させる前に動物センターに少なくとも2週間住ませた11ないし15週齢のビーグルの子犬を、研究開始前に50000個のジアルジア・デュオデナリスのシストに経口で感染させた。感染用のシストは、ジアルジアのシストを排出するイヌの糞便からスクロースグラジエントを利用して入手し、4℃で、Bacto-Casitone 培地中、2週間以内で保存した。ジアルジアのシストを排出した18匹の子犬を研究に含め、毎日の総糞便を集めるために、個別のケージで飼育した。シスト排出の定量的測定を実験145.717として実施し、ペレットのアリコートを、Fuchs-Rosenthal 血球計数器を利用して顕微鏡下で計数するという改変を加えた。シスト排出の定量的測定を処置前の4日間に実施し(−3日目ないし0日目)、シスト排出を考慮して子犬を無作為に3つの群に分けた。その後3日連続で(0日目、1日目および2日目)、処置群1の6匹の子犬を、午前中に50mg/kgニフルチモックス(Lampit(登録商標))の経口投与により処置し、一方、処置群2のイヌを、この3日間、午前中に50mg/kgフェンベンダゾール(フェンベンダゾール錠剤)の経口投与により処置した。対照群の6匹のイヌは、処置しないままにした。シスト排出の定量的測定を、処置後1日目から8日目まで継続した。
結果:算出されたニフルチモックスの活性は98.6%であり、一方、フェンベンダゾールの活性は48.3%であった(表2参照)。
【0056】
表2:フェンベンダゾールによる処置と比較した、ニフルチモックスによる処置前後のジアルジアシスト排出
【表4】

【0057】
【表5】

D−3ないしD−1:処置前の日
D0、D1、D2:処置の日
D3ないしD8:処置後の日
【0058】
【表6】

【0059】
参照文献
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In: The Journal of infectious diseases, Vol. 145, No. 1, pp 89-93

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルジアの種に起因する疾患の処置用の医薬を製造するための、ニフルチモックスの使用。
【請求項2】
ジアルジア・ランブリアに起因する疾患の処置のための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ニフルチモックスおよび駆虫剤を含有する組成物。
【請求項4】
ニフルチモックスおよび駆虫剤のシクロオクタデプシペプチドを含有する組成物。

【公表番号】特表2011−526265(P2011−526265A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515179(P2011−515179)
【出願日】平成21年6月20日(2009.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004475
【国際公開番号】WO2010/000399
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508270727)バイエル・アニマル・ヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】BAYER ANIMAL HEALTH GMBH
【Fターム(参考)】