説明

ジエン重合

【課題】共役ジエンのポリマーを提供することであり、該ポリマーは制御可能なレベルのシス−、トランス−及び1,2−ビニルを、後反応器ブレンドの必要性ない事を提供する。
【解決手段】ジエン重合
モノマーを、(A)Cr、Mo及びW化合物より選択される第一遷移金属化合物、及びFe、Co及びNi化合物より選択される第二遷移金属化合物、(B)触媒改質剤(例えば、トリフェニルホスフィン)及び場合により、(C)1以上の触媒活性剤(例えば、MAO)を含有する触媒系で重合することによる共役ジエンのホモポリマー又はコポリマーを製造するための方法及び触媒。生成されるジエンポリマーのシス、トランス及び1,2−ビニル微細構造が制御され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエンポリマー及びコポリマー及び特定の遷移金属−ベース触媒を用いてそのようなポリマー及びコポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2004年9月30日に、BP Chemicalsの名称で発行されたWO 2004/083263は、遷移金属錯体重合触媒及び1−オレフィン、シクロ−オレフィン又はジエンの重合及び共重合のための方法であって、該モノマーを該触媒と接触することを含む方法に関する。ホモポリマーを製造する際に使用するのに適するとしてそれらの中に開示されるモノマーは、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、スチレン又は共役又は非−共役ジエンである。好ましいモノマーは、エチレン及びプロピレンである。コポリマーを製造するのに適するとして開示されるモノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、ノルボルネン、置換ノルボルネン、ジエン、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、及びスチレンである。
US-A-5879805は、(a)コバルト化合物;(b)ホスフィン、キサントゲン、チオシアニド、二硫化炭素、及びそれらの混合物からなる群より選択される化合物;(c)有機アルミニウム化合物;及び場合により、(d)定義された改質剤を含む触媒を用いて、気相において1,3−ブタジエンを重合することによる、ポリマーの微細構造におけるビニル結合を調節できる量で用いる1,2−ビニル−ポリブタジエンの製造方法を開示する。
US4340685は、(A)コバルト化合物、(B)定義されたアルキルアルミニウム又は有機リチウム化合物、(C)ブタジエンを、高シス−1,4ポリブタジエン((D)定義されたニッケル化合物、(E)フッ化ホウ素又はHF及び(F)定義された第II又はIII族有機金属化合物からなる触媒で重合することにより得られる)の炭化水素又はハロ炭化水素溶液中のイソチオシアン酸フェニル又は二硫化炭素からなる触媒の存在下で1,3−ブタジエンを重合することによる、1,2−ビニル−配置5〜40%及びシス−1,4配置60%以上を有するポリブタジエンを製造する方法を開示する。
制御された微細構造を有するポリジエンを提供することが商業的に必要とされる。例えば、商業的に入手可能なポリブタジエンは、シス−、及び/又はトランス−、及び/又は1,2−ビニル様式において重合されるブタジエン単位を含む微細構造を有する。この必要性は、一般には、例えば、ブタジエンを重合して、既知のシス、トランス及び1,2−ビニル含有物を有する別々のポリマーを形成すること及びこれらのポリマーをブレンドして、所望の製品を製造するにより満たされ得る。しかしながら、ポリマーをブレンドすることは、エネルギーの使用、機器費用及び時間の点で高価であり及び技術的に、特には、ポリマーの分子量が高く、機械的ブレンドに対する適合性又は感受性が低い場合に困難であり得る。従って、成分ポリジエンの後(post)反応器機械的ブレンドの必要性なしで、シス−、トランス−及び1,2−ビニル単位の制御可能な含量を有するポリジエンを提供することが商業的に必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、共役ジエン、例えば、ブタジエン又はイソプレンのポリマーを製造する方法を提供することである。更なる目的は、共役ジエンのポリマーを提供することであり、該ポリマーは制御可能なレベルのシス−、トランス−及び1,2−ビニルを、後反応器ブレンドの必要性なしで有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、(A)Cr、Mo及びW化合物より選択される第一遷移金属化合物、及びFe、Co及びNi化合物より選択される第二遷移金属化合物、(B)触媒改質剤及び場合により、(C)1以上の触媒活性剤を含む触媒系と、少なくとも1つの共役ジエンを含む単量体材料を接触させることを含む共役ジエンのホモポリマー又はコポリマーを製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
驚くべきことに、定義された触媒系の使用が、所望な範囲の特性を有するポリジエンを提供することが見出された。この記載の一般性を制限することなく、例えば、触媒組成物における第一:第二の定義された遷移金属化合物の比を変化することは、トランス/シス微細構造の比における有用なバリエーションをもたらすこと、及び触媒改質剤のレベルの制御により、製造されたジエンポリマーの1,2−ビニル含量における有用な変化を提供することが可能であることが見出された。従って、例えば、コバルト/クロム混合触媒系におけるCo:Crのモル比を変化することにより、製造されたポリジエンのシス:トランス含量における有用なバリエーションが達成され得ること及び触媒改質剤の濃度を変化することが、製造された1,2−ジエンポリマーの相対量の有用な制御を提供することが見出された。
単量体材料は、少なくとも1つのジエン及び場合により、1以上の1−オレフィンを含む。本発明の重合工程において用いられるジエンは、好ましくは、一般式R12C=CR3CR4=CR5CR6を有し、式中、R1〜R6は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル及びアルカリルより選択される。例えば、それらは、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、又はペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルの異性体の単一物又は混合物;又は例えば、フェニル、2クロロ−フェニル、o−ビフェニル、ナフチル、フェナントリル及びアントリルより選択されるアリール基;又は例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニル−n−プロピル、ナフチルメチルより選択されるアルカリル基;又はアラルキル基、例えば、トリル.キシリル、メシチル又は2−メチルナフチルであってもよい。しかしながら、ジエンが、大きい基により置換され、あまりにも重い場合、立体障害に起因して、ジエンを重合させるのが困難であるか又は不可能であり得る。用いられるジエンは、好ましくは、一般式R1H−C=CR3−CH=CH2を有し、式中、R1及びR3は、独立して、水素、塩素及びC1-10のヒドロカルビル基より選択される。好ましいジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、及び2−クロロ−1,3−ブタジエン(クロロプレン)である。
本発明の重合工程において使用される単量体材料は、1以上の1−オレフィンを含有していてもよい。適切な1−オレフィンは、共役ジエンで重合されるのが可能であるいずれかのものである。適切な1−オレフィンの例は、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、ノルボルネン、置換ノルボルネン及びスチレンである。
【0006】
好ましくは、その方法により製造されるコポリマーは、99.0モル%までのC1-20の1−オレフィン及び共役ジエンの重合単位を含む。例えば、コポリマーは、2:98〜98:2、好ましくは、5:95〜95:5の範囲のジエン:1−オレフィンのモル比を有し得る。
本発明の方法において、1以上の触媒活性剤が、好ましくは、用いられる。好ましくは、単に1つの触媒活性剤が、用いられる。
用いられる定義された遷移金属化合物は、好ましくは、別々に及び改質剤(任意の触媒活性剤以外)の欠如において用いられる場合、実質的には、シス及びトランスタイプのポリブタジエンを製造するそれらの能力に関して異なる。従って、例えば、(A1)ブタジエンを重合して、少なくとも60モル%、より好ましくは、少なくとも70モル%、最も好ましくは、少なくとも80モル%のトランス−重合単位を有するポリブタジエンを形成するのが可能である少なくとも1つの遷移金属化合物及び(A2)ブタジエンを重合して、少なくとも60モル%、より好ましくは、少なくとも70モル%、最も好ましくは、少なくとも80モル%のシス−重合単位を形成するのが可能である少なくとも1つの遷移金属化合物を用いるのが好ましい。定義された様式において、ブタジエンを重合する遷移金属化合物の能力は、簡単な試験及び実験誤差により決定することができる。
本発明の方法において用いられる定義された遷移金属化合物の各々の量は、好ましくは、これらの化合物のいずれか1つの濃度が、触媒として用いられる遷移金属化合物の全モルをベースとして、>0.01モル%、より好ましくは、>0.02モル%、最も好ましくは、少なくとも0.10モル%であるようなものである。例えば、第一遷移金属化合物対第二遷移金属化合物の比は、0.01:99.99〜99.99:0.01、好ましくは、0.02:99.98〜99.98:0.02、最も好ましくは、0.1対99.9〜99.9対0.1にあってもよい。
定義された遷移金属化合物は、単一の有機又は無機化合物、例えば、塩化物、臭化物、スルフェート、アセテート及びカーボネートであってもよい。好ましくは、遷移金属化合物は、中性、モノアニオン性又はジアニオン性リガンドを含有する錯体より選択される。リガンドは、単座、二座、三座、又は四座であってもよい。リガンドは、好ましくは、少なくとも1つのN、P、O又はS原子を含む。
そのような錯体の非−制限的例は、WO 96/23010、WO 97/02298、WO 98/30609、WO 99/50313、WO 98/40374、WO 00/50470、WO 98/42664、WO 99/12981、WO 98/27124、WO 00/47592、WO 01/58966、WO 02/090365及びWO 02/092611において記載される。
好ましいクラスの遷移金属錯体は、一般的には、以下の式(I)により表される:
【0007】

【0008】
(式中、Mは、Cr[II]、Cr[III]、Fe[II]、Fe[III]、Co[II]、Co[III]又はNi[II]であり、Xは、遷移金属Mに共有又はイオン結合される原子又は基を表し;Y1は、C又はP(RC)であり;Y2は、−O(R7)、−O(そのケースにおいて、OとMは共有結合する)、−C(Rb)=O、−C(Rb)=N(R7)、−P(Rb)(Rd)=N(R7)又は−P(Rb)(Rd)=Oであり;Ra、Rb、Rc、Rd、R5及びR7は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、置換ヘテロヒドロカルビル又はSiR’3より選択され、ここで、各R’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル及び置換ヘテロヒドロカルビルより選択され、及び隣接物は、一緒に結合して、環を形成し得;Gは、Y1及びY2の間で直接結合であるか、又は架橋原子団であるかのいずれかであり、それは、qが1である場合、場合により、Mに結合される第三原子を含有していてもよく;Lは、Mに配位結合する基であり;nは、0〜5であり;mは、1〜3であり及びqは、1又は2である)。
ある好ましい錯体は、以下の一般式(II)により表される:
【0009】

【0010】
(式中、Rxは、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、置換ヘテロヒドロカルビル、又はSiR’3より選択され、ここで、各々R’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル及び置換ヘテロヒドロカルビルより選択され、及びすべての他の置換基は、上で定義したものである。式(II)の錯体において、Mは、好ましくは、Cr、Ni又はCoである。好ましくは、Ra及びRbは、一緒に結合して、フェニルを形成し、それは、好ましくは、置換される。好ましい置換基は、C1-6アルキル又はC6-24アリール又はアラルキルである。特には、フェニル基は、t−ブチル基又はアントラセニル基との酸素結合と隣接する位置で置換されてもよく、それは、それ自身置換されていてもよい。
更に好ましい錯体は、以下の式(III)のものである:
【0011】

【0012】
(式中、Mは、Cr[II]、Cr[III]、Fe[II]、Fe[III]、Co[II]、Co[III]又はNi[II]であり;Xは、遷移金属Mに共有又はイオン結合される原子又は基を表し;Ra及びRbは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、置換ヘテロヒドロカルビル又はSiR’3より選択され、ここで、各R’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル及び置換ヘテロヒドロカルビルより選択され、及びRa及びRbは、一緒に結合して、環を形成し得;R5及びR7は、各々上で定義したものであり;及びLは、Mに配位結合する基であり;nは、0〜5であり;mは、1〜3であり及びqは、1又は2である)。好ましくは、Mは、Fe又はNiである。
特に好ましい錯体は、以下の式(IV)を有する:
【0013】

【0014】
(式中、M[T]は、Cr[II]、Cr[III]、Fe[II]、Fe[III]、Co[II]、Co[III]又はNi[II]であり;Xは、遷移金属Mに共有又はイオン結合する原子又は基を表し;Tは、遷移金属Mの酸化状態であり及びbは、原子又は基Xの原子価であり;Y1は、C又はP(RC)であり、A1〜A3は、各々独立して、N又はP又はCRであり、但し、少なくとも1つが、CRであり;R、RC、R4及びR6は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、置換ヘテロヒドロカルビル又はSiR’3より選択され、ここで、各R’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル及び置換ヘテロヒドロカルビルより選択され;及びR5及びR7は、各々上で定義したものである)。
好ましくは、Y1は、Cである。好ましくは、A1〜A3は、各々独立して、CRであり、ここで、各Rは、上で定義したものである。代替の好ましい実施態様において、A1及びA3は、双方Nであり及びA2は、CRであり、又はA1〜A3の1つは、Nであり及び他は、独立して、CRである。そのような実施態様の例は、以下の化合物を含む:
【0015】
【化1】

【化2】

【0016】
(式中、R1、R2及びR3は、各々独立して、H、又はC1-10アルキル、アリール又はアラルキルである)。
一般には、上の式において、R5及びR7は、好ましくは、独立して、置換又は未置換の脂環式、複素環又は芳香族基、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−メチルフェニル、2−エチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,3−ジイソプロピルフェニル、2,4−ジイソプロピルフェニル、2,6−ジ−n−ブチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2−t−ブチルフェニル、2,6−ジフェニルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−トリフルオロメチルフェニル、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル、3,5−ジクロロ2,6−ジエチルフェニル、及び2,6−ビス(2,6−ジメチルフェニル)フェニル、シクロヘキシル、ピロリル、2,5ジメチルピロリル及びピリジニルより選択される。
好ましい実施態様において、R5は、以下の基“P”により表され及びR7は、以下の基“Q”により表される:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R19〜R28は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルより選択され;R1〜R4、R6及びR19〜R28の2以上が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルである場合、該2以上は、結合して、1以上の環状置換基を形成し得る。
好ましくは、R19、R20、R21及びR22の少なくとも1つは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルである。より好ましくは、R19及びR20の少なくとも1つ、及びR21及びR22の少なくとも1つは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルである。最も好ましくは、R19、R20、R21及びR22は、すべて独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルより選択される。R19、R20、R21及びR22は、好ましくは、独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、n−オクチル、フェニル及びベンジルより選択される。
1、R2、R3、R4、R6、R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26及びR28は、好ましくは、独立して、水素、及びC1-8ヒドロカルビル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、フェニル及びベンジルより選択される。
特に好ましい錯体は、以下の式Zを有する:
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R1、R2及びR3は、各々独立して、H、又はC1-10アルキル、アリール又はアラルキルであり及び、R19〜R28は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルより選択され;R1〜R4、R6及びR19〜R28の2以上が、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルである場合、該2以上は、結合して、1以上の環状置換基を形成し得る。
好ましい錯体は、2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6トリメチルアニル(anil))FeCl2及び2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルアニル)FeCl2である。
すべての上の構造に適用できる別の実施態様において、R5は、式−NR2930を有する基であり及びR7は、式−NR3132を有する基であり、ここで、R29〜R32は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル又は置換ヘテロヒドロカルビルより選択され、及び結合して、1以上の環状置換基を形成し得る。そのような化合物の例は、WO 00/50470において開示される。
5〜R7の双方の別の好ましい置換基は、本件出願と共に係属中の出願PCT 02/02247において記載されるようなピラゾリル基である。
特に好ましいのは、以下の式IIを有する置換基である:
【0021】
【化5】

【0022】
上で開示される錯体におけるXにより表される原子又は基は、例えば、ハロゲン化物、スルフェート、ニトレート、チオレート、チオカルボキシレート、BF4-、PF6-、水素化物、ヒドロカルビルオキシド、カルボキシレート、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル及びヘテロヒドロカルビル、又はβ−ジケトネート(diketonate)より選択され得る。そのような原子又は基の例は、塩化物、臭化物、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、フェニル、ベンジル、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、トシレート、トリフレート、ホルメート、アセテート、フェノキシド及びベンゾエートである。式(I)の化合物における原子又は基Xの好ましい例は、ハロゲン化物、例えば、塩化物、臭化物;水素化物;ヒドロカルビルオキシド、例えば、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド;カルボキシレート、例えば、ホルメート、アセテート、ベンゾエート;ヒドロカルビル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、フェニル、ベンジル;置換ヒドロカルビル;ヘテロヒドロカルビル;トシレート;及びトリフレートである。好ましいXは、ハロゲン化物、水素化物及びヒドロカルビルより選択される。塩化物が、特に好ましい。
Lは、例えば、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル、アルコール、例えば、エタノール又はブタノール、第一級、第二級又は第三級アミン、又はホスフィンであってもよい。
本発明における使用のために特に好ましい触媒は、(1)定義された遷移金属化合物の少なくとも2以上(その少なくとも1つが、以下の式Aを有する)、及び場合により
(2)適切な活性剤の活性量を含むものより選択される:
を有する:
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、5員複素環基K(ハロゲン化物又はヒドロカルビル基により置換された又は未置換の、飽和又は不飽和のものであってもよい)において、原子A1〜A4は、少なくとも2個の炭素原子及びN、O、P及びSより選択される少なくとも1つの原子を含み、該環における残りの原子は、もしあれば、窒素及び炭素より選択され;A1〜A4の2以上は、1以上の更なる環系の部分を形成し得;Mは、クロム、タングステン、モリブデン、鉄、コバルト及びニッケルより選択される金属であり;E1及びE2は、単一及び又は二重結合を有し及び独立して、置換又は未置換炭素原子又は(i)脂肪族ヒドロカルビル、(ii)脂環式ヒドロカルビル、(iii)芳香族ヒドロカルビル、(iv)アルキル置換芳香族ヒドロカルビル、(v)複素環基及び(vi)該基(i)〜(v)のヘテロ置換誘導体より選択される、原子又は基であり;Jは、1以上の炭素原子及び場合により、N、O、P及びSより選択される1以上の原子を含む基であり、その各々は、ハロゲン又はヒドロカルビル基により置換され又は未置換であってもよく;D1及びD2は、ドナー原子又は基であり;Xは、アニオン性基であり、Lは、中性ドナー基であり;m、n及びpは、独立して、0又は1であり;y及びzは、独立して、X及びL基の数が、金属Mの原子価及び酸化状態を満たすような整数又はゼロである)。
誤解を避けるために、ヒドロカルビル又は複素環基に関して使用されるような用語“未置換”は、そのような基と通常関係する水素原子が、他の基又は原子により置換されていないことを意味する。
1は、A1〜A4のいずれかに結合し得る。好ましくは、E1は、A1に結合される。5員複素環基Kは、好ましくは、環において3個の炭素原子を含有する。
本発明の好ましい実施態様において、Kは、特には、イミダゾール−含有基である。
1及びD2は、同一であっても異なっていてもよいドナー原子又は基、例えば、酸素、硫黄、窒素又はリン、例えば、アミン、イミン又はホスフィンであってもよい。好ましくは、D1及びD2は、酸素、硫黄、式−N(R12)−のアミン又は式−P(R13)−のホスフィンより選択され、式中、R12及びR13は、水素又は(i)脂肪族ヒドロカルビル、(ii)脂環式ヒドロカルビル、(iii)芳香族ヒドロカルビル、(iv)アルキル置換芳香族ヒドロカルビル、(v)複素環基、(vi)該基(i)〜(v)のヘテロ置換誘導体、(vii)ヒドロカルビル−置換へテロ原子基及び(viii)更なるイミダゾール含有基である。
【0025】
好ましくは、D1は、窒素、例えば、−NR1−又は=N−又は窒素含有基、例えば、−N(R1)−R20−であり、式中、R1は、一価の基を表し及びR20は、例えば、脂肪族ヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、エチレニル(ethylenyl)、ブチル、ヘキシル、イソプロピル及びt−ブチルより誘導される二価の基を表す。適切な脂環式ヒドロカルビル基の例は、アダマンチル、ノルボルニル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。適切な芳香族ヒドロカルビル基の例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル及びアントリルである。適切なアルキル置換芳香族ヒドロカルビル基の例は、ベンジル、トリル、メシチル、2,6−ジイソプロピルフェニル及び2,4,6−トリイソプロピルである。適切な複素環基の例は、2−ピリジニル、3−ピリジニル、2−チオフェニル、2−フラニル、2−ピロリル、2−キノリニルである。前記基R1〜R11のヘテロ置換誘導体を形成するために適切な置換基は、例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ、エーテル、ヒドロキシ及びシリル、メトシキシ、エトキシ、フェノキシ(即ち、−OC65)、トリルオキシ(即ち、−OC64(CH3))、キシリルオキシ、メシチルオキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、チオメチル、チオフェニル及びトリメチルシリルである。前記の基(i)〜(v)の適切なヘテロ置換誘導体の例は、2−クロロエチル、2−ブロモシクロヘキシル、2−ニトロフェニル、4−エトキシフェニル、4−クロロ−2−ピリジニル、4−ジメチルアミノフェニル及び4−メチルアミノフェニルである。適切なヒドロカルビル−置換ヘテロ原子基の例は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ、エーテル、ヒドロキシル及びシリル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ(即ち、−OC65)、トリルオキシ(即ち、−OC64(CH3))、キシリルオキシ、メシチルオキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、チオメチル、チオフェニル及びトリメチルシリルである。置換基R1〜R11のいずれかは、結合して、環状構造を形成することができる。置換基R2〜R11は、また、適切には、無機基、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ及びヒドロキシルであってもよい。
2は、例えば、D1について上で明記したドナー原子又は基のいずれかであってもよい。
1及び/又はD2が、イミダゾール含有基である場合、これ又はこれらは、Kと一致し得る。好ましい実施態様において、D2及びKは、同一のイミダゾール含有基である。
イミダゾール含有基Kは、好ましくは、以下の式Ia〜VIaより選択される基である:
【0026】



【0027】
(式中、基R2〜R11は、独立して、水素又は一価(i)脂肪族ヒドロカルビル、(ii)脂環式ヒドロカルビル、(iii)芳香族ヒドロカルビル、(iv)アルキル置換芳香族ヒドロカルビル、(v)複素環基、(vi)該基(i)〜(v)のヘテロ置換誘導体、及び(vii)ヒドロカルビル置換ヘテロ原子基である)。イミダゾール含有基が、式IIIa又はVIaにおいて記載される構造を有することが好ましい(これらは、“ベンズイミダゾール”である)。
これらの定義された基R2〜R11は、好ましくは、炭素数が1〜30、より好ましくは、2〜20、最も好ましくは、2〜12である。適切な脂肪族ヒドロカルビル基の例は、メチル、エチル、エチレニル、ブチル、ヘキシル、イソプロピル及びt−ブチルである。適切な脂環式ヒドロカルビル基の例は、アダマンチル、ノルボルニル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。適切な芳香族ヒドロカルビル基の例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル及びアントリルである。適切なアルキル置換芳香族ヒドロカルビル基の例は、ベンジル、トリル、メシチル、2,6−ジイソプロピルフェニル及び2,4,6−トリイソプロピルである。適切な複素環基の例は、2−ピリジニル、3−ピリジニル、2−チオフェニル、2−フラニル、2−ピロリル、2−キノリニルである。前記基R2〜R11のヘテロ置換誘導体を形成するのに適切な置換基は、例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ、エーテル、ヒドロキシル及びシリル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ(即ち、−OC65)、トリルオキシ(即ち、−OC64(CH3))、キシリルオキシ、メシチルオキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、チオメチル、チオフェニル及びトリメチルシリルである。前記基(i)〜(v)の適切なヘテロ置換誘導体の例は、2−クロロエチル、2−ブロモシクロヘキシル、2−ニトロフェニル、4−エトキシフェニル、4−クロロ−2−ピリジニル、4−ジメチルアミノフェニル及び4−メチルアミノフェニルである。適切なヒドロカルビル置換ヘテロ原子基の例は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ、エーテル、ヒドロキシル及びシリル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ(即ち、−OC65)、トリルオキシ(即ち、−OC64(CH3))、キシリルオキシ、メシチルオキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、チオメチル、チオフェニル及びトリメチルシリルである。置換基R2〜R11のいずれかは、結合して、環状構造を形成することができる。置換基R2〜R11は、また、適切には、無機基、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、アミノ、シアノ及びヒドロキシルであってもよい。
1及びE2(以下、“E”と称する)は、同一であっても異なっていてもよい原子又は基であり得る。Eは、pがゼロである場合、二価、及びp=1である場合、三価である。Eは、独立して、(i)脂肪族ヒドロカルビル、(ii)脂環式ヒドロカルビル、(iii)芳香族ヒドロカルビル、(iv)アルキル置換芳香族ヒドロカルビル、(v)複素環基、(vi)該基(i)〜(v)のヘテロ置換誘導体、及び(vii)ヒドロカルビル置換ヘテロ原子基より選択される。適切な二価基Eの例は、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、1,2−フェニレン、トランス−1,2−シクロペンタン、トランス−1,2−シクロヘキサン、2,3−ブタン、1,1’−ビフェニル、1,1’−ビナフチル、及び−Si(Me)2−である。Eは、脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であることが好ましい。より好ましくは、二価基Eは、−CH2−である。適切な三価基Eの例は、−CH−、−CHCH2−、−CH2CHCH2−、及び−Si(Me)−である。
Jは、E2及びE1の間の架橋原子団である。それは、好ましくは、C1-12の二価炭化水素基である。それは、例えば、飽和、不飽和又は芳香族環系の部を形成し得る。例えば、E1、J、E2及びD1は、一緒に、ピリジン、ピペリジン又はピロール系を形成し得、式中、D1は、窒素原子であり及びE1、J、E2は、環の残りを形成する。
本発明におけるm、n及びpの値は、独立して、0又は1である。好ましくは、m=n=pである。より好ましくは、m及びnは、双方1であり及びpは、0又は1である。
式Aにおけるm、n及びpが、ゼロである場合、式は、式Dとなる。
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、D1、E1、K、A1〜A4、M、X、L、y及びzは、上で定義したものである)。
式A及びDの遷移金属化合物は、かなり多くの種類の化合物をもとにして描くことができる。適切なリガンドの例は、2004年9月30日に、BP Chemicalsの名称において発行された同時係属特許出願WO 2004/083263において説明される−特には、式20〜157を参照されたい。
5員複素環基Kは、その環における炭素数が少なくとも2であり及び好ましくは、その環における炭素数が3である。適切な5員複素環基の例は、下に示され、式中、窒素原子の1つは、遷移金属に結合され及びE1に対する結合は、“遊離”原子価結合により描写される:
【0030】



【0031】
【化8】

以下のものは、触媒において用いられ得る遷移金属錯体の例である:
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
Yは、好ましくは、アニオン、例えば、Cl、SbF6、BF4及びB(C654より選択される。
式A及びDにおいて、Mは、Cr、Mo、W、Fe、Co及びNiより選択される。本発明の方法において使用される触媒の遷移金属は、最も好ましくは、コバルト又はクロムである。
式Aにおけるアニオン性基Xは、例えば、ハロゲン化物、好ましくは、塩化物又は臭化物;又はヒドロカルビル基、例えば、メチル、ベンジル又はフェニル;カルボキシレート、例えば、アセテート又はアセチルアセトネート;オキシド;アミド、例えば、ジエチルアミド;アルコキシド、例えば、メトキシド、エトキシド又はフェノキシド;又はヒドロキシルであってもよい。あるいはまた、Xは、非−配位又は弱−配位アニオン、例えば、テトラフルオロボレート、フッ素化アリールボレート又はトリフレートであってもよい。アニオン性基Xは、同一であっても異なっていてもよく及び独立して、モノアニオン性、ジアニオン性又はトリアニオン性であってもよい。
中性ドナー基Lは、例えば、溶媒和物分子、例えば、ジエチルエーテル又はTHF;アミン、例えば、ジエチルアミン、トリメチルアミン又はピリジン;ホスフィン、例えば、トリメチルホスフィン又はトリフェニルホスフィン;又は水;又は場合により、ヒドロカルビル又はトリメチルシリル基(炭素数が40以下であり及びMとπ錯体を形成する)より選択される1以上の基で置換されていてもよいオレフィン又は中性、共役又は非共役ジエンであってもよい。Lが、ジエンリガンドである場合、それは、例えば、s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン;s−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン;s−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン;s−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン;s−トランス−η4−1,3−ペンタジエン;s−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン;s−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン;s−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン;s−シス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン;s−シス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン;s−シス−η4−2,4−ヘキサジエン;s−シス−η4−1,3−ペンタジエン;s−シス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン;又はs−シス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンであってもよく、該s−シス異性体は、π結合ジエン錯体を形成する。
yの値は、各基K及びDの形式電荷、アニオン性基Xの電荷及び金属Mの酸化状態に依存する。例えば、Mが、酸化状態+3でのクロムである場合、Kは、中性基であり及びD基の双方は、中性であり、yは、Xがモノアニオン性基(例えば、塩化物)である場合、3であり;Mが、酸化状態+3でのクロムである場合、K基は、中性であり、1つのD基は、モノアニオン性であり及び他のDは、中性であり、yは、すべてのX基がモノアニオン性基(例えば、塩化物)である場合、2である。
本発明の方法において、金属コバルト及びクロムの遷移金属錯体、特には、以下の式Aの錯体の使用が、好ましい:
【0035】
【化12】

【0036】
(式中、Mは、Co又はCrである)。最も好ましくは、本発明の方法では、(1)式A(式中、Mは、Coである)の遷移金属化合物及び式A(式中、Mは、クロムである)の第二遷移金属化合物を用いる。
本発明の方法において用いられる触媒改質剤(B)は、好ましくは、ホスフィン、キサントゲン、チオシアニド、二硫化炭素、及びそれらの混合物からなる群より選択される。改質剤の目的は、例えば、1,2−構成単位の含量及び/又はポリジエンの1,2−ビニル配位の立体リレギュラリティ(stereoreregularity)の制御を提供することである。改質剤は、好ましくは、一般式PR8910(式中、Pは、リンであり及びR8、R9及びR10は、アルキル、アリール、又は水素である)を有する第三級ホスフィンより選択される。好ましいアルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基又はアリール、アルカリル又はアラルキル基(炭素数1〜12)、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル及びシクロヘキシル基である。好ましいアリール基は、フェニル、トリル、エチルフェニル及びイソプロピルフェニルである。好ましいホスフィンとしては、例えば、トリ(3−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−エチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,5−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,4−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−イソプロピルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−第三級ブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−エトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルベンジルホスフィン、トリベンジルフェニルホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン、1,4−ジフェニルホスフィノブタン、トリ(4−エチルフェニル)ホスフィンなど、及び脂肪族ホスフィン、例えば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィンなどが挙げられる。これらの特に好ましいものは、トリフェニルホスフィン、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(ジシクロヘキシルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジシクロヘキシルベンジルホスフィン及びトリ(4−メチルフェニル)ホスフィンである。また、触媒改質剤として適切に使用されるものは、キサントゲン、二硫化炭素及びチオイソシアニドより選択される硫黄化合物である。適切なキサントゲン化合物は、例えば、US 4,742,137において開示される。キサントゲン化合物の具体例としては、硫化ジエチルキサントゲン、硫化ジメチルキサントゲン、硫化フェニルキサントゲン、硫化トリルキサントゲン、及びそれらの混合物が挙がられる。適切なチオイソシアニド化合物は、例えば、US 5,548,045において開示される。チオイソシアニド化合物の具体例としては、フェニルチオイソシアニド、トリルチオイソシアニド、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
触媒改質剤は、本発明の方法において用いられる遷移金属化合物(合計)のモルあたり、0.01〜10モル、好ましくは、0.05〜5.0モルの範囲の量で用いられる。
本発明の方法において使用される触媒のための任意の活性剤(2)は、好ましくは、有機アルミニウム化合物及び有機ホウ素化合物又はそれらの混合物より選択される。有機アルミニウム化合物の例としては、トリアルキルアルミニウム化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム及びアルモキサンが挙げられる。アルモキサンは、典型的には、アルキルアルミニウム化合物、例えば、トリメチルアルミニウムに対する水の制御された添加により製造され得るオリゴマー化合物として当該技術分野においてよく知られる。そのような化合物は、線状、環状又はそれらの混合物であってもよい。商業的に入手可能なアルモキサンは、一般には、線状、環状及びかご形化合物の混合物であるとされる。環状アルモキサンは、式[R16AlO]sにより表すことができ及び線状アルモキサンは、式R17(R18AlO)sにより表すことができ、式中、sは、約2〜50であり及びR16、R17及びR18は、ヒドロカルビル基、好ましくは、C1-6アルキル基、例えば、メチル、エチル又はブチル基を表す。
適切な有機ホウ素化合物の例は、ジメチルフェニルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリチルテトラ(フェニル)ボレート、トリフェニルボロン、ジメチルフェニルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、H+(OEt2)[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンである。有機アルミニウム化合物及び有機ホウ素化合物の混合が使用され得る。
本発明の方法において使用される任意の活性剤化合物、即ち、有機アルミニウム化合物及び有機ホウ素化合物より選択される活性剤の量は、簡単な試験により、例えば、少量のモノマーを重合し及び従って、製造された触媒の活性を測定するために使用され得る小さな試験サンプルの製造により容易に決定される。一般には、用いられる量は、式Aの化合物において存在するMの原子あたり、0.1〜20,000原子、好ましくは、1〜2,000原子のアルミニウム又はホウ素を提供するのに十分なものであることが見出された。異なる活性化合物の混合物が使用され得る。EP 1238989は、以下のものより選択される活性剤(ルイス酸)の使用を開示する:
(b−1)CdCl2タイプ又はCdI2タイプの層状結晶構造を有するイオン−結合化合物;
(b−2)粘土、粘土鉱物、又はイオン交換層状化合物;
(b−3)ヘテロポリ化合物;及び
(b−4)ハロゲン化ランタノイド化合物。
本発明において用いられる任意の活性剤は、所望なら、EP 1238989において開示されるタイプのものであり得る。そのようなルイス酸は、少なくとも1つの電子対を受ける能力があり及び遷移金属錯体との反応によりイオン対を形成する能力がある化合物である。ルイス酸としては、前述の(b−1)CdCl2タイプ又はCdI2タイプの層状を有する結晶構造のイオン結合化合物、(b−2)粘土、粘土鉱物、又はイオン交換層状化合物、(b−3)ヘテロポリ化合物、及び(b−4)ハロゲン化ランタノイド化合物が挙げられる。ルイス酸としては、更に、SiO2、Al23、加熱又は同様の処理により形成されるルイス酸ポイント(Lewis acid point)を有する天然及び合成ゼオライト、及び錯体及びそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
米国特許第6,399,535号明細書は、以下のものを含むオレフィンを重合するのが可能な配位触媒系を開示する:
(I)プレ触媒としての、少なくとも1つの非−メタロセン、非−束縛構造、遷移金属化合物を含有する二座配位子又は遷移金属化合物を含有する三座配位子(該化合物は、(A)(II)の触媒支持体−活性剤凝集物との接触で活性化され又は(B)(II)の触媒支持体−活性剤凝集物との接触で活性化されるのが可能である中間体に、有機金属化合物との接触で転換されることが可能であり、ここで、該遷移金属は、周期表の第III族〜第X族より選択される少なくとも1つのメンバーである);(これは、以下のものと密接に接触する)
(II)(A)SiO2、Al23、MgO、AlPO4、TiO2、ZrO2及びCr23より選択される少なくとも1つの無機酸化物成分、及び(B)触媒支持活性剤凝集物内に存在する場合に、プレ触媒が、触媒支持体−活性剤凝集物と接触している時に、プレ触媒を活性化するのに十分なルイス酸性度及び層状間の空間を有する、少なくとも1つのイオンを含有する層状材料の複合材料を含む触媒支持体−活性剤凝集物(該層状材料は、カチオン成分及びアニオン成分を有し、ここで、該カチオン成分は、層状材料の空間内に存在し、該層状材料は、同一のプレ触媒を使用するが触媒支持体−活性剤凝集物の成分A又はBいずれかを使用しない対応する触媒系の活性に関連して、時間あたりの触媒系のグラムあたりのポリエチレンのKgとして表される、エチレンモノマーを重合するための配位触媒系の活性を改良するのに十分な量において凝集物内で該無機酸化物成分と密接に関連し;ここで、密接に接触するプレ触媒及び触媒支持体−活性剤凝集物の量は、約5:1〜約500:1のプレ触媒のミクロモルの触媒支持体−活性凝集物のグラムに対する比を提供するのに十分である)。層状材料は、例えば、スメクタイト粘土であってもよい。本発明の触媒系は、所望なら、米国特許第6,399,535号明細書において記載されるような触媒支持体−活性剤凝集物と共に用いられ得る。
本発明において用いられる触媒は、少なくとも2つの定義される遷移金属化合物を含む。触媒は、シス対トランスポリマーの制御された比を有するポリジエンを製造するのに有用である。例えば、遷移金属としてクロムを含有する式A(及び好ましくは、式D)の錯体の使用が、トランスポリジエンの形成に有利に働き、一方、遷移金属としてコバルトを含有するそのような錯体の使用は、シスポリジエンの形成に有利に働くことが見出された。従って、混合触媒の存在下のジエンの重合において、2つ(以上)の触媒(例えば、1つはコバルト−ベース及び他はクロム−ベース)の比を調節して、生成物において、シス/トランスポリマーの所望の比を提供することができる。定義された触媒改質剤のレベルの調節は、生成物ポリジエンにおいて1,2−ビニル配置を有するポリブタジエンの含量を制御する手段を提供する。
本発明の方法において用いられる触媒は、所望なら、WO 02/46246及び米国特許第6,605,675号明細書において開示されるものに類似する方法を用いて利用され得る。例えば、触媒成分スラリー及び触媒成分溶液は、重合反応装置内に導入前又はその間、組み合わせられ得る。そのような方法を用いて製造されるポリマーの特性は、有利には、その結果制御され得る。本発明の触媒は、また、米国特許第6,610,799号明細書において開示される方法において用いられ得る。この方法において、異なる量の触媒成分を含有する、2以上の支持触媒の混合物が利用され得、ここで、個々の触媒成分の濃度は、独立して、重合反応装置内で制御され得る。
【0039】
本発明の方法において使用される触媒の1以上の、及び又は、それらの成分は、所望なら、支持体材料上で利用され得る。従って、例えば、触媒系は、同一又は異なっていてもよいタイプの支持体材料上に支持される1以上の遷移金属化合物及び同一又は異なっていてよい支持体材料上に支持される1以上の活性剤を含んでいてもよい。適切な支持体材料は、例えば、シリカ、アルミナ、又はジルコニア、マグネシア、塩化マグネシウム又はポリマー又はプレポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリ(アミノスチレン)である。
所望なら、触媒は、現場で支持体材料の存在下で形成され得、又は支持体材料は、1以上の触媒成分と同時に又はそれらに続いて、前含浸又は前混合され得る。担持触媒の形成は、例えば、適切な不活性希釈剤、例えば、揮発性炭化水素においてアルモキサンで本発明の遷移金属化合物を処理すること、生成物を用いて微粒子支持体材料をスラリーにすること及び揮発性希釈剤を蒸発することにより達成され得る。生成される担持触媒は、好ましくは、遊離−流動粉末の形態において存在する。用いられる支持体材料の量は、幅広く、例えば、遷移金属化合物において存在する金属のグラムあたり、100,000〜1グラムで変動し得る。
本発明の重合方法において用いられるモノマーは、一般式R12C=CR3CR4=CR5CR6(式中、R1〜R6は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル及びアルカリル基より選択される)を有するジエンを含む。例えば、モノマーは、1以上の塩素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、又はペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルの異性体の単一物又は混合物;又は例えば、フェニル、2クロロ−フェニル、o−ビフェニル、ナフチル、フェナントリル及びアントリルより選択されるアリール基;又は例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニル−n−プロピル、ナフチルメチルより選択されるアルカリル基;又は例えば、アラルキル基、例えば、トリル、キシリル、メシチル又は2−メチルナフチルより選択される置換基を有するジエンであってもよい。しかしながら、ジエンが、大きな基によりかなり大量に置換される場合、立体障害に起因して、ジエンを重合するのは困難か又は不可能であり得る。用いられるジエンは、好ましくは、一般式R1H−C=CR3−CH=CH2を有し、式中、R1及びR3は、独立して、水素、塩素及びC1-10ヒドロカルビル基より選択される。好ましいジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、及び2−クロロ−1,3−ブタジエン(クロロプレン)である。
任意のコモノマー1−オレフィンは、ジエンで共重合されて、定義されたポリマーを形成するのが可能である、適切な1−オレフィン、好ましくは、C2-201−オレフィンである。そのようなオレフィンの例は、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、ノルボルネン、置換ノルボルネン及びスチレンである。
【0040】
本発明の重合方法は、単一の反応器又は直列に又は並列に配置された1以上の反応器において行われ得る。単一の反応器が使用されるケースにおいて、反応器には、単量体材料及び少なくとも2つの遷移金属化合物が供給される。遷移金属化合物は、別々に又は一緒に供給され得る。所望なら、遷移金属化合物は、同時に又は異なる時間で供給され得る。2以上の反応器が直列で使用されるケースにおいて、第一反応器には、少なくとも1つの遷移金属化合物が供給され及び第一及び/又は少なくとも1つの更なる反応器には、少なくとも1つの更なる遷移金属化合物が供給される。重合条件は、例えば、バルク相、溶液相、スラリー相又は気相であってもよい。所望なら、触媒を使用して、ポリマー材料が、超臨界モノマーにおいて溶解物として生じる高圧/高温工程条件の下、モノマーを重合することができる。好ましくは、重合は、溶液相又は気相流動又は攪拌床条件のしたで行われる。これらの工程において、重合工程は、バッチ、連続的又は半−連続的なものであってもよい。スラリー相工程及び気相工程において、触媒は、一般には、粒子状固体の形態において重合ゾーンに供給される。この固体は、例えば、1以上の定義された遷移金属化合物及び場合により、活性剤より形成される不希釈固体触媒系であってもよく、又は固体遷移金属化合物のみであってもよい。後者の状態において、活性剤は、重合ゾーンに、例えば、溶液として、固体遷移金属化合物とは別に又はそれと一緒に供給され得る。好ましくは、スラリー重合及び気相重合において用いられる触媒系の遷移金属化合物成分又は触媒系は、支持体材料上に支持される。最も好ましくは、触媒系は、重合ゾーン内へのその導入より前に、支持体材料上に支持される。適切な支持体材料は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、珪藻土、マグネシア、塩化マグネシウム及びポリマーである。支持体材料の含浸は、従来の技術により、例えば、適切な希釈剤又は溶媒における触媒成分の溶液又は懸濁液を形成すること、及びそれとともに支持体材料をスラリーにすることにより行われ得る。従って、触媒でそのように含浸された支持体材料は、次いで、希釈剤から、例えば、ろ過又は蒸発技術により分離され得る。
スラリー相重合工程において、担持触媒又は触媒の固体粒子は、乾燥粉末として又は重合希釈剤におけるスラリーとしてのいずれかで重合ゾーンに供給される。好ましくは、粒子は、重合ゾーンに、重合希釈剤における懸濁液として供給される。重合ゾーンは、例えば、シリカ担持酸化クロム触媒を用いるポリエチレンの製造においてよく知られるタイプの連続ループ(loop)反応器、又はオートクレーブ又は同様の反応器であってもよい。本発明の重合工程が、スラリー条件下で行われる場合、重合は、好ましくは、0℃より高い温度、最も好ましくは、15℃より高い温度で行われる。重合温度は、好ましくは、ポリマーが、重合希釈剤の存在下で軟化し又は焼結し始める温度より下に維持される。温度が、後者の温度より高くなると、反応器の汚染が生じ得る。これらの定義された温度範囲内の重合の調節は、生成されるポリマーの平均分子量を制御する有用な手段を提供し得る。分子量を制御する更なる有用な手段は、連鎖移動剤として作用する水素ガスの存在下で重合を行うことである。一般には、用いられる水素濃度が高くなればなるほど、生成されるポリマーの平均分子量が低くなる。
ポリマー又はコポリマーの平均分子量を制御する手段としての水素ガスの使用は、一般には、本発明の重合工程に適用される。例えば、水素を使用して、気相、スラリー相又は溶液相重合条件を使用して製造されるポリマー又はコポリマーの平均分子量を低減することができる。所望な平均分子量を得るために用いられるべき水素ガスの量は、簡単な“試行錯誤”重合試験により決定され得る。
【0041】
気相重合工程を操作する方法は、当該技術分野においてよく知られる。そのような方法は、一般には、触媒層、又は触媒を含有する対象ポリマー層(即ち、重合工程において製造するのが所望であるものに同一又は同様の物理的特性を有するポリマー)を攪拌(agitate)すること(例えば、攪拌(stir)すること、振動すること又は流動化することにより)、及びそこに、モノマーのストリームを、少なくとも部分的に、気相において、モノマーの少なくとも一部が床における触媒と接触して重合するような条件下で供給することを含む。床は、一般には、冷却ガス(例えば、再生気体モノマー)及び/又は揮発性液体(例えば、揮発性不活性炭化水素、又は気体モノマー(凝縮して、液体を形成している))の添加により冷却される。気相工程において製造される、及びそれから単離されるポリマーは、直接的に、固体を、重合ゾーンにおいて形成し及び液体がないか又は実質上ない。当該技術分野における当業者によく知られるように、液体が、気相重合工程の重合ゾーンに入る場合、液体の量は、重合ゾーンにおいて存在するポリマーの量に関連して少ない。これは、ポリマーが形成され、溶剤において溶解される“溶液相”工程、及びポリマーが、液体希釈剤における懸濁液として形成する“スラリー相”工程と対照的である。
気相工程は、バッチ、半−バッチ、又はいわゆる“連続”条件の下、操作され得る。モノマーが、連続して、重合触媒を含有する攪拌重合ゾーンにリサイクルされ(メイクアップ(make-up)モノマーは重合されたモノマーを置換するために提供されている)、及び連続して又は断続的に、ポリマーの形成の速度に匹敵する速度で、重合ゾーンから生成ポリマーを取り出す(新鮮な触媒は、重合ゾーンに添加されて、生成ポリマーを有する重合ゾーンから取り出された触媒を置換する)ような条件下で操作するのが好ましい。
気相重合条件下で本発明の方法を行う場合、触媒、又は触媒を形成するために用いられる1以上の成分は、例えば、液体形態、例えば、不活性液体希釈剤における溶液として重合反応ゾーン内に導入され得る。従って、例えば、遷移金属成分、又は活性剤成分、又はそれらの成分の双方は、液体希釈剤において溶解又はスラリーにされ及び重合ゾーンに供給され得る。これらの環境下で、成分を含有する液体が、重合ゾーンに微細液滴としてスプレーされることが好ましい。液滴の直径は、好ましくは、1〜1000μである。EP-A-0593083(その教示は本件明細書に組み込まれるものとする)は、気相重合内に重合触媒を導入する方法を開示する。EP-A-0593083において開示される方法は、適切には、所望なら、本発明の重合工程において用いられ得る。
オレフィンの気相及びスラリー相重合において生じ得る問題は、存在し得る攪拌機、反応器壁の汚染及び例えば、静電気が存在することによるポリマーの凝集又は剥離である。その問題は、適切な帯電防止剤の賢明な使用により低減又は削除し得る。オレフィンの重合において使用するのに適切な一連の帯電防止剤の1つの例は、商標名“STADIS”の下、商業的に入手可能である。
本発明の方法は従来の商業的重合設備において行うことができ及びその使用は、担持された又は担持されていないタイプの他の商業的触媒系を用いる、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、加熱活性化酸化物クロム触媒及び遅い(late)遷移金属触媒系を用いる製造ラン(production run)の間にはさまれ得る。これらのタイプの触媒系の間の遷移は、広範囲に、先行技術において記載されており及び参照は、本発明の触媒の使用に容易に適応できる同様の適切な方法について先行技術の方法に対してなされ得る。例えば、欧州特許第751965号明細書、米国特許第5,442,019号明細書、米国特許第5,672,665、米国特許第5,747,612号明細書、米国特許第5,753,786号明細書、欧州特許第830393号明細書、米国特許第5,672,666号明細書、欧州特許第1171486号明細書、欧州特許第885247号明細書、欧州特許第1182216号明細書、米国特許第6,284,849号明細書、米国特許第2004/0127655号明細書、WO 04/060938、米国特許第2004/0138391号明細書、WO 04/060921、WO 04/060922、WO 04/060929、WO 04/060930及びWO 04/060931を参照されたい。
好ましくは、本発明のポリマーは、重合ジエン単位のモル含量をベースとして、1.0モル%以下、より好ましくは、<0.7モル%、更により好ましくは、<0.5モル%、最も好ましくは、<0.1モル%のペンダントビニル基を含有する。ペンダントビニル基のレベルは、約0.01%又はそれより少ないのが特に好ましい。
本発明は、以下の実施例において説明される。
【実施例】
【0042】
実施例
実験の手順
全ての操作を、N2の雰囲気下で、標準シュレンク技術又は従来の窒素−充填乾燥−箱を用いて行った。ジエチルエーテルを、ナトリウムベンゾフェノンケチルで乾燥し及び窒素下で蒸留した。THFを、カリウムで乾燥し及び窒素下で蒸留した。トルエン及びペンタンを、商業的に入手可能なQ−5反応体(アルミナ13%w/wのCu(II)O)及び活性化されたアルミナ(ペレット、3mm)で充填されたカラムを通すことにより乾燥した。MAO(クロンプトンGMBH)を、更なる精製なしで使用した。
ポリマーの特徴付け
ポリブタジエンの平均分子量(Mw及びMn)を、ポリスチレン標準及びクロロホルム(HPLC等級)を溶剤として用いて35℃でゲル−浸透クロマトグラフィ(GPC)により決定した。13C NMRスペクトルを、130℃で、C22Cl4又はC22Cl4/C63Cl3(1:2)の混合物を溶剤として用いて操作するJeol 270 MHzスペクトロメータに記録した。1H NMR測定を、25℃でCDCl3を溶剤として用いて操作するBruker AC−250 MHzスペクトロメータを用いて行った。IRスペクトルを、Perkin Elmer 1760X FT−IR(KBrディスク)上で得た。
【0043】
実施例1
1a N,N−ビス(1H−ベンズイミダゾール−2−イルメチル)−N−メチルアミン(“リガンド1a”)の合成
o−フェニレンジアミン(5.88g、54.40mモル)及びメチルイミノアセト酢酸(4.00g、27.2mモル)を、ジエチレングリコール(20ml)において、190℃で4時間攪拌した。副生成物の水を、反応混合物から蒸留し、該反応混合物を次いで室温に冷却した。生成物を、水(120ml)で粉砕(triturate)し、ろ過し、水(4×20ml)で洗浄し、ホットメタノール−水(1:30)から再結晶化し及び最終的に60℃で真空下で2日間乾燥した。収量6.88g(87%)。1H NMR (250.13 MHz, CD3OD,室温), δ 2.29 (s, 3H, NCH3), 3.92 (s, 4H, N(CH2)2), 7.19-7.23 (m, J3 = 3.35 Hz, 4H, ArH), 7.52 7.56 (m, J3 = 3.35 Hz, 4H, ArH). 13C NMR (62.9 MHz, DMSO-d6,室温) δ 47.31 (CH3), 59.97 (NCH2), 126.66 (ArC), 157.45 (ArCq). C17H17N5についての分析計算(%) C 70.10, H 5.84, N 24.05. 実測C 70.22, H 6.05, N 23.76. +CI MS: (m/z): 292 ([MH+]).
1b. N,N−ビス(1H−ベンズイミダゾール−2−イルメチル)−N−メチルアミンクロム(III)クロリド(“錯体1b”)の合成
当モル量の“リガンド1a”(2g、6.87mモル)及びCrCl3(THF)3(2.57g、6.87mモル)を、20mlのTHFにおいて12時間攪拌した。生成物を、ろ過し、THF(2×20ml)で2回、ジエチルエーテル(20ml)で一回洗浄し及び真空下で乾燥した。収量2.87g(93%)。C17H17Cl3Cr N5 についての分析計算(%): C 45.40, H 3.81, N 15.57. 実測 C 45.35, H 3.76, N 15.66. IR (KBr, cm-1), υ 3221 (NH, s),υ 1622-1544 (ArC=C, C=N, m), d 1455, 1477, 1497 (N-H, s),υ 1274 (CN, s), d 753 (CH, s). UV-VIS (DMF, 298 K): λmax/nm (εmax/dm3 モル-1 cm-1) = 464 (156), 659 (75), 723 (ショルダー(shoulder)). +FAB-MS: (m/z): 413 ([M - Cl]+), 291([M - CrCl3]). μeff.= 3.60 MB
1c. N,N−ビス(1H−ベンズイミダゾール−2−イルメチル)−N−メチルアミンコバルト(II)クロリド(“錯体1c”)の合成
当モル量の“リガンド1a”(0.56g、1.93mモル)及びCoCl2(0.25g、1.93mモル)を、40mlのTHFにおいて24時間攪拌し及び次いで4時間還流した。生成物を、ろ過し、THF(3×20ml)で3回、ジエチルエーテル(20ml)で1回洗浄し及び真空下で乾燥した。収量0.69g(85%)。IR (KBr, cm-1),υ 3200 (NH, s),υ 1620-1540 (ArC=C, C=N, m), d 1489-1454 (N-H, s), d 764 (CH, s). +FAB-MS: (m/z): 385 ([M-Cl]+), 420 ([M-H]+), 769 ([2M-2Cl]2+), 807 ([2M-Cl]+).
1d.ブタジエンの重合
磁気攪拌器を備えたガラスシュレンク反応器を、0.5mgの錯体1b(1μモル)、1.3mgの錯体1c(3μモル)及び4mlの1.6MのMAOトルエン溶液(6.4mモル)で装填した。5分間混合物を攪拌後、トルエン中の0.06mlのPPh3改質剤2.5×10-2M溶液を添加し及び更に10分間攪拌した。トルエン中の1,3−ブタジエン(2.2gの1,3−ブタジエンについて20ml、2M)を、次いで、注入した。重合反応を、強力な攪拌下で室温で40分間行った。反応は、未反応ブタジエンをベント(vent)することにより終了し、次いでメタノールの添加を行った。沈殿したポリマーを、メタノールで洗浄し、ろ過により分離し及び60℃で24時間真空下で乾燥した。ポリマー収量0.88g。1,3−ブタジエンのポリブタジエンへの変換、40%。得られたポリブタジエンブレンドの組成は、FT−IR分光学によれば、トランス−1,4が29.4モル%、シス−1,4が38.0モル%及び1,2−ビニルが32.6モル%であった。
【0044】
異なるCr/Coモル比で1/2/MAO/PPh3を用いる1,3−ブタジエンの更なる重合を、上記の手順に従って行った。結果を、表1に表す。

表における注
“Mt”は、遷移金属Cr+Coの合計量である。
Alは、MAOから誘導される(上の“実施例1.4ブタジエンの重合”参照)
“Y”は、得られたポリブタジエンのグラム/供給されたブタジエンのグラムをベースとする収率である。
ポリブタジエンの微細構造は、FTIRを用いて決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンのホモポリマー又はコポリマーを製造する方法であって、(A)Cr、Mo及びW化合物より選択される第一遷移金属化合物、及びFe、Co及びNi化合物より選択される第二遷移金属化合物、(B)触媒改質剤及び場合により(C)1以上の触媒活性剤を含む触媒系と少なくとも1つの共役ジエンを含む単量体材料を接触することを含む方法。
【請求項2】
前記単量体材料が、1以上の共役ジエン及び1以上の1−オレフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジエンが、一般式R12C=CR3CR4=CR5CR6(式中、R1〜R6は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル及びアルカリル基より選択される)を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1〜R6が、独立して、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、フェニル、2クロロ−フェニル、o−ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニル−n−プロピル、ナフチルメチル、トリル.キシリル、メシチル及び2−メチルナフチルより選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1−オレフィンが、C2〜C20の1−オレフィンである請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記1−オレフィンが、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、ノルボルネン及びスチレンより選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
コポリマーが、2:98〜98:2の範囲のジエン:1−オレフィンのモル比を有する請求項2に記載の方法。
【請求項8】
コポリマーが、5:95〜95:5の範囲のジエン:1−オレフィンのモル比を有する請求項2に記載の方法。
【請求項9】
第一遷移金属化合物対第二遷移金属化合物のモル比が、範囲0.1対99.9〜99.9対0.1の範囲内にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一遷移金属化合物が、クロム化合物であり及び前記第二遷移金属化合物が、コバルト化合物である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒改質剤が、ホスフィン、キサントゲン、チオシアン化物、二硫化炭素、及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒改質剤が、一般式PR8910(式中、Pは、リンであり及びR8、R9及びR10は、アルキル、アリール、又は水素である)を有する第三級ホスフィンより選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒改質剤が、トリ(3−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−エチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,5−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,4−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−イソプロピルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−第三級ブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−エトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルベンジルホスフィン、トリベンジルフェニルホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン、1,4−ジフェニルホスフィノブタン、トリ(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリエチルホスフィン及びトリブチルホスフィンより選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒改質剤が、トリフェニルホスフィンである請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒活性剤が、有機アルミニウム化合物及び有機ホウ素化合物又はそれらの混合物より選択され用いられる請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性剤が、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、アルモキサン、ジメチルフェニルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリチルテトラ(フェニル)ボレート、トリフェニルボロン、ジメチルフェニルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、H+(OEt2)[(ビス−3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンより選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第二遷移金属化合物が、1以上の下記化合物:
【化1】

より選択されるコバルト化合物を含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第一遷移金属化合物が、1以上の下記化合物:
【化2】

【化3】

より選択されるクロム化合物を含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
(A)Cr、Mo及びW化合物より選択される第一遷移金属化合物、及びFe、Co及びNi化合物より選択される第二遷移金属化合物、(B)触媒改質剤及び場合により、(C)1以上の触媒活性剤を含む触媒系。
【請求項20】
前記第一遷移金属化合物が、クロム化合物であり及び前記第二遷移金属化合物が、コバルト化合物である請求項19に記載の触媒系。
【請求項21】
前記触媒改質剤が、ホスフィン、キサントゲン、チオシアニド、二硫化炭素、及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項19又は20に記載の触媒系。
【請求項22】
前記触媒改質剤が、一般式PR8910(式中、Pは、リンであり及びR8、R9及びR10は、アルキル、アリール、又は水素である)を有する第三級ホスフィンより選択される請求項19〜21のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項23】
触媒改質剤が、トリ(3−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−エチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,5−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3,4−ジメチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−イソプロピルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−第三級ブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−エトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)−ホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルベンジルホスフィン、トリベンジルフェニルホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン、1,4−ジフェニルホスフィノブタン、トリ(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリエチルホスフィン及びトリブチルホスフィンより選択される請求項19〜22のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項24】
前記触媒改質剤が、トリフェニルホスフィンである請求項19〜22のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項25】
前記第二遷移金属化合物が、1以上の下記化合物:
【化4】

より選択されるコバルト化合物を含む請求項19〜24のいずれか1項に記載の触媒系。
【請求項26】
前記第一遷移金属化合物が、1以上の下記化合物:
【化5】

【化6】

より選択されるクロム化合物を含む請求項19〜25のいずれか1項に記載の触媒系。

【公開番号】特開2008−115396(P2008−115396A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−308037(P2007−308037)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(507391775)イネオス ユーロープ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】